説明

船舶推進装置

【課題】少ない動力で船舶の進行方向を変更させ、かつ、進行方向を変更する時や直進する時にも推進力を損なわない船舶推進装置を提供する。
【解決手段】船舶推進装置2は、船舶の船底に設けられ、前記船舶の長手方向に向けて水を噴射する噴射孔を有する水流発生装置17と、水流発生装置17の両側に長手方向に延在して設けられた壁体11とを有する。水流発生装置の両側に設けられた壁体により、水流発生装置における水流の噴射孔周辺を流れる水流が一方向になり、水流発生装置から発生する水流が、船舶の推進方向から流入する水流と接触して発生する抵抗が減り、推進装置の推進性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船尾に設けられる船舶推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進及び方向転換を行う機構として、舵付きアジマス推進器が広く用いられている。図7は、従来の舵付きアジマス推進器の一般的な構造を示している。舵付きアジマス推進器102は、船尾方向側の船底135に設けられている。アジマス推進器102は、舵109、プロペラ105、ポッド本体101を有する。舵109は、船舶の進行方向と平行な方向を幅方向とする板状である。ポッド本体101は、船舶の進行方向と平行な方向を軸方向とする長球形状であり、その軸方向と舵109の軸方向が直交して、舵109と一体となっている。プロペラ105は、回転中心の軸線方向を船舶の進行方向と平行として、ポッド本体101の船尾側方向の端部に設けられている。船底135には、電動機131が設けられている。電動機のシャフト129の先端には、一対のベベルギア133が設けられている、ベベルギアは、ギア面が傘型であり、ギア面同士を歯合させることで、回転軸の方向を垂直方向に変更することができる。電動機131の回転は、シャフト129、ベベルギア133、回転軸130、プロペラ軸134を介してプロペラへ伝達される。船舶の推進は、このプロペラの回転により水流を発生させて行う。また、船舶の方向転換は、ポッド101と舵109を図示しない回転機構により回転させることで水流の方向を調整して行う。
【0003】
このような舵付アジマス推進器102は、推進機構と操舵機構が別個に設けられた機構に比べ、船体の方向転換や進行方向の維持が容易であるとされ、広く普及している。
しかしながら、このような舵付アジマス推進装置102では、船舶の進行方向を変更させる際に、舵109のみでなく、舵109と一体となっているポッド本体101を含めたポッド全体を回転させる必要がある。舵109と比較してポッドは大きな装置であるため、舵109のみを回転させる場合と比較して、大きな動力が必要となる。また、ポッド全体が回転するためのスペースを確保するために、舵付アジマス推進器の周辺には他の構造物が設けられない。そして、他の船舶の航行や環境要因等により、水中では様々な方向へ流れる水流が発生しており、それらの多方向からの水流が、遮られることなく舵付きアジマス推進器102に向かう。これらの水流は、プロペラの回転や、プロペラが発生させる水流の抵抗となり、船舶の推進力を低下させる。
【0004】
小さい舵角(舵を回転させる角度)で所要の舵力を得る手段の例として、特許文献1に公開された旋回式ポッドプロペラ202がある。
図8はこの旋回式ポッドプロペラ202の側面図であり、図9は、その船底側から見た平面図である。
船底235に設けられるこの旋回式ポッドプロペラ202では、ポッド201内に設けられたモータ237の回転により回転軸239を介して回転するプロペラ205を有するポッド201に、ストラット209が上部に一体に設けられている。ストラット209は、旋回モータ231の回転が旋回モータシャフト229、旋回ギヤ233を介して旋回軸230に伝達されることにより、旋回軸230の軸線回りに回転する。ストラット209の後部の両側部には、船首側の鉛直方向を軸として後部が側方へ開閉するフラップ207がそれぞれ設けられている。このフラップ207を、ポッド201の軸方向を中心として非対称に開くことで、フラップ207を開いた側には強い圧力が作用し、フラップ207を開いていない側への舵力が増加し、この舵力により、ポッドを回転させることなく船舶の進行方向を変更させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−106563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された機構により、船舶が進行方向を変更する際に要するエネルギーを低減することができても、船舶の航行中、船舶を推進させる機構は依然として多方向からの水流による抵抗を受け続けるため、抵抗を克服するための余分な動力を要する。つまり、船舶の航行全体に要する動力の低減は不十分であり、船舶の推進力を維持しつつ、少ない動力で船舶の進行方向を変更させることができる機構が望まれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、少ない動力で船舶の進行方向を変更させ、かつ、進行方向変更時や直進時にも推進力を損なわない船舶推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の船舶推進装置は以下の手段を採用する。
船舶の船底に設けられ、前記船舶の長手方向に向けて流体を噴射する噴射孔を有する水流発生装置と、前記水流発生装置の両側に前記長手方向に延在して設けられた壁体とを有することを特徴とする船舶推進装置を発明した。
【0009】
水流発生装置の両側に設けられた壁体により、壁体間に流入した水流は、壁体に沿って流れることとなり、水流は一方向に流れることとなる。したがって、水流発生装置における水流の噴射孔周辺を流れる水流が一方向になる。これにより、水流発生装置から発生する水流が、船舶の推進方向から流入する水流と接触して発生する抵抗が減り、推進装置の推進性能が向上する。
平面視して左右の壁体の間には水流発生装置があるため、水流発生装置の上流側と下流側の水流に差圧が発生する。具体的には、水流発生装置の噴射孔よりも上流側と、噴射孔よりも下流側では水の流速が異なるため、上流側に負圧が生じ、吸引力が発生する。この吸引力により、壁体における船舶の推進方向側の開口部から水が流入し、流入した水は、壁体における船舶の推進方向とは反対側の開口部から流出する。この水流により、推進装置は推進力を得ることができる。これにより、水流発生装置の水噴射による推力のみで、大きな推進力を発生させることができる。
【0010】
船舶の船底に設けられ、前記船舶の長手方向に回転軸を有するプロペラを船尾方向側に有する水流発生装置と、前記水流発生装置の両側に船舶の長手方向に延在して設けられた壁体とを有することを特徴とする船舶推進装置を発明した。
【0011】
水流発生装置の両側に設けられた壁体により、壁体間に流入した水流は、壁体に沿って流れることとなり、水流は一方向に流れることとなる。したがって、水流発生装置における水流のプロペラ周辺を流れる水流が一方向になる。これにより、水流発生装置から発生する水流が、船舶の推進方向から流入する水流と接触して発生する抵抗が減り、推進装置の推進性能が向上する。
平面視して左右の壁体の間には水流発生装置があるため、水流発生装置の上流側と下流側の水流に差圧が発生する。具体的には、水流発生装置のプロペラよりも上流側と、プロペラよりも下流側では水の流速が異なるため、上流側に負圧が生じ、吸引力が発生する。この吸引力により、壁体における船舶の推進方向側の開口部から水が流入し、流入した水は、壁体における船舶の推進方向とは反対側の開口部から流出する。この水流により、推進装置は推進力を得ることができる。これにより、プロペラによる推力のみで、大きな推進力を発生させることができる。
水流発生装置がプロペラ式であるため、プロペラの回転方向を変えることで、容易に船舶の前進と後退を切り替えることができる。つまり、一台の水流発生装置で二方向の水流を発生させることができる。このことにより、水流発生装置を、前進用と後進用としてそれぞれ設ける必要がないため、装置の省スペース化・低コスト化を実現することができる。
【0012】
前記壁体の水流発生装置に対向する面が、水流発生装置方向に突出する曲面形状である
ことが好ましい。
【0013】
水流発生装置方向へ向かう水流が接触する壁体の面が、水流発生装置方向に突出する曲面である。水が壁体の端部に接触することにより、渦が発生するが、壁面の形状が、水流方向に沿う曲面形状であるため、水と壁面間の抵抗が少なく、渦の発生を抑制することができる。これにより、水流の方向をより確実に一方向とすることができる。
【0014】
船舶の船底に設けられ、前記船舶の長手方向に直交する鉛直方向に回転軸を有する中央胴部、該中央胴部の船尾方向側に設けられ前記長手方向に回転軸を有するプロペラを備えた中央ポッドと、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記鉛直方向を面方向とする第一主舵と、前記主舵の船尾方向側の端部に設けられ、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記長手方向に直交する回転軸を有する第一補助舵と、を備えた第一側舵と、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記鉛直方向を面方向とする第二主舵と、前記主舵の船尾方向側の端部に設けられ、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記長手方向に直交する回転軸を有する第二補助舵と、を備えた第二側舵と、を有し、前記鉛直方向に直交する面方向に、前記中央胴部、前記第一側舵、及び前記第二側舵の各軸方向が互いに水平として含まれ、前記中央ポッドは、前記第一側舵と前記第二側舵の間に位置することを特徴とする船舶推進装置を発明した。
【0015】
中央ポッドの両側に第一側舵と第二側舵を位置させることとしたので、第一主舵または第二主舵のいずれかを回転させなくても、第一補助舵または第二補助舵のみを回転させることで、水流を調整することができる。これにより、小さい角度の旋回を行う場合には、第一補助舵または第二補助舵のみを回転させればよいため、第一主舵または第二主舵のいずれかを回転させて旋回を行う場合に比べ、旋回に要する動力が少なくて済む。また、第一補助舵または第二補助舵の回転のみで旋回可能な角度よりも大きい角度で旋回を行う場合であっても、補助舵と主舵両方を回転させる場合の旋回に必要な主舵の角度は、補助舵で得られない分の角度だけ主舵を回転させればよいため、旋回に要する動力が、主舵のみで旋回に必要な角度をとる場合と比べて少なくて済む。また、主舵を回転させるための動力が少ないことにより、旋回時の速度も一定に保つことができる。
第一主舵と第二主舵の間を通過した水流がプロペラに接触する。つまり、第一主舵と第二主舵がプロペラに当たる水流の流れを一方向に整えるため、プロペラは多方向からの水流による抵抗を受けることがなく、推進性能が向上する。
【0016】
前記第一側舵の前記回転軸の回転角度と、前記第二側舵の前記回転軸の回転角度がそれぞれ独立に設定可能とされていることが好ましい。
【0017】
第一側舵と第二側舵の中央ポッドに対する回転角度がそれぞれ異なることで、第一側舵と第二側舵とでは、中央ポッドに対向しない側面に水流が接触する角度がそれぞれ異なる。これにより、第一側舵と第二側舵とでは、中央ポッドに対向しない側面が受ける圧力がそれぞれ異なるので、船舶推進装置全体に対して回転モーメントが発生し、船舶推進装置の回転を助長する。したがって、船舶推進装置全体を回転させる機構が不要となり、装置の簡素化、船舶の航行に要するエネルギーの低減を実現できる。
【発明の効果】
【0018】
これにより、少ない動力で船舶の進行方向を変更させ、かつ、進行方向変更時や直進時にも推進力を損なうことなく船舶を航行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる船舶推進装置の船底方向側から見た平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる船舶推進装置の船底方向側から見た平面図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる船舶推進装置の、図4におけるA−A矢視図である。
【図4】図3に示した船舶推進装置の、船底方向側から見た平面図である。
【図5】本発明の第4実施形態にかかる船舶推進装置の、図6におけるB−B矢視図である。
【図6】図5に示した船舶推進装置の、船底方向側から見た平面図である。
【図7】従来の舵付アジマス推進装置の側面方向から見た断面図である。
【図8】特許文献1に記載された旋回式ポッドプロペラの側面図である。
【図9】図8に示した旋回式ポッドプロペラの船底方向側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態における船舶推進装置2を示しており、水流発生装置17が、間隙を介して一対の壁体11の間に設けられている状態を示している。壁体11は、その軸線方向を船舶の進行方向に平行にしてそれぞれ設けられている。水流発生装置17は、流体を噴射する図示しない噴射孔を、船舶の進行方向の反対側の後面に有している。水流発生装置17は、図示しないポンプ等の流体供給装置と接続された流体路13と接続されており、流体供給装置側と反対方向における流体路13の端部は、水流発生装置17を介して噴射孔と連結されている。水流発生装置は、例えば棒やワイヤ等の支持部材15により、壁体11と連結されることで、一対の壁体11間に保持されている。
【0021】
次に、この船舶推進装置2の動作を説明する。
船底に設けられた船舶推進装置2は、船舶航行中は浸水する。船舶の進行方向における壁体11の両端部は対向する壁体11との間で開口部を形成している。船舶が進行することにより、船舶の進行方向側の開口部から、一対の壁体11の間に水が流入し、船舶の進行方向の反対側の開口部から流出していく。
【0022】
水流発生装置17は、流体供給装置から、流体路13を介して流体を供給され、流体は噴射孔から噴射される。これにより、水流発生装置17の噴射孔よりも上流側と下流側で差圧が生じる。具体的には、下流側では、水流が噴射されることにより水の流速が速くなり、一方で流体の噴射を受けない上流側の流速は下流側に比べて遅い。これにより、上流側の水流に吸引力が発生し、上流側すなわち船舶の進行方向側の開口部から水が吸引され、下流側すなわち船舶の進行方向側とは反対側の開口部から水が流出されるという水流が、一対の壁体11間において発生する。これにより、船舶は推進力を得ることができる。つまり、水流発生装置の流体噴射に要するエネルギーのみで、大きな推進力を発生させることができる。
【0023】
図1に示したように、水流発生装置17に対向する壁体11の面形状は、水流発生装置17方向に突出する曲面形状すなわち流線形状であることが好ましい。
船舶の推進方向側の開口部から流入する水において、壁体11付近では、渦が発生する。具体的には、船舶の進行方向側における壁体11の断面に衝突した水流の流れの方向が開口部の中心側に寄り、壁体11に衝突しなかった水流と衝突することで、壁体11方向に反発しながら開口部に流入する。水流はさらに壁体11に接触して渦を発生させる。しかし、壁体11の表面が流線形状であることで、壁体11の断面と衝突した水流の流れる方向に近くなるため、水流と壁体11の衝突が起こりにくく、壁体11は水流の抵抗となりにくい。これにより、壁体11間での渦の発生を抑制することができ、より確実に、水流の方向を一定に定めることができる。したがって、水流発生装置17から噴射された水流が受ける水流は一定方向であり、水流発生装置17からの水流は抵抗を受けにくい。つまり、船舶推進装置2は、推進力を保つことができる。
【0024】
なお、図1では、一台の水流発生装置17から二本の流体路13が近傍の壁体11の方向へそれぞれ延出しており、流体路13は壁体11を貫通して図示しない流体供給装置と連結される構成となっている。しかし、流体路13が船底側方向から延出する等、壁体11との接触を回避して図示しない流体供給装置と連結してもよい。また、一台の水流発生装置17に連結される流体路13は一本であっても複数本であってもよい。水流発生装置17は、発生する水流の方向が略平行であれば、一対の壁体11間に複数台あってもよい。
【0025】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。
図2に示す船舶推進装置2は、水流発生装置17、壁体11を有する点で第1実施形態と共通する。したがって、これらの構成については同一符号を付しその説明を省略する。
【0026】
本実施形態は、第1実施形態に比べて、水流発生装置17がプロペラ5と中央胴部1を有する点で相違する。
中央胴部1は長球形状で、その軸方向は船舶の進行方向と平行である。また、船舶の進行方向に直行する鉛直方向に回転軸を有し、この回転軸により、360度回転する。回転は、たとえば、図示しない油圧式の制御装置等により行う。プロペラ5は、船尾方向側における中央胴部1の端部に、プロペラ5の回転軸を船舶の進行方向と平行にして設けられている。プロペラ5の回転は、たとえば、図示しないモータ等により行う。
【0027】
次に、この船舶推進装置2の動作を説明する。
水流発生装置17は、プロペラ5を回転させる。これにより、水流発生装置17のプロペラ5よりも上流側と下流側で差圧が生じる。具体的には、下流側では、プロペラ5の回転により水流が発生し、水の流速が速くなる。一方でプロペラ5による水流が発生しない上流側の流速は下流側に比べて遅い。これにより、上流側の水流に吸引力が発生し、上流側すなわち船舶の進行方向側の開口部から水が吸引され、下流側すなわち船舶の進行方向側とは反対側の開口部から水が流出されるという水流が、一対の壁体11間において発生する。これにより、船舶は推進力を得ることができる。つまり、水流発生装置17のプロペラ5の回転に要するエネルギーのみで、大きな推進力を発生させることができる。
【0028】
また、船舶の前進と後退を切り替える際には、プロペラの回転方向を変更すれば良いだけであるので、船舶の進行方向の反対方向へ水流を発生させる前進用の水流発生装置と、船舶の進行方向へ水流を発生させる後退用の水流発生装置を別個に設ける必要がなく、船舶推進装置2の省スペース化・低コスト化を実現することができる。
【0029】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図3および図4を用いて説明する。
図3および図4に示される船舶推進装置2は、船舶の船底に設けられ、中央ポッド21、第一側舵23a、及び第二側舵23bを有する。図3は、本実施形態における船舶推進装置2の、図4におけるA−A矢視図であり、図4は、船舶推進装置2を船底方向側から見た平面図である。
中央ポッド21は、中央胴部1とプロペラ5を有する。中央胴部1は、長球形状であり、その軸方向は船舶の進行方向と平行である。中央胴部1は、船舶の進行方向に直行する鉛直方向を回転軸として、船舶の進行方向に水平な方向に360度回転可能である。回転は、たとえば、図示しない油圧式の制御装置等により行う。プロペラ5は、船尾方向側における中央胴部1の端部に、プロペラ5の回転軸を船舶の進行方向と平行にして設けられている。プロペラ5の回転は、たとえば、図示しないモータ等により行う。
【0030】
第一側舵23aは、第一主舵25aと第一補助舵7aを有する。第一主舵25aは、中央ポッド21と並行して船舶の進行方向に延在し、翼断面形状を持ち、前記鉛直方向を軸方向とする柱状である。第一補助舵7aは、翼断面の後縁側の形状とされた断面を有する柱状であり、その幅方向は船舶の進行方向に平行である。また、その軸方向は、船舶の進行方向に直行する鉛直方向と平行であり、その船首側方向の端部を回転軸として回転可能に、船尾側方向における第一主舵25aの端部に設けられている。第一補助舵7aの回転は、たとえば、図示しないモータ等により行う。
【0031】
第二側舵23bは、第二主舵25bと第二補助舵7bを有する。第二主舵25bは、中央ポッド21と並行して船舶の進行方向に延在し、翼断面形状を持ち、前記鉛直方向を軸方向とする柱状である。第二補助舵7bは、翼断面の後縁側の形状とされた断面を有する柱状であり、その幅方向は船舶の進行方向に平行である。また、その軸方向は、船舶の進行方向に直行する鉛直方向と平行であり、その船首側方向の端部を回転軸として回転可能に、船尾側方向における第二主舵25bの端部に設けられている。第二補助舵7bの回転は、たとえば、図示しないモータ等により行う。
【0032】
中央胴部1と、第一主舵25aと第二主舵25bの軸方向は平行である。中央胴部1の一方の側面方向には、第一連結部材3aを介して第一主舵25aが連結され、中央胴部1のもう一方の側面方向には、第二連結部材3bを介して第二主舵25bが連結されている。
【0033】
次に、この船舶推進装置2の動作を説明する。
船底に設けられた船舶推進装置2は、船舶航行中は浸水する。船舶の進行方向において、第一側舵23aと第二側舵23bの間には間隙があり、間隙の進行方向側と進行方向の反対側の端部は開口部を形成している。船舶が進行することにより、船舶の進行方向側の開口部から、第一側舵23aと第二側舵23bの間に水が流入し、船舶の進行方向の反対側の開口部から流出していく。
中央ポッド21において、プロペラ5が回転する。これにより、第一側舵23aと第二側舵23b間において、プロペラ5よりも上流側と下流側で差圧が生じる。具体的には、下流側では、プロペラ5の回転により水流が発生し、水の流速が速くなる。一方でプロペラ5による水流が発生しない上流側の流速は下流側に比べて遅い。これにより、上流側の水流に吸引力が発生し、上流側すなわち船舶の進行方向側の開口部から水が吸引され、下流側すなわち船舶の進行方向側とは反対側の開口部から水が流出される。これにより、船舶は推進力を得ることができる。つまり、中央ポッド21のプロペラ5の回転に要するエネルギーのみで、大きな推進力を発生させることができる。さらに、プロペラ5の周辺を流れる水流の方向は、第一側舵23a、第二側舵23bにより船舶推進装置2における側方からの水流が遮られ、船舶の進行方向と平行な一方向に定められるため、プロペラ5とプロペラ5から発生する水流は多方向からの水流による抵抗を受けることがなく、推進力を維持することができる。
【0034】
また、船舶の前進と後退を切り替える際には、プロペラの回転方向を変更すれば良いだけであるので、船舶の進行方向の反対方向へ水流を発生させる前進用の水流発生装置と、船舶の進行方向へ水流を発生させる後退用の水流発生装置を別個に設ける必要がなく、船舶推進装置2の省スペース化・低コスト化を実現することができる。
さらに、船舶の進行方向の変更を小さい角度で行いたい場合は、船舶推進装置2全体を回転させるのではなく、第一補助舵7aまたは第二補助舵7bのみ回転させる。第一補助舵7aまたは第二補助舵7bを回転させることで、水流を調整し、船舶の進行方向を変更することができる。船舶推進装置2全体に比べ、第一補助舵7aまたは第二補助舵7bは小さい部位であるため、回転に要するエネルギーも少なくてすむ。したがって、小さい角度で船舶を旋回させたい場合、第一補助舵7aまたは第二補助舵7bのみを回転させることで、船舶推進装置2全体を回転させる場合に比べて小さいエネルギーで旋回可能なため、動力の低減を実現できる。
【0035】
また、プロペラ式の機構により推進を行う場合、プロペラが一定方向に回転することにより、舵を船体の軸方向と平行に設定したとしても、わずかに船体が旋回しながら進行する。このため、直進時であっても舵をわずかに回転させて水流を調整する必要があるが、このような調整を第一補助舵7aまたは第二補助舵7bのみで行うことができるため、直進時に要する動力を低減することもできる。
【0036】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図5および図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態における船舶推進装置2の、図6におけるB−B矢視図である。図6は、船舶推進装置2を船底方向側から見た平面図である。
図5および図6に示す船舶推進装置2は、中央ポッド21、第一側舵23a、第二側舵23bを有する点で第3実施形態と共通する。したがって、これらの構成については同一符号を付しその説明を省略する。本実施形態は、第3実施形態に比べて、中央ポッド21、第一側舵23a、第二側舵23bを連結する第一連結部材3a,第二連結部材3bが設けられず、中央ポッド21、第一側舵23a、第二側舵23bの回転角度をそれぞれ独立して設定可能であり、また中央ポッド21の回転を制御する機構が不要である点で相違する。
【0037】
第一主舵25aは、船舶の進行方向に直行する鉛直方向を回転軸として、船舶の進行方向に水平な方向に360度回転可能である。回転は、たとえば、図示しない油圧式の制御装置等により行う。第二主舵25bも同様に、船舶の進行方向に直行する鉛直方向を回転軸として、船舶の進行方向に水平な方向に360度回転可能である。回転は、たとえば、図示しない油圧式の制御装置等により行う。
【0038】
中央ポッド21、第一側舵23aと第二側舵23bをそれぞれ異なる角度で回転させることが可能であるので、第一側舵23aまたは第二側舵23bを、中央ポッド21の軸線を中心として非対称に回転させることができる。第一側舵23aの中央ポッド21に対向しない側面と第二側舵23bの中央ポッド21に対向しない側面では接触する水流の方向が異な、それぞれの側面が受ける圧力も異なる。これにより船舶推進装置2全体に回転モーメントが発生し、船舶推進装置2全体の回転を助長する。よって、船舶推進装置2全体を回転させる機構を設けなくても、第一側舵23aと第二側舵23bを回転させる機構があれば、船舶を旋回させることが可能となり、装置の簡素化、低コスト化、操舵に要するエネルギーの低減を実現できる。
【符号の説明】
【0039】
1 中央胴部
2 船舶操舵装置
3a 第一連結部材
3b 第二連結部材
5 プロペラ
7a 第一補助舵
7b 第二補助舵
11 壁体
13 流体路
15 支持部材
17 水流発生装置
21 中央ポッド
23a 第一側舵
23b 第二側舵
25a 第一主舵
25b 第二主舵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船底に設けられ、
前記船舶の長手方向に向けて流体を噴射する噴射孔を有する水流発生装置と、
前記水流発生装置の両側に前記長手方向に延在して設けられた壁体と
を有することを特徴とする船舶推進装置。
【請求項2】
船舶の船底に設けられ、
前記船舶の長手方向に回転軸を有するプロペラを船尾方向側に有する水流発生装置と、
前記水流発生装置の両側に船舶の長手方向に延在して設けられた壁体と
を有することを特徴とする船舶推進装置。
【請求項3】
前記壁体の水流発生装置に対向する面が、水流発生装置方向に突出する曲面形状である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶推進装置。
【請求項4】
船舶の船底に設けられ、
前記船舶の長手方向に直交する鉛直方向に回転軸を有する中央胴部、該中央胴部の船尾方向側に設けられ前記長手方向に回転軸を有するプロペラを備えた中央ポッドと、
前記鉛直方向に回転軸を有し、前記鉛直方向を面方向とする翼断面形状を有する柱状の第一主舵と、前記主舵の船尾方向側の端部に設けられ、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記長手方向に直交する回転軸を有する第一補助舵と、を備えた第一側舵と、
前記鉛直方向に回転軸を有し、前記鉛直方向を面方向とする翼断面形状を有する柱状の第二主舵と、前記主舵の船尾方向側の端部に設けられ、前記鉛直方向に回転軸を有し、前記長手方向に直交する回転軸を有する第二補助舵と、を備えた第二側舵と、
を有し、
前記鉛直方向に直交する面方向に、前記中央胴部、前記第一側舵、及び前記第二側舵の各軸方向が互いに水平として含まれ、
前記中央ポッドは、前記第一側舵と前記第二側舵の間に位置することを特徴とする船舶推進装置。
【請求項5】
前記第一側舵の前記回転軸の回転角度と、前記第二側舵の前記回転軸の回転角度がそれぞれ独立に設定可能とされていることを特徴とする請求項4に記載の船舶推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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