説明

航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法

【課題】測量結果の早期の確認を可能にして即応性に対する要求に応えることのできる航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法の提供を目的とする。
【解決手段】飛行体1上のレーザスキャナ2により地表を照射して取得したリターンパルス群内の主走査方向の各データ列から、データ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致する位置基準データ3を選択する手順と、
前記データ列を位置基準データ3が一直線上に並ぶようにデータ取得順に副走査方向に配列してドットマトリクスデータ4を生成する手順と、を有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空中から地表に向けてレーザを照射して地表からの距離を計測する航空レーザ測量としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、航空機上でレーザセンサにより取得したデータは、航空機に搭載したデータ記録部に格納され、計測終了後に地上のデータ処理装置により処理、解析される。
【特許文献1】特開2003-156330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来例において、飛行体上で取得された観察データの解析までの時間がかかるために、例えば災害時等のように、即応性が要求される場合での利用に限界がある。
【0004】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、測量結果の早期の確認を可能にして即応性に対する要求に応えることのできる航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法の提供を目的とする。
【0005】
また、本発明の他の目的は、測量結果の早期の確認を可能にする航空レーザ測量方法、航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ構造、および閲覧用レーザデータ生成装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
航空レーザ測量におけるリターンパルスデータは、レーザスキャナ2と地表との距離に対応する値であり、これらから地表面、あるいは地物の凹凸情報を得るためには、測量時のレーザスキャナ2(飛行体1)の位置、姿勢、およびレーザスキャナ2からのレーザパルスの発射角度の情報が必要となる。この結果、リターンパルスデータは、飛行体1の位置情報等、いわば標定要素が確定可能な条件下でのみ意味を有するとの考えから、観測データに対する解析は、全ての観測データが揃った段階から開始されることが当然視され、リターンパルスデータのデータ量の膨大さ、処理演算量の膨大さ等に帰因する即応性の低下を惹起していた。
【0007】
一方、測量中の飛行体1は概ね水平、直線飛行し、かつ、リターンパルスデータは、十分な密度を有するポイントデータ群であること、さらには、一般に行われている分析的なアプローチ、すなわち、各点についての正確な位置情報等に基づく詳細な解析による測量結果の把握においても、最終成果物は、3D、あるいは2D画像として提供されることに着目すると、測量結果を、処理手順を可及的に簡単にした画像情報として出力することにより、即応性に対応できると考えられる。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、
飛行体1上のレーザスキャナ2により地表を照射して取得したリターンパルスデータ群内の主走査方向の各データ列から、データ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致する位置基準データ3を選択する手順と、
前記データ列を位置基準データ3が一直線上に並ぶようにデータ取得順に副走査方向に配列してドットマトリクスデータ4を生成する手順と、
を有する航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法として構成される。
【0009】
リターンパルスデータのフットプリント9は、例えば、図6(a)、(b)の最上段に示すように、ジグザグ形状をなし、かつ、隣接データ間の主走査方向、副走査方向の間隔は不定であるが、リターンパルスデータの特徴であるデータ密度の高さ、および測量中の飛行体1のヨー角が概ね一定であることを考慮すると、主走査方向のリターンパルスデータ列を同一のドットピッチ(p)で出現順に配置しても、画像としての品質が大きく劣ることはない。また、出現順に所定の列に配列する処理は、フットプリント9上の正確な位置を演算する処理に比して処理量が大幅に減少するために、飛行体1上での処理も可能になる。
【0010】
さらに、これら主走査方向データ列を出現順に副走査方向に所定のドットピッチ(p)で配列する処理も、同様に処理量を少なくするために有効で、かつ、測量中の飛行体1の飛行速度、ピッチ角は概ね水平で一定と考えられるため、この処理による画像品質の劣化も最小限に抑えることができる。
【0011】
また、各主走査方向データ列中に指定される位置基準データ3は、スキャニング角度(θ)が予め設定された値にほぼ一致するデータである。飛行体1は測量中概ねロール角一定(例えば機体の両翼を水平に保った姿勢)で飛行すると考えられるために、飛行方向に対する飛行体1との距離が一定の地表上のポイントを示すと考えることができる。したがって、これら位置基準データ3が一直線になるように主走査方向データ列を配列したドットマトリクスデータ4は、例えば飛行方向及びスキャニング角度をそれぞれ縦軸及び横軸とし、高さ情報を階調値とする画像データとして考えることができる。また、位置基準データ3の選択は、リターンパルスデータに付随して取得されるスキャニング角度データを参照するだけで実行可能であるために、処理量が小さく、機上での処理も可能となる。
【0012】
位置基準データ3の選択の基準となるスキャニング角度は適宜決定可能であるが、ロール角の変動によるフットプリント位置の変動は、飛行体1直下位置において最小であるために、飛行体1直下位置に対応する角度とするのが望ましい。
【0013】
以上のようにして得られたドットマトリクスデータ4は、階調値に輝度等を割り当てることにより画像として表示、閲覧できる。目視により画像を評価する場合には、画像中の不自然な不連続箇所、あるいは異常点の判別、除去、あるいは不連続部の連結等の操作は人間の目の特性から極めて簡単に行うことができるために、この画像を見るだけで、おおまかな地表状態の把握が可能になる。
【0014】
この結果、地上基地局5での測量結果の早期の判定が可能になり、災害発生時における災害状況を大まかに把握したり、あるいは、再度の測量、当初予定エリアの近傍での測量エリア追加指示等が可能になる。
【0015】
さらに、ドットマトリクスデータ4は、地表における凹凸情報を概ね表しているために、ランダムなデータ群に比して、隣接するドット間の近似性が高くなる。この結果、ドットマトリクスデータ4の圧縮効率を向上させることができる。
【0016】
ドットマトリクスデータ4の圧縮に際して可逆圧縮を選択するか非可逆圧縮を選択するかは、画像の利用を考慮して適宜決定可能であり、画像を単に上述した目的でのみ使用する場合には、画質が著しく低下しないことを条件に非可逆圧縮が使用できる。非可逆圧縮を採用することにより、圧縮率が高まり、伝送効率が向上する。
【0017】
これに対し、上記ドットマトリクスデータ4を画像表示するだけでなく、データ群としても利用する場合には、可逆圧縮を採用するのが望ましい。データ群としての利用に際し、飛行体1上でドットマトリクス上の各データとスキャニング角度データとを関連付けるデータが生成され、GPS/IMUデータ、およびビーム発射時刻データ、スキャニング角度データからなる標定用データとともに地上基地局5に伝送される。地上基地局5では、画像としての評価とともに、ドットマトリクスデータ4を復元し、各点の正確な位置をGPS/IMUデータ等を使用しながら演算する。
【0018】
このように、ドットマトリクスデータ4を他の標定用データとともに飛行体1の着陸前に地上基地局5に伝送することにより、演算開始時期を早めることが可能になる。
【0019】
ドットマトリクスデータ4に対する圧縮アルゴリズムは、種々の周知のものを使用でき、目的によって選択可能であるが、圧縮効率を優先する場合には、隣接ドット間の差分を保存するアルゴリズムが採用できる。差分を保存値とする圧縮アルゴリズムは、概ね、特定可能な開始ドットの値(リターンパルスデータ)をそのまま保存値とした後、直前データと着目データとの差分値を後続のデータの保存値として採用するルーティンを、所定の条件、例えば、列の終了、あるいは差分値が予め定められた閾値を超える等の条件が充足されるまで繰り返すように構成される。
【0020】
上述したように、ドットマトリクスデータ4は隣接ドット間の値の近似性が高いという特徴があるために、この差分値を保存する圧縮アルゴリズムを採用することにより。高い圧縮率を達成できる。
【0021】
これに対し、汎用性を優先するためには、汎用の静止画像圧縮アルゴリズムを採用することが望ましい。画像圧縮アルゴリズムには、JPEG(Joint Photographic Experts Group)をはじめとする離散コサイン変換による変換符号化、あるいはJPEG2000のようなウェーブレット変換による変換符号化、さらに、他の変換符号化手法を採用するものが知られており、これらのいずれも使用できる。このような汎用アルゴリズムを採用すると、ドットマトリクスデータ4を画像として閲覧する際に特別な復元プログラムを必要としないために、汎用性が向上する。また、非可逆・可逆いずれの画像圧縮アルゴリズムも使用することが可能である。
【0022】
一般にレーザスキャナ2の受光部は、発射されたパルスビームの広がりによって生じる地表部からの複数の反射光を受光することが可能であり、発射からその反射波を受光するまでの時間が短い低次のリターンパルスほど高度の高い位置での反射パルスに対応する。
【0023】
ドットマトリクスデータ4は、このようなN次のリターンパルスのすべての次数に対して生成することが可能であり、例えば、1次リターンパルスのみを集めたプレーン、2次リターンパルスのみを集めたプレーン、・・・N次リターンパルスのみを集めたプレーンの集合とすることができる。
【0024】
取得されるリターンパルスの最高次数は、地形等測量対象の特性により区々で、レーザスキャナ2の定格として予め設定された最高次のものまで取得されるとは限られない。このため、2次リターンパルス以降のプレーンには、データ欠損(ドット落ち)が発生する可能性があるが、当該ドットに対してドット落ちを示すフラグデータを挿入することにより、1次プレーンとの対応を簡単にすることができる。
【0025】
これに対し、例えば、森林等において1次リターンパルスは、樹冠部からの反射パルスに対応し、最高次のリターンパルスは、地表面からの反射パルスに対応すると考えられるために、所望の1次リターンパルスのみ、あるいは最高次リターンパルスのみのように、ドットマトリクスデータ4生成をリターン次数により選択することも可能である。
【0026】
この場合、閲覧限定用画像のみをリターン次数指定プレーンとして非可逆圧縮し、次数毎に可逆圧縮したプレーンに付加することもできる。
【0027】
以上において、ドットマトリクスデータ4は、飛行体1上で生成、圧縮されて地上基地局5に送られた後、地上基地局5で閲覧、あるいは標定演算がなされることを前提として本発明を説明したが、本発明によるドットマトリクスデータ4は、飛行体1上で適宜の手段で圧縮されたリターンパルスデータととともに伝送されたスキャニング角度データに基づいて、地上基地局5側で生成することも可能である。このように構成しても、標定演算に先立って、あるいは同時に、測量結果の閲覧と、それによる評価が可能になり、即応性が高まる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、測量結果の早期の確認が可能になるために、即応性に対する要求に応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に航空機、ヘリコプター等の飛行体1を使用した航空機レーザ測量の概要を示す。図中10は飛行体1に搭載されたレーザ計測部であり、レーザスキャナ2と、反射波受信センサ11と、GPS/IMU(Global Positioning System/Inertial Measurement Unit)(12)とを有する。レーザスキャナ2は、図外の制御部により所定時間間隔でレーザパルスを発射するレーザ発射部2aと、レーザパルスを所定角度に振ってスキャンビームとする回転ミラー2bとを備え、スキャンビームの地表からの反射パルスは、リターンパルスとして反射波受信センサ11により検出される。
【0030】
リターンパルスは、図1(b)に示すように、発射された1発のレーザパルスに対する地物による複数回(通常1ないし5回程度)の反射パルスにより構成され、反射波受信センサ11からは照射パルスに対するリターンパルス捕捉の時刻情報がリターンパルスデータ(Pkn)(本明細書において添え字“k“はリターンパルスの反射次数、添え字“n“はレーザパルス発射順序を示す。)として出力される。また、上記GPS/IMU(12)は、所定時間間隔で飛行体1のGPS位置、傾き値等を出力する。
【0031】
これらリターンパルスデータ(Pkn)、GPS/IMU情報に加えてレーザパルスの発射時刻データ(Tn)、その時の回転ミラー2bのミラー回転角データ、すなわち、スキャニング角度データ(θn)が、観測データとして収集されて後段の送信部20から地上基地局5に伝送される(以下、本明細書において、GPS/IMUデータを除く観測データを「レーザデータ」と総称し、リターンパルスデータを除く観測データを「標定用データ」と総称する。)。後述するように、地上基地局5では、リターンパルスデータ(Pkn)に、標定用データを適用して飛行体1と地表面との距離を演算し(以下、「標定演算」)、地表の位置、高さを演算する。図1(b)に示すように、スキャニング角度データ(θn)は、回転ミラー2bの揺動中心をoとして、回転角度に対応するデータ値に付される符号ビットにより回転方向が示される。
【0032】
なお、上記リターンパルスデータ(Pkn)、レーザパルスの発射時刻データ(Tn)、及びGPS位置、IMU傾き情報は、レーザ計測部10の構造により適宜無次元化された数値として出力されるものであってもよく、また、レーザパルス発射時刻、あるいはリターンパルスデータ等の時刻情報は、例えば、計測開始からの経過時間であってもよい。
【0033】
図2に航空測量方法のフローチャートを、図3にこれに使用する飛行体1に搭載されるレーザ計測部10と送信部20の詳細を示す。上述したように、レーザ計測部10は、レーザスキャナ2、反射波受信センサ11及びGPS/IMU(12)を備え、レーザスキャナ2及び反射波受信センサ11における観測値はパルスデータ生成部13に、GPS/IMU(12)における観測値はGPS/IMUデータ生成部14に各々出力される。
【0034】
図4(a)の上段にパルスデータ生成部13での出力フォーマットを、図4(b)にGPS/IMUデータ生成部14での出力フォーマットを示す。まず、パルスデータ生成部13は、上述したように、発射パルスを単位として、当該発射パルスに対応する各出力値を所定の順序で配置したデータ列を出力する。図示の例は、各発射レーザパルスに対して最大5次までのリターンパルスデータ(Pkn)を取得することを想定した場合のデータフォーマットを示すもので、先頭から順にレーザパルスの発射時刻データ(Tn)、スキャニング角度データ(θn)、リターンパルスデータ(Pkn)が格納される。
【0035】
また、上述したように、リターンパルスデータ(Pkn)は必ずしも5次まで取得されるとは限らないために、取得できなかった次数の格納位置には、例えば“0“が割り当てられる。
【0036】
一方、GPS/IMUデータ生成部14からは、図4(b)に示すように、GPS計測時刻(TAm)、IMU計測時刻(TBm)、x方向加速度(VXm)、x方向角度(AXm)、y方向加速度(VYm)、y方向角度(AYm)、z方向加速度(VZm)、z方向角度(AZm)が出力される(添え字“m“は、データの取得順を示す。)。上記リターンパルスデータ(Pkn)に対応するGPS/IMU(12)における観測値は、レーザパルスの発射時刻データ(Tn)に対するGPS計測時刻(TAm)、あるいはIMU計測時刻(TBm)を元に補間処理により求めることにより得られる。
【0037】
したがって、この実施の形態において、飛行体1によるレーザ測量が開始されると、レーザ計測部10での観測データは、パルスデータ生成部13、あるいはGPS/IMUデータ生成部14に出力されて所定のデータ列が生成され(図2;ステップS1)、次いで、レーザデータに対して圧縮処理部15における圧縮処理が行われる(図2;ステップS2)。
【0038】
なお、この実施の形態において、レーザデータに比してデータ量の少ないGPS/IMUデータは、圧縮操作を行わずに直接伝送されるために、圧縮処理部15を通さず直接符号化処理部16に出力し、パルスデータに対する圧縮画像とのファイル結合を行っているが、必要に応じて圧縮操作を行った後、符号化処理部16に出力する構成としてもよい。
【0039】
上記圧縮処理部15は、データ分離部15aと、画像変換部15bと、圧縮部15cとを有し、レーザデータに対して、まず、データ分離部15aにおけるデータ分離処理が行われる(図2;ステップS2-1)。データ分離部15aにおいては、図4(a)に示すように、出力されたレーザデータをレーザパルス発射時刻データ(Tn)、スキャニング角度データ(θn)及びリターンパルスデータ(Pkn)の3種類の分離データ列(SD(T)、SD(θ)、SD(P))に分割する。図4(a)に示すように、レーザパルス発射時刻データ(Tn)とスキャニング角度データ(θn)による分離データ列SD(T)、SD(θ)は、パルス発射順に並べられ、リターンパルスデータ(Pkn)は、反射次数順に並べられた5個を1組とするデータ群をパルス発射順に並べたフォーマットを有する。また、リターンパルスデータ(Pkn)の分離データ列SD(P)には、必要に応じ、データ群の境界にデータ終端マークが挿入される。
【0040】
データ分離部15aにおける処理が終了すると、リターンパルスデータ(Pkn)の分離データ列SD(P)は、リターンパルスデータ閲覧用レーザデータ生成装置として構成される画像変換部15bに出力され、他の分離データ列SD(T)、SD(θ)は圧縮部15cに出力される。
【0041】
画像変換部15bは、位置基準データ検索部7と、データ列生成部6と、ドットマトリクスデータ生成部8とを有する。まず、位置基準データ検索部7において、主走査線単位で位置基準データ3を検索する(図2;ステップS2-2)。位置基準データ3は、スキャニング角度が所定角度(この実施の形態においては、飛行体1直下に対応する“0“)、近傍のときのリターンパルスデータであり、位置基準データ検索部7は、後述するデータ列配列の各行における列位置を出力する。
【0042】
位置基準データ3の検索に当たって、位置基準データ検索部7は、図5(a)に示すように、スキャンレート(1秒間あたりの主走査線数)とパルスレート(1秒間あたりの発射パルス数)によって1本の主走査線(Ls)当りの発射パルス数(Lp)を求める。次に、この発射パルス数(Lp)を1行の要素数[D]とし、主走査線数分の行数[L]を有するスキャニング角度配列(θC[L][D])を生成し、各々のセルにスキャニング角度データ(θn)を格納した後、2次元スキャニング角度配列(θC[L][D])の各行に対してスキャニング角度が“0“近傍の要素を検索し、これを例えばθC[L][0]に格納して処理を終了する。
【0043】
以上の操作により、図6の最上段に示すジグザグなフットプリント9上で、回転ミラー2bの一方の揺動終端から他方の揺動終端までに対応するデータ列、すなわち主走査方向のデータ列単位にθC[L][0]を参照するだけで位置基準データ3を特定することができる。図6において位置基準データ3を黒丸で示す。
【0044】
データ列生成部6は、上記リターンパルスデータ(Pkn)を主走査方向のデータ列に分解する(図2;ステップS2-3)。具体的には、図5(b)に示すように、上記発射パルス数(Lp)を1行の要素数とし、主走査線数を行数とするデータ列配列A(P)を取得パルス次数分、すなわちこの実施の形態においては、5個生成する。この後、上記リターンパルスデータ(Pkn)の分離データ列SD(P)を、リターン次数により選択されたデータ列配列A(P)のセルに順次格納し、行終端まで達した後は、上記データ列配列A(P)に新たに行を追加し、同様の処理を分離データ列SD(P)のファイル終端に至るまで繰り返す。
【0045】
以上の操作により、図6に示すように、データ間隔が区々でジグザグなフットプリント9上の計測ポイントは、各主走査方向のデータ列単位に所定ドットピッチ(P)で副走査方向に並べられたマトリクスデータが得られる。
【0046】
ドットマトリクスデータ生成部8は、上記データ列配列A(P)の行単位にθC[L][0]が示す要素位置が所定列位置になるようにシフトさせる。シフトに際し、データ列配列A(P)の列数が不足した場合には、データ列配列A(P)のシフト側列終端に新たな列が挿入される。また、ドットマトリクスデータ生成部8において、シフトの結果空欄となった配列要素にデータ無しフラグを挿入し、ドットマトリクスデータ4として完成する(図2;ステップS2-4)。図6(b)の最下段にドットマトリクスデータ4を示す。図において、データ無しフラグを破線円で表示している。
【0047】
圧縮部15cは、上記ドットマトリクスデータ4への圧縮と、他のレーザデータ、すなわち、スキャニング角度データ(θn)、およびレーザパルス発射時刻データ(Tn)による分離データ列SD(T)の圧縮を行う(図2;ステップS2-5)。
【0048】
ドットマトリクスデータ4に対する圧縮フォーマットとしては、汎用の画像圧縮フォーマット(例えばJPEGによる非可逆圧縮フォーマット、ロスレス(可逆)圧縮フォーマット)が使用される。
【0049】
これに対し、レーザパルス発射時刻データ(Tn)、あるいはスキャニング角度データ(θn)は、周知の可逆圧縮アルゴリズムを利用して圧縮される。
【0050】
以上のようにして各々の分離データ列(SD)に対する圧縮処理が終了すると、結合処理がなされて1ファイルにまとめられ、次に、符号化処理部16における符号化を行う(図2;ステップS3)。符号化処理にはエントロピー符号化等が利用できる。
【0051】
符号化処理が終了すると、まず、データ伝送中の地上基地局5における解析を可能にするためにストリーミング部17においてストリーミング処理が行われ、次いで、伝送データ変換処理部18において搬送波の整形が行われ、出力部19から伝送される(図2;ステップS4)。
【0052】
なお、以上の実施の形態においては、パルスデータのみが圧縮処理されてGPS/IMUデータについては計測航路への旋回、移動の時間を利用してGPS/IMUデータを直接伝送するように構成した場合を示したが、GPS/IMUデータに対しても圧縮処理を行った後に伝送することも可能である。
【0053】
飛行体1からの伝送情報を受領する地上基地局5のブロック図を図7に示す。地上基地局5は受信処理部30と復元処理部31とからなるデータ再生部32を有する。受信処理部30の受信部30aで上記飛行体1からの圧縮データを受信すると(図2;ステップS5)、受信しながら後段のデータ解析を行うことができるように、ストリーミング処理部30bにおいてストリーミング処理を行い、復元処理部31の復号部31aに出力する(図2;ステップS6)。復号部31aでは、上記圧縮データファイルの符号化と結合化を解除して符号化前の状態に戻し、さらに、復元部31bで復元処理を行い(図2;ステップS7)、これと並行して復号されたドットマトリクスデータ4が画像データであることを利用して、汎用のブラウザにより形成される閲覧部33において画像表示が行われる(図2;ステップS8)。
【0054】
一方、復元処理は、圧縮処理部15における処理を逆順に実行する。例えば、ドットマトリクスデータ4に対しては、まず、ドットシフトに帰因するデータ無しフラグを削除してデータ列配列を復元した後、主走査線当たりの発射パルス数(Lp)を元にして分離データ列SD(P)を復元する。同様にして発射時刻データ(Tn)、ミラー回転角データ(θn)の分離データ列SD(θ)、SD(T)を復元した後、これらをデータ結合部31cにおいてデータ結合すると(図2;ステップS9)、パルスデータ生成部13からの出力が再現される。
【0055】
この結合データは、データ解析部34において解析され、リターンパルス群による計測結果が演算される(図2;ステップS10)。解析に際して、観測データは一旦パルスデータ・GPS/IMUデータ格納部34aに格納され、実距離化・座標化処理部34bで実位置等が演算される。実距離化・座標化処理部34bでは、飛行体1に搭載した光学系の特性に基づく内部評定要素、およびGPS/IMUデータに基づく外部評定要素を利用して、リターンパルスのフットプリント9の所定投影空間上での位置、高さを演算する。
【0056】
このようにして得られた各ポイントデータは3次元情報を有しているために、これを使用して地表面を点描上に表示することも可能である。ポイントデータはポイントデータ格納部35に格納され、これらの用に供される。
【0057】
さらにこの実施の形態おいて、地上基地局5には、3D処理部36が設けられる。3D処理部36は、上記ポイントデータ群をもとに、例えば、3次元ポリゴン、テクスチャ等を備えた3D画像を形成するための3Dデータ生成部36aを備える。この3Dデータ生成部36aでの生成データは生成3Dデータ格納部36bに挿納され、所望により3Dデータ表示部37に表示される。
【0058】
また、地上基地局5には、例えば地殻変動、災害等の情報を直ちに得ることができるように、比較部38を備える。比較部38は、既存3Dデータ格納部38aと、差分データ生成部38bと、上記3Dデータ表示部37とを有して構成される。3Dデータ生成部36aからの出力は、差分データ生成部38bにおいて既存3Dデータと比較され、画像上の相違点が検出される。検出結果は、上記3Dデータ表示部37に表示し、必要に応じて上空の飛行体1に再計測、あるいは計測範囲の拡大等を指示することができる。
【0059】
なお、以上において、データ再生部32、データ解析部34、3D処理部36及び比較部38は、当該機能を発揮させるようにコンピュータを動作させるコンピュータプログラムによっても達成可能である。
【0060】
また、以上においては、全次数のリターンパルスデータをドットマトリクス化し、可逆圧縮する場合を示したが、特定のリターン次数のリターンパルス、例えば、1次リターンパルスのみ、あるいは最高次リターンパルスのみを抽出してドットマトリクス化し、これを圧縮して地上基地局5に伝送することも可能である。
【0061】
この場合、ドットマトリクスデータ4は閲覧専用データとして扱い、標定演算には、別途適宜のアルゴリズムで可逆圧縮されたリターンパルスデータを使用する。
【0062】
図8に航空機レーザ測量方法の他の実施の形態を示す。なお、この実施の形態の説明において、上述した実施の形態と同一の処理は、図中に同一のステップ番号を付して説明を省略する。この実施の形態において、レーザデータは飛行体1上で適宜の圧縮アルゴリズムを使用して可逆圧縮され、GPS/IMUデータとともに地上基地局5に伝送される。これを受けた地上基地局5では、必要な復号処理を行った後、圧縮ファイルを復元し、この後、閲覧用レーザデータであるドットマトリクスデータ4を生成する。ドットマトリクスデータ4は、適宜の画像ブラウザを使用して閲覧部33で閲覧される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を示す図で、(a)はレーザ計測を示す説明図、(b)はリターンパルスを示す説明図である。
【図2】航空レーザ測量方法のフローチャートである。
【図3】レーザ計測システムの飛行体搭載部分を示すブロック図である。
【図4】データ生成部でのデータフォーマットを示す図で、(a)はパルスデータ生成部からの出力と、データ分離部の動作を示す図、(b)はGPS/IMUデータ生成部からの出力を示す図である。
【図5】画像変換部の動作を示す説明図で、(a)は回転ミラーの時間-回転角線図、(b)はデータ列生成部の動作を示す説明図である。
【図6】画像変換部の動作を示す説明図で、(a)はリターンパルスに対する処理を示す全体図、(b)は(a)の拡大図である。
【図7】レーザ計測システムの地上基準局側の構成を示すブロック図である。
【図8】航空レーザ測量方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 飛行体
2 レーザスキャナ
3 位置基準データ
4 ドットマトリクスデータ
5 地上基地局
6 データ列生成部
7 位置基準データ検索部
8 ドットマトリクスデータ生成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体上のレーザスキャナにより地表を照射して取得したリターンパルスデータ群内の主走査方向の各データ列から、データ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致する位置基準データを選択する手順と、
前記データ列を位置基準データが一直線上に並ぶようにデータ取得順に副走査方向に配列してドットマトリクスデータを生成する手順と、
を有する航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法。
【請求項2】
前記リターンパルスデータ群から所定のリターン次数のリターンパルスデータを選択し、ドットマトリクスデータ生成対象とする手順を含む請求項1記載の航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成方法。
【請求項3】
飛行体上で請求項1または2記載の方法により生成した閲覧用レーザデータを汎用画像圧縮アルゴリズムにより圧縮して地上基地局に伝送し、
地上基地局においてドットマトリクスデータを画像表示する航空レーザ測量におけるレーザデータ閲覧方法。
【請求項4】
飛行体上で請求項1または2記載の方法により生成した閲覧用レーザデータを可逆圧縮アルゴリズムにより圧縮して、リターンパルスデータに対する標定データとともに地上基地局に伝送し、
地上基地局においてリターンパルスデータに対する標定演算を行う航空レーザ測量方法。
【請求項5】
飛行体上のレーザスキャナにより地表を照射して取得したリターンパルスデータ群取得時の主走査方向単位のデータを取得順に所定ピッチで配列した主走査方向データ列が、データ取得順に所定行数だけ副走査方向に所定ピッチで配列されるとともに、
各主走査方向データ列内に定義されるデータ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致する位置基準データが副走査方向に一直線に並べられており、
かつ行列内のデータ空白セル内には、データ欠損を示すフラグデータが埋め込まれた航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ構造。
【請求項6】
飛行体上のレーザスキャナにより地表を照射して取得したリターンパルスデータ群を主走査方向データ列に分離するデータ列生成部と、
前記各主走査方向データ列内からデータ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致する位置基準データを検索する位置基準データ検索部と、
前記位置基準データが同一直線上に位置するように前記主走査方向データ列が所定行数取得順に副走査方向に配列されたドットマトリクスデータを生成するドットマトリクスデータ生成部と、
を有する航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成装置。
【請求項7】
前記リターンパルスデータ群から所定のリターン次数のリターンパルスデータを選択し、ドットマトリクスデータ生成対象とする手順を含む請求項6記載の航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成装置。
【請求項8】
上記生成した閲覧用レーザデータを汎用画像圧縮アルゴリズムにより圧縮して地上基地局に伝送し、
地上基地局においてドットマトリクスデータを画像表示する
ことを特徴とする請求項6または7記載のレーザデータ閲覧システム。
【請求項9】
上記生成した閲覧用レーザデータを可逆圧縮アルゴリズムにより圧縮して、リターンパルスデータに対する標定データとともに地上基地局に伝送し、
地上基地局においてリターンパルスデータに対する標定演算を行う
ことを特徴とする請求項6または7記載の航空レーザ測量システム。
【請求項10】
航空レーザ測量における閲覧用レーザデータ生成プログラムであって、
飛行体上のレーザスキャナにより地表を照射して取得したリターンパルスデータ群内の主走査方向の各データ列から、データ取得時のスキャニング角度が予め設定された値にほぼ一致するデータを位置基準データとして選択する手順と、
前記データ列を前記位置基準データが一直線上に並ぶようにデータ取得順に副走査方向に配列してドットマトリクスデータを生成する手順と、
をコンピュータに実行させるための閲覧用レーザデータ生成プログラム。
【請求項11】
前記リターンパルスデータ群から所定のリターン次数のリターンパルスデータを選択する手段と、
ドットマトリクスデータ生成対象とする手順と、
をコンピュータに実行させるための請求項10記載の閲覧用レーザデータ生成プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−170887(P2006−170887A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365864(P2004−365864)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、総務省、「次世代GISの実用化に向けた情報通信技術の研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】