説明

臭気発生警報装置

【課題】 放出動作の確実性、および臭気の拡散性を確保することができる臭気発生警報装置を提供する。
【解決手段】 臭気発生警報装置1は、異常事態の発生を検知する感知器4から異常事態が発生したことを示す異常情報が与えられると、回路部7によってイニシエータ9が動作され、イニシエータ9は、駆動部10のピストン19を変位させて、スプレー缶11をケーシング12に対して変位させ、スプレー缶11を放出状態に切換えて、スプレー缶11に充填される臭気液を微粒子状に放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気を発生させることによって火災等の異常事態を報知する臭気発生警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術の火災警報装置は、火災により発生する熱、煙、ガスおよび炎の光などを検出し、それらを単独で、または誤報等を防止するためにそれらを組合せて火災を判断するように構成される。このように検知された信号を、消火装置に与え、ベル等を鳴らすと共に、スプリンクラーなどを作動させていた。しかし、このような火災警報装置は、聴覚に障害のある人は気付きにくく、避難の開始が遅れる場合があった。
【0003】
このような聴覚に障害のある人達に対して、火災発生時に火災発生を報知できないという前記問題点を解決する警報装置が開示されている。この警報装置では、火災発生時に臭気を発散させることによって火災等の緊急事態を報知している(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−326326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来の技術では、様々な方法によって臭気を発生する装置が開示されているが、いずれの装置も機械的要素によって放出手段が構成されるので、腐食などによって緊急事態に確実に放出動作可能な構成ではない。また臭気が効率的に拡散できる構成でもなく、警告すべき人が臭気を認知するまで時間がかかるという問題がある。
【0006】
したがって本発明の目的は、放出動作の確実性、および臭気の拡散性を確保することができる臭気発止警報装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、臭気液が充填され、臭気液を放出する放出状態と放出停止状態とに切換可能なスプレー缶を収納可能な収納空間を形成するケーシングと、
前記ケーシングの収納空間に収納されたスプレー缶を、ケーシングに対して変位させることによって、放出停止状態から放出状態に切換える切換手段と、
異常事態の発生を検知する検知手段から異常事態が発生したことを示す異常情報が与えられると、前記切換手段によってスプレー缶をケーシングに対して変位させて、放出停止状態から放出状態に切換え動作させる制御手段とを含むことを特徴とする臭気発生警報装置である。
【0008】
また本発明は、前記切換手段は、通電すると伸縮する素材から成る作動部をさらに備え、
前記制御手段は、作動部に対して通電することによって、スプレー缶を変位させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記切換手段は、火薬を点火することによってガスを発生させ、ガスの圧力によってスプレー缶を変位させることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、前記切換手段によってスプレー缶を収納空間内で変位させるときに発生する衝撃を緩衝する緩衝手段をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異常事態の発生を検知する検知手段から異常事態が発生したことを示す異常情報が与えられると、制御手段によって切換手段を切換え動作される。切換手段は、スプレー缶をケーシングに対して変位させて放出状態に切換えて、スプレー缶に充填される臭気液を放出させることができる。したがって火災などの異常事態が発生すると、スプレー缶に充填されている臭気液を放出することができる。このようにスプレー缶を用いることによって、たとえばチューブ状の容器などの臭気液を充填している場合に比べて、臭気液を広範囲に拡散することができる。また切換手段は、スプレー缶をケーシングに対して変位させて放出状態を保持することができるので、スプレー缶が継続的に臭気液を放出させることができる。したがって所望の量の臭気液を放出させることができる。これによって臭気液を確実に、異常事態に対して避難すべき人まで短時間で拡散させることができ、異常事態であることを速やかに認知させることができる。したがって聴覚に障害のある人であっても、火災などの異常事態が発生したことを臭気ガスによって認識し、速やかに避難行動に移ることができる。
【0012】
また本発明によれば、切換手段は、通電すると伸縮する素材から成る作動部をさらに備える。制御手段は、作動部に対して通電することによって、スプレー缶を変位させる。このような素材から成る作動部に通電するという簡単な構成で、スプレー缶を変位させることができる。したがって切換手段を、小形化および軽量化することができる。
【0013】
また本発明によれば、切換手段は、火薬を点火することによってガスを発生させ、ガスの圧力によってスプレー缶を変位させる。このように火薬を点火することによって、極めて短時間でガスを発生させることができるので、異常情報に対する応答性を高めることができる。また火薬を用いることによって、切換手段を機械要素によって構成するよりも、腐食などによって切換動作不良が発生することを防止し、切換動作を確実に実行することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、切換手段によってスプレー缶を収納空間内で変位させるときに発生する衝撃が、緩衝手段によって緩衝されるので、スプレー缶が切換動作時に損傷することを防ぐことができる。これによって前述のように火薬を用いて急激にスプレー缶を変位させる場合であっても、スプレー缶の損傷を防ぎ、切換手段が確実にスプレー缶を放出状態に切換ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態の臭気発生警報装置1を簡略化して示す断面斜視図である。図2は、臭気発生警報装置1を簡略化して示す斜視図である。図3は、臭気発生警報装置1を備える警報システム2の電気的構成を示すブロック図である。警報システム2は、火災などの異常事態を検知すると、スプリンクラーなどの消火装置3を作動させる。消火装置3は、異常事態の場合、警報手段として機能する臭気発生警報装置1によって、異常事態であることを報知する。警報システム2は、図3を参照して、感知器4、消火装置3、臭気発生警報装置1、および他の警報手段として機能する警報ベル5ならびに警報灯6を含んで構成される。
【0017】
感知器4は、検知手段であって、異常事態の発生を検知し、異常事態が発生したことを検知すると異常事態が発生したことを示す異常情報を消火装置3に与える。感知器4は、たとえば火災により発生する熱、煙、ガスおよび炎の光などを検出し、それらを単独で、または誤報等を防止するためにそれらを組合せて火災を判断するように構成される。感知器4は、検知した情報に基づいて火災であると判断した場合、異常情報を消火装置3に与える。
【0018】
消火装置3は、感知器4と電気的に接続され、感知器4から異常情報が与えられると、消火動作を開始する。消火装置3は、たとえばスプリンクラーなどの消火手段、および排煙装置などを作動させる。また消火装置3は、感知器4から異常情報が与えられると、警報を発するように警報手段1,5,6を制御する。警報ベル5、警報灯6および臭気発生警報装置1は、警報手段であって、それぞれ消火装置3と電気的に接続され、消火装置3から異常情報が与えられると、警報を発する。警報ベル5は、警報音を発生し、警報灯6は発光し、臭気発生警報装置1は臭気を発生する。
【0019】
次に、図3を参照して、臭気発生警報装置1の電気的構成に関して詳細に説明する。臭気発生警報装置1は、回路部7、電源部8、イニシエータ9、駆動部10およびスプレー缶11を含んで構成される。図3では、理解を容易にするため、電気的に接続されていない駆動部10およびスプレー缶11を仮想的に示す。回路部7は、制御手段としての機能を有し、感知器4から異常情報が与えられると、イニシエータ9を動作させる。回路部7は、感知器4に電気的に接続され、感知器4から異常情報が与えられると、イニシエータ9に電流を供給する。イニシエータ9は、電流によって発熱し、イニシエータ9が備える点火剤(火薬)が着火する。点火剤が着火すると、火薬の熱によって、ガス発生剤が化学反応し、ガスが発生する。このガスの圧力によって駆動部10が動作し、スプレー缶11を変位させる。これによってスプレー缶11に充填される臭気液が放出される。したがってイニシエータ9および駆動部10は、切換手段としての機能を有し、スプレー缶11をケーシング12に対して変位させることによって、放出停止状態から放出状態に切換える。
【0020】
図4は、臭気発生警報装置1を示す断面図である。図1および図2を併せて参照して、臭気発生警報装置1の機械的構成に関して説明する。臭気発生警報装置1は、ケーシング12および電源スイッチ13をさらに含んで構成される。このような臭気発生警報装置1は、床に配設したり、壁に懸けたりする場合に好適に用いられる。ケーシング12は、予め定める軸線にそって延びる筒状部材からなり、その内部にはスプレー缶11を収納可能な収納空間および各部を収納可能な配置空間が形成される。配置空間は、収納空間に隣接して形成され、電源部8、駆動部10、イニシエータ9および回路部7が収納される。またケーシング12の外周部には、電源スイッチ13が設けられ、電源部8から回路部7への電気の供給状態を切換可能に構成される。
【0021】
回路部7は、端子台14、回路基板15、コンデンサ16およびコネクタ17を含んで構成される。端子台14は、ケーブルなどを介して感知器4と電気的に接続される部分である。端子台14は、図2に示すように、たとえばケーシング12の軸線方向の一端部に配置され、外部に露出して設けられる。端子台14は、回路基板15に電気的に接続される。したがって感知器4から異常情報は、端子台14を介して回路基板15に与えられる。
【0022】
電源スイッチ13は、回路部7に電気的に接続され、電源部8からの電圧の状態を切換可能に構成される。電源部8は、たとえば電池8によって実現され、臭気発生警報装置1に着脱自在に設けられ、臭気発生警報装置1に装着されることによって、回路基板15に電力を供給可能に構成される。電池8は、たとえば乾電池8など1次電池または充電池などの2次電池によって実現される。
【0023】
回路基板15は、電池8からの供給電力をイニシエータ9の火薬を着火させるために必要なエネルギーを予めコンデンサ16に充電する。回路基板15は、コンデンサ16およびコネクタ17に電気的に接続される。回路基板15は、端子台14から与えられる異常情報に基づいて、コンデンサ16に放電した電流をコネクタ17に与える。コネクタ17は、イニシエータ9に電気的に接続され、イニシエータ9をコンデンサ16からの電流を与えて作動させる。
【0024】
イニシエータ9は、前述したように回路部7によってコンデンサ16から与えられる電流によって作動し、ガスを発生する。発生したガスは、ケーシング12とイニシエータ9と駆動部10とによって形成される密閉空間18に放出され、密閉空間18内の圧力を上昇させる。このような密閉空間18は、オーリングによって気密性が保持されている。
【0025】
駆動部10は、前述しようたにイニシエータ9によって発生したガスによって動作する。駆動部10は、ピストン19と緩衝手段20とを含んで構成される。ピストン19は、密閉空間18を形成し、ケーシング12の軸線方向に沿って放出停止位置と放出位置とにわたって変位可能である。緩衝手段20は、スプレー缶11がケーシング12に対して変位するときに発生する衝撃を緩衝する。緩衝手段20は、本実施の形態ではばね部材20によって実現される。ばね部材20は、ピストン19が軸線方向一方へ向かうようにばね力を与える。
【0026】
スプレー缶11は、ケーシング12の軸線方向他方側に形成される収納空間に着脱自在に設けられる。スプレー缶11は、臭気液および圧縮空気などの圧縮ガスが充填され、圧縮ガスによって圧力を加えた臭気液をノズルヘッド21の細い孔から放出させることによって、臭気液を微粒子状に放出することができる。スプレー缶11は、臭気液を放出する放出状態と放出停止状態とにわたって切換可能に構成される。スプレー缶11は、たとえば圧縮ガスボンベによって実現される。スプレー缶11は、略円柱状であって、その軸線がケーシング12の軸線と略同軸となるように収納空間に設けられる。スプレー缶11の頂部は、ケーシング12の軸線方向他方側に設けられる。スプレー缶11は、臭気液を放出するノズルヘッド21、および臭気液と圧縮ガスとが充填される圧力容器22とを含む。スプレー缶11の頂部には、スプレー缶11に充填される臭気液を放出するノズルヘッド21が設けられる。スプレー缶11は、ノズルヘッド21と圧力容器22とが近接する方向に相対変位させることによって臭気液が放出される。圧力容器22は、収納空間内でノズルヘッド21に対して近接変位可能に設けられる。スプレー缶11が収納空間内に収納された状態で、スプレー缶11が放出停止状態にある場合、収納空間を形成するケーシング12の軸線方向他方側の端壁部12aは、圧力容器22のノズルヘッド21に臨む側の端面22aとは離間している。またノズルヘッド21は、スプレー缶11が収納空間内に収納された状態で、収納空間内でケーシング12に固定されて設けられる。
【0027】
ケーシング12は、ノズルヘッド21の放出口21aから臭気液が放出される方向である半径方向に沿って放出孔23が形成される。放出孔23は、半径方向外方に拡径するテーパ状に形成される。このように放出孔23をテーパ状に形成することによって、ノズルヘッド21から放出された微粒子状の臭気液が放出孔23に臨む内周面に付着することなく、効率的に拡散させることができる。このようなケーシング12および駆動部10は、イニシエータ9によって発生するガスの圧力によって不所望に変形しない材料が用いられ、たとえば真鍮、ステンレス鋼および合成樹脂などの材料が用いられる。
【0028】
図5は、スプレー缶11が放出状態にある場合の臭気発生警報装置1を示す断面図である。ピストン19は、イニシエータ9による圧力が作用していない自然状態では、ばね部材20のばね力によって軸線方向一方寄りの放出停止位置(図4参照)に位置する。前述したようにイニシエータ9によって発生したガスによって密閉空間18の圧力が上昇すると、ピストン19にガスの圧力が作用し、ばね部材20のばね力に抗して放出停止位置から軸線方向他方に向かって放出位置(図5参照)まで変位する。
【0029】
ノズルヘッド21は、ケーシング12によって変位が規制され、圧力容器22がケーシング12に対して放出停止状態となる缶停止位置(図4参照)から放出状態となる缶放出位置(図5参照)とにわたって変位可能に設けられる。図4に示すように、圧力容器22が缶放出停止位置にあり、ピストン19が放出停止位置にある場合、スプレー缶11の底部は、ピストン19の軸線方向他方側の面部が当接した状態にある。図5に示すように、ピストン19が変位して放出位置にある場合、ピストン19は圧力容器22の底部を軸線方向他方側に向かって押圧し、缶放出停止位置から軸線方向他方側に向かって缶放出位置まで変位させる。これによってケーシング12の軸線方向他方側の端壁部12aは、圧力容器22のノズルヘッド21に臨む側の端面22aと当接する。ノズルヘッド21はケーシング12によって固定されているので、圧力容器22がノズルヘッド21に対して缶放出位置まで近接する方向に変位することによって、ノズルヘッド21から臭気液が放出される。イニシエータ9によって発生したガスは、密閉空間18にあるので、そのガスによる圧力はピストン19を放出位置(図5参照)まで変位させ、その状態を保持する。したがって圧力容器22も缶放出位置にある状態が保持されるので、ノズルヘッド21からは臭気液が継続的に放出される。
【0030】
前述のようなスプレー缶11に充填される臭気液の臭気薬剤は、異常事態であることを伝え、避難行動を促進することを前提に選定される。臭気薬剤として、たとえばミント臭およびわさび臭を有する薬剤をベースに製造される。またスプレー缶11に充填されるガスは、火炎にも燃焼しないガスまたは空気が選定される。
【0031】
またスプレー缶11は、臭気薬剤の化学変化を通じて臭気ガスを発生させ、その推進力で臭気物質を噴射させるように構成してもよい。臭気薬剤の化学反応によって発生したガス圧が、臭気液の気体化を可能にする。このように臭気液をミスト状に拡散させることによって、短時間で広範囲に臭気液を拡散することができる。
【0032】
充填される臭気液の量および圧縮ガスの量は、臭気発生警報装置1が設置される設置空間の体積に基づいて選択される。スプレー缶11を放出状態にすることによって、充填される臭気液が不足することなく、充分に設置空間内に拡散して、設置空間内にいる人などが臭いに気が付くような量が選択される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態の臭気発生警報装置1では、異常事態の発生を検知する感知器4から異常事態が発生したことを示す異常情報が与えられると、回路部7によってイニシエータ9が動作される。イニシエータ9は、駆動部10のピストン19を変位させて、スプレー缶11をケーシング12に対して変位させる。これによってスプレー缶11を放出状態に切換えて、スプレー缶11に充填される臭気液を微粒子状に放出させることができる。したがって火災などの異常事態が発生すると、スプレー缶11に充填されている臭気液を放出することができる。このようにスプレー缶11を用いることによって、たとえばチューブ状の容器などの臭気液を充填している場合に比べて、圧縮ガスによって臭気液を微粒子状にすることができ、広範囲に拡散することができる。また駆動部10は、スプレー缶11をケーシング12に対して変位させて放出状態にするので、スプレー缶11が継続的に臭気液を放出させることができる。したがって所望の量の臭気液を放出させることができる。これによって臭気液を確実に、異常事態に対して避難すべき人まで短時間で拡散させることができ、異常事態であることを速やかに認知させることができる。したがってたとえば聴覚に障害のある人およびペットなどの動物であっても、火災などの異常事態が発生したことを臭気ガスによって認識し、速やかに避難行動に移ることができる。また臭気発生警報装置1は、感知器4の検知対象に応じたセンサを採用することによって、火災だけでなく、あらゆる危険および異常事態の警報装置として、幅広く活用することができる。
【0034】
また本実施の形態では、スプレー缶11をケーシング12に対して変位させて放出停止状態から放出状態に切換える切換手段は、イニシエータ9を含んで実現される。イニシエータ9は、火薬を点火することによってガスを発生させ、ガスの圧力によってスプレー缶11を変位させる。このように火薬を点火することによって、極めて短時間でガスを発生させることができるので、異常情報に対する応答性を高めることができる。また火薬を用いることによって、切換手段を機械要素によって構成するよりも、腐食などによって切換動作不良が発生することを防止し、切換動作を確実に実行することができる。
【0035】
切換手段がイニシエータ9を含んで構成される場合、イニシエータ9の部分が不正な手段によって内部構造を露出された場合、火薬を点火するように構成することが好ましい。これによって不正な手段によって、イニシエータ9に含まれる火薬が取り出されることを防止することができる。これによってイニシエータ9に含まれる火薬が他の目的で用いられることを防ぐことができ、安全性を向上することができる。不正な手段によるケーシング12の開閉の検出は、たとえばリミットスイッチによって実現される。
【0036】
さらに本実施の形態では、スプレー缶11がケーシング12に対して変位するときに発生する衝撃が、緩衝手段20として機能するばね部材20によって緩衝されるので、スプレー缶11が切換動作時に損傷することを防ぐことができる。これによって前述のように火薬を用いて急激にスプレー缶11を変位させる場合であっても、スプレー缶11の損傷を防ぎ、イニシエータ9および駆動部10が確実にスプレー缶11を放出状態に切換ることができる。
【0037】
また本実施の形態では、熱によって暴発しないスプレー缶11を用いることによって、平時の安全性を確保することができる。さらにスプレー缶11に臭気液を充填することによって、長期保存性を確保することができる。
【0038】
また本実施の形態では、スプレー缶11のノズルヘッド21側の一端部をケーシング12によって固定し、他方側をノズルヘッド21側に押圧することによって、臭気液が放出するようにケーシング12およびスプレー缶11が構成される。このように圧力容器22が缶放出位置からさらにノズルヘッド21に向かって変位するのがケーシング12によって規制されているので、ノズルヘッド21に放出時に作用する負荷を低減することができる。したがってノズルヘッド21がイニシエータ9の圧力によって損傷することを防ぐことができ、異常事態のときに臭気液を確実に放出させることができる。またノズルヘッド21がケーシング12によって固定されているので、ノズルヘッド21がケーシング12に対して不所望に変位しないので、所望の放出方向に臭気液を放出することができる。
【0039】
前述の実施の形態では、臭気発生警報装置1を警報ベル5および警報灯6は、それぞれ別の装置によって実現されているが、これに限ることはなく、臭気発生警報装置1に警報ベル5として機能するブザーなどの音発生手段、および警報灯6として機能する発光手段を組み込んで実現してもよい。このように他の警報手段5,6として機能する報知手段を臭気発生警報装置1に組み込むことによって、臭気を感じたときに、臭気発生警報装置1を視認することによって、臭気発生警報装置1によって放出された臭気であるか否かを確認することができる。これによって聴覚に障害がある人であっても、臭気を感じてから臭気発生警報装置1を視認することによって、確実に警報は発せられている状態を認識することができる。
【0040】
また前述の実施の形態では、警報手段として臭気発生警報装置1、警報ベル5および警報灯6を含んで構成されるが、これに限ることはなく、少なくとも臭気発生警報装置1を含んでいればよく、適宜、他の警報手段と組合せてもよい。
【0041】
また前述の実施の形態では、消火装置3を介して有線によって感知器4と臭気発生警報装置1とが電気的に接続されているが、有線に限らず無線によって異常情報を受信可能に構成してもよい。
【0042】
また臭気発生警報装置1は、無色無臭のガス、たとえば二酸化炭素を用いる消火装置3と一体に構成してもよい。臭気発生警報装置1は、二酸化炭素を噴射すると同時に、二酸化炭素が噴射された領域に臭気を発生するように制御される。これによって二酸化炭素は窒息の危険があるので、二酸化炭素が充満している領域に侵入することを臭気によって防止することができる。
【0043】
また前述の実施の形態では、消火装置3に電気的に接続されている場合を示したが、このような形態に限らず、消火装置3に電気的に接続される他の警報手段5,6に臭気発生警報装置1が電気的に接続されることによって、異常情報が与えられるように構成してもよい。また警報ベル5が作動したときに警報ベル5が発する音を検出して、音を異常情報として臭気を発生するように臭気発生警報装置1を構成してもよい。
【0044】
またスプレー缶11から放出される微粒子状の臭気液およびガスが無色であってもよく、有色であってもよい。スプレー缶11から放出された液体または気体が有色である場合、臭気を感じたときに、臭気発生警報装置1を視認することによって、臭気発生警報装置1によって放出された臭気であるか否かを確認することができる。これによって聴覚に障害がある人であっても、臭気を感じてから臭気発生警報装置1を視認することによって、確実に警報は発せられている状態を認識することができる。
【0045】
また前述の実施の形態では、緩衝手段20はばね部材20によって実現されているが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば駆動部10を構成するピストン19にオリフィスを設け、イニシエータ9によって生じたガスがオリフィスを通るときに流体摩擦エネルギーが消耗されることによって衝撃を吸収するように構成してもよい。また緩衝手段20は、ダンパーなどの減衰器によって実現してもよい。また緩衝手段20は、切換手段と一体に設ける構成に限ることはなく、スプレー缶11を変位によって発生する衝撃力が緩和するように構成してもよい。したがって、たとえばスプレー缶11の放出停止状態から放出状態へ変位する方向とは逆方向にばね力を作用させるように、スプレー缶11の圧力容器22に近接させてばね部材を設けてもよい。
【0046】
またスプレー缶11がケーシング12に装着された状態で、手動でスプレー缶11から臭気液を放出可能に構成してもよい。このように手動でスプレー缶11から臭気液を放出可能に構成することによって、操作者は臭気液の臭いを予め確認することができる。したがって異常事態のときに臭気発生警報装置1から放出される臭いを予め認識することができる。
【0047】
またスプレー缶11が缶放出位置にある場合、手動でスプレー缶11が放出停止状態になるように、スプレー缶11を変位可能にケーシング12を構成してもよい。このように構成することによって、感知器4が誤作動した場合、または定期的に動作を確認する場合、所望の量だけ臭気液を放出させて放出を停止することができるので、臭気液を無駄に放出することを防ぐことができる。
【0048】
また切換手段は、駆動部10およびイニシエータ9によって実現されているが、このような構成に限ることはなく、モータおよびソレノイドなどの駆動手段によってスプレー缶11を変位させるように構成してもよい。また切換手段は、液体を化学反応または熱によって気化させて生じる圧力を利用してもよく、ばね力を利用してスプレー缶11を変位させるように構成してもよい。
【0049】
またスプレー缶11から放出された臭気液が、さらに短時間で拡散するように、プロペラなどの拡散手段を一体または別体に設けてもよい。
【0050】
またケーシング12には、放出孔23が形成されているが、このような放出孔23を設けることなく、ノズルヘッド21の放出口21aが外部に直接露出するようにケーシング12を構成してもよい。このように外部にノズルヘッド21の放出口21aを露出させることによって、臭気液の拡散を妨げる障害を少なくすることができ、より拡散性を高めることができる。
【0051】
またケーシング12の放出孔23に臨む壁部には、臭気液が付着することによって、その色彩が変化するような物質を予め塗布しておいてもよい。このような物質を塗布しておくことによって、スプレー缶11から臭気液が放出されたか否かを、第3者が容易に視認によって確認することができる。このような物質は、たとえば水溶性インクによって実現される。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態の臭気発生警報装置1Aに関して説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態の臭気発生警報装置1Aを示す断面図である。図7は、臭気発生警報装置1Aを備える警報システム2の電気的構成を示すブロック図である。本実施の形態の臭気発生警報装置1Aでは、切換手段が、引張部材24と、通電すると収縮する素材、本実施の形態では形状記憶合金から成る作動部25とを備える点に特徴を有する。
【0053】
臭気発生警報装置1Aは、図6および図7に示すように、切換手段として機能する作動部25および引張部材24を含んで構成される。回路部7は、感知器4から異常情報が与えられると、作動部25を動作させる。回路部7は、作動部25と電気的に接続され、感知器4から異常情報が与えられると、作動部25を通電する。作動部25は、本実施の形態では形状記憶合金から成り、通電されると縮む。引張部材24は、作動部25に一定荷重を負荷する。作動部25は、本実施の形態では、通電すると軸線方向に縮み、通電を停止すると軸線方向に伸びる。したがって作動部25は、通電の有無によって、軸線方向における二方向動作を繰返すように構成される。
【0054】
作動部25は、図6に示すように、スプレー缶11の半径方向外方から見て、略U字状になるように、スプレー缶11の外周に沿って設けられる。作動部25は、略U字状の底部分26が、スプレー缶11の底部に位置する。したがって作動部25は、両端部25a,25bが、スプレー缶11の頂部の半径方向外方の付近の異なる2つの位置27a,27bに設けられる。作動部25の一端部25aは、前記異なる2つの位置27a,27bの一方の位置27aに固定して設けられる。作動部25の他端部25bは、前記異なる2つの位置27a,27bの他方の位置27bに設けられる引張部材24に連結して設けられる。作動部25は、一端部27aが回路部7と電気的に接続され、他端部27bが引張部材24を介して、回路部7と電気的に接続される。したがって作動部25が、通電されることによって、その長さ寸法が小さくなると、両端部25a,25bが固定されているので、両端部25a,25bから略U字状の底部分26までの距離が小さくなる。また作動部25は、絶縁性を有するように構成することが好ましい。作動部25は、本実施の形態では、絶縁性を有する材料によって被覆して用いられる。これによって作動部25に通電した場合、作動部25が導電性を有する他の部材、たとえば圧力容器22に当接しても、電流が不所望に圧力容器22に流れることを防止することができる。
【0055】
引張部材24は、直線状ワイヤの作動部25の他端部25bに連結され、予め定める一定加重を引張方向に負荷するように構成される。また引張部材24は、遊び代としての機能を有し、作動部25を取り付けるときの作業性を向上することができる。引張部材24は、本実施の形態ではコイルばねによって実現され、導電性を有する材料から構成される。また引張部材24は、本実施の形態では、絶縁性を有する材料によって被覆して用いられる。これによって作動部25を通電した場合、引張部材24が導電性を有する他の部材、たとえば圧力容器22に当接しても、電流が不所望に圧力容器22に流れることを防止することができる。
【0056】
図8は、スプレー缶11が放出状態にある場合の臭気発生警報装置1Aを示す断面図である。スプレー缶11は、作動部25に通電されていない状態では、軸線方向一方寄りの缶放出停止位置(図6参照)に位置する。前述したように図6に示す状態から、作動部25に通電すると、作動部25の長さ寸法が小さくなるので、スプレー缶11の圧力容器22が缶放出停止位置から軸線方向他方に向かって缶放出位置(図8参照)まで変位する。これによってノズルヘッド21はケーシング12によって固定されているので、圧力容器22がノズルヘッド21に対して缶放出位置まで近接する方向に変位することによって、ノズルヘッド21から臭気液が放出される。作動部25は、通電している間は、長さ寸法が小さい状態が持続されるので、圧力容器22が缶放出位置にある状態が保持され、ノズルヘッド21からは臭気液が継続的に放出される。
【0057】
このような作動部25に用いられる通電すると収縮する素材は、少なくとも次の3つの選定要因に基づいて選定される。第1の選定要因は、通電した場合の伸縮量が、臭気液を放出する缶位置から放出を停止する缶位置までの距離、たとえば3mm以上必要である。このような伸縮量未満であると、作動部25に通電しても、スプレー缶11から臭気液を放出させることができないからである。第2の選定要因は、予め定める電流以下で放出可能である必要がある。これによって電源部8によって与えられる電流が、少ない電流であっても、作動部25を動作せることができるからである。第3の選定要因は、予め定める引張力を有することである。作動部25に通電した場合、圧力容器22をノズルヘッド21が自然状態である缶放出停止位置から、放出可能な位置まで変位可能な力が必要だからである。このような引張力は、たとえば15N(1.5kgf)以上である。このような選定要因に基づいて、作動部25の直径、本数、材質が適宜選定される。作動部25は、たとえば線径200μm、作動電流1A、最大負荷加重12N(1.2kgf)、および実用作動ひずみ5%を有し、その組成がTiを49.0〜51.0at%、Cuを5.0〜12.0at%含有し、残部がNiからなるNiTiCu形状記憶合金ワイヤを2本以上用いて実現される。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、切換手段が通電すると収縮する素材、本実施の形態では形状記憶合金から成る作動部25をさらに備える。回路部7は、作動部25に対して通電することによって加熱し、その加熱によって作動部25を変形させて、スプレー缶11を変位させる。このような作動部25に通電するという簡単な構成で、スプレー缶11を変位させることができる。したがって切換手段を、小形化および軽量化することができる。
【0059】
前述の実施の形態のように、切換手段をイニシエータ9によって構成すると、イニシエータ9は1回動作する毎に、交換する必要があるが、本実施の形態のように切換手段に通電すると収縮する素材を用いることによって、1回に限らず、繰り返して用いることができる。
【0060】
また回路部7は、タイマを備えるように構成してもよい。これによって回路部7は、感知器4から異常情報が与えられると、タイマに基づく予め定める時間、たとえば30秒、作動部25を動作させることができる。これによって作動部25を長時間通電することによって、不所望に作動部25または電池8の温度が上昇し、他の部材をその熱によって損傷することを防ぐことができ、かつ予め定める時間動作させることによって、スプレー缶11から必要な量の臭気液を放出させることができる。
【0061】
また本実施の形態では、圧力容器22の底部をノズルヘッド21に向かって押圧するように作動部25を配置しているが、このような構成に限ることはなく、ノズルヘッド21を圧力容器22に対して押圧するように構成してもよい。
また本実施の形態では、通電すると収縮する素材は、形状記憶合金によって実現されるが、形状記憶合金に限ることはなく、通電すると収縮する機能を有する他の素材であってもよい。また通電すると収縮する素材に限ることはなく、通電すると伸縮する機能を有する他の素材であってもよい。
【0062】
また作動部25が直線状ワイヤによって実現される場合、作動部25がスプレー缶11を押圧する部分から不所望に離脱しないように、作動部25のスプレー缶11を押圧する部分(本実施の形態ではスプレー缶11の底部分26)を、スプレー缶11に固定手段を用いて固定するように構成してもよい。固定手段は、たとえば作動部25が嵌合する凹部、作動部25を引っ掛けるC字状のフック部などによって実現することができる。これによって作動部25に通電した場合、作動部25がスプレー缶11を確実に押圧することができる。
【0063】
次に、本発明の第3の実施の形態の警報システム2Aに関して説明する。本実施の形態の警報システム2Aは、警戒領域を警戒し、警戒領域に不審者の侵入などの異常事態を検出した場合、警報を発するシステムである。警戒領域は、たとえば遊戯機器設置店、銀行、学校、販売店、駐車場、乗り物の運転席、タクシーの後部座席、およびゴミ集積所などである。図9は、本実施の形態の警報システム2Aの電気的構成を示すブロック図である。警報システム2Aは、制御部30、センサ31、遠隔操作装置32、臭気発生警報装置1、警報ベル5および警報灯6を含んで構成される。
【0064】
センサ31は、検知手段であって、警戒領域の状態を検知し、検知した検知情報を制御部30に与える。センサ31は、たとえば不審者が警戒領域に侵入したことを検出する。センサ31は、たとえば熱センサ、モーションセンサ、重力センサおよび防犯カメラによって実現される。センサ31は、検知した情報を制御部30および遠隔操作装置32に与える。
【0065】
遠隔操作装置32は、警戒領域から離間した場所に設けられ、センサ31および制御部30と電気的に接続される。遠隔操作装置32は、センサ31および制御部30とたとえば無線によって電気的に接続される。遠隔操作装置32は、センサ31から与えられる検知情報に基づいて、警戒領域に侵入者がいると判断した場合、異常情報を制御部30に与える。また遠隔操作装置32は入力手段(図示せず)を備え、遠隔操作装置32を操作する操作者が、防犯カメラの画像などによって不審者がいると判断した場合、入力手段の操作によって、制御部30に異常情報を与える。
【0066】
制御部30は、センサ31および遠隔操作装置32と電気的に接続され、センサ31から与えられる検知情報に基づいて、警戒領域に侵入者がいると判断した場合、前述の実施の形態と同様に警報を発するように臭気発生警報装置1、警報ベル5および警報灯6を制御する。また制御部30は、遠隔操作装置32から異常情報が与えられると、警報を発するように臭気発生警報装置1、警報ベル5および警報灯6を制御する。
【0067】
臭気発生警報装置1は、不審者が侵入したことを検出した警戒領域に臭気を発することができる位置に設けられる。また不審者が逃走するであろう位置、たとえば警戒領域と連結する出入り口付近に設けられる。これによって臭気発生警報装置1が発する臭気を確実に不審者に与えることができる。
【0068】
臭気発生警報装置1が臭気を発する噴霧領域は、警戒領域の特徴に応じて適宜設定される。また臭気発生警報装置1が設けられる位置は、警戒領域の特徴に応じて適宜設定される。警戒領域は、遊戯機器設置店では、遊戯機器の不正利用を防止することができるように設定され、たとえば各遊戯機器毎に臭気発生警報装置1が設けられる。また噴霧領域は、遊戯機器を操作している操作者に対して臭気を発し、隣接する遊戯機器を操作する操作者には臭気が拡散しないように、指向性を有するように設定される。これによって臭気発生警報装置1は、不正利用された遊戯機器を検出すると、その遊戯機器を操作している操作者に対して臭気を発することができる。
【0069】
また警戒領域は、銀行および販売店などでは、窓口、金庫およびキャッシュレジスタからの金銭の盗難を防止することができるように設定され、たとえば窓口、金庫およびキャッシュレジスタ毎に臭気発生警報装置1が設けられる。これによって臭気発生警報装置1は、金銭の盗難、およびその盗難のおそれがあることを検出すると、その盗難者に対して臭気を発することができる。また警戒領域は、たとえば車の運転席、タクシーの後部座席に設定され、車の盗難防止、またタクシーにおける強盗防止に臭気発生警報装置1が設けられる。
【0070】
また制御部30は、検知情報に応じて、臭気発生警報装置1による臭気の発生を段階的に行うように制御してもよい。これによってに不審者が不正な行為を行う前に、弱い噴射で威嚇し、それでも不正行為を継続した場合に、強い噴射で不正行為の継続を停止させることができる。これによって不審者の行為に応じて、段階的に臭気を発生させることができ、利便性が向上する。
【0071】
スプレー缶11に充填される臭気液の臭気薬剤は、不審者に対して、不正な行為を継続できないようなものが好ましい。臭気薬剤として、前述の実施の形態と同様に、たとえばミント臭およびわさび臭を有する薬剤をベースにしてもよく、また刺激を有する物質、たとえばクロロアセトフェノン、クロロベンジリデンマロノニトリルおよびカプサイシンを用いてもよい。
【0072】
またスプレー缶11には、臭気薬剤の他に染料を充填してもよい。これによって不審者に対して臭気を発生させると同時に、染料を噴射するので、不審者に染料を付着させることができる。これによって不審者の特定が容易となり、防犯効果を高めることができる。このような染料は、衣服は皮膚に付着した場合、容易に洗浄できない染料が好適に用いられる。
【0073】
本実施の形態では、警報システム2Aは、遠隔操作装置32を含むように構成されるが、これに限ることはなく、遠隔操作装置32を除く残余の部分によって警報システム2Aを構成してもよい。また遠隔操作装置32は、臭気発生警報装置1と離間した場所に設けられる場合に限らず、たとえば銀行の窓口に遠隔操作装置32として機能する入力手段を設け、窓口に不審者がきた場合に、窓口にいる受付員が入力手段を操作することによって、異常情報を制御部30に与えるように構成してもよい。これによって臭気発生警報装置1を遠隔操作することができる。
【0074】
また本実施の形態では、遠隔操作装置32とセンサ31および制御部30とは無線によって電気的に接続されているが、無線に限らず有線であってもよく、異常情報を含む情報を送受信可能な構成であればよい。また同様に、制御部30は、センサ31、臭気発生警報装置1、警報ベル5、および警報灯6と有線によって電気的に接続されているが、有線に限らず無線であってもよく、異常情報を含む情報を送受信可能な構成であればよい。
【0075】
制御部30は、臭気発生警報装置1の動作情報、たとえば動作回数および動作時間の少なくともいずれか一方を記憶するように構成してもよい。これによって制御部30は、臭気発生警報装置1のスプレー缶11に充填される臭気の残量を演算することができる。制御部30は、臭気の残量を報知するように各部を制御することによって、操作者は臭気の残量に基づいてスプレー缶11を適宜交換することができる。
【0076】
また臭気発生警報装置1は、1種類の臭気に限らず、複数の臭気またはガスを発生可能に構成してもよい。これによって用途に応じて臭気を使い分けることができる。また臭気を中和するようなガスを発生可能に構成することによって、早く臭気を中和したい場合に、円滑に臭気発生警報装置1によって臭気を中和することができる。
【0077】
また臭気発生警報装置1は、不快な臭いが発生しやすい不快領域、たとえばトイレおよび喫煙場所に設けてもよい。不快領域の入り口、たとえばトイレの入り口にセンサ31を設け、センサ31によって利用者を検知すると、制御部30は、不快領域に臭気を発生させるように臭気発生警報装置1を制御する。臭気発生警報装置1に消臭効果を有する消臭成分、およびミント臭などを予め充填しておくことで、不快領域における不快な臭いを消臭することができる。また制御部30は、定期的に臭気を発生させるように臭気発生警報装置1を制御してもよく、不快領域への利用者侵入以外の情報、たとえば臭いの濃度および煙濃度に基づいて、臭気発生警報装置1を制御してもよい。
【0078】
また臭気発生警報装置1は、目覚まし装置として、人間の覚醒させるために用いてもよい。臭気発生警報装置1に芳香系の臭気薬剤を充填させ、タイマによって臭気を発生させることによって、目覚まし装置として用いることができる。また臭気発生警報装置1を車内に設け、居眠り運転を防止のために用いてもよい。センサ31が居眠り運転および運転者の眠気を検出すると、臭気発生警報装置1が臭気を発生するように制御することによって、運転者を覚醒させることができ、車の安全運転を促すことができる。センサ31が運転者の眠気を検出するための情報として、たとえば運転者の体温の上昇、スピードの出し過ぎ、蛇行運転、および車間距離などがある。
【0079】
また臭気発生警報装置1は、自給式呼吸器と一体に構成してもよい。臭気発生警報装置1は、自給式呼吸器の圧力指示計が予め定める圧力、たとえば3MPa以下になると、面体に臭気を発生するように制御される。これによって自給式呼吸器を利用している利用者は、圧力指示計が予め定める圧力以下であることを臭気によって認識することができる。したがって圧力指示計の残量を認識することができ、安全な場所への誘導を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態の臭気発生警報装置1を簡略化して示す断面斜視図である。
【図2】臭気発生警報装置1を簡略化して示す斜視図である。
【図3】臭気発生警報装置1を備える警報システム2の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】臭気発生警報装置1を示す断面図である。
【図5】スプレー缶11が放出状態にある場合の臭気発生警報装置1を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の臭気発生警報装置1Aを示す断面図である。
【図7】臭気発生警報装置1Aを備える警報システム2の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】スプレー缶11が放出状態にある場合の臭気発生警報装置1Aを示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の警報システム2Aの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
1 臭気発生警報装置
2 警報システム
3 消火装置
4 感知器
5 警報ベル
6 警報灯
7 回路部
8 電源部
9 イニシエータ
10 駆動部
11 スプレー缶
12 ケーシング
13 電源スイッチ
14 端子台
15 回路基板
16 コンデンサ
17 コネクタ
18 密閉空間
19 ピストン
20 緩衝手段
21 ノズルヘッド
22 圧力容器
23 放出孔
24 引張部材
25 作動部
30 制御部
31 センサ
32 遠隔操作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気液が充填され、臭気液を放出する放出状態と放出停止状態とに切換可能なスプレー缶を収納可能な収納空間を形成するケーシングと、
前記ケーシングの収納空間に収納されたスプレー缶を、ケーシングに対して変位させることによって、放出停止状態から放出状態に切換える切換手段と、
異常事態の発生を検知する検知手段から異常事態が発生したことを示す異常情報が与えられると、前記切換手段によってスプレー缶をケーシングに対して変位させて、放出停止状態から放出状態に切換え動作させる制御手段とを含むことを特徴とする臭気発生警報装置。
【請求項2】
前記切換手段は、通電すると伸縮する素材から成る作動部をさらに備え、
前記制御手段は、作動部に対して通電することによって、スプレー缶を変位させることを特徴とする請求項1に記載の臭気発生警報装置。
【請求項3】
前記切換手段は、火薬を点火することによってガスを発生させ、ガスの圧力によってスプレー缶を変位させることを特徴とする請求項1に記載の臭気発生警報装置。
【請求項4】
前記切換手段によってスプレー缶を収納空間内で変位させるときに発生する衝撃を緩衝する緩衝手段をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の臭気発生警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−269543(P2008−269543A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152056(P2007−152056)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390010342)エア・ウォーター防災株式会社 (56)
【Fターム(参考)】