説明

良好な機械的強度を有するコア−層材料の調製方法

連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた細孔性コアを含む球状材料の調製方法であって、前記材料の摩耗の度合が20%未満である方法が記載される。前記調製方法は、a)前記材料のコアを構成する球状粒子の床を、無機バインダを含む懸濁液と接触させて、前記コアの周囲に前層を有する固体を形成する工程と;b)前記工程a)に由来する固体を、高温の空気流れ中、無機酸化物の球状粒子によって構成される粉末と、無機バインダと有機バインダとを含む懸濁液とに接触させて、コアが少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた固体を形成し、(無水の無機バインダの質量/粉末粒子の体積)の比が0.05〜1g.mL−1の範囲であるようにさせる工程と;c)前記工程b)に由来する固体を乾燥させる工程と;d)前記工程c)に由来する固体を焼成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの連続的で均質な外層でコーティングされたコアを含む材料の分野に関する。より正確には、本発明は、前記材料を選択的水素化反応における触媒担体として用いることを目的とした、コア−層材料の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒作用および/または吸着のための、コア−層材料が広く記載されている。そのような材料は、例えば、触媒的に活性な相を含む層と触媒的に不活性なコアとによって構成され、特に、材料および/または熱の大きい移動を必要とする反応における選択性において大幅な利益をもたらし得る。不活性なコアと触媒的に活性な層とを有する材料は、例えば、パラフィン留分の脱水素反応(特許文献1〜2)、パラフィン留分の水素化異性化(特許文献3〜4)、ガソリン留分の脂肪族アルキル化(特許文献5)、オレフィンを含むナフサの水素化脱硫(特許文献6)、炭化水素の水素化脱硫、水素化脱窒、または水素化脱金属(特許文献7)、芳香族留分のアルキル化(特許文献8〜9)、芳香族留分の異性化(特許文献10)、不飽和炭化水素の選択的水素化(特許文献11〜12)、アクロレインの酢酸への酸化(特許文献13)、カルボン酸(酢酸)、オレフィン(エチレン)、および酸素(空気)からのアルケニルカルボキシラート(酢酸ビニル)の製造(特許文献14)、オレフィンまたは芳香族化合物のオキシ塩素化(特許文献15)、窒素酸化物の還元(特許文献16)、水素の水への酸化(特許文献17)、および合成ガスからの炭化水素の製造(特許文献18〜19)において記載されている。
【0003】
これらの材料は、層の要素を、コアとして機能する担体と接触させることによって調製される。コアは、不活性であり、例えば、耐火性酸化物担体、例えば、コーディエライトまたはアルファアルミナに相当し得る。コアは、触媒的に活性であってもよく、例えば、細孔性アルミナマトリクス中に分散した活性相によって構成される触媒に相当する。コアは、吸着剤であり得る。
【0004】
層の要素は、層を形成するように意図されており、水性懸濁液中に完全に溶解した後、コアと接触させられ得る(特許文献1)。それらは、部分的に懸濁液の形態でかつ部分的に粉末の形態(特許文献13)であり得、コアと接触させられ得る。所定の特徴、例えば、懸濁液によるコアの外面周辺の湿潤、または層の機械的特徴を促すために、添加剤が添加されることがある。例えば、コアの外側表面上のこれらの湿潤性、および得られたコア−層材料の耐摩耗性を高めるために、有機ポリビニルアルコールタイプの添加剤、グリセロール、またはセルロースの誘導体が、懸濁液に添加される(特許文献2)。一般に無機である繊維もまた、衝撃強さを高めるために、要素に添加され得る(特許文献14)。触媒的に活性な層は、従来の触媒に匹敵し、例えば、細孔性アルミナマトリクス中に分散した金属相および/またはゼオライト相によって形成される。それらは、例えば、バインダとして機能するアルミナゾルと、触媒的に活性な相を形成することを目的とする溶解金属塩と、場合により触媒的に活性な金属相またはゼオライトを担持し得る酸化アルミナとを含む、層の要素の懸濁液から得られる。他の金属相が、接触工程の後に添加され得る。
【0005】
層の要素は、材料のコアを構成する要素と接触させられるが、これは、例えば、層の要素を含有する液体中にコアを浸漬すること(特許文献15)、層の要素を含有する液体をコア上に噴霧すること、または、同時のまたは連続的な工程で、液体を噴霧し、かつ、層の要素を含む固体をコア上に導入することによる。
【0006】
工業プロセスにおいて広く用いられるために、これらの材料は、層を沈着させる簡単な技術によって得られ、かつ工程数において低減させられなければならない。工業用途の大部分において遭遇する圧縮および摩耗の高い応力に抵抗するように、連続的で均質な層を有し、空洞、クレージング、クラッキング欠陥がなく、凝集性が高く、かつ、コアの表面に強く接着する材料を得ることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6177381号明細書
【特許文献2】米国特許第6486370号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第0542528号明細書
【特許文献4】米国特許第5200382号明細書
【特許文献5】国際公開第98/14274号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/009773号パンフレット
【特許文献7】米国特許第4255253号明細書
【特許文献8】米国特許第4283583号明細書
【特許文献9】米国特許第6376730号明細書
【特許文献10】米国特許第7297830号明細書
【特許文献11】米国特許第6992040号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0036476号明細書
【特許文献13】米国特許第5677261号明細書
【特許文献14】国際公開第2007/008288号パンフレット
【特許文献15】米国特許第4460699号明細書
【特許文献16】米国特許第4585632号明細書
【特許文献17】国際公開第2004/035201号パンフレット
【特許文献18】米国特許第7087191号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2005/0245621号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の目的と利点)
本発明は、少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた少なくとも1つの細孔性コアを含む球状材料の新規な調製方法であって、スペンス法(Spence method)を用いて測定される、前記材料の摩耗の度合が、20%未満であり、少なくとも以下の工程を含む、方法に関する:
a) 前記材料のコアを構成する少なくとも1つの球状粒子の床を、少なくとも1種の無機バインダを含む少なくとも1種の懸濁液と接触させて、前記コアを取り囲む前層を有する固体を形成する工程;
b) 前記工程a)に由来する固体を、高温の空気流れ中、少なくとも1種の無機酸化物の球状粒子によって構成される少なくとも1種の粉末と、少なくとも1種の無機バインダと少なくとも1種の有機バインダとを含む少なくとも1種の懸濁液とに接触させて、コアが少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた固体を形成し、(無水の無機バインダの質量/粉末粒子の体積)の比が0.05〜1g・mL−1の範囲である、工程;
c) 前記工程b)に由来する固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)に由来する固体を焼成する工程。
【0009】
この新規な調製方法を実施するために得られる材料は、優れた耐摩耗性を有し、それが非常に高い機械的強度を有する証拠を提供している。それは、工業用途の多くの場合において遭遇する、圧縮および剪断応力に耐える。驚くべきことに、本発明の方法を用いて調製される前記コア−層材料は、圧縮または摩耗に対して、従来技術の調製方法を用いて調製されたもの、特に、事前湿潤、有機添加剤を採用したもの、または流動床と接触させたものより抵抗性である。
【0010】
更に、前記新規な調製方法を実施することによって得られる前記材料は、連続的で均質な層を有し、空洞、クレージング、またはクラックのタイプの欠陥が少ししか存在しないかまたはまったく存在しない。前記層は、凝集性が高く、前記材料のコア表面に強く接着する。コア周囲の前層の事前形成により、層を構成する粉末粒子が、材料のコアに非常に良好に打鍵されるに至る。更に、本発明のコア−層材料の調製方法の別の利点は、それが層を沈着させるための簡易な技術を採用しており、従って、非常に経済的であることである。
【0011】
本発明はまた、触媒担体として、本発明の方法を用いて調製されるコア−層材料を用いる触媒の調製に関する。少なくとも1種の第VIII族金属、および場合による第IB族からの少なくとも1種の追加金属が、コア−層材料の層の細孔中に含浸させられる。これによって得られた触媒が、炭化水素留分中に存在する多価不飽和化合物の選択的水素化方法において用いられる。本発明の方法を用いて調製されるコア−層材料を含む触媒は、多価不飽和化合物の選択的水素化に関し、特に活性の観点において、耐摩耗性がより低いコア−層材料を含む触媒、および、層が、非連続的でより均質でないコア−層材料を含む触媒よりも、より良好な触媒性能をもたらし得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の説明)
本発明は、少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた少なくとも1つの細孔性コアを含む球状材料の調製方法であって、スペンス法を用いて測定される、前記材料の摩耗の度合が、20%未満であり、少なくとも以下の工程を含む、方法に関する:
a) 前記材料のコアを構成する少なくとも1つの球状粒子の床を、少なくとも1種の無機バインダを含む少なくとも1種の懸濁液と接触させて、前記コアを取り囲む前層を有する固体を形成する工程;
b) 前記工程a)に由来する固体を、高温の空気流れ中、少なくとも1種の無機酸化物の球状粒子によって構成される少なくとも1種の粉末と、少なくとも1種の無機バインダと少なくとも1種の有機バインダとを含む少なくとも1種の懸濁液とに接触させて、コアが少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた固体を形成し、(無水の無機バインダの質量/粉末粒子の体積)の比が0.05〜1g・mL−1の範囲である、工程;
c) 前記工程b)に由来する固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)に由来する固体を焼成する工程。
【0013】
本発明の方法を用いて調製される球状材料中に存在する細孔性コアは、狭いサイズ分布を有する球状の形状を有する粒子によって構成される。分布の平均サイズまたは平均径は、0.1〜10mmの範囲、好ましくは0.3〜7mmの範囲、より好ましくは0.5〜5mmの範囲である。分布の最も小さい径は、平均径の0.5倍超、好ましくは平均径の0.8倍超、より一層好ましくは平均径の0.9倍超である。分布の最も大きい径は、平均径の2倍未満、好ましくは平均径の1.2倍未満、より好ましくは平均径の1.1倍未満である。コアを構成する粒子の径は、好ましくは、光学顕微鏡法または走査型電子顕微鏡法によって測定される。細孔性コアは、有利には、吸着または触媒作用に関して不活性であり、すなわち、それは、吸着剤または触媒として機能しない。それは、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン、コーディエライト、またはこれらの化合物の混合物によって構成される。細孔性コアは、また、ジルコニア、モレキュラーシーブ、または前記化合物の混合物によって構成され得、従って、吸着剤の機能を確実なものとする。細孔性コアは、また、アルミナマトリクス中に分散した金属相および/またはゼオライト相によって形成され得、従って、触媒的に活性である。好ましくは、本発明の方法を用いて調製される材料のコアは、吸着または触媒作用に関して不活性であり、一層好ましくはアルミナによって構成される。
【0014】
球状粒子によって構成される細孔性コアの比表面積、全細孔容積、および細孔サイズ分布は、前記コアを構成する粒子の化学的性質に応じて一層可変であり得る。比表面積は、窒素の物理吸着によって測定される。全細孔容積および細孔サイズ分布は、水銀ポロシメトリによって測定される。例えばアルミナの不活性コアについては、比表面積は、50m/g未満、好ましくは30m/g未満、より好ましくは20m/g未満である。平均細孔サイズは、50nm超、好ましくは85nm超、より好ましくは125nm超である。全細孔容積は、0.1〜1mL/gの範囲である。
【0015】
本発明の方法に従って調製された前記材料のコアをコーティングしている細孔性の層は、連続的であり、すなわち、フラグメント化もセグメント化もしておらず、かつ、均質であり、すなわち、それは、層のある箇所から別の箇所まで、近似する、好ましくは同一の化学組成を有し、かつ、層のある箇所から別の箇所まで、近似する、好ましくは同一の厚さを有する。層のある箇所から別の箇所までの厚さの差異は、平均厚さの値の20%未満、好ましくは平均厚さの値の15%未満、より一層好ましくは平均厚さの値の10%未満である。層の平均厚さの値は、0.005〜1mmの範囲、好ましくは0.007〜0.7mmの範囲、より一層好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。層の厚さは、材料の研磨薄片の走査型電子顕微鏡法によって測定される。前記層のある箇所から別の箇所までの層中に存在する化学的要素中の偏向は、いくつかの要素を含む層の場合、特に、細孔性無機マトリクス中の触媒的に活性な相によって構成される層の場合に、検出され得る。化学的要素の含有量におけるこれらの差異は、平均値の20%未満、好ましくは平均値の15%未満、より一層好ましくは平均値の10%未満である。層中の化学的要素の量は、走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)またはキャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe(EPMA))と連結されたX線微量分析(EDX)によって、本発明の方法を用いて調製される材料の研磨薄片について測定される。
【0016】
細孔性の層は、有利には、吸着または触媒作用に関して不活性であり、すなわち、吸着または触媒作用においていかなる実際の性能も有しない。それは、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン、またはこれらの化合物の混合物、好ましくはアルミナによって構成される。前記細孔性の層はまた、ゼオライト、モレキュラーシーブ、または前記化合物の混合物によって構成され得、これにより、吸着剤の機能をもたらし得る。前記細孔性の層はまた、アルミナマトリクス中に分散した金属および/またはゼオライト相によって形成され得、従って、触媒的に活性であり得る。前記細孔性の層はまた、膜に相当する、較正されたサイズの細孔を有する材料から形成され得る。例として、それは、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン、ゼオライト、モレキュラーシーブ、または前記化合物の混合物であり得る。好ましくは、前記細孔性の層は、吸着または触媒作用に関し不活性であり、好ましくは、アルミナによって構成される。本発明によると、コアまたは層がアルミナによって構成される場合、コアの粒子を構成するアルミナの相は、層の相とは異なり;例えば、コアは、アルファアルミナによって構成され、層は、ガンマアルミナによって構成される。
【0017】
前記細孔性の層は、凝集性が高く、すなわち、それは、高い相互凝集性を有する粒子によって形成され、それは、本発明の方法を用いて調製される前記材料のコアに強く接着する。本発明の方法を用いて調製される前記コア−層材料の耐凝集性および耐接着性は、スペンス法を用いる摩耗試験によって測定される(J. F. Le Page, Catalyse de contact: conception, preparation et mise en oeuvre des catalyseurs industriels [Contact catalysis: design, preparation and applications of industrial catalysts], Technip, 1978, page 225)。本発明の方法を用いて調製される材料の摩耗の度合を測定するために用いられる摩耗試験は、以下の通りに実施される:本発明の方法を用いて調製される材料25gが、径36mm、長さ305mmのステンレス鋼製管内で回転させられる。管は、垂直な軸を中心にして25rpmで1時間にわたり回転する。生成物は回収され、規格化シーブであるNFX-11-504/ISO-3310-2によりふるいにかけられ、その開口径は、材料の径によって決まる。特に、本発明との関連で、本発明の方法を用いて調製される材料の平均径の2/3に相当するメッシュ開口径を有するシーブが選択され、より好ましくは、開口径が1mmであるシーブが選択される。すなわち、ふるい分けは、回転中に生じた微粉末の質量が測定され得ることを意味する。本発明の方法を用いて調製される材料の耐摩耗性は、(回転中に生じた微粉末の質量)/(テスト中に導入される材料の層の質量)×100の比によって計算される摩耗の度合によって評価される。驚くべきことに、本発明の方法を用いて調製される材料の摩耗の度合は小さい:それは、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である。本発明の方法を用いて調製される材料によって表される低い摩耗の度合は有利である。なぜなら、それは、前記材料の良好な機械的強度を例証するからである。
【0018】
本発明の材料の調製方法の工程a)によると、少なくとも1種の無機バインダと場合による少なくとも1種の有機バインダとを溶媒に導入されて含む懸濁液は、前記材料のコアを構成する少なくとも1つの球状粒子の床と接触させられる。無機バインダは、溶媒中に可溶であるかまたは分散可能である、塩、アルコキシド、水酸化物、オキシ水酸化物、または酸化物であり得る。それは、例えば、アルミナのゾル、ジルコニアのゾル、シリカのゾル、酸化チタンのゾル、または前記ゾルの混合物であり得る。前記無機バインダにより、本発明の調製方法の前記工程d)の終了時に得られる前記材料のコア−層界面の破断強度が増大する。有機バインダは、好ましくは前記材料のコアを構成する少なくとも1つの球状粒子の床と接触させられる懸濁液中に存在し、これは、溶媒中に可溶であるかまたは分散可能であり、かつ前記工程d)による焼成後に分解する化合物であり得る。それは、例えば、ポリビニルアルコール、グリセロール、またはセルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)であり得る。それは、工程c)中に前層に生じ得る、クレージングまたはクラッキングのタイプの欠陥を制限し得、従って、工程d)の後の材料の耐摩耗性を増大させ得る。溶媒は、水または分子あたり6個未満の炭素原子を含む低分子量の有機化合物であり得、かつ、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、または前記化合物の混合物から、好ましくは水、エタノール、あるいはアセトン、または前記化合物の混合物から選択され得、より好ましくは水であり得る。前記工程a)により、本発明の方法を用いて調製される材料のコアを構成する各球状粒子の周囲に前層が形成されるに至る。前記材料のコアを構成する各粒子の周囲の前記前層の沈着は、好ましくは、あらゆる空気流れの非存在下で行われる。従って、前記工程a)の終了時、前層は、乾燥しておらず、湿ったままであり、層を構成する粉末粒子が、材料のコアに非常に良好に打鍵されることを促す。前層が形成されるのは、所定の厚さにわたって前記材料のコアを構成する各粒子の外側表面を覆って、前記粒子の細孔の開口を所定の深さまで満たすためである。コアの外側表面上の前層の厚さは、0.1〜10μmの範囲、好ましくは0.3〜5μmの範囲、より好ましくは0.5〜3μmの範囲である。球状粒子によって構成される細孔性コアの細孔開口内の前層の深さは、0.3〜30μmの範囲、好ましくは1〜15μmの範囲、より一層好ましくは1.5〜10μmの範囲である。欠陥の存在、および前層の厚さおよび深さの評価は、前記工程d)に由来する固体の研磨薄片上で行われる走査型電子顕微鏡法によって測定され、好ましくは前記工程b)を行わない。本発明の材料の調製方法の前記工程a)によると、無機バインダの割合は、前層の厚さおよび深さに適合するように規定される。(無水の無機バインダの質量)/(コアの質量)×100の比は、0.1〜10%の範囲、好ましくは0.2〜5%の範囲、より好ましくは0.3〜3%の範囲である。有機バインダ(存在する場合)の割合は、(有機バインダの質量)/(無水の無機バインダの質量)×100の比が、0.5〜10%の範囲、好ましくは0.7〜7%の範囲、より好ましくは0.5〜5%の範囲であるように規定される。溶媒中の無機バインダの重量による濃度は、(無水の無機バインダの質量)/(無水の無機バインダの質量+溶媒の質量)×100の比が、0.2〜20%の範囲、好ましくは0.4〜10%の範囲、より好ましくは0.6〜6%の範囲であるように定義される。前層は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて沈着させられるが、有利には、簡単な技術、特に、懸濁液を、傾斜回転板または回転ドラムに含まれる前記材料のコアを構成する球状粒子の床上に噴霧し、カスケード運動を行うことにより行われる(P. J. Sherrington, R. Oliver, Granulation, Heyden, 1981, p 62)。懸濁液の噴霧は、連続的または非連続的であり得る。工程a)の間中のカスケードタイプの運動を維持し、かつ、クラッキングまたはクレージングのタイプの欠陥のない、上記に規定したような、細孔の開口内の深さ、およびコアを構成する粒子の外側表面の厚さにわたる前層の形成を確実なものとするように、前層の沈着条件、特に、平均噴霧量および懸濁液の無機バインダの濃度が選択される。
【0019】
本発明の材料の調製方法の工程b)によると、少なくとも1種の無機酸化物の球状粒子によって構成される少なくとも1種の粉末と、少なくとも1種の無機バインダと少なくとも1種の有機バインダとを溶媒中に導入されて含む少なくとも1種の懸濁液が、工程a)においてコアの各粒子の周囲に形成された前層の外側表面上に沈着させられることにより、連続的で均質な層が形成される。粉末の粒子は、球状の形状と、層の厚さに依存する較正されたサイズ分布を有する。前記粒子の形状は、走査型電子顕微鏡法によって分析される。前記粒子のサイズ分布は、Mieの回折理論、Mieに基づくレーザ回折粒度分析によって測定される(G. B. J. de Boer, C. de Weerd, D. Thoenes, H. W. J. Goossens, Part. Charact. 4(1987) 14-19)。粉末粒子の粒度分析の分布は、ディメンションDv,Xによって表され、これは、等価な球体の径であって、粒子のX体積%のサイズが前記の径より小さくなるような径であるとして定義される。より正確には、前記粒子の粒度分析的分布は、3つのディメンションDv10、Dv50、およびDv90によって表される。中央値の径Dv50は、本発明の方法を用いて調製される前記材料のコアをコーティングする層の厚さの0.2倍以下(前記層の厚さは、本発明の方法の工程d)の後に測定される)、好ましくは、前記工程d)の後に測定される層の厚さの0.15倍未満、より好ましくは、前記工程d)の後に測定される層の厚さの0.1倍以下である。径Dv10は、中央値の径Dv50の0.1倍以上、好ましくは中央値の径Dv50の0.2倍以上、より好ましくは中央値の径Dv50の0.5倍以上である。径Dv90は、中央値の径の10倍以下、好ましくは中央値の径の5倍以下、より好ましくは中央値の径の2倍以下である。前記粉末の球状粒子を構成する無機酸化物は、特に、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン、および少なくとも1種の前記酸化物の混合物から選択される。
【0020】
本発明の材料の調製方法の前記工程b)を行うために用いられる懸濁液中に存在する無機バインダは、懸濁液中に用いられる溶媒中に可溶であるかまたは分散可能である、塩、アルコキシド、水酸化物、オキシ水酸化物、または酸化物であり得る。それは、例えば、アルミナのゾル、ジルコニアのゾル、シリカのゾル、酸化チタンのゾル、または前記ゾルの混合物であり得る。前記無機バインダにより、本発明の方法を用いて調製される材料のコアをコーティングする前記層が凝固する。
【0021】
本発明の調製方法の前記工程b)を行うために用いられる懸濁液中に存在する有機バインダは、懸濁液中に用いられる溶媒中に可溶であるかまたは分散可能である化合物であり得る。それは、本発明の調製方法の工程d)の焼成工程の後に分解する。それは、乾燥工程c)の間、層にクレージングまたはクラッキングの欠陥が形成されるのを制限し、従って、本発明の方法を用いて調製される材料の耐摩耗性を増大させる。それは、例えば、ポリビニルアルコール、グリセロール、またはセルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)であり得る。溶媒は、水、または分子あたり6個未満の炭素原子を含みかつアルコール、ケトン、エステル、エーテル、または前記化合物の混合物から選択される低分子の洗浄有機化合物であり得、好ましくは水、エタノール、あるいはアセトン、またはこれらの化合物の混合物であり、より好ましくは水である。層が形成されるのは、連続的で均質な方法で前層の外側表面を覆うためである。
【0022】
本発明の材料の調製方法の前記工程b)を行うために導入される粉末を構成する粒子の割合は、本明細書中上記に規定されたような層の厚さ、すなわち、0.005〜1mmの範囲、好ましくは0.007〜0.7mmの範囲、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲の厚さを得るように選択される。欠陥の存在、および層の厚さの評価は、本発明の調製方法の前記工程d)の終了時に得られる材料の研磨薄片の走査型電子顕微鏡法によって測定される。(粉末の粒子の質量)/(コアの粒子の質量)×100の比は、1〜100%の範囲、好ましくは5〜50%の範囲、より好ましくは3〜30%の範囲である。無機バインダの割合が最適であるのは、層中に存在する粉末の粒子が近接、好ましくは接触している時、および粉末粒子間に作られる粒子間の隙間が前記無機バインダにより満たされて、工程d)の後に残留多孔度がなくかつ層のクレージングまたはクラッキングの欠陥またはセグメント化時である。この最適なポイントは、前記工程d)の終了時に得られる材料の研磨薄片の走査型電子顕微鏡法によって測定される。それはまた、前記工程d)の後に得られる材料上での摩耗試験によって測定され得、最大の耐摩耗性に相当し得る。(無水の無機バインダの質量)/(粉末の粒子の体積)の比は、0.05〜1g/mLの範囲、好ましくは0.1〜0.5g/mLの範囲、より好ましくは0.15〜0.35g/mLの範囲である。懸濁液中の有機バインダの割合は、(有機バインダの質量)/(無水の無機バインダの質量)×100の比が、0.5〜10%の範囲、好ましくは0.5〜7%の範囲、より好ましくは0.7〜5%の範囲であるように規定される。懸濁液中に用いられる溶媒中の無機バインダの重量による濃度は、(無水の無機バインダの質量)/(無水の無機バインダの質量+溶媒の質量)×100の比が、0.2〜20%の範囲、好ましくは0.4〜10%の範囲、より好ましくは0.6〜6%の範囲であるように規定される。コアをコーティングする層の沈着は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて行われるが、有利には、簡単な技術によって、特に、高温の空気の流れ中、懸濁液を、傾斜回転板または回転ドラム中に含まれる前記工程a)に由来する固体の粒子上に噴霧し、カスケードタイプの運動を行うことによってなされる。高温の空気流れは、噴霧期間中連続的であり得るか、または、それは、断続的であり得る。懸濁液の噴霧および粉末粒子の導入は、連続的または非連続的であり得る。沈着条件、特に、粉末粒子の平均流量、平均噴霧量、懸濁液の無機バインダの濃度、高温の空気の温度は、工程b)の間中、カスケードタイプの運動を保持し、前層の外側表面にわたって均質な厚さと組成を有し、クラッキングおよびクレージングの欠陥のない連続的な層が確実に形成されるように規定される。高温の空気流れの温度は、50〜200℃の範囲、好ましくは60〜150℃の範囲である。
【0023】
本発明の材料の調製方法の工程c)において、乾燥は、当業者に公知の技術を用いて行われ、これにより、制御された方法で溶媒を蒸発させ、層のクレージング、クラッキング、またはセグメント化のタイプの欠陥を制限し、層の初期の凝固を行う。乾燥は、特に、25〜200℃の範囲、好ましくは30〜150℃の範囲の温度で、1〜80時間の範囲、好ましくは2〜12時間の範囲の期間にわたって行われる。それは、真空下、周囲空気中または湿潤空気(10〜100体積%の水蒸気含有量)中で行われる。非常に好ましくは、乾燥は、30〜150℃の範囲の温度で、2〜12時間にわたって、周囲空気中で行われる。
【0024】
本発明の材料の調製方法の工程d)によると、焼成は、導入された有機生成物を分解し、材料の細孔を露出させ、形成された層の細孔のサイズを較正し、層の最終の凝固を行うために、当業者に公知の技術を用いて行われる。焼成は、特に、400〜1000℃の範囲、好ましくは450〜800℃の範囲の温度で、1〜12時間にわたり、周囲空気または湿潤空気(0〜80%の水蒸気の濃度)中で行われる。より好ましくは、焼成は、450〜800℃の範囲の温度で、周囲空気中で行われる。
【0025】
上記の工程a)、b)、c)、およびd)の連結は、同じ層の前駆体で1回以上行われ得、これにより連続的で均質な単一の層が得られる。この連結は、異なる前駆体で複数回行われ得、いくつかの連続的で均質な層が得られる。この連結は、同じ前駆体で好ましくは1回以上、より好ましくは単一回行われる。
【0026】
本発明はまた、本明細書中上述した方法を用いて調製される材料からの触媒の調製方法に関する。上記の本発明の方法によるコア−層材料の調製の後に、当業者に公知の含浸技術を用いて、触媒的に活性な相が、触媒担体として後に機能する前記材料のコアをコーティングする層の多孔度中に導入される。触媒的に活性な相は、元素周期律分類の少なくとも1種の第VIII族金属と、有利には、第IB族からの少なくとも1種の追加金属とを含む。前記第VIII族金属は、好ましくは、ニッケル、パラジウム、および白金、ならびに少なくとも2種の前記金属の混合物から選択され;好ましくは、前記第VIII族金属は、パラジウムである。前記第IB族金属は、銅、銀、および金から選択される。本明細書中上述した本発明の方法に従って調製された材料から調製された触媒の第VIII族金属の重量による量は、0.01〜20重量%の範囲である。特に、前記第VIII族金属がパラジウムである場合、その重量による含有量は、0.05〜2重量%の範囲である。本明細書中上述した本発明の方法に従って調製された材料から調製された触媒の第IB族金属の重量含有量は(存在する場合)、0.01〜2重量%の範囲である。得られる触媒は、ビーズの形態である。
【0027】
より正確には、本発明の触媒の調製方法は、以下の工程を含む:
e) 前記工程d)に由来する材料に、少なくとも1種の第VIII族金属の少なくとも1種の前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させる工程;
f) 前記工程e)に由来する固体を乾燥させる工程;
g) 前記工程f)に由来する固体を焼成する工程;および
h) 前記工程g)に由来する触媒を還元する工程。
【0028】
本発明の触媒の調製方法の前記工程e)によると、本明細書中上述した本発明の調製方法の前記工程d)に由来するコア−層材料は、乾式含浸、または過剰あるいは不足の含浸(impregnation in excess or in shortfall)によって、静的または動的様式で含浸させられ得る。好ましくは、ボウル造粒機中で乾式含浸が行われる。含浸は、1回以上の連続する含浸工程において行われ得る。前記工程e)は、5〜40℃の範囲、好ましくは15〜35℃の範囲の温度で行われる。
【0029】
少なくとも1種の第VIII族金属の少なくとも1種の前駆体、好ましくはパラジウムの前駆体の溶液の濃度は、触媒中に望まれる第VIII族金属の重量による量に応じて調節される。好ましくは、前記溶液は、水溶液であり、前記第VIII族金属の前駆体塩は、一般に、金属イオンの塩化物、硝酸塩、および硫酸塩によって構成される群から選択される。好まれるように、金属がパラジウムである場合、パラジウムの前駆体塩は、有利には、硝酸パラジウムである。
【0030】
本発明の触媒調製方法の前記工程f)によると、前記工程e)に由来する固体は、乾燥させられ、これによって少なくとも1種の第VIII族金属の含浸の間に導入された水のすべてまたは一部が除去される。乾燥は、空気中、または不活性雰囲気中(例えば、窒素)、好ましくは50〜250℃の範囲、より好ましくは70〜200℃の範囲の温度で、行われる。
【0031】
本発明の触媒の調製方法の前記工程g)によると、前記工程f)に由来する乾燥した固体は、空気中で焼成される。焼成温度は、一般に250〜900℃の範囲、好ましくは約300〜500℃の範囲である。焼成期間は、一般に0.5〜5時間の範囲である。
【0032】
前記工程g)の終了時に得られた、焼成された触媒は、50〜500℃の範囲、好ましくは80〜180℃の範囲の温度での還元工程h)を経る。還元は、25〜100体積%の範囲の水素、好ましくは100体積%の水素を含む還元ガスの存在下に行われる。場合により、水素は、還元用の不活性ガス、好ましくはアルゴン、窒素、またはメタンを補足される。還元期間は、一般に1〜15時間の範囲、好ましくは2〜8時間の範囲である。毎時空間速度(HSV)は、一般に、時間当たりかつ触媒の体積(リットル)当たり還元ガス150〜1000リットルの範囲、好ましくは300〜900リットルの範囲である。
【0033】
少なくとも1種の第VIII族金属に加えて、触媒が第IB族からの少なくとも1種の追加金属を含む場合、前記工程f)の後に、前記工程f)に由来する前記固体に、少なくとも1種の第IB族金属の少なくとも1種の前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させるための工程e’)が行われる。前記工程e’)は、前記工程e)のものと同じ操作条件で実施される。好ましくは、前記前駆体の前記溶液は水溶液であり、前記第IB族金属の前駆体塩は、一般に、金属イオンの塩化物、硝酸塩、硫酸塩によって構成される群から選択される。好ましい場合として、金属が金または銀である場合、前駆体塩は、それぞれ塩化金酸または硝酸銀である。
【0034】
この含浸工程の後に、工程f)に示された条件下で少なくとも1種の第IB族金属を含浸させられた固体が乾燥させられる。次いで、前記固体は、前記焼成工程g)を経る。
【0035】
本発明はまた、選択的水素化方法であって、少なくとも1種の多価不飽和化合物を含む炭化水素供給原料を、本明細書中上述した方法を用いて調製される少なくとも前記触媒と接触させる工程を含む方法に関する。
【0036】
少なくとも1種の多価不飽和化合物を含む前記炭化水素供給原料は、有利には、接触分解に由来する留分、水蒸気分解に由来するC3留分、水蒸気分解に由来するC4留分、水蒸気分解に由来するC5留分、および水蒸気分解に由来しかつ熱分解ガソリンと称されるガソリンによって構成される群から選択される。前記留分は、アセチレン基、ジエン基および/またはオレフィン基を含む化合物を含有する。
【0037】
本明細書中上述した本発明の方法において調製される触媒の使用、および選択的水素化方法におけるその使用のための条件は、使用者によって、当業者に公知の方法で用いられる技術に適応させられる。
【0038】
炭化水素の転化方法、例えば、水蒸気分解または接触分解は、高温で操作され、広範囲の種々の不飽和分子、例えば、エチレン、プロピレン、直鎖ブテン、イソブテン、ペンテン、ならびに約15個以下の炭素原子を含む不飽和分子を生じさせる。多価不飽和化合物も形成され、特に、アセチレン、プロパジエン、およびメチルアセチレン(または、プロピン)、1,2−および1,3−ブタジエン、ビニルアセチレン、およびエチルアセチレン、ならびに、ガソリンフラクションC5+に相当する沸点を有する他の多価不飽和化合物である。石油化学プロセス、例えば、ポリマー化単位装置(unit)中に含まれる異なる留分の使用を可能とするために、前記多価不飽和化合物の集合物は、除去されなければならない。
【0039】
従って、例えば、水蒸気分解からのC3留分は、90重量%程度のプロピレン、3〜8重量%程度のプロパジエンおよびメチルアセチレンの平均組成を有し得、残りは本質的にプロパンである。所定のC3留分において、0.1〜2重量%のC2およびC4化合物も存在し得る。石油化学およびポリマー化単位装置のための前記多価不飽和化合物の濃度に関する規格は、非常に低い:C3留分が、石油化学単位装置中で用いられるべき場合には、プロピレンに対してMAPD(methyl acetylene and propadiene:メチルアセチレンおよびプロパジエン)20〜30重量ppmであり、C3留分が、ポリマー化単位装置中で用いられるべき場合には、10重量ppm未満、または、さらには1重量ppmにまで下げられる。
【0040】
水蒸気分解からのC4留分は、例えば、以下の平均モル組成を表す:1%のブタン、46.5%のブテン、51%のブタジエン、1.3%のビニルアセチレン(vinyl acetylene:VAC)、および0.2%のブチン。所定のC4留分においては、0.1〜2重量%のC3およびC5化合物も存在し得る。多価不飽和化合物の濃度に関する規定は厳格である:石油化学またはポリマー化単位装置中で用いられるC4留分については、ジオレフィン含有量は、厳密に10重量ppm未満である。
【0041】
水蒸気分解に由来するC5留分は、例えば、以下の平均重量組成を有する:21%のペンタン、45%のペンテン、34%のペンタジエン。
【0042】
本発明の選択的水素化方法は、大部分の不飽和化合物を対応するアルケンに転化することによって、上記のC3〜C5石油留分から多価不飽和化合物を除去することが可能であり、これにより完全な飽和が回避され、従って対応するアルケンが形成されるのが回避される。
【0043】
C3、C4、およびC5留分の選択的水素化は、気相または液相中で、好ましくは液相中で行われ得る。液相での反応は、エネルギーコストの削減と、触媒の耐用期間の増加を可能とする。
【0044】
液相での反応では、圧力は一般に1〜3MPaの範囲であり、温度は2〜50℃の範囲であり、水素/(水素化されるべき多価不飽和化合物)のモル比は、0.1〜4の範囲、好ましくは1〜2の範囲である。HSV(触媒の体積あたりの供給原料の流量)は、10〜50h−1の範囲である。
【0045】
気相での水素化反応では、圧力は一般に1〜3MPaの範囲であり、温度は40〜120℃の範囲であり、水素/(水素化されるべき多価不飽和化合物)のモル比は、0.1〜4の範囲、好ましくは1〜2の範囲であり、HSV(触媒の体積あたりの供給原料の流量)は、500〜5000h−1の範囲である。
【0046】
本発明の選択的水素化方法の好ましい実施形態によると、本発明の方法に従って調製された触媒と接触させられる少なくとも1種の多価不飽和化合物を含む炭化水素供給原料は、水蒸気分解に由来するガソリンである。前記ガソリンは、熱分解ガソリンと称される。熱分解ガソリンは、一般に0〜250℃の範囲、好ましくは10〜220℃の範囲の沸点を有する留分に相当する。この供給原料は、一般にC5〜C12留分を含むが、痕跡量のC3、C4、C13、C14、およびC15の化合物を含む(例えば、前記の各留分に対して0.1〜3重量%の範囲)。
【0047】
例として、熱分解ガソリンから形成される供給原料は、一般に、以下の重量による組成を有する:8〜12重量%のパラフィン、58〜62重量%の芳香族化合物、8〜10重量%のモノオレフィン、18〜22重量%のジオレフィン、および20〜300ppmの硫黄。
【0048】
熱分解ガソリンの選択的水素化の場合、水素/(水素化されるべき多価不飽和化合物)のモル比は一般に1〜2の範囲であり、温度は一般に40〜200℃の範囲、好ましくは50〜180℃の範囲であり、毎時空間速度(時間当たりかつ触媒の体積当たりの炭化水素の体積に相当する)は、一般に0.5〜10h−1の範囲、好ましくは1〜5h−1の範囲であり、圧力は一般に1.0〜6.5MPaの範囲、好ましくは2.0〜3.5MPaの範囲である。水素流量の調節は、それが、ジオレフィン、アセチレン、および芳香族アルケニル化合物の全部の理論的水素化に十分な量で利用可能とさせ、かつ、反応器出口において過剰な水素を維持するようになされる。反応器内の温度勾配を制限するために、流出物の一部を反応器の入口および/または中間部分に再循環させることが有利であり得る。
【0049】
以下の実施例は、本発明を例証するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例1〜5において調製された材料について行われた摩耗試験は、スペンス法を用いて、開口径が1mmである規格化シーブNFX-11-504/ISO-3310-2を用いて、本明細書中前述した条件下で行われた。
【0050】
(実施例1(本発明):コア−層材料の調製)
本実施例は、アルファアルミナのコアとガンマアルミナの層とを含む材料の調製を記載する。前層上の層の形成は、較正されたサイズ分布を有する球状粒子によって形成された粉末と、有機バインダおよび無機バインダを含有する水性懸濁液とから、高温空気の添加を伴って行われた。前層の形成は、層と同じ懸濁液から行われた。
【0051】
コアを、参照記号Spheralite 537(Axens)である、ガンマアルミナの球状粒子から調製した。これらのビーズを1200℃で焼成し、これらをアルファアルミナに転換した。窒素の物理吸着分析(ASAP2420,Micromeretics)によると、これらのビーズは、9m/gの比表面積、0.28mL/gの全細孔容積、および90nmの平均細孔サイズを有していた。TEM分析(Supra,Zeiss)は、最も小さい径が1.45mm、最も大きい径が1.75mm、平均径が1.6mmである、完全な球状粒子を示した。
【0052】
前層をコア上に直接的に、ポリビニルアルコールを含有する、硝酸中にコロイド状に分散したベーマイトの水性懸濁液から形成した。参照記号Pural SB3(Sasol)である、市販のベーマイトを硝酸溶液中に分散させることによって、懸濁液を調製し、これにより、3.35%のHNO/AlOOHの比および3%のAlOOH/(AlOOH+HO)の重量比を得た。混合物を、周囲温度で、2時間にわたって撹拌した。懸濁液を20分間にわたって3800gの遠心分離にかけて、コロイド状に分散していないベーマイトをすべて抽出した。ポリビニルアルコール(Carlo Erba)を、懸濁液中に溶解させて、3重量%のPVA/AlOOHの比を得た。コアを構成するビーズの床のカスケードタイプの運動を行う円柱−円錐プレートを備えた実験室用のパン型造粒機(Grelbex P30)内で、懸濁液を、アルファアルミナの粒子上に沈着させた。この目的のために、100gのアルファアルミナの粒子を、30°傾斜しかつ40rpmで回転するプレート内に置いて、28mLの懸濁液を、平均流量1mL/分で、前記粒子上に噴霧して、0.86%のAlOOH/α−Al重量比を得るに至った。
【0053】
次いで、層を、コア周囲の前層上に直接的に、ガンマアルミナ粉末と、ポリビニルアルコールを含有する、硝酸中にコロイド状に分散したベーマイトの水性懸濁液とから出発して、前層のために調製された方法と同一の方法で形成した。ガンマアルミナ粉末の調製は、ベーマイト(Pural SB3, Sasol)、硝酸および硝酸アルミニウムを含有する水性懸濁液を霧化することにより乾燥させ、次いで、焼成することによって行われた。TEM分析によると、粉末を形成するガンマアルミナの粒子は、球状であった。レーザ回折粒度分析(Mastersizer 2000, Malvern)によって測定された特徴的なサイズは:Dv50=2μm、Dv10=1μm、およびDv90=3μmであった。窒素の物理吸着分析によると、粉末は、223m/gの比表面積、0.35mL/gの細孔容積、および7nmの中央値の細孔サイズを有していた。前層を備えたアルファアルミナ粒子上の層の沈着は、前層を含有する粒子の床のカスケード運動を実行する同じパン型造粒機内において行われた。6gのガンマアルミナの粉末を、0.13mL/分の平均流量で、前層を含む粒子上に徐々に導入して、6%のγAl/αAlの重量比を得るに至った。61mLの懸濁液を、1mL/gの平均流量で、前層を含む粒子上に同時に噴霧して、0.24g/mLのAlOOH/γAlの質量/体積の比を得るに至った。PVA/AlOOHの重量比は、前層の形成工程のものと同一であり、3%に等しかった。同時に、70℃の連続する空気の流れを、前層を備えた球状粒子の床に施した。
【0054】
層を沈着させた後に得られた材料を、換気オーブンにおいて100℃で2時間にわたり周囲空気中で乾燥させ、次いで、マッフル炉において600℃で2時間にわたり周囲空気中で焼成した。
【0055】
材料の研磨薄片のTEM分析(Supra, Zeiss)により、連続層は、18〜22μmの均一な厚さ、20μmの平均値を有することが示された。材料の研磨薄片のTEM分析により、粉末を形成するガンマアルミナの粒子が非常に近接しているかまたは接触していること、および、粒子間の隙間が無機バインダにより満たされ、残留多孔度、クレージングまたはクラックタイプの欠陥がないことも示された。無機バインダは、焼成工程の後の、ベーマイトの転化に由来するガンマアルミナによって構成されていた。コアをコーティングする層の形成工程b)を行うことなく焼成工程d)を行った後に行われた前層のTEM分析により、外側表面の厚さは1μmであり深さは1.5μmであることが示された。材料の摩耗の度合は非常に低く、2.7%に等しく、導入されたベーマイトのこの量に対して最小限であった。従って、耐摩耗性は、非常に高く、満足のいくものであった。
【0056】
(実施例2(本発明):コア−層材料の調製)
本実施例は、アルファアルミナのコアとガンマアルミナの層とを含む材料の調製を記載する。層の形成は、較正されたサイズ分布を有する球状粒子の粉末と、有機バインダおよび無機バインダを含有する水性懸濁液とから、高温の空気の添加を伴って行われた。前層の形成は、有機バインダを添加していない層と同じ懸濁液から行われた。
【0057】
調製条件、操作手順、および用いられた試薬は、実施例1で記載されたものと同一であったが、前層の形成を意図することを目的とした懸濁液へのポリビニルアルコールの添加は行わなかった。
【0058】
材料の研磨薄片のTEM分析(Supra, Zeiss)により、連続層は、17〜23μmの均質な厚さを有することが示された。研磨材料薄片のTEM分析により、粉末を形成するガンマアルミナの粒子は、非常に近接しているかまたは接触していること、および、粒子間の隙間は、焼成工程の後にγアルミナによって構成される無機バインダにより満たされ、残留多孔度またはクレージングまたはクラッキングの欠陥がないことも示された。前層のTEM分析が、コアをコーティングする層の形成工程b)を行うことなしに焼成工程d)を行った後に、研磨薄片について行われ、外側表面上の厚さが1μmであり深さが1μmであることが示された。材料の摩耗の度合は非常に低く、3.5%に等しかった。従って、耐摩耗性は、非常に高く、満足のいくものであった。
【0059】
(実施例3(比較例):前層を含まないコア−層二材料の調製)
本実施例は、アルファアルミナのコアとガンマアルミナの層とを含む材料の調製を記載する。前記材料は前層を含んでいなかった。層の形成は、較正されたサイズ分布を有する球状粒子の粉末と、有機バインダおよび無機バインダを含有する水性懸濁液とから、高温の空気の添加を伴って行われた。
【0060】
調製条件、操作手順、および用いられた試薬は、実施例1のものと同一であったが、前層を形成するための工程がなかった。
【0061】
材料の研磨薄片のTEM分析(Supra, Zeiss)により、層は、ある位置においてフラグメント化しており、厚さに関して不連続かつ不均質であることが示され、他の位置では、粉末を形成するガンマアルミナ粒子が互いに近接しており、粒子間の隙間が無機バインダにより満たされて残留多孔度はないが、多くのクレージングおよびクラッキングタイプの欠陥が層−コアの界面にあり、これによりフラグメント化していることが示された。材料の摩耗の度合は非常に高く、90%に等しかった。従って、耐摩耗性は極めて低く、満足のいくものではなかった。
【0062】
(実施例4(比較例):非球状粒子によって構成される層を有するコア−層材料の調製)
本実施例は、アルファアルミナのコアとガンマアルミナの層とを含む材料の調製を記載する。前層上の層の形成は、較正されたサイズ分布を有する非球状粒子によって形成された粉末と、有機バインダおよび無機バインダを含有する水性懸濁液とから、高温の空気の添加を伴って行われた。 前層の形成は、層と同じ懸濁液から行われた。
【0063】
調製条件、操作手順、および用いられた試薬は、実施例1のものと同一であったが、非球状ガンマアルミナの粒子から形成された粉末を用い、コアをコーティングする層の形成工程b)におけるよりわずか多い体積のベーマイト懸濁液を噴霧して、粉末粒子により粒子間の隙間を満たした。
【0064】
ガンマアルミナの粉末は、参照記号Puralox(Sasol)である粉末を噴流噴霧することによって調製された。粒子は、TEM分析によると、フラグメント化に由来して、高い可変性の形状を有していた。レーザ回折粒度分析(Mastersizer 2000, Malvern)によって測定される特徴的なサイズは以下の通りであった:Dv50=2μm、Dv10=1μm、およびDv90=4μm。窒素の物理吸着分析(ASAP 2420, Micromeretics)によると、粉末は、210m/gの比表面積、0.35mL/gの細孔容積、および8nmの中央値の細孔サイズを有していた。70mLの体積のベーマイトの懸濁液を、1.15mL/分の平均流量で徐々に噴霧して、0.27g/mLのAlOOH/γAlの質量/体積の比が得られるに至った。
【0065】
材料の研磨薄片のTEM分析(Supra, Zeiss)により、ある位置においては、層は、わずかにフラグメント化しており、厚さに関して不連続でありかつ均質的に乏しいことが示され、他の位置において、粉末を形成するガンマアルミナ粒子は、互いに比較的近接しており、粒子間の隙間は、無機バインダにより満たされているが、多くのクレージングおよびクラッキングのタイプの欠陥が、バインダ中に存在し、これにより、観察されたフラグメント化につながることが示された。材料の摩耗の度合は20%であった。従って、耐摩耗性は低く、満足のいくものではなかった。
【0066】
(実施例5(比較例):コア−層材料の調製)
本実施例は、アルファアルミナのコアと、ガンマアルミナの層とを含む材料の調製を記載する。前層上の層の形成は、較正されたサイズ分布を有する球状粒子によって形成された粉末と、有機バインダおよび無機バインダを含有する水性懸濁液とから、高温の空気の添加を伴って行われた。前層の形成は、層と同じ懸濁液から行われた。
【0067】
調製条件、操作手順、および用いられた試薬は、実施例1のものと同一であったが、コアをコーティングする層を形成するために、非常に高い体積のベーマイト懸濁液を用いた。これは、本発明で推奨されるAlOOH/γAlの質量/体積の比を満たしていない。
【0068】
331mLの体積のベーマイトの懸濁液を、5.43mL/分の平均流量で徐々に噴霧して、1.3g/mLのAlOOH/γAlの質量/体積の比を得るに至った。
【0069】
材料のTEM分析により、層が、完全にフラグメント化し、その厚さに関して不連続的かつ不均質であり、並びに、ガンマアルミナの粒子は、比較的互いに離間した粉末を形成し、および無機バインダは、多くのクレージングおよびクラッキングタイプの欠陥を含み、結果として、全体的にフラグメント化していることが示された。材料の摩耗の度合は、95%であった。従って、耐摩耗性は極めて低く、満足のいくものではなかった。
【0070】
(実施例6(本発明):触媒Aの調製)
実施例1に従って調製された25gの材料に、パン型造粒機において25℃で硝酸パラジウムPd(NOの水溶液を乾式含浸させた。前記溶液の調製は、0.54gの10重量%硝酸パラジウム水溶液および10重量%の硝酸(Aldrich)を鉱質除去水中に、前記材料の細孔容積に相当する全体積まで希釈することにより行われた。含浸工程中、前記材料の摩耗は観察されなかった。
【0071】
得られた触媒Aを、空気中120℃で乾燥させて、次いで空気中2時間にわたり450℃で焼成した。触媒Aは、実施例1に従って調製された材料の層の細孔中に沈着した0.1重量%のパラジウムを含んでいた。
【0072】
(実施例7(比較例):触媒Bの調製)
実施例3に従って調製された25gの材料に、パン型造粒機において25℃で硝酸パラジウムPd(NOの水溶液を乾式含浸させた。前記溶液の調製は、0.54gの10重量%硝酸パラジウム水溶液および10重量%の硝酸(Aldrich)を、前記材料の細孔容積に相当する全体体積まで希釈することにより行われた。含浸工程の間に材料は摩耗を受けた。
【0073】
生じた微粉末量の重さが測定され、前記材料中に最初に存在する層の質量の約60%であると推定された。
【0074】
得られた触媒Bを、空気中120℃で乾燥させ、次いで、空気中2時間にわたり450℃で焼成した。触媒Bは、実施例3に従って調製された材料の層の細孔中に沈着した0.1重量%のパラジウムを含んでいた。
【0075】
(実施例8(比較例):触媒Cの調製)
実施例4に従って調製された25gの材料に、パン型造粒機において25℃で硝酸パラジウムPd(NOの水溶液を乾式含浸させた。前記溶液の調製は、0.54gの10重量%硝酸パラジウム水溶液および10重量%の硝酸(Aldrich)を鉱質除去水中に、前記材料の細孔容積に相当する全体積まで希釈することにより行われた。含浸工程中、前記材料の摩耗は観察されなかった。
【0076】
得られた触媒Cを、空気中120℃で乾燥させて、次いで空気中2時間にわたり450℃で焼成した。触媒Cは、実施例4に従って調製された材料の層の細孔中に沈着した0.1重量%のパラジウムを含んでいた。
【0077】
(実施例9:スチレン−イソプレン混合物の選択的水素化のための触媒試験)
触媒試験の前に、触媒A、B、およびCを、時間当たりかつ触媒の体積(リットル)当たり1000リットルの水素の流れ中に、300℃/hの昇温および150℃での2時間にわたる一定の温度段階で、処理した。
【0078】
次いで、触媒は、完全に撹拌された「Grignard」型不連続反応器において、水素化試験を連続的に受けた。この目的のために、2mLの還元型触媒ビーズが、撹拌作動器の周囲に位置する環状バスケット内に固定され、空気が排除された。反応器内で用いられたバスケットは、Robinson Mahonnayタイプのものであった。
【0079】
水素化を液相中で行った。
【0080】
供給原料の組成は、スチレン8重量%、イソプレン8重量%であり、溶媒は、n−ヘプタンであった。この供給原料は、熱分解ガソリンのためのモデル供給原料であった。
【0081】
3.5MPaの一定の水素の圧力、45℃の温度で、試験を行った。反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。触媒活性を、分当たりかつパラジウムのグラム当たりに消費されたHのモルとして表した。これを、表1に報告する。
【0082】
【表1】

【0083】
本発明の調製方法に従って調製された、摩耗の度合が低く、かつ、連続的な層および均質な厚さを有するコア−層材料から調製された触媒Aは、コア−層材料から調製され、耐摩耗性が極端に低く、かつ厚さに関し不連続かつ不均質な層を有するコア−層材料から調製された触媒Bより実質的に活性であった。この同じ触媒Aはまた、耐摩耗性が低く、かつ厚さに関し不連続かつ不均質な層を有するコア−層材料から調製された触媒Cより実質的に活性であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた少なくとも1つの細孔性コアを含む球状材料の調製方法であって、スペンス法を用いて測定される、前記材料の摩耗の度合が、20%未満であり、少なくとも以下の工程を含む、方法:
a) 前記材料のコアを構成する少なくとも1つの球状粒子の床を、少なくとも1種の無機バインダを含む少なくとも1種の懸濁液と接触させて、前記コアを取り囲む前層を有する固体を形成する工程;
b) 前記工程a)に由来する固体を、高温の空気流れ中、少なくとも1種の無機酸化物の球状粒子によって構成される少なくとも1種の粉末と、少なくとも1種の無機バインダと少なくとも1種の有機バインダとを含む少なくとも1種の懸濁液とに接触させて、コアが少なくとも1つの連続的で均質な細孔性の層でコーティングされた固体を形成し、(無水の無機バインダの質量/粉末粒子の体積)の比が0.05〜1g・mL−1の範囲であるようにさせる工程;
c) 前記工程b)に由来する固体を乾燥させる工程;
d) 前記工程c)に由来する固体を焼成する工程。
【請求項2】
コアはアルファアルミナによって構成され、層はガンマアルミナによって構成される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
層の厚さの平均値は、0.005〜1mmの範囲である、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記材料の摩耗の度合は、5%未満である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
前記工程a)を行うために用いられる懸濁液は、少なくとも1種の有機バインダを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
前記工程a)は、あらゆる空気流れの非存在下で行われる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項7】
前記工程a)は、前記懸濁液を、傾斜回転板または回転ドラム内に含まれる球状粒子の床上に噴霧することと、カスケードタイプの運動を行うこととによって行われる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項8】
前記工程b)における(無水の無機バインダの質量/粉末粒子の体積)の比は、0.15〜0.35g・mL−1の範囲である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
前記工程b)の間の高温の空気流れの温度は、60〜150℃の範囲である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項10】
少なくとも以下の工程を含む、触媒の調製方法:
e) 請求項1〜9のいずれか1つに従って調製された材料に、少なくとも1種の第VIII族金属の少なくとも1種の前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させる工程;
f) 前記工程e)に由来する固体を乾燥させる工程;
g) 前記工程f)に由来する固体を焼成する工程;および
h) 前記工程g)に由来する触媒を還元する工程。
【請求項11】
前記第VIII族金属は、パラジウムである、請求項10に記載の触媒の調製方法。
【請求項12】
前記工程f)の後、前記工程f)に由来する前記固体に、少なくとも1種の第IB族金属の少なくとも1種の前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させるための工程e’)が、行われる、請求項10または11に記載の触媒の調製方法。
【請求項13】
少なくとも1種の多価不飽和化合物を含む炭化水素供給原料を、請求項10〜12のいずれか1つに記載の調製方法を用いて調製された少なくとも1種の触媒と接触させることを含む、選択的水素化方法。
【請求項14】
前記炭化水素供給原料は、接触分解に由来する留分、水蒸気分解に由来するC3留分、水蒸気分解に由来するC4留分、水蒸気分解に由来するC5留分、および水蒸気分解に由来するガソリンによって構成される群より選択される、請求項13に記載の選択的水素化方法。

【公表番号】特表2012−500113(P2012−500113A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523434(P2011−523434)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001007
【国際公開番号】WO2010/020717
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】