説明

航空宇宙用途に好適な多層コーティング

本発明は、航空機の塗装における使用に好適な多層コーティングに関する。より詳細には、本発明は、照射線プライマーコートおよびトップコートに関する。本発明は、(a)以下を含むプライマー組成物をアルミニウム基材に塗布する工程と、(i)ポリエン、(ii)ポリチオール、(b)当該組成物を合わせて、当該基材上に実質的に連続する被膜を形成する工程と、(c)当該被膜を照射線にさらして当該被膜を硬化させる工程と、(d)第2の組成物を塗布して、実質的に連続する第2の被膜を形成する工程と、(e)第2の被膜を硬化させる工程とを含む、基材上へ多層コーティングを塗布し硬化させるプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府契約
この発明は、空軍研究所(AFRL)によって与えられた契約番号第FA8650−05−C−5010号の下、米国政府の支援により実施した。よって米国政府は、本発明に対してある一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、航空機の塗装における使用に好適な多層コーティングに関する。より詳しくは、本発明は、新規のプライマーコートおよびトップコートに関する。
【背景技術】
【0003】
航空宇宙用途のための表面コーティングは、プライマーコーティングおよびトップコーティングもしくは仕上げコーティングを含む。ほとんどの商用航空機に関連する基材は、様々なアルミニウム合金を含むアルミニウムであるため、プライマーコートは、これらの基材に対して良好に接着し、これらの基材上で有効に機能する腐食防止剤を含んでいなければならず、並びに当該プライマーコーティング組成物は、続いて塗布されるトップコートと相性が良くなければならない。当該プライマー組成物は、ほとんどが熱的に硬化した材料であるか、または周囲温度で硬化する材料、例えば、ポリイソシアネートをベースとするものなどである。前者の組成物は、硬化にオーブンを必要とし、このことは大型航空機にとって不利であり、後者の材料は環境に優しくない。したがって、商用航空機での使用に好適な、周囲温度で硬化しかつ環境にも優しいプライマーコーティング組成物を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(a)以下を含むプライマー組成物をアルミニウム基材に塗布する工程と、
(i)ポリエン
(ii)ポリチオール
(b)当該組成物を合わせて、当該基材上に実質的に連続する被膜を形成する工程と、
(c)当該被膜を照射線にさらして当該被膜を硬化させる工程と、
(d)第2の組成物を塗布して、実質的に連続する第2の被膜を形成する工程と、
(e)第2の被膜を硬化させる工程と
を含む、基材上へ多層コーティングを塗布し硬化させるプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明では、そうでないと特に明記されている場合を除き、本発明は様々な代替の改変および工程順序を想定し得ると理解されるべきである。さらに、任意の作業実施例においてまたは他の別の例が示されている場合を除いて、例えば、本明細書および請求項で用いられる成分の量などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないと示されていない限り、以下の明細書および添付の請求項において提示される数値パラメータは、本発明によって得られるべき所望の性質に応じて変動し得る近似である。最低限のことであるが、さらに請求項の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではないが、各々の数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を提示する数値範囲およびパラメータは近似であるが、特定の実施例において提示される数値は、可能な限り正確に報告してある。しかしながら、任意の数値は、それらの個々の試験測定で見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を固有に含んでいる。
【0006】
さらに、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に含められるすべての下位範囲も含むことが意図されると理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記載された最小値1と最大値10との間(境界値を含む)のすべての下位範囲、すなわち、1以上の最小値、および10以下の最大値を有する下位範囲を含むことが意図される。
【0007】
本出願において、特に明示されない限り、単数の使用は複数を含み、複数は単数を含む。さらに、本出願においては、特定の事例において「および/または」が明示的に用いられている場合があるかもしれないが、「または」の使用は、特に明示されていない限りは「および/または」を意味する。
【0008】
用語「ポリマー」はさらに、コポリマーおよびオリゴマーも含むことを意味する。
【0009】
アクリルおよびメタクリルは、(メタ)アクリルとして表す。同様に、アリルおよびメタリルは、(メタ)アリルとして表す。
【0010】
脂肪族および脂環族は、(環式)脂肪族として表す。
【0011】
用語「アルミニウム」は、アルミニウム、およびアルミニウムの合金、例えば、銅、亜鉛、マンガン、ケイ素、またはマグネシウムで合金化したアルミニウムなど、を意味する。
【0012】
用語「照射線」は、フリーラジカルを発生する照射線を意味する。
【0013】
本発明における使用に好適なポリエンは、多数存在し、非常に広範囲であり得る。そのようなポリエンは、当技術分野において公知のものを含み得る。好適なポリエンの非限定的な例は、以下の式で表されるものを含み得、
A−(X)
式中、Aは有機部分であり、mは少なくとも2の整数であり、Xはオレフィン性不飽和部分であり、mは少なくとも2であり、通常は2〜4である。Xの例としては、以下の構造の基が挙げられ、
【0014】
【化1】

【0015】
式中、各Rは、Hおよび有機基から選択され、好ましくはメチルである。
【0016】
ポリエンは、照射線にさらすことによって重合可能なオレフィン二重結合を分子中に有する化合物またはポリマーであり得る。そのような材料の例としては、(メタ)アクリル−官能性(メタ)アクリルコポリマー、エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、およびメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物の数平均モル質量(Mn)は、好ましくは約200〜10,000である。当該分子は、好ましくは、照射線にさらすことによって重合可能なオレフィン二重結合を平均2〜20個含有する。ポリウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく、並びに混合物は特に好ましい。バインダーは、単独または混合物において使用してもよい。
【0017】
ポリウレタン(メタ)アクリレートの具体例は、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび必要に応じてポリオールとの反応生成物である。イソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、(環式)脂肪族ジイソシアネート、およびアル(アリファティック)ジイソシアネートが挙げられる。具体例としては、ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。より高官能性のポリイソシアネート、例えばトリイソシアネートなどを使用することもできる。例としては、ジイソシアネートのイソシアヌレート、例えばイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートなどが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。通常、ポリイソシアネートは、NCO/OHの等量比が>1においてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応する。次いで、結果として得られる反応生成物は、ポリオールと反応して反応生成物の鎖を延長し、残存するNCO官能基を消費する。好適なポリオールの例としては、ジオール、例えば1,4−ブチレンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールなど、が挙げられる。トリオールなどのより高官能性のポリオール、例えばトリメチロールプロパンなど、も使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートの例としては、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシル化ポリオールの(メタ)アクリレート、例えばプロポキシル化ジオールジアクリレートも使用することができ、プライマーコーティング配合物において反応性希釈剤として使用することができる。
【0018】
(メタ)アクリレートの他に、(メタ)アリル化合物またはポリマーを、単独でまたは(メタ)アクリレートとの組み合わせのいずれかにおいて使用することができる。(メタ)アリル材料の例としては、(メタ)アリル基を有するポリウレタンおよびポリエステルが挙げられる。例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートと、トリメチロールプロパンのジアリルエーテルとの1:2モル反応生成物が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「ポリチオール官能性材料」または「ポリチオール」は、2つ以上のチオール官能基(SH)を有する多官能性材料を意味する。照射線硬化性プライマー組成物の形成における使用のために好適なポリチオール官能性材料は、多数存在し、非常に広範囲であり得る。そのようなポリチオールは、当技術分野において公知のものを含み得る。好適なポリチオール官能性材料の非限定的な例は、これに限定されるものではないが、化合物およびポリマーを含む少なくとも2つのチオール基を有するポリチオールを含み得る。当該ポリチオールは、エーテル結合基(−O−)、ポリスルフィド結合基(−S−)を含むスルフィド結合基(−S−)、およびそのような結合基の組み合わせのいずれかを有していてもよく、この場合、xは少なくとも2であり、例えば2〜4である。
【0020】
本発明における使用のためのポリチオールとしては、これに限定されるものではないが、以下の式の材料が挙げられ、
−(SH)
式中、Rは、多価有機部分であり、nは少なくとも2であり、通常は2〜6の整数である。
【0021】
好適なポリチオールの非限定的な例としては、これに限定されるものではないが、式HS−R−COOHのチオール含有酸と構造R−(OH)のポリヒドロキシ化合物とのエステルが挙げられ、ここで、Rは有機部分であり、Rは有機部分であり、nは少なくとも2であり、通常は2〜6である。これらの化合物は、好適な条件下で反応し得、下記の一般構造を有するポリチオールを生成し得、
【0022】
【化2】

【0023】
式中、R、R、およびnは、上において定義された通りである。
【0024】
チオールを有する酸の例としては、ポリヒドロキシ化合物、例えば、グリコール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、およびそれらの混合物を有するチオグリコール酸(HS−CHCOOH)、α−メルカプトプロピオン酸(HS−CH(CH)−COOH)、およびβ−メルカプトプロピオン酸(HS−CHCHCOCH)が挙げられる。好適なポリチオールの他の非限定的な例としては、これに限定されるものではないが、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(チオグリコレート)、およびペンタエリトリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
ポリエンは、通常、プライマー組成物中に、80〜98重量パーセント、より典型的には90〜95重量パーセントの量において存在し、ポリチオール材料は、通常、2〜20重量パーセント、より典型的には5〜10重量パーセントの量において存在する。当該重量パーセントは、ポリエンおよびポリチオールの総重量に基づいている。
【0026】
当該プライマー組成物は、紫外線にさらされる場合、光開始剤を含有していてもよい。好適な光開始剤としては、例えば、190〜600nmの波長範囲内において吸収するものが挙げられる。
【0027】
照射線系のための光開始剤の例としては、ベンゾインおよびベンゾイン誘導体、アセトフェノン、並びにアセトフェノン誘導体、例えば2,2−ジアセトキシアセトフェノンなど、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、アントラキノン、1−ベンゾイルシクロヘキサノール、有機リン化合物、例えばアシルホスフィンオキシドなどが挙げられる。光開始剤が存在する場合、ポリエンおよびポリチオールおよび光開始剤の重量に基づいて、例えば、0.1〜7重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量において使用される。当該光開始剤は、単独または組み合わせにおいて使用してもよい。
【0028】
当該プライマー組成物は、必要に応じて、そのようなコーティング組成物中に存在する一般的な添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、着色顔料、腐食防止剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、および充填剤が挙げられる。これらの任意の成分は、プライマー組成物の重量に対して、最大50重量%まで、好ましくは最大40重量%までの量において存在する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「着色剤」は、色および/または他の不透明性および/または他の視覚効果を組成物に付与する任意の物質を意味する。当該着色剤は、任意の好適な形態、例えば、離散粒子、分散物、溶液、および/または薄片などにおいて、コーティングに添加することができる。単一の着色剤、または2種以上の着色剤の混合物を使用することができる。
【0030】
例示的な着色剤としては、顔料、染料、およびチント、例えば塗料産業において使用されるものおよび/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)において列挙されているもの、並びに特定の効果組成物が挙げられる。着色剤は、例えば、使用条件下において不溶性ではあるが湿潤可能な微粉砕された固体粉末を含み得る。着色剤は、有機物または無機物であってもよく、並びに凝集していてもまたは凝集していなくてもよい。着色剤は、磨砕または単純な混合によってコーティング中に組み込むことができる。着色剤は、粉砕ビヒクルを使用して粉砕することにより、コーティング中に組み込むことができ、この使用は、当業者に周知であろう。
【0031】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、これに限定されるものではないが、カルバゾールジオキサジンの粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩タイプ(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、金属複合体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンサンスロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド(diketo pyrrolo pyrrole red)」)、並びにそれらの混合物が挙げられる。用語「顔料」および「着色充填剤」は、相互交換可能に使用することができる。
【0032】
例示的な色素としては、これらに限定されるものではないが、溶媒ベースのもの、例えば、フタログリーンまたはフタロブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、およびキナクリドンが挙げられる。
【0033】
上記したように、着色剤は、分散物の形態であってもよく、これに限定されるものではないが、ナノ粒子分散物などが挙げられる。ナノ粒子分散物は、所望の視覚的な色および/または不透明性および/または視覚的効果を生じる、1種以上の高度に分散されたナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含有し得る。ナノ粒子分散物は、150nm未満、例えば70nm未満または30nm未満など、の粒径を有する顔料または色素などの着色剤を含み得る。ナノ粒子は、ストック有機顔料またはストック無機顔料を、0.5mm未満の粒径を有する粉砕媒体を用いて微粉砕することによって製造することができる。例示的なナノ粒子分散物およびそれらを作製する方法は、米国特許第6,875,800B2号において確認され、なお、これは、参照により本明細書中に援用される。ナノ粒子分散物は、結晶化、沈殿、気相縮合、および化学破砕(すなわち、部分的溶解)によっても製造することができる。コーティング内のナノ粒子の再凝集を最小にするために、樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散物を使用することができる。本明細書中で使用される場合、「樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散物」とは、ナノ粒子と当該ナノ粒子上の樹脂コーティングとを含む、目立たない「複合微粒子」を分散させた連続相を意味する。樹脂でコーティングされたナノ粒子の例示的な分散物およびそれらを作製するための方法は、2004年6月24日に出願された米国特許出願第10/876,031号において確認され、なお、これは、参照により本明細書中に援用されるものとし、並びに2003年6月24日に出願された米国特許仮出願第60/482,167号において確認され、なお、これも、参照により本明細書中に援用されるものとする。
【0034】
アルミニウム基材上での使用に好適な腐食防止剤は、クロム含有化合物であり、好ましくはクロム酸ストロンチウムである。当該クロム含有化合物は、通常、コーティング組成物の固体(顔料および樹脂)の重量に対して、少なくとも5重量パーセント、より典型的には5〜50重量パーセント、好ましくは10〜40重量パーセントのクロム量で組成物中に存在する。
【0035】
本発明の内容において使用されるプライマー組成物は、有機溶媒および/または水などの希釈剤を含有していてもよい。しかしながら、好ましくは、当該組成物は、固体100パーセントである。好適な有機溶媒の例としては、一価もしくは多価アルコール、例えばエチレングリコールおよびブタノールなど、並びにグリコールエーテルもしくはエステル、例えばC〜Cアルキルを含有するジエチレングリコールジアルキルエーテルなどである。希釈剤が存在する場合、当該希釈剤は、組成物の重量に対して、プライマー組成物の最大50重量%までを構成する。
【0036】
当該プライマーコーティング組成物は、スプレー塗装、はけ塗り塗装、ローラ塗装、または浸漬塗装などの従来の方法によって基材に塗布することができる。しかしながら、スプレー塗装が好ましい。プライマーコーティングを塗布する基材は、アルミニウムである。
【0037】
プライマーコーティング組成物を基材に塗布した後、照射線にさらすことにより当該プライマー層を硬化させる。当該照射線は、高エネルギー照射線または化学線であり得る。
【0038】
高エネルギー衝撃のクラスとしては、エネルギー電子、例えばストロンチウム−90などの同位体に由来するものなど、あるいは粒子加速器によって生成された強力な電子ビームが挙げられる。電子ビームによる硬化は、非常に急速で経済的な硬化速度が望まれる用途において最も有用である。一例として、いくつかの系では、約0.25未満のメガラドの総照射線量を使用することで約1秒未満の硬化時間を実現することができる。
【0039】
本明細書に有用な化学線のクラスは、紫外光および化学線の他の形態であり、これらは、通常、太陽または人工光源、例えば、Type RS Sunlamps、炭素アークランプ、キセノンアークランプ、水銀灯、タングステンハライドランプ等から放出される照射線に見出される。光硬化性ポリエン/ポリチオール組成物が、好適な光硬化速度促進剤を含有している場合、紫外線を最も効率的に使用することができる。紫外線の光源、光硬化速度促進剤、およびそれらの濃度、温度および分子量、並びにポリエンおよびポリチオールの反応性基の官能性を適切に選択することにより、硬化時間を非常に短く、したがって商業的に経済的であるように調節することができる。硬化時間は、1秒〜15分が一般的である。
【0040】
好ましくは、安全上の理由から、200〜400ナノメートルの波長間隔内に位置する低エネルギー紫外線が好ましい。好ましくは、UV−B量とUV−A量の比率は1:1以下である。
【0041】
プライマーコートの厚さ(乾燥膜厚)は、通常、17.8〜38.1ミクロンであり、好ましくは20.3〜27.9ミクロンである。
【0042】
基材上にプライマーコートを塗布し硬化させた後、硬化したプライマーにトップコート組成物を塗布する。当該トップコート組成物は、航空宇宙用途における使用において周知である任意のトップコート組成物であってよい。これらの材料は、通常、ポリマー性ポリオール、例えば、ヒドロキシル基などの活性水素基を含有するエチレン性不飽和モノマーなどのエチレン性不飽和モノマーの重合から調製したものなどである。これらのポリマーは、ヒドロキシル含有アクリルポリマーとして慣習的に公知である。他の好適なポリマー性ポリオールの例としては、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリマー性ポリオールは、ポリイソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。ポリマー性ポリオールおよびポリイソシアネートの両方が、(環式)脂肪族材料から調製されることが好ましい。他のトップコート組成物は、ポリアミン硬化剤との組み合わせにおけるポリエポキシドをベースとしている。やはり、すべての(環式)脂肪族系が好ましい。
【0043】
当該トップコート組成物は、航空宇宙用トップコート用途のためのコーティング技術において周知の添加剤、例えば、着色顔料、可塑剤、充填剤、接着促進剤、および触媒など、を含有する。
【0044】
好適なトップコートの例としては、PRC−DeSoto International社からDESOTHANEの商標で市販されているもの、Sherwin−Williams Company社からJETGLOおよびACRYGLOの商標で市販されているもの、並びにAkzo Nobel Aerospace Coatings社からAEROWAVEの商標で市販されているものが挙げられる。当該トップコートは、スプレー塗装、はけ塗り塗装、またはロール塗装などの従来技術によってプライマーコートに塗布される。好ましくは、当該トップコートは、スプレー塗装によって塗布される。当該トップコートは、通常、10〜40℃の周囲温度で硬化する。乾燥膜厚は、1.5〜3.0ミル(38〜76ミクロン)の範囲であり、好ましくは1.7〜2.5ミル(43〜64ミクロン)の範囲である。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するものであって、いかなる点においても本発明を限定するように解釈されるべきではない。全ての部およびパーセントは、そうでないことが示されない限り、重量に基づくものである。
【0046】
以下の実施例は、様々なプライマー配合物の調製およびアルミニウム基材への塗布を示している。当該プライマーは、様々な量におけるポリエンおよびポリチオールをベースとしており、様々な量においてクロム酸ストロンチウムおよび様々な他の顔料を含有していた。当該コーティングを、UV照射線にさらすことにより硬化させ、当該硬化したコーティングは、後述の実施例において報告しているように、接着性、耐食性、柔軟性、硬度、および光沢について評価した。硬化したプライマーの1つは、PPG Industries社から入手可能な航空宇宙用トップコートにより上塗りした。
【0047】
ポリエン
実施例A
ウレタンアクリルは、1730.7gのポリイソシアネート(Desmodur Z4470 BA;Bayer Material Science社)、1.52gのジラウリン酸ジブチルスズ、3.21gのIONOL、および7.1gの亜リン酸トリフェニルを丸底フラスコに入れ、次いで、窒素下で69℃に加熱することによって調製した。ひとたび当該温度に達したら、393.1gのプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR−9003、Sartomer社)および391.1gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを、45分間かけてゆっくりと加え、その間、温度を75℃未満に維持した。完了後、当該反応物を80℃で1時間加熱した。次に、99gの1,6−ヘキサンジオールを加え(80℃にて)、全てのイソシアネートが反応するまで、当該反応物を同温に維持した。最後に、339.5gのSR−9003および340.1gの酢酸tert−ブチルを加え、当該反応物を降温させた。
【0048】
ポリチオール
実施例B
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)
実施例C
ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
実施例1
クロム酸ストロンチウム顔料を有するUV硬化性コーティング
40.82gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.87gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、0.24gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、4.11gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、および3.70gの酢酸tert−ブチルを混合して10重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、4.44gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、29.8gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、および2.82gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。
【0049】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上およびAlodine 1200前処理したAl 2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュ(flash)させ、次いで当該基材より10インチ(25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、1〜1.5ミル(25.4〜38.1ミクロン)の乾燥膜厚(DFT:dry film thickness)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。この配合は、0.2:1のチオール:エン比に基づいていた。
【0050】
20重量%、30重量%、および40重量%の顔料を含有する配合を同様にして作製した。
【0051】
コーティングを硬化させた後、1時間未満に物理試験を実施した。当該コーティングは、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有しており、Alodine 1200前処理アルミニウムに対しては中程度から優れた接着性を有していた。接着性は、10×10の正方形のクロスハッチにより特定した(ASTM D3359の修正)。
【0052】
実施例2
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、および黒色酸化鉄顔料を有するUV硬化コーティング
44.58gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、3.14gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、1.27gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、18.65gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、3.26gの二酸化チタン、0.16gの黒色酸化鉄、および9.23gの酢酸tert−ブチルを混合して35重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、4.92gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、32.54gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、および3.09gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。この配合は、0.2:1のチオール:エン比に基づいていた。
【0053】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上およびAlodine 1200前処理したAl 2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチ(25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、1.2〜1.4ミル(30.5〜35.6ミクロン)の乾燥膜厚(DFT)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0054】
30重量%、40重量%、および45重量%の顔料を含有する配合を同様にして作製したが、後者の2つは、顔料ゲル化のためにスプレーできなかった。
【0055】
コーティングを硬化させた後、1時間未満に物理試験を実施した。スプレー可能なコーティング(30重量%および35重量%)は、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有していた。
【0056】
ASTM D117に従って、30重量%および35重量%のコーティングに引掻き傷をつけ、500時間の塩水噴霧腐食試験を行った。この試験期間の後、30PWC(顔料重量濃度(pigment weight concentration))の試料の引掻き傷において少量の腐食が観察されたが、35PWC試料では腐食およびブリスターを示さなかった。
【0057】
実施例3
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、カーボンブラック、および結晶性シリカ顔料を有するUV硬化性コーティング
39.19gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.76gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、2.77gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、16.92gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、2.96gの二酸化チタン、0.04gのカーボンブラック、16.92gの結晶性シリカ(MIN−U−SIL 5;U.S. Silica社)、および9.62gの酢酸tert−ブチルを混合して49.9重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、4.41gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、28.61gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、および2.71gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。この配合は、0.2:1のチオール:エン比を有していた。
【0058】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチ(25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、1.3〜1.8ミル(33〜45.7ミクロン)の乾燥膜厚(DFT)を有する硬化した被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0059】
38.07重量%、40.86重量%、43.41重量%、45.72重量%、および47.91重量%の顔料を含有する配合を同様にして作製した。
【0060】
コーティングを硬化させた後、24時間未満に物理試験を実施した。全てのコーティングが、Conical Mandrel曲げ(ASTM D522)を実施したところ、クラッキングの発生はなく、加えて、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を示した。当該コーティングは、当該コーティングの目視検査によりクラッキングについて0〜10段階でその柔軟性を評価した。0評価は、クラッキングが無いことを示している。10評価は、著しいクラッキングを示している。
【0061】
実施例4
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、およびカーボンブラック顔料を有するが、より低い濃度のチオールを有するUV硬化性コーティング
42.45gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.99gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、1.63gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、17.96gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、3.14gの二酸化チタン、0.04gのカーボンブラック、および8.55gの酢酸tert−ブチルを混合して35.75重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、4.58gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、30.44gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、および1.84gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。この配合は、0.12:1のチオール:エン比を有していた。
【0062】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチ(25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、0.9〜1.3ミル(22.9〜33ミクロン)の乾燥膜厚(DFT)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0063】
コーティングを硬化させた後、24時間未満に物理試験を実施した。当該コーティングは、Conical Mandrel曲げを実施したところ、クラッキングの発生はなく、加えて、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有していた。
【0064】
実施例5
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、カーボンブラック、およびアモルファスシリカ顔料を有するUV硬化性コーティング
34.11gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.40gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、2.07gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、14.64gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、2.56gの二酸化チタン、0.03gのカーボンブラック、9.72gのアモルファスシリカ(Gasil IJ35;INEOS Silicas社)、および16.0gの酢酸tert−ブチルを混合して45.72重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、3.82gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、24.9gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、2.36gの実施例Bの三官能性チオール、および2.50gのアセトンを加えた。この配合は、約0.2:1のチオール:エン比を有していた。
【0065】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチ25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、1〜1.3ミル(25.4〜33ミクロン)の乾燥膜厚(DFT)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0066】
40.89重量%、41.45重量%、43.41重量%、47.92重量%、および49.91重量%の顔料を含有する配合を同様にして作製した。
【0067】
コーティングを硬化させた後、24時間未満に物理試験を実施した。49.91PWCの試料以外のすべてのコーティングが、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有しており、極めて柔軟であり(Conical Mandrel曲げの際にゼロから軽微のクラッキング)、高い耐溶媒性(100回を超えるMEK二重摩擦)、すなわち、メチルエチルケトンに浸した布による前後方向の指での摩擦に対する高い耐性を有していた。より低い濃度のアモルファスシリカを有するコーティングからは、より硬い被膜、すなわち、ASTM D4366に従って145〜169振り子(Koenig)硬度の被膜が得られ、一方、より高い濃度の試料は、Gardner Laboratory社のModel GC−9095光沢度計を使用して、60度未満の光沢度を示した。
【0068】
実施例6
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、カーボンブラック、およびアモルファスシリカ顔料を有するUV硬化性コーティング。コーティングを、市販の航空宇宙用ポリウレタンコーティングで上塗りした。
【0069】
33.58gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.36gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、1.85gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、14.36gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、2.69gの二酸化チタン、0.03gのカーボンブラック、8.36gのアモルファスシリカ(Gasil IJ35;INEOS Silicas社)、および12.0gの酢酸tert−ブチルを混合して44.41重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、3.58gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、12.24gの10重量%光開始剤(Irgacure819;Ciba Specialty Chemicals社)アセトン溶液、および2.33gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。この配合は、約0.19:1のチオール:エン比を有していた。
【0070】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチの距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、0.95〜1.13ミルの乾燥膜厚(DFT)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0071】
43.07重量%および45.37重量%の顔料を含有する配合を同様にして作製した。
【0072】
コーティングを硬化させた後、24時間未満に物理試験を実施した。すべてのコーティングは、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有し、極めて柔軟であり(Conical Mandrel曲げの際に軽微のクラッキング)、硬い被膜を生じ(4H〜5H鉛筆硬度)、並びに室温で脱イオン水中への24時間の浸漬後においてブリスターが全くない優れた接着性を示した。
【0073】
硬化させたコーティングの別々のパネルを、PRC−Desoto(PPG Aerospace社)CA8214/F36173(フラットグレー)2Kポリウレタントップコートで上塗りし、3日間周囲条件(約77Fおよび約50%R.H.)で硬化させた。当該トップコートの乾燥膜厚(DFT)は、2〜2.5 ミル(50.8〜63.5ミクロン)の範囲であった。
【0074】
上塗りした試料は、優れたコーティング間接着性(プライマーとトップコートとの間)を示し、同時に、アルミニウム基材に対しても良好から優れた接着性を示した。当該コーティングは、Conical Mandrel曲げを実施したところ、クラッキングまたは剥離を示さなかった。これらの試料も、高い耐溶媒性を有していた(100回以上のMEK二重摩擦)。
【0075】
実施例7
クロム酸ストロンチウム、二酸化チタン、カーボンブラック、およびアモルファスシリカ顔料を有するUV硬化性コーティング。各試料は、様々なチオール官能性モノマーを含有していた。比較のために、チオールモノマーを含まない試料を作製した。
【0076】
33.26gの実施例Aのウレタンアクリレート樹脂、2.72gのアクリレート−官能性希釈剤(SR 9003;Sartomer社)、2.82gの湿潤および分散剤(Disperbyk−110;Byk Chemie社)、16.53gのクロム酸ストロンチウム(Strontium Chromate 177;Wayne Pigment Corporation社)、3.09gの二酸化チタン、0.04gのカーボンブラック、9.62gのアモルファスシリカ(Gasil IJ35;INEOS Silicas社)、および15.54gの酢酸tert−ブチルを混合して44.18重量%の顔料配合を調製した。当該混合物を、100gのzircoaビーズと共に2〜3時間機械的に振盪し、その後、12.69gのアセトンを加え、次いで円錐形のフィルターにより濾過して着色ペーストを得た。当該ペーストに、1.41gの光開始剤(Irgacure 819;Ciba Specialty Chemicals社)、4.12gのアクリレート−官能性接着促進剤(CD 9050;Sartomer社)、および2.68gの実施例Bの三官能性チオールを加えた。この配合は、0.18:1のチオール:エン比を有していた。
【0077】
前述の配合を、HVLP銃を使用して裸のアルミニウム2024 T3パネル上にスプレー塗装した。裸のAlパネルは、400番のグリットペーパーで水研ぎし、水で洗浄し、次いでアセトンで拭き取って調製した。当該スプレー塗装された配合を、5分間フラッシュさせ、次いで当該基材より10インチ(25.4cm)の距離からH&S Autoshot 400 UV−Aランプによって5分間硬化させた。当該配合のスプレー塗装により、0.8〜1.1ミル(20.3〜27.9ミクロン)の乾燥膜厚(DFT)を有する硬化被膜を得た。当該コーティングは、5分間のUV−A照射の後に不粘着性表面を示した。
【0078】
実施例Cの4官能性チオールモノマーを含有するかまたはチオールモノマーを含まない配合を同様にして調製した。チオールを含有するこれらの試料すべてが、0.18:1のチオール:エン比を有していた。
【0079】
コーティングを硬化させた後、1時間未満に物理試験を実施した。3または4官能性チオールモノマーを有するコーティングは、裸のアルミニウムに対して優れた接着性を有し、一方、チオールを含まない試料は、中程度の接着性しか有していなかった。3または4官能性チオールのコーティングは、極めて柔軟であり(Conical Mandrel曲げの際にクラッキング無し)、硬い被膜を生じ(4H鉛筆硬度および110Konig硬度)、並びに良好な耐薬品性を示した(100回以上のMEK二重摩擦)。チオールを含まない試料は、耐薬品性が著しく低い、より柔らかい被膜を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下を含むプライマー組成物をアルミニウム基材に塗布する工程と、
(i)ポリエン、
(ii)ポリチオール
(b)該組成物を合わせて、該基材上に実質的に連続する被膜を形成する工程と、
(c)該被膜を照射線にさらして該被膜を硬化させる工程と、
(d)工程(c)の該硬化被膜に第2の組成物を塗布する工程と、
(e)該第2の組成物を合わせて、実質的に連続する第2の被膜を形成する工程と、
(f)該第2の被膜を硬化させる工程と
を含む、基材上へ多層コーティングを塗布し硬化させるプロセス。
【請求項2】
工程(a)の前記組成物を、前記アルミニウム基材上に直接塗布する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(a)の前記組成物を、腐食防止組成物によって前処理されたアルミニウム基材上に塗布する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリエンが構造式A−(X)を有し、この場合、Aは有機部分であり、Xはオレフィン性不飽和部分であり、mは少なくとも2である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Xが−C(O)CR=CHから選択され、この場合、Rは水素またはメチルである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
Aがエステルおよびウレタンから選択される基を含有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
Aがポリイソシアネートに由来する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項8】
A−(X)がポリウレタン(メタ)アクリレートである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項9】
A−(X)がポリエステル(メタ)アクリレートである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項10】
A−(X)が、ポリウレタン(メタ)アクリレートとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項11】
mが2〜4である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ポリチオールが構造式R−(SH)を有し、この場合、Rは有機部分であり、nは少なくとも2である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
Rがエステル基を含有する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
Rがポリオールに由来する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリチオールが、チオール−官能性有機酸とポリオールとの反応生成物である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
nが2〜4である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ポリエンが、80〜98重量パーセントの量において前記プライマー組成物中に存在し、そして前記ポリチオールが、2〜20重量パーセントの量において存在し、ここで、該重量パーセントは、ポリエンおよびポリチオールの重量に基づいている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ポリエンが、90〜95重量パーセントの量において前記プライマー組成物中に存在し、そして前記ポリチオールが、5〜10重量パーセントの量において存在し、ここで、該重量パーセントは、ポリエンおよびポリチオールの重量に基づいている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
工程(a)において塗装された前記組成物が、該組成物の固形分重量に基づいて、少なくとも5重量パーセントの腐食防止剤を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記腐食防止剤がクロム酸ストロンチウムである、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
工程(c)において形成された前記被膜は、200〜400ナノメートルの波長間隔内に位置する紫外線にさらされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記照射線のUV−B量とUV−A量の比率が1:1以下である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項23】
アルミニウム基材への使用に好適なプライマー組成物であって、
(a)ポリエンと、
(b)ポリチオールと、
(c)前記アルミニウム基材の腐食を抑制する防止剤と
を含む、プライマー組成物。
【請求項24】
前記腐食防止剤がクロム含有化合物である、請求項23に記載のプライマー組成物。
【請求項25】
前記クロム含有化合物が、前記プライマー組成物の固形分重量に基づいて5〜50重量パーセントのクロム量で存在する、請求項24に記載のプライマー組成物。
【請求項26】
(a)1分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタン(メタ)アクリレートと、
(b)ポリチオールと、
(c)前記プライマー組成物の固形分重量に基づいてクロムが10〜40重量パーセントの量であるクロム酸ストロンチウムと
を含む、請求項23に記載のプライマー組成物。

【公表番号】特表2010−536541(P2010−536541A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521056(P2010−521056)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/064826
【国際公開番号】WO2009/025902
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】