説明

自走式破砕機

【課題】選別された細粒のシュートによる排出効率を改善することができる自走式破砕機を提供する。
【解決手段】本体フレーム10と、その本体フレーム10の長手方向の一方側上部に設けられ、被破砕物を受け入れるホッパ2と、ホッパ2に投入された被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その大塊を振動により本体フレーム10の長手方向他方側に搬送しつつ、細粒を篩い落とす振動フィーダ20と、振動フィーダ20の下方に、振動フィーダと一体振動するよう設けられ、選別された細粒を受けて本体フレーム10の短手方向外側に排出するように、排出方向に向かって下方に傾けて配置されたシュート30とを備え、シュート30は、そのシュート30上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、振動フィーダ30による加振力の上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度λとなるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた被破砕物を破砕する破砕装置を備えた自走式破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式破砕機は、例えば、ビル解体時に搬出されるコンクリート塊や道路補修時に排出されるアスファルト塊などの建設現場で発生する大小さまざまな岩石・建設廃材、あるいは産業廃棄物等(=被破砕物)を減量化してリサイクル材とするものである。
【0003】
このような自走式破砕機として、例えば、特許文献1には、本体フレームと、この本体フレームに設けた走行手段と、本体フレームの長手方向一の側に設けたホッパと、このホッパで受け入れた被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その選別した大塊を破砕装置に搬送する選別搬送手段と、選別搬送手段により搬送された大塊を破砕する破砕装置と、この破砕装置により破砕された破砕物を本体フレーム長手方向の他の側に排出するコンベアと、選別搬送手段により選別された細粒を自走式破砕機の本体の長手方向一の側へ排出するシュートとを備えた自走式破砕機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−35632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、選別搬送手段による大塊の搬送方向と、シュートによる細粒の排出方向とが互いに反対方向になるよう構成されているため、選別搬送手段の振動による大塊への搬送作用が選別搬送手段と一体的に振動するシュート上の細粒の排出を妨げる方向に作用するので、シュートによる細粒の排出効率を抑制してしまい、この点について改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、選別された細粒のシュートによる排出効率を改善することができる自走式破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、本体フレームと、前記本体フレームの長手方向の一方側上部に設けられ、被破砕物を受け入れるホッパと、前記ホッパに投入された前記被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その大塊を振動により前記本体フレームの長手方向他方側に搬送しつつ、細粒を篩い落とす振動フィーダと、前記振動フィーダの下方に、振動フィーダと一体振動するよう設けられ、選別された前記細粒を受けて前記本体フレームの短手方向外側に排出するように、排出方向に向かって下方に傾けて配置されたシュートとを備え、前記シュートは、そのシュート上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、前記振動フィーダの加振力の上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度となるように配置されたものとする。
【0008】
このように、選別された細粒を受けて本体フレームの短手方向外側に排出するように、排出方向に向かって下方に傾けてシュートを配置し、シュート上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、振動フィーダの上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度となるように配置したので、選別された細粒のシュートによる排出効率を改善することができる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記シュートの上流側に設けられ、前記振動フィーダからの細粒の排出方向を前記本体フレームの短手方向の一方側と他方側の何れかに切り換える切り替え手段を備えたものとする。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記シュートの傾斜角度は可変であるものとする。
【0011】
(4)さらに、上記(1)〜(3)の何れか1つにおいて、好ましくは、前記シュートは、前記ホッパの平面外形寸法内に収まるように配置されたものとする。
【0012】
(5)また、上記(1)〜(4)の何れか1つにおいて、好ましくは、前記振動フィーダにおける加振方向の水平方向からの角度をα、前記シュートの設置傾斜角度をλとしたときに、角度αおよび角度λを、cosαcosλ>sinαsinλを満たすように設定したものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、選別された細粒のシュートによる排出効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る自走式破砕機の全体構成を示す側面図である。
【図2】第1の実施の形態の加振装置周辺における部分透視図である。
【図3】第1の実施の形態の振動フィーダ付近の拡大図である。
【図4】第1の実施の形態の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。
【図5】第1の実施の形態のグリズリフィーダ上において被破砕物が搬送されるときに被破砕物に作用する力のバランスを表した図である。
【図6】第1の実施の形態のシュート上において被破砕物が流下搬送されるときに被破砕物に作用する力のバランスを表した図であり、シュート上の被破砕物を下流端部側側面から見た図である。
【図7】第1の実施の形態のシュート上において被破砕物が流下搬送されるときに被破砕物に作用する力のバランスを表した図であり、右側が搬送側となるように示した図である。
【図8】第1の実施の形態における加振角度と設置傾斜角度を、所定の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【図9】第1の実施の形態における加振角度と設置傾斜角度を、他の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【図10】第1の実施の形態における加振角度と設置傾斜角度を、さらに他の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【図11】第2の実施の形態の振動フィーダ付近の拡大図である。
【図12】第2の実施の形態の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。
【図13】第3の実施の形態の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。
【図14】第4の実施の形態の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。
【図15】従来技術における加振角度と設置傾斜角度を、所定の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【図16】従来技術における加振角度と設置傾斜角度を、他の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【図17】従来技術における加振角度と設置傾斜角度を、さらに他の条件の範囲内でそれぞれ変えた場合の条件式における各辺の値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態を図1〜図10を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係る自走式破砕機の全体構成を示す側面図であり、図2は加振装置周辺における部分透視図、図3は振動フィーダ付近の拡大図、図4は振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。なお、以下において、図1中における左右に対応する方向を自走式破砕機の前後とする。
【0018】
図1〜図4において、本発明の一実施の形態に係る自走式破砕機100は、走行体1と、ホッパ(投入ホッパ)2と、振動フィーダ(グリズリフィーダ)20と、破砕装置3と、機械室4と、排出コンベヤ5と、シュート30とを概略備えている。本実施の形態の自走式破砕機では、排出コンベヤ5の排出側を前方、ホッパ2側を後方と称する。
【0019】
走行体1は、左右一対の走行フレーム6のそれぞれに履体7を掛け回して構成したものである。走行フレーム6の端部には従動輪(図示せず)及び駆動輪8が設けられている。また、一対の走行フレーム6のそれぞれには一対の結合フレーム9(9a,9b)(図4参照)が連結されている。一対の連結フレーム9の上方には本体フレーム10が取り付けられている。連結フレーム9a,9bの上方には、それぞれ、本体フレーム10の長さ方向に延在するよう配置された水平部材10a,10bが取り付けられている。この水平部材10a,10bは、本体フレーム10の一部を構成している。
【0020】
ホッパ2は、被破砕物を受け入れるものであり、本体フレーム10の長手方向の一方側(すなわち、前後方向の後方側)上部に支持部材11を介して配置されており、上方に向かって拡開して設けられている。
【0021】
振動フィーダ20は、ホッパ2により受け入れた被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その大塊を振動により本体フレームの長手方向の他方側(すなわち、前後方向の前方側)に搬送しつつ、細粒を篩い落とすものである。振動フィーダ20は、ホッパ2の下方に配置されており、支持部材11に弾性部材22a〜22cを介して振動可能に支持された振動フィーダ本体24と、振動フィーダ本体24の内側に固定された篩部材21と、振動フィーダ本体24を加振する加振装置23とを備えている。そして、加振装置23を駆動して振動フィーダ本体24と篩部材21とを一体的に揺さ振り、投入された被破砕物の選別および搬送を行う。
【0022】
本実施の形態においては、振動フィーダ20の一例としてグリズリフィーダ(以下、グリズリフィーダ20と称する)を示して説明する。すなわち、振動フィーダであるグリズリフィーダ20の内部には、偏心錘を有するフィーダ用油圧モータなどの加振装置23(図2参照)によって加えられる振動を利用して、被破砕物をグリズリフィーダ20の前方側下方に配置された破砕装置3に向けて搬送する複数のグリズリバー21(篩部材21)が収納されている。グリズリバー21は、本体フレーム10の幅方向(短手方向)に複数配置された櫛を並べて設けられており、その櫛の間隔より小さい被破砕物(細粒(いわゆるズリ))をふるい落とし、この櫛歯構造部分から落下した細粒等はグリズリバー21の下方に設けられたシュート30を介して、本体フレーム10の幅方向(短手方向)外側(本実施の形態では右側)に排出する。
【0023】
なお、本実施形態では弾性部材22a〜22cの一例としてコイルバネを用いた場合を示しているが、ラバースプリング等の他の弾性体を用いても良い。
【0024】
シュート30は、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒を受けて、その自重により本体フレーム10の短手方向外側に排出するものである。シュート30は、グリズリフィーダ20の下方に、グリズリフィーダ20と一体振動するよう設けられ、排出方向に向かって下方に傾けて配置されている。
【0025】
このシュート30は、横断面形状(上側端部30aから下側端部30bに向かう流れに垂直な断面の形状)が略U字型でかつ略長方形の底部を備えた樋状部材であり、上側端部30aがグリズリバー21の下方において、振動フィーダ本体24の幅方向一方側の内壁に固定されるとともに、下側端部30bが振動フィーダ本体24の幅方向他方側の下部に設けられた開口部24aを通して本体フレーム10の短手方向外側まで延在するよう配置され、その開口部24a付近において振動フィーダ本体24に接続固定されている。これにより、シュート30は、水平方向に対して所定の傾斜(設置傾斜角度λ:後の図7参照)をもって固定されている。本実施の形態のシュート30の設置傾斜角度λは、そのシュート30上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、グリズリフィーダ(振動フィーダ)20の上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度λ(後に詳述)に設定される。またこのとき、図4に示すように、シュート30は、その下側端部30bが自走式破砕機のホッパ2の幅方向の平面外径寸法W内に収まるように設けられている。
【0026】
破砕装置3は、ホッパ2内に投入されグリズリフィーダ20により搬送された被破砕物(大塊)を破砕するものであり、ホッパ2の前方かつ下方に位置し、本体フレーム10の長手方向中央付近に搭載されている。破砕装置3としては、例えば、固定歯と揺動する動歯とによって破砕室を形成し、この破砕室に導入された被破砕物をその固定歯と動歯とによって噛み砕くように破砕して下方の排出口から排出する形態のジョークラッシャなどが挙げられる。
【0027】
機械室4は、破砕装置3より更に前方側の本体フレーム10上に位置するよう設けられており、その外側を覆う外装カバー40によって内部空間と外部とを隔てるよう形成されている。そして、機械室4の内部空間には、走行体1やホッパ2、破砕装置3などに設けられた各油圧アクチュエータを駆動する油圧源としての油圧ポンプや、それらを駆動するディーゼルエンジンなど(ともに図示せず)が内蔵されている。
【0028】
走行体1の前方側の上方の本体フレーム10の下側には、キースイッチ、エンジンコントロールダイアル、或いは、破砕装置3の動作制御用スイッチ等が配置された操作盤16が設けられている。
【0029】
破砕装置3などが設けられた位置であって操作盤16の後方側に隣り合う位置、すなわち、機体の前後方向における中央付近の側面部で走行体1の上方には、オペレータが破砕装置3などにアクセスするためのメンテナンス用ラダー14が設けられている。また、走行体1及び操作盤16の前方側に隣り合う位置であって機械室4の下方には、オペレータが機械室4にアクセスするためのメンテナンス用ラダー15が設けられている。
【0030】
排出コンベヤ5は、破砕装置3から排出された破砕物をフレーム内に収納された搬送ベルト13で機体前方に搬送して機外に排出するものである。排出コンベヤ5は、破砕装置3の下方であって一対の走行体1の間から機械室4の下方を通るよう設けられ、さらにそこからホッパ2や機械室4の上端部と同程度の高さまで機体前方に向かって斜めに立ち上がるよう上り傾斜に形成されている。搬送ベルト13は、排出コンベヤ5の前後方向における両端に設けられた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)に巻回されており、その駆動輪によって循環駆動され破砕物を機体前方側に搬送する。
【0031】
ここで、前述の設置傾斜角度λについて説明するために、グリズリフィーダ20における加振装置23による振動のグリズリフィーダ20上(つまり、グリズリバー21上)における被破砕物(大塊)、及び、シュート30上における被破砕物(細粒)への作用について説明する。
【0032】
(1)グリズリフィーダ(振動フィーダ)20上の被破砕物
図5は、グリズリフィーダ20上において被破砕物が搬送されるときに被破砕物に作用する力のバランスを表した図であり、図中右側が搬送側となるように示している。図5において、質量mの被破砕物には、搬送側への力として、水平方向からの角度α(加振角度α)をもって加振装置23の加振による加振力Fが図中右上方向に加わり、搬送方向への分力成分である図中右方向への水平方向成分はFcosαとなる。その一方で、被破砕物には、搬送側と反対側への力として、鉛直下方への自重mgに等しい垂直抗力に静止摩擦係数μを乗じた最大静止摩擦力μmgが図中左方向に加わる。
【0033】
したがって、グリズリフィーダ20が搬送機能を得るための条件は、
μmg < Fcosα ・・・(式1)
となる。
【0034】
(2)シュート30上の被破砕物
図6及び図7は、シュート30上において被破砕物(細粒(ズリ))が流下搬送されるときに被破砕物に作用する力のバランスを表した図である。図6はシュート30上の被破砕物を下流端部30b側側面(すなわち、本体フレーム10の右側側面)から見た図であり、図7は図中右側が搬送側となるように示した図である。
【0035】
図6において、被破砕物mには、まず搬送側と反対側への力として、加振装置23の加振による加振力Fの鉛直方向成分Fsinαが図中上方向に加わり、搬送側と反対側(シュート30に沿って上方側)への分力成分である図中左上方向への成分はFsinαsin(90°−λ)=Fsinαsinλとなる。その一方で、被破砕物には、搬送側への力として、鉛直下方への自重mgのシュート30底面による垂直抗力mgcosλに静止摩擦係数μを乗じた最大静止摩擦力μmgcosλが図中右下方向に加わる。
【0036】
したがって、シュート30が搬送機能を得るための条件は、
μmgcosλ > Fsinαsinλ ・・・(式2)
となる。
【0037】
したがって、上記(式1)と(式2)との両方を満たすように角度α,λを設定すれば、グリズリフィーダ20によるジョークラッシャ2への搬送機能を確保しつつ、シュート30によるズリ排出を促進することができ、したがって、選別された細粒のシュート30による排出効率を改善することができる。
【0038】
ここで、シュート30の取り付け構造上、0°<λ<90°であって、cosλ>0であることから、上記(式2)を変形すると、
μmg > F(sinαsinλ/cosλ) ・・・(式2−1)
となる。
【0039】
したがって、上記(式1)及び(式2−1)より、
Fcosα > μmg > F(sinαsinλ/cosλ)
すなわち、式変形すると、
cosα > (sinαsinλ/cosλ)
cosλ>0であることから、
cosαcosλ > sinαsinλ ・・・(式3)
を満たせば、シュート30上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、グリズリフィーダ(振動フィーダ)20の上方向成分による滞留作用を上回るので、グリズリフィーダ20によるジョークラッシャ2への搬送機能を確保しつつ、シュート30によるズリ排出を促進することができ、したがって、選別された細粒のシュート30による排出効率を改善することができることがわかる。
【0040】
(3)加振装置23による加振角度αとシュート30の設置傾斜角度λの検討
図8〜図10は、加振角度αと設置傾斜角度λをそれぞれ変えた場合の、上記(式3)における左辺の値と右辺の値の関係を示す図である。図8は角度α=45°で角度λ=10°〜80°とした場合、図8は角度α=50°で角度λ=10°〜80°とした場合、図8は角度α=55°で角度λ=10°〜80°とした場合をそれぞれ示している。
【0041】
以下では、一般的な加振角度αは45°〜55°の場合を例示して説明する。
【0042】
図8に示すように、角度α=45°で角度λ=10°〜80°とした場合は、上記(式3)の左辺=cosαcosλは線41で示す値をとり、右辺=sinαsinλは線42で示す値をとるので、λ<45°において上記(式3)を満たすことがわかる。したがって、角度α=45°において角度λ<45°に設定することにより、グリズリフィーダ20によるジョークラッシャ2への搬送機能を確保しつつ、シュート30によるズリ排出を促進することができ、したがって、選別された細粒のシュート30による排出効率を改善することができる。
【0043】
同様に、図9に示すように、角度α=50°で角度λ=10°〜80°とした場合は、上記(式3)の左辺は線43で示す値をとり、右辺は線44で示す値をとるので、λ<40°において上記(式3)を満たすことがわかる。また、図10に示すように、角度α=55°で角度λ=10°〜80°とした場合においても、上記(式3)の左辺は線45で示す値をとり、右辺は線46で示す値をとるので、λ<35°において上記(式3)を満たすことがわかる。
【0044】
本実施の形態のシュート30の設置傾斜角度λは、上記(式3)の条件を満たす設置傾斜角度λ、すなわち、シュート30上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、グリズリフィーダ(振動フィーダ)20の上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度λに設定される。
【0045】
以上のように構成した本実施の形態の効果を図11〜図13を用い、従来技術と比較しつつ説明する。
【0046】
従来技術のように、選別搬送手段によって本体フレームの長手方向一の側に設けたホッパで受け入れた被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その選別した大塊を搬送するとともに、選別された細粒をシュートによって自走式破砕機の本体の長手方向一の側へ排出する自走式破砕機においては、加振装置による振動のフィーダ上における被破砕物、及び、シュート上における被破砕物への作用について次のように言える。
【0047】
従来技術において、フィーダが被破砕物の搬送機能を得るための条件は、加振角度をαとすると、前述のように、
μmg < Fcosα ・・・(式1)
となる。
一方で、シュートが搬送機能を得るための条件は、シュートの設置傾斜角度をθとすると、
μmgcosθ > Fcosβ ・・・(式4)
となる。
したがって、上記(式1)および(式4)より式計算して、
cosαcosθ > cos(α−θ) ・・・(式5)
を満たせば、フィーダによるジョークラッシャへの搬送機能を確保しつつ、シュートによるズリ排出を行えることがわかる。
【0048】
そこで、図15〜図17に示すように、加振角度αと設置傾斜角度θをそれぞれ変えた場合の、上記(式5)における左辺の値と右辺の値の関係を調べる。図15は角度α=45°で角度θ=10°〜80°とした場合、図16は角度α=50°で角度θ=10°〜80°とした場合、図17は角度α=55°で角度θ=10°〜80°とした場合をそれぞれ示している。
【0049】
図15に示すように、角度α=45°で角度θ=10°〜80°とした場合は、上記(式5)の左辺=cosαcosθは線51で示す値をとり、右辺=cos(α−θ)は線52で示す値をとるので、0°<θ<80°において上記(式5)を満さないことがわかる。同様に、図16に示すように、角度α=50°で角度θ=10°〜80°とした場合は、上記(式5)の左辺=cosαcosθは線53で示す値をとり、右辺=cos(α−θ)は線54で示す値をとるので、0°<θ<80°において上記(式5)を満さないことがわかる。また、図17に示すように、角度α=55°で角度θ=10°〜80°とした場合においても、上記(式5)の左辺=cosαcosθは線51で示す値をとり、右辺=cos(α−θ)は線52で示す値をとるので、0°<θ<80°において上記(式5)を満さないことがわかる。したがって、振動フィーダの一般的な加振角度である角度α=45°〜55°においては、シュートの設置傾斜角度θを0°<θ<80°としてもフィーダによるジョークラッシャへの搬送機能を確保しつつ、シュートによるズリ排出を行うことができない。
【0050】
これに対し、本実施の形態の自走式破砕機においては、シュートを振動フィーダの下方に、振動フィーダと一体振動するよう設け、選別された細粒を受けて本体フレームの短手方向外側に排出するように、排出方向に向かって下方に傾けて配置し、そのシュート上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、振動フィーダの上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度となるように構成したので、グリズリフィーダ20によるジョークラッシャ2への搬送機能を確保しつつ、シュート30によるズリ排出を促進することができ、したがって、選別された細粒のシュート30による排出効率を改善することができることがわかる。
【0051】
また、シュート30は、その下側端部30bが自走式破砕機のホッパ2の幅方向の平面外径寸法W内に収まるように構成したので、ホッパ2への被破砕物投入時に一部の被破砕物がホッパ2外にこぼれ落ちた場合でも、シュート30への衝突を防止でき、したがって、シュート30の損傷を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、グリズリフィーダ20からの細粒等をシュート30を介して本体フレーム10の右側に排出するように構成したが、これに限られず、シュート30の上側端部30aを本体フレーム10の右側(図4中右側)に、下側端部30bを左側に配置し、細粒等を左側に排出するように構成しても良い。
【0053】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図11および図12を参照しつつ説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態の自走式破砕機において、シュート30の排出口側に前後方向に延在するサイドコンベアを配置し、シュート30から排出された被破砕物(細粒(ズリ))を後方に搬送・排出するように構成したものである。
【0054】
図11は本実施の形態に係る自走式破砕機の振動フィーダ付近を拡大して示す図であり、図12は振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。図中、第1の実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0055】
本実施の形態の自走式破砕機は、第1の実施の形態と同様に、走行体1と、ホッパ(投入ホッパ)2と、振動フィーダ(グリズリフィーダ)20と、破砕装置3と、機械室4と、排出コンベヤ5と、シュート30とを備えている。
【0056】
また、図11および図12において、シュート30の下側端部b30の下部には、シュート30から排出された被破砕物(細粒(ズリ))を後方に搬送・排出するサイドコンベア60が支持部材60aを介して本体フレーム11に支持されて設けられている。サイドコンベア60は、シュート30の下側端部b30の下方であって車体フレーム11の幅方向外側に前後方向に延在するよう設けられ、その後端部は機体後方に向かってホッパ2の後端部下方付近まで、ほぼ水平方向に形成されている。このとき、図11及び図12に示すように、サイドコンベア60は、自走式破砕機のホッパ2の前後方向の平面外径寸法L内、および、幅方向の平面外形寸法W内に収まるように設けられている。そして、サイドコンベア60は、その前後方向における両端に設けられた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)に巻回された搬送ベルトを循環駆動することにより、被破砕物(細粒)を機体後方側に搬送し、後端部より排出する。
【0057】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0058】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、シュート30から排出された被破砕物(細粒(ズリ))を後方に搬送・排出することができるので、機体側方への排出が困難な場所における作業であっても排出効率の低下を抑制することができる。
【0060】
また、サイドコンベア60及びシュート30を幅方向の平面外形寸法W内、及び、前後方向の平面外見寸法L内に収まるように構成したので、ホッパ2への被破砕物投入時に一部の被破砕物がホッパ2外にこぼれ落ちた場合でも、シュート30のみならずサイドコンベア60への衝突を防止でき、したがって、シュート30及びサイドコンベア60の損傷を抑制することができる。
【0061】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図13を参照しつつ説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態の自走式破砕機において、シュートの排出口を機体の幅方向両側(すなわち、左右両側)に設け、グリズリフィーダ20からの被破砕物(細粒(ズリ))の排出方向を、機体の左右のどちらか、又は、両方に切り換えられるように構成したものである。
【0062】
図13は本実施の形態に係る自走式破砕機の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。図中、第1の実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0063】
図13において、自走式破砕機は、グリズリフィーダ20からの被破砕物(細粒(ズリ))を、機体の右側(図13中右側)に排出する右シュート130と、機体の左側(図13中左側)に排出する左シュート230とを備えている。これら右シュート130及び左シュート230は、右シュート130としてのみ機能する右排出部130aと、左シュート130bとしてのみ機能する左排出部230aと、それぞれ回動軸30Pに対して回動可能に設けられ、その位置によって右シュート130としての機能と左シュート230としての機能が変わる2つの回動部材130b,230bとから構成されている。
【0064】
(1)右方向排出
ます、回動部材130b,230bが右シュート130として機能する場合について説明する。
【0065】
右シュート130は、上側の端部が振動フィーダ本体24の幅方向左側の内壁部に配置されるとともに、下側の端部が振動フィーダ本体24の幅方向右側の下部に設けられた開口部24aを通して本体フレーム10の短手方向外側まで延在するよう配置され、その開口部24a付近において振動フィーダ本体24に接続固定されている。これにより、シュート30は、水平方向に対して所定の傾斜(設置傾斜角度λ)をもって配置されている。
【0066】
この右シュート130は、上側端部から下側端部に向かって順に配置された、左回動部材130b、右回動部材230b、及び、右排出部130aにより構成されている。左回動部材130b及び右回動部材230bは、それぞれ、グリズリバー21の下方かつ振動フィーダ本体24の左右中央部において機体の長手方向に延在するよう固設された回動軸30Pに一端を回動可能に支持された板状の部材である。左回動部材130bは、回動軸30Pと反対側の端部(言い換えると、右シュート130における上側の端部)が振動フィーダ本体24の幅方向左側の内壁に着脱可能なボルト等により固定されている。右回動部材230bは、回動軸30Pと反対側の端部が右排出部130aの上端部により下方から支持されており、その右排出部130aが開口部24a付近において振動フィーダ24に接続固定されている。これにより、左回動部材130b、右回動部材230b、及び、右排出部130aは、右シュート130を一体的に形成し、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒を受けて、本体フレーム10の短手方向外側に排出する。
【0067】
(2)左方向排出
次に、回動部材130b,230bが左シュート230として機能する場合について説明する。
【0068】
前述のように、回動部材130b,230bが右シュート130として機能する状態から、右回動部材230bを上方に回動して振動フィーダ本体24の幅方向右側の内壁に着脱可能なボルト等により固定するとともに、左回動部材130bを振動フィーダ本体24の幅方向左側の内壁に固定しているボルトを外してその左回動部材130bを下方に回動させ、振動フィーダ本体24の幅方向左側の下部に設けられた開口部24b付近において振動フィーダ本体24に接続固定された左排出部230aの上端により下方から支持させることにより、回動部材130b,230bを左シュート230として機能させる。
【0069】
すなわち、この状態において回動部材130b,230bは左シュート230を構成し、したがって、左シュート230は、上側の端部が振動フィーダ本体24の幅方向右側の内壁部に配置されるとともに、下側の端部が振動フィーダ本体24の幅方向左側の下部に設けられた開口部24bを通して本体フレーム10の短手方向外側まで延在するよう配置され、その開口部24b付近において振動フィーダ本体24に接続固定されている。これにより、シュート30は、水平方向に対して所定の傾斜(設置傾斜角度λ)をもって配置されている。そして、左回動部材130b、右回動部材230b、及び、左排出部230bは、左シュート230を一体的に形成し、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒を受けて、本体フレーム10の短手方向外側に排出する。
【0070】
(3)両方向排出
また、左右の回動部材130b,230bを振動フィーダ本体24の幅方向の内壁に固定しているボルトを外して下方に回動させ、左回動部材130bを左排出部230bの上端により下方から支持させ、右回動部材230bを右排出部130aの上端により下方から支持させる状態とすることにより、左右のシュート130,230は、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒を受けて、本体フレーム10の短手方向左右外側に排出する。
【0071】
なおこのとき、図13に示すように、左右のシュート130,230は、その下側端部が自走式破砕機のホッパ2の幅方向の平面外径寸法W内に収まるように設けられている。
【0072】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0073】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0074】
また、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒の排出方向を機体の左右のいずれか、又は両方で選択することができるので、作業現場の状況に合せた対応を図ることができ、作業効率をより向上することができる。
【0075】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図14を参照しつつ説明する。本実施の形態は、第3の実施の形態の自走式破砕機において、シュートの排出口の高さ位置を変えられるように構成したものである。
【0076】
図14は本実施の形態に係る自走式破砕機の振動フィーダ付近の後方からの部分透視図である。図中、第3の実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し説明を省略する。また、本実施の形態では、第3の実施の形態の左右のシュート130,230のうち、右シュート130の場合を示し説明しているが、左シュート230についても同様である。
【0077】
図14において、右シュート130の右排出部130aは、開口部24a付近において振動フィーダ本体24に対して、固定部130cにおいてボルト等により接続固定されている。また、振動フィーダ本体24の固定部130cの下部には、右排出部130aをボルト等により固定可能な固定部130dが設けられている。すなわち、右排出部130aの振動フィーダ本体24への固定部を、固定部130c,130dの何れかで選択することにより、右排出部130a固定高さを変えることができ、したがって、シュートの排出口の高さ位置を変えることができる。このとき、右回動部材230bは回動軸30Pにおいて回動可能に支持されているので、右排出部130aが固定される固定部によらず右シュート130を一体的に形成し、グリズリフィーダ20により選別され篩い落とされた細粒を受けて、本体フレーム10の短手方向外側に排出することができる。
【0078】
なお、本例では2つの固定部130c,130dを示して説明したが、これに限られず、右排出部130aの他の構造物との干渉等を考慮した位置であれば、2つ以上の固定部を設けても良い。
【0079】
その他の構成は、本実施の形態の第3の実施の形態と同様である。
【0080】
以上のように構成した本実施の形態においても、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、本実施の形態では、第3の実施の形態において、シュートの排出口の高さ位置を変えられるように構成したが、第1及び第2の実施の形態においても同様の構成を適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0082】
1 走行体
2 ホッパ
3 破砕装置
4 機械室
5 排出コンベヤ
6 走行フレーム
7 履体
8 駆動輪
9 結合フレーム
10 本体フレーム
10a,10b 水平部材
11 支持部材
13 搬送ベルト
14,15 メンテナンス用ラダー
16 操作盤
20 グリズリフィーダ(篩装置)
21 グリズリバー(篩部材)
22a〜22c 弾性部材
24 篩装置本体
30,130,230 シュート
60 サイドコンベア
100 自走式破砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、
前記本体フレームの長手方向の一方側上部に設けられ、被破砕物を受け入れるホッパと、
前記ホッパに投入された前記被破砕物を粒度に応じて大塊と細粒とに選別し、その大塊を振動により前記本体フレームの長手方向他方側に搬送しつつ、細粒を篩い落とす振動フィーダと、
前記振動フィーダの下方に、振動フィーダと一体振動するよう設けられ、選別された前記細粒を受けて前記本体フレームの短手方向外側に排出するように、排出方向に向かって下方に傾けて配置されたシュートとを備え、
前記シュートは、そのシュート上の細粒に対する摩擦力による排出作用が、前記振動フィーダによる加振力の上方向成分による滞留作用を上回る設置傾斜角度となるように配置された
ことを特徴とする自走式破砕機。
【請求項2】
請求項1記載の自走式破砕機において、
前記シュートの上流側に設けられ、前記振動フィーダからの細粒の排出方向を前記本体フレームの短手方向の一方側と他方側の何れかに切り換える切り替え手段を備えたことを特徴とする自走式破砕機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自走式破砕機において、
前記シュートの傾斜角度は可変であることを特徴とする自走式破砕機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の自走式破砕機において、
前記シュートは、前記ホッパの平面外形寸法内に収まるように配置されたことを特徴とする自走式破砕機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の自走式破砕機において、
前記振動フィーダにおける加振方向の水平方向からの角度をα、前記シュートの設置傾斜角度をλとしたときに、角度αおよび角度λを、cosαcosλ>sinαsinλを満たすように設定したことを特徴とする自走式破砕機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate