説明

良好な耐衝撃性と優れた耐熱性を有するポリエーテルスルホン組成物

【課題】 ポリエーテルスルホン系材料の典型的な高い衝撃強さを保持又は高めつつ、公知のポリエーテルスルホンよりもガラス転移温度の高い(即ち耐熱性が向上した)ポリアリールエーテルスルホンの提供。
【解決手段】 フルオレニリデンビスフェノールAと、ジフェノールモノマーの全モル数を基準にして50モル%以上の4,4′−ビフェノールとを含むモノマー混合物から誘導された構造単位を含むポリエーテルスルホン組成物。このポリエーテルスルホンは、235℃以上のガラス転移温度及びASTM D256で測定して1ft−lb/in以上のノッチ付アイゾッド衝撃値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルスルホン組成物、ポリエーテルスルホン組成物の合成法並びに該組成物からなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルスルホンは、商業上重要な一群の高性能・耐熱性非晶質熱可塑性プラスチックスである。これらのポリマーは、耐熱性と水蒸気・熱水環境での耐加水分解性と全般に良好な耐薬品性を併せもつので、多くの産業で関心を集めている。これらのポリマーが商業的に多大な関心を集めているもう一つの理由は、上述の高性能に加えて、高温用途に用いられる大半の半結晶質材料とは異なり、透明であることである。
【0003】
ポリエーテルスルホンは様々な方法で製造できる。例えば米国特許第4108837号及び同第4175175号には、ポリアリールエーテル、特にポリアリールエーテルスルホンの製造法が記載されている。米国特許第6228970号には、多分散性が改善されオリゴマー量の少ないポリアリールエーテルスルホンの製造法が記載されている。英国特許1264900号には、4,4′−ビフェノール、ビスフェノール−A(4,4′−イソプロピリデンジフェノール)及び4,4′−ジクロロジフェニルスルホンから誘導された構造単位を含むポリエーテルスルホンの製造法が教示されている。
【0004】
ポリアリールエーテルスルホンは透明であるので、高圧蒸気滅菌に付す必要のある手術器具及び歯科器具滅菌トレイの蓋やカバーなど、様々な用途での使用に適している。この用途では、ポリエーテルスルホンが透明であるので、滅菌トレイの内容物を環境に曝すことなくその内容物を目視検査で点検することができる。ポリエーテルスルホンのその他の用途及び潜在的用途としては、ペット輸送コンテナ及び乳製品加工装置、特に搾乳器部品が挙げられる。食品及び飲料用途として、コーヒーポット及び容器、電子レンジ調理器具、調理器具容器のカバー、焼肉用グリルのような電気製品のドア及び窓などの用途も挙げられる。客車用部品の燃焼時の発熱と有毒煙放出量が少ないことが決定的重要性をもつ大量輸送のような用途では、ポリエーテルスルホン、特にポリエーテルフェニルスルホンに固有の耐燃性及び低発煙性によって、かかるポリマーの有用性が高まる。特に航空機産業では、ポリエーテルスルホンはその低燃焼性及び低発煙性によって様々な航空機客室内装部品での使用に適したものとなる。
【0005】
現在入手可能なポリエーテルスルホンは典型的には中程度の耐熱性を有するが、耐衝撃性を保持又は高めつつ、その耐熱性を向上させることができれば望ましい。これによって、数多くの用途、特に自動車用ヘッドライトリフレクタ、医療用トレイ、航空機客室内装部品、食器類や哺乳瓶のような消費者向けの温かい料理又は飲料給仕用品、ペット輸送コンテナ、外科用トレイ、コーヒーポット、調理器具用容器など、高温での耐衝撃性の向上が強く望まれる用途でのかかるポリマーの有用性が高まる。現在入手可能な材料の短所が容認されているのはそれに代わり得るものがないためであることは自明である。ポリエーテルスルホンの有用性を最大限に高めるため改善すべき重要な分野は、高温での物理的/機械的健全性、耐熱水性、洗剤に対する耐性及び使用条件下での樹脂の化学的不活性である。
【0006】
商業上重要なポリアリールエーテルスルホンとしては、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)及びポリエーテルスルホン(PES)が挙げられる。PSUは、約185℃のガラス転移温度(Tg)を呈するとともに約−100°〜150℃の温度範囲全域で高い強度、剛性及び靭性を示す周知の耐熱性非晶質エンジニアリング熱可塑性樹脂である。PSUのアイゾッド衝撃強さの値(ノッチ付アイゾッド値)はおよそ69Jm−1(1.3ft−lb/in)である。PSUは、1965年にUnion Carbide社から上市され、Solvay Advanced Polymers社からUDEL(登録商標)ポリスルホンとして市販されている。もう一つの多目的ポリアリールエーテルスルホンポリマーはポリフェニルスルホン(PPSU)である。PPSUは、Solvay Advanced Polymers社からRADEL(登録商標)という商品名で市販されている。そのTgは220℃であり、アイゾッド衝撃強さの値は約700Jm−1(13ft−lb/in)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4108837号明細書
【特許文献2】米国特許第4175175号明細書
【特許文献3】米国特許第6228970号明細書
【特許文献4】英国特許1264900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
様々な用途において、ポリエーテルスルホン系材料の典型的な高い衝撃強さを保持又は高めつつ、公知のポリエーテルスルホンよりもガラス転移温度の高い(即ち耐熱性が向上した)ポリアリールエーテルスルホンを製造できれば非常に望ましい。優れた衝撃強さを有するポリエーテルスルホンの耐熱性を高めるには、ポリエーテルスルホン組成物の設計を改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構造単位Iを含むポリエーテルスルホン組成物であって、以下の構造IIの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含む組成物を提供する。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、R、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、n、m、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コモノマー濃度がポリエーテルスルホン生成物のガラス転移温度及びノッチ付アイゾッド値に及ぼす影響を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明及び実施例を参照することによって本発明の理解を深めることができよう。本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、以下の意味をもつものと定義される。
【0016】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0017】
「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0018】
本明細書で用いる「整数」という用語は、0を含めた整数を意味する。例えば、「nは0〜4の整数である」という表現は、「n」が0を含めた0〜4の任意の整数でよいことを意味する。
【0019】
本明細書で用いる「4,4′−ビフェノール」、「4,4′−ジヒドロキシビフェニル」及び「4,4′−ジヒドロキシジフェニル」(CAS No.92−88−6)という用語は同義であり、互換的に用いられる。
【0020】
本明細書で用いる「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の基をいう。この配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、或いは炭素と水素だけからなるものでもよい。脂肪族基は「置換」されていても、「非置換」でもよい。置換脂肪族基は、1個以上の置換基を有する脂肪族基と定義される。置換脂肪族基は、その脂肪族基の置換可能な位置の数と同じだけの置換基を含んでいてもよい。脂肪族基に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子が挙げられる。置換脂肪族基としては、トリフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモエチル、ブロモトリメチレン(例えば−CHCHBrCH−)などが挙げられる。便宜上、「非置換脂肪族基」という用語は、本明細書では、非置換脂肪族基からなる「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として広範な官能基を包含するものとして定義される。非置換脂肪族基の具体例としては、アリル、アミノカルボニル(−CONH)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン(−CHC(CN)CH−)、メチル(―CH)、メチレン(−CH−)、エチル、エチレン、ホルミル、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(−CHOH)、メルカプトメチル(−CHSH)、メチルチオ(−SCH)、メチルチオメチル(−CHSCH)、メトキシ、メトキシカルボニル、ニトロメチル(−CHNO)、チオカルボニル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリメトキシシリプロピル、ビニル、ビニリデンなどが挙げられる。脂肪族基は、1個以上の炭素原子を含むものとして定義される。C〜C10脂肪族基には、1個以上10個以下の炭素原子を含む置換脂肪族基及び非置換脂肪族基が包含される。
【0021】
本明細書で用いる「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族基を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族基を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、或いは炭素と水素だけからなるものでもよい。本明細書で用いる「芳香族基」という用語には、特に限定されないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基が包含される。上述の通り、芳香族基は1個以上の芳香族基を含む。芳香族基は例外なく4n+2個の「非局在化」電子を有する環構造であり、「n」は、例えばフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などのように、1以上の整数である。芳香族基は非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、芳香族基(C)が非芳香族成分−(CH−と縮合した芳香族基である。芳香族基は「置換」されていても、「非置換」でもよい。置換芳香族基は、1個以上の置換基を含む芳香族基と定義される。置換芳香族基は、その芳香族基の置換可能な位置の数と同じだけの置換基を含んでいてもよい。芳香族基に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子が挙げられる。置換芳香族基としては、トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(−OPhC(CFPhO−)、クロロメチルフェニル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェニル(3−CClPh−)、ブロモプロピルフェニル(BrCHCHCHPh−)などが挙げられる。便宜上、「非置換芳香族基」という用語は、本明細書では、「1個以上の芳香族基を含む原子価1以上の原子配列」の一部として広範な官能基を包含するものとして定義される。非置換芳香族基の具体例としては、4−アリルオキシフェノキシ、アミノフェニル(HNPh−)、アミノカルボニルフェニル(NHCOPh−)、4−ベンゾイルフェニル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(−OPhC(CN)PhO−)、3−メチルフェニル、メチレンビス(4−フェニルオキシ)(−OPhCHPhO−)、エチルフェニル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェニルオキシ)(−OPh(CHPhO−)、4−ヒドロキシメチルフェニル(4−HOCHPh−)、4−メルカプトメチルフェニル(4−HSCHPh−)、4−メチルチオフェニル(4−CHSPh−)、メトキシフェニル、メトキシカルボニルフェニルオキシ(例えばメチルサリチル)、ニトロメチルフェニル(−PhCHNO)、トリメチルシリルフェニル、t−ブチルジメチルシリルフェニル、ビニルフェニル、ビニリデンビス(フェニル)などが挙げられる。「C〜C10芳香族基」という用語には、3個以上10個以上の炭素原子を有する置換芳香族基及び非置換芳香族基が包含される。芳香族基1−イミダゾリル(C−)はC芳香族基の代表例である。ベンジル基(C−)はC芳香族基の代表例である。
【0022】
本明細書で用いる「脂環式基」という用語は、環状ではあるが、芳香族ではない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は芳香族基を含まない。「脂環式基」は1個以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C11CH−)は、シクロヘキシル環(環状ではあるが、芳香族ではな原子配列)とメチレン基(非環式成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素などのヘテロ原子を含んでいてもよいし、或いは炭素と水素だけからなるものでもよい。脂環式基は「置換」されていても、「非置換」でもよい。置換脂環式基は、1個以上の置換基を含む脂環式基と定義される。置換脂環式基は、その脂環式基の置換可能な位置の数と同じだけの置換基を含んでいてもよい。脂環式基に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子が挙げられる。置換脂環式基としては、トリフルオロメチルシクロヘキシル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(−OC11C(CF11O−)、クロロメチルシクロヘキシル、3−トリフルオロビニル−2−シクロプロピル、3−トリクロロメチルシクロヘキシル(3−CCl11−)、ブロモプロピルシクロヘキシル(BrCHCHCH11−)などが挙げられる。便宜上、「非置換脂環式基」という用語は、本明細書では、広範な官能基を包含するものとして定義される。非置換脂環式基の具体例としては、4−アリルオキシシクロヘキシル、アミノシクロヘキシル(HNC11−)、アミノカルボニルシクロペンチル(NHCOC−)、4−アセチルオキシシクロヘキシル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(−OC11C(CN)11O−)、3−メチルシクロヘキシル、メチレンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(−OC11CH11O−)、エチルシクロブチル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−シクロヘキシルオキシ)(−OC11(CH11O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(4−HOCH11−)、4−メルカプトメチルシクロヘキシル(4−HSCH11−)、4−メチルチオシクロヘキシル(4−CHSC11−)、4−メトキシシクロヘキシル、2−メトキシカルボニルシクロヘキシルオキシ(2−CHOCOC11O−)、ニトロメチルシクロヘキシル(NOCH10−)、トリメチルシリルシクロヘキシル、t−ブチルジメチルシリルシクロペンチル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキシル((CHO)SiCHCH10−)、ビニルシクロヘキセニル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが挙げられる。「C〜C10脂環式基」という用語には、3個以上10個以上の炭素原子を有する置換脂環式基及び非置換脂環式基が包含される。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(CO−)はC脂環式基の代表例である。シクロヘキシルメチル基(C11CH−)はC脂環式基の代表例である。
【0023】
上述の通り、本発明は、以下の構造単位Iを含むポリエーテルスルホン組成物であって、以下の構造IIの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含む組成物を提供する。
【0024】
【化3】

【0025】
式中、R、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、n、m、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。
【0026】
【化4】

【0027】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。当業者には明らかであろうが、「構造単位Iを含むポリエーテルスルホン」という用語は構造Iに示す構造単位を含むポリエーテルスルホンをいい、ポリエーテルスルホンが構造Iを有する「反復単位」を含むことを示唆するものではない。構造IIの適当なビスフェノールとしては、以下の構造III〜IXのビスフェノールが挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
ビスフェノールIII〜IX及び同様のビスフェノールは市販されており、当業者に周知の方法を用いて製造することもできる。
【0031】
一実施形態では、ポリエーテルスルホンは、少なくとも次の構造Xのビスフェノールから誘導された構造単位を含む。
【0032】
【化7】

【0033】
式中、Rは、C〜C20脂肪族基、C3〜20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。構造Xのビスフェノールの具体例としては、2,3−ジヒドロ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−1H−イソインドール−1−オン(CAS No.22749−77−5)、2,3−ジヒドロ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−シクロヘキシル−1H−イソインドール−1−オン、2,3−ジヒドロ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1H−イソインドール−1−オン、2,3−ジヒドロ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−フルオロフェニル)−1H−イソインドール−1−オンなどが挙げられる。
【0034】
一実施形態では、本発明は、ビスフェノールIII及びVからなる群から選択されるビスフェノールから誘導された1以上の構造単位を含むポリエーテルスルホンIを提供する。
【0035】
【化8】


【0036】
本発明のポリエーテルスルホンIは、1種以上のビフェノールXIから誘導された構造単位を含む。
【0037】
【化9】

【0038】
式中、Rは、構造Iで定義した通りであり、各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、nは各々独立に0〜4の整数である。
【0039】
ビスフェノールXIは市販されており、当業者に周知の方法で製造することもできる。ビフェノールである4,4′−ジヒドロキシビフェニルが好ましいビフェノールであり、ALDRICH Chemical社から市販されている。
【0040】
本発明で提供する好ましいポリエーテルスルホン組成物は、4,4′−ビフェノールから誘導された構造単位を、一般に該組成物中に存在する芳香族エーテル構造単位の総量の約5モル%〜約95モル%、さらに好ましくは約35モル%〜約95モル%、さらに一段と好ましくは約50モル%〜約95モル%に相当する量で含む。
【0041】
本発明のポリエーテルスルホン組成物は高いガラス転移温度を示し、そのため耐熱性が必要とされる用途で有用な材料である。本発明のポリエーテルスルホン組成物は、通例約225℃を超えるガラス転移温度、さらに好ましくは約235℃を超えるガラス転移温度、さらに一段と好ましくは約250℃を超えるガラス転移温度を呈する。
【0042】
本発明のポリエーテルスルホン組成物は優れた耐衝撃性(即ち、1ft−lb/inを超えるノッチ付アイゾッド試験値)を示す。ポリマー材料の耐衝撃性は、米国材料試験協会D256試験規格(ASTM D256)を用いて簡便に決定される。本発明のポリエーテルスルホン組成物は、ASTM D256を用いて測定して、典型的には1ft−lb/in超、好ましくは3ft−lb/in超、さらに好ましくは8ft−lb/in超のノッチ付アイゾッド試験値を示す。
【0043】
上述の通り、本発明のポリエーテルスルホン組成物は、優れた耐衝撃性(即ち、1ft−lb/inを超えるノッチ付アイゾッド試験値)を示す。耐衝撃性は分子量に依存する。一実施形態では、本発明のポリエーテルスルホン組成物は、クロロホルム移動相中ポリスチレン分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、45000g/モルを超える重量平均(M)分子量を有する。別の実施形態では、本発明のポリエーテルスルホン組成物は、ポリスチレン分子量標準物質を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、55000g/モルを超える重量平均(M)分子量を有する。
【0044】
一実施形態では、本発明は、以下の構造単位XIIを含むポリエーテルスルホン組成物であって、以下の構造XIIIの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含む組成物を提供する。
【0045】
【化10】

【0046】
式中、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。
【0047】
【化11】

【0048】
式中、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。
【0049】
適当なビスフェノールXIIIとしては、構造III〜IXのビスフェノールが挙げられる。
【0050】
一実施形態では、本発明は、ビスフェノールIII及びVからなる群から選択されるビスフェノールから誘導される構造単位を1個以上含むポリエーテルスルホンXIIを提供する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、ポリエーテルスルホンIであって、当該ポリエーテルスルホン組成物が構造IIの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含み、Wが以下の構造XIV〜XVIIIからなる群から選択される二価脂環式基又は二価芳香族基であるポリエーテルスルホンIを提供する。
【0052】
【化12】

【0053】
構造XIV〜XVIIIにおいて、破線は上記二価基がビスフェノールIIのヒドロキシフェニレン基に結合する箇所を示す。
【0054】
本発明の特定の実施形態では、ポリエーテルスルホンIは、フルオレニリデンビスフェノール−A(「FBPA」)(構造III)と4,4′−ビフェノールと1種以上のジハロジアリールスルホンモノマーとを含むモノマー混合物から誘導された構造単位を含む。フルオレニリデンビスフェノール−AモノマーIIIと4,4′−ビフェノールモノマーを含むモノマー混合物を、本明細書では「ジフェノールモノマー混合物」という。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明のポリエーテルスルホンは、ジフェノールモノマーの総モル数を基準にして、50モル%以上の4,4′−ビフェノールと50モル%以下の量のフルオレニリデンビスフェノール−Aを含むジフェノールモノマー混合物から誘導された構造単位を含む。その他の実施形態では、ポリエーテルスルホンは、ジフェノールモノマーの総モル数を基準にして、70モル%以上の4,4′−ビフェノールを含むジフェノールモノマー混合物から誘導された構造単位を含む。さらに別の実施形態では、ポリエーテルスルホンは、ジフェノールモノマーの総モル数を基準にして、50〜95モル%、好ましくは60〜95モル%又は65〜85モル%又は70〜85モル%の4,4′−ビフェノールを含むジフェノールモノマー混合物から誘導された構造単位を含む。
【0056】
一実施形態では、本発明のポリエーテルスルホンは、4,4′−ビフェノール及びフルオレニリデンビスフェノール−Aから誘導された構造単位に加えて、1種以上の追加のジヒドロキシフェニルモノマーを含む。追加のジヒドロキシビフェニルモノマーは4,4′−ビフェノール以外の任意のジヒドロキシビフェニルであればよく、例えば、特に限定されないが、4,4′−ビフェノールの置換誘導体が挙げられる。追加のジヒドロキシビフェニルモノマーの1以上の芳香族環の置換基として適当なものとしては、ヨード、ブロモ、クロロ、フルオロ、アルキル、特にC〜C10アルキル、アリル、アルケニル、アルキルエーテル、シアノなどが挙げられる。追加のビフェノールモノマーは対称性をもつものでも、非対称なものでもよい。
【0057】
代替的な実施形態では、本発明のポリエーテルスルホンは、4,4′−ビフェノール及びフルオレニリデンビスフェノール−Aモノマーから誘導された構造単位に加えて、式(II)で表される1種以上の追加のビスフェノールモノマーを含む。
【0058】
芳香族ポリエーテルスルホンは公知である(例えば、英国特許第1078234号、米国特許第4010147号)。これらは、例えば溶媒中でのジフェノールのジアルカリ金属塩とジハロアリールスルホンとの反応で製造し得る。ジフェノールのジアルカリ塩はその場で生成させてもよいし、別個の反応で形成してもよい。溶媒は、好ましくはジクロロベンゼン(o−DCB)、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、メシチレンのような芳香族溶媒、或いはN−C〜C−アルキルカプロラクタム(例えばN−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−n−プロピルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム)、N−C〜C−アルキルピロリドン(例えばN−メチルピロリドン)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホラン、テトラメチル尿素及びこれらの混合物のような極性非プロトン溶媒である。使用する溶媒が、ジクロロベンゼンやクロロベンゼン、キシレン、トルエン、メシチレンのように比較的非極性の溶媒である場合、合成上有用な反応速度を達成するため1種以上の相間移動触媒を使用し得る。適当な相間移動触媒としては、ヘキサアルキルグアニジニウムクロリド、p−ジアルキルアミノピリジニウム塩、ビス−グアニジニウム塩、ビス−ジアルキルアミノピリジニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。極性非プロトン溶媒を用いる場合には、相間移動触媒の使用は随意的である。
【0059】
本発明の芳香族ポリエーテルスルホンは、典型的には130℃〜320℃、好ましくは145℃〜280℃の温度で、0.8〜10bar、好ましくは1〜3barの圧力下、最も好ましくは大気圧下で製造される。
【0060】
溶媒の使用量は、生成ポリマーの総重量を基準にして、典型的には約0.5〜約50重量部、好ましくは5〜35重量部である。
【0061】
本発明で提供するポリエーテルスルホンは、慣用法で回収し得る。
【0062】
本発明のポリエーテルスルホンは、高耐熱性と優れた耐衝撃性及び卓越した耐燃性を併せもつ熱可塑性樹脂である。これらは、例えば押出、射出成形、焼結又はプレス成形で加工し得る。
【0063】
あらゆるタイプの成形品を製造し得る。成形品は、高い寸法安定性と優れた耐衝撃性のポリエーテルスルホンが要求される用途、例えばプリント配線板、航空機構造体、電子レンジ用耐熱皿、滅菌可能な医療器具、コーヒーマシン部品、ゆで卵器、温水タンク、パイプ、ポンプ、ヘアドライヤなどに使用し得る。ただし、本発明のポリエーテルスルホンは、高い耐熱性、耐燃性及び耐衝撃性を示すことが必要とされるフィルム及び膜に特に適している。
【0064】
本発明のポリエーテルスルホンには慣用添加剤を添加してもよく、その量は、添加剤を含む組成物中に存在するポリエーテルスルホンの重量を基準にして、好ましくは約0.00001〜約80重量%、さらに好ましくは約0〜約60重量%である。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤、視覚効果向上剤、増量剤、帯電防止剤、触媒奪活剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、耐衝撃性改良剤及び加工助剤のような物質が挙げられる。本発明のポリエーテルスルホンに配合し得る各種添加剤は、典型的には樹脂のコンパウンディングに常用され、当業者に公知のものである。
【0065】
視覚効果向上剤は視覚効果添加剤又は顔料とも呼ばれ、封入(encapsulated)形、非封入形、又はポリマー樹脂含有粒子に積層した形態で存在し得る。視覚効果添加剤の非限定的な具体例を幾つか挙げると、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化マンガン、金属酸化物、白雲母、黒雲母、パールマイカ、合成雲母、二酸化チタンでコートした雲母、金属コートしたガラスフレーク、並びに、特に限定されないが、Perylene Redを始めとする着色剤がある。視覚効果添加剤は、高アスペクト比のものでも、低アスペクト比のものでもよく、複数のファセットを含んでいてもよい。Solvent Blue 35、Solvent Blue 36、Disperse Violet 26、Solvent Green 3、Anaplast Orange LFP、Perylene Red及びMorplas Red 36のような染料を用いてもよい。特に限定されないが、Permanent Pink R(Color Index Pigment Red 181、Clariant社製)、Hostasol Red 5B(Color Index #73300、CAS No.522−75−8、Clariant社製)及びMacrolex Fluorescent Yellow 10GN(Color Index Solvent Yellow 160:1、Bayer社製)を始めとする蛍光染料を用いてもよい。二酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、クロム酸コバルト、チタン酸コバルト、硫化カドミウム、酸化鉄、スルホケイ酸ナトリウムアルミニウム、スルホケイ酸ナトリウム、クロムアンチモンチタンルチル、ニッケルアンチモンチタンルチル及び酸化亜鉛のような顔料を用いてもよい。封入形の視覚効果添加剤は、通常、アルミニウムフレークのような高アスペクト比材料などの視覚効果材料をポリマーで封入したものからなる。封入視覚効果添加剤はビーズの形状をもつ。
【0066】
酸化防止剤の非限定的な具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジ(2,4−ジクミルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、2,2′,2″−ニトリロ[トリエチル−トリス[3,3′,5,5′−テトラ−tブチル−1,1′−ビフェニル−2′−ジイル]ホスファイト]、3,9−ジステアリルオキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ジラウリルホスファイト、3,9−ジ[2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビス(ジフェニレン)ホスホナイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、トリイソデシルホスファイト及びこれらの1種以上を含むホスファイト混合物が挙げられる。トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト及びこれらの1種以上を含むホスファイト混合物が特に好ましい。
【0067】
本発明のポリエーテルスルホンは、適宜、耐衝撃性改良剤を含んでいてもよい。耐衝撃性改良剤樹脂は、組成物の総重量を基準にして、約1重量%〜約30重量%に相当する量でポリエーテルスルホンに添加し得る。適当な耐衝撃性改良剤としては、グラフト又はコアシェルゴムのような数種類の異なるゴム状改良剤の1種、或いはこれら改良剤の2種以上の組合せを含むものが挙げられる。耐衝撃性改良剤の具体例としては、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ゴム、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ゴム、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)ゴム、スチレンアクリロニトリルコポリマー及びグリシジルエステル耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0068】
加工助剤の非限定的な具体例としては、Doverlube(登録商標)FL−599(Dover Chemical社から市販)、Polyoxyter(登録商標)(Polychem Alloy社から市販)、Glycolube P(Lonza Chemical社から市販)、テトラステアリン酸ペンタエリトリトール、Metablen A−3000(三菱レイヨン株式会社から市販)、ジ安息香酸ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0069】
UV安定剤の非限定的な具体例としては、2−(2′−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール類、例えば5′−メチル誘導体、3′,5′−ジ−t−ブチル誘導体、5′−t−ブチル誘導体、5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)誘導体、5−クロロ−3′,5′−ジ−t−ブチル誘導体、5−クロロ−3′−t−ブチル−5′−メチル誘導体、3′−sec−ブチル−5′−t−ブチル誘導体、3′−α−メチルベンジル−5′−メチル、3′−α−メチルベンジル−5′−メチル−5−クロロ誘導体、4′−ヒドロキシ、4′−メトキシ誘導体、4′−オクトキシ誘導体、3′,5′−ジ−t−アミル誘導体、3′−メチル−5′−カルボメトキシエチル誘導体、5−クロロ−3′,5′−ジ−t−アミル誘導体及びTinuvin(登録商標)234(Ciba Specialty Chemicals社から市販)が挙げられる。2,4−ビス−(2′−ヒドロキシフェニル)−6−アルキル−s−トリアジン類、例えば6−エチル誘導体、6−ヘプタデシル誘導体又は6−ウンデシル誘導体も適当である。2−ヒドロキシベンゾフェノン類、例えば4−ヒドロキシ誘導体、4−メトキシ誘導体、4−オクトキシ誘導体、4−デシルオキシ誘導体、4−ドデシルオキシ誘導体、4−ベンジルオキシ誘導体、4,2′,4′−トリヒドロキシ誘導体、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ誘導体又は2′−ヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ誘導体、さらに1,3−ビス−(2′−ヒドロキシベンゾイル)−ベンゼン類、例えば1,3−ビス−(2′−ヒドロキシ−4′−ヘキシルオキシ−ベンゾイル)−ベンゼン、1,3−ビス−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシ−ベンゾイル)−ベンゼン又は1,3−ビス−(2′−ヒドロキシ−4′−ドデシルオキシベンゾイル)−ベンゼンも使用し得る。適宜置換された安息香酸のエステル、例えばフェニルサリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレゾルシン、ビス−(4−t−ブチルベンゾイル)−レゾルシン、ベンゾイルレゾルシン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−t−ブチルフェニルエステルもしくはオクタデシルエステルもしくは2−メチル−4,6−ジ−t−ブチルエステルも使用し得る。アクリレート、例えばα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸エチルエステルもしくはイソオクチルエステル、α−カルボメトキシ−桂皮酸メチルエステル、α−シアノ−β−メチル−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステルもしくはブチルエステル、又はN(β−カルボメトキシビニル)−2−メチルインドリンも同様に使用し得る。シュウ酸ジアミド、例えば4,4′−ジ−オクチルオキシ−オキサニリド、2,2′−ジ−オクチルオキシ−5,5′−ジ−t−ブチル−オキサニリド、2,2′−ジ−ドデシルオキシ−5,5−ジ−t−ブチル−オキサニリド、2−エトキシ−2′−エチル−オキサニリド、N,N′−ビス−(3−ジメチル−アミノプロピル)−オキサルアミド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2′−エチルオキサニリド、並びにこれらと2−エトキシ−2′−エチル−5,4′−ジ−t−ブチル−オキサニリドとの混合物、又はo−及びp−メトキシ−二置換並びにo−及び−p−エトキシ−二置換オキサニリドとの混合物もUV安定剤として適している。好ましくは、本発明の組成物で用いる紫外線吸収剤は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、ニッケルビス(O−エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2′−チオビス(4−t−ブチルフェノール)とのニッケルブチルアミン錯体、2−エトキシ−2′−エチルオキサニリド、2−エトキシ−2′−エチル−5,5′−ジt−ブチルオキサニリド又はこれらの混合物である。
【0070】
難燃剤の非限定的な具体例としては、ノナフルオロブチルスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、及びレゾルシノールやビスフェノールAのような多価フェノールの亜リン酸エステルが挙げられる。
【0071】
離型組成物の非限定的な具体例としては、長鎖脂肪族酸とペンタエリトリトールやGuerbetアルコールのようなアルコールとのエステル、長鎖ケトン、シロキサン、α−オレフィンポリマー、長鎖アルカン及び炭素原子数15〜600の炭化水素が挙げられる。
【0072】
本発明のポリエーテルスルホンは他の公知のポリマーと公知の方法で混合して例えばポリマーブレンド、ポリマー混合物及びポリマーアロイを形成してもよい。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した方法をいかに実施し評価するかの詳しい説明を当業者に提供するために記載するものであり、本発明者らが発明として把握している範囲を限定するものではない。特記しない限り、部は重量部であり、温度は℃である。耐衝撃性の評価のためノッチ付アイゾッド値をASTM D256規格法に準拠して測定した。
【0074】
分子量は数平均(M)又は重量平均(M)分子量として示し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析で求めたが、ポリスチレン分子量標準を用いて広い範囲で標準較正曲線を作成し、較正曲線に基づいてポリマー分子量を決定した。ゲルパーミエーションカラムの温度は40℃であり、移動相は3.75%v/vのイソプロピルアルコールを含むクロロホルムであった。
【0075】
以下の実施例において、ガラス転移温度の値は加熱速度20℃/分の示差走査熱量測定(DSC)で求めた。
【0076】
実施例1
250mLスケールのFBPA/BP共重合(30/70組成)
フルオレニリデンビスフェノールA(FBPA)の二ナトリウム塩の合成: アルゴン雰囲気下、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(フルオレニリデンビスフェノールA(FBPA))(50.6318g、0.14449モル)を、アルゴン脱気メタノール(MeOH)(120mL)に溶解した。この多少黄色味を帯びた溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(50.55%)(22.8659g、0.28899モル)を室温で滴下した。溶液の色が多少橙色に変化し、沈殿を生じた。さらに60mLのMeOHを添加して沈殿を再溶解した。得られた黄橙色の溶液を、2mL/分の一定流量の蠕動ポンプを用いて、機械的に攪拌した高温(170℃)の1,2−ジクロロベンゼン(o−DCB)(150mL)を収容した別の反応器に移した。短経路蒸留ヘッドを用いて、MeOH/水混液を留去した。約190mL留去されたときに温度を210℃に上げた。その後、50mLのo−DCBを添加して温度を225℃に上げた。留出物の水分量が20ppmとなるまで蒸留を続けた。次いで、混合物を乾燥o−DCB(50mL)で希釈し、アルゴン下で室温に冷却した。得られた懸濁液を窒素下で濾過した。フィルターケークをアルゴン脱気ヘプタンで洗浄した。オフホワイトの粉末を130℃で2日間真空乾燥してFBPAの二ナトリウム塩(FBPA Na−塩)52g(91%)を得た。この塩を重合に直接使用した。
【0077】
重合: フルオレニリデンビスフェノールAの二ナトリウム塩(FBPANa)(10.2065g、25.8799mmol)とビフェノールの二ナトリウム塩(BPNa)(13.9275g、60.5086mmol)を窒素下で秤量して反応フラスコに入れ、o−ジクロロベンゼン(o−DCB)(100mL)中に懸濁した。若干量のo−DCB(約33g)を短経路蒸留ヘッドから留去して混合物を乾燥させ、次いでジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)(24.8075g、86.3874mmol)及び乾燥o−DCB(33g)を添加した。再度o−DCB(38g)を留去して混合物を乾燥した。留出物の水分量をカールフィッシャー滴定で求めたところ、10〜20ppmであった。ヘキサエチルグアニジニウムクロリド(HEGCl)(3.6ml、0.96M o−DCB中)を180℃で添加して重合を開始した。アリコートを採取してポリマーの分子量をモニターした。目標分子量に達したら、茶色がかったハチミツ色の溶液を10滴のHPO(85%)によって180℃で奪活した。15分後、o−DCB(155mL)を添加して、固形分約10%となるように奪活生成混合物を希釈した。
【0078】
最終処理法A: 混合物を85℃に冷却し、350rpmで攪拌しながら1.7mLの水を加えて塩化ナトリウムを凝集させた。次いで混合物を120℃に加熱して、水を沸騰除去した。泡立ちが止まったら、混合物を熱いうちに密充填セライト(約3〜5mmの厚さ)で濾過した。得られた透明ポリマー溶液を室温に冷却し、ブレンダーを用いてMeOH中で析出させ、濾過し、オーブン乾燥して、オフホワイトの綿毛状粉末としてポリマー生成物を得た(30.2g、78%)。これをクロロホルム(190mL)に再溶解し、MeOH中で析出させた。
【0079】
最終処理法B: 代替法では、1.7mLの水を添加せずに、メタノールのような非溶媒中で直接沈殿させることによって触媒を除去した。直接沈殿後、最終処理法Aに記載の残りの段階を実施してポリマー生成物を得た。
【0080】
最終処理法C: 別の代替法では、シリカゲルを用いた吸着によって触媒を除去した。最終処理法Aに記載の残りの段階を実施してポリマー生成物を得た。
【0081】
分析: ポリマー生成物の示差走査熱量測定では、240℃に単一のガラス転移温度が観察された。
【0082】
実施例2
5LスケールのFBPA/BP共重合(30/70組成)
混合塩の合成: 250mLの滴下漏斗を取り付けた磁気攪拌式2000mL三口丸底フラスコ中で、FBPA(79.9672g、0.22821モル)をアルゴン脱気MeOH(400mL)に溶解した。不活性雰囲気下、ビフェノール(99.1534g、0.53248モル)を添加し、次いで追加のMeOH(350mL)を添加した。水酸化ナトリウム水溶液(49.25重量%で123.5549g、1.52138モル)を滴下漏斗を用いてスラリーに滴下し、MeOH(30mL)ですすぎ入れた。得られた赤味がかった橙色溶液を、約6mL/分の蠕動ポンプを用いて、機械的に攪拌した(200rpm)高温(165℃)のo−DCB(1480ml)中に移した。添加は約135分後で完了し、この時点までに溶媒(MeOH/水/o−DCB)約880mLが留去された。水が完全に留去されるまで蒸留を185〜190℃で続けた。o−DCBの蒸留は、透明なo−DCB約200mLが除去されるまで続けた。最終画分の水分量は17ppmであった。o−DCB中の混合塩スラリーの色はほぼ白色であった。
【0083】
重合: o−DCB中のFBPANa及びBPNaの白色スラリーに、DCDPS(220.62g、0.76827モル)を添加し、次いで追加のo−DCB(100mL)を添加した。混合物を加熱して、固形分約29%(29.2%)となるまでo−DCB(940mL)を留去した。o−DCBが約840mL留去されたときの留出物の水分量は9ppmであった。次いで触媒(30.96Mで32mL)を釜温度185℃の反応混合物に添加した。激しい還流が観察された。重合を進行させた。最終的な分子量に達したら、180℃においてリン酸(85%HPO 7.1g)で反応を奪活した。さらに13分経過後、混合物をo−DCB(1735mL)で希釈して、固形分10%とした。溶液の温度を90℃とし、350rpmで攪拌しながら水(11mL)を添加した。1分未満で塩結晶の形成が観察された。15分後、懸濁液を135℃に加熱して、水を沸騰除去した。次いで高温混合物を排出して、適当な濾過装置で濾過した。濾過に要した時間は15分未満であった。透明溶液を周囲温度に冷却すると、若干の沈殿が生じた。混合物を90℃に加熱し、得られた溶液をMeOH中で析出させた。綿毛状ポリマー生成物をクロロホルム(10%固形分)に溶解し、MeOH中で析出させて、315g(92%)の最終ポリマー生成物を綿毛状固体として得た。DSC:243℃に単一のT。10枚の成形試験部材でノッチ付アイゾッド衝撃試験(ASTM D 256)を実施したところ、その平均値は3.19ft−lb/inであり、標準偏差は0.48ft−lb/inであった。
【0084】
実施例3
5LスケールのFBPA/BP共重合(50/50組成): 本組成物は、実施例2に記載の通り合成した。ポリマー生成物は253.7℃に単一のガラス転移温度(T)を示した。10枚の成形試験部材でノッチ付アイゾッド衝撃試験(ASTM D 256)を実施したところ、その平均値は1.16ft−lb/inであり、標準偏差は0.48ft−lb/inであった。
【0085】
実施例4
5LスケールのFBPA/BP共重合(15/85組成): 本組成物は、実施例2に記載の通り合成した。ポリマー生成物は234.8℃に単一のガラス転移温度(T)を示した。10枚の成形試験部材でノッチ付アイゾッド衝撃試験(ASTM D 256)を実施したところ、その平均値は8.44ft−lb/inであり、標準偏差は1.63ft−lb/inであった。
【0086】
実施例1〜4に示すデータは、本発明の組成物での非常に高いTと優れた延性特性(1ft−lb/inを超えるノッチ付アイゾッド)との予想外の組合せを示している。実施例1〜4のポリエーテルスルホン組成物のガラス転移温度及びノッチ付アイゾッドのデータを図1のグラフに示す。図1において、符号10はコポリマー中のFBPAの濃度とコポリマーのガラス転移温度との相関関係を示す。図1において、符号20はコポリマー中のFBPAの濃度とコポリマーのノッチ付アイゾッド値との相関関係を示す。ビフェノール由来の構造単位の濃度に比してFBPA由来の構造単位の濃度が増加すると、本組成物で観察されるノッチ付アイゾッド値が低下する(図1)。ノッチ付アイゾッド試験の性能に劣る実施例3(50%FBPAポリスルホン)を参照されたい。
【0087】
本発明をその好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の要旨及び技術的範囲内で変更及び修正をなすことができることは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造単位Iを含むポリエーテルスルホン組成物であって、
【化1】

(式中、R、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、n、m、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。)
以下の構造Vの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含み、芳香族エーテル構造単位の50〜95モル%は4,4′−ビフェノールから誘導された組成物。
【化2】

【請求項2】
225℃を超えるガラス転移温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
235℃を超えるガラス転移温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ASTM D256で測定して、1ft−lb/inを超えるノッチ付アイゾッド試験値を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ポリスチレン分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、45000g/モルを超える重量平均分子量Mを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
以下の構造単位Iを含むポリエーテルスルホン組成物の製造方法であって、
【化3】

(式中、R、R及びRは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C12脂肪族基、C〜C12脂環式基又はC〜C12芳香族基であり、n、m、qは各々独立に0〜4の整数であり、WはC〜C20脂環式基又はC〜C20芳香族基である。)
組成物が以下の構造Vの1種以上のビスフェノールから誘導された芳香族エーテル構造単位を5モル%超含み、
【化4】

芳香族エーテル構造単位の50〜95モル%は4,4′−ビフェノールから誘導され、
当該方法が、
(a)構造Vの1種以上のビスフェノールのジアルカリ金属塩および4,4′−ビフェノールを1種以上のビスハロフェニルスルホンと、適宜相間移動触媒の存在下、実質的乾燥溶媒中で接触させる段階(ジアルカリ金属塩の総量はビスハロフェニルスルホンの量と略等モルである)、及び
(b)酸性奪活剤で反応を奪活する段階
を含んでなる方法。
【請求項7】
前記溶媒が、ジクロロベンゼン(o−DCB)、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、メシチレン、又はN−C〜C−アルキルカプロラクタム、N−C〜C−アルキルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホラン、テトラメチル尿素及びこれらの混合物のような極性非プロトン溶媒からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒がo−ジクロロベンゼンである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記塩が二ナトリウム塩である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記相間移動触媒が、1種以上のヘキサアルキルグアニジニウムクロリド、1種以上のp−ジアルキルアミノピリジニウム塩、1種以上のビス−グアニジニウム塩、1種以上のビス−ジアルキルアミノピリジニウム塩、1種以上のテトラアルキルホスホニウム塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記相間移動触媒がヘキサエチルグアニジニウムクロリドである、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記ビスハロフェニルスルホンが4,4′−ジクロロジフェニルスルホンである、請求項6記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197449(P2012−197449A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130113(P2012−130113)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2005−279270(P2005−279270)の分割
【原出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】