説明

色材物質分散物の製造方法

【課題】 マイクロリアクターを用いて、色材物質とブロック共重合体を含む小粒径の色材物質分散物を得ることができる色材物質分散物の製造方法を提供する。
【解決手段】 流路2,3を備えたマイクロリアクター1の前記流路内で色材物質とブロック共重合体を混合し、前記色材物質と前記ブロック共重合体を含む色材物質の分散物を得る色材物質分散物の製造方法。色材物質の合成、沈殿または結晶化を、流路を備えたマイクロリアクターの流路中で行う。混合を、色材物質を含む流体と、ブロック共重合体を含む流体と、を各々別の流路から混合流路に導入し、これら流体を前記混合流路中で接触させることで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材物質をブロック共重合体を用いて分散化させた色材物質分散物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性物質を含有する水性分散材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、また着色剤を有するインク、トナー等の色材が良く知られている。近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡し、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
【0004】
これらの方法に使用されるインクは通常染料水溶液が用いられるため、色の重ね合わせ時ににじみが生じたり、記録媒体上の記録箇所に紙の繊維方向にフェザリングと言われる現象が現れたりする場合があった。これらを改善するために顔料分散インクを使用することが、特許文献1に開示されている。特許文献1には、ABまたはABAブロックポリマーを用いて安定化した顔料粒子と水性溶媒を含む顔料インクを開示する。そして、その顔料インクの製造は、具体的には、フラスコとビーカーを用いて行なっている。
【0005】
一方、リアクターチャンバー内でノズルから吐出させた流体を衝突させて顔料の分散体を製造する方法が特許文献2に開示されている。特許文献2は、粗顔料、凝集安定性液体、液体媒体を含む懸濁液同士をリアクターチャンバー内に対向配置されたノズルから吐出及び衝突させて、粗顔料の粉砕と分散を同時に行う方法を開示する。
【0006】
しかしながら、この方法においても更なる微小粒径を有する顔料の分散物を安定して得るための改善が望まれる。
これとは別に、粒子径が小さい金属コロイド溶液を効率的に製造する方法として特許文献3に開示されたものがある。特許文献3は、高分子顔料分散剤存在下で金属化合物を還元することによる金属コロイド溶液の製造方法であって、還元をマイクロリアクター中で行なうものを開示する。当該公報に開示された方法によれば、粒子径が小さい金属コロイドを効率的に製造することができるとされているが、当該公報においては、微小粒径を有する色材を製造することについては開示がない。また、ブロック共重合体を分散剤として用いることについても開示がない。
【特許文献1】米国特許第5085698号明細書
【特許文献2】USAA2002040662公報
【特許文献3】特開2004−33901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な背景技術を鑑みてなされたものであり、マイクロリアクターを用いて、色材物質とブロック共重合体を含む小粒径の色材物質分散物を得ることができる色材物質分散物の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される色材物質分散物の製造方法は、流路を備えたマイクロリアクターの前記流路内で色材物質とブロック共重合体を混合し、前記色材物質と前記ブロック共重合体を含む色材物質の分散物を得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路幅が微小なマイクロリアクターの流路中で色材物質とブロック共重合体を混合させることにより、拡散距離を短くして流体を混合させるので流体同士の拡散が短時間でなされる。また、得られる分散物の粒径も微小なものとなる。更に、流路幅が微小なマイクロリアクターの流路中で上記混合を行なうので、流体の流れは層流または乱流となり、連続的に均一な粒子径の分散物を安定して製造することができる。加えて、ブロック共重合体を分散剤として用いることで、製造する色材物質分散物の用途に応じてブロック共重合体のブロック各に所望の機能を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の色材物質分散物の製造方法は、流路を備えたマイクロリアクターの前記流路内で色材物質とブロック共重合体を混合し、前記色材物質と前記ブロック共重合体を含む色材物質の分散物を得ることを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、色材物質の合成、沈殿または結晶化を、流路を備えたマイクロリアクターの流路中で行なうこともできる。
本発明においてマイクロリアクターを構成する流路の流路幅は、1000μm〜30μmの範囲とすることができる。
【0012】
また、混合を、色材物質を含む流体と、ブロック共重合体を含む流体と、を各々別の流路から混合流路に導入し、これら流体を前記混合流路中で接触させることで行なうようにすることもできる。
【0013】
本発明においては、混合流路中での混合は、層流支配下で行なうこともできるし、乱流支配下で行なうこともできる。
また、混合流路についての流路幅と流路深さとの比(流路深さ/流路幅)は、0.5以上とすることができる。
【0014】
また、混合流路の断面積が0.5mm2以上あり、合流路に接続された複数の流路の断面積の和と、混合流路の断面積との比(流路断面積/混合流路断面積)を、0.01〜0.1の範囲とすることができる。
【0015】
また、本発明において、ブロック共重合体は両親媒性とすることができる。
また、ブロック共重合体はイオン性ユニットを有するものとすることができる。
また、ブロック共重合体はポリアルケニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有するものとすることができる。
【0016】
また、色材物質をブロック共重合体と混合する工程は、ブロック共重合体で色材物質を内包して色材物質分散物を得るようにすることもできる。
また、色材物質分散物の平均粒径が100nm以下とすることができる。
【0017】
また、本発明は、色材物質と前記ブロック共重合体の混合が水性溶媒を含む溶媒中で行われ、該色材物質と該ブロック共重合体よりなる色材物質分散物が水性溶媒に分散しているものも包含する。
【0018】
また、本発明は、色材物質をブロック共重合体と混合した後、これにより生成した混合物を更に分散溶媒に混合することも包含する。
更に、本発明は、色材物質をブロック共重合体と混合した後、これにより生成した混合物を更に分散溶媒と混合する工程を前記流路中で行うものも包含する。
【0019】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明で利用するマイクロリアクターとは、反応や混合を行うために使用される小型の3次元構造体でマイクロ空間での現象を利用したケミカルデバイスである。マイクロリアクターは、マイクロスケールの複数の流路を有する反応や混合装置を一般に総称するものである。例えば、“Microreactors New Technology for Modern Chemistry”(Wolfgang Ehrfeld,Volker Hessel,Holger Loewe著、WILEY−VCH社 2000年発行)等に記載されている。
【0020】
本発明においてマイクロリアクターは、例えば図1から6に示すマイクロスケールの流路を有するマイクロリアクターを用いることができるが、本発明に用いるマイクロリアクターの形態や構造はこれらに限定されるものではない。例えば市販のIMM(Institute fur Mikrotechnik Mianz)製のマイクロリアクターを用いてもよい。
【0021】
本発明で用いるマイクロリアクターの流路は流路幅が数μmから数百μmないし数千μmのマイクロスケールであり、寸法が小さく流路内を流れる流体の流速も小さいためレイノルズ数は小さい。ここでいうレイノルズ数とは慣性力と粘性力との比で一般に層流と乱流を区別する際に用いられる指標である。一般にレイノルズ数が1000を超えると不安定な層流となり2000を超えると乱流といわれる。
【0022】
マイクロスケールの流路内を流れる流体は一般的な反応装置のような乱流支配でなく層流支配となりやすい。
層流支配下では2つの液体の流れを接触させても界面を通じた拡散が支配的となる。また、マイクロスケール空間では単位体積あたりの表面積が大きいため2液の層流が接触する界面での拡散混合に非常に有利といわれている。またFickの法則により混合に要する時間は拡散距離の2乗に比例する。すなわち分子拡散による混合は流路幅を小さくすればするほど混合時間は速くなる。具体的には流路幅が1/10になれば混合時間は1/100になる。したがって複数の流体の接触させて混合を行なう混合流路の流路幅として好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下、望ましくは、100μm以下である。流路幅の下限は、流路製造上の制約と得られる分散物の粒径を考慮すると30μm程度とされる。流路幅が狭くなるにつれ、拡散距離が短くなり、混合時間の短縮、反応時間の短縮につながる。また、混合流路の深さについては、混合させる流体同士の接触面積を広くさせるという観点から流路幅よりも深い(大きい)ことが好ましい。具体的には、深さ/流路幅は0.5以上、より好ましくは1以上、より好ましくは5以上最適には10以上が好ましい。さらに深さ/流路幅が大きくなることは流路の断面積が大きくなり多くの流体が流せるという効果も奏する。したがって、分解、過重合、塩析、酸析、固化等によって所望の機能や活性を保持する寿命の短い化学薬品や反応中間体なども、マイクロリアクターを用いれば瞬時に混合させることができる。
【0023】
本発明において、マイクロリアクターの流路の断面形状は、例えば正方形、長方形、台形、半円形、楕円形、円形やこれらのものの複合形、例えば長方形の一辺が曲形のものが挙げられる。また、流路幅とは、例えば2液を混合する流路において2液の接触界面に対して垂直方向の長さを表す。流路深さとは、例えば2液を混合する流路の場合、2液の接触界面における流体の進行方向に対する垂直方向の長さを表す。
【0024】
本発明に適用されるマイクロリアクターの流路として使用される材料の例を挙げれば、金属、ガラス、シリコン、テフロン(登録商標)、セラミックス、プラスチックなどである。耐熱、耐圧および耐溶剤性が必要な場合として金属、ガラス、シリコン、テフロン(登録商標)、セラミックスであるが、好ましくは金属である。金属の例としてステンレス、ハステロイ(Ni−Fe系合金)ニッケル、金、白金、タンタル等が挙げられるが本発明に用いるマイクロリアクターの流路の金属材料はこれらに限定するものでない。
【0025】
また、流路の耐食性や所望の表面エネルギーを得るために流路表面にライニング加工を施したものを用いてもよい。
マイクロスケールの空間では機械的攪拌などを用いなくても分子輸送、反応、分離が分子の自発的挙動だけで速やかに行われる。したがって、マイクロリアクターの層流下の反応では、これまでのマクロな反応装置を用いる場合の乱流下での反応に比べて、一般に反応速度が高まるといわれている。さらに2つの液体が常に同じタイミングで接し、層流をなして混合ないし反応が進行していくことにより均一な混合や反応の秩序性を維持することができる。なお、本発明においてはマイクロスケールの空間での2つの流体の混合は層流に限定するものではなく、乱流支配下で行っても良い。特に分子量が大きく拡散速度の小さいものと拡散速度の大きなものとを混合する場合には層流支配下よりも乱流支配下で行った方が混合速度が高くなるケースもある。
【0026】
例えば、枝分かれした複数の流路が混合流路で合流するタイプのマイクロリアクターがある。このマイクロリアクターを用いて効果的に乱流を生じさせるためには、混合流路の断面積が0.5mm2以上あり、複数の流路の断面積(総計)と、混合流路の断面積の比(複数の流路の断面積(総計)/混合流路の断面積)を0.01〜0.1とするのが好ましい。ここで、流路の断面積とは、流体の進行方向に垂直な面で流路を切った面積をいう。
【0027】
マイクロリアクターを利用し微粒子が生成する反応を行えば、反応が瞬時に進行し、多数の核が生じ、それに基づき多数の粒子が成長するため、一次粒径の小さい微粒子が形成される。よってマイクロリアクターを利用して色材物質の合成もしくは沈殿もしくは結晶化を行うことによって一次粒径の小さい色材物質の微粒子を得ることが可能になる。また、反応に秩序性があることにより粒度分布を狭く抑えることができる。さらに粉砕でなくマイクロスケールの流路内で反応を速く進行させ粒子核生成を行うので特開2002−161218のようなマイクロジェットのリアクターを用いなくてもよいのでマイクロリアクター構造の選択性が増す。また、色材物質分散物の量産時においては必要な生産量に応じてマイクロリアクターを並列に並べること(numbering−up)によって対応が可能となる。
【0028】
色材物質をブロック共重合体により混合する工程をマイクロリアクターを用いて行うと、色材物質分散物の分散の秩序性がよく粒径も非常に揃い易くなる。またここで、両親媒性のブロック共重合体を使用することによって、色材物質をブロック共重合体で内包した内包状態が安定化する。色材物質を内包させる上では、ブロック共重合体を形成する両親媒性の共重合体が安定な高分子ミセル形成能を持つという点から、良好な内包状態すなわち良好な分散安定性を示す。
【0029】
さらにブロック共重合体が両親媒性であることは、マイクロリアクターでブロック共重合体にて色材物質を混合させる際に、色材物質側とブロック共重合体側の溶媒選択性が広げられ、効率の良い分散を可能にする溶媒の組み合わせが選べる。さらにここでブロック共重合体はポリアルケニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有し、特に好ましくはポリビニルエーテル構造を含むブロック共重合体を使用すれば、分散安定性を良好に確保できる。これらの処理をマイクロリアクターを利用して行うことより、簡便に色材物質がブロック共重合体に内包され、粒径が小さく、且つ大きさの揃った色材物質分散物を得ることが可能となる。特に分散粒子の粒径及び粒径の均一さが色材物質の機能に大きく影響を及ぼすものに対しては、本発明の色材物質分散物の製造方法は有効である。
【0030】
本発明における色材物質とは、顔料のような粒状固体、染料化合物を含む。
色材としては前述したように顔料が例としてあり、無機の無彩色顔料、有機、無機の有彩色顔料があり、また、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。以下に顔料の具体例を挙げる。
【0031】
黒色の顔料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。即ち、Raven 1060、Raven 1080、Raven 1170、Raven 1200、Raven 1250、Raven 1255、Raven 1500、Raven 2000、Raven 3500、Raven 5250、Raven 5750、Raven 7000、Raven 5000 ULTRAII、Raven 1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製)である。また、Black Pearls L、Mogul−L、Regal 400R、Regal 660R、Regal 330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)である。また、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4,Special Black 4A,Special Black 6,Printex 35,Printex U,Printex 140U,Printex V,Printex 140V(以上デグッサ社製)である。また、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等である。しかしこれらに限定されない。
【0032】
シアン色の顔料としては、以下のものを挙げることができる。即ち、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3である。また、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4である。また、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等である。
【0033】
マゼンタ色の顔料としては、以下ものを挙げることができる。即ち、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12である。また、C.I.Pigment Red−48、C.I.Pigment Red−48:1、C.I.Pigment Red−57、C.I.Pigment Red−112である。また、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168である。また、C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等である。
【0034】
黄色の顔料としては、以下のものを挙げることができる。即ち、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16である。また、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93である。また、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114である。また、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等である。
【0035】
また、本発明においては顔料同様に染料を用いることもできる。
例としては、C.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135を挙げることができる。また、C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219を挙げることができる。また、C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等を挙げることができる。
【0036】
水溶性染料も使用することが出来る。例としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;
C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0037】
使用しうる染料は、公知のものでも新規のものでもよい。例えば以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、脂溶性(油溶性)染料又は、分散染料の不溶性色素を用いることができる。これらは、固体化した状態で使用しても良い。この点では好ましくは、例えば、油溶性染料を使用し得る。
【0038】
また、本発明においては色材物質が特徴的にブロック共重合体に物理的に内包される。ブロック共重合体に内包される好ましい一形態はそれらが形成するミセルに内包される形態である。色材物質、好ましくは色材が前記ブロック共重合体に内包されることにより、分散性や機能性を安定化することができる。
【0039】
本発明で言う油溶性染料とは、有機溶媒に溶解する染料を言い、脂溶性染料とも呼ばれる。
次に本発明にさらに特徴的に用いられる成分であるブロック共重合体について説明する。
【0040】
本発明に用いることができるブロック共重合体として、具体的な例として以下を挙げることができる。即ち、アクリル系、メタクリル系ブロック共重合体、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロック共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロック共重合体等である。そして、従来から知られているブロック共重合体を用いることもできる。本発明において、ブロック共重合体はAB、ABA、ABD等のブロック形態がより好ましい。A、B、Dはそれぞれ異なるブロックセグメントを示す。本発明に用いられるブロック共重合体は両親媒性であることが好ましい。具体的に好ましい形としては、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントからなるABジブロック共重合体を挙げることができる。また、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントとさらに別のセグメントを有するABCトリブロック共重合体が好ましく用いられる。ABCトリブロックの場合、Aが疎水セグメント、Bが非イオン性の親水セグメント、Cが有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントである形が好ましく用いられ、内包状態の安定化の意味でも好ましい。例えば前述したABCトリブロック共重合体を使用して、色材と、溶媒として水を使用して分散液を調製すると、色材をABCブロック共重合体が形成するミセル中に内包させることが可能であり、そのように色材内包型のインク組成物を形成することも可能となる。また、その分散組成物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものとすることも可能である。さらにはその分散状態を極めて安定なものとすることも可能である。これらの処理をマイクロリアクターを利用して行うと色材物質分散物の粒子の粒径も非常に揃い均一性がさらに向上する。
【0041】
本発明では両親媒性のブロック共重合体が使用される。例えば、下記一般式(1)の繰り返し単位構造から、疎水性のブロックセグメントと親水性のブロックセグメントを選択、合成することにより得ることができる。
【0042】
【化1】

【0043】
[式中、R1は炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、または−(CH(R2)−CH(R3)−O)l−R4もしくは−(CH2m−(O)n−R4から選ばれる。l、mはそれぞれ独立に1から12の整数から選ばれ、nは0または1である。またR2、R3はそれぞれ独立にHもしくはCH3である。R4はH、炭素数1から6までの直鎖、分岐または環状のアルキル基、Ph、Pyr、Ph−Ph、Ph−Pyr、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、CH2COOR5からなり、R4が水素原子以外である場合、炭素原子上の水素原子は、炭素数1から4の直鎖または分岐のアルキル基またはF、Cl、Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R5はHまたは炭素数1から5のアルキル基である。]
【0044】
本発明で、−Phはフェニル基、−Pyrはピリジル基、−Ph−Phはビフェニル基、および−Ph−Pyrはピリジルフェニル基を表す。ピリジル基、ビフェニル基およびピリジルフェニル基については、可能な位置異性体のいずれのものであってもよい。
【0045】
本発明で用いられるブロック共重合体の分子量分布=Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.0以下であることが好ましい。更に好ましくは1.6以下であり、更に好ましくは1.3以下である。さらに好ましくは1.2以下である。本発明で用いられるブロックポリマーの数平均分子量Mnは1000〜30万であるが好ましい。本発明で用いられるブロックポリマーの数平均分子量Mnが1000〜30万であると、所定の機能を奏する物質を溶媒中において良好に分散できる。
【0046】
また、分散安定性向上、包接性向上のためにはブロック共重合体の分子運動性がよりフレキシブルであることが色材物質表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているため好ましい。さらには後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。特にインクとして使用した場合、被記録媒体上でブロック共重合体の被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このブロック共重合体の被覆層は内包された色材の酸化や光劣化を抑制し耐環境性を向上することが可能になる。このためにはブロックポリマーの主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、ガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。
【0047】
また本発明においては色材物質として色材が好ましく用いられるためそれらとより親和性を持って分散の安定性を向上できるという意味において、疎水セグメントには芳香族構造好ましくはフェニル、フェニレン等の構造が使用されることが好ましい。また、内包状態の安定化のためにコア部の高分子すなわち疎水性セグメント部については一定以上の分子量を持っていることが好ましく、少なくとも数平均分子量として7000以上好ましくは10000以上であり、より好ましくは12000以上である。
【0048】
このようにブロック共重合体が両親媒性であることにより、水性または油性の両溶媒に対しても分散が行われる。
このことはマイクロリアクターでブロック共重合体にて色材物質を分散させる際に、色材物質側とブロック共重合体側の溶媒選択性が広げられ、効率の良い分散が実現できる。
【0049】
本発明ではイオン性ユニットを有するブロック共重合体が好ましく用いられる。イオン性ユニットによって分散体同士の凝集を緩和することができる。またイオン性ユニットを有するブロック共重合体とブロック共重合体を混合させる場合には、pHが高くても塩析を起こしにくく分散物の粒径が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0050】
本発明では、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロック共重合体が好ましく用いられる。特に好ましくはポリビニルエーテル構造を含むブロック共重合体である。
また、ポリアルケニルエーテル構造を含むブロック共重合体の構造は、ビニルエーテルと他のポリマーからなる共重合体であってもよい。
【0051】
好ましく用いられるポリビニルエーテル構造を含むブロックポリマーは、上記の一般式(1)で表される繰り返し単位構造が持つことが好ましい。
次に、ブロックポリマーのポリビニルエーテル構造の繰り返し単位構造として、ビニルエーテルモノマーの構造の例をあげるが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されない。
【0052】
なお、式中、Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基を表す。
【0053】
【化2】

【0054】
以上説明した分散安定性を良好に確保する意味で、使用されるブロック共重合体は、ガラス転移点が低く分子運動性の高いポリビニルエーテル繰り返し単位構造を有する共重合体が非常に好ましい。
【0055】
以下に、これらのビニルエーテルモノマーからなる、ポリビニルエーテルの構造を例示するが、本発明に用いられるポリマーは、これらに限定されない。
【0056】
【化3】

【0057】
以上のポリビニルエーテルにおいて、繰り返し単位数におけるu、vがそれぞれ独立に1以上10,000以下であることが好ましく、またその合計(u+v)が10以上20,000以下であることがより好ましい。
【0058】
またポリビニルエーテル系共重合体はカチオンリビング重合法により分子量分散をはじめとした分子量制御が高精度に行える点から、より安定な高分子ミセルを形成できる点でも好ましく用いられる。
【0059】
本発明の色材物質分散物は、ブロック共重合体が色材物質を内包していることが特徴である。内包状態は、例えばブロック共重合体が形成する水中でのミセルに、色材を水に不溶の有機溶媒中に溶解させた溶液を混合させ、そののち該有機溶媒を留去することにより形成することが出来る。そのほかに有機溶剤中にポリマーと色材を共に溶解させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより包接状態を形成することにより形成することもできる。それらの方法で残存する有機溶媒を留去することも可能である。さらには例えばブロックポリマーが形成する水中でのミセルに水に不溶の有機溶媒中に顔料を分散させたものを混合することによっても行うことが出来る。
【0060】
本発明のブロック共重合体に内包される色材物質は、色材物質分散物の重量に対して、0.01〜90重量%が好ましい。色材物質の量が0.01〜90重量%の範囲であると十分な機能が得られ、分散性が良好である。更に好ましい範囲としては0.1重量%から80重量%、更に好ましくは0.3重量%から70重量%の範囲である。
【0061】
また、本発明で例えば、色材物質分散物を顔料インクとして使用する場合に使用される色材物質のそれぞれの使用割合は任意であるが、使用されるそれぞれの色材物質は少なくとも色材物質全体の0.1wt%以上、好ましくは1wt%以上である。マイクロリアクターでブロック共重合体にて色材物質を分散させる際には上記濃度、割合で行うことが好ましい。
【0062】
このように色材を内包させる上では、ブロック共重合体を形成する両親媒性の共重合体が安定な高分子ミセル形成能を持つという点から、良好な内包状態すなわち良好な分散安定性を現出する。また、均一なミセル形成を行える点でもブロック共重合体が好ましい。これらの処理をマイクロリアクターを利用して行うとより均一なミセル形成が実現でき、大きさの揃った色材物質分散物を得ることができる。
【0063】
また、本発明の色材物質分散物の形状は粒子であるのが好ましい。その粒子の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。特に色材物質として色材を用いるとき、粒子の粒径が小さい場合、色合いが良好な組成物を実現することができる。本発明の色材物質分散組成物をインク組成物に適用した場合、色材分散インクの分散安定性、着色力、さらに色の鮮やかさには分散粒子の粒径及び粒径の均一さが大きく影響を及ぼす。すなわち溶媒中に分散した粒子の粒径が非常に大きいと粒子間で凝集を起こしてしまい安定に分散することが出来なくなる場合がある。また粒径と着色力は反比例の関係にあることから(Annalen der Physik、25巻、377頁、1908年)、粒径が大きすぎると着色力が低下してしまうことがある。このため本発明においては、粒子の平均粒径は前述した通り、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。粒径の均一さの指標としては一般的に、Gulariらが示した分散度指数が用いられる(The Journal of Chemical Physics、70巻、3965頁、1979年)。分散度指数は好ましくは、0.3以下、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。分散度指数は小さいほど粒径分布が狭くなる。
【0064】
本発明の色材物質分散物は好ましくは水性溶媒に分散する。
水性溶媒の例としては、例えば、以下を挙げることができる。即ち、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類である。また、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類である。また、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等である。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。水のpHに関しても全ての範囲で使用可能であるが、好ましくはpHは1から14の間である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
本実施例では、図2に示す3液混合用のマイクロリアクター1を利用できる。具体的には第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が混合後、第三の流路4から導入された流体3と混合できればよい。第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は30μmであり深さは15μmである。また第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2とが混合後、第三の流路4から導入された流体3とが接触し混合される流路の幅は30μmであり深さは15μmである。また図6のように2液混合用のマイクロリアクターを連結してもよい。
【0066】
本実施例では色材物質として顔料の脂溶性染料のオイルイエロー(オリエント化学製)を用いる。
脂溶性染料オイルイエロー(オリエント化学製)7重量部をテトラヒドロフラン25重量部に溶解した溶液(流体1)を調製する。ブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに用いる。2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメント用いる。そして、共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体であるトリブロック共重合体のCブロックのエチル安息香酸の脱保護を行ったものを用いる。
【0067】
このトリブロック共重合体10重量部とテトラヒドロフラン25重量部に溶解した溶液(流体2)を調製する。流体1を第一の流路2から2.5μl/minで導入し、第二の流路3から流体2を2.5μl/minで導入する。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。この流体1と流体2の混合液に第三の流路4から0.01mol/lの水酸化カリウム水溶液(流体3)を700重量部5μl/minで導入する。色材物質はトリブロック共重合体での内包が瞬時に進行し、多数のミセルが生成し、均一で小さなミセル形成がなされ、平均粒径は97nmであった。分散度指数は0.098であった。放置しても析出物は無く、分散は安定になる。この脂溶性染料を色材物質として分散された分散物をインクジェット用インクとして用いBJプリンターS530(キヤノン社製)のインクタンクに充填し、普通紙に記録すると文字がきれいに印字でき、耐光性が向上した。
【0068】
比較例1
マイクロリアクターを使わずに反応器としてビーカーを用い、メカニカルスターラーで攪拌処理した以外は、第1実施例と同様な方法で平均粒径が150nm、分散度指数が0.252のインクジェット用インクを調製した。
【0069】
実施例2
本実施例では、図1に示す2液混合用のマイクロリアクター1と実施例1と同様に図2のマイクロリアクター1を利用することができる。
【0070】
本実施例では色材物質として顔料の銅フタロシアニンを用いる。
銅フタロシアニンの粗顔料8重量部に対し濃硫酸120重量部加え溶解したペースト液(流体1)を調製する。図1の2液混合用のマイクロリアクター1を用いる。第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は30μmであり深さは15μmである。流体1を第一の流路2から2.5μl/minで流し、銅フタロシアニンに対して貧溶媒である水(流体2)400重量部を第二の流路3に2.5μl/minで流す。これら二つの流路の一部が互いに接触する。これら2液が層流をなし、銅フタロシアニンの粒子が生成する。反応は瞬時に進行し、多数の核が生じ、それに基づき多数の粒子が成長するため、一次粒径の小さい微粒子が形成される。さらに層流なのでこれら2液は常に同じタイミングで出会うため粒子析出反応は秩序性をもち、生成した粒子の粒径分布は小さくなり平均粒径は50nmであった。
【0071】
次の工程は図2の3液混合用のマイクロリアクターを利用する。
本実施例ではブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。そして、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメントにしたものを用いる。そして、共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体でCブロックのエチル安息香酸を水酸化ナトリウムで脱保護を行ったトリブロック共重合体を用いる。
【0072】
このトリブロック共重合体6重量部をN,N−ジメチルホルムアミド47重量部に溶解し、ブロック共重合体溶液(流体1’)を得る。
生成した銅フタロシアニンの粒子を洗浄し濾収し乾燥させ、この銅フタロシアニンの粒子を6重量部とN,N−ジメチルホルムアミド47重量部をコトブキ技研社製サンドミルUAM−015にて分散し分散液(流体2’)を調製する。トリブロック共重合体溶液(流体1’)を第一の流路2に2.5μl/minで導入し、第二の流路3にサンドミル分散直後の銅フタロシアニンのN,N−ジメチルホルムアミドの分散液(流体2’)を2.5μl/minで導入する。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。この流体1’と流体2’の混合液に第三の流路4から0.01mol/lの水酸化カリウム水溶液(流体3)を150重量部を5μl/minで導入する。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。その分散物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものであり平均粒径が80nmであった。この顔料を色材物質として分散された分散物をインクジェット用インクとして用いBJプリンターS530(キヤノン社製)のインクタンクに充填し、普通紙に記録すると文字がきれいに印字でき、耐光性が向上した。
【0073】
実施例3
本実施例では、実施例1の図1のマイクロリアクター1と、図3のマイクロリアクター1を利用する。図3のマイクロリアクターは第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は30μmであり深さは15μmである。
【0074】
まず、図1のマイクロリアクターを用いて、3,3’−ジクロロベンジデンテトラアゾ水溶液(流体1)を3μl/minで第一の流路2に、濃度約5%のカップリング水溶液(流体2)を3μl/minで第二の流路3に流した。これによりピグメントイエロー12の粒子が合成され、実施例1と同様に粒径が小さく大きさの揃った粒子が得られた。
【0075】
次に、実施例1と同様に、図2のマイクロリアクター1を利用し、ピグメントイエロー12と実施例1と同じトリブロック共重合体を用いる。ピグメントイエロー127重量部をテトラヒドロフラン25重量部に溶解した溶液(流体1)を調製する。トリブロック共重合体10重量部とテトラヒドロフラン25重量部に溶解した溶液(流体2)を調製する。流体1を第一の流路2から2.5μl/minで導入し、第二の流路3から流体2を2.5μl/minで導入する。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。この流体1と流体2の混合液に第三の流路4から0.01mol/lの水酸化カリウム水溶液(流体3)を700重量部導入したところ実施例1と同様な効果が得られた。
【0076】
実施例4
本実施例では、図1に示す2液混合用のマイクロリアクター1と実施例1と同様に図2のマイクロリアクター1を利用することができる。
【0077】
本実施例では色材物質として顔料のキナクリドンを用いる。
キナクリドンの粗顔料8重量部に対しジメチルスルホキシド8重量部加えた分散液に28%の水酸化カリウム―メタノール溶液をキナクリドンが溶解するまで添加した溶液(流体1)を調製する。本実施例ではブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。そして、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメントにした共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体でCブロックのエチル安息香酸を水酸化ナトリウムで脱保護を行ったトリブロック共重合体を用いる。ブロック共重合体を16重量部に対しジメチルスルホキシド8重量部加えた溶液(流体2)を調製する。
【0078】
図2の3液混合用のマイクロリアクターを利用し、流体1を第一の流路2から流し、流体2を第二の流路3に流す。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。この流体1’と流体2’の混合液に第三の流路4から水(流体3)を16重量部を導入する。第三の流路4から水(流体3)これら2液が層流をなし、キナクリドンの粒子が生成する。反応は瞬時に進行し、多数の核が生じ、それに基づき多数の粒子が成長するため、一次粒径の小さい微粒子が形成される。層流なのでこれら2液は常に同じタイミングで出会うため粒子析出反応は秩序性をもつ。また粒子の生成と同時にブロック共重合体で分散される。これも層流なのでこれら2液は常に同じタイミングで出会うため分散も秩序性をもつ。
【0079】
アルカリ性の流体1とブロック共重合体が溶解した流体2は瞬時に混合され、次工程の水と反応させるため、アルカリ性の流体1とブロック共重合体が溶解した流体2を混合した時点では塩析はなかった。生成した粒子の粒径分布は小さくなり平均粒径は50nmであった。分散物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものであり平均粒径が80nmであった。
【0080】
実施例5
本実施例では色材物質として顔料のキナクリドンを用いる。
キナクリドンの粗顔料8重量部に対しジメチルスルホキシド8重量部加えた分散液に28%の水酸化カリウム―メタノール溶液をキナクリドンが溶解するまで添加した溶液(流体1)を調製する。本実施例ではブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。そして、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメントにした共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体でCブロックのエチル安息香酸を水酸化ナトリウムで脱保護を行ったトリブロック共重合体を用いる。ブロック共重合体を16重量部に対しジメチルスルホキシド8重量部加えた溶液(流体2)を調製する。
【0081】
図1の2液混合用のマイクロリアクターを利用し、流体1を第一の流路2から流し、流体2を第二の流路3に流す。これら二つの流路の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合され流出口(不図示)から混合液が流出する。その混合液を水16重量部が入った超音波スターラーに流出口から滴下する。アルカリ性の流体1とブロック共重合体が溶解した流体2は瞬時に混合され、次工程の水と反応させるため、アルカリ性の流体1とブロック共重合体が溶解した流体2を混合した時点では塩析はなかった。生成した粒子の粒径分布は小さくなり平均粒径は55nmであった。分散物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものであり平均粒径が80nmであった。
【0082】
実施例6
本実施例では、図7に示す2液混合用のマイクロリアクター1を利用した。
本実施例では実施例2と同様に色材物質として顔料の銅フタロシアニンを用いる。
【0083】
銅フタロシアニンの粗顔料8重量部に対し濃硫酸120重量部加え溶解したペースト液(流体1)を調製する。図7の2液混合用のマイクロリアクター1は第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は20μmであり深さは90μmであり実施例2で用いたマイクロリアクターに対して流路の断面積は4倍である。本実施例では実施例2に対して4倍量の流体を導入する。
【0084】
流体1を第一の流路2から10μl/minで流し、銅フタロシアニンに対して貧溶媒である水(流体2)400重量部を第二の流路3に10μl/minで流す。これら二つの流路の一部が互いに接触する。これら2液が層流をなし、銅フタロシアニンの粒子が生成する。反応は瞬時に進行し、多数の核が生じ、それに基づき多数の粒子が成長するため、一次粒径の小さい微粒子が形成される。
【0085】
実施例2に比べ流路幅が小さいため、流体1と流体2のそれぞれが混合に必要な拡散距離(流れ方向に対して直角方向)も小さくなり混合時間は実施例2に比べ短かった。さらに層流なのでこれら2液は常に同じタイミングで出会うため粒子析出反応は秩序性をもち、生成した粒子の粒径分布は小さくなり平均粒径は40nmであった。
【0086】
次の工程は図8の3液混合用のマイクロリアクターを利用する。
具体的には第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が混合後、第三の流路4から導入された流体3と混合できればよい。図8の3液混合用のマイクロリアクター1は第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は20μmであり深さは90μmであり実施例2で用いたマイクロリアクターに対して流路の断面積は4倍である。本実施例では実施例2に対して4倍量の流体を導入する。
【0087】
ここで、第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2とが混合後、第三の流路4から導入された流体3とが接触し混合される流路の幅は20μmであり深さは90μmである。ここでは、実施例2で用いたマイクロリアクターに対して流路の断面積は4倍となり、本実施例では実施例2に対して4倍量の流体を導入する。
【0088】
本実施例ではブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。そして、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメントにした共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体でCブロックのエチル安息香酸を水酸化ナトリウムで脱保護を行ったトリブロック共重合体を用いる。
【0089】
このトリブロック共重合体6重量部をN,N−ジメチルホルムアミド47重量部に溶解し、ブロック共重合体溶液(流体1’)を得る。
生成した銅フタロシアニンの粒子を洗浄し濾収し乾燥させ、この銅フタロシアニンの粒子を6重量部とN,N−ジメチルホルムアミド47重量部をコトブキ技研社製サンドミルUAM−015にて分散し分散液(流体2’)を調製する。トリブロック共重合体溶液(流体1’)を第一の流路2に10μl/minで導入し、第二の流路3にサンドミル分散直後の銅フタロシアニンのN,N−ジメチルホルムアミドの分散液(流体2’)を10μl/minで導入する。これら二つの流体の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。
【0090】
この流体1’と流体2’の混合液に第三の流路4から0.01mol/lの水酸化カリウム水溶液(流体3)を150重量部を導入する。これら二つの流体の一部が互いに接触し層流をなし均一に混合される。実施例2に比べ流路幅が小さいため、流体1と流体2のそれぞれが混合に必要な拡散距離(流れ方向に対して直角方向)も小さくなり混合時間は実施例2に比べ短かった。また、拡散速度の小さいブロック共重合体も拡散距離が小さくて速やかに混合されるので分散物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものであり平均粒径が60nmであった。この顔料を色材物質として分散された分散物をインクジェット用インクとして用いBJプリンターS530(キヤノン社製)のインクタンクに充填し、普通紙に記録すると文字がきれいに印字でき、耐光性が向上した。
【0091】
実施例7
本実施例では色材物質として顔料のキナクリドンを用いる。
フラスコに超音波スターラーを取り付け、キナクリドンの粗顔料8重量部に対しジメチルスルホキシド24重量部加えた分散液を投入した。次に28%の水酸化カリウム―メタノール溶液をキナクリドンが溶解するまで添加する。本実施例ではブロック共重合体として、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテルをAセグメントに、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテルをBセグメントに用いる。そして、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをCセグメントにした共重合モル比A/B/C=90/80/14の共重合体でCブロックのエチル安息香酸を水酸化ナトリウムで脱保護を行ったトリブロック共重合体を用いる。
【0092】
このブロック共重合体をフラスコに投入し溶解させた溶液を調製する(流体1)。流体2として水を用いる。図9の2液混合用のマイクロリアクター1を利用し、流体1を第一の流路2から500μl/minで導入し、流体2を第二の流路3に500μl/minで導入する。図9の2液混合用のマイクロリアクター1の第一の流路の流路幅は180μmであり、深さは180μmである。第二の流路の流路幅も180μmであり、深さは180μmである。第一の流路2から導入した流体1と第二の流路3から導入した流体2が接触し混合される流路幅は990μmであり、深さは990μmであり、ここでは乱流支配下で混合がなされる。生成した粒子の粒径分布は小さくなり平均粒径は55nmであった。分散物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものであり平均粒径が60nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、均一且つ微小粒径の色材物質分散物の製造方法を提供することができ、マイクロリアクター構造融通性がきき、幅広い選択肢の中から利用するマイクロリアクターを選択することができ、マイクロリアクターでの長所とされる並列に並べること(numbering−up)によって色材物質分散物のスムーズに量産移行ができるので、インクジェット記録装置用の顔料インク製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図5】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図7】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図8】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【図9】本発明で適用可能なマイクロリアクターの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1 マイクロリアクター
2 第一の流路
3 第二の流路
4 第三の流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を備えたマイクロリアクターの前記流路内で色材物質とブロック共重合体を混合し、前記色材物質と前記ブロック共重合体を含む色材物質の分散物を得ることを特徴とする色材物質分散物の製造方法。
【請求項2】
前記色材物質の合成、沈殿または結晶化を、流路を備えたマイクロリアクターの前記流路中で行なう請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項3】
前記流路の流路幅は、1000μm〜30μmの範囲にある請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項4】
前記混合を、前記色材物質を含む流体と、前記ブロック共重合体を含む流体と、を各々別の流路から混合流路に導入し、これら流体を前記混合流路中で接触させることで行なう請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項5】
前記混合流路中での前記混合は、層流支配下で行なわれる請求項4に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項6】
前記混合流路中での前記混合は、乱流支配下で行なわれる請求項4に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項7】
前記混合流路の流路幅と流路深さとの比(流路深さ/流路幅)は、0.5以上である請求項4に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項8】
前記混合流路の断面積が0.5mm2以上あり、該混合流路に接続された複数の流路の断面積の和と、前記混合流路の断面積との比(流路断面積/混合流路断面積)は、0.01〜0.1の範囲である請求項6に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項9】
前記ブロック共重合体は両親媒性であることを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項10】
前記ブロック共重合体はイオン性ユニットを有することを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項11】
前記ブロック共重合体はポリアルケニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有することを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項12】
前記色材物質をブロック共重合体と混合する工程は、ブロック共重合体で色材物質を内包して色材物質分散物を得ることを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項13】
前記色材物質分散物の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項14】
前記色材物質と前記ブロック共重合体の混合が水性溶媒を含む溶媒中で行われ、前記色材物質と前記ブロック共重合体よりなる色材物質分散物が水性溶媒に分散することを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項15】
前記色材物質をブロック共重合体と混合した後、これにより生成した混合物を更に分散溶媒に混合することを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。
【請求項16】
前記色材物質を前記ブロック共重合体と混合した後、これにより生成した混合物を更に分散溶媒と混合する工程を前記流路中で行うことを特徴とする請求項1に記載の色材物質分散物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−104448(P2006−104448A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234828(P2005−234828)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】