色分解テーブル作成方法および画像形成装置
【課題】複数メディアに対する画像形成を可能とする画像形成装置において、第1のメディア用の色分解テーブルに基づいて第2のメディア用の色分解テーブルを自動作成する際に、ユーザによって設定された評価項目の優先順位を考慮する。
【解決手段】メディアAに対して手動作成されている色分解テーブルLUT1を取得し(S701)、メディアBに対する色分解テーブルLUT2の評価項目の優先順位をユーザ指示に従って設定する(S702)。そして、該優先順位およびLUT1に基づいて、最大打込量を遵守するようにLUT2を自動生成する(S703〜S707)。これにより、メディアBに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【解決手段】メディアAに対して手動作成されている色分解テーブルLUT1を取得し(S701)、メディアBに対する色分解テーブルLUT2の評価項目の優先順位をユーザ指示に従って設定する(S702)。そして、該優先順位およびLUT1に基づいて、最大打込量を遵守するようにLUT2を自動生成する(S703〜S707)。これにより、メディアBに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像信号を色材量に分解するための色分解テーブルを作成する色分解テーブル作成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラープリンタ等、カラー画像を記録媒体(メディア)上に可視像化する画像形成装置においては、形成画像の画質の向上に伴い、ユーザによるメディアに対する要求もより高くなっている。したがって、1台のプリンタにおいて多種類のメディアを利用可能とすることはもちろん、さらに、どのメディアに対しても高画質な画像を出力することが必須となってきた。
【0003】
一般にカラープリンタ等を利用したカラープリントシステムにおいては、形成対象となるカラー画像データを該装置における色材(インクやトナー)の各色量相当に分解する、色分解処理が行われる。この色分解処理は、予め作成された色分解テーブルに基づいて行われるが、メディアの種類によって、最適な色分解処理は異なる。したがって、複数種類のメディアのそれぞれに最適な色分解を実現する、複数の色分解テーブルを用意することが好ましい。
【0004】
従来の画像形成装置において複数種類のメディアを最適に利用するためには、各メディアに対して、色分解テーブルに必要となる測色値を全て手動入力する等、最適な色分解テーブルを手動で作成していた。したがって、より多くの種類のメディア対応を実現するためには、より多くの数の色分解テーブルを手動で作成する必要があり、その作業はかなり煩雑であるため、画像形成装置の設計期間の長期化は避けられなかった。
【0005】
多種類のメディアに対応しつつ、その設計期間をより短縮するためには、色分解テーブルを迅速に作成する必要があり、例えば任意メディアの色分解テーブルを自動生成することが望まれる。設計者の意図を反映させつつ、色分解テーブルを迅速に作成するための技術として、メディアAの色分解テーブルに基づき、メディアBの色分解テーブルを作成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。該技術によれば、メディアAの色分解テーブルをコピーしてメディアBの色分解テーブルを作成する。
【特許文献1】特開2003−334934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようにメディアAの色分解テーブルに基づいてメディアBの色分解テーブルを自動作成する技術によれば、以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、メディアAの色分解テーブルのコピーをそのままメディアBの色分解テーブルとして、メディアBへの画像形成を行うと、メディアの構造やメディアとインクの組み合わせによる発色特性の相違から、色ずれが生じてしまう。また、インク載り量補正によってメディアB上で擬似輪郭が発生し、さらに、階調再現性も低下してしまう。
【0008】
また、特にメディアBにおける分光反射率を考慮することなく色分解テーブルが作成されるため、例えば光源が変わってしまった場合等にはカラーコンスタンシーが保たれない。さらに、メディアによって最大色域も変化するため、色域を最大限有効に利用することができない。
【0009】
また、作成した色分解テーブルの評価項目として、色域、階調性、粒状性、光沢等、複数の項目が考えられる。もちろん、これら全ての項目についての評価値を最適化することが理想であるが、実際にはこれら評価項目に優先順位を設けることが現実的である。従来のシステムにおいては、これら評価項目の優先順位は設計時に決定され、固定的であった。したがって、ユーザが所望する評価項目を優先してその評価値が高くなるように、色分解テーブルを作成することは不可能であった。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、以下の特徴を有する色分解テーブル作成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。すなわち、第1のメディアに対する色分解テーブルに基づいて第2のメディアに対する色分解テーブルを自動作成する際に、評価項目の優先順位を設定可能とする。さらに、作成された色分解テーブルの色域を、第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測によって補正することにより、パッチ数を削減する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一手法として、本発明の色分解テーブル作成方法は以下の工程を有する。
【0012】
すなわち、第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを取得する第1のテーブルの取得ステップと、前記第1のメディアおよび第2のメディアのそれぞれに対する色材の打込量の制限情報を取得する打込量制限の取得ステップと、前記第2のメディアに対する第2の色分解テーブルの複数の評価項目について優先順位を設定する優先順位設定ステップと、前記第1の色分解テーブルおよび前記最大打込量情報、および前記評価項目の優先順位に基づいて、前記第2の色分解テーブルを生成する第2のテーブルの生成ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、前記第2の色分解テーブルの色域を、前記第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測により補正する補正ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の特徴を有する色分解テーブル作成方法および画像形成装置が提供される。すなわち、第1のメディアに対する色分解テーブルに基づいて第2のメディアに対する色分解テーブルを自動作成する際に、評価項目の優先順位が設定可能となる。さらに、作成された色分解テーブルの色域を、第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測によって補正することによってパッチ数を削減できる。
【0015】
したがって、第2のメディアに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
●出力プロセス
図1は、本実施形態における、複数色による画像形成を行うカラープリンタの画像出力プロセスを示す図である。同図において、101は、入力されたRGBデータの再現特性とプリンタの色を合わせるためのカラーマッチング処理部である。102は、カラーマッチング処理部101から出力された多値のR'G'B'データを、プリンタの色材色であるC'M'Y'K'へ変換するためのインク色分解処理部である。103は、インク色分解処理部102から出力された多値のC'M'Y'K'データを、プリンタで表現可能な階調数に変換するためのハーフトーン処理部である。105は、インク色分解処理部102における補間処理の際に参照されるテーブルを提供するインク色分解テーブルである。104は、インク色分解テーブル105を作成するインク色分解テーブル作成部である。以下、インク色分解テーブル105を単に「色分解テーブル」とも称する。
【0018】
図2は、本実施形態におけるシステム構成を示す図である。同図において、201は入力画像データが保持されているコンピュータであり、ユーザの指示を入力するマウス等の図示しない入力部を備える。202はコンピュータ201に保持されている画像データを表示するためのモニタである。203は、コンピュータ201に保持されている画像データをカラー印刷するためのプリンタである。上述した図1に示すプロセス構成において、インク色分解テーブル作成部104はコンピュータ201内に備えられるが、その他はプリンタ203の構成である。なお、コンピュータ201内に全ての構成を備えるとし、ハーフトーン処理部103から出力されたCMYKデータをプリンタ203に入力するようにしても良い。
【0019】
ここで、本実施形態における印刷処理について、図1および図2を用いて説明する。コンピュータ201に保持されている画像データは、印刷時にはケーブルまたは不図示のネットワーク等を介してプリンタ203に送られる。
【0020】
プリンタ203では該送信されてきたRGBの画像データに対し、カラーマッチング処理部101にて、ユーザが使用しているモニタ202の色再現特性に合うようにカラーマッチング処理を施す。カラーマッチング処理後のR'G'B'データは、インク色分解処理部102にて、既に作成されているインク色分解テーブル105に基づく補間処理により、プリンタ203における複数のインク色CMYKに分解される。インク色分解後のC'M'Y'K'多値データは、ハーフトーン処理部103にてプリンタ203で再現可能な階調数に変換された後、予めセットされたメディア上に印刷される。なお、インク色分解テーブル105は、インク色分解テーブル作成部104によって予め生成されているが、その生成方法については後述する。
【0021】
図3は、インク色分解テーブル105の構成を示す図である。インク色分解テーブル105は、入力データR'G'B'に対応して、RGB3次元空間上の立方体における格子点に対応するデータを、テーブルデータとして格納している。インク色分解処理部102では、入力されたR'G'B'データがインク色分解テーブル105の格子上にない場合には、その近傍の格子点データを用いた補間処理を行う。この補間方法としては、四面体補間や立方体補間など多々あるが、どのような補間方法を用いても良い。
【0022】
図4は、本実施形態におけるインク色分解テーブル105の作成方法を説明するための、RGB色空間上の立方体を示す図であり、立方体の8つの頂点をそれぞれ、W,C,M,Y,R,G,B,Bkとする。そして、W−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−M及び、W−Bkを結ぶ全19本のラインを太い実線で示している。インク色分解処理部102における入力データのビット数を8とした場合、W,C,M,Y,R,G,B,Bk各頂点の座標は、以下のように表される。
【0023】
W=(255,255,255):ホワイトすなわちメディア地色を示す。
【0024】
C=(0,255,255) :シアン原色を示す。
【0025】
M=(255,0,255) :マゼンタ原色を示す。
【0026】
Y=(255,255,0) :イエロー原色を示す。
【0027】
R=(255,0,0) :レッド原色を示す。
【0028】
G=(0,255,0) :グリーン原色を示す。
【0029】
B=(0,0,255) :ブルー原色を示す。
【0030】
Bk=(0,0,0) :ブラックすなわちプリンタの最暗点を示す。
【0031】
インク色分解テーブル作成部104においては、まず、図4に太実線で示すW−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−M及び、W−Bkを結ぶ19本のラインについてのテーブルデータを作成する。その後、内部の格子点に対応するインク色については内部補間処理を行うことによって、全てのテーブルデータを作成する。
【0032】
本実施形態のプリンタ203においては複数種類のメディアが利用可能であるが、以下では説明の簡便のために、2種類のメディアを用いる例を説明する。すなわち、プリンタ203において第1種類のメディアであるメディアAと、第2種類のメディアであるメディアBが利用可能であるとし、それぞれのインク色分解テーブル105を用意する例を示す。
【0033】
メディア種類ごとに異なる色分解テーブルを用意するためには、従来では全てのメディア種類についてそれぞれ手動による作成を行っていた。本実施形態では、全てのメディア種類に対する色分解テーブルを手動で作成するものではない。本実施形態では、ある代表的なメディア種類に対する色分解テーブルを手動で作成した後に、他のメディア種類に対する色分解テーブルを、手動作成された色分解テーブルに基づいて自動作成する。すなわち、メディアAの色分解テーブルを手動作成した後、これに基づいてメディアBの色分解テーブルを自動作成する。
【0034】
●色分解テーブル作成処理(メディアA)
以下、本実施形態におけるメディアAの色分解テーブルの作成処理について説明する。 図5は、本実施形態のカラープリントシステムにおいて、メディアAに対応する色分解テーブルを手動作成する処理を示すフローチャートであり、該処理はインク色分解テーブル作成部104において行われる。
【0035】
まずステップS501で、W−Bkライン、W−C,M,Y,R,G,Bライン、C,M,Y,R,G,B−Bkラインと、C−G,G−Y,Y−R,R−M,M−B,B−Cラインの色分解テーブルを手動で作成する。これにより、色相ごとに最適なUCR(Under Color Removal)量やBG(Black Generation)量を設定することができる。したがって、プリンタ203の色再現範囲を最大にしつつ、墨による粒状度の影響をできるだけ抑制したテーブルを設定することができる。
【0036】
次にステップS502では、ステップS501で作成した枠ラインの色分解テーブルに基づき、その内部にあるテーブルデータを求める内部補間処理を行う。
【0037】
そしてステップS503〜S505までのループ処理を行う。該ループにより、内部補間後の色分解テーブルが、スムーズで、かつ打込量オーバーが発生しないように補正される。
【0038】
ステップS503においては、色分解テーブルのテーブルデータすなわち色毎のインク打込量が、メディアAの打込量制限を超えないようにする打込量補正を行う。この打込量補正は、色分解テーブルの打込量オーバー発生箇所に対して打込量補正率を乗じることによって実施する。ここで、打込量補正率はループの回数により規定される。このように、色分解テーブルに対する打込量補正がループの度に行われることにより、打込量オーバー箇所は少しずつ補正され、最終的に打込量オーバーがないような色分解テーブルが得られる。
【0039】
ここで、上述したステップS502の内部補間処理においては、立方体で構成される色空間を六つの四面体に領域分割して、領域ごとに補間処理を施すため、領域の境界において擬似輪郭が発生してしまう。そこで本実施形態ではステップS504において、擬似輪郭の発生を抑制するために平滑化処理を行う。
【0040】
そしてステップS505では、ステップS504で平滑化された色分解テーブルの全体に亙ってインク打込量が打込量制限を厳守していることを保証するために、テーブル全体について、最大打込量をオーバーする箇所があるか否かをチェックする。オーバーする箇所がなければ、色分解テーブルが完成したとして処理を終了するが、もしもオーバーする箇所があれば、ステップS503に戻って打込量補正を行う。
【0041】
このように、色分解テーブルのデータに対して、打込量オーバーしている箇所を少しずつ補正し、平滑化処理も施しつつ打込量補正を行うことにより、色分解テーブルの打込量オーバー箇所を補正しつつ、擬似輪郭の発生も抑制できる。
【0042】
●色分解テーブル作成処理(メディアB)
以下、本実施形態におけるメディアBの色分解テーブルの作成処理について説明する。 図6は、既に作成されているメディアAの色分解テーブルに基づいて、メディアBに対応する色分解テーブルを自動作成する処理を示すフローチャートであり、該処理はインク色分解テーブル作成部104において行われる。
【0043】
まずステップS601において、新たなメディアであるメディアBの最大打込量制限情報U2を、メディアB上に所定のパッチを形成して測色することにより決定する。このとき、予め定められているメディアAの最大打込量制限情報U1についても取得しておく。そしてステップS602において、最大打込量を厳守する色分解テーブルを自動生成する。この自動生成処理の詳細については、図7、図8を用いて後述する。ステップS603では、ステップS602で自動生成されたメディアBの色分解テーブルについて、さらに色予測による最適化を施す。
【0044】
図7は、上述した図6のステップS602における、メディアBの最大打込量制限を厳守する色分解テーブルの自動生成処理を示すフローチャートである。この処理においてはすなわち、予め手動作成されているメディアAの色分解テーブルLUT1に基づき、メディアBの色分解テーブルLUT2を自動生成する。
【0045】
まずステップS701において、オリジナルの色分解テーブルである、手動作成されたメディアAの色分解テーブルLUT1を取得する。なお、LUT1についても最適化が施されているものとする。
【0046】
次にステップS702において、後述するユーザインタフェースを用いて、評価項目の優先順位を設定し、ステップS703において、該評価項目の優先順位にしたがって、メディアBの色分解テーブルLUT2の枠ラインを自動生成する。この枠ラインの自動生成処理の詳細については後述する。
【0047】
ステップS704は、ステップS703で作成した枠ラインに基づき、その内部にあるテーブルデータを求める内部補間処理を行う。この内部補間処理が終了した時点で、LUT2の色空間における全格子点についてのデータが揃う。
【0048】
そしてステップS705において打込量補正処理を行う。すなわち、上述したメディアAのLUT1の作成時と同様に、LUT2においてU2で示される最大打込量制限をオーバーする箇所を補正する。そしてステップS706において平滑化を行った後、ステップS707で打込量オーバーチェックを通過することにより、最大打込量制限情報U2を厳守するLUT2が完成する。
【0049】
図8は、上述した図7のステップS703における、評価項目の優先順位に従うLUT2枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【0050】
まずステップS803において、形成画像における評価項目の優先順位や非線形補間用の非線形修正係数等の各種パラメータを取得する。そしてステップS804において、プリンタ203で使用可能なインク色を分類する。ここではインク色を、主要色と淡色、および隣接色の3種類に分類する例を示す。すなわち、主要色をCMYKインクとし、淡色を淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)、濃グレイ(Lk1)、淡グレイ(Lk2)のインク、隣接色をRGBインクとして、説明する。
【0051】
次にステップS805において、LUT1に基づき、LUT2の枠ラインをセットする。この枠ラインとは、W−Bk,W−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−Mを結ぶ全19本のラインである。具体的には、各枠ラインごとにLUT1から、下色除去(UCR)によるBkと他色の切り替えポイント情報と、各色材色の分解比率情報を取得する。
【0052】
この19本の枠ラインのそれぞれについて順次、以降の処理を行うが、その処理順としては、まず、W,Bk点とカラー点(C,M,Y,R,G,B)を結ぶラインを先に処理し、次に、カラー点とカラー点を結ぶラインを処理する。
【0053】
以下、色空間上にあるC,M,Y,R,G,B,Bk,Wの各点を主要色点、すなわちプライマリポイントとして説明する。
【0054】
ステップS806では、ステップS805でセットされた枠ラインにおけるプライマリポイントの色分解値を、メディアBの最大打込量制限情報U2を守るように算出する。そしてステップS807において、枠ラインの色分解値を線形補間する。例えば、LUT2におけるプライマリポイントCについて、その最大打込量がメディアA用のLUT1で180%に設定されており、ステップS806で算出したメディアBでの最大打込量が200%であるとする。この場合、LUT1のCポイントを20%上げて200%に変更し、それに伴い、ステップS805でセットされた枠ライン(この場合、Bk−C,W−C,C−B,C−Gのいずれか)のC値を全て線形に20%上げ、これをLUT2の枠ラインの値とする。
【0055】
次にステップS808では、ステップS803で設定された各評価項目の優先順位に応じて、各色の非線形修正係数強度を決定する。非線形修正係数強度とは、主要色(C,M,Y,K)、淡色(Lc,Lm,Lk1,Lk2)、隣接色(R,G,B)、の各インク色に対する非線形補正時に用いられる値であり、それぞれをE1,E2,E3とする。例えば評価項目として「粒状性優先」が設定された場合には、淡色インクを有効に使用するために、非線形修正係数強度をE1=1,E2=3,E3=1に設定する。また、例えば評価項目として「色域優先」が設定された場合には、主要色インクを有効に使用するために、非線形修正係数強度をE1=3,E2=1,E3=2に設定する。
【0056】
次にステップS809では、主要色について非線形修正係数強度E1を用いた補正を行う。ステップS810では、淡色について非線形修正係数強度E2を用いた補正を行う。ステップS811では、隣接色について非線形修正係数強度E3を用いた補正を行う。なお、非線形強度係数Eを用いたインク色データの補正については、非線形な補正を可能とするパラメータを用いた周知の補正方法が適用可能である。
【0057】
そしてステップS812においては、処理中の枠ライン上の各格子点に対する各インク量の合計が、最大打込量制限情報U2が示す値に達しているか否かを判定する。この判定方法としては種々考えられるが、例えば後述するステップS813における強度更新方法を考慮して、今回の補正結果によるインク量の合計値が、最大打込量制限情報U2の示す値を超えない最大の値となるか否かを判定すれば良い。
【0058】
枠ライン上の各値が最大打込量制限情報U2の示す値に達していない、すなわちまだ補正の余地がある場合には、ステップS813で非線形修正係数強度E1,E2,E3を高めるように更新して、再度ステップS809〜S811の補正を行う。ステップS813における非線形修正係数強度の更新方法としては、例えば、各係数強度に1づつ加算すればよいが、本発明はこの例に限定されない。このようなステップS812の判定ループにより、枠ライン上の全ての値が可能な限り最大打込量制限情報U2の示す値に近づくように制御され、設定された最大打込量を最大限に実現するように、LUT2を作成することができる。
【0059】
そしてステップS814においては、LUT2における19本の枠ラインの全てについて処理が終了したか否かを判定し、未終了であればステップS805へ戻って次の枠ラインの処理を行う。
【0060】
図9は、上述した図7に示したように、メディアBの最大打込量制限情報U2を厳守するように作成されたLUT2の内容例を示す図である。同図において、900はメディアA用のLUT1におけるY→Bkライン例であり、該ライン上における各グリッドに対する、Y,Lk1,Lk2,Kインク量と、それらの総インク載り量901が示されている。
【0061】
また910は、LUT1のY→Bkラインに基づいて、粒状性優先としてLUT2を作成した例を示し、Y,Lk1,Lk2,Kインク量と、それらの総インク載り量911が示されている。910によれば、淡色インクの非線形修正係数強度E2を高く設定したことにより、900の場合に比べて淡色インクLk1,Lk2が有効に使用されることが分かる。また、総インク載り量911によれば、メディアBのインク載り量制限情報U2による最大インク載り量が、900に示されるメディアAの総インク載り量901とは大きく異なっていることが分かる。
【0062】
また920は、LUT1のY→Bkラインに基づいて、色域優先としてLUT2を作成した例を示し、Y,Lk1,Lk2,K、およびR,Gのインク量と、それらの総インク載り量921が示されている。この場合、主要色インクの非線形修正係数強度E1を高く、淡色インクの非線形修正係数強度E2を低く設定し、さらに隣接色インクの非線形修正係数強度E3をその中間値に設定されている。したがって920によれば、淡色インクLk1,Lk2の使用は抑制しつつ、主要色インクYはもちろん、隣接色インクR,Gが有効に使用されることが分かる。また920においても、やはり総インク載り量921は900に示されるメディアAの総インク載り量901とは大きく異なっている。
【0063】
以上、図6のステップS602における最大打込量ベースによるメディアBの色分解テーブル(LUT2)の自動作成処理について説明した。次に、ステップS603における、色予測ベースによるLUT2の最適化処理について説明する。
【0064】
図11は、上述した図6のステップS603における、自動作成されたLUT2に対する色域最適化処理を示すフローチャートである。本実施形態の色域最適化処理においては、CMY3色による色予測をノイゲバウア(Neugrbauer)処理によって行うことを特徴とする。
【0065】
まずステップS111において、メディアB上に形成された4色の階調パッチと混色パッチを測色する。ここでの各パッチの測色結果は、後述するノイゲバウア処理による色予測に用いられる。そしてステップS112において、パッチの測色データに基づき、以下に示すノイゲバウア式における反射率[T]を求める。なお、下式において[T]は基本8色の反射率であり、これを算出することによって、任意のCMYの組合せに対するRGB反射率を下式より得ることができる。
【0066】
【数1】
【0067】
次にステップS113において、LUT2に対する理想色域を上記ノイゲバウア式に基づいて算出する。なお、理想色域の詳細については後述する。そしてステップS114において、上記ノイゲバウア式に基づいてLUT2の色域(実際色域)を算出する。
【0068】
そしてステップS115において、LUT2の実際色域を理想色域と比較し、その差分に基づくUCR処理によってLUT2を補正する。これにより、LUT2に対して色域補正を施したLUT2’が得られる。なお、後述するようにこの色域補正処理はループするため、1回で所定量ずつの補正を行うとする。
【0069】
そしてステップS116において、補正後のLUT2'の実際色域を上記ノイゲバウア式に基づいて算出し(LUT2’の色域についても、ノイゲバウアにより算出するとして記載しました。)、ステップS117において該LUT2’の実際色域を理想色域と比較する。LUT2’の実際色域と理想色域との差分ΔEが所定の閾値N(例えばN=1)以下であれば処理を終了するが、ΔEがNよりも大きい場合には、ステップS115に戻ってLUT2の補正すなわちLUT2’の作成を繰り返す。
【0070】
このようにLUT2を最適化する際に、所定パッチの測色結果に基づく色予測によって、LUT2の理想色域や実際色域を算出することにより、該色域算出に必要となる全てのパッチを形成・測色する必要が無くなる。したがって、実際に形成するパッチ数を削減することができる。
【0071】
ここで図12に、上述した理想色域の例を示す。例えば、C,M,Y,K,R,G,B,Lk1,Lk2の9色のインクシステムを例とすると、図12の上部に示すように、K,Lk1,Lk2の3色についての色予測を行うことにより、任意のK,Lk1,Lk2をKに換算することができる。これにより、図12の下部に示すように、CMYK,RGBK,CMBK,CYGK,MYRK,RGYK,RBMK,GBCK、の8種類の4色予測結果を得ることができ、理想色域を算出できる。
【0072】
図13は、Y→Bkライン上にあるK,Lk1,Lk2をKに変換する例を示す図である。同図によれば、上部に示す変換前のK,Lk1,Lk2が、下部に示すようにKインクのみに変換されていることが分かる。
【0073】
●ユーザインタフェース
図10は、上述したステップS702において、形成画像に対する評価項目の優先順位の設定を可能とするためにモニタ202に表示される、優先順位設定用のユーザインタフェース例を示す図である。同図において、100はオリジナルメディアとしてのメディアAのLUT1の入力部である。101は、評価項目優先順位の入力部であり、各項目に対し、優先順位の高い順に、「1」,「2」・・・等の数字を入力する。同図においては、評価項目として「色域」,「粒状性」,「光沢性」、に対して優先順位を設定可能とする例を示したが、本発明における評価項目はこの例に限定されない。例えば階調性等、他の項目について優先順位を設定することも考えられる。102は、新たなメディアとしてのメディアBのLUT2の出力先設定部である。103は、101で設定された評価項目優先順位によるLUT2の自動生成の実行を指示するためのボタンである。なお、ここで設定された評価項目の優先順位は、コンピュータ201内のメモリに保持される。
【0074】
図14は、上述したLUT2の色域最適化用に、各種パッチの測色結果を入力するためのユーザインタフェース例を示す図である。
【0075】
同図において、140は新たなメディアとしてのメディアBのLUT2の入力部である。141は4色(この場合CMYK)の単色階調パッチの測色結果の入力部である。具体的な入力方法としては例えば、4つの測色結果をカンマで区切って順次記載すれば良い。また、142は8種類の4色混色パッチの測色結果の入力部である。ここで、8種類の4色混色パッチとは、上述した図12による理想色域算出用に参照される組み合わせに相当する。具体的な入力方法としては例えば、それぞれの入力部をクリックすることにより、入力用のボックスが表示されるようにすれば良い。また、143は濃淡色混色パッチの測色結果の入力部であり、例えばK,Lk1,Lk2の混色パッチの測色結果を入力する。そして144は、入力された各種パッチの測色結果に基づき、LUT2の最適化処理の実行を指示するためのボタンである。
【0076】
以上説明したように本実施形態によれば、既存の第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを用いて、新たな第2のメディアに対する第2の色分解テーブルを自動作成する際に、複数の評価項目に対してユーザ指示に応じた優先順位を設定することができる。これにより、第2の色分解テーブルを最適な状態で作成することができる。
【0077】
また、自動作成した色分解テーブルを最適化する際に、パッチ測色結果に基づく色予測によって該色分解テーブルの色域を算出することにより、実際に形成するパッチ数を削減することができる。
【0078】
したがって、第2のメディアに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では色空間としてLab空間を用いる例を示したが、他の色空間を用いても良い。
【0080】
また、色分解テーブル作成に伴う色予測処理をコンピュータ201において行う例を示したが、これを色予測エンジン等のハードウェアによって実行しても良い。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0082】
本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したコンピュータ可読のプログラムである。
【0083】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0084】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0085】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0086】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0087】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0088】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0089】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る一実施形態のカラープリンタにおける画像出力プロセスを示す図である。
【図2】本実施形態におけるシステム構成を示す図である。
【図3】本実施形態におけるインク色分解テーブルの構成を示す図である。
【図4】本実施形態における色分解テーブルとしての、RGB色空間上の立方体を示す図である。
【図5】本実施形態における色分解テーブルの手動作成処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態における色分解テーブルの自動作成処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における最大打込量を厳守する色分解テーブルの枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における評価項目の優先順位に従う色分解テーブルの枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態において最大打込量を厳守するように作成されたLUT2の内容例を示す図である。
【図10】本実施形態における評価項目の優先順位設定用のUI例を示す図である。
【図11】本実施形態における色分解テーブルの色域最適化処理を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態における色域最適化の際に参照される理想色域を説明する図である。
【図13】本実施形態における理想色域算出の際にK,Lk1,Lk2をKに変換する例を示す図である。
【図14】本実施形態における色域最適化の際に参照されるパッチ測色結果入力用のUI例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像信号を色材量に分解するための色分解テーブルを作成する色分解テーブル作成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラープリンタ等、カラー画像を記録媒体(メディア)上に可視像化する画像形成装置においては、形成画像の画質の向上に伴い、ユーザによるメディアに対する要求もより高くなっている。したがって、1台のプリンタにおいて多種類のメディアを利用可能とすることはもちろん、さらに、どのメディアに対しても高画質な画像を出力することが必須となってきた。
【0003】
一般にカラープリンタ等を利用したカラープリントシステムにおいては、形成対象となるカラー画像データを該装置における色材(インクやトナー)の各色量相当に分解する、色分解処理が行われる。この色分解処理は、予め作成された色分解テーブルに基づいて行われるが、メディアの種類によって、最適な色分解処理は異なる。したがって、複数種類のメディアのそれぞれに最適な色分解を実現する、複数の色分解テーブルを用意することが好ましい。
【0004】
従来の画像形成装置において複数種類のメディアを最適に利用するためには、各メディアに対して、色分解テーブルに必要となる測色値を全て手動入力する等、最適な色分解テーブルを手動で作成していた。したがって、より多くの種類のメディア対応を実現するためには、より多くの数の色分解テーブルを手動で作成する必要があり、その作業はかなり煩雑であるため、画像形成装置の設計期間の長期化は避けられなかった。
【0005】
多種類のメディアに対応しつつ、その設計期間をより短縮するためには、色分解テーブルを迅速に作成する必要があり、例えば任意メディアの色分解テーブルを自動生成することが望まれる。設計者の意図を反映させつつ、色分解テーブルを迅速に作成するための技術として、メディアAの色分解テーブルに基づき、メディアBの色分解テーブルを作成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。該技術によれば、メディアAの色分解テーブルをコピーしてメディアBの色分解テーブルを作成する。
【特許文献1】特開2003−334934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようにメディアAの色分解テーブルに基づいてメディアBの色分解テーブルを自動作成する技術によれば、以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、メディアAの色分解テーブルのコピーをそのままメディアBの色分解テーブルとして、メディアBへの画像形成を行うと、メディアの構造やメディアとインクの組み合わせによる発色特性の相違から、色ずれが生じてしまう。また、インク載り量補正によってメディアB上で擬似輪郭が発生し、さらに、階調再現性も低下してしまう。
【0008】
また、特にメディアBにおける分光反射率を考慮することなく色分解テーブルが作成されるため、例えば光源が変わってしまった場合等にはカラーコンスタンシーが保たれない。さらに、メディアによって最大色域も変化するため、色域を最大限有効に利用することができない。
【0009】
また、作成した色分解テーブルの評価項目として、色域、階調性、粒状性、光沢等、複数の項目が考えられる。もちろん、これら全ての項目についての評価値を最適化することが理想であるが、実際にはこれら評価項目に優先順位を設けることが現実的である。従来のシステムにおいては、これら評価項目の優先順位は設計時に決定され、固定的であった。したがって、ユーザが所望する評価項目を優先してその評価値が高くなるように、色分解テーブルを作成することは不可能であった。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、以下の特徴を有する色分解テーブル作成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。すなわち、第1のメディアに対する色分解テーブルに基づいて第2のメディアに対する色分解テーブルを自動作成する際に、評価項目の優先順位を設定可能とする。さらに、作成された色分解テーブルの色域を、第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測によって補正することにより、パッチ数を削減する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一手法として、本発明の色分解テーブル作成方法は以下の工程を有する。
【0012】
すなわち、第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを取得する第1のテーブルの取得ステップと、前記第1のメディアおよび第2のメディアのそれぞれに対する色材の打込量の制限情報を取得する打込量制限の取得ステップと、前記第2のメディアに対する第2の色分解テーブルの複数の評価項目について優先順位を設定する優先順位設定ステップと、前記第1の色分解テーブルおよび前記最大打込量情報、および前記評価項目の優先順位に基づいて、前記第2の色分解テーブルを生成する第2のテーブルの生成ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、前記第2の色分解テーブルの色域を、前記第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測により補正する補正ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の特徴を有する色分解テーブル作成方法および画像形成装置が提供される。すなわち、第1のメディアに対する色分解テーブルに基づいて第2のメディアに対する色分解テーブルを自動作成する際に、評価項目の優先順位が設定可能となる。さらに、作成された色分解テーブルの色域を、第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測によって補正することによってパッチ数を削減できる。
【0015】
したがって、第2のメディアに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
●出力プロセス
図1は、本実施形態における、複数色による画像形成を行うカラープリンタの画像出力プロセスを示す図である。同図において、101は、入力されたRGBデータの再現特性とプリンタの色を合わせるためのカラーマッチング処理部である。102は、カラーマッチング処理部101から出力された多値のR'G'B'データを、プリンタの色材色であるC'M'Y'K'へ変換するためのインク色分解処理部である。103は、インク色分解処理部102から出力された多値のC'M'Y'K'データを、プリンタで表現可能な階調数に変換するためのハーフトーン処理部である。105は、インク色分解処理部102における補間処理の際に参照されるテーブルを提供するインク色分解テーブルである。104は、インク色分解テーブル105を作成するインク色分解テーブル作成部である。以下、インク色分解テーブル105を単に「色分解テーブル」とも称する。
【0018】
図2は、本実施形態におけるシステム構成を示す図である。同図において、201は入力画像データが保持されているコンピュータであり、ユーザの指示を入力するマウス等の図示しない入力部を備える。202はコンピュータ201に保持されている画像データを表示するためのモニタである。203は、コンピュータ201に保持されている画像データをカラー印刷するためのプリンタである。上述した図1に示すプロセス構成において、インク色分解テーブル作成部104はコンピュータ201内に備えられるが、その他はプリンタ203の構成である。なお、コンピュータ201内に全ての構成を備えるとし、ハーフトーン処理部103から出力されたCMYKデータをプリンタ203に入力するようにしても良い。
【0019】
ここで、本実施形態における印刷処理について、図1および図2を用いて説明する。コンピュータ201に保持されている画像データは、印刷時にはケーブルまたは不図示のネットワーク等を介してプリンタ203に送られる。
【0020】
プリンタ203では該送信されてきたRGBの画像データに対し、カラーマッチング処理部101にて、ユーザが使用しているモニタ202の色再現特性に合うようにカラーマッチング処理を施す。カラーマッチング処理後のR'G'B'データは、インク色分解処理部102にて、既に作成されているインク色分解テーブル105に基づく補間処理により、プリンタ203における複数のインク色CMYKに分解される。インク色分解後のC'M'Y'K'多値データは、ハーフトーン処理部103にてプリンタ203で再現可能な階調数に変換された後、予めセットされたメディア上に印刷される。なお、インク色分解テーブル105は、インク色分解テーブル作成部104によって予め生成されているが、その生成方法については後述する。
【0021】
図3は、インク色分解テーブル105の構成を示す図である。インク色分解テーブル105は、入力データR'G'B'に対応して、RGB3次元空間上の立方体における格子点に対応するデータを、テーブルデータとして格納している。インク色分解処理部102では、入力されたR'G'B'データがインク色分解テーブル105の格子上にない場合には、その近傍の格子点データを用いた補間処理を行う。この補間方法としては、四面体補間や立方体補間など多々あるが、どのような補間方法を用いても良い。
【0022】
図4は、本実施形態におけるインク色分解テーブル105の作成方法を説明するための、RGB色空間上の立方体を示す図であり、立方体の8つの頂点をそれぞれ、W,C,M,Y,R,G,B,Bkとする。そして、W−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−M及び、W−Bkを結ぶ全19本のラインを太い実線で示している。インク色分解処理部102における入力データのビット数を8とした場合、W,C,M,Y,R,G,B,Bk各頂点の座標は、以下のように表される。
【0023】
W=(255,255,255):ホワイトすなわちメディア地色を示す。
【0024】
C=(0,255,255) :シアン原色を示す。
【0025】
M=(255,0,255) :マゼンタ原色を示す。
【0026】
Y=(255,255,0) :イエロー原色を示す。
【0027】
R=(255,0,0) :レッド原色を示す。
【0028】
G=(0,255,0) :グリーン原色を示す。
【0029】
B=(0,0,255) :ブルー原色を示す。
【0030】
Bk=(0,0,0) :ブラックすなわちプリンタの最暗点を示す。
【0031】
インク色分解テーブル作成部104においては、まず、図4に太実線で示すW−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−M及び、W−Bkを結ぶ19本のラインについてのテーブルデータを作成する。その後、内部の格子点に対応するインク色については内部補間処理を行うことによって、全てのテーブルデータを作成する。
【0032】
本実施形態のプリンタ203においては複数種類のメディアが利用可能であるが、以下では説明の簡便のために、2種類のメディアを用いる例を説明する。すなわち、プリンタ203において第1種類のメディアであるメディアAと、第2種類のメディアであるメディアBが利用可能であるとし、それぞれのインク色分解テーブル105を用意する例を示す。
【0033】
メディア種類ごとに異なる色分解テーブルを用意するためには、従来では全てのメディア種類についてそれぞれ手動による作成を行っていた。本実施形態では、全てのメディア種類に対する色分解テーブルを手動で作成するものではない。本実施形態では、ある代表的なメディア種類に対する色分解テーブルを手動で作成した後に、他のメディア種類に対する色分解テーブルを、手動作成された色分解テーブルに基づいて自動作成する。すなわち、メディアAの色分解テーブルを手動作成した後、これに基づいてメディアBの色分解テーブルを自動作成する。
【0034】
●色分解テーブル作成処理(メディアA)
以下、本実施形態におけるメディアAの色分解テーブルの作成処理について説明する。 図5は、本実施形態のカラープリントシステムにおいて、メディアAに対応する色分解テーブルを手動作成する処理を示すフローチャートであり、該処理はインク色分解テーブル作成部104において行われる。
【0035】
まずステップS501で、W−Bkライン、W−C,M,Y,R,G,Bライン、C,M,Y,R,G,B−Bkラインと、C−G,G−Y,Y−R,R−M,M−B,B−Cラインの色分解テーブルを手動で作成する。これにより、色相ごとに最適なUCR(Under Color Removal)量やBG(Black Generation)量を設定することができる。したがって、プリンタ203の色再現範囲を最大にしつつ、墨による粒状度の影響をできるだけ抑制したテーブルを設定することができる。
【0036】
次にステップS502では、ステップS501で作成した枠ラインの色分解テーブルに基づき、その内部にあるテーブルデータを求める内部補間処理を行う。
【0037】
そしてステップS503〜S505までのループ処理を行う。該ループにより、内部補間後の色分解テーブルが、スムーズで、かつ打込量オーバーが発生しないように補正される。
【0038】
ステップS503においては、色分解テーブルのテーブルデータすなわち色毎のインク打込量が、メディアAの打込量制限を超えないようにする打込量補正を行う。この打込量補正は、色分解テーブルの打込量オーバー発生箇所に対して打込量補正率を乗じることによって実施する。ここで、打込量補正率はループの回数により規定される。このように、色分解テーブルに対する打込量補正がループの度に行われることにより、打込量オーバー箇所は少しずつ補正され、最終的に打込量オーバーがないような色分解テーブルが得られる。
【0039】
ここで、上述したステップS502の内部補間処理においては、立方体で構成される色空間を六つの四面体に領域分割して、領域ごとに補間処理を施すため、領域の境界において擬似輪郭が発生してしまう。そこで本実施形態ではステップS504において、擬似輪郭の発生を抑制するために平滑化処理を行う。
【0040】
そしてステップS505では、ステップS504で平滑化された色分解テーブルの全体に亙ってインク打込量が打込量制限を厳守していることを保証するために、テーブル全体について、最大打込量をオーバーする箇所があるか否かをチェックする。オーバーする箇所がなければ、色分解テーブルが完成したとして処理を終了するが、もしもオーバーする箇所があれば、ステップS503に戻って打込量補正を行う。
【0041】
このように、色分解テーブルのデータに対して、打込量オーバーしている箇所を少しずつ補正し、平滑化処理も施しつつ打込量補正を行うことにより、色分解テーブルの打込量オーバー箇所を補正しつつ、擬似輪郭の発生も抑制できる。
【0042】
●色分解テーブル作成処理(メディアB)
以下、本実施形態におけるメディアBの色分解テーブルの作成処理について説明する。 図6は、既に作成されているメディアAの色分解テーブルに基づいて、メディアBに対応する色分解テーブルを自動作成する処理を示すフローチャートであり、該処理はインク色分解テーブル作成部104において行われる。
【0043】
まずステップS601において、新たなメディアであるメディアBの最大打込量制限情報U2を、メディアB上に所定のパッチを形成して測色することにより決定する。このとき、予め定められているメディアAの最大打込量制限情報U1についても取得しておく。そしてステップS602において、最大打込量を厳守する色分解テーブルを自動生成する。この自動生成処理の詳細については、図7、図8を用いて後述する。ステップS603では、ステップS602で自動生成されたメディアBの色分解テーブルについて、さらに色予測による最適化を施す。
【0044】
図7は、上述した図6のステップS602における、メディアBの最大打込量制限を厳守する色分解テーブルの自動生成処理を示すフローチャートである。この処理においてはすなわち、予め手動作成されているメディアAの色分解テーブルLUT1に基づき、メディアBの色分解テーブルLUT2を自動生成する。
【0045】
まずステップS701において、オリジナルの色分解テーブルである、手動作成されたメディアAの色分解テーブルLUT1を取得する。なお、LUT1についても最適化が施されているものとする。
【0046】
次にステップS702において、後述するユーザインタフェースを用いて、評価項目の優先順位を設定し、ステップS703において、該評価項目の優先順位にしたがって、メディアBの色分解テーブルLUT2の枠ラインを自動生成する。この枠ラインの自動生成処理の詳細については後述する。
【0047】
ステップS704は、ステップS703で作成した枠ラインに基づき、その内部にあるテーブルデータを求める内部補間処理を行う。この内部補間処理が終了した時点で、LUT2の色空間における全格子点についてのデータが揃う。
【0048】
そしてステップS705において打込量補正処理を行う。すなわち、上述したメディアAのLUT1の作成時と同様に、LUT2においてU2で示される最大打込量制限をオーバーする箇所を補正する。そしてステップS706において平滑化を行った後、ステップS707で打込量オーバーチェックを通過することにより、最大打込量制限情報U2を厳守するLUT2が完成する。
【0049】
図8は、上述した図7のステップS703における、評価項目の優先順位に従うLUT2枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【0050】
まずステップS803において、形成画像における評価項目の優先順位や非線形補間用の非線形修正係数等の各種パラメータを取得する。そしてステップS804において、プリンタ203で使用可能なインク色を分類する。ここではインク色を、主要色と淡色、および隣接色の3種類に分類する例を示す。すなわち、主要色をCMYKインクとし、淡色を淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)、濃グレイ(Lk1)、淡グレイ(Lk2)のインク、隣接色をRGBインクとして、説明する。
【0051】
次にステップS805において、LUT1に基づき、LUT2の枠ラインをセットする。この枠ラインとは、W−Bk,W−C,M,Y,R,G,B−Bk、M−R,R−Y,Y−G,G−C,C−B,B−Mを結ぶ全19本のラインである。具体的には、各枠ラインごとにLUT1から、下色除去(UCR)によるBkと他色の切り替えポイント情報と、各色材色の分解比率情報を取得する。
【0052】
この19本の枠ラインのそれぞれについて順次、以降の処理を行うが、その処理順としては、まず、W,Bk点とカラー点(C,M,Y,R,G,B)を結ぶラインを先に処理し、次に、カラー点とカラー点を結ぶラインを処理する。
【0053】
以下、色空間上にあるC,M,Y,R,G,B,Bk,Wの各点を主要色点、すなわちプライマリポイントとして説明する。
【0054】
ステップS806では、ステップS805でセットされた枠ラインにおけるプライマリポイントの色分解値を、メディアBの最大打込量制限情報U2を守るように算出する。そしてステップS807において、枠ラインの色分解値を線形補間する。例えば、LUT2におけるプライマリポイントCについて、その最大打込量がメディアA用のLUT1で180%に設定されており、ステップS806で算出したメディアBでの最大打込量が200%であるとする。この場合、LUT1のCポイントを20%上げて200%に変更し、それに伴い、ステップS805でセットされた枠ライン(この場合、Bk−C,W−C,C−B,C−Gのいずれか)のC値を全て線形に20%上げ、これをLUT2の枠ラインの値とする。
【0055】
次にステップS808では、ステップS803で設定された各評価項目の優先順位に応じて、各色の非線形修正係数強度を決定する。非線形修正係数強度とは、主要色(C,M,Y,K)、淡色(Lc,Lm,Lk1,Lk2)、隣接色(R,G,B)、の各インク色に対する非線形補正時に用いられる値であり、それぞれをE1,E2,E3とする。例えば評価項目として「粒状性優先」が設定された場合には、淡色インクを有効に使用するために、非線形修正係数強度をE1=1,E2=3,E3=1に設定する。また、例えば評価項目として「色域優先」が設定された場合には、主要色インクを有効に使用するために、非線形修正係数強度をE1=3,E2=1,E3=2に設定する。
【0056】
次にステップS809では、主要色について非線形修正係数強度E1を用いた補正を行う。ステップS810では、淡色について非線形修正係数強度E2を用いた補正を行う。ステップS811では、隣接色について非線形修正係数強度E3を用いた補正を行う。なお、非線形強度係数Eを用いたインク色データの補正については、非線形な補正を可能とするパラメータを用いた周知の補正方法が適用可能である。
【0057】
そしてステップS812においては、処理中の枠ライン上の各格子点に対する各インク量の合計が、最大打込量制限情報U2が示す値に達しているか否かを判定する。この判定方法としては種々考えられるが、例えば後述するステップS813における強度更新方法を考慮して、今回の補正結果によるインク量の合計値が、最大打込量制限情報U2の示す値を超えない最大の値となるか否かを判定すれば良い。
【0058】
枠ライン上の各値が最大打込量制限情報U2の示す値に達していない、すなわちまだ補正の余地がある場合には、ステップS813で非線形修正係数強度E1,E2,E3を高めるように更新して、再度ステップS809〜S811の補正を行う。ステップS813における非線形修正係数強度の更新方法としては、例えば、各係数強度に1づつ加算すればよいが、本発明はこの例に限定されない。このようなステップS812の判定ループにより、枠ライン上の全ての値が可能な限り最大打込量制限情報U2の示す値に近づくように制御され、設定された最大打込量を最大限に実現するように、LUT2を作成することができる。
【0059】
そしてステップS814においては、LUT2における19本の枠ラインの全てについて処理が終了したか否かを判定し、未終了であればステップS805へ戻って次の枠ラインの処理を行う。
【0060】
図9は、上述した図7に示したように、メディアBの最大打込量制限情報U2を厳守するように作成されたLUT2の内容例を示す図である。同図において、900はメディアA用のLUT1におけるY→Bkライン例であり、該ライン上における各グリッドに対する、Y,Lk1,Lk2,Kインク量と、それらの総インク載り量901が示されている。
【0061】
また910は、LUT1のY→Bkラインに基づいて、粒状性優先としてLUT2を作成した例を示し、Y,Lk1,Lk2,Kインク量と、それらの総インク載り量911が示されている。910によれば、淡色インクの非線形修正係数強度E2を高く設定したことにより、900の場合に比べて淡色インクLk1,Lk2が有効に使用されることが分かる。また、総インク載り量911によれば、メディアBのインク載り量制限情報U2による最大インク載り量が、900に示されるメディアAの総インク載り量901とは大きく異なっていることが分かる。
【0062】
また920は、LUT1のY→Bkラインに基づいて、色域優先としてLUT2を作成した例を示し、Y,Lk1,Lk2,K、およびR,Gのインク量と、それらの総インク載り量921が示されている。この場合、主要色インクの非線形修正係数強度E1を高く、淡色インクの非線形修正係数強度E2を低く設定し、さらに隣接色インクの非線形修正係数強度E3をその中間値に設定されている。したがって920によれば、淡色インクLk1,Lk2の使用は抑制しつつ、主要色インクYはもちろん、隣接色インクR,Gが有効に使用されることが分かる。また920においても、やはり総インク載り量921は900に示されるメディアAの総インク載り量901とは大きく異なっている。
【0063】
以上、図6のステップS602における最大打込量ベースによるメディアBの色分解テーブル(LUT2)の自動作成処理について説明した。次に、ステップS603における、色予測ベースによるLUT2の最適化処理について説明する。
【0064】
図11は、上述した図6のステップS603における、自動作成されたLUT2に対する色域最適化処理を示すフローチャートである。本実施形態の色域最適化処理においては、CMY3色による色予測をノイゲバウア(Neugrbauer)処理によって行うことを特徴とする。
【0065】
まずステップS111において、メディアB上に形成された4色の階調パッチと混色パッチを測色する。ここでの各パッチの測色結果は、後述するノイゲバウア処理による色予測に用いられる。そしてステップS112において、パッチの測色データに基づき、以下に示すノイゲバウア式における反射率[T]を求める。なお、下式において[T]は基本8色の反射率であり、これを算出することによって、任意のCMYの組合せに対するRGB反射率を下式より得ることができる。
【0066】
【数1】
【0067】
次にステップS113において、LUT2に対する理想色域を上記ノイゲバウア式に基づいて算出する。なお、理想色域の詳細については後述する。そしてステップS114において、上記ノイゲバウア式に基づいてLUT2の色域(実際色域)を算出する。
【0068】
そしてステップS115において、LUT2の実際色域を理想色域と比較し、その差分に基づくUCR処理によってLUT2を補正する。これにより、LUT2に対して色域補正を施したLUT2’が得られる。なお、後述するようにこの色域補正処理はループするため、1回で所定量ずつの補正を行うとする。
【0069】
そしてステップS116において、補正後のLUT2'の実際色域を上記ノイゲバウア式に基づいて算出し(LUT2’の色域についても、ノイゲバウアにより算出するとして記載しました。)、ステップS117において該LUT2’の実際色域を理想色域と比較する。LUT2’の実際色域と理想色域との差分ΔEが所定の閾値N(例えばN=1)以下であれば処理を終了するが、ΔEがNよりも大きい場合には、ステップS115に戻ってLUT2の補正すなわちLUT2’の作成を繰り返す。
【0070】
このようにLUT2を最適化する際に、所定パッチの測色結果に基づく色予測によって、LUT2の理想色域や実際色域を算出することにより、該色域算出に必要となる全てのパッチを形成・測色する必要が無くなる。したがって、実際に形成するパッチ数を削減することができる。
【0071】
ここで図12に、上述した理想色域の例を示す。例えば、C,M,Y,K,R,G,B,Lk1,Lk2の9色のインクシステムを例とすると、図12の上部に示すように、K,Lk1,Lk2の3色についての色予測を行うことにより、任意のK,Lk1,Lk2をKに換算することができる。これにより、図12の下部に示すように、CMYK,RGBK,CMBK,CYGK,MYRK,RGYK,RBMK,GBCK、の8種類の4色予測結果を得ることができ、理想色域を算出できる。
【0072】
図13は、Y→Bkライン上にあるK,Lk1,Lk2をKに変換する例を示す図である。同図によれば、上部に示す変換前のK,Lk1,Lk2が、下部に示すようにKインクのみに変換されていることが分かる。
【0073】
●ユーザインタフェース
図10は、上述したステップS702において、形成画像に対する評価項目の優先順位の設定を可能とするためにモニタ202に表示される、優先順位設定用のユーザインタフェース例を示す図である。同図において、100はオリジナルメディアとしてのメディアAのLUT1の入力部である。101は、評価項目優先順位の入力部であり、各項目に対し、優先順位の高い順に、「1」,「2」・・・等の数字を入力する。同図においては、評価項目として「色域」,「粒状性」,「光沢性」、に対して優先順位を設定可能とする例を示したが、本発明における評価項目はこの例に限定されない。例えば階調性等、他の項目について優先順位を設定することも考えられる。102は、新たなメディアとしてのメディアBのLUT2の出力先設定部である。103は、101で設定された評価項目優先順位によるLUT2の自動生成の実行を指示するためのボタンである。なお、ここで設定された評価項目の優先順位は、コンピュータ201内のメモリに保持される。
【0074】
図14は、上述したLUT2の色域最適化用に、各種パッチの測色結果を入力するためのユーザインタフェース例を示す図である。
【0075】
同図において、140は新たなメディアとしてのメディアBのLUT2の入力部である。141は4色(この場合CMYK)の単色階調パッチの測色結果の入力部である。具体的な入力方法としては例えば、4つの測色結果をカンマで区切って順次記載すれば良い。また、142は8種類の4色混色パッチの測色結果の入力部である。ここで、8種類の4色混色パッチとは、上述した図12による理想色域算出用に参照される組み合わせに相当する。具体的な入力方法としては例えば、それぞれの入力部をクリックすることにより、入力用のボックスが表示されるようにすれば良い。また、143は濃淡色混色パッチの測色結果の入力部であり、例えばK,Lk1,Lk2の混色パッチの測色結果を入力する。そして144は、入力された各種パッチの測色結果に基づき、LUT2の最適化処理の実行を指示するためのボタンである。
【0076】
以上説明したように本実施形態によれば、既存の第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを用いて、新たな第2のメディアに対する第2の色分解テーブルを自動作成する際に、複数の評価項目に対してユーザ指示に応じた優先順位を設定することができる。これにより、第2の色分解テーブルを最適な状態で作成することができる。
【0077】
また、自動作成した色分解テーブルを最適化する際に、パッチ測色結果に基づく色予測によって該色分解テーブルの色域を算出することにより、実際に形成するパッチ数を削減することができる。
【0078】
したがって、第2のメディアに対してユーザの所望する最適な画像形成を可能とする色分解テーブルを、迅速に作成することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では色空間としてLab空間を用いる例を示したが、他の色空間を用いても良い。
【0080】
また、色分解テーブル作成に伴う色予測処理をコンピュータ201において行う例を示したが、これを色予測エンジン等のハードウェアによって実行しても良い。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0082】
本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したコンピュータ可読のプログラムである。
【0083】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0084】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0085】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0086】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0087】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0088】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0089】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る一実施形態のカラープリンタにおける画像出力プロセスを示す図である。
【図2】本実施形態におけるシステム構成を示す図である。
【図3】本実施形態におけるインク色分解テーブルの構成を示す図である。
【図4】本実施形態における色分解テーブルとしての、RGB色空間上の立方体を示す図である。
【図5】本実施形態における色分解テーブルの手動作成処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態における色分解テーブルの自動作成処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における最大打込量を厳守する色分解テーブルの枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における評価項目の優先順位に従う色分解テーブルの枠ラインの自動生成処理を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態において最大打込量を厳守するように作成されたLUT2の内容例を示す図である。
【図10】本実施形態における評価項目の優先順位設定用のUI例を示す図である。
【図11】本実施形態における色分解テーブルの色域最適化処理を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態における色域最適化の際に参照される理想色域を説明する図である。
【図13】本実施形態における理想色域算出の際にK,Lk1,Lk2をKに変換する例を示す図である。
【図14】本実施形態における色域最適化の際に参照されるパッチ測色結果入力用のUI例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを取得する第1の色分解テーブルの取得ステップと、
前記第1のメディアおよび第2のメディアのそれぞれに対する色材の打込量の制限情報を取得する打込量制限の取得ステップと、
前記第2のメディアに対する第2の色分解テーブルの複数の評価項目について優先順位を設定する優先順位設定ステップと、
前記第1の色分解テーブルおよび前記打込量の制限情報、および前記評価項目の優先順位に基づいて、前記第2の色分解テーブルを生成する第2の色分解テーブルの生成ステップと、
を有することを特徴とする色分解テーブル作成方法。
【請求項2】
前記優先順位設定ステップにおいては、前記複数の評価項目の優先順位をユーザ指示に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項3】
前記第2の色分解テーブルの生成ステップにおいては、
前記第2の色分解テーブルにおける色空間上の枠ラインに相当する枠ラインのデータを前記評価項目の優先順位に基づいて生成する枠ラインの生成ステップと、
前記枠ラインのデータに基づく内部補間処理により、前記第2の色分解テーブルにおける全格子点のデータを算出する内部補間ステップと、
前記第2の色分解テーブルについて、色材の打込量が前記打込量の制限情報により規定される制限を超えないようにデータを補正する打込量補正ステップと、
前記打込量補正ステップにおいて補正された前記第2の色分解テーブルのデータを平滑化する平滑化ステップと、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項4】
前記枠ラインの生成ステップにおいては、
前記第2の色分解テーブルの主要色点における色分解値を算出する主要色点の色分解ステップと、
前記主要色点における色分解値に基づく線形補間によって前記枠ラインのデータを算出する枠ラインの算出ステップと、
前記色材ごとの非線形修正係数強度を前記評価項目の優先順位に基づいて設定する係数強度の設定ステップと、
前記色材ごとの非線形修正係数強度に基づいて前記枠ラインのデータを補正する枠ラインの補正ステップと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項5】
さらに、前記第2の色分解テーブルの色域を、前記第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測により補正する補正ステップを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項6】
前記補正ステップにおいては、
前記第2のメディアに形成されたパッチを測色する測色ステップと、
該測色結果に基づく色予測により、前記第2のメディアに対する理想色域を算出する理想色域の算出ステップと、
前記第2の色分解テーブルの色域を算出する実際色域の算出ステップと、
前記第2の色分解テーブルの色域を前記理想色域に基づいて補正する色域補正ステップと、
を有することを特徴とする請求項5に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項7】
前記理想色域の算出ステップにおいては、ノイゲバウア処理による色予測を行うことを特徴とする請求項6に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項8】
前記第1の色分解テーブルは、予め手動により作成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項9】
前記複数の評価項目は、色域、粒状性、光沢性、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法によって作成された前記第2の色分解テーブルを用いて、前記第2のメディアに対する複数色の色材による画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
コンピュータが読み込み実行することで、該コンピュータを請求項1乃至9のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法を実行するように制御することを特徴とするコンピュータ可読のプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ可読の記録媒体。
【請求項1】
第1のメディアに対する第1の色分解テーブルを取得する第1の色分解テーブルの取得ステップと、
前記第1のメディアおよび第2のメディアのそれぞれに対する色材の打込量の制限情報を取得する打込量制限の取得ステップと、
前記第2のメディアに対する第2の色分解テーブルの複数の評価項目について優先順位を設定する優先順位設定ステップと、
前記第1の色分解テーブルおよび前記打込量の制限情報、および前記評価項目の優先順位に基づいて、前記第2の色分解テーブルを生成する第2の色分解テーブルの生成ステップと、
を有することを特徴とする色分解テーブル作成方法。
【請求項2】
前記優先順位設定ステップにおいては、前記複数の評価項目の優先順位をユーザ指示に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項3】
前記第2の色分解テーブルの生成ステップにおいては、
前記第2の色分解テーブルにおける色空間上の枠ラインに相当する枠ラインのデータを前記評価項目の優先順位に基づいて生成する枠ラインの生成ステップと、
前記枠ラインのデータに基づく内部補間処理により、前記第2の色分解テーブルにおける全格子点のデータを算出する内部補間ステップと、
前記第2の色分解テーブルについて、色材の打込量が前記打込量の制限情報により規定される制限を超えないようにデータを補正する打込量補正ステップと、
前記打込量補正ステップにおいて補正された前記第2の色分解テーブルのデータを平滑化する平滑化ステップと、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項4】
前記枠ラインの生成ステップにおいては、
前記第2の色分解テーブルの主要色点における色分解値を算出する主要色点の色分解ステップと、
前記主要色点における色分解値に基づく線形補間によって前記枠ラインのデータを算出する枠ラインの算出ステップと、
前記色材ごとの非線形修正係数強度を前記評価項目の優先順位に基づいて設定する係数強度の設定ステップと、
前記色材ごとの非線形修正係数強度に基づいて前記枠ラインのデータを補正する枠ラインの補正ステップと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項5】
さらに、前記第2の色分解テーブルの色域を、前記第2のメディアに形成されたパッチの測色結果に基づく色予測により補正する補正ステップを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項6】
前記補正ステップにおいては、
前記第2のメディアに形成されたパッチを測色する測色ステップと、
該測色結果に基づく色予測により、前記第2のメディアに対する理想色域を算出する理想色域の算出ステップと、
前記第2の色分解テーブルの色域を算出する実際色域の算出ステップと、
前記第2の色分解テーブルの色域を前記理想色域に基づいて補正する色域補正ステップと、
を有することを特徴とする請求項5に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項7】
前記理想色域の算出ステップにおいては、ノイゲバウア処理による色予測を行うことを特徴とする請求項6に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項8】
前記第1の色分解テーブルは、予め手動により作成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項9】
前記複数の評価項目は、色域、粒状性、光沢性、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法によって作成された前記第2の色分解テーブルを用いて、前記第2のメディアに対する複数色の色材による画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
コンピュータが読み込み実行することで、該コンピュータを請求項1乃至9のいずれか1項に記載の色分解テーブル作成方法を実行するように制御することを特徴とするコンピュータ可読のプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ可読の記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−153063(P2009−153063A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331065(P2007−331065)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]