説明

舗装道路の補強構造

【課題】低コストで、短工期に行う事が出来る舗装道路の補強構造を提供すること。
【解決手段】基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなる舗装道路の補強構造であって、前記基礎支持層と前記硬質舗装層との間に、前記硬質舗装層を待ち受けて支持する補強支持層を形成することを特徴とする、舗装道路の補強構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装道路の構造は、路体80と、路体80の上部に位置する路床70、路床70の上部に位置する路盤60、及び路盤60の上部に位置する硬質舗装層50と、を積層したものであり、車両等によって作用する荷重を下方へ分散して伝達する構造となっている。(図8)
【0003】
舗装道路を補強する構造としては、硬質舗装層50の内部に鉄筋や金網からなる補強材を入れる方法や、舗装道路の下層の路体そのものをPC構造やセメント改良によって硬質にして補強する方法が知られている。
【特許文献1】特開2001−115407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
舗装道路が大きな荷重を受けた場合、舗装道路は荷重分散効果を有するが、コンクリート構造物などの剛性を有する構造物が介在すると、変形や荷重分散の度合いが異なるため、舗装構造と剛性の構造物の境界部では大きな段差を生じることとなる。
【0005】
また、近年、砂浜や海を埋め立てて、その上に原子力発電所や空港等の施設が建設されている。
埋め立てて形成した地盤は、地震時に液状化し不等沈下が生じることがある。
地盤に不等沈下が生じた場合、施設内の建物等の建造物にはより深い地層まで基礎が設けられているため破壊を免れるが、施設内の舗装道路の下方の路体や路床が不等沈下を起こすと、その上部の舗装道路に段差が生じ、破壊されてしまう。
舗装道路が破壊されてしまうことにより施設内の道路交通が遮断されてしまい、施設の機能が失われ、復旧までの経済的損失が大きくなってしまう。
【0006】
舗装道路の表層に補強材を入れる方法は、補強材である金網・鉄筋が高価であり、金網の配置・鉄筋の配筋に手間がかかるため、施工期間も長く、施工コストも高くなってしまう。また、錆などによる劣化等が生じる恐れもある。
舗装道路の下層の路体70そのものをPC構造やセメント改良によって硬質にする場合、硬くて脆いものとなり、変形を許容することができずに破壊されてしまう。
また、既設の道路の路体70を補強するためには、舗装道路を路床60まで掘削しなければならないため、施工期間も長く、施工コストも高くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、低コストで、短工期に行う事が出来る、舗装道路の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、基礎支持層の上部に路盤、路盤及び硬質舗装層を積層してなる舗装道路の補強構造であって、前記基礎支持層と前記硬質舗装層との間に、前記硬質舗装層を待ち受けて支持する補強支持層を形成することを特徴とする、舗装道路の補強構造を提供するものである。
本願の第2発明は、第1発明の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、土砂層と、前記土砂層の両面を被覆する複数枚の挟持シートと、前記土砂の複数箇所を貫通し、前記複数枚の挟持シートに接続した縫合体と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造を提供するものである。
本願の第3発明は、第1発明の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、複数の帯状部材の一部を結合し、複数の枠体を組み合わせた形状の立体補強材と、前記立体補強材の枠体に充填した土砂と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造を提供するものである。
本願の第4発明は、第1発明の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、土砂層と、前記土砂層を内包する挟持袋体と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>路体等の基礎支持層の不等沈下によって段差が生じても、硬質舗装層は補強支持層が有する曲げ剛性及びじん性により支持されることによって、変形が抑制されるため、道路交通が維持され、復旧までの経済損失が小さくなる。
<2>補強支持層は、挟持シートの敷設と、挟持シートを縫合体により縫合して構成するため、施工が容易であり、養生期間も不要であるため、施工期間を短縮することができる。
<3>補強支持層は、帯状部材からなる立体補強材を敷設し、内部に土砂を充填して構成するため、施工が容易であり、養生期間も不要であるため、施工期間を短縮することができる。
<4>舗装道路の補強を路床まで掘削せずに行うことができるため、低コストとなる。
<5>舗装道路の補強を路床まで掘削せずに行うことができるため、既設道路の補強も短工期で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
(1)補強構造の概要
本発明の舗装道路の補強構造は、路体80と、路体80の上部の路床70、路盤60及び路盤60の上部に位置するアスファルトやコンクリートからなる硬質舗装層50、及び路体80と硬質舗装層50との間に設ける補強支持層10と、により構成する。(図1)
以下、各部材について詳述する。
【0012】
<1>補強支持層
補強支持層10は、基礎支持層となる路体80より上部に位置する路床70と路盤60のいずれかに設け、上部の舗装道路を支持するものである。
補強支持層10は、層状に形成した土砂等を挟持する2枚の挟持シート20と、2枚の挟持シートを連結する縫合体30と、により構成する。
【0013】
<1−1>挟持シート
挟持シート20は、土砂等を層状に形成した土砂層11を挟持して補強支持層10を構成するもので、ある程度の引張強度と可撓性を有する、公知の各種シート状物又はネット状物である。
【0014】
<1−2>縫合体
縫合体30は、2枚の挟持シート20を連結するものであり、樹脂、繊維、鋼線等の可撓性と非伸縮性を有する素材からなるロープ材又はテープ材である。
縫合体30は2枚の挟持シート20間を、垂直方向に向けて連結する。
【0015】
[作用]
次に、挟持シート20及び縫合体30を用いた補強方法について説明する。
【0016】
<1>挟持シートの敷設
新たに舗装道路を構築する場合には、補強支持層10を形成する位置の直下まで(例えば路体70および路床60まで)、舗装構造を構築する。
また、既設の舗装道路に耐震舗装を行う場合には、補強支持層10を形成する位置まで(例えば路床60の上部まで)、舗装道路を掘削する。
この際、舗装下部の路床60や路体70を掘削する必要がないため、低コストで、短工期に施工を行うことができる。
【0017】
次に、形成した路床60の上面に挟持シート20aを敷設する。(図2)
隣り合う挟持シート20a間の処理は、重合させて敷設し、必要に応じて重合部を接着手段またはピン打設により一体に接合する。
【0018】
<2>土砂層の構築
次に、挟持シート20a上に位置し、挟持シート20a,20bにより挟持される、土砂層11を構築する。
土砂層11は、挟持シート20a上に土砂等を撒き出し、各種の転圧用機器を用いて十分に締め固めて所定層厚を形成する。
土砂層10は、難変形性の粒状物であればよく、土砂の他に例えば砂、砕石、処分に窮している各種廃材或いはこれらの混合物を使用できる。
【0019】
<3>挟持シートの敷設
土砂層11の上面全域に、前記した挟持シート20aと同質の挟持シート20bを敷設し、土砂層11の上下両面を挟持シート20a,20bで被覆するように構成する。
【0020】
<4>縫合工
次に、上位の挟持シート20b側から縫合体30を鉛直方向へ向けて貫通して、上下の挟持シート20a,20b間を縫合体30で一体に連結する。縫合体30は所定の間隔を隔てて上下の挟持シート20a,20b間の複数箇所に設置して補強支持層10を構築する。
このように複数の縫合体30を用いることにより、上下の挟持シート20a,20b間に位置する土砂層11を、上下の挟持シート20a,20bと複数の縫合体30により複数に立体的に区画し、各区画単位で土砂層11を拘束する。複数の区画で拘束することにより、土粒子間のインターロッキング効果と、挟持シート20の拘束作用が組み合わさり、補強支持層10をせん断強度、曲げ強度及びじん性の高い土塊状とすることができる。
【0021】
縫合体30の縫合方法の一例を説明すると、先端に錘体形のストッパ31を設けた縫合体30をガイドパイプ33に内挿し、ストッパ31が下位の挟持シート20aを貫通するまでガイドパイプ33と共に縫合体30を貫通した後、ガイドパイプ33のみを引き抜いて縫合体30を補強支持層10に残置させ、上位の挟持シート20aから露出する縫合体30に固定具32を取り付けて、或いは縫合体30を結んで固定する。(図3)
縫合体30を連結する際、縫合体30は弛みのない程度に軽く張った状態で固定するが、緊張して固定してもよい。また縫合体30と各挟持シート20a,20bとの接合手段は、本例に例示した手段のほかに接着や融着或いはこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
<5>舗装道路の構築
以上のようにして構築した補強支持層10の上部に、路盤60及び硬質舗装層50を形成し、図1のような舗装道路の補強構造を構築する。
【0023】
<6>補強構造の効果
補強支持層10は、土砂を立体的に区画したものであるため、下方に荷重を分散して伝達する、舗装道路に必要な機能を維持する。
そして、補強支持層10は内部を立体的に区画して形成することにより、せん断強度、曲げ強度及びじん性の高い層となる。このため、より下部の支持体である路体80の変形に追従することなく、硬質舗装層50を含む舗装道路の上部を支持することができる。
【0024】
地震等の災害発生時、舗装構造の下部に位置する路床70や路体80が液状化して崩壊することで、図4のように不等沈下が発生して段差Aが生じた場合でも、せん断強度、曲げ剛性及びじん性の高い補強支持層10が、路床70や路体80の変形に追従せずに、硬質舗装層50及び路盤60を待ち受ける形となって支持するため、道路の変形が抑制され、道路交通を維持することができる。
【実施例2】
【0025】
上記実施例1では、補強支持層10は、挟持シート20a、20bによって土砂層10を挟持し、上下の挟持シート間を縫合体30にて結合して立体的に形成したが、複数の枠体41を組み合わせた形状の立体補強材40を敷設し、枠体に土砂等を充填して補強支持層10を形成することもできる。(図5)
【0026】
立体補強材40は、複数の帯状部材42の一部を連結してあり、伸展することによって、ハニカム形状の枠体41を組み合わせた形状となる。立体補強材40の上面と下面には、挟持シート20を敷設する。
立体補強材40は、複数の帯状部材42からなるため、伸展する前は、帯状部材42が積層された状態である。このため、現場への搬入・敷設が容易であり、施工効率が向上する。
【0027】
このハニカム形状の枠体41に土砂等を充填すると、枠体41によって荷重が分散されるため、下方に荷重を分散して伝達する、舗装道路に必要な機能を維持した補強支持層10となる。
また、立体補強材40は、挟持シート20と同じ、引張強度と可撓性を有する物で構成することにより、立体補強材40そのもの、または上下に敷設した挟持シート20と組み合わさることにより、せん断強度、曲げ強度及びじん性の高い補強支持層10を形成することができる。
【実施例3】
【0028】
上記実施例1では、補強支持層10は、挟持シート20a,20bによって土砂を挟持して形成したが両端を封止して袋状にした挟持袋体21に土砂を封入して補強支持層10とすることもできる。(図6)
挟持袋体21に土砂を封入してあるため、この補強支持層10は、下方に荷重を分散して伝達する、舗装道路に必要な機能を維持する。
そして、引張強度と可撓性を有する挟持袋体21によって土砂を袋内に封止することにより、せん断強度、曲げ強度及びじん性の高い補強支持層10を形成することができる。
【0029】
補強支持層10の施工においては、現場にて土砂を封入して挟持袋体21を形成して路床70上に敷設することで補強支持層10を構築することもできるし、予め土砂を封入したロール状の挟持袋体21を現場に搬入し、路床70上に敷設して補強支持層10を構築することもできる。(図7)
予め土砂を封入し、ロール状で現場に搬入・敷設できるため、現地での作業を減らすことができ、施工効率が向上する。
【0030】
[その他実施例]
以上の実施例において、補強支持層10は単層としたが、補強支持層10を複数層構築することもできる。
補強支持層10の層数は、舗装道路の重要度に合わせて、適当な層数を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の舗装道路の補強構造の説明図
【図2】挟持シートの敷設工の説明図
【図3】縫合体による結合工の説明図
【図4】本発明の舗装道路の補強構造の段差発生時の説明図
【図5】本発明の実施例2に係る立体補強材の説明図
【図6】本発明の実施例3に係る舗装道路の補強構造の説明図
【図7】挟持袋体の敷設工の説明図
【図8】従来の舗装道路の補強構造の説明図。
【符号の説明】
【0032】
10 補強支持層
20 挟持シート
21 挟持袋体
30 縫合体
31 ストッパ
32 固定具
33 ガイドパイプ
40 立体補強材
50 硬質舗装層
60 路盤
70 路床
80 路体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎支持層の上部に路床、路盤及び硬質舗装層を積層してなる舗装道路の補強構造であって、
前記基礎支持層と前記硬質舗装層との間に、前記硬質舗装層を待ち受けて支持する補強支持層を形成することを特徴とする、
舗装道路の補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、土砂層と、前記土砂層の両面を被覆する複数枚の挟持シートと、前記土砂の複数箇所を貫通し、前記複数枚の挟持シートに接続した縫合体と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造。
【請求項3】
請求項1に記載の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、複数の帯状部材の一部を結合し、複数の枠体を組み合わせた形状の立体補強材と、前記立体補強材の枠体に充填した土砂と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造。
【請求項4】
請求項1に記載の舗装道路の補強構造において、前記補強支持層は、土砂層と、前記土砂層を内包する挟持袋体と、により構成することを特徴とする、舗装道路の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−90534(P2010−90534A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258326(P2008−258326)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)発行者名 社団法人土木学会 (2)刊行物名 第63回年次学術講演会講演概要集 (3)発行日 平成20年8月13日
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【Fターム(参考)】