説明

臭素含有フルオレン化合物の製造方法

【課題】ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物を高収率で安価にかつ工業的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rはアルキル基等を示し、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基、アリール基などの置換基を示し、k、m、n、pは整数である。)で表されるフルオレン化合物と、臭素とを反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格)を有する臭素含有化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用した光学材料において、様々な特性(高屈折率、低複屈折率、高透過率、耐水性、耐衝撃性など)が要求される。高屈折率を有する典型的な樹脂として、フルオレン骨格を有するポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートなどが挙げられるが、中でもフルオレン骨格を有するポリマーは、高い屈折率を有するだけではなく、複屈折率も低く、透明度も高いため、理想的な光学材料と言える。このような高い性能を発現するために、ポリマー原料であるモノマーの開発が精力的に行われている。例えば、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現する方法としては、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性基を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスアミノフェニルフルオレン(BAFL)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。例えば、このようなフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂として、特開2002−284864号公報(特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂で構成された成形材料が開示されている。また、特開2004−339499号公報(特許文献2)には、ビスフェノールフルオレン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンなどを重合成分とする樹脂(ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール系樹脂、アニリン系樹脂など)と、添加剤とを含有する組成物が開示されている。
【0003】
これらの文献では、反応性基としてヒドロキシル基、アミノ基などを有するフルオレン骨格を有する化合物を開示しているが、さらに、ハロゲン原子、特に臭素原子が置換したフルオレン骨格を有する化合物は、さらなる反応性が期待できる。また、このようなフルオレン骨格を有する化合物では、ハロゲン原子を他の官能基に変換することも考えられ、さらなる適用範囲の拡大が期待できる。このような化合物(フルオレンモノマー)としては、例えば、9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが知られている。このような臭素原子を有するフルオレン骨格含有化合物は、例えば、米国特許5447960号(特許文献3)に開示されており、この文献では、9−フルオレノンと2−ブロモフェノールとを酸触媒存在下で反応させることにより9,9−ビス(ブロモ−ヒドロキシフェニル)フルオレンを得たことが記載されている。しかし、この文献の方法では、2−ブロモフェノールを理論量の2倍用いても収率が十分でない。また、複数の位置異性体が生成するとともに、反応の再現性が乏しい。さらに、この文献の方法では、コストが高くなり、工業化が困難という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−284864号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−339499号公報(特許請求の範囲、段落番号[0032])
【特許文献3】米国特許544960号(特許請求の範囲、スキーム1(第4欄))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物[9,9−ビス(ヒドロキシブロモアリール)フルオレン類など]を高収率で製造する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物を容易に製造する方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物を安価にかつ工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類などのヒドロキシル基を有する特定のフルオレン骨格を有する化合物と、臭素とを、必要に応じて適当な溶媒中で反応させると、特定の臭素化されたフルオレン骨格を有する化合物が高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rはシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、メチロール基、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。)
で表されるフルオレン化合物と、臭素とを反応させ、下記式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、qは1以上の整数、rは0以上の整数を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
で表される臭素含有フルオレン化合物を製造する方法である。
【0014】
この方法において、前記式(1)で表される化合物が、下記式(1A)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、p1は0〜3の整数を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
で表される化合物であり、前記式(2)で表される化合物が、下記式(2A)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、q1およびr1はそれぞれ1〜4の整数であり、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。ただし、p1+q1≦4、p1+r1≦4である。)
で表される化合物であってもよい。
【0019】
特に、本発明の方法では、前記式(1)で表される化合物が、下記式(1B)
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、p2は0又は1を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
で表される化合物であり、前記式(2)で表される化合物が、下記式(2B)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R、R、R、k、m、p2は前記と同じ。)
で表される化合物であってもよい。
【0024】
前記方法において、特に、p2は0であってもよい。
【0025】
また、本発明の方法では、特に、式(1)で表される化合物が、下記式(1D)
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
で表される化合物であり、式(2)で表される化合物が、下記式(2D)
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
で表される化合物であってもよい。
【0030】
また、前記方法において、特に、mは0であってもよい。
【0031】
本発明の方法では、臭素をほぼ定量的に付加させることができる。そのため、例えば、前記式(1B)で表される化合物から前記式(2B)で表される化合物を得る前記方法および前記式(1D)で表される化合物から前記式(2D)で表される化合物を得る前記方法において、臭素を、前記式(1)で表される化合物[式(1B)で表される化合物又は式(1D)で表される化合物]1モルに対して、臭素分子換算で1.9〜2.3モル程度使用してもよい。
【0032】
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物を高収率で製造できる。特に、本発明では、臭素を反応させるという簡便な方法により、ヒドロキシル基および臭素原子を有する特定のフルオレン骨格含有化合物を容易に製造できる。また、本発明の方法では、安価にかつ工業的に有利に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明では、下記式(1)
【0035】
【化9】

【0036】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは臭素原子を除く置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、pは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
で表されるフルオレン化合物と、臭素とを反応させ、下記式(2)
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、qは1以上の整数、rは0以上の整数を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
で表される臭素含有フルオレン化合物を製造する。
【0039】
[式(1)で表されるフルオレン化合物]
前記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0040】
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。
【0041】
前記式(1)において、基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0042】
また、前記式(1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つ芳香族炭化水素環において、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0043】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、0〜12(例えば、1〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0〜2(例えば、0〜1)、特に0であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
【0044】
また、前記式(1)において、基Rを含む基(すなわち、−O−(RO)−H、ヒドロキシル基含有基などということがある)の置換数nは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、ヒドロキシル基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、ヒドロキシル基含有基は、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位、(例えば、フェニル基の3位、4位など)に置換していればよく、好ましくは少なくとも4位に置換していてもよい(nが1のとき4位;nが2のとき、3位および4位、2位および4位など)。また、ヒドロキシル基含有基は、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0045】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などのエーテル基(置換ヒドロキシル基);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などのチオエーテル基(置換メルカプト基);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);メチロール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子などの臭素原子を除くハロゲン原子);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0046】
これらのうち、代表的には、基Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、メチロール基、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基であってもよい。
【0047】
好ましいRとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
【0048】
なお、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数pは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、1〜3)、さらに好ましくは0〜2、特に0〜1(例えば、0)であってもよい。なお、複数の環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0049】
具体的な前記式(1)で表される化合物には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類が含まれる。
【0050】
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがベンゼン環でありmが0である化合物){例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジ乃至テトラヒドロキシフェニル)フルオレン類など}、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがナフタレン環でありmが0である化合物){9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(モノヒドロキシナフチル)フルオレン類など}などが含まれる。
【0051】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがベンゼン環でありmが1以上である化合物)、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがナフタレン環でありmが1以上である化合物)などが挙げられる。
【0052】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、前記式(1)においてmが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(mが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類などが含まれる。
【0053】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0054】
これらの化合物のうち、下記式(1A)で表される化合物(前記式(1)において環Zがベンゼン環であり、nが1であり、ヒドロキシル基含有基の置換位置がフェニル基の4位である化合物)が好ましい。このような化合物では、位置選択的に臭素を付加しやすい。
【0055】
【化11】

【0056】
(式中、p1は0〜3の整数を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
上記式(1A)において、p1は0〜3の整数であればよく、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、特に0であってもよい。また、上記式(1A)において、R、R、R、k、mは前記と同じであり、好ましい態様なども前記と同様である。
【0057】
なお、上記式(1A)で表される化合物には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]などが含まれる。
【0058】
さらに好ましい化合物には、下記式(1B)で表される化合物(前記式(1)において環Zがベンゼン環であり、nが1であり、ヒドロキシル基含有基の置換位置がフェニル基の4位であり、置換基Rの置換位置が3位であるか又は置換基Rを有しない化合物)が含まれる。このような化合物を使用すると、後述するように、フェニル基の少なくとも3位(特に3位のみ)に位置選択的に臭素化させやすい。
【0059】
【化12】

【0060】
(式中、p2は0又は1を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
上記式(1B)で表される化合物には、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−C1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−C6−10アリールフェニル)フルオレン]などが含まれる。
【0061】
また、下記式(1C)で表される化合物(前記式(1)において環Zがナフタレン環であり、nが1であり、フルオレン骨格の9位に対するナフチル基の置換位置が2位であり、ヒドロキシル基含有基の置換位置がナフチル基の6位である化合物)も好ましい。このような化合物でも、位置選択的に臭素を付加しやすい。
【0062】
【化13】

【0063】
(式中、p3は0〜2の整数を示し、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
上記式(1C)において、p3は0〜2の整数であればよく、好ましくは0〜1、さらに好ましくは0であってもよい。また、上記式(1C)において、R、R、R、k、m、p1は前記と同じである。式(1C)において、p1は0〜1、特に0であるのが好ましい。
【0064】
さらに好ましい化合物には、下記式(1D)で表される化合物が含まれる。このような化合物を使用しても、後述するように、2−ナフチル基の少なくとも5位(特に5位のみ)に位置選択的に臭素化させやすい。
【0065】
【化14】

【0066】
(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
代表的な上記式(1D)で表される化合物には、例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン;9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[6−(ヒドロキシC2−4アルコキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどが含まれる。
【0067】
なお、反応に使用する前記式(1)で表される化合物の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であってもよい。また、前記式(1)で表される化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法により合成したものを使用してもよい。
【0068】
本発明では、前記式(1)で表される化合物と臭素とを反応させることにより、前記式(1)において、環Zに臭素原子が付加した特定のフルオレン骨格を有する化合物を高収率で製造する。なお、特開2003−171321号公報には、フルオレン、フルオレノン、9−アルキルフルオレン、9,9−ジアルキルフルオレン、スピロビフルオレン類などの構造を有するフルオレン化合物を、水に分散させ、得られた分散液に臭素を加えて反応させ、臭素か反応を行うことが記載されている。しかし、この文献で臭素化させる基質としてのフルオレン化合物は、本発明における前記式(1)で表される化合物とは、フルオレンの9位に二つのアリール基(環Z)が置換している点、およびこのアリール基にヒドロキシル基(又はヒドロキシル基含有基)が置換している点で大きく異なる。また、この文献の段落番号[0012]および実施例から明らかなように、フルオレンの2および7位を優先的にハロゲン化するという点でも本発明とは大きく異なる。すなわち、本発明では、前記式(1)で表される特定のフルオレン骨格含有化合物と、臭素とを反応させることにより、位置選択的に、しかも高収率で臭素化する点に特徴がある。
【0069】
反応に使用する臭素は、臭素分子の形態で使用してもよく、臭化物イオンの形態で使用してもよく、これらが混合した形態で使用してもよい。通常、臭素は、少なくとも臭素分子の形態で存在する臭素を用いる場合が多い。特に、反応の効率性などを考慮すると、臭素分子を用いるのが好ましい。
【0070】
反応に使用する臭素の割合は、前記式(1)で表される化合物に付加させる割合に応じて適宜選択でき、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、臭素分子換算で、例えば、0.9〜20モル、好ましくは1〜15モル(例えば、1.3〜12モル)、さらに好ましくは1.5〜10モル(例えば、2〜10モル)程度であってもよい。
【0071】
特に、本発明の方法では、ほぼ定量的に臭素を付加させることができるため、目的とする付加数に応じてほぼ当量的に臭素を使用してもよい。例えば、臭素を、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、臭素分子換算で、例えば、0.9×(q+r)モル〜1.3×(q+r)モル、好ましくは0.92×(q+r)モル〜1.2×(q+r)モル、さらに好ましくは0.95×(q+r)モル〜1.1×(q+r)モル程度使用してもよい。なお、上記割合において、qおよびrは、後述の式(2)における係数に対応する。
【0072】
特に、前記式(1)で表される化合物1モルに対して合計2モルの臭素原子を付加する場合(例えば、前記式(1B)で表される化合物から後述の式(2B)で表される化合物を得る場合、前記式(1D)で表される化合物から後述の式(2D)で表される化合物を得る場合など)、臭素を、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、臭素分子換算で、例えば、1.8〜2.5モル(例えば、1.85〜2.4モル)、好ましくは1.9〜2.3モル(例えば、1.95〜2.2モル)、さらに好ましくは2〜2.1モル(例えば、2〜2.05モル)程度使用してもよい。
【0073】
なお、前記式(1)で表される化合物と臭素とは、これらを混合することにより反応し、その混合方法としては特に限定されず、使用する臭素をすべて混合(例えば、添加により混合)してもよいが、滴下や分割投入などにより逐次混合(添加)するのが好ましい。
【0074】
反応(臭素化反応)に際しては、反応を促進させるために、触媒(又は添加剤)を用いてもよい。こうした触媒の例としては、ルイス酸類(塩化鉄、塩化亜鉛など)、臭素以外のハロゲン類(ヨウ素(I2)など)、重金属類(鉄、ニッケルなど)、酸化剤類(過酸化水素水、過ヨウ素酸など)、鉱酸類(硫酸、塩酸、臭化水素酸など)などが挙げられるが、後処理の問題、コスト的な観点から、これらを添加せずに行うことが好ましい。本発明では、このような触媒を使用しなくも、高収率で効率よく臭素化できる。
【0075】
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、前記式(1)で表される化合物を溶解(又は分散)させることができ、臭素と反応しない溶媒であれば特に制限されず、例えば、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類など)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0076】
なお、溶媒の混合方法は特に限定されず、例えば、予め前記式(1)で表される化合物(および臭素)と混合してもよく、溶媒の一部又は全部に臭素に溶解させて前記式(1)で表される化合物に混合してもよい。
【0077】
反応温度は、特に制限されず、例えば、−20℃〜100℃、好ましくは−10℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の範囲であってもよい。なお、反応により発熱を伴う場合には、発生する熱を随時除去しながら反応を行ってもよい。
【0078】
また、臭素化反応の反応時間は、特に制限されず、例えば、数分(例えば、1分)〜48時間、好ましくは5分〜24時間(例えば、10分〜12時間)、さらに好ましくは20分〜6時間(例えば、30分〜1時間)程度であってもよい。
【0079】
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
【0080】
なお、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。本発明の方法では、通常、臭素化反応は理想的に定量的に進行する。このため、反応生成物(反応系)からの目的物の回収は、必要に応じて残存する臭素を分解した後、分液や濾過などの操作で容易に行うことができる。このような簡便な分離工程によっても、すでに得られた反応生成物の純度は十分に純度が高いが、さらに純度を高めるためには、蒸留や再結晶などの一般的な方法により精製してもよい。
【0081】
このようにして、下記式(2)で表される化合物(臭素含有フルオレン化合物)が得られる。
【0082】
【化15】

【0083】
(式中、qは1以上の整数、rは0以上の整数を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
上記式(2)において、qは1以上であればよく、例えば、1〜8(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。また、rは0以上であればよく、例えば、0〜8(例えば、0〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。qおよびrは同一であっても、異なっていてもよい。通常、qおよびrは同一[例えば、1以上(例えば、1〜2)]であってもよい。また、qおよびrの合計は、例えば、1〜15(例えば、1〜12)、好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8(例えば、2〜6)、特に2〜4(例えば、2)であってもよい。
【0084】
代表的な前記式(2)で表される化合物としては、例えば、9,9−ビス(モノヒドロキシ−ブロモフェニル)フルオレン類{9,9−ビス(ヒドロキシブロモフェニル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがベンゼン環でありmが0でありqおよびrがいずれも1以上である化合物){例えば、9,9−ビス(ヒドロキシブロモフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシ−ブロモ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−ブロモ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシ−ブロモ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−ブロモ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]など}などの9,9−ビス(ヒドロキシブロモアリール)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシブロモナフチル)フルオレン類(前記式(1)において環Zがナフタレン環でありmが0でありqおよびrがいずれも1以上である化合物){例えば、9,9−ビス(ヒドロキシブロモナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノヒドロキシブロモナフチル)フルオレン類など};9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−ブロモフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ブロモフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジブロモフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−ブロモフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−ブロモフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−ブロモナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−ブロモナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
【0085】
これらのなかでも、前記式(1A)で表される化合物と臭素との反応により得られる化合物、特に、前記式(1A)で表される化合物1モルに対して2モル以上(2〜8モル)の臭素原子が付加した化合物(以下の化合物(2A))を高選択的に得ることができる。
【0086】
【化16】

【0087】
(式中、q1およびr1はそれぞれ1〜4の整数であり、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。ただし、p1+q1≦4、p1+r1≦4である。)
上記式(2A)において、q1およびr1は、それぞれ1〜4の整数であればよいが、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。
【0088】
なお、上記式(2A)で表される化合物には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−ブロモフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−ブロモ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−ブロモ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−ブロモ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−ブロモ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]などが含まれる。
【0089】
本発明では、前記のように、位置異性体の生成が少なく、高い位置選択性で前記式(1)で表される化合物を臭素化できる。例えば、前記式(1B)で表される化合物1モルに対して、2モルの臭素原子を付加すると、下記式(2B)で表される化合物を効率よく得ることができる。
【0090】
【化17】

【0091】
(式中、R、R、R、k、m、p2は前記と同じ。)
上記式(2B)で表される化合物には、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−C1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモ−5−C6−10アリールフェニル)フルオレン]などが含まれる。
【0092】
また、前記式(1C)で表される化合物と臭素との反応により得られる化合物(以下の新規化合物(2C))も代表的である。
【0093】
【化18】

【0094】
(式中、q2およびr2はそれぞれ1〜3の整数であり、R、R、R、k、m、p1、p3は前記と同じ。ただし、p3+q2≦3、p3+r2≦3である。)
上記式(2A)において、q2およびr2は、それぞれ1〜3の整数であればよいが、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1であってもよい。
【0095】
本発明では、前記のように、位置異性体の生成が少なく、高い位置選択性で前記式(1)で表される化合物を臭素化できる。例えば、前記式(1D)で表される化合物1モルに対して、2モルの臭素原子を付加すると、下記式(2D)で表される新規な化合物を効率よく得ることができる。
【0096】
【化19】

【0097】
(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
上記式(2D)で表される化合物には、例えば、9,9−ビス(5−ブロモ−6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン;9,9−ビス[5−ブロモ−6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−ブロモ−6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[5−ブロモ−6−(ヒドロキシC2−4アルコキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどが含まれる。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0099】
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
【0100】
(HPLC)
測定機器および条件は以下の通りである。
【0101】
使用機器:HITACHI L−71シリーズ
検出器:L−7405 λ=254nm
カラム:ジエールサイエンス; Inertsil ODS−EP、4.6×150mm(5μm)、 Lot. TE5−2372
溶出液:アセトニトリル:水=85:15(40℃)
流速:1mL/min。
【0102】
(実施例1)9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの合成
200mLの三角フラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン10g(28.5mmol、大阪ガスケミカル(株)製)を入れ、クロロホルム200mLを加えて溶解させ、溶液(BPF溶液という)を得た。別の三角フラスコにクロロホルム100mLを入れ、臭素9.2g(57.6mmol、ナカライテスク社製)を加えた。得られたこの臭素溶液を2mLずつBPF溶液に室温で、30分かけて加えた。水50mLを加えた後、デカンテーションにより分液した。亜硫酸ナトリウム水溶液をクロロホルム溶液に加えて過剰の臭素を完全に除き、分液した後溶媒を留去した。減圧乾燥することで、9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを白色粉末(14.35g、28.2mmol,収率99%)として得た。純度はHPLCを用いて測定し、95.3%であった。なお、白色粉末が、9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(下記式で表される化合物)であることは、NMR測定により確認した。なお、NMRにより、位置異性体である9,9−ビス(4−ブロモ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンは全く生成していないことが確認された。
【0103】
【化20】

【0104】
H−NMR:δ(ppm)=7.75(d、2H)、7.16−7.41(m、6H)、7.07(dd、4H)、6.89(d、2H)、5.43(s、2H)
13C−NMR:δ(ppm)=63.54、110.01、115.81、120.32、125.68、127.77、127.90、129.01、130.88、139.14、139.74、150.24、150.58。
【0105】
(比較例1)9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの合成
(米国特許544960号記載の合成方法による)
100mLの三口フラスコにメカニカルスターラーを取り付け、9−フルオレノンを3.60g(20.0mmol、東京化成社製)及び2−ブロモフェノールを13.9g(80mmol、ナカライテスク社製)入れ、60℃で加熱撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸2.0mLを滴下した後、65℃で18時間反応させた。ジエチルエーテル50mLと、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルにより抽出し、抽出液の水洗を行った後、エーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去したあと、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色粉末(0.73g、収率7%、純度84.0%)を得た。粉末のH−NMRを測定したところ、9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン以外に、位置異性体(下記式で表される2種の化合物)が生成していることが確認された。
【0106】
【化21】

【0107】
【化22】

【0108】
(実施例2)9,9−ビス(5−ブロモ−6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンの合成
滴下ロート、塩化カルシウム管を装着した1000mL反応器に9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(13.56g、30.1mmol、大阪ガスケミカル社製)、クロロホルム212mLを入れ、攪拌した。得られた懸濁液に、臭素(9.72g、60.8mmol)とクロロホルム100mLとの混合溶媒を室温で20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに室温で30分間攪拌し、反応混合物に水50mLを加え、デカンテーションにより上澄み液を除いた。有機層に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加え、分液操作を2回行い、さらに有機層を蒸留水で洗浄した。この有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過、減圧乾燥により9,9−ビス(5−ブロモ−6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンを薄桃白色粉末(18.77g)として得た。純度はHPLCを用いて測定し、99.4%であった。なお、薄桃白色粉末が、9,9−ビス(5−ブロモ−6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(下記式で表される化合物)であることは、NMR測定により確認した。
【0109】
【化23】

【0110】
H−NMR(DMSO−d6 270MHz):δ(ppm)=7.18(d、2H、J=8.9Hz)、7.34(t、2H、J=7.3Hz)、7.41−7.47(m、6H)、7.57(d、2H、J=7.6Hz)、7.62(d、2H、J=8.9Hz)、7.94(d、2H、J=8.9Hz)、7.98(d、2H、J=7.6Hz)、10.51(s、2H)
13C−NMR(DMSO−d6 67.5MHz):δ(ppm)=64.30、103.93、118.31、120.56、125.22、125.60、125.96、127.72、127.86、128.05、128.34、128.78、131.48、139.45、140.18、150.06、152.23
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明では、9,9−ビス(ヒドロキシブロモアリール)フルオレンなどのフルオレン骨格を有する臭素含有化合物を、従来に比べて、高い収率で製造することができる。しかも、臭素を反応させるという、非常に簡便な方法で、高い収率でかつコスト的に極めて低い方法で製造することができ、極めて有用である。そして、このような本発明の方法により得られるフルオレン骨格を有する臭素含有化合物は、芳香環上に臭素を有しているため、臭素を有しないフルオレン骨格を有する臭素含有化合物に比べて、異種の又は優れた特性を有していることが期待でき、また、有機化学的手段などで臭素原子を他の官能基に変換することにより、新たなフルオレン骨格を有する化合物、さらにはこの化合物を用いた新規な樹脂となりうる。そして、このようなフルオレン骨格を有する臭素含有化合物や新たなフルオレン骨格を有する化合物は、化学中間体、機能性樹脂原料、光学材料(又は光学材料の前駆体)などとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rはシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、メチロール基、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。)
で表されるフルオレン化合物と、臭素とを反応させ、下記式(2)
【化2】

(式中、qは1以上の整数、rは0以上の整数を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
で表される臭素含有フルオレン化合物を製造する方法。
【請求項2】
式(1)で表される化合物が、下記式(1A)
【化3】

(式中、p1は0〜3の整数を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
で表される化合物であり、式(2)で表される化合物が、下記式(2A)
【化4】

(式中、q1およびr1はそれぞれ1〜4の整数であり、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。ただし、p1+q1≦4、p1+r1≦4である。)
で表される化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(1)で表される化合物が、下記式(1B)
【化5】

(式中、p2は0又は1を示し、R、R、R、k、mは前記と同じ。)
で表される化合物であり、式(2)で表される化合物が、下記式(2B)
【化6】

(式中、R、R、R、k、m、p2は前記と同じ。)
で表される化合物である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
p2が0である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)で表される化合物が、下記式(1D)
【化7】

(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
で表される化合物であり、式(2)で表される化合物が、下記式(2D)
【化8】

(式中、R、R、R、k、m、p1は前記と同じ。)
で表される化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
mが0である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
臭素を、式(1)で表される化合物1モルに対して、臭素分子換算で1.9〜2.3モル使用する請求項3又は5記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−256334(P2009−256334A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66864(P2009−66864)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】