説明

航空機用エンジンアセンブリ

本発明は、ターボジェットエンジン、エンジンマウント、複数のエンジン取り付け部を備えている航空機用エンジン取り付け部に関する。複数のエンジン取り付け部は、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部を備え、これらの前方エンジン取り付け部は、ファンケース上に固定され、且つターボジェットエンジンの長手方向の軸及びターボジェットエンジンの垂直方向によって画定された平面に対して対称的に配置され、両方の前方取り付け部がターボジェットエンジンの長手方向及びターボジェットエンジンの垂直方向に作用された負荷を伝達するように設計されている。さらに、2つの前方取り付け部のそれぞれはケース(12)上に取り付けられたシヤーピン(36)を備え、エンジンマウント上に固定されたクラビス(30)の2つの壁部(32a,32b)を貫通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通常、航空機用エンジンアセンブリに関し、ターボジェットエンジン、固着パイロン、及びこの固着パイロンとターボジェットエンジンとの間に挿入された複数のエンジン取り付け部を備えているタイプの航空機用エンジンアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
周知方法において、この種のエンジンの安全パイロン(security pylon)は、ターボジェットエンジンタイプのエンジンとこのアセンブリを備えた航空機の翼との間の接続インターフェースを形成するように設けられる。それは、その結合されたターボジェットエンジンによって発生する負荷を機体に伝達されることを可能にし、エンジンと航空機との間の燃料供給ライン、電気システム及び水圧システム、及び空調のための経路も設けられる。
【0003】
負荷の伝達を確実にするために、エンジンマウントは、例えば、《ボックス》タイプの剛構造部を備え、すなわち、スパーと、横方向のリブを介して互いに接続された側面パネルとの組立体によって形成される剛構造部を備える。
【0004】
取り付けシステムは、エンジンとエンジンマウントの剛構造部との間に挿入され、このシステムは、全体的に複数のエンジン取り付け部を備え、これらのエンジン取り付け部は通常、エンジンのファンケース又は中央エンジンケースと一体で前方取り付け部及び機尾取り付け部に配分されている。
【0005】
さらに、取り付けシステムは、エンジンによって発生されるスラスト荷重(thrust load)を伝達するためのスラストマウント装置を備える。先行技術において、この装置は、例えば、第1にエンジンのファンケースの機尾部分に、且つ第2にエンジンマウントの剛構造部上に取り付けられた取り付け部、例えば取り付け部に接続された2つの側面スラストリンク(side thrust links)の形態である。
【0006】
参考までに、エンジンマウントがこのエンジンマウントと航空機の翼との間に挿入された第2の取り付けシステムに結合され、この第2のシステムが従来2つ又は3つの取り付け部で構成されていることが特徴づけられる。
【0007】
最終的に、エンジンマウントには2次構造が設けられ、異なるシステムを、空力カウリングを支持しつつ、分離し且つ支持している。
【0008】
当業者によって周知である方法において、スラストマウント装置の存在にもかかわらず、エンジンによって発生されたそれらのスラスト荷重は典型的に、前記エンジンの重大な長手方向の曲げを多かれ少なかれ引き起こす、すなわち航空機の横方向で作用されたトルクから生じる曲げを引き起こす。
【0009】
この種類の長手方向の曲げが発生する場合、特に航空機の巡航段階において、回転圧縮機とタービンブレードとの間、且つ回転圧縮機とエンジンの中央ファンケースとの間の増加された摩擦を経験することになる。
【0010】
さらに、上述された長手方向の曲げ現象、それ故に回転ブレードの摩擦の現象が、現在のターボジェットエンジン上で、高まるバイパス比のための調査が、必然的に設計者をターボジェットエンジンのコアの直径に対してファンの直径を増加するように導くという真実によって大いに強調されることに留意されたい。
【0011】
経験される摩擦の主な帰結は、エンジンの性能と同様に、このエンジンの寿命に本来有害であるエンジンの早期の磨耗にある。長手方向の曲げによって引き起こされる任意の接触が存在することはほとんどない、適切な操作クリアランスが設けられた他の場合においては、エンジンの出力は、大いに減少される。
【0012】
それ故に、この問題に直面するために、複数のエンジン取り付け部が第1の前方エンジン取り付け部と第2の前方エンジン取り付け部を含み、第1の前方エンジン取り付け部と第2の前方エンジン取り付け部がエンジンのファンケースに固定され、且つターボジェットエンジンの長手方向の軸及びその垂直方向の軸によって画定された平面に対して対称的に配置され、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部のそれぞれがターボジェットエンジンの長手方向及びターボジェットエンジンの垂直方向に作用された負荷を伝達されるように設計されるエンジンアセンブリを実施することが提案される。
【0013】
ファンケース上に第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部を設けることは、互いから第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部を離隔する可能性を提案する。この大幅な分離は、それらのエンジン取り付け部の寸法をかなり減少することを可能にする利点を有し、付与された軸におけるある瞬間に結合された、エンジン取り付け部が伝達されなければならない負荷が従来の解決方法において経験された前方エンジン取り付け部に対して自然と弱くなるという事実のために、その解決方法において、中央ケースに近接して配置されたエンジン取り付け部が、互いから離隔されることができない。
【0014】
さらに、もはや側面スラストリンクを有するタイプのスラストマウント装置の存在を必要とすることはない、この種類の配置と共に、ターボジェットエンジンによって発生する全ての負荷を伝達することは、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部の補助と共に、ファンケース上で実質的に実施される。なぜならば、エンジンマウントと中央ケース又は排気ケースとの間に保持されたリンクのみが、好ましくは機尾のエンジン取り付け部によって形成され、その主要な役割は、ターボジェットエンジンの機尾部分における垂直方向の振動を抑制することである。
【0015】
従って、エンジン取り付け部のこの特殊な構成は、この曲げがターボジェットエンジンによって発生されたスラスト荷重によるものであれ、又は、航空機の飛行の様々な段階の間に偶然に発生されそうな突風によるものであれ、中央ケースのレベルで経験される曲げにおけるかなりの減少となる。
【0016】
結果として、曲げにおける上述された減少は、回転圧縮機とタービンブレードと中央エンジンケースとの間の摩擦における十分な降下を生み出し、それによって、それらのブレードの磨耗による出力損失を大いに制限することができる。
【0017】
それにもかかわらず、今まで、設計は、側部の前方エンジン取り付け部と称される、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部のために全体的に満足すべきであるようにそれ自体を示すことはないことに留意しなければならない。実際に、周知の解決方法で経験される問題は本質的に、特にクレバス/リンクタイプのアセンブリの使用によって、第1に、それらの取り付け部の重要な容積からなり、第2に、横方向に方向づけされ、且つターボジェットエンジンのファンケース及び前記アセンブリの前記リンク上に取り付けられたシヤーピンのレベルでの十分な曲げ現象の存在からなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
それ故に、本発明の目的は、先行技術における実施形態に関係された上述の不利点を少なくとも部分的に解決する航空機アセンブリを提案し、そのようなアセンブリの少なくとも1つを有する航空機を提供することも提案する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、本発明の主題は、ターボジェットエンジン、エンジンマウント、及び前記エンジンマウントと前記ターボジェットエンジンとの間に挿入された複数のエンジン取り付け部を備えている航空機用エンジンアセンブリであって、前記複数のエンジン取り付け部は、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部を備え、これらの前方エンジン取り付け部は前記ターボジェットエンジンのファンケースに固定され、前記ターボジェットエンジンの長手方向の軸及びターボジェットエンジンの垂直方向によって画定された平面に対して対称的に配置され、それらの第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部のそれぞれは、ターボジェットエンジンの長手方向に作用された負荷及びターボジェットエンジンの垂直方向に作用された負荷を伝達するように設計され、それぞれのエンジン取り付け部は、ターボジェットエンジンの横方向に方向づけられたシヤーピンと、前記エンジンマウント用に固定され、且つ2つの壁部を有するクレビスを備えている航空機用エンジンアセンブリである。本発明によれば、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部のそれぞれのために、シヤーピンはクレビスの2つの壁部を貫通する。
【0020】
結果として、この種類の配置と共に、第1の前方エンジン取り付け部及び第2の前方エンジン取り付け部が非常にコンパクトであり、今ではこの同一のクレビスと共に直接的に協働するシヤーピンであるので、先行技術の実施形態におけるケースであるように、クレビスと共に協働するリンクを有する必要性はもはや存在しない。それ故に、前方取り付け部のコンパクト性に関する利得以外の利得は、同様に質量及び費用に関して達成される。
【0021】
さらに、それ故に、ピンは横方向に互いから離隔して配置されたクレビスの2つの壁部を貫通する。それ故に、シヤーピンは、それぞれ、クレビスの壁部と共に協働している2つの異なるポイントのレベルで反対方向における2つの負荷によって応答され、有利には、クレビス/リンクアセンブリのリンクによって単一のポイントで求められるシヤーピンと共に前もって偶然に発生された曲げ効果の相当の減少に移動するピンのバランスを得ることを可能にさせる。
【0022】
好ましくは、エンジンアセンブリもまた、ファンケース上に固定されたケースを有するボールジョイントと、シヤーピンを支持するボールジョインヨークを備える。この種類の構成と共に、有利には、曲げにおける機械的に応答されたピンは、ファンケースに対する応力をほとんど伝達することなく、この場合において、ケース内に構築された、その結合されたケース内で移動するシヤーピンと一体で、ボールジョイントヨークである。それ故に、上述されたボールジョイントの存在は、ファンケースがこの同一のケースに機械的に接続されたシヤーピンの曲げによって引き起こされるような有害な効果から実質的に防がれることを暗示する。
【0023】
依然として好ましくは、シヤーピンがボールヨークにスライド可能に取り付けられる。この種類のアセンブリは、ピンの軸によって画定された方向において、ピンとボールジョイントとの間の相対的な移動を可能にする利点を有する。これは、特にエンジンがボールジョイント内でスライドすることを可能にするシヤーピンと共に接続されたその領域のレベルで過大応力に耐えることなく、変形され得ることという意味で興味を起こさせる。参考までに、この特異性は、特にエンジンの延伸段階(elongation phases)中に非常に有利になり、ファンケースと各側部の前方エンジン取り付け部のクレビスとの間の分離された間隙を引き起こすことはない。
【0024】
好ましくは、複数の取り付け部もまた、ターボジェットエンジンの垂直方向に作用された負荷を伝達するように設計された機尾エンジン取り付け部を備える。この機尾エンジン取り付け部は、好ましくはターボジェットエンジンの垂直方向に作用された負荷のみを伝達するように設計され、複数のエンジン取り付け部もまた、ターボジェットエンジンの長手方向及びターボジェットエンジンの垂直方向によって画定された上述された平面によって貫通されるようにファンケースに固定された第3のエンジン取り付け部を備え、第3のエンジン取り付け部がターボジェットエンジンの横方向に作用された負荷のみを伝達するように設計されている。
【0025】
この構成において、その結果、第1の前方エンジン取り付け部、第2の前方エンジン取り付け部、及び第3の前方エンジン取り付け部がファンケースの周囲環状部分上に固定され、前方エンジン取り付け部が有利には互いから非常に分離された位置で前方エンジン取り付け部に占有されることを可能にさせる。
【0026】
好ましくは、第1のエンジン取り付け部及び第2のエンジン取り付け部は、ターボジェットエンジンの長手方向の軸及びそれらの横方向によって画定された平面によって貫通される。それ故に、負荷がターボジェットエンジンの軸で伝達されるので、後方部分の長手方向の曲げは有利には相当減少される。
【0027】
最後に、代替実施形態が複数の取り付け部を備え、この複数の実施形態は上述された第3の前方取り付け部を備えておらず、依然として、平衡のとれたアセンブリシステム(isostatic assembly system)を形成する複数のエンジン取り付け部を得ることの目的と共に、側面スラストリンクを有する種類のスラスト過重を伝達するための装置を有することなく、機尾のエンジン取り付け部がターボジェットエンジンの横方向に作用された負荷を伝達するように設計されることに留意されるべきである。
【0028】
さらに、本発明の主題は、ちょうど提示されたそのようなエンジンアセンブリの少なくとも1つを備える航空機である。
【0029】
他の利点及び本発明の特性は詳細に現れており、以下に提供された説明は制限するものではない。
【0030】
この説明は、添付された図面を参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1を参照して、本発明の第1の好ましい実施形態による航空機エンジンアセンブリ1を理解し、このアセンブリ1は航空機(図示せず)の翼の下に固定されるように設計される。
【0032】
全体的に、エンジンアセンブリ1は、ターボジェットエンジン2、エンジンマウント4、及び複数のエンジン取り付け部6a,6b,8,9を備え、この複数のエンジン取り付け部6a,6b,8,9は、このエンジンマウント4の下にターボジェットエンジン2の固定を確実にする(取り付け部6bは、この図1における取り付け部6aによって隠されている。)。参考までに、アセンブリ1がナセル(nacelle)(図示せず)によって囲まれるように設計され、エンジンマウント4が、航空機の翼の下にこのエンジン1のサスペンションを確実にすることを可能にさせる他の一連の取り付け部(図示せず)を備えていることに留意されたい。
【0033】
説明の残りの部分において、慣習によって、Xはターボジェットエンジン2の長手方向に平行な方向を意味し、Yは、この同一のターボジェットエンジン2に対して横方向に位置付けられた方向を意味し、Zは、垂直方向又は高さ方向を意味し、これらの3つの方向は互いに直交する。
【0034】
さらに、“前方”及び“機尾”という用語は、ターボジェットエンジン2によって作用された推進力に続いて航空機の移動方向に関係し、この方向は矢印7によって図式的に図示されていることを理解されたい。
【0035】
図1において、エンジンマウントの1つの剛構造部10しか示されていないことを理解することができる。空力カウリングを支持しつつ、異なるシステムの分離及び支持を確実にする2次構造などの、このエンジンマウント4の図示されていない他の構成要素は、先行技術に見られる構成要素と同一又は類似の従来の構成要素であり、当業者に周知である。結果として、それらの構成要素の詳細は、提供されていない。
【0036】
さらに、ターボジェットエンジン2は、環状のファンダクト14の範囲を定めている巨大なファンケース12を前部に有し、後方に向けて、このターボジェットエンジンのコアを取り囲んでいる小さいサイズの中央ケース16を備えている。最後に、中央ケース16が中央ケース16より大きいサイズの排気ケース17まで機尾方向に延在される。ケース12、16、及び17は、明らかに互いに固着されている。
【0037】
図1で理解し得るように、第1の前方エンジン取り付け部6a及び第2の前方エンジン取り付け部6bは、両方ともファンケース12上に固定され、軸5及びZ方向によって画定された平面Pに対して対称的に固定される。
【0038】
実際に、直ちに図2を参照すると、図式的に図示された第1の取り付け部6a及び第2の取り付け部6bは、この平面Pに対して対称的に配置され、好ましくは、ファンケース12の周囲環状部分上に両方とも配置され、より具体的には、この同一部分の後方部分上に配置されることが理解され得る。
【0039】
第1の前方エンジン取り付け部6a及び第2の前方エンジン取り付け部6bが、ファンケース12の円筒状の外部表面18を有する周囲環状部分上の全く反対の位置であり、そのために、第1の前方エンジン取り付け部6a及び第2の前方エンジン取り付け部6bは長手方向の軸5及びY方向によって画定された第2の平面P’によって互いに横断される。
【0040】
図2の矢印によって図式的に示されるように、第1の前方エンジン取り付け部6a及び第2の前方エンジン取り付け部6bのそれぞれがX方向及びZ方向においてターボジェットエンジン2によって発生された負荷を伝達することが可能であるように設計されており、Y方向における負荷には作用しない。
【0041】
この方法において、2つの取り付け部6a及び6bは、互いから大いに離間され、X方向に作用されたモーメントの伝達及びZ方向に作用されたモーメントの伝達を共同で確実にする。
【0042】
依然として図2を参照して、図式的に図示された第3の前方エンジン取り付け部8を見ることができ、この第3の前方エンジン取り付け部8もまた、ファンケース12の周囲環状部分上に固定され、好ましくはこの部分の後方部分上に固定される。
【0043】
取り付け部6a、6b、8は、エンジンの構造部分(図示されず)を介してケース12の周囲環状部分上に固定され、好ましくは、周囲環状部分の後方部分上に配置される。それにもかかわらず、エンジンの構造部分が周囲環状部分上により前方に配置されたエンジンに遭遇することが可能になり、取り付け部6a、6b、8もまたエンジンに対してより前方に固定されていることを暗示し、依然としてファンケース12の周囲環状部分上に固定されていること暗示する。
【0044】
第3の取り付け部8は、ファンケース12の最も高い部分上に配置され、それ故に周囲環状部分の最も高い部分上に配置され、結果として、上述された第1の平面Pによって想像上で貫通される。さらに、3つの取り付け部6a,6b及び8は、好ましくはYZ平面(図示せず)によって貫通される。
【0045】
図2の矢印によって図式的に示されるように、第3のエンジン取り付け部8は、Y方向におけるターボジェットエンジン2によって発生された負荷のみを伝達することができるように設計され、それ故にX方向及びZ方向における負荷には作用しない。
【0046】
依然として図2を参照して、図式的に示された機尾のエンジン取り付け部9を見ることができ、この機尾のエンジン取り付け部は剛構造部10(この図では可視できない)及び排気ケース17との間に固定され、好ましくは、最も大きい直径を有するこのケース17の一部分で固定される。参考までに、この機尾の取り付け部9が、好ましくは第1の平面Pによって想像上で貫通されることが明示される。
【0047】
図2の矢印によって図式的に示されるように、機尾のエンジン取り付け部9は、Z方向においてターボジェットエンジン2によって発生された負荷のみを伝達することができるように設計され、それ故にX方向及びY方向における負荷には作用されない。
【0048】
この方法において、それ故に、この取り付け部9は、2つの前方取り付け部6a及び6bと共に共同で、Y方向に作用するモーメントの伝達を確実にする。
【0049】
当然ながら、この機尾の取り付け部9は、異なって配置されることができ、すなわちターボジェットエンジン2の中央ケース16上に配置され、好ましくは中央ケース16のより機尾部分上に配置され、又は同様に中央ケース16と排気ケース17との間の接合部20の高さ(level)で配置される。
【0050】
エンジン取り付け部8及び9が図1及び図2で図式的に図示されることに留意され、それらの取り付け部が、例えば、リンク及びブラケットの組立体に関連した取り付け部のように、当業者によって周知な任意の形状に製造され得ることを理解されなければならない。
【0051】
しかしながら、前方の取り付け部6a,6bの設計は、本発明の特異性を構成し、図5及び図6を参照することで、以下に詳細に記載される。
【0052】
上記に記載されたように、ちょうど記載された構成に関連した主要な利点の一つは、ファンケース12上の前方のエンジン取り付け部分6a、6b、8の特定の位置が、航空機の様々な飛行状況の間に中央ケース16の曲げをかなり減少するように導き、それ故に、この中央ケース16に対する圧縮機及びタービンブレードの摩擦のために磨耗を十分に減少させるという事実である。さらに、他の利点は、エンジンの製造中に、操作の間隙を減少し、それによって、より大きい出力を得るという可能性に存在している。
【0053】
図4を参照して、エンジンマウントの一の実施形態を見ることができ、エンジンマウントの剛構造部10のみが図示されることを理解し得る。
【0054】
第1に、この剛構造部10が上記に記載された第1の平面Pに対して対称的になるように設計されることが明言されなければならない。
【0055】
この剛構造10は、中央トルクボックス22を備え、このトルクボックス22は、X方向において剛構造部10の一端から他端まで延在し、この同一方向に略平行に延在する。参考までに、このボックス22は、上部スパー、下部スパー、及び2つの側部パネルの組立体によって形成されることができ、この2つの側部パネル(参照符号なし)が平行なXZ平面においてX方向に延在し、平行なYZ面において方向付けられた横方向のリブ(図示せず)によって互いに接続される。
【0056】
さらに、このボックス22の一の前方端部の高さで、剛構造部10は、2つの横方向のボックス24a,24bを支持し、この横方向のボックス24a,24bは、Y方向でボックス22の両方の側部上に突出する。
【0057】
2の横方向のボックス24a,24bは、2つの前方エンジン取り付け部6a,6bをそれぞれ支持し、好ましくは、2の横方向のボックス24a,24bのそれぞれが、互いに円状の断面を有する略円筒状の架空の表面(図示せず)の一部の境界を定めている下部外皮26a,26b、及びターボジェットエンジンの中央ボックス22及び長手方向の軸5に平行な長手方向の軸34を有する。すなわち、2つの下部外皮26a,26bのそれぞれが、この架空の表面に対して接触し、且つ架空の表面の周りにそれ自体を位置付けることを可能にするように適合された湾曲部を有する。従って、一般的に、2つの横方向のボックス24a,24bは、ターボジェットエンジン2の中央ケース16の周りに、且つ中央ケース16から離隔して位置付けられることを可能にする、円状の断面を有する略円筒形状のエンベロプ(envelope)/ケージ部分を形成する。当然ながら、この構成は、アセンブリ1を通じて二次空気流の流れを推進する。
【0058】
さらに、図4に図式的に図示されるように、前方エンジン取り付け部6aは、横方向のボックス24aの前方クロージャフレーム28aに固着される一方、前方エンジン取り付け部6bは、横方向のボックス24bの前方クロージャフレーム28bと一体に製造され、前方エンジン取り付け部8がボックス22の前方クロージャフレーム28a上に取り付けられ、フレーム28a,28b,31が同一のYZ平面内に配置されている。
【0059】
さらに、平面P’に平行なクロージャプレート48a,48b上の前方エンジン取り付け部6a,6bをそれぞれ固定するために設けられ、好ましくは、この同一平面によって横断されるように配置され、それによって、それらのクロージャプレート48a,48bは、ボックス24aの下部分及びボックス24bの下部分をそれぞれ閉口し、それ故に、外皮の下方端部、及び関連したボックスの前方のクロージャフレーム及び機尾のクロージャフレームに接続する。
【0060】
図3を参照して、本発明の第2の好ましい実施形態による航空機用エンジンアセンブリ1(エンジンマウントは図示せず)を理解することができる。
【0061】
このアセンブリは、第1の好ましい実施形態のフレーム構造に記載された構造に類似している。それ故に、同一の参照数字を有している構成要素は、同一の構成要素又は類似の構成要素に対応する。
【0062】
第2の好ましい実施形態によって存在したこの主な差異は、第3の前方エンジン取り付け部を取り除くこと、及び機尾エンジン取り付け部9がZ方向で作用されている負荷の伝達だけではなく、Y方向で作用されている負荷の伝達を確実にすることを提供することをから成る。
【0063】
従って、第1の実施形態に似ているこの第2の好ましい実施形態は、平衡のとれたアセンブリシステムを形成している複数のエンジン取り付け部を得ることを可能にさせる代替方法を提供する。
【0064】
直ちに図5及び図6を参照して、側面の前方エンジン取り付け部6aを示し、側面の前方エンジン取り付け部6aは、当然ながら平面Pに対して側面の前方エンジン取り付け部6bと同一であり、且つ対称的であり、横方向のボックス24aの前方クロージャフレーム28a及びクロージャプレート48aと一体であるクレビス30を備え、このクレビス30は、Y方向に離隔された2つの壁部又はヘッド部32a,32bを有し、それぞれXZ平面に沿って配置されている。
【0065】
2つの壁部のそれぞれは、Y方向に方向づけられたオリフィス34a,34bを有し、オリフィス34a,34bはシヤーピン36の外部端部によって連続的に貫通される。より具体的には、Y方向に方向づけられたシヤーピン36はクレビス30の壁部上に構築され、それによって、ピン36がこのクレビスと一体になることを考慮することが可能になる。
【0066】
安全上の役割を果たすように、壁部及びシヤーピンが“2重”のタイプ、すなわち“二重安全式”機能として周知であるタイプにすることができることは、明記される。
【0067】
さらに、シヤーピン36は、図6に最も良く可視されるように、ファンケース12に機械的に接続された内部端部を備える。機械的な接続は、ケース12内に構築されたケース40を備えているボールジョイント38を介して達成され、ピン36の内部端部を受容するように貫通されたボールジョイントヨーク42を支持している。しかしながら、ここで、ボールジョイントヨーク42におけるピン36のスライドアセンブリは、ピン36の組み合わされた長手方向の軸及びヨーク42の貫通部によって画定された方向におけるそれら2つの要素の間の相対的な移動を可能にするために好ましく、それ故にY方向に対応する。
【0068】
当然、様々な改善は、当業者によって、例としてではなく単に記載された航空機用エンジンアセンブリ1に対して行われる場合がある。この点において、特にエンジンアセンブリ1が航空機の翼の下に取り付けられるために適合された構成に存在されるかどうかを示唆し、このアセンブリ1がこの同一の翼の上方に又は航空機の胴体の機尾部分でさえ取り付けられることを可能にする異なる構成を有することもできることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による航空機エンジンアセンブリの図式の側面図である。
【図2】エンジン取り付け部の配置をより明白に示すために、エンジンマウントが削除された、図1に示されたアセンブリのターボジェットエンジンの図式の側面図である。
【図3】アセンブリが本発明の第2の好ましい実施形態の形態で存在される、図2に示されたターボジェットエンジンに類似の図である。
【図4】図1に示されたアセンブリのエンジンマウントの斜視図である。
【図5】図1に示されたエンジンアセンブリに属している前方取り付け部の詳細な斜視図である。
【図6】図5の平面P’に沿って、この同一の前方取り付け部の部分断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジンアセンブリ
2 ターボジェットエンジン
4 エンジンマウント
5 軸
6a 第1の前方エンジン取り付け部
6b 第2の前方エンジン取り付け部
7 矢印
8 第3の前方エンジン取り付け部
9 機尾エンジン取り付け部
10 剛構造部
12 ファンケース
14 ファンダクト
16 中央ケース
17 排気ケース
18 外部表面
20 接合部
22 中央トルクボックス
24a 横方向のボックス
24b 横方向のボックス
26a 下部外皮
26b 下部外皮
28a 前方クロージャフレーム
28b 前方クロージャフレーム
30 クレビス
31 フレーム
32a 壁部
32b 壁部
34a オリフィス
34b オリフィス
36 シヤーピン
38 ボールジョイント
40 ケース
42 ボールジョイントヨーク
48a クロージャプレート
48b クロージャプレート
P 第1の平面
P’ 第2の平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボジェットエンジン(2)、エンジンマウント(4)、及び前記エンジンマウント(4)と前記ターボジェットエンジン(2)との間に挿入された複数のエンジン取り付け部(6a,6b,8,9)を備えている航空機用エンジンアセンブリ(1)であって、
前記複数のエンジン取り付け部(6a,6b,8,9)は、第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び第2の前方エンジン取り付け部(6b)を備え、前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)が、前記ターボジェットエンジンのファンケース(12)に固定され、且つ前記ターボジェットエンジンの長手方向の軸(5)及び前記ターボジェットエンジンの垂直方向(Z)によって画定された平面に対して対称的に配置され、
前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)のそれぞれが、前記ターボジェットエンジン(2)の長手方向(X)及び前記ターボジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に作用された負荷を伝達するように設計され、
前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)のそれぞれが、前記ターボジェットエンジン(2)の横方向(Y)に方向づけられ、且つ前記ファンケース上に取り付けられたシヤーピン(36)、及び、前記エンジンマウント上に固定され、且つ2つの壁部(32a,32b)を有するクレビス(30)を備えている航空機用エンジンアセンブリ(1)において、
前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)のそれぞれに関して、前記シヤーピン(36)が前記クレビス(30)の両方の前記壁部(32a,32b)を貫通していることを特徴とする航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記ファンケース(12)上に固定されたケース(40)、及び前記シヤーピン(36)を支持するボールヨーク(42)を備えているボールジョイント(38)も備えていることを特徴する請求項1に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記シヤーピン(36)が前記ボールヨーク(42)内にスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記複数の取り付け部(6a,6b,8,9)もまた、前記ターボジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に作用された負荷を伝達するように設計された機尾のエンジン取り付け部(9)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記機尾のエンジン取り付け部(9)が前記ターボジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に作用された負荷のみを伝達するように設計され、前記複数のエンジン取り付け部(6a,6b,8,9)もまた、前記ターボジェットエンジン(2)の長手方向の軸(5)及び前記ターボジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)によって画定された前記平面によって貫通されるように、前記ファンケース(12)に固定された第3の前方エンジン取り付け部(8)を備え、
前記第3の前方エンジン取り付け部(9)が前記ターボジェットエンジンの横方向(Y)に作用された負荷のみを伝達するように設計されていることを特徴とする請求項4に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)、前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)、及び前記第3の前方エンジン取り付け部(8)は、前記ファンケース(12)の周囲環状部分(18)上に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記第1の前方エンジン取り付け部(6a)及び前記第2の前方エンジン取り付け部(6b)が、前記ターボジェットエンジン(2)の長手方向の軸(5)及び前記ターボジェットエンジンの横方向(Y)によって画定された平面によって貫通されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記機尾のエンジン取り付け部(9)が、前記ターボジェットエンジン(2)の横方向(Y)に作用された負荷を伝達するように設計されていることを特徴とする請求項4に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記機尾のエンジン取り付け部(9)が前記ターボジェットエンジン(2)の中央ケース(16)上に固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記複数のエンジン取り付け部(6a,6b,8,9)が平衡のとれたアセンブリシステムを形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の前記エンジンアセンブリの少なくとも1つを備えていることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510315(P2009−510315A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532770(P2008−532770)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066765
【国際公開番号】WO2007/036527
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)