説明

航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラム

【課題】センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】オリフィス24cを一対の油室(16a、16b)に連通させた検査ダンピング作動状態における検査対象のアクチュエータ11の作動速度と一対の油室(16a、16b)の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得する。検査ダンピング作動状態で、検査対象のアクチュエータ11の作動速度を取得する。これと同時に、一方の油室16a内の圧油の圧力を検出する圧力センサ18bの検出値としての圧力値を取得する。作動速度に対応して取得された圧力値について、基準圧力値条件と比較することで、検査対象のアクチュエータ11の性能の劣化を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機における1つの舵面に取り付けられ、舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機においては、動翼(操縦翼面)として形成されて、補助翼(エルロン)や昇降舵(エレベータ)、方向舵(ラダー)等として構成される舵面が設けられている。そして、航空機では、1つの舵面に複数の油圧作動式のアクチュエータが取り付けられ、この複数のアクチュエータによって舵面が駆動されている(例えば、特許文献1を参照)。また、各アクチュエータは、舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室を備えるとともに、ダンピング作動時に一対の油室の各油室がオリフィスに連通するように構成されている。このアクチュエータのダンピング作動時においては、油室から排出された圧油がオリフィスを通過することで、ダンピング機能(減衰機能)が発揮されることになる。
【0003】
また、1つの舵面を駆動する複数のアクチュエータは、異なる系統として構成された機体側の油圧源からそれぞれ圧油を供給される。そして、いずれかのアクチュエータへ圧油を供給する油圧源の機能の喪失又は低下等が発生した場合、そのアクチュエータにおいては、一対の油室をオリフィスに連通させてダンピング作動を行う状態となるようにアクチュエータの作動状態の切り替えが行われる。このため、上述したダンピング機能が発揮され、油圧源の機能の喪失等が生じたアクチュエータが、舵面に作用する外力に追従するように作動することになる。これにより、油圧源の機能の喪失等が発生しておらず正常に作動可能なアクチュエータの作動が、油圧源の機能の喪失等が生じたアクチュエータの作動によって阻害されてしまうことを抑制できる。また、複数のアクチュエータの各油圧源の機能の喪失等が生じた場合であれば、各アクチュエータにおいてダンピング作動を行う状態となるように作動状態が切り替えられる。これにより、各アクチュエータにおいてダンピング機能が発揮され、舵面がフラッター現象のように過度に動いてしまうような舵面の異常な作動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−40199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された航空機のアクチュエータにおいては、正常な作動が常に確保され、正常なダンピング機能を常時発揮可能であることが求められる。このため、正常な作動が確保されているかどうかを確認するための性能の検査が定期的に必要となる。
【0006】
上記の性能検査としては、アクチュエータにおける一対の油室の各油室に対応させて検査用の圧力センサをそれぞれ設置し、アクチュエータの作動時における各圧力センサでの圧力測定結果に基づいて、作動が正常か否かを判断するための性能検査を実施することができる。しかしながら、このような検査を行うためには、アクチュエータにおける一対の油室の各油室に対応して設置される複数の圧力センサが必要となり、センサ点数の増大を招くことになる。このため、コストの増大を招いてしまうとともに、性能検査のための構成の複雑化を招いてしまうことになる。また、一対の油室の各油室に対応させた圧力センサを設置する代わりに、一対の油室間の差圧を検出する差圧センサ(ΔPセンサ)を設置して、作動が正常か否かを判断するための性能検査を実施することもできる。しかしながら、この場合、複雑な機構を有して高コストな差圧センサが必要となってしまい、複数の圧力センサを設置する場合と同様に、性能検査のための構成の複雑化を招くとともにコストの増大も招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る航空機アクチュエータの性能検査方法は、航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査方法に関する。そして、第1発明に係る航空機アクチュエータの性能検査方法は、複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得する、基準圧力値条件取得ステップと、前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得する、作動速度取得ステップと、前記作動速度取得ステップと同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得する圧力値取得ステップと、前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する性能劣化判定ステップと、を備えている。
【0009】
この発明によると、検査ダンピング作動状態において、アクチュエータの作動速度と一方の油室の圧油の圧力を検出する圧力センサで検出された圧力値とが取得される。そして、アクチュエータの作動速度に対応させて取得された圧力値について、アクチュエータの作動速度との関係で規定された基準圧力値条件との比較が行われ、アクチュエータの性能の劣化が判定される。このため、ダンピング作動時におけるアクチュエータの作動速度との関係で必要な圧力が確保されて正常なダンピング機能を発揮可能な状態であるか否かを確認することができる。また、通常のアクチュエータにおいては、作動の制御のために一般的に設けられている構成として作動速度を検出するセンサが備えられている。よって、作動速度を検出するセンサに加えて、一方の油室のみの圧油の圧力を検出する1つの圧力センサをアクチュエータに設置するという簡素な構成に基づいて、性能検査のための構成の複雑化を招いてしまうことなく、アクチュエータの性能検査を実施することができる。更に、センサ点数の増大を抑制でき、コストの増大を招いてしまうことを抑制できる。
【0010】
従って、本発明によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査方法を提供することができる。
【0011】
第2発明に係る航空機アクチュエータの性能検査方法は、第1発明の航空機アクチュエータの性能検査方法において、前記基準圧力値条件取得ステップにおいては、前記検査ダンピング作動状態で、前記舵面を駆動する駆動対象の前記アクチュエータを往復方向における一方の方向に移動させ、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と、検査対象の前記アクチュエータにおける前記圧力センサで検出された圧力値とを同時に取得することで、前記基準圧力値条件を取得し、前記作動速度取得ステップ及び前記圧力値取得ステップにおいては、駆動対象の前記アクチュエータを往復方向における前記一方の方向とは反対の他方の方向に移動させ、検査対象の前記アクチュエータにおける作動速度と前記圧力センサで検出された圧力値とを取得することを特徴とする。
【0012】
この発明によると、基準圧力値条件が、検査ダンピング作動状態でアクチュエータが往復方向の一方の方向に移動するときにおけるアクチュエータの作動速度と圧力センサで検出された圧力値とによって規定される。そして、検査ダンピング作動状態でアクチュエータが往復方向の他方の方向に移動するときにアクチュエータの作動速度に対応させて取得された圧力値について、上記の基準圧力条件と比較することで、容易に、アクチュエータの性能の劣化を判定することができる。このため、ダンピング作動時におけるアクチュエータの作動速度との関係で必要な圧力が確保されて正常なダンピング機能を発揮可能な状態であるか否かを容易に確認することができる。尚、アクチュエータの正常な作動が確保されている場合は、アクチュエータが往復方向に移動するときの往路及び復路の各方向の移動の際に取得された圧力値は、同一の作動速度では略同一の値となる。このため、アクチュエータが往復方向に移動するときの各方向での圧力値を同一作動速度条件で比較することで、容易に、アクチュエータの正常な作動が確保されているか否かを確認することができる。また、アクチュエータが往復方向に移動するときの各方向での圧力値を比較するため、圧油の温度の変化がほとんど生じない状態で比較することができる。このため、圧力測定条件の違いによるバラツキの影響を効率よく相殺して排除することができ、更に、高精度な性能検査結果を得ることができる。
【0013】
第3発明に係る航空機アクチュエータの性能検査方法は、第1発明の航空機アクチュエータの性能検査方法において、前記基準圧力値条件取得ステップにおいては、前記検査ダンピング作動状態における前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値との関係で予め設定された圧力値の下限条件としての前記基準圧力値条件が取得され、前記性能劣化判定ステップにおいては、前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値が、前記基準圧力値条件以上であるか否かが判断され、前記アクチュエータの性能の劣化が判定されることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、基準圧力値条件が、検査ダンピング作動状態におけるアクチュエータの作動速度と一対の油室の内部の圧油の圧力値との関係で予め設定された圧力値の下限条件として規定される。そして、アクチュエータの作動速度に対応させて取得された圧力値について、上記の下限条件以上であるか否かを判断することで、容易に、アクチュエータの性能の劣化を判定することができる。このため、ダンピング作動時におけるアクチュエータの作動速度との関係で必要な圧力が確保されて正常なダンピング機能を発揮可能な状態であるか否かを容易に確認することができる。
【0015】
第4発明に係る航空機アクチュエータの性能検査装置は、航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査装置に関する。そして、第4発明に係る航空機アクチュエータの性能検査装置は、前記アクチュエータの性能の検査を実行する性能検査実行部を備え、前記性能検査実行部は、複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得し、前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得し、検査対象の前記アクチュエータの作動速度の取得と同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得し、検査対象の前記アクチュエータの作動速度に対応して前記圧力センサの検出値として取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する、ことを特徴とする。
【0016】
この発明によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、この発明によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査装置を提供することができる。
【0017】
第5発明に係るプログラムは、航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、その性能の検査をコンピュータに実行させるための、プログラムに関する。そして、第5発明に係るプログラムは、前記コンピュータに、複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得する、基準圧力値条件取得ステップと、前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得する、作動速度取得ステップと、前記作動速度取得ステップと同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得する圧力値取得ステップと、前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する性能劣化判定ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、この発明によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、プログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における航空機アクチュエータの性能検査装置と、この性能検査装置が適用される航空機のアクチュエータ及びその作動を制御する油圧回路とを模式的に示す図である。
【図2】図1に示す油圧回路の一部について詳しく示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態における航空機アクチュエータの性能検査方法を示すフロー図である。
【図4】図3に示すフロー図における所定のステップにて取得されたアクチュエータの油室内の圧油の圧力値及びアクチュエータの作動速度を例示して説明するための図である。
【図5】アクチュエータにおける各油室が連通するオリフィスを有する状態切替弁についての変形例を示す油圧回路図である。
【図6】変形例に係る航空機アクチュエータの性能検査方法における所定のステップにて取得されたアクチュエータの油室内の圧力値及びアクチュエータの作動速度と基準圧力値条件との関係を例示して説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態は、航空機における1つの舵面に取り付けられ、舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムに関して、広く適用することができるものである。
【0022】
図1は、フライトコントローラ1と、このフライトコントローラ1が適用される航空機のアクチュエータ(11、12)及びその作動を制御する油圧回路とを模式的に示す図である。航空機アクチュエータであるアクチュエータ(11、12)は、航空機における1つの舵面100に取り付けられ、この舵面100を駆動する複数(本実施形態では、2つ)の油圧作動式のアクチュエータとして構成されている。尚、舵面100は、航空機の動翼(操縦翼面)として設けられており、例えば、主翼に設けられるエルロン(補助翼)や、水平尾翼に設けられる昇降舵(エレベータ)、垂直尾翼に設けられる方向舵(ラダー)、等として構成される。
【0023】
また、後述するように、複数のアクチュエータ(11、12)は、複数の油圧系統(13、14)のそれぞれにおける油圧回路の切り替えによって作動が制御される。そして、各油圧系統(13、14)は、フライトコントローラ1からの指令信号に基づいて各アクチュエータコントローラ(42a、42b)の制御によって作動するように構成されている。これにより、フライトコントローラ1の制御によって舵面100の作動が制御されるように構成されている。また、フライトコントローラ1の制御によって、アクチュエータ(11、12)におけるそれぞれの作動状態は、舵面100を駆動するアクティブモードの作動状態と、舵面100に追従して作動するダンピングモードの作動状態とに切り替えられるように構成されている。更に、フライトコントローラ1は、アクチュエータ(11、12)について、性能を検査するための、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査装置を構成している。
【0024】
まず、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査装置であるフライトコントローラ1と本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査方法と本実施形態におけるプログラムとが適用される、アクチュエータ(11、12)及び油圧系統(13、14)について説明する。本実施形態においては、アクチュエータ(11、12)として、第1アクチュエータ11と第2アクチュエータ12とが設けられている。第1及び第2アクチュエータ(11、12)のそれぞれは、舵面100に連結されており、独立して舵面100を駆動可能なシリンダ機構として構成されている。
【0025】
第1アクチュエータ11は、ロッド15と、ロッド15が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ16と、ロッド15に固定されたピストン17とが設けられている。シリンダ16内は、ピストン17により、一対の油室(16a、16b)に区画されている。この一対の油室(16a、16b)は、第1アクチュエータ11において、アクティブモードの作動状態である舵面100の駆動時に、圧油がそれぞれ供給及び排出される油室として備えられている。
【0026】
また、第1アクチュエータ11には、ロッド15のシリンダ16に対する位置を検出する位置センサ18aが設置されている。更に、第1アクチュエータ11には、一対の油室(16a、16b)のうちの一方の油室16a内の圧油の圧力を検出する圧力センサ18bが設置されている。尚、本実施形態では、圧力センサ18bが、油室16a内の圧油の圧力を検出するセンサとして設けられている形態を例示しているが、この通りでなくてもよい。圧力センサ18bは、一対の油室(16a、16b)のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出するセンサであればよく、油室16b内の圧油の圧力を検出するセンサとして設けられていてもよい。
【0027】
一方、第2アクチュエータ12は、ロッド19と、ロッド19が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ20と、ロッド19に固定されたピストン21とが設けられている。シリンダ20内は、ピストン21により、一対の油室(20a、20b)に区画されている。この一対の油室(20a、20b)は、第2アクチュエータ12において、アクティブモードの作動状態である舵面100の駆動時に、圧油がそれぞれ供給及び排出される油室として備えられている。
【0028】
また、第2アクチュエータ12には、ロッド19のシリンダ20に対する位置を検出する位置センサ22aが設置されている。更に、第2アクチュエータ12には、一対の油室(20a、20b)のうちの一方の油室20a内の圧油の圧力を検出する圧力センサ22bが設置されている。尚、本実施形態では、圧力センサ22bが、油室20a内の圧油の圧力を検出するセンサとして設けられている形態を例示しているが、この通りでなくてもよい。圧力センサ20bは、一対の油室(20a、20b)のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出するセンサであればよく、油室20b内の圧油の圧力を検出するセンサとして設けられていてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、油圧系統(13、14)として、第1油圧系統13と第2油圧系統14とが設けられている。第1油圧系統13は、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)と、第1系統油圧源101及びリザーバ回路102とを連通可能に構成されている。一方、第2油圧系統14は、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)と、第2系統油圧源103及びリザーバ回路104とを連通可能に構成されている。
【0030】
第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103のそれぞれは、圧油(作動油)を供給する油圧ポンプを備えて構成され、図示しない航空機の機体側に設置されている。そして、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103は、互いに独立した系統として設けられている。尚、上記油圧源(101、103)が設置される航空機においては、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103のそれぞれからの圧油が供給されることで、舵面100を駆動する第1及び第2アクチュエータ(11、12)と、舵面100以外の舵面(図示せず)を駆動するアクチュエータ(図示せず)とが作動するように構成されている。
【0031】
リザーバ回路102は、第1系統油圧源101からの圧油として供給された後に第1アクチュエータ11から排出される圧油が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第1系統油圧源101に連通するように構成されている。また、リザーバ回路102から独立した系統として構成されるリザーバ回路104は、第2系統油圧源103からの圧油として供給された後に第2アクチュエータ12から排出される圧油が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第2系統油圧源103に連通するように構成されている。このように構成されていることで、リザーバ回路102に戻った油は、第1系統油圧源101で昇圧され、第1油圧系統13を介して第1アクチュエータ11に供給される。一方、リザーバ回路104に戻った油は、第2系統油圧源103で昇圧され、第2油圧系統14を介して第2アクチュエータ12に供給される。
【0032】
図2は、図1に示す油圧回路の一部について詳しく示す図であって、第1油圧系統13及び第1アクチュエータ11について示す図である。図1及び図2に示す第1油圧系統13は、制御弁23、状態切替弁24、電磁弁25、逆止弁(29a、29b)、供給油路31、排出油路32、パイロット圧油路33、給排油路(34a、34b、35a、35b)、等を備えて構成されている。また、図1に示す第2油圧系統14は、制御弁26、状態切替弁27、電磁弁28、逆止弁(29a、29b)と同様に構成される逆止弁(図示せず)、供給油路36、排出油路37、パイロット圧油路38、給排油路(39a、39b、40a、40b)、等を備えて構成されている。
【0033】
第1油圧系統13の供給油路31は、第1系統油圧原101と制御弁23とを接続して第1系統油圧源101からの圧油を供給する油路として設けられている。また、供給油路31には、油中の異物を除去するためのフィルター101a、第1系統油圧源101からの圧油の流れを許容し第1系統油圧源101へ逆流する方向の流れを規制する逆止弁101b、が設けられている。第1油圧系統13の排出油路32は、制御弁23とリザーバ回路102とを接続し、制御弁23から排出された油をリザーバ回路102に排出する油路として設けられている。また、排出油路32には、リリーフ弁を備えて構成される蓄圧器102aが設けられている。蓄圧器102aが排出油路32に設けられていることで、蓄圧器102aの上流側(リザーバ回路102が連通する側と反対側)における第1油圧系統13及び第1アクチュエータ11の回路内の圧油の圧力が、蓄圧器102aのリリーフ弁によるリリーフ圧以上に維持されることになる。
【0034】
第2油圧系統14の供給油路36は、第2系統油圧原103と制御弁26とを接続して第2系統油圧源103からの圧油を供給する油路として設けられている。供給油路36には、第1油圧系統13のフィルター101a及び逆止弁101bと同様に構成されるフィルター及び逆止弁(図示せず)が設けられている。第2油圧系統14の排出油路37は、制御弁26とリザーバ回路104とを接続し、制御弁26から排出された油をリザーバ回路104に排出する油路として設けられている。排出油路37には、第1油圧系統13の蓄圧器102aと同様に構成される蓄圧器(図示せず)が設けられている。
【0035】
第1油圧系統13の給排油路(34a、34b)は、制御弁23と状態切替弁24とを接続し、第1系統油圧源101から供給される圧油とリザーバ回路102へ排出される圧油とが流動する油路として設けられている。第1油圧系統13の給排油路(35a、35b)は、状態切替弁24と第1アクチュエータ11とを接続し、第1アクチュエータ11へ供給される圧油と第1アクチュエータ11から排出される圧油とが流動する油路として設けられている。尚、給排油路35aは第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)のうちの一方の油室16aに接続し、給排油路35bは他方の油室16bに接続するように構成されている。
【0036】
第2油圧系統14の給排油路(39a、39b)は、制御弁26と状態切替弁27とを接続し、第2系統油圧源103から供給される圧油とリザーバ回路104へ排出される圧油とが流動する油路として設けられている。第2油圧系統14の給排油路(40a、40b)は、状態切替弁27と第2アクチュエータ12とを接続し、第2アクチュエータ12へ供給される圧油と第2アクチュエータ12から排出される圧油とが流動する油路として設けられている。尚、給排油路40aは第2アクチュエータ11における一対の油室(20a、20b)のうちの一方の油室20aに接続し、給排油路40bは他方の油室20bに接続するように構成されている。
【0037】
第1油圧系統13のパイロット圧油路33は、状態切替弁24のパイロット圧室24dと電磁弁25とを接続し、状態切替弁24を作動させるためのパイロット圧油を供給及び排出する油路として設けられている。また、電磁弁25は、油路33aを介して供給油路31に接続し、油路33bを介して排出油路32に接続している。そして、電磁弁25は、例えば励磁した状態では図1及び図2に示すように供給位置25aに切り替えられており、油路33aとパイロット圧油路33とを接続し、第1系統油圧源101からのパイロット圧油を状態切替弁24のパイロット圧室24dに供給可能に構成されている。一方、電磁弁25は、例えば消磁した状態では排出位置25bに切り替えられ、油路33aを遮断し、パイロット圧油路33と油路33bとを接続する。これにより、パイロット圧室24dに供給されたパイロット圧油をリザーバ回路102に排出可能に構成されている。
【0038】
第2油圧系統14のパイロット圧油路38は、状態切替弁27のパイロット圧室(図示せず)と電磁弁28とを接続し、状態切替弁27を作動させるためのパイロット圧油を供給及び排出する油路として設けられている。また、電磁弁28は、油路38aを介して供給油路36に接続し、油路38bを介して排出油路37に接続している。そして、電磁弁28は、例えば励磁した状態では図1に示すように供給位置28aに切り替えられており、油路38aとパイロット圧油路38とを接続し、第2系統油圧源103からのパイロット圧油を状態切替弁27のパイロット圧室に供給可能に構成されている。一方、電磁弁28は、例えば消磁した状態では排出位置28bに切り替えられ、油路38aを遮断し、パイロット圧油路38と油路38bとを接続する。これにより、状態切替弁27のパイロット圧室に供給されたパイロット圧油をリザーバ回路104に排出可能に構成されている。
【0039】
第1油圧系統13の逆止弁29aは、給排油路35aと油路33bとを接続する油路41aに設置され、油路41aにおいて油路33bに接続する側から油路35aに接続する側への圧油の流れを許容してその逆方向の圧油の流れを規制するように設けられている。これにより、油路35aが接続する油室16aにおいて圧油の圧力低下が生じた際に、蓄圧器102aによって維持された所定のリリーフ圧以上の圧油が油室16aに導入されるように構成されている。また、逆止弁29bは、給排油路35bと油路33bとを接続する油路41bに設置され、油路41bにおいて油路33bに接続する側から油路35bに接続する側への圧油の流れを許容してその逆方向の圧油の流れを規制するように設けられている。これにより、油路35bが接続する油室16bにおいて圧油の圧力低下が生じた際に、蓄圧器102aによって維持された所定のリリーフ圧以上の圧油が油室16bに導入されるように構成されている。尚、図示を省略するが、第2油圧系統14においても、第1油圧系統13の逆止弁(29a、29b)と同様に構成される2つの逆止弁が設けられている。
【0040】
第1油圧系統13の制御弁23は、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路を切り替え、第1アクチュエータ11の作動を制御する電油サーボ弁として設けられている。この制御弁23は、第1アクチュエータ11の動作を制御するアクチュエータコントローラ42aからの指令信号に基づいて駆動される。そして、アクチュエータコントローラ42aは、舵面100の動作を指令する更に上位のコンピュータであるフライトコントローラ1からの指令信号に基づいて第1アクチュエータ11を制御する。
【0041】
第2油圧系統14の制御弁26は、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路を切り替え、第2アクチュエータ12の作動を制御する電油サーボ弁として設けられている。この制御弁26は、第2アクチュエータ12の動作を制御するアクチュエータコントローラ42bからの指令信号に基づいて駆動される。そして、アクチュエータコントローラ42bは、フライトコントローラ1からの指令信号に基づいて第2アクチュエータ12を制御する。
【0042】
尚、フライトコントローラ1には、第1アクチュエータ11に設けられた位置センサ18aで検出されたロッド15の位置検出信号と、第2アクチュエータ12に設けられた位置センサ22aで検出されたロッド19の位置検出信号とが、入力されるように構成されている。そして、フライトコントローラ1により、上記位置検出信号に基づくロッド15の位置のフィードバック制御が行われるように、アクチュエータコントローラ42a及び制御弁23を介して、一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、舵面100の動作が制御される。同様に、フライトコントローラ1により、上記位置検出信号に基づくロッド19の位置のフィードバック制御が行われるように、アクチュエータコントローラ42b及び制御弁26を介して、一対の油室(20a、20b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、舵面100の動作が制御される。
【0043】
また、図2に示すように、第1油圧系統13の制御弁23は、中立位置23aと、第1切替位置23bと、第2切替位置23cとの間で、比例的に位置を切替可能に設けられている。中立位置23aに切り替えられている状態では、制御弁23は、供給油路31及び排出油路32と、給排油路(34a、34b)とを遮断しており、一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が停止され、第1アクチュエータ11のロッド15が停止した状態が維持される。
【0044】
制御弁23が中立位置23aから第1切替位置23bに切り替えられると、供給油路31と給排油路34aとが接続されて油室16aに圧油が供給され、排出油路32と給排油路34bとが接続されて油室16bから圧油が排出される。一方、制御弁23が中立位置23aから第2切替位置23cに切り替えられると、供給油路31と給排油路34bとが接続されて油室16bに圧油が供給され、排出油路32と給排油路34aとが接続されて油室16aから圧油が排出される。尚、制御弁23が第1切替位置23bに切り替えられた状態と第2切替位置23cに切り替えられた状態とでは、ロッド15は反対方向に移動し、舵面100も反対方向に動作するように駆動されることになる。第2油圧系統14の制御弁26については、第1油圧系統13の制御弁23と同様に構成されて同様に作動するため、説明を省略する。
【0045】
第1油圧系統13の状態切替弁24は、制御弁23と第1アクチュエータ11との間において制御弁23及び第1アクチュエータ11を連通可能に配置されている。そして、状態切替弁24は、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)に対して連通可能なオリフィス24cを有するとともに、第1アクチュエータ11の作動状態を切り替える弁として構成されている。尚、状態切替弁24では、油室16aと油室16bとを連通可能なオリフィス24cが1つ設けられている。このように、状態切替弁24にオリフィス24cが設けられていることにより、第1アクチュエータ11は、ダンピング作動時に一対の油室(16a、16b)の各油室がオリフィス24cに連通するように構成されている。
【0046】
一方、第2油圧系統14の状態切替弁27は、制御弁26と第2アクチュエータ12との間において制御弁26及び第2アクチュエータ12を連通可能に配置されている。そして、状態切替弁27は、第2アクチュエータ12の一対の油室(20a、20b)に対して連通可能なオリフィス(図示せず)を有するとともに、第2アクチュエータ12の作動状態を切り替える弁として構成されている。尚、状態切替弁27では、油室20aと油室20bとを連通可能なオリフィスが1つ設けられている。このように、状態切替弁27にオリフィスが設けられていることにより、第2アクチュエータ12は、ダンピング作動時に一対の油室(20a、20b)の各油室がオリフィスに連通するように構成されている。尚、第2油圧系統14の状態切替弁27は第1油圧系統13の状態切替弁24と同様に構成されるため、以下の説明においては、状態切替弁24について詳しく説明し、状態切替弁27についての詳しい説明は省略する。
【0047】
図2に示すように、状態切替弁24には、切り替え可能な位置として、アクチュエータ接続位置24aとダンピング位置24bとが設けられている。そして、状態切替弁24は、スリーブ(図示せず)内でスプール(図示せず)の位置が変更されることにより、ポート間の油路の接続状態及び遮断状態が切り替えられ、アクチュエータ接続位置24a及びダンピング位置24bの間での位置の切り替えが行われるように構成されている。
【0048】
また、状態切替弁24には、前述したパイロット圧室24dが設けられている。パイロット圧室24dは、電磁弁25及びパイロット圧油路33を介して供給されるパイロット圧油が導入される油室として設けられている。そして、パイロット圧室24dに圧油が供給された状態では、バネ24eのバネ力に抗して作用するパイロット圧油の付勢力によって状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられることになる。一方、パイロット圧室24dからパイロット圧油が排出されることで、バネ24eのバネ力によって状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられることになる。
【0049】
尚、オリフィス24cは、状態切替弁24におけるダンピング位置24bを構成する油路であって給排油路35aと給排油路35bとを連通可能な油路に配置されている。そして、オリフィス24cは、例えば、給排油路(35a、35b)を連通可能な油路において、給排油路(35a、35b)の一方から他方へ流動する圧油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した部分として構成されたノッチとして設けられている。
【0050】
また、状態切替弁24のアクチュエータ接続位置24aは、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)のそれぞれと制御弁23との間で圧油が流動するように第1アクチュエータ11と制御弁23とを接続する位置として構成されている。状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられている状態では、アクチュエータコントローラ42aを介してフライトコントローラ1からの指令信号に基づいて制御弁23が作動する。これにより、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、第1アクチュエータ11の作動の制御が行われる。即ち、この状態においては、第1アクチュエータ11の作動状態は、舵面100を駆動するアクティブモードの作動状態に切り替えられた状態となっている。
【0051】
一方、状態切替弁24のダンピング位置24bは、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)のそれぞれから排出される圧油がオリフィス24cを通過可能にするとともに一対の油室(16a、16b)を連通させる位置として構成されている。即ち、状態切替弁24は、ダンピング位置24bに切り替えられることで、一対の油室(16a、16b)をオリフィス24fを介して連通させるように互いに接続する。この状態においえは、第1アクチュエータ11の作動状態は、舵面100に追従して作動するダンピングモードの作動状態に切り替えられた状態となっている。
【0052】
例えば、第1系統油圧源101の機能の喪失又は低下等が発生した場合、フライトコントローラ1からの指令信号に基づいてアクチュエータコントローラ42aが電磁弁25を消磁させる。これにより、電磁弁25が排出位置25bに切り替えられてパイロット圧油がパイロット圧室24dから排出され、バネ24eのバネ力によって状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられる。
【0053】
状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられると、第1アクチュエータ11は、第2アクチュエータ12によって駆動される舵面100に作用する外力(第2アクチュエータ12による駆動力等)に追従するように作動することになる。そして、この作動時におけるロッド15の移動に伴って、一対の油室(16a、16b)間において圧油がオリフィス24cを通過して流動し、オリフィス24cによるダンピング機能(減衰機能)が発揮されることになる。これにより、第2系統油圧源103の機能の喪失等が発生しておらず正常に作動可能な第2アクチュエータ12の作動が、第1系統油圧源101の機能の喪失等が生じた第1アクチュエータ11の作動によって阻害されてしまうことが抑制されることになる。
【0054】
また、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103の両方において機能の喪失等が発生した場合、第1油圧系統13の状態切替弁24と第2油圧系統14の状態切替弁27がともにダンピング位置に切り替えられる。この場合、第1アクチュエータ11及び第2アクチュエータ12は、舵面100に作用する外力(飛行時の航空機の翼に作用する風力等)に追従するように作動することになる。そして、この作動時におけるロッド(15、19)の移動に伴って、一対の油室(16a、16b)間及び一対の油室(20a、20b)間において圧油がオリフィスを通過して流動し、オリフィスによるダンピング機能が発揮されることになる。これにより、舵面100がフラッター現象のように過度に動いてしまうような舵面100の異常な作動を抑制することができる。
【0055】
次に、図1に示すフライトコントローラ1(即ち、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査装置)と、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査方法(以下、単に「本性能検査方法」ともいう)と、本実施形態におけるプログラム(以下、「本プログラム」ともいう)とについて説明する。尚、本性能検査方法は、アクチュエータ(11、12)について、性能を検査するための方法であり、本実施形態ではフライトコントローラ1が作動することによって実施されることになる。また、本プログラムは、アクチュエータ(11、12)について、その性能の検査をコンピュータであるフライトコントローラ1に実行させるためのプログラムとして構成されている。そして、本実施形態では、本プログラムがフライトコントローラ1によって実行されることによって、本性能検査方法が実施されることになる。
【0056】
以下、フライトコントローラ1の構成及び作動と、本性能検査方法と、本プログラムとについてあわせて説明する。また、以下の説明においては、第1アクチュエータ11が検査対象である場合を例にとって説明し、第2アクチュエータ12が検査対象である場合については、同様であるため、説明を省略する。
【0057】
フライトコントローラ1には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等の記憶装置、インターフェース等が設けられ、これにより、フライトコントローラ1においては、図1に示すように、性能検査実行部43と記憶部44とが備えられている。性能検査実行部43は、CPUとメモリに格納された所定のプログラムとによって構成され、フライトコントローラ1のCPUが、性能検査実行部43として機能し、処理を行うことになる。また、フライトコントローラ1におけるメモリ等の記憶装置が、記憶部44として機能することになる。
【0058】
性能検査実行部43は、例えば、検査作業者の操作による指令入力に基づいて処理を開始し、アクチュエータ(11、12)の性能の検査を実行する。尚、第1アクチュエータ11の性能検査と第2アクチュエータ12の性能検査とは、個別に行われる。また、記憶部44は、性能検査実行部43によって実行される性能検査に必要な情報等を記憶する。尚、性能検査実行部43での検査結果については、例えば、フライトコントローラ1に対して接続されたディスプレイ装置(図示せず)の画面上に表示されるように構成されている。
【0059】
第1アクチュエータ11の性能検査は、例えば、航空機のメンテナンス作業の際などに行われる。この検査が行われる際には、例えば、フライトコントローラ1に対して、図示しない入力機器(例えば、入力操作用タッチパネル、入力操作用スイッチ、入力操作用ポインティングデバイス、等)を介した検査作業者の入力操作によって、第1アクチュエータ11の性能検査を実行させるための指令が入力される。そして、フライトコントローラ1からの指令に基づいてアクチュエータコントローラ42aが電磁弁25を消磁させて排出位置25bに切り替え、パイロット圧油がパイロット圧室24dから排出される。これにより、状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられ、第1アクチュエータ11の作動状態がダンピングモードに設定された状態となる。また、このとき、第2油圧系統14においては、電磁弁28については供給位置28aの状態が維持され、状態切替弁27についてはアクチュエータ接続位置の状態が維持され、第2アクチュエータ12の作動状態がアクティブモードに設定された状態が維持される。
【0060】
上記の状態において、フライトコントローラ1の性能検査実行部43での処理が開始されると、図3にフロー図を示す本性能検査方法が実施されることになる。図3に示すように、本性能検査方法は、基準圧力値条件取得ステップ(図3にて「ステップS101」で表示)、作動速度取得ステップ(図3にて「ステップS102」で表示)、圧力値取得ステップ(図3にて「ステップS102」で表示)、性能劣化判定ステップ(図3にて「ステップS103」で表示)、を備えて構成されている。
【0061】
基準圧力値条件取得ステップは、複数のアクチュエータ(11、12)のうちのいずれかによって舵面100を駆動するとともに舵面100を駆動する駆動対象のアクチュエータとは異なる検査対象のアクチュエータにおいてオリフィスを一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態において行われる。尚、ここでは、前述のように、第1アクチュエータ11が検査対象のアクチュエータであって、第2アクチュエータ12が駆動対象のアクチュエータである検査ダンピング作動状態を例にとって説明する。
【0062】
基準圧力値条件取得ステップにおいては、検査ダンピング作動状態における、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度(即ち、ロッド15のシリンダ16に対する変位速度)と一対の油室(16a、16b)の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件が取得される。そして、このとき、性能検査実行部43が、この基準圧力値条件を取得することになる。
【0063】
また、本実施形態の基準圧力値条件取得ステップでは、性能検査実行部43は、検査ダンピング作動状態で、駆動対象の第2アクチュエータ12におけるロッド19を往復方向における一方の方向に移動させる。そして、性能検査実行部43は、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度と、この第1アクチュエータ11における圧力センサ18bで検出された圧力値とを同時に取得することで、基準圧力値条件を取得する。また、このとき、性能検査実行部43は、駆動対象の第2アクチュエータ12の作動速度の指令値について、例えば、速度設定可能範囲における最大速度に設定する。
【0064】
尚、基準圧力値条件取得ステップの実行中においては、性能検査実行部43からの指令信号に基づいて、アクチュエータコントローラ42bが制御弁26を作動させ、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)の一方(例えば、油室20a)へ圧油を供給するとともに他方(例えば、油室20b)から圧油を排出するように、制御弁26の位置が切り替えられる。そして、ロッド19が一方の方向へ移動する第2アクチュエータ12の作動によって、舵面100が一方の方向へ駆動される。このとき、第1油圧系統13の状態切替弁24はダンピング位置24bに切り替えられており、検査対象の第1アクチュエータ11は、舵面100に作用する第2アクチュエータ12の駆動力に追従するように作動する。そして、一対の油室(16a、16b)の一方から排出される圧油がオリフィス24cを通過するように流動し、第1アクチュエータ11がダンピングモードで作動し、ロッド15が一方の方向へ移動することになる。
【0065】
また、第1アクチュエータ11が上記のようにダンピングモードで作動している間、第1アクチュエータ11の位置センサ18aから性能検査実行部43に対して、ロッド15の位置検出信号が入力される。また、フライトコントローラ1には、時間を計測するタイマ(図示せず)が設けられている。そして、性能検査実行部43において、位置センサ18aからのロッド15の位置検出結果とタイマでの時間計測結果とに基づいて、第1アクチュエータ11の作動速度(ロッド15の変位速度)が、第1アクチュエータ11の作動中に亘って継続して繰り返し演算される。第1アクチュエータ11の作動中に亘って性能検査実行部43にて繰り返し演算された第1アクチュエータ11の作動速度は、その各演算時の時間データ(即ち、各作動速度取得時の各時間データ)とともに取得される。このように、検査ダンピング作動状態における検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度が取得されることになる。
【0066】
また、第1アクチュエータ11がダンピングモードで作動している間、一対の油室(16a、16b)のうちの一方の油室16aの圧油の圧力を検出する圧力センサ18bから性能検査実行部43に対して、圧力センサ18bの検出値としての圧力値の信号が入力される。上記によって第1アクチュエータ11の作動中に亘って取得される油室16a内の圧油の圧力値は、その取得時の時間データ(即ち、各圧力値取得時の各時間データ)とともに取得される。このように、検査ダンピング作動状態における検査対象の第1アクチュエータ11の圧力値が取得されることになる。
【0067】
図4は、基準圧力値条件取得ステップにおいて取得された油室16a内の圧油の圧力値及び第1アクチュエータ11の作動速度を例示して説明するための図である。尚、図4は、後述する作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップにおいて取得される油室16a内の圧油の圧力値及び第1アクチュエータ11の作動速度を例示して説明するための図も兼ねている。
【0068】
前述のように、基準圧力値条件取得ステップにおいては、作動速度及び圧力値は、取得時間に対応付けられて取得される。図4(a)は、横軸を取得時間とし、縦軸を取得された作動速度とし、取得時間と作動速度との関係を表した図である。また、図4(b)は、横軸を取得時間とし、縦軸を取得された圧力値とし、取得時間と圧力値との関係を表した図である。尚、図4(a)及び(b)における横軸は対応している。図4に示すように、基準圧力値条件取得ステップにおいては、取得時間との関係で対応付けられた第1アクチュエータ11の作動速度と油室16a内の圧油の圧力値とが取得され、これらの対応した作動速度及び圧力値の関係として、第1アクチュエータ11の作動速度と油室16a内の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件が取得されることになる。
【0069】
作動速度取得ステップにおいては、検査ダンピング作動状態で、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度が取得される。そして、このとき、性能検査実行部43は、検査ダンピング作動状態で、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度を取得することになる。
【0070】
また、圧力値取得ステップは、検査ダンピング作動状態で作動速度取得ステップと同時に行われ、この圧力値取得ステップにおいて、検査対象の第1アクチュエータ11の圧力センサ18bの検出値としての圧力値(即ち、油室16a内の圧油の圧力値)が取得される。そして、このとき、性能検査実行部43は、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度の取得と同時に、圧力センサ18bの検出値としての圧力値を取得することになる。
【0071】
そして、本実施形態の作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップでは、性能検査実行部43は、駆動対象の第2アクチュエータ12におけるロッド19を往復方向における前述の一方の方向とは反対の他方の方向に移動させる。即ち、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップでは、性能検査実行部43は、制御弁26については基準圧力値条件取得ステップのときと反対側の切替位置に切り替え、ロッド19については基準圧力値条件取得ステップのときと反対方向に移動させる。そして、これらの作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップでは、性能検査実行部43は、前述のように、検査対象の第1アクチュエータ11における作動速度と圧力センサ18bで検出された圧力値(油室16a内の圧油の圧力値)とを取得する。また、このとき、性能検査実行部43は、駆動対象の第2アクチュエータ12の作動速度の指令値について、基準圧力値条件取得ステップのときと同じ速度に設定する。
【0072】
尚、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップの実行中においては、基準圧力値条件取得ステップの際とは反対方向にロッド19が移動する第2アクチュエータ12の作動によって、舵面100も基準圧力値条件取得ステップの際とは反対方向に駆動される。そして、舵面100に追従する検査対象の第1アクチュエータ11においても、基準圧力値条件取得ステップの際とは反対方向に圧油がオリフィス24cを流動し、ロッド15が基準圧力値条件取得ステップの際とは反対の他方の方向へ移動することになる。
【0073】
作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップにおいては、基準圧力値条件取得ステップと同様に、第1アクチュエータ11の作動速度及び油室16a内の圧油の圧力値は、取得時間に対応付けられて取得される。これにより、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップでは、基準圧力値条件が取得された基準圧力値条件取得ステップと同様に、図4に示すような関係が取得されることになる。
【0074】
性能劣化判定ステップにおいては、作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して圧力値取得ステップにて取得された圧力値について、基準圧力値条件取得ステップで取得された基準圧力値条件と比較されることで、検査対象の第1アクチュエータ11の性能の劣化が判定される。そして、このとき、性能検査実行部43は、検査対象の第1アクチュエータ11の作動速度に対応して圧力センサ18bの検出値として取得された圧力値について、基準圧力値条件と比較することで、第1アクチュエータ11の性能の劣化を判定することになる。
【0075】
尚、第1アクチュエータ11において、ピストンヘッドシールの破損等が無く、正常な作動が確保されている場合は、第1アクチュエータが往復方向に移動するときの往路及び復路の各方向の移動の際に取得された圧力値は、同一の作動速度では略同一の値となる。即ち、第1アクチュエータ11の正常な作動が確保されている場合は、基準圧力値条件取得ステップで取得された所定の作動速度に対応する基準圧力値条件と、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップにて取得された所定の作動速度に対応する圧力値とは、略同一の値となる。
【0076】
そこで、性能劣化判定ステップにおいては、例えば、基準圧力値条件取得ステップで取得された所定の作動速度に対応する基準圧力値条件と、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップにて取得された所定の作動速度に対応する圧力値とのずれ量の値が、性能検査実行部43で演算される。そして、この性能劣化判定ステップにおいて、上記のずれ量の値が予め設定された所定の値の範囲である合格範囲に収まっているかどうかを性能検査実行部43が判断することで第1アクチュエータ11の性能の劣化を判定してもよい。尚、上記の予め設定された所定の値は、記憶部44に格納され、性能検査実行部43が記憶部44にアクセスすることで、性能検査実行部43に取得される。
【0077】
上記の場合、上記のずれ量の値が合格範囲に収まっていれば、第1アクチュエータ11の性能の劣化が発生していない状態、即ち、第1アクチュエータ11の正常な作動が確保されている状態と判定される。一方、上記のずれ量の値が合格範囲から外れていれば、第1アクチュエータ11の性能の劣化が発生している状態、即ち、第1アクチュエータ11の正常な作動が確保されていない状態と判定される。第1アクチュエータ11の正常な作動が確保されている状態又は確保されていない状態のいずれの状態であるかが判定されると、性能検査実行部43は、例えば、その判定結果をディスプレイ装置の画面に検査結果として表示する。
【0078】
また、上記のずれ量の値を判断するために基準圧力値条件と圧力値取得ステップで取得された圧力値とを比較する際の対応する所定の作動速度については、例えば、図4(a)において作動速度V1として示すように、作動速度が高速で定常状態となった際の作動速度を用いることができる。そして、このときの作動速度V1に対応する基準圧力値条件及び圧力値取得ステップで取得された圧力値(図4(b)においてP1で示す)を比較することで、上記のずれ量の値を判断してもよい。
【0079】
また、性能劣化判定ステップにおいて、基準圧力値条件と圧力値取得ステップで取得された圧力値とのずれ量を比較する形態については、一つの所定の作動速度のみで比較する形態に限られなくてもよい。例えば、複数の所定の作動速度において、基準圧力値条件と圧力値取得ステップで取得された圧力値とを比較する形態であってもよい。
【0080】
尚、第1アクチュエータ11の性能検査と重複する説明となるため本実施形態での詳しい説明を省略したが、同様に、第2アクチュエータ12の性能検査も行われることになる。第2アクチュエータ12の性能検査が行われる場合は、第2アクチュエータ12が検査対象のアクチュエータであって第1アクチュエータ11が駆動対象のアクチュエータである検査ダンピング作動状態において、基準圧力値条件取得ステップ、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップが実行されることになる。
【0081】
また、アクチュエータ(11、12)の性能の検査をフライトコントローラ1に実行させる本プログラムは、上述した基準圧力値条件取得ステップと、作動速度取得ステップと、性能劣化判定ステップとをフライトコントローラ1に実行させるように構成されていればよい。本プログラムが、フライトコントローラ1等のコンピュータにインストールされ、実行されることによって、本性能検査方法が実施されることになる。
【0082】
尚、本プログラムは、記録媒体に記録された状態で流通しても良いし、インターネット上でデータとして流通してもよい。また、記録媒体の具体例としては、CF(Compact Flash)及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査方法によると、検査ダンピング作動状態において、アクチュエータ(11、12)の作動速度と一方の油室(16a、20a)の圧油の圧力を検出する圧力センサ(18b、22b)で検出された圧力値とが取得される。そして、アクチュエータ(11、12)の作動速度に対応させて取得された圧力値について、アクチュエータ(11、12)の作動速度との関係で規定された基準圧力値条件との比較が行われ、アクチュエータ(11、12)の性能の劣化が判定される。このため、ダンピング作動時におけるアクチュエータ(11、12)の作動速度との関係で必要な圧力が確保されて正常なダンピング機能を発揮可能な状態であるか否かを確認することができる。また、アクチュエータ(11、12)においては、作動の制御のために一般的に設けられている構成として作動速度を検出するための位置センサ(18a、22a)が設けられている。よって、本性能検査方法では、作動速度を検出するための位置センサ(18a、22a)に加えて、一方の油室(16a、22a)のみの圧油の圧力を検出する1つの圧力センサ(18b、22b)をアクチュエータ(11、12)に設置するという簡素な構成に基づいて、性能検査のための構成の複雑化を招いてしまうことなく、アクチュエータ(11、12)の性能検査を実施することができる。更に、センサ点数の増大を抑制でき、コストの増大を招いてしまうことを抑制できる。
【0084】
従って、本実施形態によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる、航空機アクチュエータの性能検査方法を提供することができる。
【0085】
また、本性能検査方法によると、基準圧力値条件が、検査ダンピング作動状態でアクチュエータ(11、12)が往復方向の一方の方向に移動するときにおけるアクチュエータ(11、12)の作動速度と圧力センサ(18b、22b)で検出された圧力値とによって規定される。そして、検査ダンピング作動状態でアクチュエータ(11、12)が往復方向の他方の方向に移動するときにアクチュエータ(11、12)の作動速度に対応させて取得された圧力値について、上記の基準圧力条件と比較することで、容易に、アクチュエータ(11、12)の性能の劣化を判定することができる。このため、ダンピング作動時におけるアクチュエータ(11、12)の作動速度との関係で必要な圧力が確保されて正常なダンピング機能を発揮可能な状態であるか否かを容易に確認することができる。
【0086】
尚、前述のように、アクチュエータ(11、12)の正常な作動が確保されている場合は、アクチュエータ(11、12)が往復方向に移動するときの往路及び復路の各方向の移動の際に取得された圧力値は、同一の作動速度では略同一の値となる。このため、本性能検査方法では、アクチュエータ(11、12)が往復方向に移動するときの各方向での圧力値を同一作動速度条件で比較することで、容易に、アクチュエータ(11、12)の正常な作動が確保されているか否かを確認することができる。また、アクチュエータ(11、12)が往復方向に移動するときの各方向での圧力値を比較するため、圧油の温度の変化がほとんど生じない状態で比較することができる。このため、圧力測定条件の違いによるバラツキの影響を効率よく相殺して排除することができ、更に、高精度な性能検査結果を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査装置であるフライトコントローラ1、及び、本実施形態におけるプログラムによると、本実施形態における航空機アクチュエータの性能検査方法と同様の効果を奏することができる。即ち、センサ点数の増大を抑制できるとともに、性能検査のための構成の複雑化及び高コスト化を抑制できる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
【0089】
(1)前述の実施形態においては、1つの舵面に対して2つのアクチュエータが取り付けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。1つの舵面に対して3つ以上のアクチュエータが取り付けられた形態に対して本発明が適用されてもよい。この場合においても、検査ダンピング作動状態では、3つ以上のアクチュエータのうちの少なくともいずれかによって舵面が駆動されるとともに舵面を駆動するアクチュエータとは異なる検査対象のアクチュエータにおいてオリフィスが一対の油室に連通されることになる。
【0090】
(2)また、前述の実施形態においては、ダンピング作動時にアクチュエータにおける一対の油室の各油室が連通するオリフィスが、各油室を互いに連通させる油路に1つ設けられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。図5は、変形例に係る状態切替弁を示す油圧回路図であり、第1油圧系統13の状態切替弁45を示す油圧回路図である。尚、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図5において同一の符号を付すことで、又は前述の実施形態における説明の符号を引用することで、説明を省略する。
【0091】
図5に示す変形例に係る状態切替弁45は、前述の実施形態の状態切替弁24とは、ダンピング位置24bの構成において異なっている。この状態切替弁45は、ダンピング位置24bに切り替えられることで、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)をオリフィス(24c、24c)を介して制御弁23における油の排出系統側(本変形例では、給排油路34b側)に接続するように構成されている。即ち、状態切替弁45がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、給排油路(35a、35b)が、それぞれオリフィス24cを介して給排油路34bに接続する。尚、状態切替弁45がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、制御弁23が第1切替位置23bに切り替えられた状態に維持され、給排油路34bと排出油路32との接続状態が維持される。また、図示を省略するが、この変形例においては、第2油圧系統14においても、状態切替弁45と同様に構成される状態切替弁が備えられている。このような形態のオリフィスに連通可能なアクチュエータに対しても、本発明を適用することができる。
【0092】
(3)また、前述の実施形態では、基準圧力値条件取得ステップにおいて、検査ダンピング作動状態で駆動対象のアクチュエータを往復方向における一方の方向に移動させて基準圧力値条件を取得する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。基準圧力値条件取得ステップにおいて、検査ダンピング作動状態におけるアクチュエータの作動速度と一対の油室の内部の圧油の圧力値との関係で予め設定された圧力値の下限条件としての基準圧力値条件が取得される形態の性能検査方法(航空機アクチュエータの性能検査方法)であってもよい。この変形例に係る航空機アクチュエータの性能検査方法の場合、前述の実施形態におけるフライトコントローラ1の記憶部44にて予め設定された基準圧力値条件が格納されており、基準圧力値条件取得ステップでは、性能検査実行部43が記憶部44にアクセスしてこの記憶部44に格納された基準圧力値条件を取得することになる。
【0093】
そして、この変形例に係る航空機アクチュエータの性能検査方法においては、性能劣化判定ステップにて、作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して圧力値取得ステップにて取得された圧力値が、基準圧力値条件以上であるか否かが判断され、アクチュエータの性能の劣化が判定される。尚、作動速度取得ステップは、ダンピング作動状態で検査対象のアクチュエータの作動速度を取得する形態であればよい。また、圧力値取得ステップは、作動速度取得ステップと同時に、検査対象のアクチュエータにおける一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得する形態であればよい。
【0094】
また、図6は、上記の変形例における基準圧力値条件と、作動速度取得ステップ及び圧力値取得ステップにて取得された一方の油室内の圧力値(圧力センサの検出値)との関係を例示して説明するための図である。図6(a)と図6(b)とは、異なる例を示しており、いずれの図においても、横軸をアクチュエータの作動速度とし、縦軸を圧力値とし、アクチュエータの作動速度と圧力値との関係を表している。そして、図6(a)及び図6(b)において、実線は、作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して圧力値取得ステップにて取得された圧力値を示している。一方、図6(a)及び図6(b)における破線は、基準圧力値条件を示している。基準圧力値条件は、図6(a)に例示するように、作動速度に対して線形に変化する圧力値として規定されていてもよく、また、図6(b)に例示するように、作動速度に対して段階的に変化する圧力値として規定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、航空機における1つの舵面に取り付けられ、舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査方法、航空機アクチュエータの性能検査装置、及びプログラムとして、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 フライトコントローラ(航空機アクチュエータの性能検査装置)
11、12 アクチュエータ
16a、16b 油室
18b 圧力センサ
20a、20b 油室
22b 圧力センサ
24c オリフィス
43 性能検査実行部
100 舵面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査方法であって、
複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得する、基準圧力値条件取得ステップと、
前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得する、作動速度取得ステップと、
前記作動速度取得ステップと同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得する圧力値取得ステップと、
前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する性能劣化判定ステップと、
を備えていることを特徴とする、航空機アクチュエータの性能検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機アクチュエータの性能検査方法であって、
前記基準圧力値条件取得ステップにおいては、前記検査ダンピング作動状態で、前記舵面を駆動する駆動対象の前記アクチュエータを往復方向における一方の方向に移動させ、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と、検査対象の前記アクチュエータにおける前記圧力センサで検出された圧力値とを同時に取得することで、前記基準圧力値条件を取得し、
前記作動速度取得ステップ及び前記圧力値取得ステップにおいては、駆動対象の前記アクチュエータを往復方向における前記一方の方向とは反対の他方の方向に移動させ、検査対象の前記アクチュエータにおける作動速度と前記圧力センサで検出された圧力値とを取得することを特徴とする、航空機アクチュエータの性能検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の航空機アクチュエータの性能検査方法であって、
前記基準圧力値条件取得ステップにおいては、前記検査ダンピング作動状態における前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値との関係で予め設定された圧力値の下限条件としての前記基準圧力値条件が取得され、
前記性能劣化判定ステップにおいては、前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値が、前記基準圧力値条件以上であるか否かが判断され、前記アクチュエータの性能の劣化が判定されることを特徴とする、航空機アクチュエータの性能検査方法。
【請求項4】
航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、性能を検査するための、航空機アクチュエータの性能検査装置であって、
前記アクチュエータの性能の検査を実行する性能検査実行部を備え、
前記性能検査実行部は、
複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得し、
前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得し、
検査対象の前記アクチュエータの作動速度の取得と同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得し、
検査対象の前記アクチュエータの作動速度に対応して前記圧力センサの検出値として取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する、
ことを特徴とする、航空機アクチュエータの性能検査装置。
【請求項5】
航空機における1つの舵面に取り付けられ、前記舵面の駆動時に圧油が供給及び排出される一対の油室をそれぞれ有するとともに、ダンピング作動時に前記一対の油室の各油室がオリフィスに連通する複数の油圧作動式のアクチュエータについて、その性能の検査をコンピュータに実行させるための、プログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の前記アクチュエータのうちの少なくともいずれかによって前記舵面を駆動するとともに前記舵面を駆動する前記アクチュエータとは異なる検査対象の前記アクチュエータにおいて前記オリフィスを前記一対の油室に連通させた検査ダンピング作動状態における、検査対象の前記アクチュエータの作動速度と前記一対の油室の内部の圧油の圧力値とによって規定される基準圧力値条件を取得する、基準圧力値条件取得ステップと、
前記検査ダンピング作動状態で、検査対象の前記アクチュエータの作動速度を取得する、作動速度取得ステップと、
前記作動速度取得ステップと同時に、検査対象の前記アクチュエータにおける前記一対の油室のうちのいずれか一方の油室内の圧油の圧力を検出する圧力センサの検出値としての圧力値を取得する圧力値取得ステップと、
前記作動速度取得ステップにて取得された作動速度に対応して前記圧力値取得ステップにて取得された圧力値について、前記基準圧力値条件と比較することで、検査対象の前記アクチュエータの性能の劣化を判定する性能劣化判定ステップと、
を実行させることを特徴とする、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56419(P2012−56419A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200663(P2010−200663)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】