説明

舗装機械のスクリード保持機構

【課題】舗装機械の停止動作時又は発進動作時に施工面にスクリードマークがつく又は不陸が生じる等の施工不具合の発生を抑える。
【解決手段】舗装機械1の施工速度を検出する速度検出手段17と、該速度検出手段17で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、該調整されたアシスト圧の圧油をリフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えるアシスト圧調整手段18とを具備させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装機械のスクリード保持機構に関するものであり、特に、舗装機械の停止動作時及び発進動作時に施工面にスクリードマークがつく等の施工不具合の発生を抑えることが可能な舗装機械のスクリード保持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の舗装機械を、車輪走行型アスファルトフィニシャを例にとって図4を用いて説明する。アスファルトフィニシャ1は、機械本体2の前部にホッパ3が備えられ、該ホッパ3で受入れたアスファルト合材がコンベヤ(図示せず)で機械本体2の後部に搬送され、この搬送されたアスファルト合材が、スクリュー4でほぼ施工幅に拡げられた後、次のような機構からなるスクリードで敷き均すように構成されている。
【0003】
該スクリードの機構を述べると、機械本体2の両側部に、一対のレベリングアーム5が各枢軸5aを揺動中心として上下に揺動自在に取付けられ、これら一対のレベリングアーム5の各揺動端側に、左右に伸縮可能な一対のスクリード6,7が懸吊されている。また、機械本体2の後面上部と前記一対のレベリングアーム5の各揺動端側との間に、それぞれリフトシリンダ8,9が取付けられている。各リフトシリンダ8,9は、各シリンダ本体の基端が機械本体2の後面上部に回動自在に取付けられ、各ロッド8a,9aの先端部が前記一対のレベリングアーム5の各揺動端側に回動自在に取付けられている。
【0004】
図5は、前記スクリード6,7の面圧調整用の油圧回路を示している。該面圧調整用油圧回路は、舗装作業中にスクリード6,7の面圧を一定値に調整する主油圧回路10と、舗装作業の停止中に、敷き均したアスファルト合材へのスクリード6,7の沈み込みを抑えるため、舗装作業の停止前後にリフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側にアシスト圧を加えるアシスト圧調整用油圧回路11とで構成されている。
【0005】
前記主油圧回路10は、ポンプ12からの圧油を一定値に減圧する減圧弁13及び電磁パイロット作動型のチェック弁14とを備え、リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に接続されている。そして、舗装作業中に、減圧弁13で一定値に減圧された圧油を、リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に背圧として供給するようにしている。一方、アシスト圧調整用油圧回路11は、減圧弁15及び電磁パイロット作動型のチェック弁16とを備え、リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に接続されている。そして、舗装作業の停止前後に、減圧弁15で所定値に減圧設定された圧油を、リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側にアシスト圧として加えるようにしている。
【0006】
また、舗装機械のスクリード保持に関する従来技術として、例えば次のようなアスファルトフィニシャのスクリード面圧調整装置が知られている。この従来技術は、減圧弁及び電磁弁を備えた主油圧回路を設け、該主油圧回路をスクリードシリンダの下部(ロッド側)に接続し、舗装作業中は、該主油圧回路により一定値に減圧(40Kg/cm2)された圧油を背圧としてスクリードシリンダに供給し、タンパ及びバイブレータを備えたスクリードの面圧を一定値に調整している。また、舗装作業停止時にスクリードの面圧を所定値に減じるためのリリーフ弁及び制御弁を備えた停止時用油圧回路を設け、舗装作業停止時には該停止時用油圧回路に切換えて、スクリードシリンダに所定値に減圧(70Kg/cm2)された停止時用の圧油を供給し、スクリードの面圧を前記舗装作業中以下に減じてスクリードの沈下を抑えるようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−67508号公報(第7〜10頁、図2,3及び4)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記スクリードは、敷き均すアスファルト合材の流れから生じる浮力と、当該スクリードの重量とが釣合うことにより、平坦な舗装施工を行うことができる。しかし、この浮力は、前記機械本体が移動することによるアスファルト合材と当該スクリードとの相対運動で生じており、施工速度が速ければ大きく、遅ければ小さくなる。したがって、機械本体の停止中は浮力を受けないため、スクリードは敷き均したアスファルト合材に沈み込み、スクリードマーク(停止跡)がついてしまう等の施工不具合が生じることになる。
【0008】
これに対し、図4及び図5に示した従来技術においては、舗装作業の停止前後に、所定値に減圧設定された圧油を、リフトシリンダのロッド側にアシスト圧として加えている。
【0009】
また、特許文献1に記載の従来技術においては、舗装作業の停止時に、スクリードシリンダのロッド側に、所定値に減圧(70Kg/cm2 )された停止時用の圧油を供給してスクリードの面圧を舗装作業中以下に減じている。
【0010】
しかしながら、上記いずれの従来技術においても、リフトシリンダのロッド側へのアシスト圧又はアシスト相当圧の供給が急激であったため、それによるスクリードマークの凹みがついたり、反対に盛り上がってしまう現象である不陸等の施工不具合の発生を払拭しきれなかった。
【0011】
そこで、舗装機械の停止動作時又は発進動作時に施工面にスクリードマークがつく又は不陸が生じる等の施工不具合の発生を抑えるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、機械本体の前部で受入れ該機械本体の後部に搬送したアスファルト合材を、スクリューでほぼ施工幅に拡げた後、所要の背圧の圧油がロッド側に供給されたリフトシリンダにより所要の面圧値に設定されたスクリードで舗装面に敷き均す舗装機械において、前記舗装機械の施工速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、該調整されたアシスト圧の圧油を前記リフトシリンダのロッド側に加えるアシスト圧調整手段とを有する舗装機械のスクリード保持機構を提供する。
【0013】
この構成によれば、舗装機械の停止動作時に施工速度は徐々に減少し、発進動作時に施工速度は徐々に増大する。したがって、アシスト圧調整手段により、停止動作時には、徐々に増大するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油がリフトシリンダのロッド側に加えられる。この後、当該リフトシリンダのロッド側は、所定圧力値からなる停止時用の圧油がロック状態とされる。一方、発進動作時には、徐々に減少するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油がリフトシリンダのロッド側に加えられる。この後、リフトシリンダのロッド側の圧油は舗装作業時の一定圧力値となってスクリードが所要の面圧値に設定される。
【0014】
請求項2記載の発明は、上記アシスト圧調整手段は、上記施工速度に対応した制御信号を演算し出力するコントローラと、前記制御信号に応じた駆動信号を出力する制御量指令部と、ポンプからの圧油を前記駆動信号に応じたアシスト圧に調整する比例電磁式リリーフ減圧弁と、上記舗装機械の停止後に上記リフトシリンダのロッド側への供給圧油をロックするチェック弁とを具備する舗装機械のスクリード保持機構を提供する。
【0015】
この構成によれば、速度検出手段で検出された施工速度からコントローラで制御信号が演算され、この制御信号により制御量指令部から駆動信号が出力される。比例電磁式リリーフ減圧弁で、前記駆動信号により停止動作時に徐々に増大するアシスト圧の圧油が調整され、発進動作時には徐々に減少するアシスト圧の圧油が調整される。チェック弁では、舗装機械の停止後に、所定圧力値からなる停止時用の圧油がリフトシリンダのロッド側にロック状態とされる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、舗装機械の施工速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、該調整されたアシスト圧の圧油をリフトシリンダのロッド側に加えるアシスト圧調整手段とを具備させたので、舗装機械の停止動作時には、徐々に増大するアシスト圧の圧油がリフトシリンダのロッド側に加えられ、発進動作時には、徐々に減少するアシスト圧の圧油がリフトシリンダのロッド側に加えられることで、舗装機械の停止動作時には施工面にスクリードマーク(凹)がつく等の施工不具合の発生を抑えることができ、発進動作時には施工面に不陸(凸)が生じる等の施工不具合の発生を抑えることができるという利点がある。
【0017】
請求項2記載の発明は、上記アシスト圧調整手段は、上記施工速度に対応した制御信号を演算し出力するコントローラと、前記制御信号に応じた駆動信号を出力する制御量指令部と、ポンプからの圧油を前記駆動信号に応じたアシスト圧に調整する比例電磁式リリーフ減圧弁と、上記舗装機械の停止後に上記リフトシリンダのロッド側への供給圧油をロックするチェック弁とを具備させたので、速度検出手段で検出された施工速度の増減に応じて、停止動作時には徐々に増大するアシスト圧の圧油及び発進動作時には徐々に減少するアシスト圧の圧油を確実に調整することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
舗装機械の停止動作時又は発進動作時に施工面にスクリードマークがつく又は不陸が生じる等の施工不具合の発生を抑えるという目的を、機械本体の前部で受入れ該機械本体の後部に搬送したアスファルト合材を、スクリューでほぼ施工幅に拡げた後、所要の背圧の圧油がロッド側に供給されたリフトシリンダにより所要の面圧値に設定されたスクリードで舗装面に敷き均す舗装機械において、該舗装機械の施工速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、該調整されたアシスト圧の圧油を前記リフトシリンダのロッド側に加えるアシスト圧調整手段とを備え、該アシスト圧調整手段には、前記施工速度に対応した制御信号を演算し出力するコントローラと、前記制御信号に応じた駆動信号を出力する制御量指令部と、ポンプからの圧油を前記駆動信号に応じたアシスト圧に調整する比例電磁式リリーフ減圧弁と、前記舗装機械の停止後に前記リフトシリンダのロッド側への供給圧油をロックするチェック弁とを具備させることにより実現した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1は、舗装機械のスクリード保持機構の構成図である。本実施例は、舗装機械として、車輪走行型アスファルトフィニシャが適用されている。なお、図1において、前記図4及び図5における構成要素と同一乃至均等のものは、前記と同一符号を以って示し、重複した説明を省略する。
【0020】
まず、図1を用いて、本実施例に係る舗装機械のスクリード保持機構の構成を説明する。本実施例では、機械本体2内に、アスファルトフィニシャ1の施工速度を検出する速度検出手段としての車速センサ17が取付けられている。そして、該車速センサ17で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、この調整されたアシスト圧の圧油をリフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えるアシスト圧調整手段18が、次のように構成されている。
【0021】
該アシスト圧調整手段18は、車速センサ17で検出された施工速度に対応した制御信号を演算し出力するコントローラ19と、該コントローラ19から出力される制御信号に応じた駆動信号を出力する制御量指令部20と、ポンプ21からの圧油を前記駆動信号に応じたアシスト圧に調整する比例電磁式リリーフ減圧弁22と、前記アスファルトフィニシャ1の停止後に前記リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側への供給圧油をロックする電磁パイロット作動型のチェック弁23とを備えて構成されている。
【0022】
次に、図2及び図3を用いて、上述のように構成された舗装機械のスクリード保持機構の作用を説明する。図2は、車速センサ17で検出される施工速度と調整されるアシスト圧との関係を示す特性図、図3の(a)はアスファルトフィニシャ1の停止動作時及び発進動作時における施工速度の変化例を示す図。(b)は、その施工速度の変化に応じて調整されるアシスト圧を示す図。(c)は比較例としての従来のアシスト圧の調整例を示す図である。
【0023】
図3の(a)に示すように、アスファルトフィニシャ1の施工速度は、停止動作時に徐々に減少し、発進動作時には徐々に増大する。この施工速度の変化が車速センサ17で検出され、該検出された施工速度に対応した制御信号がコントローラ19から出力され、該制御信号に応じた駆動信号が制御量指令部20から出力される。
【0024】
そして、図2及び図3の(b)に示すように、比例電磁式リリーフ減圧弁22において、前記制御量指令部20からの駆動信号により、停止動作時には、徐々に増大するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油が前記リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えられる。アスファルトフィニシャ1の停止後、前記主油圧回路10側のチェック弁14(図5参照)及びアシスト圧調整手段18におけるチェック弁23が作動して、当該リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側は、次に述べる舗装作業中よりも高い所定圧力値からなる停止時用の圧油がロック状態とされる。このとき、リフトシリンダ8,9の縮み側(ロッド8a,9a側の反対側)は、フリーとされる。
【0025】
一方、発進動作時には、徐々に減少するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油が前記リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えられる。この後、アスファルトフィニシャ1の舗装作業中、リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側の圧油は、前記主油圧回路10側から供給される圧油により一定の圧力値となってスクリード6,7が所要の面圧値に設定される。
【0026】
なお、舗装作業中におけるアスファルトフィニシャ1の施工速度は、通常一定である。しかし、該施工速度は、アスファルト合材の質、厚さ等の他、施工業者によっても速い等の場合がある。このため、図2中に示すように、舗装作業中においても、アシスト圧調整手段18側で施工速度の変化に応じたアシスト圧を調整し、この調整したアシスト圧の圧油を、主油圧回路10側から供給される圧油に加えるようにしてもよい。
【0027】
上述したように、本実施例に係る舗装機械のスクリード保持機構においては、アスファルトフィニシャ1の停止動作時には、徐々に増大するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油が前記リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えられ、発進動作時には、徐々に減少するアシスト圧が調整され、該調整されたアシスト圧の圧油が前記リフトシリンダ8,9のロッド8a,9a側に加えられる。したがって、アスファルトフィニシャ1の停止動作時には施工面にスクリードマーク(凹)がつく等の施工不具合の発生を抑えることができ、発進動作時には施工面に不陸(凸)が生じる等の施工不具合の発生を抑えることができる。
【0028】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施例に係る舗装機械のスクリード保持機構の構成図。
【図2】本実施例における施工速度とアシスト圧との関係を示す特性図。
【図3】(a)は停止動作時及び発進動作時における施工速度の変化例を示す図。(b)は本実施例におけるアシスト圧の調整例を示す図。(c)は比較例としての従来のアシスト圧の変化例を示す図。
【図4】従来の車輪走行型アスファルトフィニシャの側面図。
【図5】従来のスクリード面圧調整用の油圧回路図。
【符号の説明】
【0030】
1 車輪走行型アスファルトフィニシャ(舗装機械)
2 機械本体
4 スクリュー
6,7 スクリード
8,9 リフトシリンダ
8a,9a ロッド
10 主油圧回路
17 車速センサ(速度検出手段)
18 アシスト圧調整手段
19 コントローラ
20 制御量指令部
21 ポンプ
22 比例電磁式リリーフ減圧弁
23 チェック弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体の前部で受入れ該機械本体の後部に搬送したアスファルト合材を、スクリューでほぼ施工幅に拡げた後、所要の背圧の圧油がロッド側に供給されたリフトシリンダにより所要の面圧値に設定されたスクリードで舗装面に敷き均す舗装機械において、
前記舗装機械の施工速度を検出する速度検出手段と、該速度検出手段で検出された施工速度の増減に応じて減増するようにアシスト圧を調整し、該調整されたアシスト圧の圧油を前記リフトシリンダのロッド側に加えるアシスト圧調整手段とを有することを特徴とする舗装機械のスクリード保持機構。
【請求項2】
上記アシスト圧調整手段は、上記施工速度に対応した制御信号を演算し出力するコントローラと、前記制御信号に応じた駆動信号を出力する制御量指令部と、ポンプからの圧油を前記駆動信号に応じたアシスト圧に調整する比例電磁式リリーフ減圧弁と、上記舗装機械の停止後に上記リフトシリンダのロッド側への供給圧油をロックするチェック弁とを具備することを特徴とする請求項1記載の舗装機械のスクリード保持機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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