説明

船体振動を利用した発電装置

【課題】船体の節振動を利用して安定した電力を生じさせる。
【解決手段】船体1が節振動する船舶における節振動の節以外の振幅発生部100A,100B,100Cに、弾性支持装置6により船体1の節振動に共振するように支持された振動体4と、振動体4の移動エネルギを電気エネルギに変換する誘導発電機8とからなる発電ユニット9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体の節振動を利用して安定した電力を生じさせるようにした船体振動を利用した発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、船舶から排出されるCO2の排出削減の要求が強くなってきており、このために、従来から船舶の船内電力を確保するために搭載されているディーゼル発電機のようなカーボン系燃料を利用した発電装置に代わるエネルギ源が求められている。この要求を実現する手段として既知のものとしては、太陽電池、風力発電、波力発電(船体運動利用)等が考えられている。
【0003】
太陽電池及び風力発電は、装置が大型となるために船舶に設置する際のスペース上の問題があり、又、航行する船舶の推進の抵抗となる問題があり、更に、強風に対する安全性を図る必要があるといった問題があるため、実用化は難しい。
【0004】
又、波力発電としては、ダクト内の波面の上下動により空気流を作り出しタービンを回す方法が知られている。しかしながら、この方法は変換効率が低い上に、ダクト端部が航行する船舶の推進の抵抗になるという欠点があった。
【0005】
一方、波の振動数にばねで支持した重量物を共振させ、その移動エネルギを電気エネルギに変換する機構を備えた装置が特許文献1に示されている。
【特許文献1】再公表特許W2005/040603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示す装置は、波が発生する海域に設置するようにしたものであり、比較的効率の良い発電が可能である。
【0007】
しかし、例えば特許文献1に示す装置を外洋を航海する船舶に搭載した場合には、平均的な波周期、即ち波による船体運動の周期は5秒〜20秒のように比較的長く、しかも不規則であるために、次のような問題が生じる。
【0008】
船体運動の周期は比較的長いために、これに同調させて所要の発電を行わせるためには非常に大きな重量物、非常に緩いばねが必要となるため、装置が大型化して船体に対する設置上の問題が生じる。又、大きな重量物を備えるために、荒天遭遇時の大波高中を航行するには、安全のために重量物を固定しておくための機構が必要となる。
【0009】
船体運動は定常的な周期運動でなく不規則な運動であるため、特定の周期に共振するように設計された重量物では共振による効果的な発電が行われ難い。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、船体の節振動を利用して安定した電力を生じさせるようにした船体振動を利用した発電装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、船体が節振動する船舶における節振動の節以外の振幅発生部に、弾性支持装置により船体の節振動に共振するように支持された振動体と、該振動体の移動エネルギを電気エネルギに変換する誘導発電機とからなる発電ユニットを備えたことを特徴とする船体振動を利用した発電装置、に係るものである。
【0012】
上記船体振動を利用した発電装置において、前記船舶がコンテナ船であることは好ましい。
【0013】
上記船体振動を利用した発電装置において、前記船舶が冷凍コンテナ船であることは好ましい。
【0014】
又、上記船体振動を利用した発電装置において、前記発電ユニットがコンテナ内に収容されていることは好ましい。
【0015】
又、上記船体振動を利用した発電装置において、前記誘導発電機に接続した充電装置を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の船体振動を利用した発電装置によれば、船体が節振動する船舶における節振動の節以外の振幅発生部に、弾性支持装置により船体の節振動に共振するように支持された振動体と、該振動体の移動エネルギを電気エネルギに変換する誘導発電機とからなる発電ユニットを備えたので、比較的短く且つ安定した周期で生じる船体の節変動を利用して安定した電力を発生できるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
又、比較的短く且つ安定した周期で生じる船体の節変動を利用して発電する発電ユニットは小型の装置とすることができ、よって、船舶の要求電力に応じて発電ユニットの設置台数を容易且つ任意に変更できる効果がある。
【0018】
大型化が著しいコンテナ船では、安定した節振動が発生するため、この節振動を利用して有効に発電し船内電力を供給できる効果がある。
【0019】
冷凍コンテナ船では、船内電力の他に冷凍用電力を供給できる効果がある。
【0020】
発電ユニットをコンテナ内に収容すると、発電ユニットが収容されたコンテナを船舶に積み込むことで船舶の要求電力の増減に対して容易に対応できる効果がある。
【0021】
誘導発電機に接続した充電装置を備えておくと、船内電力の要求量の変動に対応できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明を適用する船舶の一例としてのコンテナ船の側面図、図2は前記船舶に適用する本発明の発電装置の一例を示す概略構成図である。
【0024】
近年の船舶、特にコンテナ船のように大型化が著しい船舶では、船体のホイッピング現象(大波高等によって船体全体が大きく振動する現象)やスプリンギング現象(短い波によって船体が高周期で振動する現象)が従来に増して顕著になってきている。
【0025】
大型のコンテナ船等に生じるこのような現象は、図1に示すように船体1に対して2節〜3節の節振動を誘起する。図1は最も低次である2つの節2a,2bをもった2節振動を示しており、節2a,2bの位置では振動は起こらず、この節2a,2bを支点として、節2a,2b以外の船体1の長手方向中間部100Aと、船首部100Bと、船尾部100Cにおいて大きな振幅で上下動する振動が発生する。従って、前記長手方向中間部100A、船首部100B、船尾部100Cは振幅発生部である。
【0026】
図1では2つの節2a,2bを有する低次の2節振動の場合を示しているが、節が船体の前後と中間部の3個所にある3節振動においても、上記2節振動と同様に節の相互間と船首部と船尾部とに振幅発生部が生じる。
【0027】
上記節振動は、船にもよるが、一般におよそ0.5秒〜2秒程度と比較的短い船に固有の周期を有しており、このような節振動は波の高さ等に関係なく定常的に安定して発生している。又、上記節振動による振幅発生部100A,100B,100Cの上下方向の振幅も安定して発生している。尚、図1中の3は船体1に積載されたコンテナである。
【0028】
そこで、船体1の節振動による振幅発生部100A,100B,100Cに設置することにより、振幅発生部100A,100B,100Cの上下の振動を利用して発電を行うようにした発電装置を図2のように構成する。
【0029】
図2に示す発電装置は、重りである振動体4と、該振動体4を弾力的に上下動可能に支持するように台5上に設けたばね・減衰系からなる弾性支持装置6と、前記振動体4の上下に移動を案内するガイド部材7と、前記振動体4と台5との間に備えて振動体4の移動エネルギを電気エネルギに変換する誘導発電機8とからなる発電ユニット9を構成している。
【0030】
又、図2においては、前記誘導発電機8に接続された充電装置10を台5上に設置している。
【0031】
前記ばね・減衰系からなる弾性支持装置6としては、空気ばね或いは機械的なスプリングばね等を用いることができる。
【0032】
又、前記誘導発電機8は、台5に固定された磁石11と、前記振動体4に固定されて上下動により磁石11の磁力線を横切ることによって発電を行うコイル12(界磁巻線)とから構成されている。
【0033】
尚、発電ユニット9は、船体1の節振動を起振源として発電を行うようにしており、振幅発生部100A,100B,100Cが上下動する周期は船による固有周期であるため、船体の振幅発生部100A,100B,100Cと共振するように振動体4及びばね・減衰系の弾性支持装置6を設計することは容易である。更に、振動の周期は0.5秒〜2秒程度と短く、しかも安定した振動であるために、重量が小さい振動体4でも発電をすることができ、よって発電ユニット9は小型なものとすることができる。
【0034】
そして、前記発電ユニット9は、船舶の要求電力に応じた必要数を、図1に示すように、船体1の振幅発生部100A,100B,100Cの甲板上或いは船体内の開いているスペースに配置し、図2に示すように台5をボルト13等により船体1に固定する。発電ユニット9は任意の振幅発生部100A,100B,100Cに対して任意数設置することができる。
【0035】
前記発電ユニット9を船体1に設置する他の方法としては、図3に示すように、任意数の発電ユニット9をコンテナ3内に収容しておき、発電ユニット9が収容されたコンテナ3を船体1に積み込むことで設置するようにしてもよい。
【0036】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0037】
図2に示した発電ユニット9を、図1の船体1の節振動による振幅発生部100A,100B,100Cに設置する。船舶が航行すると船体1は節振動を起こし、この節振動によって振幅発生部100A,100B,100Cが上下動する。すると、振幅発生部100A,100B,100Cの上下動に振動体4が共振して上下動するため、振動体4の移動エネルギが誘導発電機8によって電気エネルギに変換されて電力が発生する。この時、前記節振動は周期が0.5秒〜2秒程度と短く、しかも常時安定して生じているため、船体1の節変動を利用することにより安定した発電を行うことができる。
【0038】
又、上記したように、周期が比較的短く且つ安定して生じる船体1の節変動を利用して発電する発電ユニット9は小型の装置とすることができるため、小型の発電ユニット9は船舶の要求電力に応じて設置台数を容易且つ任意に変更することができる。
【0039】
一方、前記したように、船体の振幅発生部100A,100B,100Cに発電ユニット9を設置することによって、副次的な効果として、発電ユニット9が船体振動そのものに対する動吸振器として作用し、船体振動を低減する効果を発揮することができる。これは、乗り心地の向上のみならず、船体梁としての強度や疲労強度の改善に寄与する。
【0040】
即ち、船体中央部である振幅発生部100Aは、2節振動の腹の位置であり、この位置に発電ユニット9を設置した場合には、発電ユニット9が船体1のサギング(船が下方にそる状態)による縦曲げモーメントを発生させることができる。コンテナ船は一般にホギング(船が上方にそる状態)の縦曲げモーメントに対して厳しい状況にあり、この制約によってコンテナの積み付け個数も決まってしまうことがあるため、サギングモーメント付与による曲げモーメントの緩和によって、コンテナの積み個数増、性能改善も図ることができる。
【0041】
前記発電ユニット9を船体1に設置する際に、図3に示すように、任意数の発電ユニット9をコンテナ3内に収容しておくようにすると、船内電力の要求量が変動した場合に、発電ユニット9が収容されたコンテナ3を船体1に積み込むことで容易に対応することができる。
【0042】
大型化が著しいコンテナ船においては、安定した節振動を生じるため、この節振動を利用して発電ユニット9により発電することで、船内電力を有効に供給することができる。又、冷凍コンテナ船では、船内電力の他に冷凍用電力の一部を供給することができる。
【0043】
又、発電ユニット9に充電装置10を接続して蓄電するようにすると、船内電力の要求量が変動した場合にも容易に対応することができる。充電装置10は夫々の発電ユニット9と一体に備えるようにしてもよいが、充電装置10を発電ユニット9とは別の位置に配置するようにしてもよい。
【0044】
尚、上記形態では発電ユニットをコンテナ船に適用した場合について例示したが、節振動を生じる船舶であれは種々の船舶に適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を適用する船舶の一例としてのコンテナ船の側面図である。
【図2】本発明の発電装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】コンテナ内に発電ユニットを収容した例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 船体
2a,2b 節
3 コンテナ
4 振動体
6 弾性支持装置
8 誘導発電機
9 発電ユニット
10 充電装置
100A 長手方向中間部(振幅発生部)
100B 船首部(振幅発生部)
100C 船尾部(振幅発生部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体が節振動する船舶における節振動の節以外の振幅発生部に、弾性支持装置により船体の節振動に共振するように支持された振動体と、該振動体の移動エネルギを電気エネルギに変換する誘導発電機とからなる発電ユニットを備えたことを特徴とする船体振動を利用した発電装置。
【請求項2】
前記船舶がコンテナ船である請求項1に記載の船体振動を利用した発電装置。
【請求項3】
前記船舶が冷凍コンテナ船である請求項2に記載の船体振動を利用した発電装置。
【請求項4】
前記発電ユニットがコンテナ内に収容されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の船体振動を利用した発電装置。
【請求項5】
前記誘導発電機に接続した充電装置を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の船体振動を利用した発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132112(P2010−132112A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309348(P2008−309348)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】