船首部に制御表面部を備えた船
本発明は、先鋭な船首部4を有する長くかつ細い単一の船体を備えている、荒れた海で使用し及び/又は高速で使用するように構成された船に関するものである。船体の船尾部11は、1つ又は複数のプロペラ9及び/又は水噴射装置を有する推進手段と、少なくとも1つの後部舵10とを備えている平坦又はややV字形の船底部7を有している。船1の前側部分3は、船尾部11の喫水と同一であるか又は大きい喫水を有している。本発明によれば、船首部4は、前方に航行している船1に沿った水の流れFを、船1の調整可能な横方向の力Bに変換する制御面5、16、20を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願の請求項1の前置き部(preamble)に記載されている種類の船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような構造を備えた大半の船(例えば、特許文献1参照)は、斜め後方から吹く比較的強い風とこの風に追随する波の中で航行するときには、「ブローチング(broaching)」の発生により、危険な状態となることがある。ブローチングは、船の異常な挙動であり、船首揺れ運動(yaw motion)、左右揺れ運動(sway motion)及び横揺れ運動(roll motion)が競合して生じる現象である。上記のような波の状態のでは、船にこのようなブローチング現象が発生する可能性があるが、ブローチングが発生すると、横揺れの傾斜角(roll angle)が極めて大きくなるおそれがあり、はなはだしい場合は船が「転覆(capsize)」することもある。
【0003】
ブローチングとは、およそ下記のような現象である。すなわち、斜め後方から風が吹くとともに波が到来する状態においては、到来する波により船尾部が非対称的に持ち上げられ、船は横方向に(縦方向にも)傾斜し始める。なお、ブローチングは、船の長さに近い波長の波の中ではとくに発生しやすい。これと同時に、船は、その船首部を、(次に到来する)波の傾斜前面(face)に載せる。このようにして生じた横方向の傾斜角に起因する船体の非対称な姿勢により、水の中に深く入っている船尾部の方向安定性が悪くなり、船は船首揺れ(yaw)を開始する。この船首揺れは、前向きの船の速度と相まって、船の横方向の傾斜角を増加させることになり、その回転は船体の非対称性を悪化させるとともに、船の進路の不安定性をさらに大きくする。これは、船の横方向の傾斜角をさらに大きくすることになり、主として船の波に対向する舷側部を危険な状態に陥らせることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.A.コイニング(Keuning)、S.トクソポイス(Toxopeus)、J.ピンクスター(Pinkster)「高速単一船体の耐航性能に対する船首部の形状の効果(The effect of bow-shape on the seakeeping performance of a fast monohull)」、2001年9月発行に発行されたFAST2001会議の議事録、第197〜206頁、ISBN0903055708、王立造船学会(Royal Institute of Naval Architects)発行。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速船の場合、このようなブローチング現象は、普通の船の場合に比べてより頻繁に発生し、かつより深刻な結果を生じさせることになる。なぜなら、高速船は、一般に小型であり、したがって船の大きさに対して相対的に大きな波の中を航行することになるからである。また、前方への高速航行時には、船が旋回しているときの遠心力と、船と波とが頻繁にぶつかることとにより、横方向の傾斜が惹起され、その影響により船の状態が悪化する。とくに、長く高い波は、低周波数であり、船に対する影響ないしは衝撃(impact)が大きくなる。
【0006】
船は、通常、操舵手(helmsman)の操舵により又は自動操舵(autopilot)により、進行方向が制御される。一般に、このように行われる制御は、船を予め設定された進路に維持することを目標ないしは目的としている。経験と、実物ないしは原寸模型での測定と、縮尺模型での測定とによれば、波の中で行われるこのような進行方向の制御は、船に加えられる操舵力とこれにより惹起される横方向に傾斜する方向のモーメントとの間の好ましくない位相(phase)により、船のブローチング挙動を悪化させる、ということが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来の欠点を克服するために、請求項1に記載された船を提供する。この船においては、船の進行方向の制御において追加的な制御表面部(control surface)ないしは制御表面部材を用いることにより、ブローチングに対する抵抗性を大きくすることができ、この制御表面部によって生成される力を、横揺れ運動(roll motion)及び左右揺れ運動(sway motion)を制御するために有効に用いることができる。この制御表面部を、できる限り船の前側の位置に設けることにより、船の船首揺れ及び横方向の傾きの両方を有効に制御することができる。かくして、下記のとおりの利点ないしは効果を奏する。すなわち、船が右舷後方からの風及び波の中で航行する状況下においては、船が横方向にみて左舷側に傾いた後、船の後側部分(stern)が波によって持ち上げられる。船体の水面下に存在する部分の非対称的な形状ないしは姿勢は、船を右舷側に回転させようとする船首揺れモーメント(ヨー・モーメント)を生じさせる。そして、船首部の近傍において制御表面部に修正動作が加えられ、進路変化を修正する。ここで、必要とされる力は、左舷側に向く横方向の力である。この力は、右舷側に向く横揺れ運動(ローリング運動)となり、横方向の傾斜角を減少させる。
【0008】
本発明の1つの実施態様によれば、請求項2に係る船が提供される。このような構造の船は、本発明を応用するのにとくに適している。この種の船は、前記の特許文献1に開示されている。特許文献1においては、この種の船は、AXE BOW構造(AXE BOW design)であると説明されている。前側に向かって大きくなる喫水(draught)及び前側に向かって大きくなる乾舷(freeboard)は、船が荒れた海を航行するのに適切なものである一方、荒れた海(heavy sea)において制御表面部が海面下の十分に深い位置に位置することを確実化する。
【0009】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項3に係る船が提供される。この船においては、本発明に係る制御表面部を設けるために、船首部はとくに好ましく、ほぼ直立している(more or less vertical)。
【0010】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項4に係る船が提供される。このようにフィレット半径を設定することにより、船の長さを短くすることができ、これにより波の中における船の挙動に不都合な影響を及ぼすことなく、船の水と接する表面を小さくして流動抵抗を低減することができる。
【0011】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項5に係る船が提供される。この船においては、波によって加わる付加的な抵抗が減少するので、荒れた海における船の挙動を改善することができる。
【0012】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項6に係る船が提供される。この船においては、操舵性(steering capability)及び制御性(control capability)を有効に高めつつ、船の構成を簡素化することができる。
【0013】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項7に係る船が提供される。この船においては、船体に沿う水の流れを良好にする構造を容易に実現することができ、駆動されていないときにおける制御表面部の流動抵抗(drag)を最小にすることができる。
【0014】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項8に係る船が提供される。この実施態様によれば、高速航行時において、良好な制御能力と高効率とを両立させることができる。
【0015】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項9に係る船が提供される。この船においては、船の横方向の傾き(heeling)とブローチングとをともに容易に低減することができる。
【0016】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項10に係る船が提供される。この船においては、手動操作で、制御表面部の使用状態ないしは仕様態様を、船の周囲の状況及び波の状態の変化に適応させることができる。
【0017】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項11に係る船が提供される。この船においては、自動操作で、制御表面部の使用状態ないしは仕様態様を、船の周囲の状況及び波の状態の変化に適応させることができる。
【0018】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項12に係る船が提供される。この船においては、船の挙動を改善させることができるときにのみ、制御表面部を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船の斜視図である。
【図2a】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の種々の断面を示している。
【図2b】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の側部を示している。
【図2c】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の底部を示している。
【図3】図1に示す船の背面図であり、波の中における力を模式的に示している。
【図4】図1に示す船の上面図であり、波の中における力を模式的に示している。
【図5a】第1の実施形態に係る制御表面を備えた、図1に示す船の船首部の斜視図である。
【図5b】第1の実施形態に係る制御表面を備えた、図1に示す船の船首部の正面図である。
【図5c】図5aに示す船首部Vc―Vc線断面図である。
【図6a】第2の実施形態に係る制御表面の斜視図である。
【図6b】図6aに示す制御表面のVIb−VIb断面図である。
【図7a】第3の実施形態に係る制御表面の斜視図である。
【図7b】図7aに示す制御表面のVIIb−VIIb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しつつ、いくつかの典型的な実施形態により、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
図1は、図2a〜2cに示す構造図面(body plan)ないしは正面線図により建造された船1を示している。船1は、高速船として建造され、長くかつ細い単一の船体(hull)ないしは船殻を有している。ここで、船体の長さは、梁(beam)の長さの少なくとも5倍であり、長い船では梁の長さの7ないし8倍である。比較的短い船の場合は、船体に推進手段を設けなければならないので、梁は比較的大きくなる。幅の広い梁は、十分な安定性を維持することを確実にする。船1は、その船尾部11に、1つ又は複数のプロペラ9(propeller)と、1つ又は複数の後部舵10(aft rudder)とを有している。船1を低速で操縦するために、船首部4(bow)の近傍において前側部分3(foreship)にバウスラスター6(bow thruster)が設けられている。甲板には、従来の船と同様に、例えばホイールハウス2(wheel house)ないしは操舵室が配置されている。船首部4には、後で説明する機能を有する船首舵5(bow rudder)が設けられている。
【0022】
図2a〜2cに示すように、船1の船体は、特別な設計構造(design)を有している。具体的には、この設計構造においては、左右の舷側部8を備えた船体の水面下の体積の瞬間的な変化を最小にすることにより、とくに船の前側部分3におけるフルードクリロフ力(Froude Kriloff force)の低減を実現することができ、また波又は船1の運動に起因する、水位に対する相対的な移動ないしは運動を大きくすることができる。
【0023】
したがって、ほぼ直立した舷側部8を用いる設計構造がとくに好ましい。構造設計におけるさらなる手法(measure)は、とくに船の前側部分3における部分(section)の水線梁(waterline beam)の変化を小さくする一方、前記のように相対的な移動ないしは運動を大きくすることである。これは、船首部4のフレア部が最小となり、船首部4はほぼ直立した輪郭線又は船首を有し、又は前方もしくは後方に5度未満の角度で傾斜して伸びるということを意味する。このような設計構造とすることにより、上記部分における付加質量(added mass)の変化が最小となり、船の前側部分3における流体力学的な揚力又は持ち上げ(hydrodynamic lift)の変化も最小となる。船の前側部分3において船首部4に向かって甲板線をより高く(大きく)するとともに、乾舷を大きくすることにより、十分な予備浮力(reserve buoyancy)の確保を確実化することができる。
【0024】
船の前側部分3におけるシアー(shear)の増加量は、船のサイズ及び速度並びに関連する波候(wave climate)に応じて決定される。船の前側部分3に向かって下降傾斜している船1の中心線(center line)は、船1の前側部分3が一旦水面から離れて再び水中に入る、すなわちジャンプするのを防止する一方、船1の水に対する相対的な移動ないしは運動を大きくする。船底部7における負の傾斜量(amount of negative slope)は、船1のサイズ及び速度並びに関連する波候(wave climate)に応じて決定される。船首部4から船尾部11までの部分の船底勾配角は、励振力(exciting force)を最小にするとともに、最小の抵抗でもって十分な流体力学的揚力を維持するよう注意深く決定される。
【0025】
船体の形態を総括的に説明すれば、以下のとおりである。すなわち、船体は長くかつ細い形状であり、船首部4の部分(section)にはフレア部は存在せず、船首部4では舷側部8がほぼ直立している。船首部4の近傍において、2つの舷側部8は、水平面(平面図)でみれば、互いに40度より小さい角度αをなしている。船の中心線に対して前向きに下降傾斜する増加するシアー(increased sheer)が存在し、水線の入口部ないしは前部は湾曲している。水と接する表面を低減するために、船首部4は、少なくとも0.1mの半径Rで湾曲している。船1の梁ないしはビームの形態に応じて、上記半径は、梁の少なくとも1%であるのが好ましい。この半径Rのさらなる利点は、船1の舷側部8に沿う渦流(vortex shedding)を、前記したように回避することができることである。この設計構造では、この渦流は、船首部4が普通の高速船として先鋭すぎる場合は、ヨー角が小さい状態で発生する。この渦流は、船1の進路の不安定性を生じさせるので回避しなければならない。湾曲した船首部4が、あまりにも多いよどみ点抵抗を生成し、及び/又は、あまりにも多いしぶきを生成するのを防止するために、半径Rは梁の4%未満に設定されている。
【0026】
図3及び図4は、船1の斜め後方から船尾部11に近づいてくる波W中における船1の挙動を示している。船1が基準位置(level)にあるときには、水位s(water level)は通常の状態(normal situation)である。波Wが、左舷の斜め後方から船尾部11に到来するときには、これらの波によって水位はs’となる。これらの波Wは、船尾部11の左舷側の舷側部8にあたり、船1の中心軸Iを、参照番号12で示すような進路に合致する方向から、進路から外れた方向に変化させる。このため、船の中心軸は、I’で示す向きとなり、船1は参照番号13で示す状態となる。
【0027】
船1が所定の進路から外れたときには、後部舵10を用いて船1の状態を進路に合致するように戻すことができる。そして、後部舵10は、図3及び図4に示すように所定の適切な位置に配置ないしは位置決めされ、後部舵10に力Aが作用し、あるいは生成される)。この力は、波Wの力とともに、角度調節トルク(tilting torque)を生成する。要するに、後部舵10に起因する力は、舷側部8への波の力を強化する。船1が進路に合致する状態になれば、船首舵5を用いて船首舵5に力Bが作用し、あるいは生成される。この力Bは、波Wによって生成される力と同一方向の力であり、波Wの角度調節トルクとは反対方向の力である。要するに、船1の向きないしは姿勢を進路に合致させるために用いられる船首舵5に起因する力Bは、波Wに起因する船の傾き(tilting)を低減する。この有益又は有利な結果は、斜め後方から船に到来する波Wのみに関するものであり、船首舵5を用いて前部(図示せず)から到来する波Wに関しては、船の傾きを増加させる結果となる。
【0028】
船首舵5は、波が斜め後方から船に到来するときにおいて、舷側部に到来する波Wが前記のように進路の変化を生じさせる結果となるときにのみ用いられる。前記のように、船1が前側部分3に最大喫水をもつように設計・建造されている場合は、船1は、舷側部(sideways)又は周囲のやや前方の部位(a few compass point forward)に到来する波Wは、同様の挙動を生じさせる結果となり、船首舵5の使用が有効ないしは有利となる。
【0029】
船1には、後部舵10による操舵から、船首舵5又は両方の舵5、10による操舵に切り替えるための切替手段が設けられている。この操舵の切り替えは、自動操舵システムを用いて操舵を行っているときに、自動操舵システムに波Wが到来する方向を手動操作で指令することにより行うことができる。この操舵システムは、この指令ないしは情報を考慮して操舵制御を行う。自動操舵システムはまた、波Wが到来する方向を計算するためのアルゴリズムも備えている。自動操舵システムには、例えばジャイロスコープないしは姿勢制御装置を用いて船1の運動ないしは移動の状態を決定するためのセンサが設けられている。
【0030】
図5a、図5b及び図5cは、船1の前側部分3に取り付けられた船首舵5をより詳しく示している。船首舵5は、船首部4の最も低い部分に位置し、ほぼ直立した回転軸14を有している。船首舵5の形状は、下記のように設定されている。すなわち、船首舵5がその中央位置(middle position)にあるときには、船首舵5の輪郭は、図2a〜2cに示されているような船体の形状に一致ないしは整合する。この場合、水の流れFは、船首舵5によって影響されない。船首舵5の一部は回転軸14より前側に位置する。このため、船首舵5を回転させるためのトルクは、従来使用されている舵の場合と同様に、部分的に釣り合いないしはバランスがとれる。船首舵5は、従来の既知の舵と同様の手法で回転させることができる。
【0031】
図6a及び図6bは、本発明の第2の実施形態に係る船1の船首部4を示している。この船1では、船首部4に配置された普通の仕様の舵とは異なり、船1を操舵するための横方向の力Bは、側部フラップに沿う流れFによって生成される。船首4の各舷側部には、それぞれ側部フラップ16(side flap)が設けられ、これらの側部フラップ16はほぼ直立した軸17のまわりに回転する。ここで、軸17は、支持部15(support)によって、船首部4の最も低い部分ないしは部位で支持されている。側部フラップ16は、駆動されていないときには、船1の前側部分3の輪郭に一致ないしは整合し、支柱18(brace)に接触するように(against)配置されている。この船1には、調整可能な横方向の力Bを生成することができるように側部フラップ16を移動ないしは変位させるための移動機構19(mechanism)が設けられている。この移動機構19は、それぞれ前側部分3及び側部フラップ16に接続された、互いにヒンジ連結された2つのレバー(lever)により形成することができる。ヒンジ連結されたこれらのレバーは、液圧シリンダないしは水圧シリンダ又は油圧シリンダ(図示せず)により垂直方向(vertical direction)に移動させることができる。この液圧シリンダは、水位ないしは水面の上方に配置される。また、液圧シリンダは、一方又は他方のいずれかの側部フラップ16を、横方向の力Bを生成するために前側部分3の輪郭ないしは外殻の外側へ移動させるような態様で制御される。
【0032】
図7a及び図7bは、本発明の第3の実施形態に係る船1の船首部4を示している。この船1では、船首部4の水面下の部分(submerged part)に、ほぼ直立した回転軸21のまわりに回転することができるロータ20が設けられている。ロータ20を駆動するために、変速機22(transmission)を介してロータ20を駆動する駆動装置23が設けられている。駆動装置23は、電気駆動式又は液圧駆動式のものであって、水位ないしは水面の上方に配置されている。ロータ20は、回転時には、いわゆるマグナスロータ(Magnus motor)として機能し、船首部4の各舷側部に非対称な圧力場(asymmetric pressure field)を生成する。その結果、横方向の力Bが生成される。ロータ20の回転速度を変えることにより、横方向の力Bの大きさを調整することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 船、2 ホイールハウス(操舵室)、3 前側部分、4 船首部(バウ)、5 船首舵、6 バウスラスター、8 舷側部、9 プロペラ、10 後部舵、11 船尾部、14 回転軸、15 支持部、16 舷側フラップ、17 直立軸、20 ロータ、21 回転軸、22 変速機、23 駆動装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願の請求項1の前置き部(preamble)に記載されている種類の船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような構造を備えた大半の船(例えば、特許文献1参照)は、斜め後方から吹く比較的強い風とこの風に追随する波の中で航行するときには、「ブローチング(broaching)」の発生により、危険な状態となることがある。ブローチングは、船の異常な挙動であり、船首揺れ運動(yaw motion)、左右揺れ運動(sway motion)及び横揺れ運動(roll motion)が競合して生じる現象である。上記のような波の状態のでは、船にこのようなブローチング現象が発生する可能性があるが、ブローチングが発生すると、横揺れの傾斜角(roll angle)が極めて大きくなるおそれがあり、はなはだしい場合は船が「転覆(capsize)」することもある。
【0003】
ブローチングとは、およそ下記のような現象である。すなわち、斜め後方から風が吹くとともに波が到来する状態においては、到来する波により船尾部が非対称的に持ち上げられ、船は横方向に(縦方向にも)傾斜し始める。なお、ブローチングは、船の長さに近い波長の波の中ではとくに発生しやすい。これと同時に、船は、その船首部を、(次に到来する)波の傾斜前面(face)に載せる。このようにして生じた横方向の傾斜角に起因する船体の非対称な姿勢により、水の中に深く入っている船尾部の方向安定性が悪くなり、船は船首揺れ(yaw)を開始する。この船首揺れは、前向きの船の速度と相まって、船の横方向の傾斜角を増加させることになり、その回転は船体の非対称性を悪化させるとともに、船の進路の不安定性をさらに大きくする。これは、船の横方向の傾斜角をさらに大きくすることになり、主として船の波に対向する舷側部を危険な状態に陥らせることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.A.コイニング(Keuning)、S.トクソポイス(Toxopeus)、J.ピンクスター(Pinkster)「高速単一船体の耐航性能に対する船首部の形状の効果(The effect of bow-shape on the seakeeping performance of a fast monohull)」、2001年9月発行に発行されたFAST2001会議の議事録、第197〜206頁、ISBN0903055708、王立造船学会(Royal Institute of Naval Architects)発行。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速船の場合、このようなブローチング現象は、普通の船の場合に比べてより頻繁に発生し、かつより深刻な結果を生じさせることになる。なぜなら、高速船は、一般に小型であり、したがって船の大きさに対して相対的に大きな波の中を航行することになるからである。また、前方への高速航行時には、船が旋回しているときの遠心力と、船と波とが頻繁にぶつかることとにより、横方向の傾斜が惹起され、その影響により船の状態が悪化する。とくに、長く高い波は、低周波数であり、船に対する影響ないしは衝撃(impact)が大きくなる。
【0006】
船は、通常、操舵手(helmsman)の操舵により又は自動操舵(autopilot)により、進行方向が制御される。一般に、このように行われる制御は、船を予め設定された進路に維持することを目標ないしは目的としている。経験と、実物ないしは原寸模型での測定と、縮尺模型での測定とによれば、波の中で行われるこのような進行方向の制御は、船に加えられる操舵力とこれにより惹起される横方向に傾斜する方向のモーメントとの間の好ましくない位相(phase)により、船のブローチング挙動を悪化させる、ということが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来の欠点を克服するために、請求項1に記載された船を提供する。この船においては、船の進行方向の制御において追加的な制御表面部(control surface)ないしは制御表面部材を用いることにより、ブローチングに対する抵抗性を大きくすることができ、この制御表面部によって生成される力を、横揺れ運動(roll motion)及び左右揺れ運動(sway motion)を制御するために有効に用いることができる。この制御表面部を、できる限り船の前側の位置に設けることにより、船の船首揺れ及び横方向の傾きの両方を有効に制御することができる。かくして、下記のとおりの利点ないしは効果を奏する。すなわち、船が右舷後方からの風及び波の中で航行する状況下においては、船が横方向にみて左舷側に傾いた後、船の後側部分(stern)が波によって持ち上げられる。船体の水面下に存在する部分の非対称的な形状ないしは姿勢は、船を右舷側に回転させようとする船首揺れモーメント(ヨー・モーメント)を生じさせる。そして、船首部の近傍において制御表面部に修正動作が加えられ、進路変化を修正する。ここで、必要とされる力は、左舷側に向く横方向の力である。この力は、右舷側に向く横揺れ運動(ローリング運動)となり、横方向の傾斜角を減少させる。
【0008】
本発明の1つの実施態様によれば、請求項2に係る船が提供される。このような構造の船は、本発明を応用するのにとくに適している。この種の船は、前記の特許文献1に開示されている。特許文献1においては、この種の船は、AXE BOW構造(AXE BOW design)であると説明されている。前側に向かって大きくなる喫水(draught)及び前側に向かって大きくなる乾舷(freeboard)は、船が荒れた海を航行するのに適切なものである一方、荒れた海(heavy sea)において制御表面部が海面下の十分に深い位置に位置することを確実化する。
【0009】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項3に係る船が提供される。この船においては、本発明に係る制御表面部を設けるために、船首部はとくに好ましく、ほぼ直立している(more or less vertical)。
【0010】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項4に係る船が提供される。このようにフィレット半径を設定することにより、船の長さを短くすることができ、これにより波の中における船の挙動に不都合な影響を及ぼすことなく、船の水と接する表面を小さくして流動抵抗を低減することができる。
【0011】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項5に係る船が提供される。この船においては、波によって加わる付加的な抵抗が減少するので、荒れた海における船の挙動を改善することができる。
【0012】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項6に係る船が提供される。この船においては、操舵性(steering capability)及び制御性(control capability)を有効に高めつつ、船の構成を簡素化することができる。
【0013】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項7に係る船が提供される。この船においては、船体に沿う水の流れを良好にする構造を容易に実現することができ、駆動されていないときにおける制御表面部の流動抵抗(drag)を最小にすることができる。
【0014】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項8に係る船が提供される。この実施態様によれば、高速航行時において、良好な制御能力と高効率とを両立させることができる。
【0015】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項9に係る船が提供される。この船においては、船の横方向の傾き(heeling)とブローチングとをともに容易に低減することができる。
【0016】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項10に係る船が提供される。この船においては、手動操作で、制御表面部の使用状態ないしは仕様態様を、船の周囲の状況及び波の状態の変化に適応させることができる。
【0017】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項11に係る船が提供される。この船においては、自動操作で、制御表面部の使用状態ないしは仕様態様を、船の周囲の状況及び波の状態の変化に適応させることができる。
【0018】
本発明のさらなる実施態様によれば、請求項12に係る船が提供される。この船においては、船の挙動を改善させることができるときにのみ、制御表面部を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船の斜視図である。
【図2a】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の種々の断面を示している。
【図2b】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の側部を示している。
【図2c】本発明に係る船の船体の構造図面であり、船の底部を示している。
【図3】図1に示す船の背面図であり、波の中における力を模式的に示している。
【図4】図1に示す船の上面図であり、波の中における力を模式的に示している。
【図5a】第1の実施形態に係る制御表面を備えた、図1に示す船の船首部の斜視図である。
【図5b】第1の実施形態に係る制御表面を備えた、図1に示す船の船首部の正面図である。
【図5c】図5aに示す船首部Vc―Vc線断面図である。
【図6a】第2の実施形態に係る制御表面の斜視図である。
【図6b】図6aに示す制御表面のVIb−VIb断面図である。
【図7a】第3の実施形態に係る制御表面の斜視図である。
【図7b】図7aに示す制御表面のVIIb−VIIb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しつつ、いくつかの典型的な実施形態により、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
図1は、図2a〜2cに示す構造図面(body plan)ないしは正面線図により建造された船1を示している。船1は、高速船として建造され、長くかつ細い単一の船体(hull)ないしは船殻を有している。ここで、船体の長さは、梁(beam)の長さの少なくとも5倍であり、長い船では梁の長さの7ないし8倍である。比較的短い船の場合は、船体に推進手段を設けなければならないので、梁は比較的大きくなる。幅の広い梁は、十分な安定性を維持することを確実にする。船1は、その船尾部11に、1つ又は複数のプロペラ9(propeller)と、1つ又は複数の後部舵10(aft rudder)とを有している。船1を低速で操縦するために、船首部4(bow)の近傍において前側部分3(foreship)にバウスラスター6(bow thruster)が設けられている。甲板には、従来の船と同様に、例えばホイールハウス2(wheel house)ないしは操舵室が配置されている。船首部4には、後で説明する機能を有する船首舵5(bow rudder)が設けられている。
【0022】
図2a〜2cに示すように、船1の船体は、特別な設計構造(design)を有している。具体的には、この設計構造においては、左右の舷側部8を備えた船体の水面下の体積の瞬間的な変化を最小にすることにより、とくに船の前側部分3におけるフルードクリロフ力(Froude Kriloff force)の低減を実現することができ、また波又は船1の運動に起因する、水位に対する相対的な移動ないしは運動を大きくすることができる。
【0023】
したがって、ほぼ直立した舷側部8を用いる設計構造がとくに好ましい。構造設計におけるさらなる手法(measure)は、とくに船の前側部分3における部分(section)の水線梁(waterline beam)の変化を小さくする一方、前記のように相対的な移動ないしは運動を大きくすることである。これは、船首部4のフレア部が最小となり、船首部4はほぼ直立した輪郭線又は船首を有し、又は前方もしくは後方に5度未満の角度で傾斜して伸びるということを意味する。このような設計構造とすることにより、上記部分における付加質量(added mass)の変化が最小となり、船の前側部分3における流体力学的な揚力又は持ち上げ(hydrodynamic lift)の変化も最小となる。船の前側部分3において船首部4に向かって甲板線をより高く(大きく)するとともに、乾舷を大きくすることにより、十分な予備浮力(reserve buoyancy)の確保を確実化することができる。
【0024】
船の前側部分3におけるシアー(shear)の増加量は、船のサイズ及び速度並びに関連する波候(wave climate)に応じて決定される。船の前側部分3に向かって下降傾斜している船1の中心線(center line)は、船1の前側部分3が一旦水面から離れて再び水中に入る、すなわちジャンプするのを防止する一方、船1の水に対する相対的な移動ないしは運動を大きくする。船底部7における負の傾斜量(amount of negative slope)は、船1のサイズ及び速度並びに関連する波候(wave climate)に応じて決定される。船首部4から船尾部11までの部分の船底勾配角は、励振力(exciting force)を最小にするとともに、最小の抵抗でもって十分な流体力学的揚力を維持するよう注意深く決定される。
【0025】
船体の形態を総括的に説明すれば、以下のとおりである。すなわち、船体は長くかつ細い形状であり、船首部4の部分(section)にはフレア部は存在せず、船首部4では舷側部8がほぼ直立している。船首部4の近傍において、2つの舷側部8は、水平面(平面図)でみれば、互いに40度より小さい角度αをなしている。船の中心線に対して前向きに下降傾斜する増加するシアー(increased sheer)が存在し、水線の入口部ないしは前部は湾曲している。水と接する表面を低減するために、船首部4は、少なくとも0.1mの半径Rで湾曲している。船1の梁ないしはビームの形態に応じて、上記半径は、梁の少なくとも1%であるのが好ましい。この半径Rのさらなる利点は、船1の舷側部8に沿う渦流(vortex shedding)を、前記したように回避することができることである。この設計構造では、この渦流は、船首部4が普通の高速船として先鋭すぎる場合は、ヨー角が小さい状態で発生する。この渦流は、船1の進路の不安定性を生じさせるので回避しなければならない。湾曲した船首部4が、あまりにも多いよどみ点抵抗を生成し、及び/又は、あまりにも多いしぶきを生成するのを防止するために、半径Rは梁の4%未満に設定されている。
【0026】
図3及び図4は、船1の斜め後方から船尾部11に近づいてくる波W中における船1の挙動を示している。船1が基準位置(level)にあるときには、水位s(water level)は通常の状態(normal situation)である。波Wが、左舷の斜め後方から船尾部11に到来するときには、これらの波によって水位はs’となる。これらの波Wは、船尾部11の左舷側の舷側部8にあたり、船1の中心軸Iを、参照番号12で示すような進路に合致する方向から、進路から外れた方向に変化させる。このため、船の中心軸は、I’で示す向きとなり、船1は参照番号13で示す状態となる。
【0027】
船1が所定の進路から外れたときには、後部舵10を用いて船1の状態を進路に合致するように戻すことができる。そして、後部舵10は、図3及び図4に示すように所定の適切な位置に配置ないしは位置決めされ、後部舵10に力Aが作用し、あるいは生成される)。この力は、波Wの力とともに、角度調節トルク(tilting torque)を生成する。要するに、後部舵10に起因する力は、舷側部8への波の力を強化する。船1が進路に合致する状態になれば、船首舵5を用いて船首舵5に力Bが作用し、あるいは生成される。この力Bは、波Wによって生成される力と同一方向の力であり、波Wの角度調節トルクとは反対方向の力である。要するに、船1の向きないしは姿勢を進路に合致させるために用いられる船首舵5に起因する力Bは、波Wに起因する船の傾き(tilting)を低減する。この有益又は有利な結果は、斜め後方から船に到来する波Wのみに関するものであり、船首舵5を用いて前部(図示せず)から到来する波Wに関しては、船の傾きを増加させる結果となる。
【0028】
船首舵5は、波が斜め後方から船に到来するときにおいて、舷側部に到来する波Wが前記のように進路の変化を生じさせる結果となるときにのみ用いられる。前記のように、船1が前側部分3に最大喫水をもつように設計・建造されている場合は、船1は、舷側部(sideways)又は周囲のやや前方の部位(a few compass point forward)に到来する波Wは、同様の挙動を生じさせる結果となり、船首舵5の使用が有効ないしは有利となる。
【0029】
船1には、後部舵10による操舵から、船首舵5又は両方の舵5、10による操舵に切り替えるための切替手段が設けられている。この操舵の切り替えは、自動操舵システムを用いて操舵を行っているときに、自動操舵システムに波Wが到来する方向を手動操作で指令することにより行うことができる。この操舵システムは、この指令ないしは情報を考慮して操舵制御を行う。自動操舵システムはまた、波Wが到来する方向を計算するためのアルゴリズムも備えている。自動操舵システムには、例えばジャイロスコープないしは姿勢制御装置を用いて船1の運動ないしは移動の状態を決定するためのセンサが設けられている。
【0030】
図5a、図5b及び図5cは、船1の前側部分3に取り付けられた船首舵5をより詳しく示している。船首舵5は、船首部4の最も低い部分に位置し、ほぼ直立した回転軸14を有している。船首舵5の形状は、下記のように設定されている。すなわち、船首舵5がその中央位置(middle position)にあるときには、船首舵5の輪郭は、図2a〜2cに示されているような船体の形状に一致ないしは整合する。この場合、水の流れFは、船首舵5によって影響されない。船首舵5の一部は回転軸14より前側に位置する。このため、船首舵5を回転させるためのトルクは、従来使用されている舵の場合と同様に、部分的に釣り合いないしはバランスがとれる。船首舵5は、従来の既知の舵と同様の手法で回転させることができる。
【0031】
図6a及び図6bは、本発明の第2の実施形態に係る船1の船首部4を示している。この船1では、船首部4に配置された普通の仕様の舵とは異なり、船1を操舵するための横方向の力Bは、側部フラップに沿う流れFによって生成される。船首4の各舷側部には、それぞれ側部フラップ16(side flap)が設けられ、これらの側部フラップ16はほぼ直立した軸17のまわりに回転する。ここで、軸17は、支持部15(support)によって、船首部4の最も低い部分ないしは部位で支持されている。側部フラップ16は、駆動されていないときには、船1の前側部分3の輪郭に一致ないしは整合し、支柱18(brace)に接触するように(against)配置されている。この船1には、調整可能な横方向の力Bを生成することができるように側部フラップ16を移動ないしは変位させるための移動機構19(mechanism)が設けられている。この移動機構19は、それぞれ前側部分3及び側部フラップ16に接続された、互いにヒンジ連結された2つのレバー(lever)により形成することができる。ヒンジ連結されたこれらのレバーは、液圧シリンダないしは水圧シリンダ又は油圧シリンダ(図示せず)により垂直方向(vertical direction)に移動させることができる。この液圧シリンダは、水位ないしは水面の上方に配置される。また、液圧シリンダは、一方又は他方のいずれかの側部フラップ16を、横方向の力Bを生成するために前側部分3の輪郭ないしは外殻の外側へ移動させるような態様で制御される。
【0032】
図7a及び図7bは、本発明の第3の実施形態に係る船1の船首部4を示している。この船1では、船首部4の水面下の部分(submerged part)に、ほぼ直立した回転軸21のまわりに回転することができるロータ20が設けられている。ロータ20を駆動するために、変速機22(transmission)を介してロータ20を駆動する駆動装置23が設けられている。駆動装置23は、電気駆動式又は液圧駆動式のものであって、水位ないしは水面の上方に配置されている。ロータ20は、回転時には、いわゆるマグナスロータ(Magnus motor)として機能し、船首部4の各舷側部に非対称な圧力場(asymmetric pressure field)を生成する。その結果、横方向の力Bが生成される。ロータ20の回転速度を変えることにより、横方向の力Bの大きさを調整することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 船、2 ホイールハウス(操舵室)、3 前側部分、4 船首部(バウ)、5 船首舵、6 バウスラスター、8 舷側部、9 プロペラ、10 後部舵、11 船尾部、14 回転軸、15 支持部、16 舷側フラップ、17 直立軸、20 ロータ、21 回転軸、22 変速機、23 駆動装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首部(4)を有する長くかつ細い単一の船体を備えている、荒れた海で使用し及び/又は高速で使用するように構成された船であって、
上記船体の船尾部(11)が、1つ又は複数のプロペラ(9)及び/又は水噴射装置を有する推進手段と、少なくとも1つの後部舵(10)とを備えている平坦又はややV字形の船底部(7)を有していて、
該船(1)の前側部分(3)が、上記船尾部(11)の喫水と同一であるか又は大きい喫水を有していて、
上記船首部(4)が、前方に航行している該船(1)に沿う水の流れ(F)を、該船(1)の調整可能な横方向の力(B)に変換する制御表面部(5、16、20)を備えていることを特徴とする船。
【請求項2】
上記船体の前半部が、ほぼ直立した舷側部と、上記船首部に形成された最小のフレア部と、上記船体の中心線の位置において上記船首部に向かって増加する喫水と、上記喫水の増加とほぼ同様に増加する乾舷とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の船。
【請求項3】
上記船首部が、ほぼ直立した船首先端部を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の船。
【請求項4】
上記船首部(4)の近傍における左右の舷側部(8)が、水平断面でみて、少なくとも1%mのフィレット半径(R)を有するとともに、先鋭な角度(α)を形成していることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の船。
【請求項5】
上記船首部(4)の近傍における上記左右の舷側部(8)の先鋭な角度(α)が40度未満であることを特徴とする、請求項4に記載の船。
【請求項6】
上記制御面が、船首舵(5)を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の船。
【請求項7】
上記制御面が、上記船首部(4)の各舷側部に配置された調整可能なフラップ(16)を備えていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の船。
【請求項8】
上記制御面が、直立して取り付けられたロータ(20)を備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の船。
【請求項9】
上記制御表面部(5、16、20)が、該船の進路、速度及び/又は横傾斜角を検出するセンサを備えた上記横方向の力(B)を制御する制御システムに接続されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の船。
【請求項10】
上記制御システムが、該船の進路に対して到来する波(W)の振幅及び/又は角度を設定する設定手段に接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の船。
【請求項11】
上記制御システムが、該船の進路に対して到来する波(W)の振幅及び/又は角度を計算するアルゴリズムを備えていることを特徴とする、請求項9に記載の船。
【請求項12】
上記制御システムが、到来する波が該船の斜め後方からの風による場合にのみ、上記制御表面部(5、16、20)を駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載の船。
【請求項1】
船首部(4)を有する長くかつ細い単一の船体を備えている、荒れた海で使用し及び/又は高速で使用するように構成された船であって、
上記船体の船尾部(11)が、1つ又は複数のプロペラ(9)及び/又は水噴射装置を有する推進手段と、少なくとも1つの後部舵(10)とを備えている平坦又はややV字形の船底部(7)を有していて、
該船(1)の前側部分(3)が、上記船尾部(11)の喫水と同一であるか又は大きい喫水を有していて、
上記船首部(4)が、前方に航行している該船(1)に沿う水の流れ(F)を、該船(1)の調整可能な横方向の力(B)に変換する制御表面部(5、16、20)を備えていることを特徴とする船。
【請求項2】
上記船体の前半部が、ほぼ直立した舷側部と、上記船首部に形成された最小のフレア部と、上記船体の中心線の位置において上記船首部に向かって増加する喫水と、上記喫水の増加とほぼ同様に増加する乾舷とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の船。
【請求項3】
上記船首部が、ほぼ直立した船首先端部を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の船。
【請求項4】
上記船首部(4)の近傍における左右の舷側部(8)が、水平断面でみて、少なくとも1%mのフィレット半径(R)を有するとともに、先鋭な角度(α)を形成していることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の船。
【請求項5】
上記船首部(4)の近傍における上記左右の舷側部(8)の先鋭な角度(α)が40度未満であることを特徴とする、請求項4に記載の船。
【請求項6】
上記制御面が、船首舵(5)を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の船。
【請求項7】
上記制御面が、上記船首部(4)の各舷側部に配置された調整可能なフラップ(16)を備えていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の船。
【請求項8】
上記制御面が、直立して取り付けられたロータ(20)を備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の船。
【請求項9】
上記制御表面部(5、16、20)が、該船の進路、速度及び/又は横傾斜角を検出するセンサを備えた上記横方向の力(B)を制御する制御システムに接続されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の船。
【請求項10】
上記制御システムが、該船の進路に対して到来する波(W)の振幅及び/又は角度を設定する設定手段に接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の船。
【請求項11】
上記制御システムが、該船の進路に対して到来する波(W)の振幅及び/又は角度を計算するアルゴリズムを備えていることを特徴とする、請求項9に記載の船。
【請求項12】
上記制御システムが、到来する波が該船の斜め後方からの風による場合にのみ、上記制御表面部(5、16、20)を駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載の船。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【公表番号】特表2009−541137(P2009−541137A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517234(P2009−517234)
【出願日】平成19年6月30日(2007.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056613
【国際公開番号】WO2008/000837
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509002693)テッヒニーシェ・ユニフェルジテイト・デルフト (2)
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITEIT DELFT
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月30日(2007.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056613
【国際公開番号】WO2008/000837
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509002693)テッヒニーシェ・ユニフェルジテイト・デルフト (2)
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITEIT DELFT
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