説明

航空機降着オーバーラン予測装置

【課題】 航空機のオーバーランの発生を未然に予測して地上要員に知らせる。
【解決手段】 機体2の機種毎に機体2の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報(滑走路距離情報)を記憶した機種データベース11と、降着する機体2を撮像するカメラ6から送信される画像を解析して機体2の降着態様(降着位置,接地速度)を求める航空機降着画像認識手段7とを設け、降着状態にある機体2の機体識別信号に基づいて機種データベース11を検索することで当該機体2に対応する滑走路距離情報を求め、機体2の降着態様と滑走路距離情報とに基づいて降着状態にある機体2におけるオーバーランの発生の有無を未然に予測し、オーバーランの発生が予測された場合に限り、警報発生手段9を作動させて地上要員に向けてオーバーランの発生予測警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のオーバーランの発生を予測して地上要員に向けて警報を出力する航空機降着オーバーラン予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のオーバーランを未然に防止するための発明として、例えば、特許文献1に開示される「航空機駐機位置検出装置」や特許文献2に開示される「航空機の着陸段階における操縦を支援するための装置」が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示される「航空機駐機位置検出装置」は、駐機スポットに侵入する機体の位置を検出してパイロットに進路や停止位置に関連する情報を提供するものである。
【0004】
また、特許文献2に開示される「航空機の着陸段階における操縦を支援するための装置」は、降着状態にある機体の対地速度を積分して移動距離を求め、適切な範囲内でランディング・ギァ等の降着装置が接地したか否かを判定し、接地が遅れた場合にパイロットに機体の引き起こしや進入復行(再進入)を促すことを目的としたものである。
【0005】
いずれのものも基本的にオーバーランの発生を未然に防止することを目的とした技術であり、オーバーランが発生した場合のリカバリー処理、例えば、救出作業や消火作業の円滑化や二次災害の発生を抑制するといった発想および機能はない。
【0006】
【特許文献1】特開平7−27512号公報
【特許文献2】特開平8−198196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、航空機のオーバーランの発生を未然に予測して地上要員に向けて警報を出力することのできる航空機降着オーバーラン予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の航空機降着オーバーラン予測装置は、トランスポンダー応答信号に含まれる機体識別信号と位置情報を受信し、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて降着状態にある機体の機体識別信号を特定するトランスポンダー信号解析手段と、
機体の機種毎に、当該機種に属する機体の機体識別信号と、当該機種の機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報とを記憶した機種データベースと、
前記トランスポンダー信号解析手段から受信した機体識別信号に基づいて前記機種データベースを検索し、当該機体識別信号に対応する機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求める航空機情報照合手段と、
降着する機体を撮像するカメラから送信される画像を解析して機体の降着態様を求める航空機降着画像認識手段と、
前記航空機情報照合手段から滑走距離の演算に関連する情報を受信し、該滑走距離の演算に関連する情報と前記航空機降着画像認識手段から受信した降着態様とに基づいてオーバーランの発生の有無を予測する降着安全判定手段と、
前記降着安全判定手段によってオーバーランの発生が予測されると、オーバーランの発生予測警報を少なくとも地上要員に向けて出力する警報発生手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0009】
以上の構成により、トランスポンダー信号解析手段がトランスポンダー応答信号に含まれる機体識別信号と位置情報を受信し、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて降着状態にある機体の機体識別信号を特定し、この情報を航空機情報照合手段に引き渡す。
これを受けた航空機情報照合手段は、機体識別信号に基づいて機種データベースを検索し、当該機体識別信号に対応する機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求め、降着安全判定手段に引き渡す。機種データベースには機種と機体識別信号との対応関係および機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連した情報と機種との対応関係が記憶されているので、滑走距離の演算に関連する情報の検索に際しては、まず、トランスポンダー信号解析手段から受信した機体識別信号に基づいて当該機体の属する機種を特定し、その後、この機種に対応した機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関わる情報が機種データベースから読み出される。
また、これらのトランスポンダー信号解析手段や航空機情報照合手段と並行して航空機降着画像認識手段が常時作動しており、この航空機降着画像認識手段が、降着する機体を撮像するカメラから送信される画像を逐次解析して機体の降着態様を求め、その結果を降着安全判定手段に引き渡す。この航空機降着画像認識手段自体が機体の機種や機体識別信号を認識する必要はない。
降着安全判定手段は、その時点で航空機情報照合手段から受け取っている滑走距離の演算に関連した情報と航空機降着画像認識手段から受け取った降着態様を同一の機体すなわち現時点で降着状態にある機体のものであると認識し、航空機情報照合手段から受け取った滑走距離の演算に関連する情報と航空機降着画像認識手段から受け取った降着態様とに基づいて当該機体におけるオーバーランの発生の有無を予測する。
最終的に、降着安全判定手段によってオーバーランの発生が予測された場合に限り、警報発生手段が作動して、地上要員に向けてオーバーランの発生予測警報を出力する。
このように、航空機のオーバーランの発生を未然に予測して地上要員に向けて警報を出力することができるので、オーバーランが発生した場合のリカバリー処理、例えば、救出作業や消火作業が後手に回るといった問題が改善され、二次災害の発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
また、滑走距離の演算に関連する情報に加え、航空機情報照合手段が機種データベースを検索して求めた機種の情報を降着安全判定手段に引き渡すようにし、オーバーランの発生予測警報と共にオーバーランの対象となる機体の機種を地上要員に向けて知らせるようにしてもよい。
【0011】
オーバーランの対象となる機種について地上要員が予め知ることができるので、救出作業や消火作業に必要とされる装備の選択や要員の配置を的確に行うことが可能となり、二次災害の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
より具体的には、例えば、滑走距離の演算に関連する情報として所要滑走路長を機種データベースに記憶させ、
機体の降着態様としての降着位置を航空機降着画像認識手段によって求めさせるようにし、
降着安全判定手段が、降着位置から求まる有効滑走路長と前記所要滑走路長とを比較してオーバーランの発生の有無を予測するといった構成が適用できる。
【0013】
滑走路長は既知の値であるから、降着態様としての降着位置が分れば有効滑走路長つまり降着状態にある機体が実際に使用可能な滑走路の長さが求められる。
従って、降着安全判定手段は、航空機降着画像認識手段によって求められた降着位置と既知の滑走路長に基づいて有効滑走路長を算出した上で、更に、有効滑走路長と所要滑走路長との大小関係を比較し、有効滑走路長が所要滑走路長と同等以上であればオーバーランは発生しないものと予測し、また、有効滑走路長が所要滑走路長よりも短ければオーバーランが発生するものと予測することができる。
【0014】
あるいは、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報として各種のパラメータを機種データベースに記憶させ、
機体の降着態様として其の降着位置と接地速度を航空機降着画像認識手段によって求めさせるようにし、
降着安全判定手段が、降着位置から求まる有効滑走路長と前記接地速度と前記パラメータとに基づいてオーバーランの発生の有無を予測するようにしてもよい。
【0015】
前記と同様、滑走路長は既知の値であるから、降着態様としての降着位置が分れば有効滑走路長が求められる。
また、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連するパラメータとしては、例えば、逆推力装置,油圧車輪ブレーキ,スポイラー等のブレーキ装置の性能に関わる関数が利用され得る。
この場合、降着する機体の位置に加えて接地速度が航空機降着画像認識手段によって求められるので、この機体が属する機種の逆推力装置,油圧車輪ブレーキ,スポイラー等のブレーキ装置の性能に関わるパラメータと機体の接地速度および有効滑走路長の関係に基づいて、オーバーランの発生の有無を高い確率で予測することができる。
【0016】
更に、前記機種データベースに、機体の機種の分類の下で滑走路の環境に応じた滑走距離の演算に関連する情報を場合分けして記憶させ、
航空機情報照合手段により、機体の機種および滑走路の環境に応じて、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求めるようにしてもよい。
【0017】
滑走距離の演算に関連する情報が機種の相違と滑走路の環境に応じて選択されるので、オーバーランの発生の有無を更に高い確率で予測することができるようになる。
滑走路の環境としては、例えば、乾燥,降雨,積雪等の路面状況や、風向および風速といったものが考えられる。
【0018】
また、トランスポンダー信号解析手段は、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて各機体の移動方向が滑走路に接近する方向であるのか離間する方向であるのかを求め、移動方向が滑走路に接近する方向である機体のうち滑走路に直近する機体の機体識別信号を降着状態にある機体の機体識別信号として特定する構成とすることができる。
【0019】
具体的には、同じ機体識別信号に対応して新たに受信された位置情報と其の直前に受信された位置情報との関係から機体の移動方向が滑走路に接近する方向であるのか離間する方向であるのかが分る。
このうち、降着の可能性があるのは滑走路に接近する方向に移動する機体だけであるから、滑走路に接近する方向に移動する機体うち滑走路に直近する機体の機体識別信号を降着状態にある機体の機体識別信号として特定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の航空機降着オーバーラン予測装置は、機体の機種毎に降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を記憶した機種データベースと、降着する機体を撮像するカメラから送信される画像を解析して機体の降着態様を求める航空機降着画像認識手段とを設け、降着状態にある機体の機体識別信号に基づいて機種データベースを検索することで当該機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求め、該求められた降着態様と滑走距離の演算に関連する情報とに基づいて降着状態にある機体におけるオーバーランの発生の有無を未然に予測し、オーバーランの発生が予測された場合に限り、警報発生手段を作動させて地上要員に向けてオーバーランの発生予測警報を出力するようにしているので、オーバーランが発生した場合のリカバリー処理、例えば、救出作業や消火作業等が後手に回るといった問題が改善され、機体のオーバーランによる二次災害の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0022】
図1は本発明を適用した一実施形態の航空機降着オーバーラン予測装置1(以下、単に予測装置1という)の構成の概略について示した模式図、図2は同予測装置1における各種のデータの流れを含めて示した機能ブロック図である。
【0023】
この実施形態における予測装置1の主要部は、滑走路10の周辺に配備された二次監視レーダー(図示せず)からの質問に応答して機体2が送信するトランスポンダー応答信号を受信するトランスポンダー信号受信器3と、トランスポンダー信号受信器3から送られる機体識別信号と位置情報を受信して降着状態にある機体2の機体識別信号を特定するトランスポンダー信号解析手段4を備える。
また、トランスポンダー信号解析手段4から受信した機体識別信号に基づいて機種データベース11を検索することによって当該機体識別信号に対応する機体2の機種(以下、機種情報という)を特定すると共に、この機種の機体2の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報(以下、滑走路距離情報という)を機種データベース11から求める航空機情報照合手段5と、降着する機体2を撮像するカメラ6から送信される動画の画像を解析して機体2の降着態様である降着位置と接地速度を求める航空機降着画像認識手段7、ならびに、航空機情報照合手段5から機種情報と共に送られる滑走路距離情報と航空機降着画像認識手段7から送られる降着態様である降着位置および接地速度に基づいて機体2におけるオーバーランの発生の有無を予測する降着安全判定手段8と、降着安全判定手段8からの指令に従ってオーバーランの発生予測警報を地上要員に向けて出力する警報発生手段9を有する。
【0024】
トランスポンダー信号解析手段4,航空機情報照合手段5,航空機降着画像認識手段7,降着安全判定手段8の各機能は、夫々、独立したコンピュータに実装してもよいし、コンピュータに十分な処理能力があれば、各機能の実現に必要とされる処理、例えば、図3〜図6に示されるような各処理をマルチタスク処理によって構成し、各手段の機能を単一のコンピュータに実装しても構わない。
【0025】
また、機体2の機種に対応させて機体2の機体識別信号と各機種に共通する滑走路距離情報を記憶した機種データベース11は、ハードディスクドライブ等を始めとする不揮発性の記憶装置に格納され、航空機情報照合手段5を構成するコンピュータの内部に納められるか、あるいは、航空機情報照合手段5を構成するコンピュータから少なくともデータの読み込みが可能な状態で航空機情報照合手段5に接続されている。
【0026】
この実施形態では、図8および図9に示すように、機種を特定するための機種情報と各機種に属する機体2の機体識別信号とを対応させて記憶した識別信号記憶データベース11a、および、機種情報と其の機種に共通する滑走路距離情報とを対応させて記憶した滑走路距離情報記憶データベース11bによって機種データベース11を構成しているが、これらのものは一体であってもよい。
【0027】
滑走路距離情報記憶データベース11bには、同一機種の機体2の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連した情報つまり滑走路距離情報が滑走路10の環境に応じて幾つかに場合分けして記憶されている。
この実施形態においては、特に、滑走路10が乾燥している場合、降雨によって濡れている場合、積雪による凍結の恐れがある場合の3種の環境を想定して各環境毎の滑走路距離情報を記憶させているが、場合分けの数に格別な制限はない。
【0028】
滑走路距離情報として、例えば、機種と環境に応じた所要滑走路長のみを記憶させる場合や、機種と環境に応じた所要滑走路長および許容接地速度を記憶させる場合、更には、逆推力装置,油圧車輪ブレーキ,スポイラー等のブレーキ装置の性能に関わるパラメータ等を記憶させる場合がある。
【0029】
図3はトランスポンダー信号解析手段4として機能するコンピュータが降着状態にある機体2の機体識別信号を特定するための処理の一例について概略を示したフローチャート、図4は航空機情報照合手段5として機能するコンピュータが降着状態にある機体2の機体識別信号に基づいて該機体2に対応する機種情報と滑走路距離情報を求めるための処理の一例について概略を示したフローチャート、図5は航空機降着画像認識手段7として機能するコンピュータが機体2の降着態様すなわち機体2の降着位置と接地速度を求める際の処理の概略について示したフローチャート、図6は降着安全判定手段8として機能するコンピュータが航空機情報照合手段5から送られる機種情報および滑走路距離情報と航空機降着画像認識手段7から送られる降着位置および接地速度に基づいて機体2におけるオーバーランの発生の有無を予測する際の処理の概略について示したフローチャートである。
【0030】
次に、図3〜図6のフローチャートを参照してトランスポンダー信号解析手段4,航空機情報照合手段5,航空機降着画像認識手段7,降着安全判定手段8の処理動作について具体的に説明する。
【0031】
トランスポンダー信号解析手段4として機能するコンピュータ(以下、単にトランスポンダー信号解析手段4という)は、トランスポンダー信号受信器3からのトランスポンダー応答信号の入力を常に待ち受けており(図3のステップa1)、トランスポンダー応答信号の入力が検出されると、このトランスポンダー応答信号に含まれる機体2の機体識別信号と其の位置情報Pを読み込んで一時記憶する(ステップa2)。
【0032】
但し、トランスポンダー信号受信器3は滑走路10の周辺を飛行する様々な機体2から送信されるトランスポンダー応答信号を逐次受信し、各機体2の機体識別信号と位置情報Pをトランスポンダー信号解析手段4に送りつけてくるので、この段階では、どの機体識別信号が降着状態にある機体2のものであるかは特定され得ない。
【0033】
そこで、トランスポンダー信号解析手段4は、まず、図7に示されるような識別信号記憶テーブルを参照し(ステップa3)、今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号が当該時点で既に識別信号記憶テーブルに記憶されているか否かを判定する(ステップa4)。
【0034】
図7に示す識別信号記憶テーブルは、機体2毎の機体識別信号に対応させて各機体2の現在位置Pnと各機体2の過去位置Ppおよび該機体2からのトランスポンダー信号の最終受信時刻Tと該機体2の移動方向を示すフラグF1の値を関連付けて記憶するためのテーブルであって、トランスポンダー信号解析手段4として機能するコンピュータの不揮発性メモリ内に設けられている。
【0035】
ステップa4の判定結果が偽となった場合、つまり、今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号が当該時点で識別信号記憶テーブルに記憶されていない場合には、この機体識別信号に関連するトランスポンダー応答信号が現時点で初めて検出されたものであることを意味するので、トランスポンダー信号解析手段4は、図7に示されるような識別信号記憶テーブルの未使用レコードにおける識別信号記憶フィールドに今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号を新たに登録し、このレコードの現在位置記憶フィールドPnに今回のステップa1の処理で受信した位置情報Pを記憶させると共に、このレコードの最終受信時刻記憶フィールドTに現在時刻を記憶させる(ステップa5)。
【0036】
この場合、当該レコードの過去位置記憶フィールドPpにはデータが記憶されておらず、機体2の経路から今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号を有する機体2の移動方向を特定することはできないので、トランスポンダー信号解析手段4は、取り敢えず、当該レコードにおけるフラグ記憶フィールドF1に、滑走路10から離間する方向への移動を示す値0をセットする(ステップa6)。
【0037】
一方、ステップa4の判定結果が真となった場合、つまり、今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号が既に図7の識別信号記憶テーブルに記憶されている場合には、この機体識別信号に関連するトランスポンダー応答信号が当該時点で既に確認済みのものであることを意味するので、トランスポンダー信号解析手段4は、図7に示されるような識別信号記憶テーブルにおいて、当該機体識別信号を記憶したレコードを特定し、このレコードにおける現在位置記憶フィールドPnの位置情報を当該レコードにおける過去位置記憶フィールドPpに上書きして記憶させた後、この現在位置記憶フィールドPnに今回のステップa1の処理で受信した位置情報Pを上書きして記憶させると共に、このレコードの最終受信時刻記憶フィールドTに現在時刻を更新して記憶させる(ステップa7)。
【0038】
この場合、当該レコードの過去位置記憶フィールドPpおよび現在位置記憶フィールドPnには共にデータが記憶されているので、トランスポンダー信号解析手段4は、今回のステップa1の処理で受信した機体識別信号に対応した機体2の位置情報の時系列的な変化、つまり、機体2の過去位置Pp(Xp,Yp,Zp)と現在位置Pn(Xn,Yn,Zn)との関係に基づいて該機体2の移動方向を求め(ステップa8)、この移動方向が滑走路10から離間する方向であるのか滑走路10へ接近する方向であるのかを判定し(ステップa9)、接近する方向であれば当該レコードにおけるフラグ記憶フィールドF1に接近する方向への移動を示す値1をセットし(ステップa10)、また、離間する方向であれば、当該レコードにおけるフラグ記憶フィールドF1に離間する方向への移動を示す値0をセットする(ステップa6)。
【0039】
ステップa2〜ステップa10の処理はトランスポンダー信号受信器3からのトランスポンダー応答信号の入力がトランスポンダー信号解析手段4によって検出される度に繰り返し実行されるので、トランスポンダー応答信号が2回以上受信された滑走路10周辺の全ての機体2について、其の移動方向を各機体識別信号に対応するフラグF1の値として識別信号記憶テーブルに記憶することができる。
【0040】
次いで、トランスポンダー信号解析手段4は、現時点で識別信号記憶テーブルに機体識別信号を記憶されている機体2のうち滑走路10との離間距離が最小となる機体2と滑走路10との間の離間距離を記憶する最小値記憶レジスタR1に設定可能最大値を初期値としてセットした後(ステップa11)、識別信号記憶テーブルの最初の1レコードを読み込み(ステップa12)、当該レコードにおけるフラグ記憶フィールドF1の値が1であるか否か、即ち、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2が滑走路10に接近中であるか否かを判定する(ステップa13)。
【0041】
ステップa13の判定結果が真となった場合、つまり、このレコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2が滑走路10に接近中である場合には、トランスポンダー信号解析手段4は、当該レコードの現在位置記憶フィールドPnに記憶されている位置情報Pn(Xn,Yn,Zn)と滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)の関係に基づいて、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2と滑走路10との間の離間距離を求め(ステップa14)、この離間距離が最小値記憶レジスタR1の現在値を下回っているか否か、つまり、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2と滑走路10との間の離間距離が、これまでに求められた他の機体2と滑走路10との離間距離のうち最小のものであるか否かを判定する(ステップa15)。
【0042】
そして、ステップa15の判定結果が真となり、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶されている機体2と滑走路10との間の離間距離が、これまでに求められた他の機体2と滑走路10の離間距離のうち最小のものであることが明らかとなった場合には、トランスポンダー信号解析手段4は、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2と滑走路10との間の離間距離つまりステップa14の演算結果を最小値記憶レジスタR1に最小値として更新記憶させ(ステップa16)、滑走路10に接近する機体2のうち滑走路10との離間距離が最小となる機体2の機体識別信号を記憶する機体識別信号記憶レジスタR2に、直前のステップa12の処理で読み込まれたレコードの識別信号記憶フィールドに記憶されている機体識別信号を記憶させる(ステップa17)。
【0043】
一方、ステップa15の判定結果が偽となった場合には、トランスポンダー信号解析手段4は、ステップa16,ステップa17の処理を非実行とし、最小値記憶レジスタR1および機体識別信号記憶レジスタR2の値を其のまま保持する。
【0044】
なお、最小値記憶レジスタR1には初期値として設定可能最大値がセットされるので、最初に実行されるステップa15の判定結果は必然的に真となり、まず、滑走路10に接近中の機体2のうち識別信号記憶テーブルの中の最も先頭に近いレコードに機体識別信号を記憶された機体2と滑走路10との離間距離が無条件に最小値記憶レジスタR1に記憶される。
【0045】
また、ステップa13の判定結果が偽となった場合には、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2が滑走路10から離間する方向に移動しているか、若しくは、其の移動方向が現時点で特定されていないことを意味し、何れにしても、当該レコードの識別信号記憶フィールドに機体識別信号を記憶された機体2は降着対象となるものではないので、トランスポンダー信号解析手段4は、ステップa14〜ステップa17の処理を非実行として、次の処理に移行する。
【0046】
ステップa13あるいはステップa15の判定結果が偽となった場合もしくはステップa17の処理が完了した場合、トランスポンダー信号解析手段4は、今回のステップa12の処理で読み込まれた1レコードが識別信号記憶テーブルにおける最後のレコードであるか否かを判定し(ステップa18)、このレコードが最後のレコードでなければ、再びステップa12の処理に移行して識別信号記憶テーブルから次の1レコードを読み込み、前記と同様の処理を繰り返し実行することにより、滑走路10に接近する機体2のうち滑走路10との離間距離が最小となる機体2の機体識別信号を求める。
【0047】
つまり、ステップa18の判定結果が真となった時点で機体識別信号記憶レジスタR2に記憶されている機体識別信号を有する機体2が、滑走路10に接近する機体2のうち滑走路10との離間距離が最小となる機体2、つまり、現時点で滑走路10に降着しようとしている機体2である。
【0048】
従って、トランスポンダー信号解析手段4は、ステップa18の判定結果が真となった時点で機体識別信号記憶レジスタR2に記憶されている機体識別信号が滑走路10に接近する機体2のうち滑走路10に直近した機体2の機体識別信号であると判断し、この機体識別信号R2を航空機情報照合手段5に出力する(ステップa19)。
【0049】
そして、トランスポンダー信号解析手段4は、識別信号記憶テーブルの全てのレコードについて、トランスポンダー応答信号の最終送信時刻Tを確認し、現在時刻Tnとトランスポンダー応答信号の最終送信時刻Tとの差が判定値以上となっているレコード、つまり、滑走路10への降着や滑走路10からの離脱が完了した機体2に関連したレコードを識別信号記憶テーブルから削除し(ステップa20)、トランスポンダー信号受信器3からのトランスポンダー応答信号の入力を待つ初期の待機状態に復帰する。
【0050】
つまり、このトランスポンダー信号解析手段4は、全体として、各機体2の機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化、つまり、図7に示されるような識別信号記憶テーブルの各レコード毎の現在位置Pn(Xn,Yn,Zn)と過去位置Pp(Xp,Yp,Zp)に基づいて各機体2の移動方向が滑走路10に接近する方向であるのか離間する方向であるのかを求め(ステップa8〜ステップa10,ステップa6)、移動方向が滑走路10に接近する方向である機体2のうち(ステップa13)、滑走路10に直近する機体2の機体識別信号を降着状態にある機体2の機体識別信号として特定するものである(ステップa14〜ステップa17)。
【0051】
このようにしてステップa19の処理で出力された機体識別信号R2は、図4に示されるステップb1の処理で航空機情報照合手段5によって検出される。
【0052】
航空機情報照合手段5として機能するコンピュータ(以下、単に航空機情報照合手段5という)は、まず、図8に示されるような識別信号記憶データベース11aの識別信号記憶フィールドを検索し、ステップb1で受信した機体識別信号を記憶した識別信号記憶フィールドに対応する機種情報を求める(ステップb2)。
例えば、図8の例で機体識別信号がaあるいはd等であれば此れに対応する機種情報は共にAであり、また、機体識別信号がb等であれば此れに対応する機種情報はBとなる。
一般に、識別信号記憶データベース11aでは1つの機種情報に対応して複数の機体識別信号が記憶されている。
【0053】
次いで、航空機情報照合手段5は滑走路10の環境を記憶する環境設定フラグF2の値を参照する(ステップb3)。
【0054】
この環境設定フラグF2は、航空機情報照合手段5として機能するコンピュータの不揮発性メモリに対してオペレータがキーボード等のマニュアルデータインプッタを使用して手動で設定するフラグであり、この実施形態では、F2=1で滑走路10が乾燥している状態を示し、F2=2で降雨によって濡れている場合を示し、またF2=3で積雪による凍結の恐れがある場合を示すように規定されている。
無論、滑走路10に各種のセンサを設置して環境を検知し、これに応じて環境設定フラグF2の値を自動的に設定する構成であっても構わない。
【0055】
航空機情報照合手段5は、ステップb2の処理で求められた機種情報とステップb3で確認された環境設定フラグF2の値に基づいて図9に示されるような滑走路距離情報記憶データベース11bを検索し、降着状態にある機体2の機種情報と滑走路10の現在の環境に応じた滑走路距離情報を読み出し(ステップb4)、ステップb2で求められた機種情報と共に降着安全判定手段8に出力して(ステップb5)、トランスポンダー信号解析手段4からの機体識別信号の入力を待つ初期の待機状態に復帰する。
例えば、図9の例で機種情報がA、かつ、環境設定フラグF2の値が1であったとすれば、乾燥状態にある滑走路10に降着する機種Aの機体2に適した滑走路距離情報A1が滑走路距離情報記憶データベース11bから読み出され、機種情報Aと共に降着安全判定手段8に送られることになる。
【0056】
ステップb5の処理で出力された機種情報と滑走路距離情報は、図6に示されるステップd1の処理で降着安全判定手段8によって検出され、降着安全判定手段8として機能するコンピュータ(以下、単に降着安全判定手段8という)の不揮発性メモリに逐次上書きして記憶される(ステップd3)。
【0057】
一方、航空機降着画像認識手段7として機能するコンピュータ(以下、単に航空機降着画像認識手段7という)は、前述のトランスポンダー信号解析手段4や航空機情報照合手段5とは独立的に常時作動しており、図5に示されるように、降着する機体2を検知したカメラ6から該機体2の降着状況を録画した動画が送られてくる度に(ステップc1)、この画像を解析し、該機体2の降着位置と接地速度を求め(ステップc2)、これらのデータを機体2の降着態様を表すデータとして降着安全判定手段8に逐次出力する(ステップc3)。
カメラ6におけるレンズの焦点距離や画角および動画上に記録された対象物(機体2)の位置や移動量および駒送りのレート等に基づいて対象物の位置(降着位置)や移動速度(接地速度)を求める技術に関しては既に公知である。航空機降着画像認識手段7自体が機体2の機種や其の機体識別信号を認識する必要はない。
【0058】
ステップc5の処理で出力された降着位置と接地速度は、図6に示されるステップd2の処理で降着安全判定手段8によって検出され、降着安全判定手段8の不揮発性メモリに一時記憶される(ステップd4)。
【0059】
つまり、降着安全判定手段8は、常に、航空機情報照合手段5からの機種情報および滑走路距離情報の入力と航空機降着画像認識手段7からの降着位置および接地速度の入力を待つ待機状態にあり(ステップd1,ステップd2)、滑走路10に接近する機体2のうち滑走路2に直近する機体2に関わる機種情報および滑走路距離情報が航空機情報照合手段5から入力される度に此れらの情報を降着対象となる可能性の高い機体2に関連した情報として不揮発性メモリに逐次上書きして更新記憶しておき(ステップd3)、最終的に、カメラ6によって何らかの機体2の降着が確認され、航空機降着画像認識手段7からの降着位置および接地速度の入力が検出されることによってステップd2の判定結果が真となった時点で、降着対象となる可能性の高い機体2、つまり、最も最近に行われたステップd3の処理で機種情報および滑走路距離情報を記憶された機体2が実際に降着したものと見做し、ステップd3で記憶された滑走路距離情報とステップd4で記憶された降着位置および接地速度に基づいて、この機体2が滑走路10をオーバーランするか否かを予測する(ステップd5)。
【0060】
機体2におけるオーバーランの発生の有無の予測に関わるステップd5の処理について幾つかの例を挙げて具体的に説明する。
【0061】
先ず、滑走路距離情報記憶データベース11bに機種情報および滑走路10の環境に応じた所要滑走路長のみを記憶させた場合では、ステップd5の処理により、降着安全判定手段8は、まず、航空機降着画像認識手段7から降着態様として送られてきた降着位置(X,Y,Z)と既知の情報である滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)の関係ならびに既知の情報である滑走路10の全長に基づいて、滑走路10の有効滑走路長(降着位置から滑走路終端までの距離)を求める。
当然、降着位置(X,Y,Z)が滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)を超えて滑走路10に深く侵入していれば滑走路10の有効滑走路長は短くなり、また、降着位置(X,Y,Z)が滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)と略一致していれば、滑走路10の有効滑走路長は滑走路10の全長に等しくなる。
この実施形態では、前述した通り、航空機情報照合手段5側の処理により、機体2の機種情報に応じて、滑走路10が乾燥している場合、降雨によって濡れている場合、積雪による凍結の恐れがある場合で相異なる所要滑走路長の値が滑走路距離情報として送られてくるので、降着安全判定手段8は、航空機情報照合手段5から滑走路距離情報として送られてきた所要滑走路長と前述の有効滑走路長の大小関係を比較し、有効滑走路長が所要滑走路長と同等以上であればオーバーランは発生しないものと予測し、また、有効滑走路長が所要滑走路長よりも短ければオーバーランが発生するものと予測し、この予測結果を一時記憶する。
航空機情報照合手段5から送られてくる所要滑走路長のみに基づく予測処理は、機体2が降着する際に、定められた接地速度を守ることを前提としたものであるから、航空機降着画像認識手段7は機体2の降着位置のみを求めればよく、機体2の接地速度の算出は必須の要件とはならない(予測に使用しない接地速度を求めること自体に意味がないため)。
【0062】
また、滑走路距離情報記憶データベース11bに機種情報および滑走路10の環境に応じた所要滑走路長と機種情報および滑走路10の環境に応じた許容接地速度を記憶させるようにしてもよい。
この場合、ステップd5の処理において、降着安全判定手段8は、まず、航空機降着画像認識手段7から降着態様として送られてきた降着位置(X,Y,Z)と既知の情報である滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)の関係ならびに既知の情報である滑走路10の全長に基づいて、前記と同様にして滑走路10の有効滑走路長を求める。
この実施形態では、前述した通り、航空機情報照合手段5側の処理により、機体2の機種情報に応じて、滑走路10が乾燥している場合、降雨によって濡れている場合、積雪による凍結の恐れがある場合で相異なる所要滑走路長の値と許容接地速度の値が滑走路距離情報として送られてくるので、降着安全判定手段8は、航空機情報照合手段5から滑走路距離情報として送られてきた所要滑走路長と前述の有効滑走路長の大小関係を比較し、更に、航空機情報照合手段5から滑走路距離情報として送られてきた許容接地速度と航空機降着画像認識手段7から降着態様として送られてきた接地速度との大小関係を比較し、有効滑走路長が所要滑走路長と同等以上であって、且つ、接地速度が許容接地速度以下の場合に限ってオーバーランが発生しないものと予測し、それ以外の場合はオーバーランが発生するものと予測し、この予測結果を一時記憶する。
【0063】
また、滑走路距離情報記憶データベース11bに機種情報および滑走路10の環境に応じた逆推力装置,油圧車輪ブレーキ,スポイラー等のブレーキ装置の性能に関わるパラメータを記憶させるようにしてもよい。
但し、このうち環境である滑走路10の路面状況と直接的に関わるのは油圧車輪ブレーキの性能に関するパラメータであり、逆推力装置やスポイラー等の性能に関するパラメータは、専ら、路面状況と関わりのない制動力を求めるために必要とされるパラメータである(滑走路10上の風向きや風速あるいは温度差による気圧変化等を含めて環境を検出し、この環境に厳密に対処する場合には、逆推力装置やスポイラー等の性能も環境に応じて変更する必要のあるパラメータとなり得る)。
この場合、ステップd5の処理において、降着安全判定手段8は、まず、航空機降着画像認識手段7から降着態様として送られてきた降着位置(X,Y,Z)と既知の情報である滑走路10の侵入位置P0(X0,Y0,Z0)の関係ならびに既知の情報である滑走路10の全長に基づいて、前記と同様にして滑走路10の有効滑走路長を求める。
この実施形態では、前述した通り、航空機情報照合手段5側の処理により、機体2の機種情報に応じて、滑走路10が乾燥している場合、降雨によって濡れている場合、積雪による凍結の恐れがある場合で相異なるパラメータが滑走路距離情報として送られてくるので、降着安全判定手段8は、航空機情報照合手段5から滑走路距離情報として送られてきた逆推力装置,油圧車輪ブレーキ,スポイラー等のブレーキ装置の性能に関わるパラメータと航空機降着画像認識手段7から降着態様として送られてきた接地速度および前述の有効滑走路長に基づいて、有効滑走路長の範囲内で機体2に十分な制動が掛けられるか否かを判定し、有効滑走路長の範囲内で十分な制動が掛けられる場合にはオーバーランは発生しないものと予測し、有効滑走路長の範囲内で十分な制動が掛けられない場合にはオーバーランが発生するものと予測し、この予測結果を一時記憶する。
【0064】
次いで、降着安全判定手段8は、ステップd5の予測結果がオーバーランの発生に関わるものであるか否かを判定し(ステップd6)、オーバーランの発生が予測されている場合に限って、警報発生手段9に警報出力指令を出力して警報発生手段9を作動させ、現時点で降着安全判定手段8の不揮発性メモリに記憶されている機種情報、つまり、前述のステップd3の処理で不揮発性メモリに記憶された機種情報と共に、オーバーランの発生予測警報を出力させる(ステップd7)。
【0065】
警報発生手段9は、オーバーランの発生予測警報とオーバーランの対象となる機体2の機種を明確に地上要員に知らせる必要上、音声合成装置等を利用した音声警報器とディスプレイ装置を併用したものが望ましい。
また、この警報発生手段9は、管制室の他にもレスキュー隊の詰め所や消防要員の詰め所等に設置するとよい。
【0066】
更に、航空機情報照合手段5におけるステップb5の処理により、前述した滑走路距離情報および機種情報と共に、ステップb1で受信した機体識別信号を降着安全判定手段8に送信するようにし、降着安全判定手段8におけるステップd7の処理において、この機体識別信号を有する機体2に対してオーバーランの発生予測警報を送信するといったことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を適用した一実施形態の航空機降着オーバーラン予測装置の構成の概略について示した模式図である。
【図2】同実施形態の航空機降着オーバーラン予測装置について各種のデータの流れを含めて示した機能ブロック図である。
【図3】トランスポンダー信号解析手段として機能するコンピュータが降着状態にある機体の機体識別信号を特定するための処理の一例について概略を示したフローチャートである。
【図4】航空機情報照合手段として機能するコンピュータが降着状態にある機体の機体識別信号に基づいて当該機体に対応する機種情報と滑走路距離情報を求めるための処理の一例について概略を示したフローチャートである。
【図5】航空機降着画像認識手段として機能するコンピュータが機体の降着態様である降着位置と接地速度を求める際の処理の概略について示したフローチャートである。
【図6】降着安全判定手段として機能するコンピュータが航空機情報照合手段から送られる機種情報および滑走路距離情報と航空機降着画像認識手段から送られる降着位置および接地速度に基づいて当該機体におけるオーバーランの発生の有無を予測する際の処理の概略について示したフローチャートである。
【図7】機体毎の機体識別信号に対応させて各機体の現在位置Pnと各機体の過去位置Ppおよびトランスポンダー信号の最終受信時刻Tと該機体の移動方向を示すフラグF1の値を関連付けて記憶する識別信号記憶テーブルの構成を簡略化して示した概念図である。
【図8】機種データベースの一部を構成する識別信号記憶データベースの構成を簡略化して示した概念図である。
【図9】機種データベースの一部を構成する滑走路距離情報記憶データベースの構成を簡略化して示した概念図である。
【符号の説明】
【0068】
1 航空機降着オーバーラン予測装置(予測装置)
2 機体
3 トランスポンダー信号受信器
4 トランスポンダー信号解析手段
5 航空機情報照合手段
6 カメラ
7 航空機降着画像認識手段
8 降着安全判定手段
9 警報発生手段
10 滑走路
11 機種データベース
11a 識別信号記憶データベース(機種データベースの一部)
11b 滑走路距離情報記憶データベース(機種データベースの一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポンダー応答信号に含まれる機体識別信号と位置情報を受信し、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて降着状態にある機体の機体識別信号を特定するトランスポンダー信号解析手段と、
機体の機種毎に、当該機種に属する機体の機体識別信号と、当該機種の機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報とを記憶した機種データベースと、
前記トランスポンダー信号解析手段から受信した機体識別信号に基づいて前記機種データベースを検索し、当該機体識別信号に対応する機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求める航空機情報照合手段と、
降着する機体を撮像するカメラから送信される画像を解析して機体の降着態様を求める航空機降着画像認識手段と、
前記航空機情報照合手段から滑走距離の演算に関連する情報を受信し、該滑走距離の演算に関連する情報と前記航空機降着画像認識手段から受信した降着態様とに基づいてオーバーランの発生の有無を予測する降着安全判定手段と、
前記降着安全判定手段によってオーバーランの発生が予測されると、オーバーランの発生予測警報を少なくとも地上要員に向けて出力する警報発生手段とを備えたことを特徴とする航空機降着オーバーラン予測装置。
【請求項2】
トランスポンダー応答信号に含まれる機体識別信号と位置情報を受信し、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて降着状態にある機体の機体識別信号を特定するトランスポンダー信号解析手段と、
機体の機種毎に、当該機種に属する機体の機体識別信号と、当該機種の機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報とを記憶した機種データベースと、
前記トランスポンダー信号解析手段から受信した機体識別信号に基づいて前記機種データベースを検索し、当該機体識別信号に対応する機体の機種と、該機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求める航空機情報照合手段と、
降着する機体を撮像するカメラから送信される画像を解析して機体の降着態様を求める航空機降着画像認識手段と、
前記航空機情報照合手段から機体の機種と滑走距離の演算に関連する情報とを受信し、該滑走距離の演算に関連する情報と前記航空機降着画像認識手段から受信した降着態様とに基づいてオーバーランの発生の有無を予測する降着安全判定手段と、
前記降着安全判定手段によってオーバーランの発生が予測されると、オーバーランの発生予測警報を前記降着安全判定手段から受信した機体の機種と共に少なくとも地上要員に向けて出力する警報発生手段とを備えたことを特徴とする航空機降着オーバーラン予測装置。
【請求項3】
前記機種データベースには、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報として所要滑走路長が記憶され、
前記航空機降着画像認識手段は、降着態様として機体の降着位置を求め、
前記降着安全判定手段は、前記降着位置から求まる有効滑走路長と前記所要滑走路長とを比較してオーバーランの発生の有無を予測することを特徴とした請求項1または請求項2記載の航空機降着オーバーラン予測装置。
【請求項4】
前記機種データベースには、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報として各種のパラメータが記憶され、
前記航空機降着画像認識手段は、降着態様として機体の降着位置と接地速度を求め、
前記降着安全判定手段は、前記降着位置から求まる有効滑走路長と前記接地速度と前記パラメータとに基づいてオーバーランの発生の有無を予測することを特徴とした請求項1または請求項2記載の航空機降着オーバーラン予測装置。
【請求項5】
前記機種データベースには、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報が、機体の機種の分類の下で滑走路の環境に応じて場合分けして記憶され、
前記航空機情報照合手段は、機体の機種および該航空機情報照合手段に対して予め教示された滑走路の環境に応じて、機体の降着に必要とされる滑走距離の演算に関連する情報を求めることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3または請求項4記載の航空機降着オーバーラン予測装置。
【請求項6】
前記トランスポンダー信号解析手段は、各機体識別信号毎の位置情報の時系列的な変化に基づいて各機体の移動方向が滑走路に接近する方向であるのか離間する方向であるのかを求め、移動方向が滑走路に接近する方向である機体のうち滑走路に直近する機体の機体識別信号を降着状態にある機体の機体識別信号として特定することを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5記載の航空機降着オーバーラン予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−1295(P2008−1295A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174552(P2006−174552)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000232173)日本電気ロボットエンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】