説明

舶用主機タービンの継手構造

【課題】 舶用の主機タービンにおける継手部において、接触部におけるフレッチング等に対する耐久力を高めることができる継手構造を提供すること。
【解決手段】 舶用の主機タービンにおけるタービンロータ軸53と減速機ピニオン軸71とを連結するタービン継手1の継手構造27を、前記タービン継手1の継手軸5と前記タービンロータ軸53との接触部18の表面に、それぞれ所定厚のコバルト基合金の盛り金23,24を具備しているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用の主機タービンにおける継手部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舶用の主機関として蒸気タービンが採用されるものがある。例えば、LNG運搬船の場合には、航海中において運搬するガスから発生するボイルオフガス(Boil Off Gas)をボイラで燃焼させ、そのボイラの蒸気で駆動する蒸気タービンが主機関(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「主機タービン」という)として採用されている。
【0003】
このような舶用の主機タービンには、蒸気タービンのタービンロータ軸とプロペラ軸を駆動する減速機のピニオン軸との間の動力伝達にタービン継手が採用されている。このタービン継手は、タービンロータ軸と減速機ピニオン軸との間で芯ずれ等を吸収する撓み継手にもなっている。
【0004】
図6は、従来の舶用主機タービンとタービン継手とを模式的に示す全体図である。この図では、主機タービンを縦断面して示している。図示する右側が船首側であり、左側が船尾側である。船尾側に設けられる減速機やプロペラ軸等の構成は、記載を省略している。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、タービン継手の入力側であるタービンロータ軸53側を上流側、出力側である減速機ピニオン軸71側を下流側という。
【0005】
図示するように、主機タービン51には複数段のタービン翼52が設けられ、これらのタービン翼52によって回転させられるタービンロータ軸53が軸受59によって支持されている。このタービンロータ軸53には、船尾側に接続フランジ54が設けられている。タービンロータ軸53と減速機ピニオン軸71との間にはタービン継手61が設けられ、上記接続フランジ54はこのタービン継手61の上流側にあるスプラインフランジ62とボルト63で連結されている。タービン継手61の下流側は減速機ピニオン軸71の接続フランジ72とボルト63で連結されている。これら主機タービン51、タービン継手61は、運転時にはカバー55,56,64で覆われており、保守点検時にこれらのカバー55,56,64が取外されて分解・点検等が行われる。なお、主機タービン51の詳細な説明は省略する。
【0006】
図7は、図6に示すVII部の舶用主機タービンにおける継手構造の縦断面図であり、図8は、図7に示すVIII部拡大図である。図7に示すように、上記スプラインフランジ62の内周には外側スプライン66が形成されており、タービン継手61の継手軸65の端部には、この外側スプライン66に係合する内側スプライン67が形成されている。これら外側スプライン66と内側スプライン67とによってスプライン部68が構成されており、このスプライン部68により、継手軸65は軸方向のスライドが許容された状態で周方向の回転動力を伝達するようになっている。このようなスプライン部68により、タービンロータ軸53や減速機ピニオン軸71における熱膨張等をタービン継手61部で吸収している。
【0007】
図8に示すように、このタービン継手61とタービンロータ軸53との接触部57は、継手軸65の軸芯位置に上流側接触片69が設けられ、タービンロータ軸53側の軸芯位置に設けられた中心栓58とこの上流側接触片69とが接触するようになっている。上流側接触片69の表面は球面に形成され、中心栓58の表面は平面に形成され、これらは点接触によって接触している。一般的に、これら上流側接触片69と中心栓58との接触部57の表面は、焼入れ・焼戻し等の処理が施されて表面硬度が上げられている。
【0008】
なお、この種の蒸気タービンに関する従来技術として、タービン動翼のシュラウドカバーとの接触面にコバルト基合金の溶接材を肉盛り溶接することにより、長期間安定的に使用し得るタービン翼とそれを備えた蒸気タービンを提供しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、他の従来技術として、蒸気タービン部材の表面処理として、高硬度セラミックス粉末を金属バインダとともに肉盛り溶接するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−336502号公報
【特許文献2】特開平4−224207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記したような主機タービン51は、数年毎に定期検査が行われ、その定期検査時に各部の点検が行われる。上記したように、タービン継手61の両端部は、上流側はタービンロータ軸53と接触し、下流側は減速機ピニオン軸71と接触した状態で共に回転して動力を伝達しているので、これらの接触部にすべり等を生じることがない構造となっている。
【0011】
しかしながら、船舶のタービン継手61の場合、船体動揺等によってタービンロータ軸53との接触部に微少なすべりを生じ、経年使用によりこの接触部にフレッチング(一種の腐食摩耗)を生じることがある。このフレッチングによる摩耗を生じると、その磨耗した摩耗粉が更に摩耗を促進させ、上流側接触片69の球面による点接触が面接触になり、接触部における抵抗を増加させる。しかも、摩耗が進むと大きな面での接触によってタービン継手61が撓み継手の機能を失うおそれもある。
【0012】
そのため、蒸気タービンの定期検査時にはタービン継手61の両端部の接触部も検査されるが、タービン継手61の両端部を検査するには、主機タービン51の構成部品を多く分解しなければならず、重量物(例えば、数トン)が多い主機タービン51側の構成部品を分解し、移動させるには非常に多くの時間と労力を要する。特に、タービンロータ軸53を分解するには軸受59の部分を分解しなければならず、更に多くの時間と労力を要する。
【0013】
また、上記したように、タービン継手61の継手軸65とタービンロータ軸53との接触部57である上流側接触片69と中心栓58の表面には焼入れ・焼戻し等の表面処理が施されて硬度が高くなっているが、上記定期検査時にフレッチングによる摩耗が発見される場合が多い。しかも、船舶によっては定期検査の度(例えば、2.5年毎)にフレッチングによる摩耗が発見される場合がある。この摩耗は、上記したように磨耗した摩耗粉が更に摩耗を促進させることによるものと考えられる。
【0014】
そして、このフレッチングによる摩耗が発見された場合には、上記したように分解、交換、組立等の作業に多くの時間と労力を要して行わなければならず、保守点検作業に多くの時間と労力を要してしまう。そのため、タービン継手の両端部における接触部のフレッチングによる摩耗を長期間防止できる継手構造が切望されている。
【0015】
なお、上記特許文献1,2に記載された発明は、タービン翼の摩耗を防止しようとするものであり、本発明のように舶用主機タービンの継手における接触部のフレッチングを防止できるものではない。
【0016】
そこで、本発明は、舶用の主機タービンにおける継手部において、接触部におけるフレッチング等に対する耐久力を高めることができる継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、舶用の主機タービンにおけるタービンロータ軸と減速機ピニオン軸とを連結するタービン継手の継手構造であって、前記タービン継手の継手軸と前記タービンロータ軸との接触部の表面に、それぞれ所定厚のコバルト基合金の盛り金を具備していることを特徴とする。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「コバルト基合金の盛り金」は、例えば、ステライト(R)の溶接材による肉盛り溶接等の盛り金をいう。これにより、タービンロータ軸と継手軸との接触部ではコバルト基合金の盛り金が接触するので、これらの接触部のフレッチング等による摩耗進行に対する耐久力を大幅に高めることができ、保守点検時における部品交換等の期間を延して、保守点検に要する時間と労力を大幅に軽減することができる。
【0018】
また、前記接触部のタービンロータ軸端部の軸芯位置に、表面が平面の取外し可能な中心栓を有し、前記接触部の継手軸端部の軸芯位置に、表面が突出する球面の取外し可能な接触片を有し、該接触片と前記中心栓との接触部の表面に前記盛り金を具備しているようにしてもよい。これにより、接触部の耐久力を大幅に高めることができると共に、保守点検時に中心栓と接触片とを交換すれば接触部の摩耗分を元に戻すことができ、保守点検に要する時間と労力の軽減と、効率の良い作業を行うことができる。このことは、例えば、上記したように2.5年に1回の割合で定期検査(保守点検)のためにドックに入る船舶の場合、中心栓と接触片とを5年に1回の割合で交換すればよくなるので、1回の交換に要する時間約200時間程度を削減できる。
【0019】
しかも、前記継手軸の端部に中央が突出する球面部を設け、該球面部に、球面部の軸方向高さと等しい厚さの盛り金を具備させてもよい。これにより、球面部で形成した継手軸の端部とタービンロータ軸との接触を長期間ほぼ点接触の状態とすることができ、接触部における摩擦抵抗を極力小さくすることができる。
【0020】
さらに、前記タービンロータ軸の接触部が具備する盛り金を、前記継手軸の球面部が具備する盛り金の厚さと等しい厚さにしてもよい。これにより、タービンロータ軸と継手軸との接触部における摩耗進行量を同等にでき、タービンロータ軸と継手軸との接触部における寿命を同等にすることができる。
【0021】
また、前記タービン継手と減速機ピニオン軸との間に、該減速機ピニオン軸と接触して前記継手軸を前記タービンロータ軸側に付勢する付勢部を備え、該付勢部に、前記減速機ピニオン軸と接触する接触部材と、該接触部材を継手軸側から減速機ピニオン軸側に付勢する付勢部材とを具備してもよい。これにより、継手軸をタービンロータ軸側に所定の力で付勢することができ、タービンロータ軸と継手軸との接触部における接触圧力を駆動動力等に適した圧力として、接触部におけるすべりによる摩耗を抑えることができる。
【0022】
さらに、前記接触部材と前記減速機ピニオン軸との接触部の表面に、それぞれ所定厚さのコバルト基合金の盛り金を具備していてもよい。これにより、継手軸と減速機ピニオン軸との接触部においても、フレッチング等による摩耗進行に対する耐久力を大幅に高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上説明したような手段により、舶用主機タービンのタービン継手部における接触部の摩耗進行に対する耐久力を大幅に高めることができ、部品交換期間等を長くして舶用主機タービンの保守点検作業に要する労力と時間を大幅に軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る舶用主機タービンの継手構造を示す縦断面図であり、図2は、図1に示すII部拡大図、図3は、図2に示す上流側接触片と中心栓とを分解した拡大図である。なお、上述した図6,7に示すタービンロータ軸53と減速機ピニオン軸71とに関する構成で同一の構成には、上述した符号と同一の符号を付して説明する。また、これらの図では、円形の軸を半断面して示している。
【0025】
図1に示すように、タービン継手1は、上流側にはタービンロータ軸53が連結され、下流側には減速機ピニオン軸71が連結された状態で設けられる。このタービン継手1の上流側には、タービンロータ軸53の接続フランジ54と連結されるスプラインフランジ2が設けられ、下流側には、減速機ピニオン軸71の接続フランジ72と連結されるスプラインフランジ3が設けられている。これらのスプラインフランジ2,3は、両接続フランジ54,72とボルト4で連結されている。
【0026】
また、このタービン継手1の継手軸5には、上流側に上記スプラインフランジ2の内周に形成された外側スプライン6と係合する内側スプライン7が形成され、下流側に上記スプラインフランジ3の内周に形成された外側スプライン6と係合する内側スプライン7が形成されている。これら外側スプライン6と内側スプライン7とからなるスプライン部8によって、継手軸5とタービンロータ軸53及び減速機ピニオン軸71とが係合している。これにより、継手軸5の軸方向スライドをスプライン部8で許容しつつ、回転動力を伝達している。スプラインフランジ2,3には、内側スプライン7の軸方向移動を所定位置で係止する係止爪9がそれぞれ設けられている。
【0027】
さらに、この継手軸5は、軸方向長さがタービンロータ軸53と減速機ピニオン軸71との間の間隔Lよりも短く形成されており、タービンロータ軸53と減速機ピニオン軸71との間に所定の隙間Sが設けられている。この継手軸5の上流側には、軸芯位置に上流側接触片10が設けられ、この上流側接触片10がタービンロータ軸53の軸芯位置に設けられた中心栓20と接触している。中心栓20の詳細は,後述する。この上流側接触片10は、継手軸5の軸芯位置に形成された挿入穴11内に設けられている。
【0028】
一方、継手軸5の下流側には、軸芯位置に下流側接触片12が設けられ、この下流側接触片12が減速機ピニオン軸71と接触している。この下流側接触片12は、継手軸5の下流側端部に設けられた案内部材13のスライド穴14内で軸方向にスライド可能なように設けられている。下流側接触片12は継手軸5側が開放し、減速機ピニオン軸71側が閉鎖された筒状に形成されている。この下流側接触片12と案内部材13との間には、下流側接触片12を減速機ピニオン軸71側に付勢する付勢部材たるスプリング15が設けられている。このスプリング15によって下流側接触片12を減速機ピニオン軸71側に付勢することにより、その反力で案内部材13を介して継手軸5がタービンロータ軸53側に付勢され、継手軸5の上流側軸芯位置に設けられた上流側接触片10がタービンロータ軸53の中心栓20に押付けられている。この下流側接触片12とスプリング15とを備えた部分が、減速機ピニオン軸71と継手軸5との間に設けられて、この継手軸5をタービンロータ軸53側に付勢する付勢部16である。このように、継手軸5をタービンロータ軸53側に付勢することにより、継手軸5が動力伝達時に容易に軸方向に移動するのを抑止している。この継手軸5の付勢力は、上記スプリング15のバネ力によって設定される。
【0029】
図2に基いて、継手軸5の上流側における接触部18を詳細に説明する。上記タービンロータ軸53の軸芯位置には挿入穴19が設けられ、この挿入穴19内に中心栓20が設けられている。この中心栓20は、挿入穴19内に焼きばめ等で固定されている。この中心栓20の下流側端面は、タービンロータ軸53の下流側端面とほぼ同一面となるように設けられている。
【0030】
一方、継手軸5の軸芯位置に設けられた上流側接触片10は、継手軸5に設けられた挿入穴11に挿入される大径の基部21と、この基部21の中心部からタービンロータ軸53側に突出する突出部22とを有している。挿入穴11に挿入された基部21は、タービンロータ軸53側が継手軸5の上流側端面と同一面となっており、上記挿入穴11内に焼きばめ等で固定されている。また、突出部22は、上記中心栓20とほぼ同じ外径で形成され、中心栓20側に所定高さで突出している。この上流側接触片10の表面は球面に形成され、上記中心栓20の表面は平面に形成されており、これらの接触部18は点接触となっている。
【0031】
そして、上記タービンロータ軸53側の中心栓20と、継手軸5側の上流側接触片10との接触部18に、それぞれコバルト基合金の盛り金23,24が具備されている。このコバルト基合金の盛り金23,24は、例えば、ステライト(R)が用いられ、その溶接材による肉盛り溶接等によって具備される。盛り金23,24としては、軸芯を中心に所定の円形に形成される。このようにコバルト基合金の盛り金23,24が具備された接触部18では、非常に耐摩耗性の高いコバルト基合金の盛り金23,24が接触する構造となる。
【0032】
図3に示すように、この実施の形態では、上記コバルト基合金系の盛り金23,24が、上流側接触片10の突出部22に形成された球面部25の軸方向高さh(軸方向寸法)とほぼ同等の厚さtで形成されている。盛り金23,24をこのような厚さtとすることにより、継手軸5の上流側接触片10における盛り金24と、タービンロータ軸53の中心栓20における盛り金23とが同等に摩耗して、これら上流側接触片10と中心栓20とが面接触するような摩耗量となるまでコバルト基合金の盛り金23,24による接触を保つことができる。この実施の形態では、両方の盛り金23,24を厚さtとしているが、少なくとも盛り金24を厚さtとすることにより、球面部25が磨耗して面接触となるのを効果的に抑止することができる。この場合、中心栓20側の盛り金23はより厚くなる。
【0033】
また、この実施の形態では、継手軸5の上流側における上流側接触片10とタービンロータ軸53の中心栓20との間の接触部18にコバルト基合金系の盛り金23,24を具備させる例を説明したが、継手軸5の下流側における下流側接触片12と減速機ピニオン軸71との接触部にもコバルト基合金系の盛り金を具備させてもよく、タービン継手1の構成に応じて適宜採用すればよく、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0034】
図4は、本発明に係る継手構造の効果を確認するための試験装置を示す模式図であり、図5は、図4に示す試験装置による試験結果を示すグラフである。図4に示す試験装置31は、台座32の上部に下試験片33を保持する移動体34がスプリング等の弾性部材35で支持され、その移動体34の上部に上試験片36を上下動可能に保持する保持体37が設けられている。この保持体37の上部には、一端(図示する左端)が台座32の支持ブロック38に揺動可能に支持され、他端(図の右端)に所定の錘39が設けられるアーム40が設けられている。このアーム40に設けられる錘39により、アーム40の押圧部41によって保持体37が下向きに押圧されている。保持体37を下向きに押圧することにより、保持体37に保持された上試験片36を下試験片33に所定の押圧力で押すようにしている。上試験片36には、下向きに突起部42が設けられており、この突起部42が下試験片33に押圧されている。この突起部42と下試験片33との接触部が摩耗試験部である。
【0035】
さらに、移動体34には横方向に作動部材43が設けられており、この作動部材43は偏心軸付き電動機45を駆動することによりカム44で直線運動させられるようになっている。この作動部材43をカム44の偏心量で直線運動させることにより、移動体34が下試験片33を水平移動させ、保持体37に保持された上試験片36の突起部42との接触部にすべりを生じさせる。この例では、接触部荷重を47kgf/mm2 、カム44によって作動部材43を直線運動させる振幅を20μm、試験時間を2時間としている。
【0036】
図6に示すように、上記図5に示す試験装置31による試験結果としては、試験1に示すように、従来技術である上試験片36に対する表面焼入れと、下試験片33に対する表面焼鈍しとを行った場合の摩耗量を「1」とすると、試験2に示すように、本発明のタービン継手構造27のようにコバルト基合金の盛り金23,24を上試験片36と下試験片33とに具備させれば、摩耗粉の発生も非常に少なく摩耗量が「約0.3」となる。したがって、本発明のタービン継手構造27によれば従来技術に比べて約3倍の耐摩耗性を発揮するといえる。また、摩耗粉の発生も非常に少ないので、その摩耗粉による摩耗促進もないといえる。
【0037】
以上のように、上記タービン継手構造27によれば、継手軸5の上流側接触片10とタービンロータ軸53の中心栓20との接触部18におけるフレッチングによる摩耗進行に対して耐久力を大幅に高めることができるので、主機タービン51(図6)の保守点検時等における、タービン継手1との接触部18における上流側接触片10や中心栓20等の交換期間を長くすることができ、保守点検時の労力と時間を大幅に軽減することが可能となる。
【0038】
なお、上記コバルト基合金の盛り金23,24の種類は、使用条件等に応じて適した種類を採用すればよく、例えば、上記ステライト(R)を採用する場合でも、そのクラスは使用条件等に応じて決定すればよい。
【0039】
さらに、前述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る舶用主機タービンの継手構造は、軸方向に接触する接触部を有し、回転力を伝達するる継手構造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係る舶用主機タービンの継手構造を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すII部拡大図である。
【図3】図2に示す上流側接触片と中心栓とを分解した拡大図である。
【図4】本発明に係る継手構造の効果を確認するための試験装置を示す模式図である。
【図5】図4に示す試験装置による試験結果を示すグラフである。
【図6】従来の舶用主機タービンとタービン継手とを模式的に示す全体図である。
【図7】図6に示すVII部の舶用主機タービンにおける継手構造の縦断面図である。
【図8】図7に示すVIII部拡大図である。
【符号の説明】
【0042】
1…タービン継手
5…継手軸
8…スプライン部
10…上流側接触片
12…下流側接触片
13…案内部材
15…スプリング
16…付勢部
18…接触部
20…中心栓
22…突出部
23,24…盛り金
25…球面部
27…タービン継手構造
h…軸方向高さ
t…厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用の主機タービンにおけるタービンロータ軸と減速機ピニオン軸とを連結するタービン継手の継手構造であって、
前記タービン継手の継手軸と前記タービンロータ軸との接触部の表面に、それぞれ所定厚のコバルト基合金の盛り金を具備していることを特徴とする舶用主機タービンの継手構造。
【請求項2】
前記接触部のタービンロータ軸端部の軸芯位置に、表面が平面の取外し可能な中心栓を有し、
前記接触部の継手軸端部の軸芯位置に、表面が突出する球面の取外し可能な接触片を有し、
該接触片と前記中心栓との接触部の表面に前記盛り金を具備している請求項1に記載の舶用主機タービンの継手構造。
【請求項3】
前記継手軸の端部に中央が突出する球面部を設け、該球面部に、球面部の軸方向高さと等しい厚さの盛り金を具備させた請求項1又は請求項2に記載の舶用主機タービンの継手構造。
【請求項4】
前記タービンロータ軸の接触部が具備する盛り金を、前記継手軸の球面部が具備する盛り金の厚さと等しい厚さにした請求項3に記載の舶用主機タービンの継手構造。
【請求項5】
前記タービン継手と減速機ピニオン軸との間に、該減速機ピニオン軸と接触して前記継手軸を前記タービンロータ軸側に付勢する付勢部を備え、
該付勢部に、前記減速機ピニオン軸と接触する接触部材と、該接触部材を継手軸側から減速機ピニオン軸側に付勢する付勢部材とを具備している請求項1〜4のいずれか1項に記載の舶用主機タービンの継手構造。
【請求項6】
前記接触部材と前記減速機ピニオン軸との接触部の表面に、それぞれ所定厚さのコバルト基合金の盛り金を具備している請求項5に記載の舶用主機タービンの継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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