説明

色処理装置、色処理方法およびプログラム

【課題】異なる2つの色空間相互における双方向からの色変換精度を向上させる。
【解決手段】第1の色空間の第1色信号を取得する第1色信号入出力部10と、第2の色空間の第2色信号を取得する第2色信号入出力部40と、第1の色空間の色信号を第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性に基づいて第1色信号を第2の色空間の色信号に変換し、第2の色空間の色信号を第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性に基づいて第2色信号を第1の色空間の色信号に変換する色変換部30と、色変換部30にて用いる第1の色変換特性と第2の色変換特性とを一致または近似させて生成する色変換特性生成部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色処理装置、色処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置や液晶ディスプレイ等の表示装置、スキャナ等の画像読取装置等といったカラー画像を入出力する装置では、入力した例えばRGB色空間の色信号を装置に依存しない例えばL色空間の色信号に変換し、さらに各装置での出力色空間である例えばCMYK色空間の色信号に変換して、カラー画像の出力処理を行う。その際に、各装置では、例えばCMYK色空間およびL色空間にて実際に測色された実データの対(実データ対)に基づきCMYK色空間とL色空間との対応関係を表す色変換特性を予測して、実データ対には存在しない色の生成が行われる。
例えば特許文献1には、第1の色空間の入力信号を第2の色空間の出力信号に変換するに際して、与えられる第2の色空間の信号を第1の色空間の信号に変換し、変換して得られた信号と入力信号との差分を抽出し、抽出された差分を極小にする第2の色空間の信号を探索することで、色変換特性の精度を高める方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−196905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、例えば印刷機の色校正(カラープルーフ)をプリンタで行う場合等には、印刷機におけるCMYK色空間の色信号を例えばL色空間の色信号へ変換し、そして、L色空間の色信号からプリンタにおけるCMYK色空間の色信号への変換が行われる。その際には、印刷機側の実データを用いて生成した印刷機の色変換特性と、プリンタ側の実データを用いて生成したプリンタの色変換特性とが用いられるが、これらの色変換特性モデルのどちらにおいても、高い色変換精度(実データへのフィッティング精度と逆変換精度)が確保されたときに、良好な色校正システムが構成される。
本発明は、色校正(カラープルーフ)等のCMS(カラーマネジメントシステム)の基本となる色変換特性において高精度な色変換特性モデルを確保するために、異なる2つの色空間相互における双方向からの色変換精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、第1の色空間の第1色信号を取得する第1色信号取得部と、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間の第2色信号を取得する第2色信号取得部と、前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性に基づいて前記第1色信号取得部にて取得された前記第1色信号を当該第2の色空間の色信号に変換し、当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性に基づいて前記第2色信号取得部にて取得された前記第2色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する色変換部と、前記色変換部にて用いる前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを一致または近似させて生成する色変換特性生成部とを備えたことを特徴とする色処理装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記色変換特性生成部は、前記第1色信号取得部にて取得された前記第1色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1色信号と、前記第2色信号取得部にて当該第1色信号から変換して得られた当該色信号が前記第2色信号として取得された場合に、当該第2色信号を前記第2の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号に変換した際の当該色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを生成することを特徴とする請求項1記載の色処理装置である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記色変換特性生成部は、前記第1の色空間における複数の色データの各々と、当該複数の色データ各々により形成された各画像の色を前記第2の色空間で測定して得られた色データとを一対とする複数の色データ対に加重を施して、当該加重が施された当該複数の色データ対に基づき前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを生成し、当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを生成するに際して、当該複数の色データ対に施す当該加重を制御して当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを一致または近似させて生成することを特徴とする請求項1記載の色処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記色変換特性生成部は、前記複数の色データ対に施す前記加重を当該色データ対の数を次元とするベクトルとし、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルとを一致または近似させて設定することで、当該第1の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定することを特徴とする請求項3記載の色処理装置である。
【0008】
請求項5に記載の発明は、前記色変換特性生成部は、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルとの差または距離に基づいて当該ベクトル相互の一致または近似を評価し、当該評価の結果に基づき当該第1の色変換特性を生成する際に前記加重が施される対象となる前記複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定することを特徴とする請求項4記載の色処理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記色変換特性生成部は、前記ベクトル相互の一致または近似を最急降下法により評価することを特徴とする請求項5記載の色処理装置である。
【0009】
請求項7に記載の発明は、第1の色空間の色信号を当該第1の色空間とは異なる第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性を生成する工程と、前記第2の色空間の色信号を前記第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性を生成する工程と、前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する工程と、生成または再生成された前記第1の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に変換し、または、生成または再生成された前記第2の色変換特性に基づいて当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する工程とを有することを特徴とする色処理方法である。
【0010】
請求項8に記載の発明は、前記第1の色空間の色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1の色空間の色信号と、当該第1の色空間の色信号から変換して得られた当該第2の色空間の色信号を前記第2の色変換特性に基づいて当該第1の色空間の色信号に変換した際の当該第1の色空間の色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成することを特徴とする請求項7記載の色処理方法である。
【0011】
請求項9に記載の発明は、コンピュータに、第1の色空間の色信号を当該第1の色空間とは異なる第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性を生成する機能と、前記第2の色空間の色信号を前記第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性を生成する機能と、前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能と、生成または再生成された前記第1の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に変換し、または、生成または再生成された前記第2の色変換特性に基づいて当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0012】
請求項10に記載の発明は、前記第1の色空間の色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1の色空間の色信号と、当該第1の色空間の色信号から変換して得られた当該第2の色空間の色信号を前記第2の色変換特性に基づいて当該第1の色空間の色信号に変換した際の当該第1の色空間の色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能が含まれることを特徴とする請求項9記載のプログラムである。
請求項11に記載の発明は、前記第1の色空間における複数の色データの各々と、当該複数の色データ各々により形成された各画像の色を前記第2の色空間で測定して得られた色データとを一対とする複数の色データ対に加重を施して、当該加重が施された当該複数の色データ対に基づき前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを生成および再生成する機能と、前記複数の色データ対に施す前記加重を制御して、前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能とが含まれることを特徴とする請求項9記載のプログラムである。
【0013】
請求項12に記載の発明は、前記複数の色データ対に施す前記加重を当該色データ対の数を次元とするベクトルとし、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルとを一致または近似させることで、当該第1の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定して、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能が含まれることを特徴とする請求項11記載のプログラムである。
【0014】
請求項13に記載の発明は、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルとの差または距離に基づいて当該ベクトル相互の一致または近似を評価し、当該評価の結果に基づき当該第1の色変換特性を生成する際に前記加重が施される対象となる前記複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定する機能が含まれることを特徴とする請求項12記載のプログラムである。
請求項14に記載の発明は、前記ベクトル相互の一致または近似を最急降下法により評価する機能が含まれることを特徴とする請求項13記載のプログラムである。
【0015】
なお、このプログラムは、例えば、ハードディスクやDVD−ROM等の予約領域に格納されたプログラムを、RAMにロードして実行される場合がある。また、予めROMに格納された状態にて、CPUで実行される形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROMを備えている場合には、装置がアッセンブリされた後に、プログラムだけが提供されてROMにインストールされる場合がある。このプログラムの提供に際しては、インターネット等のネットワークを介して装置にプログラムが伝送され、装置の有するROMにインストールされる形態も考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べて、異なる2つの色空間相互における双方向からの色変換精度を向上させることができる。
本発明の請求項2によれば、本発明を採用しない場合に比べて、変換対象または逆変換対象となる色信号周辺での色変換精度を高めることができる。
本発明の請求項3によれば、異なる2つの色空間の色信号相互間の色変換精度の調整を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項4によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、使用する色データ対に対する加重を適切に調整できる。
本発明の請求項5によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、第1の色変換特性と第2の色変換特性とをより高い精度で近似させることができる。
本発明の請求項6によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、第1の色変換特性と第2の色変換特性とをより高い精度で近似させることができる。
【0018】
本発明の請求項7によれば、本発明を採用しない場合に比べて、異なる2つの色空間相互における双方向からの色変換精度を向上させることができる。
本発明の請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べて、変換対象または逆変換対象となる色信号周辺での色変換精度を高めることができる。
【0019】
本発明の請求項9によれば、本発明を採用しない場合に比べて、異なる2つの色空間相互における双方向からの色変換精度を向上させることができる。
本発明の請求項10によれば、本発明を採用しない場合に比べて、変換対象または逆変換対象となる色信号周辺での色変換精度を高めることができる。
本発明の請求項11によれば、異なる2つの色空間の色信号相互間の色変換精度の調整を行うことができる。
【0020】
本発明の請求項12によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、使用する色データ対に対する加重を適切に調整できる。
本発明の請求項13によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、第1の色変換特性と第2の色変換特性とをより高い精度で近似させることができる。
本発明の請求項14によれば、異なる2つの色空間に関する双方向からの色変換を行うに際し、本発明を採用しない場合に比べて、第1の色変換特性と第2の色変換特性とをより高い精度で近似させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される色処理装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示す色処理装置1は、第1色信号入出力部10、色変換特性生成部20、色変換部30、第2色信号入出力部40、色信号出力部50を備えている。
色処理装置1は、図示しないCPUが第1色信号入出力部10、色変換特性生成部20、色変換部30、第2色信号入出力部40、色信号出力部50の各機能を実現するプログラムを主記憶部(不図示)から色処理装置1内のRAM等に読み込んで以下で説明する各種処理を行う。
【0022】
第1色信号入出力部10は、第1色信号取得部の一例であって、画像データとしての第1の色空間の色信号、または、色変換テーブルの格子点である第1の色空間の色信号等が入力され、出力する機能部である。すなわち、画像データの色信号や、色変換テーブルの格子点である色信号等として、例えばカラープリンタ等のカラー画像形成装置等にて処理されるデバイスに依存する色空間(デバイス依存色空間)である例えばCMYK色空間の色信号(第1色信号)を取得する。そして、第1色信号入出力部10は、取得した第1色信号を色変換特性生成部20および色変換部30に出力する。さらには、第1色信号入出力部10は、色変換テーブルの格子点である第1色信号が入力された場合には、取得した第1色信号を色信号出力部50にも出力する。
また、第1色信号入出力部10は、色変換部30から、デバイスに依存しない色空間(デバイス非依存色空間)である例えばL色空間の色信号(第2色信号)が色変換部30にて色変換処理されることで生成された第1色信号を取得する。そして、色変換部30から取得した第1色信号を色信号出力部50に出力する。
【0023】
第2色信号入出力部40は、第2色信号取得部の一例であって、画像データとしての第2の色空間の色信号、または、色変換テーブルの格子点である第2の色空間の色信号等が入力され、出力する機能部である。すなわち、画像データの色信号や、色変換テーブルの格子点である色信号等として、例えばデバイスに依存しない色空間(デバイス非依存色空間)である例えばL色空間の色信号(第2色信号)を取得する。そして、第2色信号入出力部40は、取得した第2色信号を色変換特性生成部20および色変換部30に出力する。さらには、第2色信号入出力部40は、色変換テーブルの格子点である第2色信号が入力された場合には、取得した第2色信号を色信号出力部50にも出力する。
また、第2色信号入出力部40は、色変換部30から、例えばCMYK色空間の色信号(第1色信号)が色変換部30にて色変換処理されることで生成された第2色信号を取得する。そして、色変換部30から取得した第2色信号を色信号出力部50に出力する。
【0024】
色変換特性生成部20は、色変換特性生成部の一例であって、後段で詳述するように、色変換部30にて色変換処理を行う際に用いられる色変換特性を生成する機能部である。ここでの「色変換特性」とは、異なる2つの色空間の色信号相互の対応関係を表すものである。例えばCMYK色空間の色信号(第1色信号)を例えばL色空間の色信号(第2色信号)に変換する際の両者の対応関係や、その逆変換であるL色空間の第2色信号をCMYK色空間の第1色信号に変換する際の両者の対応関係を設定する。
なお、本明細書では、異なる2つの色空間のうちの一方の一例であるCMYK色空間の色信号を「第1色信号」、他方の一例であるL色空間の色信号を「第2色信号」と定義する。
【0025】
色変換部30は、色変換部の一例であって、色変換特性生成部20にて生成された色変換特性を取得し、取得した色変換特性に基づいて色変換処理を行う機能部である。すなわち、第1色信号入出力部10から取得したCMYK色空間の第1色信号を、色変換特性に基づいてL色空間の第2色信号に変換する。また、第2色信号入出力部40から取得したL色空間の第2色信号を、色変換特性に基づいてCMYK色空間の第1色信号に変換する。そして、第1色信号を変換して生成した第2色信号を第2色信号入出力部40に出力する。また、第2色信号を変換して生成した第1色信号を第1色信号入出力部10に出力する。
【0026】
色信号出力部50は、第1色信号入出力部10から送信された第1色信号や第2色信号入出力部40から送信された第2色信号を色処理装置1の外部に出力する機能部である。例えば、第1色信号や第2色信号をカラー画像形成装置等における色域内に変換する処理を行う機能部(不図示)に出力する。一般のカラー画像形成装置等では、色域圧縮処理(GMA:Gamut Mapping Algorithm)と呼ばれる入力画像の色域をカラー画像形成装置等が固有に有する色域内に圧縮する処理を行う。色信号出力部50は、このような色域圧縮処理を行う機能部に対して第1色信号や第2色信号を出力する。
【0027】
また、例えば、色信号出力部50は、第1色信号入出力部10にて入力された第1色信号や第2色信号入出力部40にて入力された第2色信号が色変換テーブルの格子点である場合には、第1色信号入出力部10にて入力された第1色信号とその第1色信号が色変換部30にて色変換処理されて生成された第2色信号とを一対とする色信号の組の複数を色変換テーブルとして記憶部(不図示)に出力する。また、第2色信号入出力部40にて入力された第2色信号とその第2色信号が色変換部30にて色変換処理されて生成された第1色信号とを一対とする色信号の組の複数を色変換テーブルとして記憶部に出力する。
色処理装置1においては、このような色変換テーブルが記憶部に形成された後は、第1色信号入出力部10や第2色信号入出力部40から入力された色信号を、記憶部に記憶された色変換テーブルを用いて直接色変換されるように構成してもよい。ここで、記憶部に形成される色変換テーブルとしては、例えば第1色信号であるCMYK色空間の色信号から、第2色信号であるL色空間の色信号への色変換テーブル、および例えば第2色信号であるL色空間の色信号から、第1色信号であるCMYK色空間の色信号への色変換テーブルの一方または双方が形成される。
【0028】
引き続いて、色変換特性生成部20について説明する。
色変換特性生成部20は、加重データ生成部21、加重幅変更部22、実データ対記憶部23を備えている。
加重データ生成部21は、実データ対記憶部23から実データ対を取得し、取得した実データ対への加重(重み付け)を行って、色変換部30にて設定される色変換特性を生成する機能を有する。
加重幅変更部22は、加重データ生成部21にて色変換特性を生成する際に設定される実データ対への加重を変更する機能を有する。
【0029】
実データ対記憶部23は、色変換部30にて実際に色変換特性の予測が行われる2つの異なる色空間での互いに対応する複数組の実データ対を記憶する。すなわち、第1色信号(入力信号)の色空間であるCMYK色空間でのn組の実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)と、それに対応する第2色信号(出力信号)の色空間であるL色空間でのn組の実データ(y1i,y2i,y3i)とを記憶する。ここで、n,iは整数であって、i=1〜nとする(以下、同様である)。
例えばカラー画像形成装置の場合には、CMYK色空間での色信号(C,M,Y,K)の種々の組合せでカラーパッチ(色見本)を印刷処理し、そのカラーパッチ各々の色をL色空間で測定(測色)する。それにより、入力信号(C,M,Y,K)の実データと、出力画像であるカラーパッチに関するL色空間での測色値(L,a,b)とからなる実データ対が用意される。そして、実データ対記憶部23には、入力信号(C,M,Y,K)の実データと、それに対応する出力画像の測色値(L,a,b)とが一組となった実データ対が記憶される。
【0030】
ここで、本実施の形態の色処理装置1にて行われる色変換特性の予測について説明する。色処理装置1は、例えばカラー画像形成装置が固有に有する色変換特性を予測し、予測された色変換特性に従って、第1色信号から第2色信号を生成する。また、その逆に、第2色信号から第1色信号を生成する。すなわち、色処理装置1では、上記の実データ対を用いて、CMYK色空間の第1色信号(C,M,Y,K)からL色空間の第2色信号(L,a,b)への色変換を行う際の対応関係を表す色変換特性を予測し、この色変換特性を用いて、実データ対には存在しない色の生成を行う。さらには、L色空間の第2色信号(L,a,b)からCMYK色空間の第1色信号(C,M,Y,K)への色変換を行う際の対応関係を表す色変換特性を予測し、この色変換特性を用いて、実データ対には存在しない色の生成を行う。
なお、本明細書では、4次元であるCMYK色空間の第1色信号(C,M,Y,K)から、3次元であるL色空間の第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合と、その逆である3次元であるL色空間の第2色信号(L,a,b)から、4次元であるCMYK色空間での第1色信号(C,M,Y,K)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合とを例に述べるが、3次元である例えばRGB色空間の色信号(R,G,B)と3次元である例えばL色空間の色信号(L,a,b)との相互間の対応関係を表す色変換特性を予測する場合も同様である。
【0031】
まず始めに、第1色信号(C,M,Y,K)から第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性(第1の色変換特性)を予測する場合について説明する。
第1色信号(C,M,Y,K)から第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合には、色処理装置1は、第1色信号が4次元データであり、第2色信号が3次元データであるので、以下の(1)式にて示したように、n組の第1色信号の実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)と、その出力予測値(y´1i,y´2i,y´3i)とが定数項を含む線形の関係を構成するように、成分がm11,m12,m13,m14,…である行列により結び付ける。
【0032】
【数1】

【0033】
次に、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)から、(1)式に示す行列を用いて求めた出力予測値(y´1i,y´2i,y´3i)と、そのCMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)に対応するL色空間についての実データ(y1i,y2i,y3i)との間の重み付けされたユークリッド距離の2乗和Eを、次の(2)式で求める。
ここで、Wijは、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)から(1)式に示す行列を用いて求めた出力予測値(y´1i,y´2i,y´3i)とL色空間での実データ(y1i,y2i,y3i)と間のユークリッド距離に対する重み付けの係数(以下、「加重」とも称する)である。
【0034】
【数2】

【0035】
一方、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)から、次の(3)式を用いて予測値である第2色信号(y1j,y2j,y3j)が求められる。(3)式の行列は、(1)式の行列と同一である。被予測値が第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)である場合は、(3)式に代入することにより、予測値である第2色信号(y1j,y2j,y3j)を求めることができる。
【0036】
【数3】

【0037】
続いて、最小2乗法と呼ばれる公知の方法を用いることにより、加重Wijが定まっている場合でのEを最小とするような条件で、行列の各成分m11,m12,m13,m14,…を求める。ただし、加重Wijが行列の成分または予測値である第2色信号に依存する場合は、行列の各成分m11,m12,m13,m14,…を一意的に定めることができない。そこで、その場合には、(2)式のEを最小にするという条件の下で、加重Wijと行列の各成分m11,m12,m13,m14,…と予測値の最適値とを逐次近似の手法を用いて決定する。
なお、本実施の形態の色処理装置1では、このように求められた(3)式の行列が色変換部30に設定される。そして、色変換部30は、(3)式に基づき、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)から予測値である第2色信号(y1j,y2j,y3j)を算出する。
【0038】
本実施の形態での加重Wijは、単調減少関数である第1の関数Fijおよび第2の関数Gijによって構成される。なお、ここでは被予測値が第1色信号である場合を説明するが、被予測値が第2色信号である場合も同様である。
図2は、第1の関数Fijおよび第2の関数Gijの関数特性の一例を示した図である。図2において、横軸は被予測値である第1色信号と実データとの距離(ユークリッド距離)を表し、縦軸は加重Wijを表している。
第1の関数Fijでは、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分が規格化される。そして、この規格化された差分成分からなる規格化信号に関するユークリッド距離に応じて単調減少する加重Wijを設定する。
また、第2の関数Gijでは、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分が(1)式や(3)式の行列の各成分を用いて感度が加味された差分成分に変換される。そして、これらの差分成分は規格化され、この感度が加味された差分成分からなる規格化信号に関するユークリッド距離に応じて単調減少する加重Wijを設定する。
【0039】
図3は、第1の関数Fijおよび第2の関数Gijによって設定された加重Wijの一例を説明した図である。図3では、被予測値である第1色信号から予測値である第2色信号に変換する場合を示している。図3に示したように、加重Wijをユークリッド距離に関する2つの単調減少関数(第1の関数Fijおよび第2の関数Gij)によって設定することによって、色空間での距離の差(色差)が大きい実データ対については加重Wijを小さくして影響を少なくし、色差が小さい実データ対については加重Wijを大きくして重要なデータとして扱う。それにより、被予測値(第1色信号)の周辺領域での色変換特性が生成され、生成された色変換特性に基づいて予測点(変換時の予測点)、すなわち予測値(第2色信号)が予測される。
また、これらの第1の関数Fijおよび第2の関数Gijは単調減少関数であるので、原理的に予測値の連続性が確保され、局所間の不連続性を気にすることなく、カラー画像形成装置等での色処理が行われる。
【0040】
ところで、上記の図2に示したように、第1の関数Fijおよび第2の関数Gijは、例えば第1色信号とのユークリッド距離が0である実データに対する加重Wijを最大値Wmaxに設定し、第1色信号とのユークリッド距離が大きくなるに従って実データに対する加重Wijを減少させる。そこで、本明細書では、第1色信号を中心とする実データ対に大きな加重Wijが設定される周辺領域の範囲を表す目安として、所定値以上の加重Wijが設定される領域、例えば最大値Wmaxの1/2以上の加重Wijが設定される色空間での領域の幅を「加重の幅」と称する。なお、図2では第1色信号と実データとの距離と加重Wijとの関係を表す一方で、色空間での加重が施される領域は第1色信号から所定距離内の周辺領域全体が含まれることから、色空間での「加重の幅」は、図2の破線で示した領域の2倍となる(図3も参照)。
【0041】
引き続いて、被予測値である4次元の第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)から予測値である3次元の第2色信号(y1j,y2j,y3j)を予測する場合に用いられる加重((2)式の加重Wij)について、次に示す(4)式から(6)式を用いて具体的に説明する。
【0042】
【数4】

【0043】
まず(4)式は、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分を規格化し、第1色信号の差分成分から求められる規格化信号のユークリッド距離に関する単調減少関数である第1の関数Fijにより、第1の加重W1ijが設定されることを示している。
(4)式では、第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分(x1i−x1j),(x2i−x2j),(x3i−x3j),(x4i−x4j)を求める。さらに、これを規格化の定数(x10,x20,x30,x40)で規格化し、(x1i−x1j)/x10,(x2i−x2j)/x20,(x3i−x3j)/x30,(x4i−x4j)/x40とする。そして、これらの2乗和を第1の関数Fijのパラメータとして、第1の加重W1ijを設定している。
【0044】
次に(5)式は、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と、CMYK色空間での実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分を、(1)式や(3)式の行列の各成分を用いることで感度が加味された差分成分に変換した後に規格化し、求められた規格化信号のユークリッド距離に関する単調減少関数である第2の関数Gijにより、第2の加重W2ijが設定されることを示している。ここで、感度を加味した差分成分に変換するとは、第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分に、それぞれ行列の成分を乗算し、各信号成分毎に2乗して、これらの和を算出することを意味している。ここでは、各信号成分毎に2乗することで各項の符号に依存しないように構成し、各項の絶対値を感度として加味している。
【0045】
(5)式では、被予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)と、第1色信号についての実データ(x1i,x2i,x3i,x4i)との信号成分毎の差分(x1i−x1j),(x2i−x2j),(x3i−x3j),(x4i−x4j)を求める。これに行列の各成分を乗算することにより出力空間の信号成分に変換できるが、ここでは上述のように行列の成分を乗算して2乗した後に和をとる。すなわち、(m11(x1i−x1j))+(m12(x2i−x2j))+(m13(x3i−x3j))+(m14(x4i−x4j)),(m21(x1i−x1j))+(m22(x2i−x2j))+(m23(x3i−x3j))+(m24(x4i−x4j)),(m31(x1i−x1j))+(m32(x2i−x2j))+(m33(x3i−x3j))+(m34(x4i−x4j))を求める。これらを規格化の定数(y10,y20,y30)を用いてそれぞれ(y10,(y20,(y30で除算して規格化し、それらを加算して単調減少関数である第2の関数Gijのパラメータとしている。それにより、第2の加重W2ijを設定している。
【0046】
次の(6)式は、上記した2つの単調減少関数、第1の関数Fijおよび第2の関数Gijを合成して重み付けの係数(加重)Wijを設定することを示している。ここで、合成する方法は、その要素である2つの第1の関数Fijおよび第2の関数Gijが各々のユークリッド距離に関する単調減少関数であるという特徴が崩さないように合成される。例えば、和や積のような演算が用いられる。この(6)式で求められたW12ijが(2)式の加重Wijである。
【0047】
本実施の形態の色変換特性生成部20では、第1色信号(C,M,Y,K)から第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合において、加重データ生成部21が(2)式の加重Wijを求め、求めた加重Wijを用いて、最小2乗法によって(2)式に示すEを最小とする行列の成分m11,m12,m13,m14,…を生成する。
そして、色変換特性生成部20は、加重データ生成部21にて生成した成分m11,m12,m13,m14,…からなる行列を色変換部30に設定する。色変換部30は、設定された行列を用いて、(3)式により予測値を計算する。色変換部30は、さらに必要に応じて、この計算された予測値を加重データ生成部21に送る。加重データ生成部21は、色変換部30にて計算された予測値を用いて再び加重Wijを計算し、Eを最小とする成分m11,m12,m13,m14,…からなる行列を求め、色変換部30に設定する。色変換部30は、この行列を用いて予測値を再計算する。色処理装置1では、このような処理を繰り返すことによって予測値は収束し、所望の予測値が得られる。
【0048】
続いて、第2色信号(L,a,b)から第1色信号(C,M,Y,K)への対応関係を表す色変換特性(第2の色変換特性)を予測する場合について説明する。
第2色信号(L,a,b)から第1色信号(C,M,Y,K)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合は、(3)式を逆に解く(逆演算する)こととなる。ところが、(3)式においては、被予測値が3次元の第2色信号(y1j,y2j,y3j)であって、予測値が4次元の第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)であることから、既知数不足となり、(3)式の逆演算を一意に解くことはできない。そこで、この場合は、第1色信号の一部、例えば(x4j)を被予測値として指定し、(3)式を逆演算して、残りの予測値である第1色信号、例えば(x1j,x2j,x3j)を求める。具体的には、始めにCMYK色空間の“K”を算出しておく手法が一般的である。例えば、L色空間の色座標(L,a,b)に対応するCMYK色空間のK座標を予め設計しておく方法や、色座標(L,a,b)とK座標とが入力信号として直接与えられる方法が用いられる。
【0049】
なお、L色空間の色座標(L,a,b)からCMYK色空間の“K”を算出する処理を含んでいない場合には、被予測値が3次元の第1色信号(L,a,b)であって、予測値が3次元の第2色信号(C,M,Y)であるので、(3)式の逆演算によって第1色信号を予測することができる。この場合には、図1において第2色信号として色信号(L,a,b,K)が入力され、第1色信号として色座標(C,M,Y,K)が出力される。
【0050】
この場合には、加重データ生成部21は、L色空間において加重W´ijを設定する。例えば、次の(7)式に示したように、被予測値である第2色信号(y1j,y2j,y3j)と、L色空間での実データ(y1i,y2i,y3i)との信号成分毎の差分を規格化し、求められた規格化信号のユークリッド距離に関する単調減少関数である第2の関数Gijにより、第2の加重W´2ijが設定される。また、次の(8)式に示したように、予測値である第1色信号(x1j,x2j,x3j,x4j)の中の1つの信号成分である例えば(x4j)(=“K”)と、その実データ(x4i)との差分を規格化し、第1色信号(“K”)の差分成分から求められる規格化信号のユークリッド距離に関する単調減少関数である第1の関数Fijにより、第1の加重W´1ijが設定される。そして、(9)式で示した関数Hで合成された加重W´12ij(=W´ij)が求められる。
【0051】
【数5】

【0052】
なお、本実施の形態の色処理装置1にて色変換特性の予測を行うに際しては、統計処理である上記した加重された実データ対を用いて線形回帰分析を行う方法を用いた。本実施の形態では、このような方法の他に、補間処理である実データ対について単純に加重平均を行って補間する方法や、統計処理である加重された実データ対を学習したニューラルネットワークを用いる方法等といった、加重データ対を用いて色変換特性の予測を行ういずれの方法をも用いてもよい。
【0053】
ここで、本実施の形態の色変換特性生成部20においては、被予測値としての第1色信号(C,M,Y,K)から予測値としての第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性を求める場合に設定する加重Wijと、被予測値としての第2色信号(L,a,b)から予測値としての第1色信号(C,M,Y,K)への対応関係を表す色変換特性を求める場合に設定する加重W´ijとを、それぞれ異なる加重で設定する。
すなわち、第1の関数Fijおよび第2の関数Gijによって設定される加重Wijおよび加重W´ijは、例えば第1色信号から第2色信号に変換し、その後、第2色信号から第1色信号に逆変換した際に、逆変換により求められた第1色信号が第2色信号への変換前の元の第1色信号に一致または高い精度で近似するように、双方向に可逆性の高い色変換特性を生成するように設定される。
本実施の形態の色変換特性生成部20の加重幅変更部22は、加重データ生成部21にて設定される加重Wijおよび加重W´ijを、このような可逆性の高い色変換特性を生成する加重Wijおよび加重W´ijに変更する。
【0054】
例えば、印刷業界等では、クライアントから発注された印刷物を輪転印刷機等で本刷りを行う前に、所謂「校正刷り」を行ってクライアントの了解を得るカラープルーフ(色校正)と呼ばれる工程を経るのが一般的である。この校正刷りは、入力色信号がCMYK色空間の色信号である印刷以外のマーキング方式、例えば熱昇華型、インクジェット方式、ゼログラフィー方式等のカラー画像形成装置を用いて行うことが可能である。そして、カラー画像形成装置を用いて校正刷りを行う場合は、本刷りを行った場合の輪転印刷機等での再現色と精度良く一致することが要求される。
そのため、例えばカラー画像形成装置においては、印刷機での色変換特性を用いて、印刷機のCMYK色空間の色信号から例えばL色空間の色信号への変換が行われ、その後、L色空間の色信号からこの印刷機とは異なるCMYK系のデバイスである、例えばプリンタの色変換特性を用いて、プリンタのCMYK色空間の色信号への逆変換が行われる。このとき、印刷機側の色変換特性とプリンタ側の色変換特性とのどちらもが高精度であることが望ましい。高精度であることを示す項目の1つとして、変換元であるCMYK色空間の色信号と逆変換先であるCMYK色空間の色信号とが一致または高い精度で近似する「可逆性」が挙げられる。すなわち、カラー画像形成装置が印刷機と同等の色再現性を備え、印刷機で出力したかのように色校正を行うためには、双方向からの色変換特性モデルの精度が重要となる。そのために、CMYK色空間の色信号をL色空間の色信号に変換して得られたL色空間の色信号を逆変換した場合に、逆変換して得られたCMYK色空間の色信号(逆変換先)が、元のCMYK色空間の色信号(変換元)に一致または精度良く近似することが要求される。
【0055】
上記したように、色変換部30にて使用される色変換特性は、上記した(2)式、(4)式、(5)式、(7)式、(8)式に示したように、単調減少関数である第1の関数Fijおよび第2の関数Gijによって、被予測値である第1色信号や第2色信号との色空間での距離の差(色差)が大きい実データ対については加重を小さくし、色差が小さい実データ対については加重を大きくして生成される。それにより、被予測値周辺での局所的な線形回帰分析が行われて、色変換特性の予測が行われている。
ここで、図4は、CMYK色空間の第1色信号を変換して得られたL色空間の第2色信号を逆変換し、第1色信号を生成する場合を示した図である。図4に示したように、CMYK色空間の第1色信号をL色空間の第2色信号に変換し、得られた第2色信号を逆変換する場合には、上記したように、L色空間において加重W´ijが設定される。すなわち、L色空間の第2色信号を中心とする周辺領域の実データ対に対して(7)〜(9)式による加重W´ijが設定される。
【0056】
ところが、CMYK色空間の第1色信号をL色空間の第2色信号に変換する場合と、L色空間の第2色信号をCMYK色空間の第1色信号に逆変換する場合とにおいて同様の加重を施すと、CMYK色空間の第1色信号からの加重Wijと、L色空間(および“K”)からの加重W´ijとは、性質が異なるものとなる。
これは、変換対象となる色信号周辺での実データ対に加重を行うという規則をCMYK色空間およびL色空間のいずれの側からも同様に設定したとしても、変換元に対する変換先の色空間の広がりや歪み等に異なりが存在するからである。例えば図4に示したように、CMYK色空間から見た実データ対の分布と、L色空間から見た実データ対の分布とは相違するため、同じ加重の幅を持った第1の関数Fijおよび第2の関数Gijによって加重を施した場合に、CMYK色空間とL色空間とでは加重対象となる実データ対の数や加重値が異なることとなる。
そのため、図4のように、L色空間から生成される色変換特性(逆変換時の色変換特性)は、CMYK色空間から生成される色変換特性(図3の変換時の色変換特性)とは一致しない。それにより、逆変換時の予測点は変換時の予測点と異なる色座標となって、逆変換して得られた予測値(第1色信号)が変換前の元のCMYK色空間の第1色信号と一致しないこととなる。この場合には、例えばカラープルーフの精度が低下するという不都合が生じる。
【0057】
そこで、本実施の形態の加重幅変更部22は、CMYK色空間の第1色信号をL色空間の第2色信号に変換する場合と、L色空間の第2色信号をCMYK色空間の第1色信号に逆変換する場合とにおいて一致または高い精度で近似した色変換特性を生成するために、加重データ生成部21にて設定される加重Wijおよび加重W´ijのいずれか一方または双方を変更する。
具体的には、加重Wijの幅および加重W´ijの幅のいずれか一方または双方を制御して、L色空間からの色変換特性とCMYK色空間からの色変換特性とをそれぞれ生成する。そして、生成されたそれぞれの色変換特性を用いて、CMYK色空間の第1色信号からL色空間の第2色信号への変換と、L色空間の第2色信号からCMYK色空間の第1色信号への逆変換とを行う。このような変換と逆変換とにより、変換前の元のCMYK色空間の第1色信号と逆変換して得られたCMYK色空間の第1色信号とが一致または精度良く近似するような色変換特性を生成する加重Wijおよび加重W´ijを設定する。
【0058】
続いて、本実施の形態の加重幅変更部22が行う加重Wijおよび加重W´ijのいずれか一方または双方についての設定変更処理について説明する。
図5は、実データ対記憶部23に記憶されたn組の実データ対と、CMYK色空間側から施される加重WijおよびL色空間(および“K”)側から施される加重W´ijとの関係を示した図である。図5では、i=1〜nとして、CMYK色空間での実データを(Ci,Mi,Yi,Ki)(=(x1i,x2i,x3i,x4i))、それに対応するL色空間での実データを(Li,ai,bi)(=(y1i,y2i,y3i))とし、また、CMYK色空間側からの加重Wijをin_wi、L色空間(および“K”)側からの加重W´ijをout_wiとしている。図5に示したように、n組の実データ対のそれぞれに対して、CMYK色空間からL色空間への色変換を行うための色変換特性を生成する場合には、in_w1〜in_wnの加重が行われる。また、L色空間からCMYK色空間への色変換を行うための色変換特性を生成する場合には、out_w1〜out_wnの加重が行われる。in_w1〜in_wnおよびout_w1〜out_wnは、上記の図2の特性を有する関数により生成されることで、図3および図4に示したような実データ対への加重が施される。
【0059】
ここで、図5に示した例では、実データ対に対してそれぞれn個の加重が用いられるので、加重をn次元ベクトルとして扱うこととする。すなわち、CMYK色空間からL色空間への色変換を行うための色変換特性を生成する場合に用いる加重Wijを加重ベクトルwini、L色空間からCMYK色空間への色変換を行うための色変換特性を生成する場合に用いる加重W´ijを加重ベクトルwoutiとする(i=1〜n)。そうすると、加重ベクトルwiniおよび加重ベクトルwouti相互の距離Dは、次の(10)式で表される。
【0060】
【数6】

【0061】
CMYK色空間の第1色信号をL色空間の第2色信号に変換する場合と、L色空間の第2色信号をCMYK色空間の第1色信号に逆変換する場合とにおいて一致または高い精度で近似した色変換特性を得るには、(10)式で表される距離Dを評価値として、評価値である距離Dを最小にする加重ベクトルwiniおよび加重ベクトルwoutiを算出すればよい。すなわち、距離Dを最小にする加重ベクトルwiniおよび加重ベクトルwoutiは、CMYK色空間側から施される加重WijとL色空間(および“K”)側から施される加重W´ijとを最も近づけることとなる。
本実施の形態の加重幅変更部22では、加重ベクトルwiniおよび加重ベクトルwoutiを同時に変化させると処理が複雑となるので、加重ベクトルwoutiを固定し、加重ベクトルwiniを変化させることで、(10)式で表される距離Dを最小にする加重ベクトルwiniを求める。すなわち、加重W´ijを固定し、加重Wijを変更することとする。
【0062】
加重幅変更部22は、加重ベクトルwini(=Wij)を生成する際の加重の幅を制御するパラメータをpとして、パラメータpを次の(11)式を用いて変更し、求められたp´を用いて加重ベクトルwini(=Wij)を生成する際の加重の幅を調整する。それにより、(10)式の距離Dを最小にする加重ベクトルwiniを算出する。
ここで、上記の(4)式〜(9)式での第1の関数Fijおよび第2の関数Gijにおいて、加重Wijおよび加重W´ijの幅を調整するパラメータは、規格化の定数(x10,x20,x30,x40),(y10,y20,y30)である。そこで、本実施の形態の加重幅変更部22では、加重ベクトルwoutiを固定することから(x40),(y10,y20,y30)を固定し、(x10,x20,x30)をパラメータpとする。
【0063】
【数7】

【0064】
(11)式において、D(p)は、パラメータpで制御された加重の幅を用いた場合の(10)式の値であり、D(p+△p)は、パラメータpに微少量△pを加えた場合の(10)式の値を表す。微少量△pとしては適当な量を用意すればよく、プログラム上は例えば、0.001等に設定すればよい。αは更新量を制御するパラメータであり、ニューラルネットワークの分野で最急降下法を用いる場合は、学習定数と呼ばれるものでる。なお、(11)式のような更新方法は最急降下法として知られているが、その他にもニュートン法等を用いて更新してもよい。
加重幅変更部22は、このような方法により、加重データ生成部21にて色変換特性を生成する際に設定される加重の幅を変更する。具体的には、(11)式により求められた(x´10,x´20,x´30)で設定された加重の幅に変更される。
なお、本実施の形態の加重幅変更部22では、加重W´ijを固定し、加重Wijを変更したが、加重Wijを固定し、加重W´ijを変更してもよい。また、加重W´ijおよび加重Wijの双方を変更してもよい。
【0065】
そして、色変換特性生成部20では、加重データ生成部21による色変換特性の生成と、加重幅変更部22による加重の幅の変更とが繰り返し行われ、CMYK色空間側から施される加重WijとL色空間(および“K”)側から施される加重W´ijとを近づける加重の幅が設定される。このように、実データ対に対して相互に一致または高い精度で近似する加重Wijと加重W´ijとが施されることにより、例えば第1色信号から第2色信号に変換し、その後、第2色信号から第1色信号に逆変換した際に、逆変換により求められた第1色信号と第2色信号への変換前の元の第1色信号とのずれが少なくなるような、双方向に可逆性の高い色変換特性が生成される。そして、このように生成された色変換特性は、色変換部30に設定され、色変換処理が施される。
【0066】
ここで、図6は、本実施の形態の色変換特性生成部20が色変換特性を生成する際の処理の手順の一例を示したフローチャートである。図6に示したように、本実施の形態の色変換特性生成部20では、まず実データ対記憶部23から実データ対を取得する(S101)。そして、ステップ101にて取得した実データ対に対して施す加重データを生成する(S102)。すなわち、加重データ生成部21は、被予測値が第1色信号である場合には、上記の(4)式〜(6)式により加重Wijを生成する。また、被予測値が第2色信号である場合には、上記の(7)式〜(9)式により加重W´ijを生成する。
次に、第2色信号(L,a,b)から第1色信号(C,M,Y,K)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合には(S103)、ステップ102にて生成された加重W´ijを用いて、例えば最小2乗法によって上記の(2)式に示すEを最小とする行列の成分m11,m12,m13,m14,…(色変換特性)を生成する(S104)。
【0067】
一方、第1色信号(C,M,Y,K)から第2色信号(L,a,b)への対応関係を表す色変換特性を予測する場合には(S103)、加重幅変更部22が、L色空間の第2色信号をCMYK色空間の第1色信号に変換する場合と一致または高い精度で近似した色変換特性が生成されるように、加重データ生成部21にて設定された加重Wijの幅を変更する(S105)。具体的には、上記の(10)式で表される距離Dを評価値として評価し、距離Dを最小にするように、上記の(11)式により(x´10,x´20,x´30)を求める。
引き続いて、加重データ生成部21は、加重幅変更部22によって変更された加重Wijの幅(x´10,x´20,x´30)を用いて、上記の(4)式〜(6)式から加重データ(加重Wij)を再生成する(S106)。そして、再生成された加重データを用いて、例えば最小2乗法によって上記の(2)式に示すEを最小とする行列の成分m11,m12,m13,m14,…(色変換特性)を生成する(S107)。
そして、色変換特性生成部20は、ステップ104およびステップ107にて生成された色変換特性を色変換部に設定する(S108)。
【0068】
次いで、図7は、色変換部30に双方向に可逆性の高い色変換特性が設定された場合において、CMYK色空間の第1色信号を変換して得られたL色空間の第2色信号を逆変換し、第1色信号を生成する場合を示した図である。図7に示したように、実データ対に対して施される加重Wijと加重W´ijとを一致または高い精度で近似させることにより、逆変換時の予測点の色座標と変換時の予測点の色座標とのずれを低減する。それにより、逆変換して得られた予測値(第1色信号)と変換前の元のCMYK色空間の第1色信号との一致精度が高められる。
【0069】
ところで、加重幅変更部22にて更新された加重の幅(加重の幅を制御するパラメータp)は、第1色信号(CMYK色空間)として第1色信号入出力部10から入力された色変換テーブルの格子点データおよびそれに対応するL色空間の色座標(第2色信号)に対応付けて記憶しておくこともできる。
図8は、加重の幅を制御するパラメータpを格子点データおよびそれに対応するL色空間の色座標に対応付けて記憶される場合の対応関係を示した図である。例えば、i=1〜mとして、CMYK色空間での格子点データ(Ci,Mi,Yi,Ki)を用意し、それらを第1色信号として、上記の処理により双方向に可逆性の高い色変換特性が生成される最適な加重の幅piを算出する。そして、この加重の幅piで生成された色変換特性を用いてL色空間の第2色信号(Li,ai,bi)に変換する。このようにして得られたL色空間の第2色信号と、格子点データ(Ci,Mi,Yi,Ki)と加重の幅piとを対応付けて記憶しておく。それにより、例えばカラー画像形成装置における格子点データと、それに対応するL色空間の色座標(第2色信号)と、加重の幅を制御するパラメータpとからなるルックアップテーブル(色変換テーブル)が生成される。生成された色変換テーブルは、記憶部(不図示)に記憶される。
【0070】
色処理装置1においては、このような色変換テーブルが記憶部に形成された後は、第1色信号入出力部10にて入力された画像データの色信号を、記憶部に記憶された色変換テーブルを用いて直接色変換されるように構成してもよい。また、色変換を行うためのパラメータpの算出を行うように構成してもよい。
例えば、簡易的な色変換テーブルを生成する場合は、密度の粗い格子点データ(Ci,Mi,Yi,Ki)を用意しておき、上記の処理により双方向に可逆性の高い色変換特性が生成される最適な加重の幅piと、この加重の幅piで生成された色変換特性により算出されたL色空間の第2色信号(Li,ai,bi)とを、図7のように対応付ける。それにより、色変換に要する処理時間が短縮され、色域全域で色変換特性の安定性を把握できる。
また、精度の高い色変換テーブルを生成する場合は、図7のようなルックアップテーブルと、生成される色変換特性とを組み合わせることで、密度の高いデータ(Ci,Mi,Yi,Ki)に対する色変換テーブルを生成する。
なお、ここでの格子点データと実データとは別物である。すなわち、実データ対は、色変換特性を生成するためのものであり(図5参照)、格子点データは、一般的には色変換テーブル等を生成するために、予め所定の色空間で等間隔に用意されるものである。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態の色処理装置1においては、実データ対に対してCMYK色空間側から施される加重WijとL色空間(および“K”)側から施される加重W´ijとを一致または高い精度で近似させて、それぞれの色変換特性を生成している。それにより、例えば第1色信号から第2色信号に変換し、その後、第2色信号から第1色信号に逆変換した際に、逆変換により求められた第1色信号が第2色信号への変換前の元の第1色信号とのずれが低減されるので、逆変換して得られた予測値(第1色信号)と変換前の元のCMYK色空間の第1色信号との一致精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の色処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の関数および第2の関数の関数特性の一例を示した図である。
【図3】第1の関数および第2の関数によって設定された加重の一例を説明した図である。
【図4】CMYK色空間の第1色信号を変換して得られたL色空間の第2色信号を逆変換し、第1色信号を生成する場合を示した図である。
【図5】n組の実データ対と、CMYK色空間側から施される加重およびL色空間(および“K”)側から施される加重との関係を示した図である。
【図6】色変換特性生成部が色変換特性を生成する際の処理の手順の一例を示したフローチャートである。
【図7】色変換部に双方向に可逆性の高い色変換特性が設定された場合において、CMYK色空間の第1色信号を変換して得られたL色空間の第2色信号を逆変換し、第1色信号を生成する場合を示した図である。
【図8】加重の幅を制御するパラメータpを格子点データおよびそれに対応するL色空間の色座標に対応付けて記憶される場合の対応関係を示した図である。
【符号の説明】
【0073】
1…色処理装置、10…第1色信号入出力部、20…色変換特性生成部、21…加重データ生成部、22…加重幅変更部、23…実データ対記憶部、30…色変換部、40…第2色信号入出力部、50…色信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間の第1色信号を取得する第1色信号取得部と、
前記第1の色空間とは異なる第2の色空間の第2色信号を取得する第2色信号取得部と、
前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性に基づいて前記第1色信号取得部にて取得された前記第1色信号を当該第2の色空間の色信号に変換し、当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性に基づいて前記第2色信号取得部にて取得された前記第2色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する色変換部と、
前記色変換部にて用いる前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを一致または近似させて生成する色変換特性生成部と
を備えたことを特徴とする色処理装置。
【請求項2】
前記色変換特性生成部は、前記第1色信号取得部にて取得された前記第1色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1色信号と、前記第2色信号取得部にて当該第1色信号から変換して得られた当該色信号が前記第2色信号として取得された場合に、当該第2色信号を前記第2の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号に変換した際の当該色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを生成することを特徴とする請求項1記載の色処理装置。
【請求項3】
前記色変換特性生成部は、前記第1の色空間における複数の色データの各々と、当該複数の色データ各々により形成された各画像の色を前記第2の色空間で測定して得られた色データとを一対とする複数の色データ対に加重を施して、当該加重が施された当該複数の色データ対に基づき前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを生成し、当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを生成するに際して、当該複数の色データ対に施す当該加重を制御して当該第1の色変換特性と当該第2の色変換特性とを一致または近似させて生成することを特徴とする請求項1記載の色処理装置。
【請求項4】
前記色変換特性生成部は、前記複数の色データ対に施す前記加重を当該色データ対の数を次元とするベクトルとし、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルとを一致または近似させて設定することで、当該第1の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定することを特徴とする請求項3記載の色処理装置。
【請求項5】
前記色変換特性生成部は、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルとの差または距離に基づいて当該ベクトル相互の一致または近似を評価し、当該評価の結果に基づき当該第1の色変換特性を生成する際に前記加重が施される対象となる前記複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定することを特徴とする請求項4記載の色処理装置。
【請求項6】
前記色変換特性生成部は、前記ベクトル相互の一致または近似を最急降下法により評価することを特徴とする請求項5記載の色処理装置。
【請求項7】
第1の色空間の色信号を当該第1の色空間とは異なる第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性を生成する工程と、
前記第2の色空間の色信号を前記第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性を生成する工程と、
前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する工程と、
生成または再生成された前記第1の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に変換し、または、生成または再生成された前記第2の色変換特性に基づいて当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する工程と
を有することを特徴とする色処理方法。
【請求項8】
前記第1の色空間の色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1の色空間の色信号と、当該第1の色空間の色信号から変換して得られた当該第2の色空間の色信号を前記第2の色変換特性に基づいて当該第1の色空間の色信号に変換した際の当該第1の色空間の色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成することを特徴とする請求項7記載の色処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
第1の色空間の色信号を当該第1の色空間とは異なる第2の色空間の色信号に対応付ける第1の色変換特性を生成する機能と、
前記第2の色空間の色信号を前記第1の色空間の色信号に対応付ける第2の色変換特性を生成する機能と、
前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能と、
生成または再生成された前記第1の色変換特性に基づいて前記第1の色空間の色信号を前記第2の色空間の色信号に変換し、または、生成または再生成された前記第2の色変換特性に基づいて当該第2の色空間の色信号を当該第1の色空間の色信号に変換する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記第1の色空間の色信号が前記第1の色変換特性に基づいて前記第2の色空間の色信号に変換された際の当該第1の色空間の色信号と、当該第1の色空間の色信号から変換して得られた当該第2の色空間の色信号を前記第2の色変換特性に基づいて当該第1の色空間の色信号に変換した際の当該第1の色空間の色信号とを一致または近似させるように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能が含まれることを特徴とする請求項9記載のプログラム。
【請求項11】
前記第1の色空間における複数の色データの各々と、当該複数の色データ各々により形成された各画像の色を前記第2の色空間で測定して得られた色データとを一対とする複数の色データ対に加重を施して、当該加重が施された当該複数の色データ対に基づき前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性とを生成および再生成する機能と、
前記複数の色データ対に施す前記加重を制御して、前記第1の色変換特性と前記第2の色変換特性との差を低減するように、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能とが含まれることを特徴とする請求項9記載のプログラム。
【請求項12】
前記複数の色データ対に施す前記加重を当該色データ対の数を次元とするベクトルとし、前記第1の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる当該ベクトルとを一致または近似させることで、当該第1の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定して、当該第1の色変換特性および当該第2の色変換特性のいずれか一または双方を再生成する機能が含まれることを特徴とする請求項11記載のプログラム。
【請求項13】
前記第1の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルと前記第2の色変換特性を生成する際に用いる前記ベクトルとの差または距離に基づいて当該ベクトル相互の一致または近似を評価し、当該評価の結果に基づき当該第1の色変換特性を生成する際に前記加重が施される対象となる前記複数の色データ対が存在する領域の幅、および当該第2の色変換特性を生成する際に当該加重が施される対象となる当該複数の色データ対が存在する領域の幅のいずれか一または双方を設定する機能が含まれることを特徴とする請求項12記載のプログラム。
【請求項14】
前記ベクトル相互の一致または近似を最急降下法により評価する機能が含まれることを特徴とする請求項13記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−33463(P2009−33463A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195112(P2007−195112)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】