説明

自走式PC床版架設機およびPC床版の架設工法

【課題】 PC床版を効率よく設置できる機械化した自走式PC床版架設機および架設工法を提供すること。
【解決手段】 自走式PC床版架設機において、ガーダ1の中間部に、枠型前部脚2および枠型後部脚3が間隔をおいて配置されると共に架設機昇降用ジャッキ7を備えた枠型前部脚2および枠型後部脚3の上部が固定され、ガーダ1に設けられた走行用レール10に、下部に吊り装置18および旋回部17を有する走行用トロリが走行可能に設けられている。枠型前部脚2と枠型後部脚3の左右両側に外側に張り出す一側部支持レール24と他側部支持レール24が設けられ、各一側部支持レール24に渡って設けられた一側部防護足場兼支保工装置34aと、各他側部支持レール24に渡って設けられた他側部防護足場兼支保工装置34とが、鋼桁37を囲むように相互に接近および離反移動可能に構成されている自走式PC床版架設機およびその架設機を使用して効率よくPC床版を架設する架設工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼桁等の桁上にPC(プレキャストコンクリート)床版を架設するための自走式PC床版架設機およびPC床版の架設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼桁にPC床版を設置する方法としては、トラッククレーンでPC床版を架設するか、小型の架設機を用いて1枚ずつ架設していた。(例えば、特許文献1,2参照)
【特許文献1】特開2003−74018号公報
【特許文献2】特開平6−306819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の方法では、PC床版の設置作業効率が悪くコストアツプにつながる。また、新線を市街地で構築する場合、周りの既設道路を使う事も制限される場合が多く、夜間において、限られた空間と時間内では長期間を要していた。
また、PC床版の間に現場打ちの床版がある場合、その部分の型枠、足場、養生設備を別に準備しなければならなかった。
都市および市街地内の街路と並行もしくは立体交差している橋梁の床版工事を行う場合に、街路の安全確保のために防護足場を設置するとともに、床版施工用の重機等の使用のため、街路の交通を阻害することになる課題がある。
【0004】
本発明は、PC床版を効率よく設置することができ、床版の幅員変化に対応して対向する防護足場間隔を狭くしたり広げたり変化させることができ、街路の安全を確保するとともに交通阻害をほとんど必要としない機械化したPC床版架設機およびPC床版の架設工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の自走式PC床版架設機においては、桁上にPC床版を架設する自走式PC床版架設機において、前後方向に延長するガーダの中間部に、枠内側が開放された枠型前部脚および枠型後部脚が間隔をおいて配置されると共に前記枠型前部脚および枠型後部脚の上部が固定され、枠型前部脚および枠型後部脚には架設機昇降用ジャッキを備え、前記ガーダには前後方向に延長する走行用レールが枠型前部脚内および枠型後部脚内を通るように設けられ、前記走行用レールに、下部に旋回部を有する走行用トロリが走行可能に設けられ、前記旋回部に吊り装置が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、第2発明では、第1発明の自走式PC床版架設機において、枠型前部脚および枠型後部脚の左右両側にそれぞれ外側に張り出す一側部支持レールと他側部支持レールが設けられ、各一側部支持レールにそれぞれ支持される横行用トロリに渡って設けられた一側部防護足場兼支保工装置と、各他側部支持レールに支持される横行用トロリに渡って設けられた他側部防護足場兼支保工装置とが、桁を囲むように相互に接近および離反移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、第3発明のPC床版の架設工法においては、第1発明または第2発明の自走式PC床版架設機を使用して、自走式PC床版架設機をジャッキアップして前部レールから前部走行車輪を浮かせ、その前部レールの前部を前方にかつ前部レールの後端部を前部走行車輪の下に搬送移動して桁上に敷設し、前部レールを取り除いた区間の桁上にPC床版を架設した後、既設の床版上レールに接続するように前記PC床版上に新設の床版上レールを設け、次いで前部レールおよび床版上レールを利用して自走式PC床版架設機を次にPC床版を架設する区間に移動させる工程を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明の自走式PC床版架設機によると、枠内側が開放された枠型前部脚と枠型後部脚とをガーダの中間部に間隔をおいて前後の各枠型脚の上部を固定することにより、枠型前部脚と枠型後部脚との間の側方が開放されてPC床版を旋回可能な空間を確保することができ、ガーダに設けられた走行用レールに沿って走行する走行用トロリの旋回台に設けられた吊り装置を利用して、橋軸方向に短く橋軸直角方向に長いPC床版を橋軸方向に長い方を向けて前後の枠型脚間まで吊り下げ搬送した後、旋回回動して橋幅員方向に容易にPC床版を旋回回動して向きを直して設置することができる。
そのため、高架桁側部の狭い下部側道からPC床版を吊り上げることなく、自走式PC床版架設機から離れた後方の交通障害の少ない広い高架桁側部の側道または交通障害にならない径間の間からPC床版を適宜台車により自走式PC床版架設機の後部に搬送して、PC床版架設機によりPC床版を容易に鋼桁上に設置することができ、昼夜を問わず鋼桁上の高所においてPC床版の搬送・設置作業をすることができるので、PC床版の設置を効率よく短工期で経済的に施工することができる。
【0009】
第2発明によると、本発明の自走式PC床版架設機は、一側部防護足場兼支保工装置と他側部防護足場兼支保工装置とが、鋼桁を囲むように相互に接近および離反移動可能に構成されているため、並行する鋼桁間の間隔(PC床版の幅員変化)に応じて、一側部防護足場兼支保工装置と他側部防護足場兼支保工装置とを接近または離反させて防護足場およびその足場を利用した支保工を容易に配置することができ、作業者の安全を確保しながら街路の安全を確保することができ、しかも足場を含めてPC床版架設機全体を機械化することができる。
【0010】
第3発明によると、第1発明または第2発明の自走式PC床版架設機を使用して、狭い桁上でも効率よく容易に桁上にPC床版を架設することができ、また、自走式PC床版架設機を容易に次にPC床版を架設する桁上の区間に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、図1〜図5を参照して本発明の一実施形態の自走式PC床版架設機の構造について説明する。
【0012】
前後方向に延長する鋼製トラスガーダ1は、2径間よりも長く設定され、前後方向に延長するトラスガーダ1の中間部に、枠型前部脚2と枠型後部脚3とがほぼ一径間の間隔と同じ長い配置間隔で配置され、鋼製ロ字状の枠型前部脚2における上部横杆4の中間部が溶接等により固定され、また、鋼製ロ字状の枠型後部脚3の上部横杆4の中間部が固定され、各枠型前部脚2および枠型後部脚3は鋼製ロ字状の枠型フレームとされ枠内を開放空間とし、PC床版の搬送・旋回あるいはレールの搬送を可能にしている。前記の枠型前部脚2および枠型後部脚3は少なくともPC床版旋回可能な間隔をおいて配置される。
【0013】
各枠型前部脚2および枠型後部脚3の下部には、左右方向に間隔をおいて走行用車輪5を備えていると共にこれを保持する車輪支持部にはレール側面に係合するガイドローラ6を備え(図4参照)、かつ枠型前部脚2の左右両側にはそれぞれ架設機昇降用ジャッキ7を備えている。枠型後部脚3に設けられている走行用車輪5は、図示の形態では、架設されたPC床版8上に設置された床版上レール9を走行し、空気圧式ゴムタイヤ製の走行用車輪5とされている。また、枠型前部脚2に設けられた走行用車輪5は、ゴム製の車輪とされ、桁37上に架設された前部レール40上を走行する形式とされている。
【0014】
さらに、図3,図5に示すように、前記トラスガーダ1の前後両側には、ほぼトラスガーダ1の全長にわたって前後方向に延長するように左右両側に走行用レール10が設けられ、その左右両側の走行用レール10には、トロリフレームの上部の前後の左右両側に前後方向に間隔をおいてそれぞれ走行車輪11を有する自走式トロリ12が前後方向に走行可能に吊り下げ支持されて、トラスガーダ1の前後方向の全長にわたり走行可能とされている。
【0015】
また、1台の自走式トロリ12が前記一対の走行用レール10に支持され、前記自走式トロリ12の左右方向の寸法は、各枠型前部脚2および枠型後部脚3の左右の縦枠13の内側間隔よりも小さく設定されており、したがって、1台の自走式トロリ12は、ほぼトラスガーダ1の前後方向の全長にわたって走行可能に構成されている。
【0016】
前記走行用トロリ12のフレーム14の下部には、旋回支持台15の上部が固定され、その旋回支持台15の下部には、環状外歯16を有する旋回台17が旋回可能に支持され、図示省略の駆動装置により旋回される環状外歯16の縦中心軸線を中心として旋回可能に支持されている。例えば、前記旋回支持台15側に設けられた駆動装置(図示省略)の出力軸に固定の駆動歯車が前記環状外歯車16に噛み合わされて、前記旋回台17は正旋回または逆旋回可能に構成されている。
【0017】
前記のトラスガーダ1,各枠型前部脚2および枠型後部脚3並びにこれらの車輪5,架設機昇降用ジャッキ7および自走式トロリ12並びに吊り装置18等により自走式PC床版架設機39が構成されている。
【0018】
前記の旋回台17の下部には吊り装置18が設けられている。図示の形態の吊り装置18では、前記旋回台17に設けられた吊り杆19に、電気チェーンブロック20の上部(例えば、上部フックあるいは上部環状部)が吊り下げ係止されて、前記電気チェーンブロック20は、旋回台17の旋回により旋回可能に構成されている。
【0019】
したがって、旋回台17の旋回により前記電気チェーンブロック20は旋回され、電気チェーンブロック20から繰り出されるリンクチェーンの下フック21に吊り下げ条体22を介して吊り下げ支持される新設のPC床版8を、例えば90度等適宜の角度、回動することができる。
【0020】
このように構成しているので、橋軸方向の巾が短く、かつ橋軸直角方向の長さ寸法の長い新設のPC床版8を、橋軸直角方向の長い部分を橋軸方向に向いた状態で、既設側の床版上レール9上を走行する運搬台車23によりトラスガーダー1の走行用レール10直下まで搬送し、運搬台車23上の前記PC床版8を、自走式トロリ12の下部の吊り装置18により吊り上げると共にPC床版8をその姿勢の状態で橋軸方向に吊り下げ搬送して、枠型後部脚3と枠型前部脚2との間にPC床版8が位置するように搬送し、前記旋回台17を90度旋回させることで、PC床版8を90度回動させて所定の配置姿勢にすることができ、その状態で設置位置まで搬送し、吊り降ろして所定の設置位置に設置することができる。
【0021】
なお、PC床版8の設置位置が、枠型後部脚3と枠型前部脚2とのほぼ中央部付近の位置では、その位置で前記旋回台17を90度旋回させ、吊り降ろして所定の位置に設置すればよく、PC床版を旋回する位置は、適宜、設置場所に応じて、枠型後部脚3と枠型前部脚2間で行なえばよい。
【0022】
図示の形態では、枠型後部脚3の左右の縦枠13の間隔が、設置される状態におけるPC床版8の橋軸直角方向(左右方向)の寸法よりも狭い間隔とされ、かつ、PC床版8の橋軸方向の寸法は、枠型後部脚3の左右の縦枠13間の間隔よりも短い寸法とされているため、前記のように、全てのPC床版8を90度旋回して設置するようにしている。
【0023】
各枠型後部脚3および枠型前部脚2の下部には、それぞれ左右方向の横方向外側に張り出すHビームからなる一側部支持レール24aと他側部支持レール24bの基端部が固定されて横行用レールが形成されると共に、前記各一側部支持レール24aと他側部支持レール24bの中間部と各縦枠13の中間部とは斜材により連結されて、前記各一側部支持レール24aと他側部支持レール24bとの横行用レールは支持されている。
【0024】
左右方向に間隔をおく一側部側および他側部側の各支持レール24には、自走式等の横行用トロリ25が左右方向の位置調整可能に架設され、左右方向の一方における前部側および後部側の各横行用トロリ25における各フレーム26の外側下部(桁に離反する外側下部)にわたって、前後方向にほぼ一径間にわたって延長する防護足場フレーム27aの上部が溶接またはボルト等の固定手段により取付けられ、また、左右方向の他方における前部側および後部側の各トロリフレーム26の外側下部(桁に離反する外側下部)にわたって前後方向にほぼ一径間にわたって延長する防護足場フレーム27bの上部が溶接またはボルト等の固定手段により取付けられている。
【0025】
左右の各防護足場フレーム27a,bの下部には、それぞれ防護足場フレーム27a,bの前後方向の全長にわたって設けられ、かつ桁側に向かって内向きに張り出す水平な固定足場板28の基端部が固定されている。また、図示を省略するが、前記の防護足場フレーム27の外側面には、縦防護用ネット29が張設される。
【0026】
前記の自走式等の横行用トロリ25の左右方向の位置調整は、図示省略の横行駆動装置に付属するブレーキシュウによって一時的に固定した状態で、横行用トロリフレーム26と一側部支持レール(または他側部支持レール)24の横行用レールとに孔を設けて、ピンまたはボルト・ナット等の着脱可能な位置固定金具により前後方向に位置調整可能に構成される。
【0027】
前記各固定足場板28の桁側に向かう内側下部には、防護用ネット支持部材30が縦軸31を中心として、ロータリアクチエータ等の旋回駆動装置32により旋回位置調整可能に回動可能に取付けられている。左右方向の一方側の各防護用ネット支持部材30aにおける水平な旋回回動用横杆38にわたって防護用ネット33aが張設されると共に前記各防護用ネット支持部材30に取付けられ、また、左右方向の他方側の各防護用ネット支持部材30にわたって防護用ネット33bが張設されていると共に取付けられて、防護用ネット33a,33bは各防護用ネット支持部材30a(30b)により支持されている。
【0028】
左右方向の一方の一側部支持レール(横行用レール)24aと各横行用トロリ25と防護足場フレーム27aと固定足場板28と防護用ネット支持部材30および防護用ネット29,33aにより、左右方向に移動可能な一方の防護足場装置が構成され、その防護足場装置に図示を省略するが傾倒可能な伸縮式支柱等の支保工が各固定足場板28等に付属されて防護足場兼支保工装置34aが構成され、また、左右方向他方側の他側部支持レール(横行用レール)24と各横行用トロリ25と防護足場フレーム27と固定足場板28と防護用ネット支持部材30および防護用ネット29,33により、左右方向に移動可能な他方の防護足場装置が構成され、その防護足場装置に図示を省略するが傾倒可能な伸縮式支柱等の支保工が足場等に付属されて防護足場兼支保工装置34bが構成されている。なおまた、図示を省略するが、各防護足場兼支保工装置34a,34bにおける旋回回動用横杆38に支持させるように伸縮式支柱などの着脱可能な支保工を立設させて型枠を突っ張り支持させるようにすることもできる。
【0029】
左右方向の一方および他方の各防護足場兼支保工装置34a,bが左右方向に移動可能にされている構成により、高架橋骨組みにおける橋軸方向に並行する橋軸直角方向の桁37の間隔が変化しても、あるいは前記桁37に取付けられる橋軸直角方向に張り出す片持ち式支持梁35の張り出し寸法が変化しても対応可能に構成されている。例えば、橋脚36上に2列に並行する鋼桁間隔が広幅とされた場合には、図5に示すように、前記各桁37および片持ち式支持梁35の側部近傍に、足場および防護用ネットを配設したり、狭巾に対しては、図3に示すように、前記各桁37および片持ち式支持梁35の側方および下方全体を囲むように防護足場を形成することができる。
このようにして、防護足場を有する自走式PC床版架設機39が構成されている。
【0030】
なお、図示を省略するが、前記実施形態の自走式PC床版架設機に型枠板あるいは養生設備(図示省略)を固定足場板28に配置して付属させておくことができる。このようにしておくと、PC床版8を架設しない橋軸方向端部の場所打ち床版部では、前記の自走式PC床版架設機により、橋軸直角方向に配置する型枠板を支持して場所打ちコンクリートを打設し、養生硬化させて場所打ち床版を構築する場合に有利である。
【0031】
枠型後部脚3と枠型前部脚2との間の間隔は、ほぼ一径間長の長さ寸法とされ、また前部レール40の長さ寸法もほぼ同様な寸法とされている。
【0032】
次に、図1および図6〜図8を参照して、本発明の移動式架設機を使用して並行する桁37上にPC床版を架設施工する方法について説明する。
【0033】
先ず、図1および図6の状態は、並行する桁37上にわたって、橋軸直角方向に間隔をおくと共に橋軸方向にPC鋼材挿通孔を有するPC床版8が多数並べて架設され、各PC床版8に橋軸方向にPC鋼材が挿通配置され、PC床版8の上部間に目地部モルタルが充填硬化され、PC鋼材が緊張・定着されて一体化された既設のPC床版8a上にレール(床版上レール)9が設置され、本発明の自走式架設機39の枠型後部脚3におけるゴムタイヤを備えた車輪5が前記床版上レール9上に載置され橋軸方向の新設側に近接した位置に進行した状態であると共に、新たにPC床版8を架設しようとする径間の前部レール40(受け金具47付きのレール)が取り外されて、その前部レール40をさらに新設側の径間の鋼桁37上に移設され、その前部レール40上に自走式架設機39における枠型前部脚2の前部車輪5が載置されている状態である。
【0034】
図6に示す状態で、床版上レール9上を移動する後方から運搬台車23によりPC床版8を、自走式架設機39の後部直下に搬送し、次いで前記自走式架設機39に付属する橋軸方向に搬送可能な吊り装置18により、前記新たに架設用のPC床版8を吊り上げて橋軸方向新設側に搬送する。なお、前記運搬台車23上にPC床版8を載置する工程は、図示を省略するが、交通障害が比較的少ない後方の桁架設前の鋼脚間の広い地上または桁架設後において、側道等の道路上に移動式クレーンを配置して、移動式クレーンにより吊り上げ載置する。
【0035】
前記のPC床版8は橋軸直角方向を橋軸方向に向けて搬送しているため、枠型前部脚2と枠型後部脚3との間の適当な位置において、吊り装置18を90度旋回させることで、前記PC床版の向きを90度回転させて所定の配置姿勢にし、この状態で、既設側のPC床版8に隣接するように搬送して桁37上に吊り下げ設置する。
【0036】
前記のPC床版8の搬送設置工程を必要回数繰り返して、図7に示すように多数のPC床版8を所定の位置に搬送設置する。PC床版8と鋼桁37とは、鋼桁37に固定のスタッドボルト52をPC床版8の上下に貫通した矩形状貫通孔に位置させ、モルタルを充填して一体化する。
【0037】
図8に示すように、次の橋脚36付近または橋脚36上まで、所定枚数のPC床版8を架設した後、図11aに示すように、PC床版8相互間の目地部41にPC鋼材挿通孔相互が連通するようにシースを配置し、目地部に無収縮モルタル42を充填し硬化させた後、前記各PC床版8の橋軸方向のPC鋼材挿通孔43に渡ってPC鋼材44を挿通配置し、各PC鋼材44の端部を端部PC床版8の端部に緊張定着し(図11b参照)、各PC床版8を一体化する。(図11a〜c参照)
【0038】
端部のPC床版8には、場所打ちコンクリートによる床版44と一体化するための埋め込み連結鉄筋45を張り出させておき、前記場所打ちコンクリートによる床版44と一体化し、既設床版8aを構築する。(図11b参照)
【0039】
なお、必要に応じて、PC床版端部の場所打ち床版およびPC床版間の調整目地部にコンクリート(または無収縮モルタル)を打設する場合の型枠(図示を省略)はトラスから吊られている足場、養生装置を使って組立てコンクリート(または無収縮モルタル)を打設する。
【0040】
次いで、自走式PC床版架設機39における枠型後部脚3の架設機昇降用ジャッキ7、または前後の枠型脚2,3における架設機昇降用ジャッキ7を伸長して鋼桁37に着座させると共にさらに伸長して、自走式PC床版架設機39の後部または全体をジャッキアップさせる。なお、自走式PC床版架設機39を橋軸方向に前進移動するときに、防護足場装置34およびこれに付属する旋回回動用横杆38および防護用ネット33が橋脚36等に干渉しないように、適宜後退移動しておく。
【0041】
この状態では、枠型後部脚3に付属している車輪5が既設床版上レール9の端部付近で浮いている状態で、その既設床版上レール9の端部に接続するように、橋軸方向に一体化されたPC床版8上に並行する一対のレールが梯子状等に組まれた新設の床版上レール9を架設設置する。
【0042】
前記の新設の床版上レール9を架設するには、後方の搬送台車23等により床版上用のレール7をPC床版架設機39の後部に搬送し、電気チェーンブロック20により吊り上げ搬送して新設のPC床版8上に設置すればよい。
【0043】
この新設の床版上レール9の長さは、自走式PC床版架設機39における前後の枠型脚2,3の中心間隔をほぼ一径間としている場合(図示の場合)に、ほぼ一径間分の長さであることが一回の設置作業ですむので望ましい。床版上レール9は適宜PC床版8に着脱可能な固定手段により固定され、例えばPC床版8にアンカー孔を穿設して、雌ねじインサートを埋め込み配置してボルト等により床版上レール9の下部を固定する。
【0044】
前記のように新設のPC床版8上に床版上レール9を架設した後、架設機昇降用ジャッキ7を短縮してPC床版架設機39の車輪5を床版上レール9に載置し、この状態で、新設の床版上レール9と前部レール40上とに、それぞれPC床版架設機39の枠型後部脚3に付属する車輪5および枠型前部脚2に付属する車輪5を転動するようにPC床版架設機39を新たにPC床版8を架設するほぼ一径間分の新設区間に前進移動する。なお、前部レール40は断面T字状の鋼製受け金具47を介して鋼桁37等に支持されている。受け金具47に前部レール40はボルト48により着脱可能に取付けられ、受け金具47は鋼桁37等にボルト等の適宜の手段により固定されている。前記の受け金具47は鋼桁37上に固定されている橋軸方向2列のスタッドボルト52と前部レール40が干渉しないように受け金具47を介して支承され、受け金具47にはスタッドボルト52の頭部を収容するための溝53を備えている。
【0045】
この状態で、前部レール40を取り除くと、その区間の鋼桁37上に新たにPC床版8を架設することができるので、運搬台車23によりPC床版架設機後部に搬送されるレール吊り下げ治具49を電気チェーンブロック20により枠型前部脚2および枠型後部脚3間に位置するように吊り下げ搬送し、また鋼桁37等から受け金具47を取り外すと共に、前部レール40にレール吊り下げ治具49の連結金具50を連結した後、自走式PC床版架設機39における枠型前部脚2の架設機昇降用ジャッキ7、または前後の枠型脚2,3における架設機昇降用ジャッキ7を伸長して鋼桁37に着座させると共にさらに伸長して、自走式PC床版架設機39の前部または全体をジャッキアップさせる。なお、前記の前部レール40は並行する一対レールが梯子状等に組まれた状態で搬送設置すると効率がよい。
【0046】
この状態では、枠型前部脚2に付属している車輪5が前部レール40の前端部付近で浮いている状態であるので、自走式トロリ12を前進走行させて、レール吊り下げ治具49および受け金具付き前部レール40を前方の区間に吊り下げ移動し、前部レール40の後端部を枠型前部脚下部の車輪の下側に挿入するように吊り下げ降下させて、受け金具47を鋼桁37等にボルト等により取付けた後、架設機昇降用ジャッキ7を短縮駆動して、自走式PC床版架設機39を前部レール40上に載置した後、レール吊り下げ治具49を電気チェーンブロック20および運搬台車23により後方の適宜の場所に搬送する。
【0047】
その後、防護足場装置34およびこれに付属する旋回回動用横杆38および防護用ネット33を橋軸直角方向に前進または旋回回動して所定の位置に設置した後、前記と同様に、並行する鋼桁37上の橋軸方向にPC床版8を架設していく。
【0048】
このような工程を必要回数繰り返して、鋼桁37上の橋軸方向にPC床版8を架設していくと共に端部の場所打ち床版を構築する。
【0049】
以上のPC床版架設機を使用したPC床版の架設手順を簡単に記すと以下のようになる。
(1)地上から移動式クレーンにより運搬台車23にPC床版8を載置する。
(2)PC床版8を載置した運搬台車23を移動して自走式架設機39まで移動する。
(3)自走式架設機39に付属する走行式トロリおよびその下部に懸架した電気チェーンブロックにより、PC床版8を吊り上げ、移動、旋回、吊り下げ下降を行なって桁37上に配置する。
(4)前記(1)〜(3)を繰り返して、必要組数のPC床版8を桁37上に設置する。
(5)自走式架設機39を昇降用ジャッキ7によりジャッキアップ後、床版上レール9をPC床版8上に、トロリ付き電気チェーンブロック20を使用し配置する。
(6)昇降用ジャッキ7を短縮して、自走式架設機39をジャッキダウン後、架設進行方向へ移動する。
(7)自走式架設機39における昇降用ジャッキ7を伸長しジャッキアップ後、トロリ付き電気チェーンブロック20により、PC床版配置予定の前部レール40を吊り上げて、前方に移動し、次径間へ前部レール40を敷設する。
(8)前記(1)〜(7)の作業を繰り返す。
【0050】
このように本発明の移動式架設機39を使用すると、高架桁37の下方の道路(側道51)が狭い場合にも、移動式架設機39の近傍の道路に移動クレーン車(図示を省略した)を配置することなく、高架桁37上にPC床版8を効率よく設置することができる。
【0051】
本発明を実施する場合、橋脚中心間(支点間)に合うように枠型前部脚2と枠型後部脚3を配置した架設機とするとよい。
【0052】
前記実施形態では、各防護足場兼支保工装置が一径間分の長さ寸法とされているので、PC床版架設機を移動させるだけで、橋脚間に確実に防護足場兼支保工装置を容易に構成することができる。
【0053】
また、前記実施形態では、各防護足場兼支保工装置における固定足場板の内側先端下部に、回動して固定足場板から突出したり退避可能な旋回回動用横杆を備えた防護用ネット支持部材を設けて防護用ネットを支持するだけで、防護用ネットを展開したり退避位置に折り畳むように回動して退避することができる。
【0054】
また、前記実施形態では、防護用ネット支持部材を所定角度旋回させるだけで、防護用ネットを展開したり、退避させることができ、したがって、橋脚間の鋼桁幅の狭い区間では、桁下側全体を包むように展開させたり、橋脚間の鋼桁幅の広い区間では、桁下側を囲むように展開させたりすることができ、また、次の橋脚間に移動するときには、退避させて橋脚部外側を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態の自走式PC床版架設機を高架桁上で使用している状態を示す概略側面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】(a)は鋼桁上に設けられる受け台と、前部側レールと走行車輪との関係を示す概略正面図、(b)は一部縦断側面図である。
【図5】幅員が広い場合に各横行用トロリおよび防護足場装置を外側に移動した状態を示す一部縦断正面図である。
【図6】自走式PC床版架設機を使用して鋼桁上にPC床版を架設する場合の各装置の配置状態を示す概略側面図である。
【図7】自走式PC床版架設機を使用して、鋼桁上にPC床版を架設した状態を示す概略側面図である。
【図8】自走式PC床版架設機をジャッキアップして、前部レールを次の径間側に吊り下げ搬送して架設する直前の状態を示す概略側面図である。
【図9】橋軸方向のPC床版の配置形態と場所打ち床版部の配置形態の一例を示す概略平面図である。
【図10】図9におけるPC床版部の一部を拡大して示す概略平面図である。
【図11】(a)はPC床版相互の目地部およびPC床版相互に渡ってPC鋼材を挿通配置している状態を示す縦断側面図、(b)はPC床版部と場所打ち床版部の連結部付近を示す縦断側面図、(c)は橋軸方向の中間部のPC床版でPC鋼材を定着する場合の構造を示す縦断側面図である。
【図12】(a)および(b)はそれぞれPC鋼材挿通孔を有するPC床版の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 鋼製トラスガーダ
2 枠型前部脚
3 枠型後部脚
4 上部横杆
5 走行用車輪
6 ガイドローラ
7 架設機昇降用ジャッキ
8 架設されたPC床版
9 床版上レール
10 走行用レール
11 走行車輪
12 自走式トロリ
13 縦枠
14 走行用トロリのフレーム
15 旋回支持台
16 環状外歯
17 旋回台
18 吊り装置
19 吊り杆
20 電気チェーンブロック
21 下フック
22 吊り下げ条体
23 運搬台車
24a 一側部支持レール(横行用レール)
24b 他側部支持レール(横行用レール)
25 横行用トロリ
26 横行用トロリのフレーム
27a 防護足場フレーム
27b 防護足場フレーム
28 固定足場板
29 縦防護用ネット
30 防護用ネット支持部材
31 縦軸
32 旋回駆動装置
33a 防護用ネット
33b 防護用ネット
34a 防護足場兼支保工装置
34b 防護足場兼支保工装置
35 支持梁
36 橋脚
37 桁
39 自走式架設機
40 前部レール
41 目地部
42 無収縮モルタル
43 PC鋼材挿通孔
44 場所打ち床版
45 埋め込み連結鉄筋
46 架設機昇降用ジャッキ
47 受け金具
48 ボルト
49 レール吊り下げ金具
50 連結金具
51 側道
52 スタッドボルト
53 溝
54 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁上にPC床版を架設する自走式PC床版架設機において、前後方向に延長するガーダの中間部に、枠内側が開放された枠型前部脚および枠型後部脚が間隔をおいて配置されると共に前記枠型前部脚および枠型後部脚の上部が固定され、枠型前部脚および枠型後部脚には架設機昇降用ジャッキを備え、前記ガーダには前後方向に延長する走行用レールが枠型前部脚内および枠型後部脚内を通るように設けられ、前記走行用レールに、下部に旋回部を有する走行用トロリが走行可能に設けられ、前記旋回部に吊り装置が設けられていることを特徴とする自走式PC床版架設機。
【請求項2】
枠型前部脚および枠型後部脚の左右両側にそれぞれ外側に張り出す一側部支持レールと他側部支持レールが設けられ、各一側部支持レールにそれぞれ支持される横行用トロリに渡って設けられた一側部防護足場兼支保工装置と、各他側部支持レールにそれぞれ支持される横行用トロリに渡って設けられた他側部防護足場兼支保工装置とが、桁を囲むように相互に接近および離反移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式PC床版架設機。
【請求項3】
請求項1または請求項2の自走式PC床版架設機を使用して、自走式PC床版架設機をジャッキアップして前部レールから前部走行車輪を浮かせ、その前部レールの前部を前方にかつ前部レールの後端部を前部走行車輪の下に搬送移動して桁上に敷設し、前部レールを取り除いた区間の桁上にPC床版を架設した後、既設の床版上レールに接続するように前記PC床版上に新設の床版上レールを設け、次いで前部レールおよび床版上レールを利用して自走式PC床版架設機を次にPC床版を架設する区間に移動させる工程を繰り返すことを特徴とするPC床版の架設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−28881(P2006−28881A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209092(P2004−209092)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】