説明

航空エンジンの出荷準備をするための工場

航空エンジンの出荷準備をするための工場であって、試験測定手段をエンジンに取り付けるためのステーション(10)と、エンジンを試験施設(16)に搬送しエンジンを工場に戻すための手段(14)と、試験測定手段を取り外すためのステーション(18)と、内視鏡検査を実施するためのステーション(20)と、仕上げステーション(22)と、出荷ステーション(24)とを含む工場であり、エンジンは、エンジンに固定され、工場に配置されたオーバヘッド構造物に沿って並進移動可能なホイストに取り付けられたスプレッダによって1つのステーションから別のステーションに移送され、各ステーションは、対応するステーションにおいてエンジンで実施される作業を表示および追跡するためのコンピュータ端末が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出荷のために、一般に、航空機に取り付けるために航空エンジンを準備するための工場に関する。
【背景技術】
【0002】
規制に従って、組立ラインを出たそれぞれの航空エンジンは、特別にその目的のために設計された施設内で実施される動作試験を受ける。エンジンは、工場内で種々の試験測定手段が取り付けられる必要があり、試験測定手段は、試験時に使用され、試験後にエンジンから取り外されて、機器の最終部品と交換される。
【0003】
試験測定手段は、複数の人によってエンジンに取り付けられ、エンジンを試験現場まで搬送して、その後エンジンを工場に戻すのに使用される搬送カートに載せられる。
【0004】
試験後に、一般に、試験測定手段の取り外し、エンジンの検査、機器の最終部品の取り付け、エンジンの出荷最終準備が一定のステーションで行われるが、その間、エンジンは搬送カートに載せられた状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成には、いくつか欠点がある:
エンジンが搬送カートに支えられているために、作業者がエンジンの特定の部分(危険である可能性がある)にアクセスするのが難しく作業者の作業を妨げること、
実際に、エンジン上で並行して複数の作業が行えるように手配することが不可能であり、エンジンの準備に必要な時間が長くなり、その準備コストが高くなること、
エンジン上で作業がどのように進行しているのかを見ることができないこと、
作業者は、印刷された組立マニュアルおよびエンジンに添付された印刷ラベルしか参照できないこと、
作業者によって実施される作業を点検するのが非常に難しい、さらには不可能であることである。
【0006】
本発明の特定の目的は、上述の欠点を回避し、航空エンジンの出荷のための準備の際の安全性、スピード、信頼性、点検を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、航空エンジンの出荷準備をするための工場であって:
測定試験手段を各エンジンに取り付けるための取り付けステーション、測定試験手段を取り外すための取り外しステーション、内視鏡検査によってエンジンを検査するための検査ステーション、機器の最終部品を各エンジンに取り付けるための仕上げステーション、および各エンジンを出荷構造体に取り付けてエンジンに保護覆いを被せるための出荷ステーションであって、エンジン用に所定の経路に沿って工場内に固定して配置される上述のステーションと、
エンジンを移送し操作するための移送および操作手段であって、上述のステーションの上方にあるオーバヘッド構造体によって担持され、種々のステーションに設置されエンジンの全ての部分に直接アクセスできるように設計された固定支持体に対するエンジンの載置および取り外しを行うための載置取り外し手段と、エンジンを1つのステーションから他のステーションに移動させるための移動手段とを含む移送および操作手段と、
上述の任意のステーションから1つのエンジンが離れた後、ほぼ即座に別のエンジンがそのステーションに到着し、種々のステーションでエンジンがとどまる時間が同じになるように移送手段を制御するための制御手段とを備えることを特徴とする工場を提供する。
【0008】
本発明の工場では、エンジンの作業を行う個々の人がエンジンのいろいろな部分にアクセスしやすい。これは、特に、エンジンを移送および操作する手段が工場の種々のステーションにわたって広がる固定構造体で構成されているので、床高さで大きな空き空間が生じ、作業者がエンジン搬送カートに妨げられることなくエンジンに沿って、またエンジンの下を容易に動き回ることができるためである。
【0009】
したがって、エンジンで実施される種々の作業が順次、常に同じ順序で同じ場所で実施されるので、作業者の仕事が容易になり、上述の作業の追跡や点検が容易になる。
【0010】
本発明の別の特徴によれば、移送手段は、上述のオーバヘッド構造体の水平レール上で並進案内され、エンジンを載置および取り外しするためにエンジンに固定されるスプレッダにケーブルでつながれるホイストを備える。
【0011】
有利には、ホイストのケーブルは、スプレッダに固定された漏斗状のガイド内で受承され、アクチュエータによって作動される係止手段によって前記ガイド内で保持されるフックによってスプレッダにつながれている。
【0012】
したがって、エンジンを1つのステーションから別のステーションに移動させて、特定のステーションに設置された支持手段上に載置し、そこから取り外す操作は、自動で行われる。
【0013】
測定試験手段を設置および取り外しするためにステーションに設置されるエンジン支持体は、エンジンの位置のいずれかの側で床に固定される垂直支柱を備え、各垂直支柱は、エンジンのケーシングを固定するための水平アームと、アームの高さ位置調節手段とを担持し、アームの高さ位置調節手段は、他の垂直支柱のアームの調節手段と同期して動作して、水平固定アームの全てが常に共通の水平面上にあるようにする。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、試験測定手段を取り付けおよび取り外しをするためのステーションのそれぞれは、エンジンの中間ケーシングに位置合わせして配置される1組の前方垂直支柱と、エンジンの排気ケーシングに位置合わせして排気ケーシングの片側に配置される後方垂直支柱とが取り付けられる。
【0015】
試験測定手段を取り付けるためのステーションでは、オーバヘッド構造体は、取り付けステーションの傍に位置する搬送カートからエンジンを取り出し、エンジンを取り付けステーションの上方にくるように移動させて、エンジンを上述した垂直支柱の水平アームの高さまで下げ、その後、エンジンを取り付けステーションの上方に持ち上げ、エンジンを試験施設まで搬送するのにカートに載置するために、ホイストを移動させるための水平レールを有する。
【0016】
同様に、取り外しステーションでは、オーバヘッド構造体は、取り外しステーションの傍に位置する搬送カートからエンジンを取り出し、エンジンを取り出しステーションの上方にくるように移動させて、エンジンを上述の垂直支柱の水平アームの高さまで下げ、その後エンジンを取り外しステーションの上方に持ち上げ、エンジンを検査ステーションまで移動させるために、取り外しステーションの上方にホイストを移動させるための水平レールを有する。
【0017】
検査ステーションおよび仕上げステーションでは、エンジン支持体は、各々のステーションでエンジンの位置のいずれかの側に位置する垂直柱の組を備え、垂直柱は、その底端部が床からエンジンの直径を越える高さに位置するように上述のオーバヘッド構造体からつるされ、エンジンに固定されるスプレッダを支持する手段およびスプレッダに取り付ける手段を含む。
【0018】
これらのスプレッダの支持取付手段は、柱を同期して垂直に移動可能である。
【0019】
さらに、各ステーションに上部照明手段および下部照明手段が設置され、下部照明手段は、床に埋め込まれ、床面にある透明材料製のプレートで覆われる。
【0020】
この下部照明手段は、作業者の動きを妨げず、作業者が十分な照明の下でエンジンの底部を見ることができるようにする。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、各ステーションは、各ステーションで作業者によって所定の順序でエンジンで実施される連続作業を表示するための少なくとも1つのコンピュータ端末と、それらの作業を行う際に作業者によって使用される1組の工具とを含む。
【0022】
各ステーションは、上述のステーションのエンジンの位置のいずれかの側に設置され、エンジンで連続して同じまたは異なる作業を実施する2人の作業者によって同期して使用されるように設計された少なくとも2つのコンピュータ端末と2組の工具とを含むのが好ましい。
【0023】
さらに、各ステーションは、各ステーションにあるエンジンに関する情報およびエンジンの出荷先に関する情報を表示するための別のコンピュータ端末を含む。
【0024】
さらに、工場は補修ステーションを含み、補修ステーションは、上述のオーバヘッド構造体の下で検査ステーションの傍に配置され、試験で所定の基準に適合しないことが分かったエンジンを受け取る。
【0025】
補修ステーションは、試験結果が不十分であったエンジンに特定の処置を施すことができるように、検査ステーションと直列でなく、検査ステーションと平行に位置する。
【0026】
添付図面を参照して考察された以下の説明を読めば、本発明はより良く理解され、本発明の他の特徴、詳細、利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の工場の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の工場の斜視図である。
【図3】エンジンに試験測定手段を取り付けるためのステーションの図である。
【図4】検査ステーションおよび仕上げステーションの1つを示す図である。
【図5】図4のステーションを離れるエンジンを示す図である。
【図6】試験測定手段を取り付けるためのステーションおよび取り外すためのステーションの構成を示す図である。
【図7】工場の1つのステーションで2人の作業者がエンジン上で作業する様子を示した平面図である。
【図8】工場の1つのステーションで2人の作業者がエンジン上で作業する様子を示した端面図である。
【図9】工場の1つのステーションでエンジンで実施される作業を表示するためのコンピュータ端末の図である。
【図10】工場のステーションにあるエンジンに関する情報を表示するための別のコンピュータ端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
最初に、図1について説明する。図1は、本発明の工場の概略構成と工場で実施される作業の概略フローチャートを示す図である。
【0029】
工場の第1のステーション10は、組立ラインから1つずつエンジンを受け取り、エンジンがクライアント、例えば、航空機製造会社に出荷される前に受ける試験時に使用される特定の試験測定手段をエンジンに取り付ける。
【0030】
一般に、これらの試験のためにエンジンに取り付けられる手段は、始動装置、エジェクタアセンブリ、カウルリアシュラウド、フロントコーン、潤滑および燃料回路機器、吸気ノズル、エンジン計量手段を備える。
【0031】
このように装備されたエンジン12は、搬送カート14に載置されて、隔離された建物に配置された試験施設16に送られ、そこでエンジンは丈夫な固定構造体に取り付けられて、種々の速度で始動および動作を含む試験を受ける。
【0032】
この試験が終わると、エンジン12は、再度カート14に載置されて、測定試験手段を取り外すために工場のステーション18に戻される。
【0033】
その後、エンジンは、特に、エンジンの低圧段および高圧段のブレードおよび翼の状態を確認するための内視鏡検査ステーション20に移動される。
【0034】
その後、エンジンは、仕上げステーション22に移動され、そこでクライアントへの出荷の準備がなされ、このステーションで、特に、オイルタンク、始動装置、補機ギアボックスからオイルを抜き、識別コネクタを設置し、カウルリアシュラウド、フロントコーン、フロントコーンプロテクタ、およびエンジンの敏感な部分を腐食から保護するための手段を取り付ける操作が行われる。
【0035】
その後、エンジンは、出荷ステーション24に移動され、そこで、エンジンは出荷構造体26に載置されて、目視最終検査を受け、その後、保護カバーがエンジンの種々の部分に被せられ、エンジンは保護覆いで覆われる。
【0036】
図1に示されるように、工場の個々のステーションは、1つのステーションを離れるエンジンが次のステーションに即座に進むように共通軸に沿って配置される。種々のステーションでエンジンがとどまる時間の長さは、同じである(バイパスターボジェットを準備する一実施形態では4時間である)。
【0037】
工場はさらに補修ステーション26を含み、エンジンが所定の基準に適合せず、特定の処置が必要な場合に、エンジンは取り外しステーション18から補修ステーション26に移動される。この補修ステーション26は、内視鏡検査ステーション20と平行に位置するので、準備工場内をエンジンがたどる正規の経路から外れて位置する。
【0038】
次に、本発明の工場の一実施形態を示した図2以降について説明する。
【0039】
図2は、図1に示されたステーション10、18、20、22、24、28の特定の配置を示しており、これらのステーションの全てが、地上数メートルの高さにあって地面に固定された垂直柱32によって支持されるオーバヘッド水平構造体30を有することが分かる。構造体30は、工場内でエンジンを移送するための手段および操作するための手段の全てと、いくつかのステーションにおいてエンジンを支持するための手段とを担持し、そのことで大きな床面積を解放し、作業者が容易に工場内および種々のステーション内で動き回ることができる。
【0040】
取り付けステーション10および取り外しステーション18では、エンジン支持手段は、対応するステーションのエンジンの位置のいずれかの側で地上に固定された3本の垂直支柱34を備え、3本の垂直支柱34のうちの2本は、エンジンの中間ケーシングと位置合わせされて互いに面しており、3本目の垂直支柱はエンジンの排気ケーシングと位置合わせされてエンジンの片側に位置する。
【0041】
それぞれの垂直支柱は、エンジンを固定するための水平アーム36と、垂直支柱34における前記アームの高さ位置を調節するための手段とを含み、垂直支柱におけるアームの位置を調節するための手段は、全てのアームが常に共通の水平面上にあるように同期される。
【0042】
他のステーションでは、エンジン支持手段は、上部構造体30からつるされ、底端部が床から一定の高さで配置された垂直柱38であり、その高さは、特に図4に示されるように、エンジンの外径より大きい。
【0043】
各ステーション20、22、28は、対応するステーションのエンジンの位置のいずれかの側に互いに面して配置される2本の柱を有し、これらの柱は、基本的に下方に伸びるアーム44が取り付けられたフレームで構成される水平スプレッダ42を支持して取り付けるための手段40を担持し、アーム44はエンジンのいずれかの側で底端部がエンジンの中間ケーシングおよび排気ケーシングに固定される。
【0044】
スプレッダ42を支持して垂直柱に38に取り付けるための手段40は、スプレッダ32が常に水平面上にとどまるように2本の対向柱38上で同期して高さ調節可能である。
【0045】
エンジンに固定されるスプレッダ42はそれ自体が、上部構造体30の水平レール上で案内され底端部にフック46が取り付けられたケーブルによってスプレッダ42につながれるホイストによって1つのステーションから別のステーションに移動可能であり(例えば、図4参照)、これらのフック46は、スプレッダ42に固定される漏斗状ガイド48で受承され、アクチュエータによって移動される横ピンなどの係止手段によってこれらのガイド内で保持されるように設計されている。
【0046】
ホイストによって、工場のステーションの柱38の支持取付手段40からスプレッダ42を離すためにエンジンがつるされたスプレッダ42が持ち上げられ、上部構造体30の水平レールに沿ってホイストを移動させることでエンジンが次のステーションに搬送され(図5参照)、その後、スプレッダ42が次のステーションの垂直柱38の支持取付手段40まで下げられることが理解できる。
【0047】
また、ホイストは、エンジンをステーション10から出して、試験施設へ搬送するためにカート14に載せ、カート14からエンジンを取り出して、ステーション18の支持手段34に載置するために、エンジンをステーション10、18の支持手段34に載置するのに使用される。
【0048】
したがって、エンジンがステーション18に搬送されると、スプレッダ42はアーム44を介してエンジンに固定されて、エンジンがホイストによって出荷ステーション24まで移動されるようになる。
【0049】
スプレッダは、エンジンから離されると同期して出荷構造体26上にとどまって、別のエンジンに固定されるために取り外しステーション18に戻される。ステーション24からステーション18にスプレッダを戻す経路は、オーバヘッド構造体30に設けられ、その経路により各スプレッダはエンジンがたどる経路に沿ってステーション18まで直接戻されるようになる。
【0050】
図6は、工場のステーション、例えば、エンジンに測定試験手段を取り付けるためのステーション10のより詳細な図である。
【0051】
このステーション10は、エンジン支持手段34以外に、エンジンに固定するアームの高さの調節を制御するためのキャビネット50と、床に着色片で印が付けられた位置であってエンジンが支持手段34の固定アームで担持される時にエンジンで作業するゾーンに相当する位置54のいずれかの側に配置される2つのコンピュータ端末52とを含む。照明手段は、位置54で床に埋め込まれ、作業者が歩ける床高さに位置する透明材料製のプレートで覆われ、この構造によりエンジンの底部が確実に十分に照らされるようになる。他の照明手段は、エンジンの上部を照らすために上部構造体30によって担持される。
【0052】
各コンピュータ端末52はコンソール56上に取り付けられ、コンソール56はエンジンで作業する作業者によって使用されるのに適した1組の工具を収納するための手段も担持する。
【0053】
別のコンピュータ端末は、エンジンに関する情報および実施される作業のエンジンにおける位置に関する情報を表示するために、ステーション内に、例えば、図6の58で示されるようにキャビネット50に設置される。
【0054】
図7および図8に示されるように、2人の作業者A、Bは、ステーション10において、所定の順序で連続して同じ作業または異なる作業を実施するためにエンジン12で同期して作業することができるが、その順序は、例えば、図9に示されるように端末56の画面に表示され、それに従って作業者は図7の矢印の方向にエンジン12の一端から他端に移動する。
【0055】
工場の種々のステーションにエンジンがとどまる時間が上述したように4時間である場合、画面56の表示は異なる色の4つのゾーンに分割され、それぞれのゾーンの継続時間は1時間で、それぞれ所定の順序で作業者によってエンジンで実施される操作についての説明を含む。作業者は、マウスで操作番号をクリックすることで、その操作の詳細な説明とその操作に関する追加情報とを得ることができる。
【0056】
図10に示された他の画面58は、画面56に表示される現在の作業ゾーンの色に対応する色でエンジンの形状を表示し、さらに、現在実施されることになる作業に対してエンジンの画像にその位置を表示する。端末52および工具を担持するコンソール56は、各作業者が素早く、数秒で必要な工具に手が届く位置に配置される。可能であれば、作業者が座りながら作業できる車輪付きシートも、タンクやごみ入れなどの他の道具と共に各ステーションに置かれる。
【0057】
各エンジンは、中央データベースですでにエンジンに関連付けられた数字を有する無線自動識別(RFID)式ラベルが取り付けられる。エンジンが1つのステーションに設置されると、次にエンジンに関する情報(タイプ、バージョン、航空機、クライアントの航空会社など)がステーションの画面に図で送信される。このことは、作業者に素早くエンジンの再配置を通知することになる。作業者が操作を終了すると、このことがコンピュータ端末上で示され、操作はコンピュータシステムによってエンジンの出荷先に料金が請求される。このことで、エンジンで実施される操作全体が追跡可能であると共に、経理上これらの操作の請求ができる。
【0058】
当然、所与のステーションにおいてエンジンで作業する作業者の数を変更することも可能であり、一般には、エンジンで実施される作業に応じてまたエンジンのタイプに応じて、1人から3人もしくは4人である。
【0059】
本発明の工場の操作は、上述の説明から明確になる。
【0060】
組立ラインを出たエンジンは、カートに載せられて第1のステーション10の傍に搬送され、その後、ホイストによってカートから出されて、ホイストがエンジンをステーション10の支持体34の上方に移動させて適切な高さに配置して、支持体の固定アームがエンジンのケーシングに固定されるようにする。
【0061】
その後、エンジンは適切な測定試験手段が取り付けられる。その後、エンジンは再度ホイストによって持ち上げられて、ステーション10の傍に位置する搬送カートの上方に移動され、試験施設16に搬送されるためにカートに載置される。
【0062】
試験後、エンジンはカートに載せられて工場のステーション18の傍に戻され、ホイストによってステーション18の支持手段34の上方に配置されるように持ち上げられ、その後、所望の高さまで下げられて、支持体34の固定アームがエンジンのケーシングに固定されるようにする。試験測定手段がエンジンから取り外されて、スプレッダ42がホイストによってエンジンの上方まで下げられてアーム44によってエンジンに固定される。ホイストはエンジンを持ち上げて検査ステーション20まで移動させ、そこでホイストはスプレッダ42を柱38の指示取付手段40に載置する。
【0063】
検査後、エンジンを担持するスプレッダ42は再度ホイストによって持ち上げられて仕上げステーション22まで移動されて、機器の最終部品がエンジンに取り付けられ、その後、エンジンは再度ホイストによって出荷ステーション24まで移動されて、そこでエンジンは搬送構造体26に載置される。その後、スプレッダはエンジンから離されて、取り外しステーション18に戻される。エンジン12は、搬送構造体26に固定され、保護カバーおよび保護覆いで覆われ、その後、出荷先への出荷が可能となる。
【0064】
作業者によって行われる種々の作業は常に同じ順序で行われること、またそれぞれの作業者は実施される操作に関するより詳細な情報を得るために常にコンピュータ端末を参照できることが分かる。さらに、これらの全ての操作はタイミングに関連付けられ、それぞれの作業者は計画されたスケジュールよりどれだけ進んでいるか、またはどれだけ遅れているかについて絶えず通知されることになる。作業者はそれぞれの作業を実施した後にコンピュータシステムに直接通知するので、実施された操作全体が追跡可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空エンジンの出荷準備をするための工場であって、
測定試験手段を各エンジン(12)に取り付けるための取り付けステーション(10)、測定試験手段を取り外すための取り外しステーション(18)、内視鏡検査によってエンジンを検査するための検査ステーション(20)、機器の最終部品を各エンジンに取り付けるための仕上げステーション(22)、および各エンジンを出荷構造体(26)に取り付けてエンジンに保護覆いを被せるための出荷ステーション(24)であって、エンジン用に所定の経路に沿って工場内に固定して配置される上述のステーションと、
エンジンを移送し操作するための移送および操作手段(30、42)であって、上述のステーションの上方にあるオーバヘッド構造体(30)によって担持され、種々のステーションに設置されエンジンの全ての部分に直接アクセスできるように設計された固定支持体(34、38)に対するエンジンの載置および取り外しを行うための載置取り外し手段と、エンジン(12)を1つのステーションから他のステーションに移動させるための移動手段とを含む移送および操作手段(30、42)と、
上述の任意のステーションから1つのエンジンが離れた後、ほぼ即座に別のエンジンがそのステーションに着き、種々のステーションでエンジンがとどまる時間が同じになるように移送手段を制御するための制御手段とを備えることを特徴とする工場。
【請求項2】
移送手段が、上述のオーバヘッド構造体(30)の水平レール上で並進案内され、エンジン(12)を載置および取り外しするためにエンジンに固定されるスプレッダ(42)にケーブルでつながれるホイストを備えることを特徴とする、請求項1に記載の工場。
【請求項3】
ホイストのケーブルが、スプレッダに固定された漏斗状ガイド内に受承され、アクチュエータによって作動される係止手段によって前記ガイド内で保持されるフック(46)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の工場。
【請求項4】
取り付けおよび取り外しステーション(10、18)に設置されるエンジン支持体が、エンジンの位置のいずれかの側で床に固定される垂直支柱(34)を備え、各垂直支柱が、エンジンのケーシングを固定するための水平アーム(36)と、アームの高さ位置調節手段とを担持し、アームの高さ位置調節手段が、他の垂直支柱(34)のアームの調節手段と同期して動作して、水平固定アーム(34)の全てが常に共通の水平面上にあるようにすることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の工場。
【請求項5】
取り付けおよび取り外しステーション(10、18)のそれぞれが、エンジンの中間ケーシングと位置合わせして配置された2本の前方垂直支柱(34)と、エンジンの排気ケーシングと位置合わせして片側に配置された1本の後方垂直支柱(34)とを含むことを特徴とする、請求項4に記載の工場。
【請求項6】
取り付けステーション(10)では、オーバヘッド構造体(30)が、取り付けステーション(10)の傍に位置する搬送カート(14)からエンジン(12)を取り出し、エンジンを取り付けステーション(10)の上方にくるように移動させて、エンジンを垂直支柱(34)の水平アーム(36)の高さまで下げ、その後、エンジンを取り付けステーション(10)の上方に持ち上げ、エンジンを移動し試験施設まで搬送するためにカート(14)に載置するために、ホイストを移動させるための水平レールを含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の工場。
【請求項7】
取り外しステーション(18)では、オーバヘッド構造体(30)が、取り外しステーションの傍に位置する搬送カート(14)からエンジン(12)を取り出し、エンジンを取り出しステーションの支持垂直支柱(34)の上方にくるように移動させて、エンジンを垂直支柱(34)の水平アーム(36)の高さまで下げ、その後エンジンを取り外しステーション(18)の上方に持ち上げ、エンジンを検査ステーション(20)まで移動させるために、ホイストを移動させるための水平レールを含むことを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の工場。
【請求項8】
検査および仕上げステーション(20、22)に設置されるエンジン支持体が、各々のステーションでエンジンの位置のいずれかの側に位置し、底端部が床からエンジンの直径を越える高さに位置するように上述のオーバヘッド構造体(30)からつるされ、エンジン(12)に固定されるスプレッダ(42)への支持取付手段(40)を含む1組の垂直柱(38)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の工場。
【請求項9】
スプレッダ(42)の支持取付手段(40)が、所与のステーションの柱(38)上で同期して垂直に移動可能であることを特徴とする、請求項8に記載の工場。
【請求項10】
上部照明手段および下部照明が各ステーションに設置され、下部照明手段が、床に埋め込まれ、床面にある透明材料製のプレートで覆われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の工場。
【請求項11】
各ステーションが、各ステーションで作業者によって所定の順序でエンジンで実施される連続作業を表示するための少なくとも1つのコンピュータ端末(52)と、それらの作業を行う際に作業者によって使用される1組の工具とを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の工場。
【請求項12】
各ステーションが、上述のステーションのエンジンの位置のいずれかの側に設置され、エンジン上で連続して同じまたは異なる作業を実施する2人の作業者によって同期して使用されるように設計された少なくとも2つのコンピュータ端末(52)と2組の工具とを含むことを特徴とする、請求項11に記載の工場。
【請求項13】
各ステーションが、各ステーションにあるエンジンに関する情報およびエンジンの出荷先に関する情報を表示するための別のコンピュータ端末(58)を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の工場。
【請求項14】
スプレッダ(42)を出荷ステーション(24)から取り外しステーション(18)に戻すための帰路を含むことを特徴とする、請求項2から13のいずれか一項に記載の工場。
【請求項15】
補修ステーション(28)が、上述のオーバヘッド構造体(30)の下で検査ステーション(20)の傍に設置され、試験で所定の基準に適合しないことが分かったエンジンを受け取るように設計されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の工場。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−520967(P2012−520967A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500285(P2012−500285)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000177
【国際公開番号】WO2010/106237
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】