説明

船外機

【課題】左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機を提供することを課題とする。
【解決手段】船外機10は、フレーム後端に設けられ駆動装置を支持するケース体30と、ケース体30の左端に設けられ浮力体41の一部を覆うカバー体50と、ケース体30の右端に設けられ浮力体61の一部を覆うカバー体70と、ケース体30に設けられ浮力体41の体積を自在に変える体積可変装置80と、ケース体30に設けられ浮力体61の体積を自在に変える体積可変装置100とを備えている。
【効果】運搬時に浮力体41、61の体積を小さくすることができる。その結果、船外機10の運搬性を高めることができる。したがって、左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上乗り物に推進力を与え、水上乗り物の進行方向に対して左右に浮力体が設けられている船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、一般にサーフボードやボート等の水上乗り物の後端に水上乗り物の幅方向に揺動自在に取り付けられている。水上で水上乗り物に乗った乗員が自身の体重を水上乗り物の幅方向に移動させ、遊戯的な運動を楽しむためには、船外機の姿勢を安定させることが必要となる。
【0003】
従来、姿勢の安定化対策を施した船外機として浮力体を装備した船外機が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の技術の基本構成を説明する図であり、船外機200は、水上乗り物201の後端に揺動自在に設けた揺動部材202にブラケット203を介して連結されエンジンや推進軸等を収納しているケース204と、このケース204の下端部に設けられギヤを収納しているギヤケース205と、このギヤケース205に収納したプロペラ軸に取り付けられているプロペラ206と、ケース204の上端に設けられエンジン等を覆っているエンジンカバー207と、揺動部材202の両端から水上乗り物201の進行方向に対して左右に延ばした支持部材208、209に設けられ浮力を作用させる浮力体211、212とで構成される。
【0005】
水上で乗員が水上乗り物201に乗って船外機200を運転している状態で、乗員が水上乗り物201の幅方向に体重を移動させても、船外機200は左右に浮力体211、212を備えているので、乗員は遊戯的な運動を心地よく楽しむことができる。
【0006】
ところで、特許文献1の船外機200は、左右に浮力体211、212が出っ張るように設けられているので、陸上での運搬等の作業時に邪魔になることがある。これでは、作業性を悪化させる虞がある。
【0007】
そのため、左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−280625公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、水上乗り物に推進力を与え、前記水上乗り物の進行方向に対して左右に浮力体が設けられている船外機であって、この船外機は、前記水上乗り物の後端に設けられプロペラ軸を含めた駆動装置を支持するケース体と、このケース体に取り付けられ前記浮力体の一部を覆うカバー体と、前記ケース体に設けられ前記浮力体の体積を自在に変える体積可変装置とを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、浮力体は、体積可変装置によって体積が最大になるとき、ケース体の外部に張り出すように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、浮力体は、体積可変装置によって体積が最小になるとき、カバー体で形成される空間内に納まるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、浮力体の体積を自在に変える体積可変装置を備えているので、運搬時に浮力体の体積を小さくすることができる。その結果、船外機の運搬性を高めることができる。
請求項1によれば、左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機を提供することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、浮力体は、体積可変装置によって体積が最大になるとき、ケース体の外部に張り出すように構成されているので、船外機に大きな浮力を与えることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、浮力体は、体積可変装置によって体積が最小になるとき、カバー体で形成される空間内に納まるように構成されているので、船外機を倉庫などに保管するときに大きなスペースを必要としない。そのため、船外機の省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る船外機と水上乗り物の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る船外機と水上乗り物の側面図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】浮力体の体積を最小から最大にするまでの作用を説明する図である。
【図6】最大体積時の左右の浮力体の平面図である。
【図7】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下では水上乗り物はサーフボードとして説明する。また、図面の説明では、サーフボードの先端を前側、サーフボードの後端を後側、サーフボードに進行方向に向いて乗った乗員の左手側を左側、乗員の右手側を右側とする。
【0019】
図1に示すように、船外機10は、サーフボード11の上面に設けるフレーム12の後端に取り付けられ、サーフボード11に推進力を与える装置である。
【0020】
また、船外機10は、フレーム12の後端に設けたケース体(詳細後述)にブラケット13を介して連結されエンジンや推進軸等を収納しているケース14と、このケース14の下端部に設けられギヤを収納しているギヤケース15と、このギヤケース15に収納したプロペラ軸に取り付けられているプロペラ16と、ケース14の上端に設けられエンジン等を覆っているエンジンカバー17とからなる。
【0021】
フレーム12は、サーフボード11の上面に複数の吸盤18を介して取り付けられ前後に延びている水平フレーム19と、この水平フレーム19の前端に設けられ上方に延びている垂直フレーム21と、水平フレーム19の後端に取り付けた回転支持部材22に回転軸(詳細後述)を介して揺動自在に設けられ左右に揺動するケース体30(詳細後述)と、このケース体30の左端に取り付けられ左の浮力体41(詳細後述)を支持している左のカバー体50(詳細後述)と、ケース体30の右端に取り付けられ右の浮力体61を支持している右のカバー体70と、ケース体30の左端部に設けられ左の浮力体41の体積を自在に変える左の体積可変装置80(詳細後述)と、ケース体30の右端部に設けられ右の浮力体61の体積を自在に変える右の体積可変装置100とで構成される。
【0022】
101は燃料キャップ、102は締付け具、103は操作パネル、104はコントローラ、105は補強部材である。
【0023】
なお、左の浮力体41、左のカバー体50及び左の体積可変装置80の構造と、右の浮力体61、右のカバー体70及び右の体積可変装置100の構造は同一であるので、以下では左の浮力体41、左のカバー体50及び左の体積可変装置80を用いて説明する。右の浮力体61、右のカバー体70及び右の体積可変装置100の構造説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、船外機10は、サーフボード11上に設けたフレーム12後端のケース体30に取り付けられている。このケース体30は、水平フレーム19後端の回転支持部材22で回転自在に支持されている回転軸31と、この回転軸31に取り付けられている連結部材32と、この連結部材32から図表方向に延びている支持部材33、34とで構成される。
【0025】
フレーム12には、ワイヤハーネスが設けられている。このワイヤハーネスは、操作パネル103から垂直フレーム21に沿ってコントローラ104までを繋ぐ第1ワイヤハーネス106と、コントローラ104から水平フレーム19に沿って水平フレーム19の後端部まで延びる第2ワイヤハーネス107とで構成される。第2ワイヤハーネス107の後端からケース体30に設けた左の体積可変装置(図1の符号80)まではカールコード108で繋ぐ。
【0026】
ケース体30の回転軸31は、回転支持部材22に回転自在に支持されているので、船外機10を図表裏方向に動かすと、船外機10、ケース体30、左の体積可変装置、左のカバー体50、左の浮力体41及びカールコード108が図表裏方向に揺動する。
【0027】
図3に示すように、ケース体30の左端には左の体積可変装置80が設けられ、この左の体積可変装置80の上端には左のカバー体50の左上カバー51が設けられ、左の体積可変装置80の下端には左のカバー体50の左下カバー52が設けられている。また、左下カバー52の上には左の体積可変装置80に接続された左の浮力体41が載っている。
【0028】
これらのケース体30、左の体積可変装置80、左のカバー体50及び左の浮力体41は、前述の船外機(図2の符号10)と一体化したものである。すなわち、船外機は、サーフボード(図2の符号11)の後端に設けられプロペラ軸を含めた駆動装置を支持するケース体30と、このケース体30に取り付けられ左の浮力体41の一部を覆う(詳細後述)左のカバー体50と、ケース体30に設けられ左の浮力体41の体積を自在に変える左の体積可変装置80とを備えている。
【0029】
左の浮力体41は布製のバッグである。109は点検蓋、111はセンサの検出部である。
次に左の体積可変装置80の詳細構造を説明する。
【0030】
図4に示すように、左の体積可変装置80は、ケース体30に取り付けられているハウジング81と、このハウジング81の内側に設けられ左の浮力体41にガスを供給するボンベ82と、このボンベ82の流出口に接続されているボンベ弁83と、このボンベ弁83に配管84を介して接続されているガス流れ切替弁85と、このガス流れ切替弁85の図下側に配管84を介して接続されている浮力体弁86と、ガス流れ切替弁85の右側に配管84を介して接続されているガス抜き弁87と、このガス抜き弁87から右側に延ばされハウジング81の外側に突出していると共に配管内に残留したガスが外気に排出されるときに通るガス抜き配管88とで構成される。89はボンベ押さえ部材である。
【0031】
浮力体弁86には、配管84を介して継手91が接続され、この継手91は左の浮力体41と一体になっている。
ハウジング81の図下側には、接触式センサ92が設けられている。この接触式センサ92は、左の浮力体41の体積が最大になったことを検出する。左の浮力体41が萎んでいるので、左の浮力体41の外面93と接触式センサ92の検出部111は接触していない。
【0032】
コントローラ104は、乗員が操作パネル103を操作して出された指令を受けて、ボンベ弁83、ガス流れ切替弁85、浮力体弁86及びガス抜き弁87を制御する機器である。また、コントローラ104は、接触式センサ92から発せられる左の浮力体41の体積最大の信号を受けて、ボンベ弁83及び浮力体弁86に閉指令を出す。
【0033】
操作パネル103に設けられるスイッチは、図左から膨らまし自動スイッチ112、膨らまし停止スイッチ113、萎ませ自動スイッチ114、萎ませ停止スイッチ115の4つである。
【0034】
膨らまし自動スイッチ112は左の浮力体41を自動で膨らませるスイッチであり、膨らまし停止スイッチ113は左の浮力体41の膨らましを途中で止めるスイッチである。また、萎ませ自動スイッチ114は左の浮力体41を自動で萎ませるスイッチであり、萎ませ停止スイッチ115は左の浮力体41の萎ませを途中で止めるスイッチである。
【0035】
加えて、左の浮力体41は、左の体積可変装置80によって体積が最小になるとき、左下カバー52の上に載っていると共に左のカバー体(図3の符号50)で形成される空間内に納まるように構成されていることを特徴とする。そのため、船外機(図2の符号10)を倉庫などに保管するときに大きなスペースを必要としない。そのため、船外機の省スペース化を実現することができる。
以上の述べた船外機10の作用を次に述べる。
【0036】
図5において、(a)に示すように、乗員が膨らまし自動スイッチ112をオンにすると、コントローラ104は破線(1)のようにガス流れ切替弁85に切替指令を出すので、ガス流れ切替弁85の流れ方向が破線(2)のようになる。
【0037】
次に、コントローラ104は破線(3)のように浮力体弁86に開信号を送り、続けて破線(4)のようにボンベ弁83に開信号を送る。これにより、ボンベ82から左の浮力体41へガスが供給されるので、左の浮力体41の膨らましが開始される。
【0038】
(b)において、左の浮力体41の外面93が接触式センサ92の検出部111に接触し、接触式センサ92は破線(5)のようにコントローラ104にオン信号を発する。この信号を受けてコントローラ104は、破線(6)のようにボンベ弁83に閉信号を送り、続けて破線(7)のように浮力体弁86に閉信号を送る。
【0039】
次に、コントローラ104は破線(8)のようにガス流れ切替弁85に切替指令を出すので、ガス流れ切替弁85の流れ方向が破線(9)のようになる。続けてコントローラ104は破線(10)のようにガス抜き弁87に開信号を送るので、配管84内に溜まったガスがガス抜き配管88を通って外気に排出される。これで、左の浮力体41の膨らましが完了し、左の浮力体41の体積は最大になる。
【0040】
なお、左の浮力体41を膨らましている途中に膨らまし停止スイッチ113をオンにすると、ボンベ弁83に閉信号が送られるので、左の浮力体41の膨らましを二点鎖線で示したような任意状態で止めることができる。そのため、浮力体の体積を最大から最小までの間で自在に変えることができる。
【0041】
また、左の浮力体41の体積が最大であるとき、萎ませ自動スイッチ114をオンにすると、膨らまし手順とは逆の手順で左の浮力体41の萎ませを実施することができる。さらに、萎ませ停止スイッチ115をオンにすると、ガス抜き弁87に閉信号が送られるので、左の浮力体41の萎ませを任意状態で止めることができる。
【0042】
以上のように、船外機(図2の符号10)は、左の浮力体41の体積を自在に変える左の体積可変装置80を備えているので、運搬時に(a)に示すように左の浮力体41の体積を小さくすることができる。その結果、船外機の運搬性を高めることができる。したがって、左右に浮力体を備えていても運搬性を高めることができる船外機を提供することができる。
次に体積が最大になった左右の浮力体について説明する。
【0043】
図6に示すように、左の浮力体41は、左の体積可変装置80によって体積が最大になるとき、ケース体30の外部に張り出すように構成され、右の浮力体61は、右の体積可変装置100によって体積が最大になるとき、ケース体30の外部に張り出すように構成されていることを特徴とする。そのため、左の浮力体41及び右の浮力体61は、船外機10に大きな浮力を与えることができる。
【0044】
左のカバー体50は左の浮力体41の一部を覆う部材であり、右のカバー体70は右の浮力体61の一部を覆う部材である。
【0045】
尚、本発明に係る水上乗り物は、実施の形態ではサーフボードに適用したが、ボートにも適用可能であり、一般の水上乗り物に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の船外機は、サーフボード等の水上乗り物に好適である。
【符号の説明】
【0047】
10…船外機、11…サーフボード(水上乗り物)、12…フレーム、30…ケース体、41…左の浮力体、50…左のカバー体、51…左上カバー、52…左下カバー、61…右の浮力体、70…右のカバー体、80…左の体積可変装置、100…右の体積可変装置、103…操作パネル、104…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上乗り物に推進力を与え、前記水上乗り物の進行方向に対して左右に浮力体が設けられている船外機であって、
この船外機は、前記水上乗り物の後端に設けられプロペラ軸を含めた駆動装置を支持するケース体と、このケース体に取り付けられ前記浮力体の一部を覆うカバー体と、前記ケース体に設けられ前記浮力体の体積を自在に変える体積可変装置とを備えていることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記浮力体は、前記体積可変装置によって体積が最大になるとき、前記ケース体の外部に張り出すように構成されていることを特徴とする請求項1記載の船外機。
【請求項3】
前記浮力体は、前記体積可変装置によって体積が最小になるとき、前記カバー体で形成される空間内に納まるように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の船外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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