説明

臭素化スチレンポリマーの光学補償フィルムおよび関連方法

いくつかの実施形態は、光学補償フィルムに関連する組成物および/または方法を含む。より詳細には、いくつかの実施形態は、光学補償フィルムの形成に適した臭素化ポリスチレン組成物および/またはその調製ための方法を含み得る。いくつかの実施形態において、適切な臭素化ポリスチレン組成物および/またはその調製方法は、1つ以上のアシル部分を有する芳香環を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムおよび/または液晶用途に適した臭素化スチレンポリマーと、その調製プロセスとに主に関する。いくつかの実施形態は、1つ以上の向上した機械特性を有し得る。
【背景技術】
【0002】
単純な液晶画素デバイスを図1中に示す。代表的な液晶ディスプレイ(LCD)画素は複屈折液晶層300を含み、この複屈折液晶層300は、一対の透明電極200および202(例えば、インジウムスズ酸化物ガラス(ITO))間に挟まれている。これらの電極200および202は、液晶分子を配向するための表面処理を含む。例えば、ねじれたネマチック相デバイスにおいて、第1の電極200は、x軸に沿って整列された一方向の水平溝201を含み、第2の電極202は、y軸に沿って整列された垂直溝203を含む。これらの電極そのものは、第1の偏光層100および第2の偏光層102の間に挟まれる。第1の偏光層100および第2の偏光層102は、相互に直角に配向される。適切な偏光が各偏光層を通過するように、各偏光層が隣接電極と整列される。光源400(例えば、バックライト)は、画素の一方に配置される。典型的には、液晶分子層を通過する偏光が90度回転するように、液晶分子層がデバイス内に整列される。そのため、光源からの光は、デバイスの後側を通過し、前側において観察される。しかし、液晶層300が励起されると、液晶分子が電界内において再度配向され、そのため、第2の偏光板102を通過するべき入射偏光の回転が不十分となる。その結果、光が第2の偏光層によって遮断される。この場合の実際の影響として、液晶が励起されている間、画素を通過できる光が実質的に無いという点がある。
【0003】
前記液晶層は複屈折であるため、このようなデバイスから出てくる光は、2つの屈折率(すなわち、平行成分(「異常」と呼ばれるおよび垂直成分(「正常」と呼ばれる))を有する。複屈折Δnの大きさは、これら2つの成分間の差である(方程式1を参照)。
【0004】
画質を受容可能とする円弧は、視角としてみなされる。重要なことに、視角のサイズは、液晶層の複屈折と直接関係する。具体的には、平行成分および垂直成分が等しい場合、視角は180度に近づく。しかし、1つの成分が他方の成分よりもずっと大きい場合が多い。両者間の差が大きいほど、視角が小さくなる。例えば、液晶層は、ずっと高い平行成分を持ち得る。そのため、このようなデバイスの視角は、小さくなる。光学補償フィルムは、平行成分および垂直成分間のバランスをもたらすことで、Δnの大きさを低減し、視角を増加させる。
【数1】

【0005】
光学補償フィルムは、液晶分野において公知である。しかし、ポリスチレンの場合、遅延(Γ)不安定性のため、良い材料選択肢として見なされていないことが多い。方程式2に示すように、遅延(Γ)は、材料厚さ(d)および複屈折(Δn)の積である。これは、通常の動作温度範囲周囲の相対的に大きな光弾性係数に部分的に起因する。そのため、ポリスチレンの遅延は、小さなストレスに対して極めて感受性が高い。さらに、ポリスチレンの遅延は、波長の強力な関数であり、また、ポリスチレンの耐熱特性は低い。これらの理由のため、ポリスチレンは、光学補償フィルムに用いられないことが多い。
【数2】

【0006】
臭素化ポリスチレンは化学分野において公知であるものの、多様な未解消の問題に起因して、光学補償フィルム分野には今まで適用されていない。例えば、臭素化ポリスチレン生成物の臭素化レベルが多様に異なる場合、当該生成物は、不適合であることが多い。このような不適合性は、異なる置換レベル(DS)の2つの臭素化ポリスチレンを溶媒中において混合した場合に、見られる。例えば、DS=1(モノブロム)生成物およびDS=2(ジブロム)生成物の2つのサンプルを1、2−ジクロロエタン中に混合した場合、各生成物は他方の生成物が無い場合に上記溶媒中に溶解可能ではあるものの、溶液混濁が発生する。このような溶液混濁が発生した場合、透明フィルムの鋳造が不可能となるため、光学フィルム用途において問題となる。この問題は、2つの異なる臭素化生成物においてだけでなく、単一の生成物においても発生し得る。特定のプロセスによって生成された臭素化生成物の場合、置換レベルが大きく異なる分子を含む場合があり、そのため、上記のような不適合問題が発生し、その結果、当該生成物が光学フィルム用途において不適切なものとなる。
【0007】
さらに、より高温のプロセス、より長時間の反応および/またはより高い触媒レベルを用いた生成物の場合、分子量が低すぎるために、十分な完全性のフィルムを得られなくなる。これは、臭素化プロセス時におけるポリマー劣化に起因する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態は、先行技術の上記欠陥のうち1つ以上を解消する臭素化ポリスチレンを提供し、光学補償フィルムとしての利用に適している。
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態は、光学補償フィルムに関連する。前記光学補償フィルムは、[(CHCH)Ar]に従った異性ポリマー組成物を含み、前記Ar基は、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレンまたはピレンのうち1つ以上を含み、前記Ar基は、少なくとも1つのBr原子置換基を含み、前記ポリマー組成物は、正の複屈折を有する光学的に透明なフィルムを規定する。
【0010】
いくつかの実施形態は、光学補償フィルムに適した臭素化ポリスチレンの調製プロセスに関連する。前記プロセスは、スチレンポリマーのおよそ5〜20重量パーセントの溶液を適切な有機溶媒中に調製するステップと、前記スチレンポリマー溶液にルイス酸触媒を付加するステップであって、前記付加されるルイス酸触媒の量は、前記スチレンポリマーの全質量に対して約0.3〜2.0重量パーセントである、ステップと、前記スチレンポリマーおよびルイス酸触媒の溶液の温度を約−10〜10℃に調節するステップと、前記スチレンポリマーおよびルイス酸触媒の溶液に約0.8〜約1.6当量の臭素化剤を約2〜60分間付加するステップであって、前記ステップは、力強く攪拌しながら行われる、ステップと、線維状の粉末反応生成物を分離するステップとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態は、光学補償フィルムに適したアシル化臭素化ポリスチレンの調製プロセスに関連する。前記プロセスは、スチレンポリマーのおよそ5〜20重量パーセントの溶液を適切な有機溶媒中に調製するステップと、前記スチレンポリマー溶液に対し、i)前記スチレンモノマー単位の当量に対し、約0.01〜約0.3当量比の量のC2−C18ハロゲン化アシルまたは無水物と、ii)前記ハロゲン化アシルおよび/または無水物の全モルに対し、約0.9〜1.2モル比の量のルイス酸触媒であって、前記組み合わせは反応混合物を含む、ルイス酸触媒とをを任意の順序で攪拌しながら付加するステップであって、前記反応混合物を約5〜120分間攪拌するステップと、前記反応混合物の温度を約−10〜10℃に調節するステップと、前記反応混合物を力強く攪拌しながら、約0.8〜約1.6当量の臭素化剤を前記反応混合物に約2〜60分間付加するステップと、線維状の粉末反応生成物を分離するステップとを含む。
【0012】
いくつかの実施形態は、向上した液晶ディスプレイ画素に関連する。前記向上した液晶ディスプレイ画素は、前面および後面を有する第1の偏光層と、前面および後面を有する第1の電極であって、前記第1の偏光層を前記第1の電極の前記後面において受け入れる、第1の電極と、前面および後面を有する第2の偏光層と、前面および後面を有する第2の電極であって、前記第2の偏光層を前記第2の電極の前記前面において受け入れる、第2の電極と、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に動作可能に配置された液晶層と、前記第1の偏光層の前記後面の後ろ側に配置されたバックライトまたは反射コンポーネントとを含み、前記向上は、前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間に動作可能に配置された光学補償フィルムを含み、前記フィルムは、1つ以上の臭素化ポリスチレン組成物および/または臭素化およびアシル化ポリスチレン組成物を含む。
【0013】
当業者であれば、以下の詳細な説明を読了および理解すれば、他の恩恵および利点を理解する。
【0014】
本発明は、特定の部分および部分の配置構成において物理的形態をとり得、その実施形態を本明細書中に詳細に説明し、添付図面中に図示する。添付図面は、本明細書の一部を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】簡単なLCDデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
いくつかの実施形態によれば、臭素化ポリスチレンの光学的品質フィルムが臭素化プロセスに従って形成される。前記臭素化プロセスにおいて、臭素化レベルが十分に制御される。先行技術とは全く対照的に、本発明のプロセス実施形態によって生成された臭素化スチレンポリマー組成物は、実質的な光学的透明度および低色のフィルムを形成することが可能である。従って、いくつかの組成物実施形態は、多様な基板上の光学コーティングとしての用途に適している。さらに、いくつかの実施形態によれば、組成物は、自立型フィルムおよび/またはモノリスの作製に適した機械特性を持つことができる。
【0017】
臭素化スチレン組成物
【0018】
一実施形態において、光学フィルムの作製に適した臭素化スチレンポリマーの調製プロセスが提供される。より詳細には、いくつかの実施形態によれば、このようなプロセスは、a)5〜20wt.%のスチレンポリマー溶液を適切な有機溶媒中において調製するステップと、b)前記溶液に対し、前記スチレンポリマーの総重量に基づいてルイス酸触媒を約0.3〜2.0wt.%だけ付加するステップであって、前記付加は、温度または約−10〜10℃の温度において行われる、ステップと、c)前記力強く攪拌された反応混合物に臭素化剤を供給するステップであって、前記供給は、約−10〜10℃の温度を超えた温度において、ブロモ/スチレンモノマー単位の当量比が約0.8〜1.6となるように行われ、前記付加が約2〜60分内に完了して反応生成物が得られるように、行われる、ステップと、d)前記その結果得られた反応生成物を当該分野において公知の方法によってワークアップして、線維状の粉末生成物を得るステップであって、前記生成物は、低色および有機溶媒中の高い溶解度を有する、ステップと、を含む。
【0019】
前記触媒の有効性を保持するために、前記反応を無水条件下において行うと有利である。必要に応じて、前記反応は、不活性雰囲気(例えば、窒素および/またはアルゴンガス)の存在下において実行することができる。正の圧力を前記不活性ガスに付加する際、前記不活性ガスの流れによってガス状副産物を搬送することができるように(例えば、前記酸性ガスの中和が可能な水性無機塩基を含むコンテナへと臭化水素を搬送することができるように)、搬送を行う。
【0020】
本発明において用いられるスチレンポリマーは、芳香環を有する任意のビニールポリマーであり得る。前記ビニールポリマーは、前記芳香環上のブロモ基を含むように、置換反応を起こすことができる。このようなスチレンポリマーの例を挙げると、ポリスチレン、ポリ(4−ビニルビフェニル)、ポリ(ビニルナフタリン)、ポリ(ビニルアントラセン)、ポリ(ビニルピレン)などのうち1つ以上がある。いくつかの実施形態によれば、ポリスチレンが特に有利であり得る。前記臭素化に用いられるポリスチレンは、本発明のいくつかの実施形態によれば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるような重量平均分子量(M)が約200,000to500,000g//モルである。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、いくつかの実施形態による濃度に適したスチレンポリマー濃度適切なは、約5〜20wt.%であり得る。より詳細には、いくつかの適切な濃度を挙げると、約5〜8wt.%、8〜10wt.%、10〜12wt.%、12〜14wt.%、14〜16wt.%、16〜18wt.%、または18〜20wt.%がある。本明細書および特許請求の範囲中の他の値が組み合わされ得る。
【0022】
いくつかの実施形態における適切な有機溶媒を非限定的に挙げると、1、2−ジクロロエタン、ニトロベンゼン、3−ニトロトルエン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、ブロモクロロメタン、二硫化炭素、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、およびその適切な組み合わせがある。有利には、適切な溶媒は、1、2−ジクロロエタン、塩化メチレン、四塩化炭素およびクロロホルムを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、前記反応において用いられる溶媒(単数または複数)は、実質的に無水であると有利である。有機溶媒の乾燥方法は当業者にとって公知であり、蒸留および/または乾燥剤(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、五酸化りん、シリカゲル、分子篩などまたはその組み合わせ)の利用を含み得る。
【0024】
適切なルイス酸触媒の例を非限定的に挙げると、AlCl3、FeCl、FeCl、SnCl、AlBr、FeBr、SbCl、ZrCl、Sb2O、ZnO、ZnClなどおよびその適切な組み合わせがある。いくつかの実施形態によれば、特に有利な触媒として、AlClを約0.5〜1.5wt.%(より有利には、約0.7〜約1.0wt.%)の量で存在させるとよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、適切な臭素化剤は、臭素、塩化臭素またはその混合物を含み得る。さらに、前記スチレンポリマーの芳香環上の臭素化が可能な他の任意の試薬も適切である。いくつかの実施形態によれば、臭素および/または塩化臭素が特に有利であり得る。いくつかの実施形態によれば、前記臭素化剤は、ブロモ/スチレンモノマー単位の当量比が約0.8〜1.6となるように使用される。他の適切な範囲を挙げると、約0.9〜1.3または約1.0〜1.1がある。さらに、いくつかの実施形態において、前記臭素化剤は、約−10〜10℃または約−5〜5℃の温度において、前記反応混合物に付加され得る。さらに、いくつかの実施形態によれば、前記臭素化剤の付加は、相対的に高速で進行し得る。例えば、前記付加は、約2〜45分(または有利には2〜30分)内に完了し得る。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、前記臭素化反応は、前記臭素化剤の付加の終了時またはその後数分以内にクエンチ可能である。例えば、いくつかの実施形態において、前記反応は、有利には前記臭素化剤の付加後約5〜10分においてクエンチ可能であり、前記クエンチは、水または無機塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)の水溶液の付加により、行われる。前記有機層は分離可能であり、また、臭素スカベンジャー(例を非限定的に挙げると、亜硫酸ナトリウムまたは水素化ホウ素ナトリウム)によってさらに抽出可能である。
【0027】
このようにして得られた有機層に対し、当業者に公知の方法によってワークアップを行って、適切な純度の臭素化スチレンポリマー生成物を得ることができる。例えば、前記有機層を濾過して固体不純物を除去し、その後、前記有機溶媒を流し落として沈殿物を得ることが可能な温度において加熱水に供給することができる。その後、その結果得られた沈殿物をメタノールおよび/または水でさらに洗浄し、その後乾燥させることで、適切な純度の生成物を得ることができる。あるいは、粗有機層をアルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)中に沈殿させてもよい。この工程において、その結果得られた沈殿物は典型的には、残留有機溶媒を含むゲル状塊であり、前記ゲル状塊を有機溶媒(例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはシクロペンタノン)中に再溶解させることにより、前記ゲル状塊をさらに精製することが必要である。このようにして得られたポリマー溶液をさらに濾過して、不溶性不純物を除去する必要がある場合がある。その後、前記濾過されたポリマー溶液を再度沈殿させてメタノールを得て、適切な純度の生成物を得ることができる。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明のプロセス実施形態に従って、臭素化スチレンポリマー組成物を精製することができる。このような組成物の臭素含有量は、約38〜約55wt.%であり、重量平均分子量は約300,000〜600,000g/molであり、Tgは約120℃〜160℃であり得る。有利には、臭素含有量は約41〜約50wt.%であり、いくつかの実施形態において約44〜約46wt.%がより有利であり得る。有利な重量平均分子量は約400,000〜500,000であり、有利なTgは約140℃〜150℃であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態による組成物は、可視吸収スペクトルがほとんど無く、また、適切な溶媒中に透明溶液を形成することができる。適切な溶媒の例を挙げると、1、2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、シクロペンタノン、トルエン、およびその適切な組み合わせがある。その後、このようにして得られたポリマー溶液を基板上にキャストして、透明フィルムを形成することができる。適切なフィルムの正の複屈折は、約0.002〜約0.008であり得る。前記フィルムは、液晶ディスプレイデバイス内におけるコーティングとしても利用できるし、あるいは、または、アントラセン層に積層された自立型フィルムとしても利用可能である。このようなフィルムは、例えば、液晶ディスプレイおよび/または他の光学コンポーネントにおいて有利であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態は、1つ以上の可塑剤を含み得る。これらの1つ以上の可塑剤は、前記ポリマーフィルム中において利用されることで、前記フィルムの処理可能性を向上させる。例えば、可塑剤をポリマー溶液中に溶解させて、前記ポリマーと共にキャストすることで、フィルムを形成することができる。従って、適切な可塑剤を所望の溶媒中に溶解可能であり、その内部の臭素化スチレンポリマーと適合可能であり、これにより、適切な光学的透明度のフィルムを形成することができる。適切な可塑剤を用いれば、フィルムのTgおよび/または遅延は受容不可能なレベルまで低下しない。
【0031】
適切な可塑剤の例を非限定的に挙げると、Eastman Chemical Company(Kingsport、TN)から入手可能なもの(AbitolE(登録商標)(水素化ガムロジン)、Permalyn3100(登録商標)(ペンタエリスリトールのトールオイルエステルガム)、Permalyn2085(登録商標)(グリセロールのトールオイルエステルガム)、Permalyn6110(登録商標)(ペンタエリスリトールのガムロジンエステル)、Foralyn110(登録商標)(ペンタエリスリトールの水素化ガムロジンエステル)、およびOptifilm Enhanser400(登録商標))、Unitex Chemical Corp.(Greensboro、NC)から入手可能なもの(Uniplex552(登録商標)(ペンタエリスリトールテトラベンゾアート)、Uniplex280(登録商標)(蔗糖安息香酸エステル)、およびUniplex(登録商標)809(PEGジ−2−エチルヘキサノアート)、Genovique(Rosemont、IL)から入手可能なAdmex523(登録商標)、りん酸トリフェニル、ならびにその適切な混合物がある。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリマーフィルム実施形態は、前記臭素化スチレンポリマーの塊に対し、2〜20wt.%の可塑剤を含む。有利な可塑剤組成物は、AbitolE(登録商標)、Permalyn3100(登録商標)、Permalyn2085(登録商標)、Permalyn6110(登録商標)、およびForalyn110(登録商標)のうち1つ以上を拭くmう。固体可塑剤(例えば、Permalyn3100(登録商標)および/またはPermalyn2085(登録商標))の有利な比率は約5〜15%であり得、一方、液体可塑剤(例えば、AbitolE(登録商標)および/またはOptifilm Enhancer400(登録商標))の有利な比率は約3〜5%であり得る。1つ以上の可塑剤を含む実施形態は有利には、約110〜140℃のTgを含む。
【0033】
アシル化/臭素化組成物
【0034】
いくつかの実施形態において、臭素化と共にアシル基をスチレン環上に用いることにより、臭素化スチレンポリマーの機械特性を驚くほど向上させることができる。前記スチレン環のアシル化は、前記スチレンポリマーを有効量のルイス酸触媒の存在下でC2−C18ハロゲン化アシルおよび/または適切な無水物と反応させることにより、達成することができる。より詳細には、いくつかの実施形態において、スチレンポリマーと、スチレンモノマー単位数に対して約0.01〜約0.3当量のC2−C18ハロゲン化アシルおよび/または無水物とを反応させることにより、アシル化を達成することができる。有利には、前記ハロゲン化アシルの当量比は約0.02〜0.2である。いくつかの実施形態において、0.03〜0.15がさらに有利である。当業者であれば、本明細書中において用いられるような「当量」および「当量比」という用語は、「置換度」(DS)という用語と同義のものとして用いられることをを認識する。「置換度」(DS)とは、1つのスチレン単位に結合した置換基の平均数を指す。さらに、いくつかの実施形態において、アシル化は、臭素化前または臭素化後に行ってよい.有利には、アシル化を先ず実行した後、臭素化を行うとよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー組成物の1つ以上のC2〜C18アシル基との適切な置換度は約0.01〜約0.5である。他の適切な置換後は、約0.01〜0.04、0.04〜0.08、0.08〜0.12、0.12〜0.16、0.16〜0.2、0.2〜0.24、0.24〜0.28、0.28〜0.32、0.32〜0.36、0.36〜0.40、0.40〜0.44、0.44〜0.48、または0.48〜約0.5であり得る。
【0036】
適切なハロゲン化アシルおよび/または無水物試薬は、前記炭化水素鎖上に置換基を有するかまたは有していない、任意の直鎖または分岐C2−C18酸ハロゲン化物または酸無水物を含み得る。有利には、適切なハロゲン化アシルおよび/または無水物は、飽和炭化水素鎖を有し得る。しかし、不飽和基および/または他の官能基(例えば、オキシラン基)を有するハロゲン化アシルおよび/または無水物も適切であり得る。本発明の別の局面において、本発明のポリマー中の不飽和基および/または他の官能基をさらに反応させることで、ポリマー特性を向上させることができる。さらに、適切なハロゲン化アシルおよび/または無水物は、前記環上に置換基を有するかまたは有していない脂肪族、芳香族であってもよいし、あるいは、脂肪族部分および芳香族部分を両方含んでもよい。適切なC2−C18ハロゲン化アシルおよび/または無水物の例を非限定的に挙げると、ヘキサノイルクロリド、ヘプタノイルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド、塩化ドデカノイル、塩化ブタノイル、ブタン酸無水物、塩化イソブチリル、イソ酪酸無水物、塩化ペンタノイル、塩化アセチル、無水酢酸、オクタノイルクロリド、デカノイルクロリド、塩化ドデカノイル、ヘキサデカノイルクロリド、オクタデカノイルクロリド、塩化ベンゾイル、4−メトキシ塩化ベンゾイル、レブリン酸ハロゲン化物、2、2−ジメチルペンタン酸ハロゲン化物、塩化リノール酸、無水オレイン酸、ベルノル酸塩化物、およびこれらの任意の適切な組み合わせがある。有利には、適切なハロゲン化アシルは、ヘキサノイルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド、デカノイルクロリド、塩化ドデカノイル、ヘキサデカノイルクロリド、オクタデカノイルクロリド、および塩化ベンゾイルのうち1つ以上から選択され得る。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、適切なハロゲン化アシルおよび/または無水物は、市販製品(例えば、多様な脂肪酸の混合物)から調製された酸ハロゲン化物および/または無水物誘導体も含み得る。このような市販製品を非限定的に挙げると、Proctor and Gamble Chemicals(Cincinnati、OH)から販売されている以下の商標名のもの(C−101(登録商標)、C−108(登録商標)、C−110(登録商標)、C−810(登録商標)、C−1095(登録商標)、C−1214(登録商標)、C−1218D(登録商標))などまたはこれらの適切な組み合わせがある。
【0038】
いくつかのアシル化実施形態によれば、前記アシル化スチレンポリマーと、スチレンモノマー単位数に対して約0.8〜約1.6当量の臭素化剤とを反応させることにより、臭素化を行うことができる。有利には、前記臭素化剤の当量比は約0.85〜1.3であり得るいくつかの実施形態において、0.9〜1.1がさらに有利であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、アシル化/臭素化スチレンポリマーの調製プロセスは、a)5−20wt.%溶液のスチレンポリマーを適切な有機溶媒中に調製するステップと、b)前記工程「a」において攪拌された溶液中に、以下の2つの成分を任意の順序で付加するステップであって、i)前記スチレンモノマー単位の当量に基づいた、約0.01〜約0.3当量比の量のC2−C18ハロゲン化アシルまたは無水物、およびii)前記「i」中のハロゲン化アシルおよび/または無水物の全モルに基づいた、約0.9〜1.2モル比の量のルイス酸触媒を付加する、ステップと、c)前記反応混合物の攪拌を約5〜120分間継続させるステップと、d)前記混合物に対し、ルイス酸触媒を前記スチレンポリマーの総重量に基づいて約0.3〜1.5wt.%の量だけ必要に応じて室温またはより低温において付加するステップと、e)前記力強く攪拌された反応混合物に対し、約0.8〜1.6に等しいブロモ/スチレンモノマー単位の当量比だけ臭素化剤を約−10〜10℃の温度を超える温度で付加するステップであって、前記付加は、約2〜60分間に完了して、反応生成物を提供する、ステップと、f)当該分野において公知の方法により、前記その結果得られた反応生成物をワークアップして、線維状の粉末生成物を得るステップであって、前記粉末生成物は、低色および有機溶媒中における高い溶解度を有する、ステップとを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、アシル化/臭素化スチレンポリマーの調製プロセスは、必要に応じて、不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴンガス)下において実行可能である。正の圧力を前記不活性ガスに付加する際、前記不活性ガスの流れがガス状副産物(例えば、臭化水素)を酸性ガスの中和が可能な水性無機塩基と共にとコンテナへと搬送可能なように、付加が行われる。
【0041】
(i)および/または(e)において用いられるルイス酸触媒の例を非限定的に挙げると、AlCl、FeCl、FeCl、SnCl、AlBr、FeBr、SbCl、ZrCl、Sb2O、ZnO、ZnClなどおよびその適切な組み合わせがある。いくつかの実施形態によれば、特に有利な触媒は、AlClである。
【0042】
適切なアシル化反応時間は、約5〜120分であり得る。他の適切な反応時間は、約5〜10分、10〜15分、15〜20分、20〜25分、25〜30分、30〜35分、35〜40分、40〜45分、45〜50分、50〜55分、55〜60分、60〜65分、65〜70分、70〜75分、75〜80分、80〜85分、85〜90分、90〜95分、95〜100分、100〜105分、105〜110分、110〜115分、またはさらには115〜120分であり得る。いくつかの実施形態によれば、特に有利な範囲は、約15〜60分であり得る。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態によれば、アシル化は、約0℃〜選択された溶媒の還流温度に近い温度において、行われ得る。しかし、いくつかの実施形態によれば、約15〜30℃の温度範囲が特に有利であり得る。
【0044】
本発明の実施形態によるアシル化/臭素化スチレンポリマー組成物の有利な重量平均分子量は、約300,000〜600,000g/molであり得る。さらなる、このような組成物は有利には、約90〜160℃のTを持ち得、あるいは、いくつかの実施形態において、より有利には約120〜約160℃のTを持ち得る。さらに別のこのような組成物は、有利には、ASTM方法D882に基づいた破断ひずみが約1.0%よりも高く、破壊応力が約3000psi(20.7MPa)よりも高い。このような組成物を有機溶媒中に溶解させることで、実質的に透明な溶液を形成することができる。適切な溶媒を挙げると、1、2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、シクロペンタノン、トルエン、およびこれらの混合物がある。このようにして得られたポリマー溶液を基板上にキャストすることで、透明フィルムを形成することができる。このようなフィルムは、約0.002〜約0.008の正の複屈折を有する。さらに、このようなフィルムは、アシル化無しの臭素化スチレンポリマーと比較して、向上した機械特性(例えば、引張伸び、引張強度、および引張係数を有する。さらに、このようなフィルムは、液晶ディスプレイデバイス内におけるコーティングとしてまたは層に積層される自立型フィルムとしての用途に適している。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリマーフィルム実施形態は、アシル化/臭素化スチレンポリマーの質量に対し、2〜20wt.%可塑剤をさらに含む。有利な可塑剤組成物としては、AbitolE(登録商標)、Permalyn3100(登録商標)、Permalyn2085(登録商標)、Permalyn6110(登録商標)、およびForalyn110(登録商標)のうち1つ以上がある。.固体可塑剤(例えば、Permalyn3100(登録商標)およびPermalyn2085(登録商標))の有利な比率は約5〜15%であり得、液体可塑剤(例えば、AbitolE(登録商標)およびOptifilm Enhancer400(登録商標))の有利な比率は約3〜5%であり得る。
【0046】
例1
ポリスチレンの臭素化(約1.0のブロモ/スチレンモノマー単位の当量比)
【0047】
1リットルの三つ口丸底フラスコにおいて、ポリスチレン(50.0g)(Mw280,000;Aldrich)を、1、2−ジクロロエタン(500g)中に攪拌されたおよび溶解させた。このフラスコには、機械攪拌器、窒素入口および窒素出口を設けた。正の圧力を付加して、窒素ガスを反応装置内に通過させ、前記反応時に生成された酸煙を、希薄NaOH溶液のコンテナへと搬送する。反応容器を氷水浴中に浸漬させることにより、前記ポリスチレン溶液の温度を10℃未満まで低下させる。前記冷却物を攪拌しつつ、前記冷却物に混合物AlCl(0.75g)を一度に付加し、その後、臭素(76.92g)(Br/スチレン当量比、1.0)を30分間滴下する。この混合物を、窒素下において低温でさらに10分間反応させる。その後、蒸留水(200g)およびKOH(水中15%、30g)を付加することにより、反応物をクエンチする。その結果得られた混合物をさらなる水と共にビーカー中に注入し、有機層を分離し、その後、前記有機層をメタノール中に沈殿させて、柔らかい固体塊を得る。この固体塊をN−メチルピロリドン(NMP、800g)中に再度溶解させ、前記溶液を濾過して固体不純物を除去する。前記濾過された溶液を、メタノール中に再度沈殿させる。その結果得られた白色の線維状固体を真空濾過によって収集し、水で洗浄した後にメタノールで洗浄し、真空下で乾燥させる。本例による収率は、およそ以下の通りであった:78g(Tg145°C;重量平均分子量(Mw)370,000)。
【0048】
例2
多様な可塑剤を用いた臭素化ポリスチレンに基づいたポリマーフィルム
【0049】
例1に従って調製されたおよそ15%溶液の臭素化ポリスチレンを1、2−ジクロロエタン(DCE)またはジクロロメタン(DCM)のいずれかと混合することにより、多様なポリマー溶液を可塑剤と共に調製し、DCE中のおよそ15%溶液の可塑剤を多様な比率で用いた。その後、各ポリマー溶液をアプリケータを用いてガラスプレート上に引き出した後、被覆した。湿潤フィルムを被覆された状態で室温で約30分間乾燥させ、その後被覆していない状態でさらに30分間乾燥させた。このように調製した乾燥フィルムをその後水で湿潤し、その後前記ガラス基板から取り外した。表1は、本方法に従って調製されたフィルムのリストを含む。ポリマーフィルム1〜9は、溶媒としてDCEを用いたキャストであり、フィルム9〜11は、溶媒としてDCMを用いたキャストである。偏光解析法によって遅延を決定し、ガラス遷移温度(Tg)をDSCによって決定した。
【表1】

【表2】

【0050】
例3
ポリスチレンのアシル化/臭素化(C6のDS=0.1;BrのDS=1.0)
【0051】
機械攪拌器、窒素入口およびオイルバブラーへの出口を備えた2Lの三つ口丸底フラスコをオーブン乾燥し、窒素流下で室温まで冷却した。前記フラスコに、乾燥ジクロロメタン中において10%ポリスチレンの貯蔵液溶液(500g)を注入した。攪拌を継続しながら、n−塩化カプロイル(6.46g、0.048mol)を注射器を通じて付加した。この混合物を約5分間攪拌し、無水塩化アルミニウム粉末(6.53g、0.049mol)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。室温において攪拌を約1時間継続した後、前記フラスコを氷および水のスラッシュ中に浸漬させることによって約10分冷却した。このとき、臭素(76.7g、0.480mol)を、均圧アーム付きの滴下漏斗内において秤量した。前記滴下漏斗上部には、ストッパーが取り付けられる。窒素入口を前記滴下漏斗と交換した。臭素(およそ4〜8g)を前記混合物に付加し、さらに塩化アルミニウム(150〜500mg)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。得られた反応混合物は、臭化水素を高速に放出した。残りの臭素を約5分間付加した。さらに2分間または実質的にHB放出が無くなるまで、攪拌を継続した。反応混合物を1000mLの水でクエンチし、約2時間攪拌した。水性層をデカントし、蒸留水と交換し、さらに20分間攪拌した。この洗浄手順を2回繰り返し、生成物をメタノール中に沈殿させた。その後、生成物を空気乾燥させ、トルエンおよびDMF中に再度溶解させ、濾過し、繊維としてメタノール中に沈殿させた。得られた生成物は、約134℃のTgを有し、633nmにおける複屈折(Δn)が約0.0041であるフィルムを生成した。
【0052】
例4
ポリスチレンのアシル化/臭素化(目標:C12のDS=0.1;BrのDS=1.0)
【0053】
機械攪拌器、窒素入口、およびオイルバブラーへの出口を備えた2Lの三つ口丸底フラスコをオーブン乾燥し、窒素流下で室温まで冷却した。前記フラスコに、乾燥ジクロロメタン中において10%ポリスチレンの貯蔵液溶液(500g)を注入した。攪拌を継続しながら、n−塩化ドデカノイル(10.50g、0.048mol)を注射器を通じて付加した。この混合物を約5分間攪拌し、無水塩化アルミニウム粉末(6.53g、0.049mol)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。室温において攪拌を約1時間継続した後、前記フラスコを氷および水のスラッシュ中に浸漬させることによって約10分冷却した。このとき、臭素(76.7g、0.480mol)を、均圧アーム付きの滴下漏斗内において秤量した。前記滴下漏斗上部には、ストッパーが取り付けられる。窒素入口を前記滴下漏斗と交換した。臭素(およそ4〜8g)を前記混合物に付加し、さらに塩化アルミニウム(150〜500mg)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。得られた反応混合物は、臭化水素を高速に放出した。残りの臭素を約5分間付加した。さらに2分間または実質的にHB放出が無くなるまで、攪拌を継続した。反応混合物を1000mLの水でクエンチし、約2時間攪拌した。水性層をデカントし、蒸留水と交換し、さらに20分間攪拌した。この洗浄手順を2回繰り返し、生成物をメタノール中に沈殿させた。その後、生成物を空気乾燥させ、トルエンおよびDMF中に再度溶解させ、濾過し、繊維としてメタノール中に沈殿させた。得られた生成物は、約116℃のTgを有し、633nmにおける複屈折(Δn)が約0.0038であるフィルムを生成した。
【0054】
例5
アシル化/臭素化ポリスチレンに基づいたポリマーフィルム
【0055】
例3および例4に記載の手順によれば、C6(0.05)/Br(0.95)およびC12(0.05)/Br(0.95)をそれぞれ有する2つのさらなるポリマーが調製された。アシル化/臭素化ポリスチレン組成物それぞれを表3中に記載のような1、2−ジクロロエタン中に溶解させることにより、多様なポリマー溶液(15wt.%)を調製した。その後、各ポリマー溶液をアプリケータを用いてガラスプレート上に引き出し、被覆した。湿潤フィルムを被覆状態で室温で30分間乾燥させ、その後非被覆の状態でさらに2時間乾燥させた。その後、このようにして調製された乾燥フィルムを水で湿潤し、前記ガラス基板から取り出した。以下は、本方法によって調製可能なフィルムのリストと、その予期される特性である。
【表3】

【0056】
例6
多様なポリマーフィルムの引張特性
【0057】
上記にて調製された多様なポリマーフィルムの機械特性をASTM方法D882を用いて決定した。表4において、ポリマーフィルム12〜15はアシル化/臭素化ポリスチレンに基づいたものであり、フィルム4、9および10は、本明細書中に記載のような可塑剤を用いた臭素化ポリスチレンに基づいたものである。
【表4】

【0058】
例7
ポリスチレンの臭素化(約1.0のブロモ/スチレンモノマー単位の当量比)
【0059】
本例は、反応混合物のワークアップの特に経済的なプロセス実施形態を示す。本実施形態では、溶媒のフラッシング除去および生成物の沈殿を実質的に同時に行う。機械攪拌器、窒素入口および窒素出口を備えた1リットル三つ口丸底フラスコ中において、ポリスチレン(25.0g)(Mw280,000;Aldrich)を攪拌し、1、2−ジクロロエタン(200g)中に溶解させた。正の圧力を付加して、反応装置内を窒素ガスを流れさせることで、反応時に発生した酸煙を希薄NaOH溶液のコンテナへと搬送する。前記反応容器を氷水浴中に浸漬させることにより、前記ポリスチレン溶液の温度を約10℃未満まで低下させた。AlCl(0.375g)を攪拌しながら前記冷却混合物に一度に付加した後、臭素(38.46g)(Br/スチレン当量比、1/1)を30分間滴下した。得られた混合物を窒素下において低温でさらに10分間反応させた。その後、蒸留水(100g)およびKOH(水中の15%、15g)を付加することにより、反応物をクエンチした。その結果得られた混合物をさらなる水と共にビーカーに注入し、有機層を分離した。その結果得られたポリマー溶液を別の漏斗中に収集し、約85°Cに加熱された蒸留水中にゆっくりと供給した。その際、前記溶媒を同時にフラッシュ除去し、白色沈殿物を水中に形成した。このようにして得られた沈殿物を収集し、メタノールで繰り返し洗浄し、乾燥させることで、粉末状生成物を得た。この粉末状生成物は、Tgが約134℃であり、重量平均分子量(Mw)が約404,000であった。
【0060】
例8
ポリスチレンの臭素化(約1.0のブロモ/スチレンモノマー単位の当量比)
【0061】
機械攪拌器を備えた30Lガラス反応装置に対し、ポリスチレン(2.00kg)および1、2−ジクロロエタン(16.5kg)を注入した。得られた混合物を室温で攪拌して溶液を形成した後、約0℃まで冷却した。AlCl(20g)を攪拌しながら1度に前記冷却混合物に付加した後、別の漏斗を通じて臭素(3.10kg)を約16分間滴下した。反応が高速に進行し、その結果臭化水素が放出された。この臭化水素を、水酸化カリウムの中和溶液へと送った。臭素付加完了後、さらに10分間攪拌を継続し、その後水を前記反応装置に付加して、反応をクエンチした。有機層を水で数回洗浄し、圧力フィルタで濾過して、不溶性不純物を全て除去した。その後、その結果得られた濾過液を、約85℃を超える温度まで加熱された水の反応装置へとゆっくりと送り、その際、1、2−ジクロロエタンを同時にボイルオフして、白色の沈殿物を形成した。このようにして得られた沈殿物を収集し、乾燥させて、粉末状生成物を得た。この粉末状生成物の場合、NMPの固有粘度は約0.67であった。
【0062】
例9
ポリスチレンのアシル化/臭素化(目標:C18&C16のDS=0.05;BrのDS=1.0)
【0063】
機械攪拌器、窒素入口およびオイルバブラーへの出口を備えた2L三つ口丸底フラスコをオーブン乾燥し、窒素流下で室温まで冷却した。前記フラスコに、乾燥ジクロロメタン中において10%ポリスチレンの貯蔵液溶液(200g)を注入した。攪拌を継続しながら、塩化ステアロイル(60%)および塩化パルミトイル(40%)(2.91g、0.01mol)を注射器を通じて付加した。この混合物を約5分間攪拌し、無水塩化アルミニウム粉末(1.40g、0.0105mol)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。室温において攪拌を約1時間継続した後、前記フラスコを氷および水のスラッシュ中に浸漬させることによって約10分冷却した。このとき、臭素(30.7g、0.192mol)を、均圧アーム付きの滴下漏斗内において秤量した。前記滴下漏斗上部には、ストッパーが取り付けられる。窒素入口を前記滴下漏斗と交換した。臭素(およそ4〜8g)を前記混合物に付加し、さらに塩化アルミニウム(180mg)を強く攪拌しながら前記フラスコに付加した。反応は高速に進行し、反応物は臭化水素を高速に放出した。残りの臭素を約5分間付加した。さらに2分間または実質的にHB放出が無くなるまで、攪拌を継続した。その後、反応混合物を200mLの水でクエンチし、約2時間攪拌した。水性層をデカントし、蒸留水と交換し、さらに20分間攪拌した。この洗浄手順を2回繰り返し、生成物をメタノール中に沈殿させた。その後、生成物を空気乾燥させ、トルエンおよびDMF中に再度溶解させ、濾過し、繊維としてメタノール中に沈殿させた。得られた生成物は、約117℃のTを有し、633nmにおける複屈折(Δn)が約0.004であるフィルムを生成した。
【0064】
当業者にとって、上記の組成物、方法および装置は、本発明の一般的範囲から逸脱することなく、変更および改変を採用可能であることが明かである。本発明は、このような変更および改変が添付特許請求の範囲の範囲またはその均等物内に収まる限り、このような変更および改変を全て含むものとして意図される。
【0065】
本発明について上記のように説明したため、以下に特許請求を記載する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学補償フィルムであって、
[(CHCH)Ar]による異方性ポリマー組成物であって、前記Ar基は、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレンまたはピレンのうち1つ以上を含み、前記Ar基は、少なくとも1つのBr原子置換基を含み、
前記ポリマー組成物は、正の複屈折を有する光学フィルムを規定する、
ポリマー組成物、
によって特徴付けられる、光学補償フィルム。
【請求項2】
前記臭素含有量は、約38〜55wt.%である、請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項3】
臭素の置換度はおよそ1である、請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
前記異方性ポリマー組成物の重量平均分子量は、約300,000〜約600,000g/molである、請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項5】
水素化ガムロジン、ペンタエリスリトールのトールオイルエステルガム、グリセロールのトールオイルエステルガム、ペンタエリスリトールのガムロジンエステル、ペンタエリスリトールの水素化ガムロジンエステル、ペンタエリスリトールテトラベンゾアート、蔗糖安息香酸エステル、PEGジ−2−エチルヘキサノアート、りん酸トリフェニル、AbitolE(登録商標)、Permalyn3100(登録商標)、Permalyn2085(登録商標)、Permalyn6110(登録商標)、Foralyn110(登録商標)、およびOptifilm Enhanser400(登録商標)、Uniplex552(登録商標)、Uniplex280(登録商標)、およびUniplex809(登録商標)、Admex523(登録商標)、またはその適切な組み合わせのうち1つ以上から選択された少なくとも1つの可塑剤によってさらに特徴付けられ、前記少なくとも1つの可塑剤は、約2wt.%〜約20wt.%の量において存在し、前記フィルムの質量のバランスは、前記ポリマー組成物を実質的に含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記異方性ポリマー組成物のガラス遷移温度は、約120〜約160℃である、請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記破断ひずみは約0.1〜約1%であり、前記破壊応力は約1500〜約3500psiである、請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記フィルムの遅延は約30〜約130nmであり、前記フィルム厚さは約40〜50μmである、請求項5に記載の光学補償フィルム。
【請求項9】
前記Ar基は、少なくとも1つの直鎖および/または分岐C2〜C18アシル置換基基をさらに含む、請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアシル基は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、2−エチルヘキサノイル、ドデカノイル、ブタノイル、イソブチリル、ペンタノイル、アセチル、オクタノイル、デカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、ベンゾイル、4−メトキシベンゾイル、レブリノイル、または2、2−ジメチルペンタノイルのうち1つ以上から選択される、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項11】
少なくとも1つのアシル基は、ヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、デカノイル、ドデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、またはベンゾイルのうち1つ以上から選択される、請求項10に記載の光学補償フィルム。
【請求項12】
前記異方性ポリマー組成物は、約0.01〜約0.5のC2〜C18アシル基置換度を含む、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項13】
前記異方性ポリマー組成物の重量平均分子量は、約300,000〜約600,000g/molである、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項14】
前記異方性ポリマー組成物のガラス遷移温度は、約90〜160℃である、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項15】
前記破断ひずみは約1〜約2%であり、前記破壊応力は約4500〜約6500psiである、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項16】
前記フィルムの遅延は約100〜約200nmであり、前記フィルム厚さは約40〜50μmである、請求項9に記載の光学補償フィルム。
【請求項17】
光学補償フィルムに適した臭素化ポリスチレンの調製プロセスであって、
スチレンポリマーのおよそ5〜20重量パーセントの溶液を適切な有機溶媒中に調製するステップと、
前記スチレンポリマー溶液にルイス酸触媒を付加するステップであって、前記付加されるルイス酸触媒の量は、前記スチレンポリマーの全質量に対して約0.3〜2.0重量パーセントである、ステップと、
前記スチレンポリマーおよびルイス酸触媒の溶液の温度を約−10〜10℃に調節するステップと、
前記スチレンポリマーおよびルイス酸触媒の溶液に約0.8〜約1.6当量の臭素化剤を約2〜60分間付加するステップであって、前記ステップは、力強く攪拌しながら行われる、ステップと、
線維状の粉末反応生成物を分離するステップと、
によって特徴付けられる、プロセス。
【請求項18】
光学補償フィルムに適したアシル化臭素化ポリスチレンの調製プロセスであって、
スチレンポリマーのおよそ5〜20重量パーセントの溶液を適切な有機溶媒中に調製するステップと、
前記スチレンポリマー溶液に対し、i)前記スチレンモノマー単位の当量に対し、約0.01〜約0.3当量比の量のC2−C18ハロゲン化アシルまたは無水物と、ii)前記ハロゲン化アシルおよび/または無水物の全モルに対し、約0.9〜1.2モル比の量のルイス酸触媒とをを任意の順序で攪拌しながら付加するステップであって、前記組み合わせは反応混合物を含む、ステップと、
前記反応混合物を約5〜120分間攪拌するステップと、
前記反応混合物の温度を約−10〜10℃に調節するステップと、
前記反応混合物を力強く攪拌しながら、約0.8〜約1.6当量の臭素化剤を前記反応混合物に約2〜60分間付加するステップと、、
線維状の粉末反応生成物を分離するステップと、
によって特徴付けられる、プロセス。
【請求項19】
約0.3〜約1.5重量パーセントのルイス酸触媒を前記反応混合物に付加するステップによってさらに特徴付けられ、前記重量パーセントは、前記スチレンポリマーの総重量に相対して計算される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
向上した液晶ディスプレイ画素であって、
前面および後面を有する第1の偏光層と、
前面および後面を有する第1の偏光層と、前面および後面を有する第1の電極であって、前記第1の偏光層を前記第1の電極の前記後面において受け入れる、第1の電極と、
前面および後面を有する第2の偏光層と、
前面および後面を有する第2の電極であって、前記第2の偏光層を前記第2の電極の前記前面において受け入れる、第2の電極と、
前記第1の電極と、前記第2の電極との間に動作可能に配置された液晶層と、
前記第1の偏光層の前記後面の後ろ側に配置されたバックライトまたは反射コンポーネントと、
によって特徴付けられ、
前記向上は、
前記第1の偏光層と前記第2の偏光層との間に動作可能に配置された光学補償フィルムであって、前記フィルムは、1つ以上の臭素化ポリスチレン組成物および/または臭素化およびアシル化ポリスチレン組成物を含む、光学補償フィルム、
によって特徴付けられる、液晶ディスプレイ画素。


【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−524918(P2012−524918A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507472(P2012−507472)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/032438
【国際公開番号】WO2010/124292
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511256060)アクロン ポリマー システムズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】