説明

臭気をマスキングした内服固形製剤

【課題】不快な臭気を呈するシステイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤を提供する。
【解決手段】システイン類及びその塩類、軽質無水ケイ酸、並びにイソマルトを含有する組成物を湿式造粒することにより得られる、システイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
不快な臭気を呈するシステイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
システイン類を配合する製剤としては、ビタミン主薬製剤、カルシウム主薬製剤、ビタミン含有保健薬などに配合される。その効果はしみ・そばかす・日やけ・かぶれなどによる色素沈着症、全身倦怠、二日酔い、にきび、湿疹、かぶれ、じんましん、肌あれ、にきび、口内炎、皮膚炎、口角炎、口唇炎、舌炎などの治療、歯茎からの出血、鼻出血などの出血予防、肉体疲労、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時の滋養強壮など各種の治療に多く使用されている。
【0003】
しかし、システイン類は特有な臭気を持つ成分であり、これはシステイン類がアミノ酸の1つで、2−アミノ−3−スルファニルプロピオン酸と。側鎖にチオール基持つことによるものと考えている。この臭気はシステイン類に特有なものでありマスキングが必要なものである。このシステイン類を配合してなる固形製剤はその特有臭いより、糖衣錠あるいはフィルムコーティング錠と限定された剤形となっている。その他の剤形、顆粒剤、散剤、素錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠などでは十分なその特有な臭い対するマスキングが施せなく品質を確保する事ができなかった。そのため、糖衣錠あるいはフィルムコーティング錠内に必要摂取量のシステイン類並びにその他の有効成分、例えば、アスコルビン酸、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド、ニコチン酸、パンテノール、チアミン並びにチアミン誘導体、ガンマーオリザノールなどの必要摂取量を配合するためにはその剤形が大きくなる、あるいは錠数が増えて1回あたりの服用錠数が増えるなど服用に負担がかかる結果となった。
【0004】
そこで、従来の固形製剤のシステイン類の不快な味並びに臭いをマスキングする方法として、薄層糖衣錠とする技術(特許文献1参照)、粒子径を限定する技術(特許文献2参照)、システイン類を核粒子としコーティングを施した技術(特許文献3参照)、酸味並びに甘味を施す技術(特許文献4参照)、システイン類及び水膨潤性物質を配合する技術(特許文献5参照)、フィルムコーティング錠に関する技術(特許文献6参照)などが考案されている。薄層糖衣錠にする技術並びにフィルムコーティング錠はコーティングといった工程が依然存在し、工程に時間を要する、あるいは操作とし簡便性に問題があった。また、その他の技術にはマスキング効果が十分ではないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−179559号公報
【特許文献2】特開2003−155232号公報
【特許文献3】特開2004−161701号公報
【特許文献4】特開2004−161700号公報
【特許文献5】特開2005−298528号公報
【特許文献6】特開2008−201711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は不快な臭気を呈するシステイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題点を踏まえて鋭意研究を重ねた結果、システイン類を含有する経口用固形製剤において、軽質無水ケイ酸及びイソマルトを配合することにより、システイン類のその特有な臭気をマスキングする事ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)〜(6)に揚げるものである。
【0009】
(1)システイン類及びその塩類、軽質無水ケイ酸、並びにイソマルトを含有する組成 物を湿式造粒することにより得られる、システイン類のその特有な臭気をマスキングさ れた経口用固形製剤。
【0010】
(2)軽質無水ケイ酸の配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0. 5倍である(1)に記載の経口用固形製剤。
【0011】
(3)イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0.3倍 以上である(1)又は(2)に記載の経口用固形製剤。
【0012】
(4)イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0.6倍 以上である(1)〜(3)に記載の経口用固形製剤。
【0013】
(5)イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の1.0倍 以上である(1)〜(4)に記載の経口用固形製剤。
【0014】
(6)イソマルトは水に溶解させ水溶液としてシステイン類及びその塩類、軽質無水ケ イ酸を含有する組成物に練合わせ、次いで湿式造粒する経口用固形製剤の製造法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、システイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤を提供する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシステイン類の特有の臭気のマスキング方法は口腔内崩壊錠、チュアブル錠、トローチ錠、素錠、カプセル剤、顆粒剤または散剤などの経口用固形製剤が挙げられるが、経口用固形製剤であれば特に限定されることなく適用できる。
【0017】
本発明の製剤にはシステイン類に加えて他の薬効成分を適宜配合する事ができる。他の薬効成分の具体例としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムなどのビタミンC群、チアミン塩類、ピリドキシン塩類、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、ニコチン酸アミド、ニコチン酸、パンテノール、ビオチン、シアノコバラミン、葉酸などのビタミンB群、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールコハク酸エステルなどのビタミンE群、タウリン、アスパラギン酸塩類、グリシン、アルギニン塩類などのアミノ酸、ニンジンエキス、ヨクイニンエキス、シャクヤクエキス、トウキエキスなどの生薬類を適宜配合する事ができる。
【0018】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、乳糖水和物、デンプン、結晶セルロース、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの賦形剤、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、部分アルファー化デンプン、などの結合剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、嬌味剤、香料及び色素などを適宜配合する事ができる。
【0019】
本発明の経口用固形製剤の調製方法は特に制限されず、通常の経口用固形製剤を調製するのに必要な各種製法を適宜選択して、常法により調製する事ができる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例及び、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにイソマルト118.2gを精製水に溶解させ197.1gに溶解させた溶解液を加えて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【実施例2】
【0022】
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにイソマルト59.1gを精製水に溶解させ98.6gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【実施例3】
【0023】
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにイソマルト29.6gを精製水に溶解させ49.3gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0024】
(比較例1)
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこに精製水125.5gを加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0025】
(比較例2)
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこに白糖180gを精製水に溶解させ300gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0026】
(比較例3)
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにエリスリトール126gを精製水に溶解させ210gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0027】
(比較例4)
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにヒプロメロース15gを精製水に溶解させ150gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0028】
(比較例5)
システイン100g及び軽質無水ケイ酸50gを万能型混合機にて均一に混合し、そこにマクロゴール6000 80gを精製水に溶解させ160gに溶解させた溶解液を加えて、万能型混合機にて練合し、乾燥した。この練合物を4号規格瓶に入れ栓をして密閉して臭いを試験用の検体とした。
【0029】
(試験例)
前記実施例1〜3及び比較例1〜5の試験用検体について、それぞれ5名の専門パネラーにより官能試験を実施し、システイン特有の臭気について評価した。服用性の評価としては下記評価基準によるものとし、0から5点の6段階の点数評価によって評価した。評価点数の平均値を配合成分とともに表1に示した。
−臭いの評価−
5点:強烈な臭い
4点:強い臭い
3点:楽に感知できる臭い
2点:何の臭気であるか分かる程の弱い臭気
1点:やっと感知できる臭い
【0030】
(試験結果)
表1及び表2からも明らかなように、官能試験の結果、本発明のシステインはその特有な臭気が改善されていることが判明した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン類及びその塩類、軽質無水ケイ酸、並びにイソマルトを含有する組成物を湿式造粒することにより得られる、システイン類のその特有な臭気をマスキングされた経口用固形製剤。
【請求項2】
軽質無水ケイ酸の配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0.5倍である請求項1に記載の経口用固形製剤。
【請求項3】
イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0.3倍以上である請求項1又は2に記載の経口用固形製剤。
【請求項4】
イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の0.6倍以上である請求項1〜3に記載の経口用固形製剤。
【請求項5】
イソマルトの配合量が、重量比でシステイン類及びその塩類の配合量の1.0倍以上である請求項1〜4に記載の経口用固形製剤。
【請求項6】
イソマルトは水に溶解させ水溶液としてシステイン類及びその塩類、軽質無水ケイ酸を含有する混合物に練合わせ、次いで湿式造粒する経口用固形製剤の製造法。

【公開番号】特開2012−136493(P2012−136493A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294838(P2010−294838)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(596178408)滋賀縣製薬株式会社 (5)
【Fターム(参考)】