説明

色変化する修正液

色変化するpH指示薬とともに揮発性塩基または揮発性酸のどちらかを、すべて水性液体またはその系の中に含む、改良された色変化する修正液を提供する。修正液が乾燥するにつれて、揮発性塩基または酸が水とともに蒸発し、色変化するpH指示薬が有色の状態から透明な状態に変化する。白色紙については白色の顔料が使用され、それによって修正液は有色の状態から、溶剤の水および酸または塩基が蒸発して最後には白色に変化する。異なる色の顔料は、特定の紙または素地に合わせるように利用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2003年10月2日出願の米国仮特許出願第60/508,095号の優先権の利益を主張し、そこに開示された発明を本願に引用して援用する。
【0002】
本発明は、改良された修正液組成物を開示する。特に、本発明の修正液組成物は、乾燥すると同時に色変化して、それにより修正液が充分に乾燥しその上に筆記または印字することが可能である時を使用者に知らせるという性質を有する。
【背景技術】
【0003】
修正液は、紙、厚紙および他の表面上の、手書き、タイプライター、写真複写および印刷で表されたマークを修正するために使用される。一般に、かかる修正液は液体状態でその表面に塗布されて、その後、乾燥してその表面上の間違ったマークを覆う皮膜が形成される。そして乾燥後には、修正液の塗布皮膜上に正しいマークを形成するために書くことが可能となる。
【0004】
修正液の重要な特徴は、間違ったマークを覆うことができ、正しいマークを受け入れるための効果的な働きをもたらすこともできる皮膜または結合残留物を、表面上に提供することが可能なことである。マークを覆う皮膜は、紙または素地(基材)の表面に強く結合されるだけでなく、紙の通常の取り扱いでは皮膜が剥がれたり亀裂が入ったりすることはない充分な可撓性をも有する必要がある。加えて、修正液は、得られた皮膜の変色または修正液層を通って間違ったマークの“滲み出し”が起こるというような、正しいマークとの相互作用がないようにしなければならない。
【0005】
修正液の他の重要な特徴は、液体の乾燥速度である。特に、乾燥速度は比較的短時間で修正がなされるようにできるだけ速くなければならない。一般的な修正液は、塗布した皮膜の厚さにより30〜40秒の範囲の乾燥時間を有する。他の望ましい性能特性は、良好な保存能力、良好な流動特性及び粘度特性、ならびに短時間で混合されること及び/または懸濁状態で長時間維持することができる流体の能力が挙げられる。
【0006】
初期の修正液は有機溶剤を含んでいたが、最近では、より環境に優しいという理由から水性の修正液が利用されている。一般的に、水性修正液は、例えば二酸化チタンなどの顔料、およびラテックスなどの皮膜形成性ポリマーを含む。
【0007】
現行の水性修正液に伴う問題の1つは、修正液が充分に乾燥してその上に書くことができる時を消費者が判断できないことである。今のところ、消費者は試行錯誤による方法に時間を費やすことを強いられる。消費者が、充分な時間、例えば30秒よりも長く待てないとすれば、消費者のペンは部分的に乾いた皮膜を貫通してしまい、結果として、間違ったマークは部分的にしか覆われなくなり、また、でこぼことした表面が残る。したがって、消費者は、修正液をさらに塗布してもう一度待たなければならない。
【0008】
この問題の解決方法の1つは、日本国特許第6049397号に開示されており、水、エタノールまたはアセトンなどの揮発性有機溶剤、および色変化するpH指示薬を含む修正液配合物が記載されている。この配合物は、大気中の二酸化炭素との反応により、pH低下をもたらすpH変化を生じ(混合物は塩基性がより低下する、あるいは酸性がより増加する)、それにより色変化するpH指示薬の色の変化が起こる。しかしながら、水および極性有機溶剤の2つの異なる溶剤が要求され、その混合物と二酸化炭素との色変化を生じる相互作用への依存は、時間がかかり信頼できない。
【特許文献1】特許第6049397号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえに、修正液が充分に乾燥されて筆記または印刷によって修正されるものを受け入れる準備ができた時に使用者に信頼性のある視覚表示を提供する、改良された修正液配合物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の要求を満たすために、乾燥すると同時に色が変化し、それにより修正液が充分に乾燥して筆記または印刷によって修正されるマークを受け入れる準備ができたことを知らせる信頼性のある表示を、使用者に提供する改良された修正液が開示される。1つの具体例において、改良された色変化する修正液は、単独の溶剤としての水、揮発性塩基または揮発性酸のどちらか、および色変化するpH指示薬を含む。好ましくは、色変化する修正液は、実質的な量の極性または無極性有機溶剤を含まない。
【0011】
ある改良において、揮発性塩基が使用され、トリエチルアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
別の改良において、揮発性酸は、酢酸および/またはギ酸などの他の揮発性酸ならびに揮発性酸の混合物を含んだものが使用される。
【0013】
別の改良において、色変化するpH指示薬は、ペンタメトキシレッド、メチルレッド、メチルイエロー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン(thymophtalein)、p−ナフトールベンゼイン、4−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール(nitrolphenol)、o−クレゾールフタレイン、m−クレゾールレッド、チモールブルー、m−クレゾールパープルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
別の改良において、色変化する修正液は、さらに皮膜形成性ポリマーを含む。さらなる改良において、皮膜形成性ポリマーは、高pH約13から低pH約4に至る範囲で安定し、約35%〜約65%の範囲の固形分および約−35〜約100℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0015】
さらなる改良において、皮膜形成性ポリマーは、スチレンアクリルラテックス、アクリルラテックス、酢酸ビニルエチレンラテックスおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに、ここに記載のいくつかのポリマーは造膜助剤なしで膜を形成できるが、造膜助剤は皮膜形成作用を高めるために使用され得る。造膜助剤を利用される場合、可塑剤が好ましく、ジプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、ジトリデシルフタレート(ditridecylphalate)およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0016】
さらなる改良において、二酸化チタンは好ましい顔料であり、約20〜約60wt%の液体混合物を組成することができる。付加的な体質顔料には、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカリウムおよびそれらの混合物などが利用できる。
【0017】
得られた修正液の25℃での粘度は、好ましくは5〜20,000cps(0.005〜20Pa.s)である。しかしながら、この粘度範囲は利用するアプリケーター、すなわちブラシまたは針状のペン先に依存して拡大されることが可能である。例えば、25℃での粘度は、ブラシまたはフォームアプリケーター利用の場合は約10〜約800cps(約0.01〜約0.8Pa.s)、修正マーカーの場合は約5〜約100cps(約0.005〜約0.1Pa.s)、および修正液が可撓性のある貯蔵部から針状のペン先を通して押し出されることを要するペンの場合は約20〜約20,000cps(約0.02〜約20Pa.s)である。好ましい色変化する修正液の凝固粘度の範囲は、約45〜約75重量%、より好ましくは約55〜約70重量%である。
【0018】
殺生物剤、消泡剤、表面改質剤、顔料分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、凍結融解安定剤、増粘剤および他の添加剤などの、当業者に知られている付加的な添加剤は利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従って作製される改良された色変化する修正液は、主要な溶剤としての水、揮発性塩基または酸および色変化するpH指示薬を含み、主要な溶剤として水を使用することによって、有機溶剤の必要性とそれに関連する環境への懸念を避けることができる。好ましい揮発性塩基は、ジエチレントリアミン(DETA)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、メトキシプロピルアミン(MPA)、トリエチルアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)、アンモニアおよびそれらの混合物が挙げられる。揮発性酸が利用される場合、好ましい揮発性酸は酢酸であり、それは比較的揮発性であり低コストで環境に優しく、それと共に付随する不快な臭気がないからである。
【0020】
好ましくは、揮発性塩基または酸は、液体混合物の約0.1〜約10wt%を組成する。さらに、異なるアミンの混合物は有利である。例えば、すばやく蒸発するアミンであるアンモニアと、ゆっくり蒸発するアミンであるDMEAとの組み合わせは有効である。さらに、すばやく蒸発するアミンとしてのTEAと、ゆっくり蒸発するアミンとしてのAMPとの組み合わせが利用され得る。
【0021】
好ましい色変化するpH指示薬は、ペンタメトキシレッド、メチルレッド、メチルイエロー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、p−ナフトールベンゼイン、4−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、o−クレゾールフタレイン、m−クレゾールレッド、チモールブルー、m−クレゾールパープルおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0022】
本発明の修正液は、皮膜形成性ポリマーおよび場合によっては皮膜形成助剤または造膜助剤をも含むことが望ましい。適当な皮膜形成性ポリマーは、約13から約4までのpHで安定し、約−35〜約100℃の範囲のガラス転移温度(Tg)で約35%〜約65%の固形分を有する。適当な皮膜形成性ポリマーは、Pliotech(登録商標)7822または7217(アクリルラテックス、Eliokem社)、Joncroyo(登録商標)537、617、1907、2561、2646または2660(アクリルラテックス、Johnson Polymers社)、Jonrez(登録商標)2051、2080、2008または2005(スチレンアクリルラテックス、Westvaco社)、Durvace(登録商標)FT-3020(酢酸ビニルエチレンラテックス、Reichhold社)、Ucar(登録商標)ラテックス(Don Chemical社)および上記の条件に合った他のラテックスが挙げられる。適当な造膜助剤は、Benzoflex(登録商標)9-88(ジプロピレングリコールジベンゾエート、Velsicol Chemical Corp社)、Velate(登録商標)262および368(イソデシルベンゾエート、Velsicol Chemical Corp社)、Texanol(登録商標)(エステルアルコール、Eastman Chemical社)、Jayflex(登録商標)(ジトリデシルフタレート、Exxon Mobil Chemical社)が挙げられる。
【0023】
好ましい顔料は、約20〜約60wt%、好ましくは約35〜約50wt%の範囲の量の二酸化チタンである。適当な二酸化チタン顔料は、Ti-Pure(登録商標)R-931、902、706(DuPont社)、Tioide(登録商標)R-XL、TR90(Huntsman社)、Kronos(登録商標)2131(Kronos社)、Tipaque(登録商標)R-930、R-980(Ishihara社)および上記の条件にあった多くの他の二酸化チタン顔料が挙げられる。体質顔料も利用することができ、適当な体質顔料は、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカリウムおよびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【実施例】
【0024】
色変化する修正液の配合物は、以下の実施例によって最も良く説明されよう。
【0025】
実施例1
137.5gのKronos 2131二酸化チタン顔料を、55gの水ならびに適量の顔料分散剤および消泡剤の中に分散した。次いで混合下で、40gのPliotec 7822ラテックス、2gのTXIB造膜助剤、2gのAMP-95および2gのDMAPA、0.6gのフェノールフタレインpH指示薬ならびに他の添加剤を添加した。ブラシおよび/またはフォームアプリケーターのどちらかを用いて、得られた液体を修正のために紙に塗布することができる。
【0026】
実施例2
顔料分散剤および消泡剤を含む60gの水に、137.5gのTiPure R-902二酸化チタンを加えて分散した。そのあと、25.4gのJoncryl 2646および6.7gのJoneryl 537ラテックス、4gのDMAPA、0.6gのo−クレゾールフタレインならびに他の添加剤を混合した。この修正液を、修正用のブラシおよび/またはフォームアプリケーターのどちらかを用いて塗布した。
【0027】
上記の実施例1および実施例2のとおりに調製した液体を、どちらも室温に曝して促進老化試験を行った。どちらの液体も良好な安定性を示した。
【0028】
ここでは単なる1つの具体例を記載したに過ぎず、本願明細書の記載から代替的な具体例および種々の変更が行われることは当業者には明らかであろう。これらおよび他の代替物は、本発明の趣旨および範囲内のものと同等物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、揮発性塩基および色変化するpH指示薬を含む色変化する修正液。
【請求項2】
前記揮発性塩基は、トリエチルアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1の色変化する修正液。
【請求項3】
前記色変化するpH指示薬は、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、p−ナフトールベンゼイン、4−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、o−クレゾールフタレイン、m−クレゾールレッド、チモールブルー、m−クレゾールパープルおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1の色変化する修正液。
【請求項4】
さらに皮膜形成性ポリマーを含む請求項1の色変化する修正液。
【請求項5】
前記皮膜形成性ポリマーは、スチレンアクリルラテックス、アクリルラテックス、酢酸ビニルエチレンラテックスおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項4の色変化する修正液。
【請求項6】
さらに造膜助剤を含む請求項5の色変化する修正液。
【請求項7】
前記造膜助剤は、ジプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、ジトリデシルフタレート、グリコールエーテルおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項6の色変化する修正液。
【請求項8】
さらに二酸化チタン顔料および体質顔料を含む請求項1の色変化する修正液。
【請求項9】
前記体質顔料は、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項8の色変化する修正液。
【請求項10】
水、揮発性酸および色変化するpH指示薬を含む色変化する修正液。
【請求項11】
前記揮発性酸は、酢酸、ギ酸およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項10の色変化する修正液。
【請求項12】
前記色変化するpH指示薬は、ペンタメトキシレッド、メチルレッド、メチルイエロー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、p−ナフトールベンゼイン、4−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、o−クレゾールフタレイン、m−クレゾールレッド、チモールブルー、m−クレゾールパープルおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項10の色変化する修正液。
【請求項13】
さらに皮膜形成性ポリマーを含む請求項10の色変化する修正液。
【請求項14】
前記皮膜形成性ポリマーは、スチレンアクリレート、スチレンアクリル、アクリル、酢酸ビニルエチレンポリマー、塩化ビニリデンおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項13の色変化する修正液。
【請求項15】
さらに造膜助剤を含む請求項14の色変化する修正液。
【請求項16】
前記造膜助剤は、ジプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、ジトリデシルフタレート、グリコールエーテルおよびその混合物からなる群から選択される請求項15の色変化する修正液。
【請求項17】
さらに二酸化チタン顔料および体質顔料を含む請求項10の色変化する修正液。
【請求項18】
前記体質顔料は、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項17の色変化する修正液。
【請求項19】
誤記を請求項1の色変化する修正液の塗布膜で覆い、
揮発性塩基および水を蒸発させることによって、修正液の色変化するpH指示薬が、修正液が乾燥するにつれて色変化する、
ことからなる素地上の誤記を修正する方法。
【請求項20】
前記素地は白色であり、前記色変化する修正液は、乾燥後は白色であるが液体時は非白色(有色)である請求項19の方法。
【請求項21】
誤記を請求項10の色変化する修正液の塗布膜で覆い、
揮発性酸および水を蒸発させることによって、修正液の色変化するpH指示薬が、修正液が乾燥するにつれて色変化する、
ことからなる素地上の誤記を修正する方法。
【請求項22】
前記素地は白色であり、前記色変化する修正液は、乾燥後は白色であるが液体時は非白色(有色)である請求項21の方法。
【請求項23】
水、揮発性塩基および色変化するpH指示薬を含む色変化する液体。
【請求項24】
前記揮発性塩基は、トリエチルアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項23の色変化する液体。

【公表番号】特表2007−507585(P2007−507585A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533847(P2006−533847)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026118
【国際公開番号】WO2005/040290
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501495318)サンフォード エル.ピー. (32)
【Fターム(参考)】