説明

船舶

【課題】可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納する貨物倉を備えた船舶において、荷役装置が移動する部分と貨物倉の全部のハッチ部分とにおいて、空気が貨物倉に侵入することを防止できる高い気密性を確保すると共に、万一の場合でも、空気が荷役装置が移動する荷役区画と貨物倉に侵入して爆発雰囲気を形成することを防止できる船舶を提供する。
【解決手段】前記貨物倉3の上を船体前後方向に移動する荷役設備を設けると共に、該荷役装置が移動する部分と前記貨物倉3の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバー4を設け、該全閉カバー4内の荷役区画6に一端が開口され、ガス圧調整装置7に他端が接続された第1配管8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスハイドレート(NGH)ペレット等の可燃性ガスを発生する固形貨物を運搬するための船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、天然ガスハイドレートが注目され、天然ガスをガスハイドレートペレットの形態のままばら積み状態で運搬することが検討されている。
【0003】
例えば、このガスを包蔵したガスハイドレート貨物の気密を保持して搬送するガスハイドレート輸送船として、船長方向に配した船倉(貨物倉)の上に、船長方向に移動可能な箱型の移動ハウスを設けて、この内部に荷役装置を内蔵して、荷役装置と共に移動ハウスを移動させて荷役を行うガスハイドレート輸送船が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このガスハイドレート輸送船では、移動ハウスの全周にわたってシール材を設け、このシール材によって移動ハウスと船体との隙間を密封する構成となっている。この構成では、移動ハウスの移動装置が必要となる上に、移動ハウスが移動する毎に安全のために移動前に移動ハウス内を可燃性ガスから不活性ガスに置換し、移動後に移動ハウス内の移動時に侵入した空気を除去するために再度不活性ガスを補充し、その後に新たに密閉状態を確保する必要があり作業効率が低下するので、まだ改善の余地がある。
【0005】
また、このガスハイドレートペレットを運搬する際には、常時、ガスハイドレートの分解により可燃性ガスが発生する。この可燃性ガスが発生すると、貨物倉等の可燃性ガスを内包する区画内の圧力が上昇するため、貨物倉構造及び船体構造を強度的に保護する面から、貨物倉内の圧力が高くなり過ぎないように、ガス圧を制御する必要がある。
【0006】
また、可燃性ガスを内包する区画に空気が侵入することで爆発雰囲気が形成されてしまうので、これを防ぐという面から、貨物倉の外の大気圧より高い圧力に貨物倉内のガス圧を維持する必要がある。
【0007】
通常、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)等の可燃性ガスを発生する液体貨物を運搬するLNG船やLPG船では、図6に示すように、船舶1Xの各貨物タンク21からの分岐配管22を一つの主配管23に接続し、ガス圧縮機7を使用してこの主配管23の内部のガス圧を調整することにより、貨物タンク21全体の圧力調整を行っている。
【0008】
しかしながら、バラ積み貨物船で可燃性ガスを発生する固形貨物を運搬する際には、固形バラ積み貨物を取り扱うための荷役装置を覆う荷役区画の内部にも可燃性ガスが内包されるため、LNG船やLPG船と同様に貨物倉の内部の圧力Pciを調整制御すると共に、荷役区画も貨物倉とは別の区画として内部の圧力Puも調整制御する必要がある。また、爆発雰囲気の形成を防止する観点から、これらの貨物倉と荷役区画は共に大気圧より高い圧力に維持する必要がある。
【0009】
この場合に、可燃性ガスを発生する貨物を貯蔵する貨物倉と荷役装置を覆う荷役区画とでは、それぞれの部分で発生する可燃性ガスの発生量が異なるため、これらの貨物倉と荷役区画とでは圧力挙動が異なる。従って、これらのことを考量して、ガス圧の制御を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−255014公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納する貨物倉を備えた船舶において、荷役装置が移動する部分と貨物倉の全部のハッチ部分とにおいて、空気が貨物倉に侵入することを防止できる高い気密性を確保すると共に、万一の場合でも、空気が荷役装置が移動する荷役区画と貨物倉に侵入して爆発雰囲気を形成することを防止できる船舶を提供することにある。
【0012】
更なる目的は、貨物倉と荷役装置を覆う荷役区画の両方を含む複数の区画の圧力管理に際して、一つのガス圧縮機で、一括して各貨物倉と荷役区画とを同時に制御することができて、ガス圧の制御を合理化することができる船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の船舶は、可燃性ガスを発生する固形物をばら積みする貨物倉を備えた船舶において、前記貨物倉の上を船体前後方向に移動する荷役設備を設けると共に、該荷役装置が移動する部分と前記貨物倉の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバーを設け、該全閉カバー内の荷役区画に一端が開口され、ガス圧調整装置に他端が接続された第1配管を設けて構成する。
【0014】
この構成によれば、荷役装置が移動する部分と貨物倉の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバーを設けて、この全閉カバーと上甲板で囲われる荷役区画を設けて、貨物倉のハッチ部分が直接大気に接しないように構成したので、貨物倉で発生する可燃性ガスがハッチ部分から直接大気中に放出されることが無くなる。この場合に、全閉カバーは移動しないので、容易に優れた気密構造にすることができる。
【0015】
また、第1配管に接続されたガス圧縮機等のガス圧調整装置により、荷役区画の内部のガス圧Puを調整制御して、大気圧Paよりも大きくすることができ、万一の全閉カバーの気密性に問題が生じた場合でも、荷役区画の内部の可燃性ガスが放出されるので、空気が荷役区画に侵入して爆発雰囲気を形成するのを防止できる。
【0016】
このような荷役区画と貨物倉との両方のガス圧を調整する場合に、図5に示すような構成が考えられる。つまり、船舶1Bの各貨物倉3からの分岐配管31を一つの主配管32に接続し、この主配管32を第1のガス圧縮機7Aに接続すると共に、荷役区画6に副配管33を設けて、この副配管33を第2のガス圧縮機7Bに接続する。しかしながら、この構成では、それぞれ別系統で圧力制御を行うガス圧縮機が2台必要となり、また、圧力制御が複雑になるという問題がある。
【0017】
この問題に対して、上記の船舶において、前記貨物倉内部に一端が、前記荷役区画内部に他端が開口され、かつ、第1のバルブを備えた第2配管を各貨物倉に設けて、該第2配管で前各貨物倉と前記荷役区画との間をそれぞれ連通可能に構成する。
【0018】
この構成により、可燃性ガスは貨物倉内の貨物から発生するので、第2配管に備えた第1のバルブを開弁することにより、各貨物倉のガスを荷役区画内に放出させることができる。また、第2配管に備えた第1のバルブを流量調整可能な調整弁で構成し、流量とガス圧を調整しながら、各貨物倉のガスを荷役区画内に放出させる場合には、これにより、各貨物倉のガス圧を個別に制御することができる。この貨物倉のガス圧の制御により、貨物倉内部のガス圧が高くなり過ぎることを防止できる。
【0019】
この場合に、貨物倉と荷役区画とが第2配管により連通されることにより、貨物倉の内部のガス圧Pci(図1〜図5ではPc1〜Pc6)と荷役区画の内部のガス圧Puは、完全に連通した場合は略均一となる。また、第2配管に備えた第1のバルブで貨物倉のガス圧Pciを調整した場合は、各貨物倉内のガス圧Pciは荷役区画内のガス圧Pu以上となり、また、ガス圧調整装置により荷役区画のガス圧Puを、貨物倉や荷役区画の外部の大気圧Paよりも高く調整制御することができるので、その結果、Pci≧Pu>Paとすることができる。
【0020】
従って、貨物倉と荷役装置を覆う荷役区画の両方を含む複数の区画の圧力管理に際して、一つのガス圧縮機で、一括して各貨物倉と荷役区画とを同時に制御することができて、ガス圧の制御を合理化することができる。
【0021】
また、上記の船舶において、前記第1配管に接続する第3配管を設けると共に、該第3配管に分岐配管を設けて、該分岐配管を前記各貨物倉と前記第3配管とが連通可能に構成すると共に、前記第1配管の前記第3配管が接続する部位よりも前記荷役区画側に第2のバルブを、前記第3配管に第3のバルブを、前記各分岐配管に第4のバルブをそれぞれ設けて構成する。
【0022】
この構成によれば、第1の圧力管理方法では、第3のバルブと各分岐配管の第4のバルブとを閉じて、第2のバルブを開弁することにより、ガス圧調整装置により荷役区画のガス圧Puを、貨物倉や荷役区画の外部の大気圧Paよりも高くすることができる。その結果、Pci≧Pu>Paとすることができる。
【0023】
第2の圧力管理方法では、第1のバルブと第2のバルブとを閉じて、第3のバルブを開弁することにより、ガス圧調整装置により各貨物倉のガス圧Pciを、荷役区画のガス圧Puとは関係なく調整できる。この場合は短時間で、Pci>Paとなるようにすることができる。また、第4のバルブを流量調整可能な調整弁で構成して、流量とガス圧を調整しながら、各貨物倉のガスをガス圧調整装置に送る場合には、これにより、各貨物倉のガス圧を個別に制御することができる。
【0024】
また、荷役装置の保守及び修理を行うような荷役区画6の内部が空気に置換される場合において、貨物倉3のみの可燃性ガスのガス圧の圧力管理が必要となるが、この第2の圧力管理方法で、この圧力管理を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の船舶によれば、荷役装置が移動する部分と貨物倉の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバーと、上甲板で囲まれる荷役区画を設けて、貨物倉のハッチ部分が直接大気に接しないように構成したので、貨物倉で発生する可燃性ガスがハッチ部分から直接大気中に放出されることが無くなる。この場合に、全閉カバーは移動しないので、容易に優れた気密構造にすることができる。
【0026】
また、第1配管に接続されたガス圧縮機等のガス圧調整装置により、荷役区画の内部のガス圧Puを制御して、大気圧Paよりも大きくすることができるので、万一の全閉カバーの気密性に問題が生じた場合でも、荷役区画の内部の可燃性ガスが放出されるので、空気が荷役区画に侵入して爆発雰囲気を形成するのを防止できる。
【0027】
更に、バルブを備えた第2配管を各貨物倉に設けて、この第2配管で各貨物倉と荷役区画との間をそれぞれ連通可能に構成することにより、貨物倉と荷役装置を覆う荷役区画の両方を含む複数の区画の圧力管理に際して、一つのガス圧縮機で、一括して各貨物倉と荷役区画とを同時に制御することができるので、ガス圧の制御を合理化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態における船舶の構成を示した模式的な側断面図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態における船舶の構成を示した模式的な側断面図である。
【図3】本発明に係る第2の実施の形態における船舶における第1制御時のガスの流れを示した模式的な側断面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態における船舶における第2制御時のガスの流れを示した模式的な側断面図である。
【図5】本発明の参考となる船舶の構成を示した模式的な側断面図である。
【図6】モス型液化ガス運搬船(LNG船)における可燃性ガス用の配管を示した模式的な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明に係る船舶について説明する。なお、図面では、船体構造や貨物倉構造や各配管系統の構成を模式的に示しており、実際の配置構造を示すものではない。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態の船舶1は、船体2に、天然ガスハイドレ−ト(NGH)ペレット等の可燃性ガスを発生する固形物を収納する貨物倉3を備えて構成される。この貨物倉3の上に船体前後方向に移動する荷役設備(図示しない)が設けられているが、この荷役装置が移動する部分と貨物倉3の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバー4を設けて、この全閉カバー4と上甲板5で囲まれた荷役区画6を形成する。この全閉カバー4は移動しないので、容易に優れた気密構造にすることができる。
【0031】
更に、この全閉カバー4内の荷役区画6に一端が開口され、ガス圧縮機等のガス圧調整装置7及びガス処理装置(図示しない)に他端が接続された第1配管8を設ける。また、貨物倉3の内部に一端が、荷役区画6の内部に他端が開口された第2配管9を各貨物倉3に設ける。この第2配管9には第1バルブ(第1のバルブ)9aを配設する。この第2配管9で各貨物倉3と荷役区画6との間をそれぞれ連通可能に構成する。
【0032】
この構成によれば、荷役区画6を設けて、貨物倉3のハッチ部分が直接大気に接しないように構成したので、貨物倉3で発生する可燃性ガスが大気中に放出され難くなる。
【0033】
また、可燃性ガスは貨物倉3内の貨物から発生するので、各貨物倉3のガスを第2配管9に備えた第1バルブ9aを開弁することにより、荷役区画6の内部に放出させることができる。また、第2配管9に備えた第1バルブ9aを流量調整可能な調整弁で構成し、流量とガス圧を調整しながら、各貨物倉3のガスを荷役区画6内に放出させる場合には、これにより、各貨物倉3のガス圧Pci(図1〜図5では、Pc1〜Pc6、即ち、i=1,2,3,4,5,6)を個別に制御することができる。
【0034】
この貨物倉3のガス圧Pciの制御により、貨物倉3の内部のガス圧Pciが高くなり過ぎることを防止できる。この場合に、各貨物倉3の内部のガス圧Pciは荷役区画6の内部のガス圧Pu以上となる。
【0035】
また、荷役区画6に設けた圧力センサ(図示しない)等で検出した圧力Puを検知して、ガス圧調整装置7により荷役区画6のガス圧Puを、貨物倉3や荷役区画6の外部の大気圧Paよりも高くすることができる。その結果、Pci≧Pu>Paとすることができる。これにより、万一の全閉カバー4の気密性に問題が生じた場合でも、荷役区画6の内部の可燃性ガスが放出されるので、空気が荷役区画6に侵入して爆発雰囲気を形成するのを防止できる。
【0036】
従って、可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納する貨物倉3を備えた船舶において、貨物倉3と荷役装置を覆う荷役区画6の両方を含む複数の区画3,6の圧力管理に際して、一つのガス圧縮機7で、一括して各貨物倉3と荷役区画6とを同時に制御することができて、ガス圧Pci,Puの制御を合理化することができる。これにより、貨物倉3及び荷役区画6の可燃性ガスを内包する複数の区画3,6を独立して圧力管理するような、図5に示すような複雑なシステムが不要となる。
【0037】
次に、図2〜図4に示す第2の実施の形態の船舶1Aについて説明する。この船舶1Aは、上記の第1の実施の形態の船舶1に、更に、次のような構成を加えたものである。
【0038】
第1配管8に接続する第3配管10を設けると共に、この第3配管10と各貨物倉3とが連通するように、分岐配管11を各貨物倉3に設ける。また、第1配管8に第2バルブ(第2のバルブ)8aを設ける。この第2バルブ8aの位置は、第3配管10が接続する部位12よりも荷役区画6側に設ける。また、第3配管10に第3バルブ(第3のバルブ)10aを設け、各分岐配管11に第4バルブ(第4のバルブ)11aをそれぞれ設ける。
【0039】
この構成によれば、次のような2種類の圧力管理方法を容易に切り替えて行うことができるようになる。
【0040】
第1の圧力管理方法は、貨物倉3と荷役区画6を同時に圧力管理する方法である。この方法では、第3バルブ10aと各分岐配管11の第4バルブ11aとを閉じて、第2バルブ8aを開弁し、ガス圧調整装置7でガス圧を調整することにより、荷役区画6のガス圧Puを、貨物倉3や荷役区画6の外部の大気圧Paよりも高くする。その結果、Pci≧Pu>Paとすることができる。
【0041】
また、第1のバルブ9aを流量調整可能な調整弁で構成して、流量とガス圧を調整しながら、各貨物倉3のガスをガス圧調整装置7に送る場合には、これにより、各貨物倉3のガス圧を個別に制御することができる。
【0042】
そして、第2の圧力管理方法は、貨物倉3のみを圧力管理する方法である。この方法では、第1バルブ9aと第2バルブ8aとを閉じて、第3バルブ10aを開弁することにより、ガス圧調整装置7で、荷役区画6のガス圧Puとは関係なく、貨物倉3のガス圧Pciを調整制御する。この場合、貨物倉3の内部の圧力を検知して、予め設定した圧力となるように制御するが、貨物倉3に空気が侵入することを防止するために、貨物倉3のガス圧Pciを大気圧Paに対してPci>Paとなるように圧力制御する。この方法では、容積の大きい荷役区画6が圧力制御対象から外れるので、非常に短時間で、Pci>Paにすることができる。
【0043】
また、第4のバルブ11aを流量調整可能な調整弁で構成して、流量とガス圧を調整しながら、各貨物倉3のガスをガス圧調整装置7に送る場合には、これにより、各貨物倉3のガス圧を個別に制御することができる。
【0044】
この第2の圧力管理方法は、次のような場合に用いられる。貨物倉3に可燃性ガスを発生する固形貨物が存在するので、荷役装置の保守及び修理を行う場合には、荷役装置が入っている荷役区画6の内部のみの可燃性ガスを空気に置換して人が荷役区画6内に立ち入ることができるようにする必要がある。この場合、貨物倉3のみの可燃性ガスのガス圧の圧力管理が必要となるが、各弁8a,9a,10a,11aの弁操作の切替により、容易に、従来技術のLNG船やLPG船の貨物タンクの圧力管理と同様に複数の貨物倉3の個別圧力の制御が可能となる圧力管理を行うことができる。
【0045】
従って、上記の船舶1、1Aによれば、荷役装置が移動する部分と貨物倉3の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバー5を設けて、荷役区画6を形成したので、気密性が増し、貨物倉3で発生する可燃性ガスの大気中への放出と、空気の荷役区画6や貨物倉3への侵入を防止できる。
【0046】
また、第1配管8に接続されたガス圧縮機等のガス圧調整装置7により、荷役区画6の内部のガス圧Puを制御して、大気圧Paよりも大きくすることができ、万一の全閉カバー4の気密性に問題が生じた場合でも、空気が貨物倉3又は荷役区画6に侵入して爆発雰囲気を形成するのを防止できる。
【0047】
更に、貨物倉3と荷役装置を覆う荷役区画6の両方を含む複数の区画3,6の圧力管理に際して、一つのガス圧縮機7で、一括して各貨物倉3と荷役区画6とを同時に制御することができて、ガス圧Pci,Puの制御を合理化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の船舶は、上記のように、貨物倉及び荷役区画の気密性を高めることができ、しかも、一つのガス圧縮機で、一括して各貨物倉と荷役区画のガス圧を大気圧よりも高くなるように制御することができるので、万一の全閉カバーの気密性に問題が生じた場合でも、空気が貨物倉又は荷役区画に侵入して爆発雰囲気を形成するのを防止できる。そのため、NGHハイドレート等の可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で運搬する船舶として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A 船舶
3 貨物倉
4 全閉カバー
5 上甲板
6 荷役区画
7 ガス圧調整装置
8 第1配管
8a 第2バルブ
9 第2配管
9a 第1バルブ
10 第3配管
10a 第3バルブ
11 分岐配管
11a 第4バルブ
Pci 貨物倉のガス圧
Pu 荷役区画のガス圧
Pa 大気圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスを発生する固形物をばら積みする貨物倉を備えた船舶において、前記貨物倉の上を船体前後方向に移動する荷役設備を設けると共に、該荷役装置が移動する部分と前記貨物倉の全部のハッチ部分を覆う気密構造の全閉カバーを設け、該全閉カバー内の荷役区画に一端が開口され、ガス圧調整装置に他端が接続された第1配管を設けたことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記貨物倉内部に一端が、前記荷役区画内部に他端が開口され、かつ、第1のバルブを備えた第2配管を各貨物倉に設けて、該第2配管で前各貨物倉と前記荷役区画との間をそれぞれ連通可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の船舶。
【請求項3】
前記第1配管に接続する第3配管を設けると共に、該第3配管に分岐配管を設けて、該分岐配管を前記各貨物倉と前記第3配管とが連通可能に構成すると共に、前記第1配管の前記第3配管が接続する部位よりも前記荷役区画側に第2のバルブを、前記第3配管に第3のバルブを、前記各分岐配管に第4のバルブをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−201992(P2010−201992A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47634(P2009−47634)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】