説明

色相に優れた硫黄原子含有透明樹脂の製造方法

【課題】
無色透明性が要求される光学材料分野に好適に使用される光学材料用含硫黄モノマーの製造方法として、色相に優れ、かつ経時劣化の小さな光学材料用含硫黄モノマーを得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】
下記の(1)または(2)の基準を満たす原料を50mol%以上使用することを特徴とする、10mm長のb*値が2.0以下である光学材料用含硫黄モノマーの製造方法。
(1)使用する原料が液体の場合、10mm長のb*値が、0.8以下
(2)使用する原料が固体の場合、その8重量%水溶液を調整して測定した10mm長のb*値が、0.7以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で着色が小く、かつ、経時劣化が小さいことが要求される光学材料分野に好適に使用される光学材料用モノマーの製造方法、および該モノマーを含有する光学材料用重合性組成物、更には、該重合性組成物を使用して製造される光学材料用樹脂およびプラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。
【0003】
プラスチックレンズ用樹脂には、さらなる高性能化が要求されてきており、高屈折率化、高アッベ数化、低比重化、高耐熱性化等が求められてきた。これまでにも様々なレンズ用樹脂素材が開発され使用されている。
【0004】
その中でも、ポリウレタン系樹脂に関する提案が盛んに行われてきた。(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0005】
これらのポリチオールとポリイソ(チオ)シアナート化合物等とを反応させて得られる樹脂は、高屈折率低分散であり、衝撃性、染色性、加工性等に優れたプラスチックレンズに最適な樹脂の一つであり広く世の中に普及している。
【0006】
さらには、ポリウレタン系樹脂以外にも、不飽和結合を有する化合物を重合させて得られる樹脂やエピスルフィド化合物を重合させて得られる樹脂など幅広く提案されている(特許文献4、特許文献5、及び特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平2−270859号公報
【特許文献2】特開平5−208950号公報、
【特許文献3】特開平7−252207号公報
【特許文献4】特開平9−124592号公報
【特許文献5】特開平9−132563号公報、
【特許文献6】特開平11−322930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの発明によって得られる樹脂は、その用途が光学材料の場合には、樹脂の色相は着色が小さく透明であることが求められている。樹脂の色相を改善させるにはさまざまな方策があるが、一般に樹脂の色相は重合するモノマーの色相によって影響を受けやすく、着色が小さく透明な樹脂を得るには重合するモノマーの色相をできる限り抑えておいた方がよい場合が多い。そのため、透明性が高く着色の少ないモノマーが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、モノマーを製造する際に使用する原料の色相と製造されたモノマーの色相、並びにそのモノマーを使用して重合した樹脂の色相との間に、密接な相関があることを突き止めた。すなわち、色相が良好な原料を使用することにより、色相が良好なモノマーが得られ、これを重合すると色相が良好な樹脂が得られる。更に驚くべきことに、通常、樹脂は光などの外的要因のために経時的に色相が劣化していくが、本発明の樹脂は経時的な色相劣化も従来品と比較し大きく改善されていた。
【0009】
本発明者らは、更に鋭意検討を続けた結果、モノマーを製造する際に色相が一定値以下である原料を一定割合以上使用すれば、上記問題は解決され色相に優れた光学材料が得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、
[1] 下記の(1)または(2)の基準を満たす原料を、全原料の総量を基準として50mol%以上使用することを特徴とする、10mm長のb*値が2.0以下である光学材料用含硫黄モノマーの製造方法に関する。
(1)使用する原料が液体の場合、10mm長のb*値が、0.8以下
(2)使用する原料が固体の場合、その8重量%水溶液を調整して測定した10mm長のb*値が、0.7以下
以下、[2]から[5]は、それぞれ本発明の好ましい実施態様の1つである。
[2] 上記[1]に方法で製造された、光学材料用含硫黄モノマー。
[3] 上記[2]に記載の光学材料用含硫黄モノマーを含有する、光学材料用重合性組成物。
[4] 上記[3]に記載の光学材料用重合性組成物を硬化させて得られる、9mm厚の樹脂について測定したYI値が15.0以下の光学材料用樹脂。
[5] 上記[4]に記載の光学材料用樹脂からなるプラスチックレンズ。
【0011】
ここで、「からなる」とは、当該プラスチックレンズの一部が当該光学材料用樹脂で構成されている場合、および、当該プラスチックレンズの全部が当該光学材料用樹脂で構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、眼鏡レンズ材料等の光学材料分野において、色相に優れ、かつ、色相の経時安定性に優れた樹脂およびプラスチックレンズを提供し、当該分野の発展に貢献する。
【0013】
通常、モノマーの色相を改善するには、製造過程に精製工程を入れる方法があるが、本発明の効果は、特にモノマー製造過程において、蒸留、再結晶、抽出、洗浄などの精製工程がない場合や少ない場合に顕著である。精製前のモノマーの色相が良好であれば、それだけ精製の負荷が大きく低減でき、設備、コスト等の点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明において、「原料」とは、目的とする光学材料用含硫黄モノマーを製造する際に使用する原料であって、当該光学材料用含硫黄モノマーを構成する原子の全部または一部を供給するものであり、単独で、または、他の化合物と組み合わせて、光学材料用含硫黄モノマーを製造することができるものであれば良く、それ以外の制限は無い。
【0016】
例えば、水硫化ソーダ、硫化ソーダ、チオシアン酸塩、チオ尿素、チオ酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2−メルカプトエタノール等のチア化剤、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類、ペンタエリスリトール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のアルコール類、テトラメトキシエタン、テトラメトキシプロパン、テトラエトキシエタン、テトラエトキシプロパン等のテトラアルコキシアルキル類、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等のオルトカルボン酸エステル類、等が挙げられる。ただし、これらに限定されるわけではない。
【0017】
本発明におけるYI値とは色相評価におけるイエローインデックスのことであり、また、b*値とは「L、a*、b*表色系」のb*値のことであり、いずれも色彩色差計にて測定できる。
【0018】
本発明における「10mm長」とは、液状物の中に光が透過するときの光の透過距離が10mmであることを表し、通常は内部の厚みが10mmの石英製セル中に液状物を注入し、「10mm長」を実現する。原料もしくは光学材料用モノマーのb*値の測定に際し、これらが液体である場合はセル中にそのまま注入して測定し、これらが固体である場合は8%水溶液にした後に注入し測定する。
【0019】
本発明における「光学材料用含硫黄モノマー」とは、硫黄原子を有し、単独で、または、他の化合物と組み合わせて重合することが可能な化合物であって、得られた重合体が透明であり、重合する際の型(モールド等)を変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる化合物である。得られた成形体は、眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)等の光学用樹脂としての各種の用途に使用することが可能であり、また、好適である。
【0020】
本発明におけるの光学材料用含硫黄モノマーは上記の条件を満たす含硫黄化合物であれば特に制限はない。含硫黄化合物は分子内に硫黄原子を有する化合物を指し、例えば、スルフィド結合、ジスルフィド結合、メルカプト基、チオケトン基等を有する化合物である。 ただし、これらの基、結合に限定されるわけではない。更に具体的には、ポリチオール化合物、ヒドロキシ基を有するメルカプト化合物、分子内に硫黄を含有するヒドロキシ化合物、エピスルフィド基を有する化合物、分子内に硫黄を含有するエポキシ化合物、チエタニル基を有する化合物、分子内に硫黄を含有し、かつ(メタ)アクリル基等の不飽和結合を有する化合物等が挙げられる。
【0021】
好ましい光学材料用硫黄含有モノマーの具体例としては、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物、
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、
1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物、
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、
2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子とエステル結合を含有する脂肪族ポリチオール化合物、3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物(ポリチオール化合物に限らない。)、
1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3−チアペンタン、1,1,6,6−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3,4−ジチアヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、2−(4,5−ジメルカプト−2−チアペンチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,5−ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−プロパンジチオール、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチルチオ−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、更にこれらのオリゴマー等のジチオアセタールもしくはジチオケタール骨格を有する化合物(ポリチオールに限らない。)、
トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2,4−ジチアペンタン、ビス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル](メルカプトメチルチオ)メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル]メタン、2,4,6−トリス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロパン、ビス(メルカプトメチル)メチルチオ−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、トリス[(4−メルカプトメチル−2,5−ジチアシクロヘキシル−1−イル)メチルチオ]メタン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2−メルカプトエチルチオ−4−メルカプトメチル−1,3−ジチアシクロペンタン、2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(1,3−ジメルカプト−2−プロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、トリス[2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアエチル]メタン、トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−3−チアブチル]メタン、2,4,6−トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、テトラキス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン等、さらにこれらのオリゴマー等のオルトカルボン酸トリチオエステル骨格を有する化合物(ポリチオール化合物に限らない。)、
3,3’−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、2,2’−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,7−ジ(メルカプトメチル)−1,4,5,9−テトラチアスピロ[4,4]ノナン、3,9−ジメルカプト−1,5,7,11−テトラチアスピロ[5,5]ウンデカン、更にこれらのオリゴマー等オルト炭酸テトラチオエステル骨格を有する化合物(ポリチオール化合物に限らない。)等が挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。
本発明が適用可能な、光学材料用含硫黄モノマーの製造方法の例を以下に記載する。ただし、これらの製造方法に限定されるわけではない。
例えば1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンの場合、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のグリセリン誘導体やエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンと、2−メルカプトエタノールをアルカリ存在下、冷却又は加熱しながら反応させ、1,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−プロパン−2−オール(以下、トリオールともいう)を得、さらに、鉱酸中、チオ尿素を反応させた後、アルカリ加水分解する方法でチオール化する。その際、1,2位で転位がおこり、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンとなる。
また、別の方法として2,3−ジブロモ−1−プロパノール等のグリセリン誘導体と、2−メルカプトエタノールより、同様の方法で2,3−ビス−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−プロパン−1−オールを得、それを鉱酸中でチオ尿素と反応させた後、アルカリ加水分解する方法でチオール化しても合成される。
この際、例えば2−メルカプトエタノールと塩基を水あるいはメタノール、エタノール等の低級アルコール溶媒中に加えた後、エピクロロヒドリンを滴下する。この時、反応温度0℃〜120℃で行うのが好ましい。
2−メルカプトエタノールの使用量はエピクロロヒドリンに対して2当量以上必要であり、2〜3当量が好ましい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミンが挙げられるが、反応性と経済性の面から水酸化ナトリウムが最も好ましく、使用量はエピクロロヒドリンに対して1当量以上であるが、2−メルカプトエタノールの使用モル数以下であることが好ましい。
次に、トリオールに3当量以上、好ましくは3〜6当量のチオ尿素を加え、好ましくは3〜12当量の鉱酸水溶液中において室温から還流温度の範囲で反応させる。鉱酸としては塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等が使用出来るが、十分な反応速度が得られ、しかも製品の着色を制御することにおいて塩酸が好ましい。
引き続き行う加水分解反応は、上記の反応液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物あるいはアンモニア、トリエチルアミン等のアミン類を3当量以上、好ましくは3〜12当量加えアルカリ性とし、室温から還流温度の範囲で行う。塩基を加える時点における温度は0〜50℃とするのが好ましい。50℃以下とすると、着色の抑制が容易である。
こうして生成する1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンはトルエン等の有機溶媒による抽出後、酸洗浄、水洗、濃縮、濾過という一般的手法により精製することが出来、必要により蒸留精製も可能である。なお、本発明は大気下でも実施出来るが、全体を窒素下で行うのが色相の面から好ましい。
【0022】
本発明において、光学材料用含硫黄モノマーを製造する際に使用する原料の色相は、該原料が液体である場合は10mm長のb*値が0.8以下であり、また、該原料が固体である場合は、その8重量%水溶液を調製して測定した10mm長のb*値が0.7以下である。
【0023】
該原料が液体である場合、そのb*値が0.8以下なので、本発明で得られる光学材料用含硫黄モノマーの色相が良好である。ここで、より着色が少なく色相に優れた光学材料用含硫黄モノマーを得るためには、10mm長のb*値が0.7以下であるものが好ましく、0.6以下であるものがより好ましい。
【0024】
該原料が固体である場合、その8重量%水溶液を調製して測定した10mm長のb*値が0.7以下なので、本発明で得られた光学材料用含硫黄モノマーの色相が良好である。ここで、より着色が少なく色相に優れた光学材料用含硫黄モノマーを得るためには、b*値が0.6以下であるものが好ましく、0.5以下であるものがより好ましい。
【0025】
上記条件を満たす原料の、全原料中に占める使用割合は、50mol%以上、好ましくは80%mol以上である。使用割合が50mol%以上なので、色相に優れたモノマーが得られる。
【0026】
本発明で得られた光学材料用含硫黄モノマーは、10mm長のb*値が2.0以下のものである。このb*値が2.0以下なので、本発明の好ましい実施態様である光学材料用樹脂の色相が良好である。ここで、より着色の少なく色相に優れた光学材料用樹脂を得るためには、10mm長のb*値が1.6以下であるものが好ましく、b*値が1.3以下であるものがより好ましい。
【0027】
本発明の好ましい実施態様である光学材料用重合性組成物において、本発明における光学材料用含硫黄モノマー以外の成分には特に制限はなく、本発明の目的を損なわない範囲内において、以下に詳述する成分をはじめとする各種成分を適宜使用することができる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様である光学材料用重合性組成物中の光学材料用含硫黄モノマーの含有量は、組成物に含まれる光学材料用含硫黄モノマー以外の化合物の官能基数や分子量等により変わってくるため、一概には言えないが、通常、1〜80重量%、好ましくは、1〜60重量%である。
【0029】
本発明の好ましい実施態様である光学材料用重合性組成物の一部がポリチオールの場合には、ポリチオール以外にポリイソ(チオ)シアナート化合物、重合性不飽和基を有する化合物、エピスルフィド基を有する化合物、およびエポキシ基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含有する重合性組成物であることが好ましい。これらのポリチオール以外の化合物もまた、本発明の製造方法で得られた光学材料用含硫黄モノマーであってもよい。
【0030】
ここで用いることができるポリイソ(チオ)シアナート化合物は、分子内に2個以上のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物である。分子内に2個以上のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物の好ましいものの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチリレントリイソシアナート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の脂肪族ポリイソシアナート、
イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアナート、
フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート、ビベンジル−4,4−ジイソシアナート、ビス (イソシアナトフェニル)エチレン、3,3−ジメトキシビフェニル−4,4−ジイソシアナート、フェニルイソシアナトエチルイソシアナート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアナート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、
ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン等の含硫脂肪族イソシアナート、
ジフェニルスルフィド−2,4−ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアナート、3,3−ジメトキシ−4,4−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3−ジイソシアナートなどの芳香族スルフィド系イソシアナート、
ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアナート、2,2−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6−ジイソシアナート、4,4−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアナート、4,4−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3−ジイソシアナートなどの芳香族ジスルフィド系イソシアナート、2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン等の含硫複素環化合物、
その他にも、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオランなどが挙げられ、また例示化合物中のイソシアナト基の一部または全部をイソチオシアナト基に変換した化合物も挙げられるが、例示化合物に限定されるものではない。また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0031】
これら化合物の内、本発明の光学物性の要求を加味すれば、より好ましいものとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオラン、2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、トリレンジイソシアナートからなる化合物群から少なくとも1種選択された化合物であるが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0032】
さらに、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。これらの化合物は単独でも2種以上を混合してもよい。
【0033】
本発明における光学材料用含硫黄モノマーがポリチオール化合物である場合には、イソ(チオ)シアナート化合物を含有する重合性組成物中のポリチオールの含有量は、ポリチオール中のSH基とイソ(チオ)シアナート化合物中のNCO(NCS)基のモル割合で、通常はSH/NCO(NCS)=0.5〜3.0の範囲、好ましくは、SH/NCO(NCS)=0.7〜2.0の範囲、さらに好ましくはSH/NCO(NCS)=0.8〜1.5の範囲である。
【0034】
さらに、ここで用いることのできる重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられるが、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0035】
必要とする物性を満足することが可能である範囲であれば、これら反応性不飽和基を有する化合物はいずれも単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0036】
本発明における光学材料用含硫黄モノマーがポリチオールの場合には、反応性不飽和基を有する化合物を含有する重合性組成物中のポリチオールの含有量は、通常、1〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%である。
【0037】
またエピスルフィド基を有する化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1−(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族のβ−エピチオプロピルチオ化合物、及び、
1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(β−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族のβ−エピチオプロピルチオ化合物、及び、
1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族β−エピチオプロピルチオ化合物等を挙げることができるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない(特に、β−エピチオプロピルチオ基を有する化合物のみに限定されるものではない。)。これら例示化合物のうち、好ましい化合物としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及びビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、より好ましい化合物としてはビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドである。
【0038】
また、上記のエピスルフィド化合物のエピチオプロピルチオ基をエピチオプロピルオキシ基に置き変えた化合物も挙げることができる。また、上記の例示化合物のみに限定されるものではなく、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0039】
本発明における光学材料用含硫黄モノマーがポリチオールである場合には、エピスルフィド基を有する化合物を含有する重合性組成物中のポリチオールの含有量は、通常、1〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%である。
【0040】
また、エポキシ基を有する化合物としては、例えば、上記のエピスルフィド化合物のエピスルフィド基をエポキシ基に置き変えた化合物を挙げることができる。さらに例示化合物のみに限定されるものではなく、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0041】
本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物に用いる硬化触媒としては3級アミン類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0042】
硬化触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、β−ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、2,2’−ビピリジル、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の3級アミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミ、フッ化アルミ、トリフェニルアルミ、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸等のカチオン重合触媒が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0043】
これら例示化合物のうち、好ましいものはジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機錫化合物である。
【0044】
上記硬化触媒は単独でも2種以上を混合して用いても良いが、活性の異なる2種類以上の硬化触媒を併用すると得られる樹脂の色相や光学ひずみ(脈理)が良好となる場合がある。
【0045】
硬化触媒の添加量は、本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物を20℃で放置したとき、その粘度を100cps以下に保持できる時間が4〜6時間となるように添加量を調整するのが好ましい。この保持できる時間が4時間以上であると、ポットライフが短く取扱いが困難になったり、重合が暴走し硬化樹脂の色相を悪化させYI値が大きくなってしまう等の現象を抑制できる。このようにして硬化触媒の添加量を決定すれば、重合性は良好で、調合時のポットライフや得られる樹脂の透明性、光学物性、又は耐候性も良好となる。
【0046】
本発明の好ましい態様である光学材料用樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に、硬化触媒を含有する本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物を注入する。この時、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等の処理を行ってもよい。
【0047】
次いで、オーブン中または水中等の加熱可能装置内で加熱することにより硬化させ、樹脂が得られる。
【0048】
本発明の好ましい態様である光学材料用樹脂を得るための硬化触媒等の種類や量、モノマーの種類や割合は重合する組成物の構成により異なり、よって、一概に限定する事はできないが、上述の条件が好ましい場合が多い。
【0049】
成型モールドに注入された本発明の組成物の加熱重合条件は、本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物の組成、硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、およそ−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。ここで、加熱重合温度が高すぎると樹脂の色相を悪化させYI値が大きくなってしまう。従って、色相の観点から言えば、硬化温度は好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、最も好ましくは120℃以下である。
【0050】
加熱重合条件を更に詳述すると、10℃〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温し、1〜80時間で重合させると好ましい。このとき、樹脂の色相の観点から、より好ましい温度範囲は10℃〜130℃、最も好ましい温度範囲は10℃〜120℃である。
【0051】
更には、本発明の光学材料用重合性組成物は、紫外線の照射により重合時間の短縮を図ることが可能な場合がある。この際には、ラジカル重合触媒等の硬化触媒が必要となる場合がある。
【0052】
本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物を樹脂化する際には、目的に応じて、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、外部または内部離型剤、密着性向上剤などの種々の物質を添加してもよい。
【0053】
また、取り出した樹脂については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。アニール温度は通常50℃〜150℃の間で行われるが、樹脂の色相の観点から、90℃〜130℃で行うと好ましい。100℃〜120℃であればより好ましい。
【0054】
本発明の好ましい態様である光学材料用重合性組成物を硬化してなる光学材料用樹脂は、色相に優れた樹脂である。本発明の好ましい態様である光学材料用樹脂は、注型重合時に種々のモールドを用いることで様々な形状の成形体として得ることができ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ用導光板、液晶ディスプレイ用拡散板等の光学材料用樹脂として使用することができる。特に、メガネレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード等の光学材料、光学素子として好適である。
【0055】
さらに、本発明の好ましい態様である光学材料用樹脂を用いたプラスチックレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0056】
尚、b*値、YI値は以下の試験法により測定した。
【0057】
ミノルタ社製の色彩色差計(CR−200、CT−210)を用いて、b*値、YI値を測定した。b*値を測定する際、測定試料が固体である場合は8重量%水溶液に調整した後に、測定試料が液体である場合はそのまま、厚さが10mmのセルに入れて測定した。また、光学材料用樹脂のYI値は、厚さ9mm、φ75mmの円形平板を注型重合により作製した後に測定した。
【0058】
また、樹脂の色相の経時劣化評価は光劣化促進試験により行い、セリック社製の人工太陽照明灯(XC−100)を20cmの距離から100時間照射したときのYI値を測定し、照射前のYI値と比較することにより判定した。

[実施例1]
b*値0.51の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.58のチオ尿素を用いて、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(以下、「ポリチオール化合物」とも言う。)の製造を行った。製造方法は、特開平2−270859号公報の実施例2に記載の方法で行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.45であった。
【0059】
このポリチオール化合物41.5gとm−キシリレンジイソシアナート44.9gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを200ppm(wt/wt)、内部離型剤として酸性リン酸エステル(商品名ZelecUN)を1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.7であった。
【0060】
また、この樹脂に人工太陽照明灯を100時間照射したときのYI値は7.1であり、照射前のYI値と比較したYI値の増分ΔYI=2.4であった。

[実施例2]
b*値0.74の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.66のチオ尿素を用いて、実施例1と同様の方法で1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを製造した。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値1.46であった。
【0061】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例1と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値9.6であった。
【0062】

[実施例3]
b*値0.74の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.58のチオ尿素を用いて、実施例1と同様の方法で1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを製造した。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値1.02であった。
【0063】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例1と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値7.2であった。

[実施例4]
b*値0.08の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.48のチオ尿素を用いて、実施例1と同様の方法で1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを製造した。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.38であった。
【0064】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例1と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値3.8であった。
【0065】
また、この樹脂に実施例1と同様に人工太陽照明灯を100時間照射したときのYI値は5.8であり、ΔYI=2.0であった。

[実施例5]
b*値0.60のチオグリセロール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.48のチオ尿素を用いて、2−(2−メルカプト−1−メルカプトメチル−エチルスルファニル)−プロパン−1,3−ジチオール(以下、「ポリチオール化合物」とも言う。)の製造を行った。製造方法は、特開平7−252207号公報の実施例2に記載の方法で行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.51であった。
【0066】
このポリチオール化合物50.0gとm−キシリレンジイソシアナート76.3gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.3であった。

[実施例6]
b*値0.60のチオグリセロール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.66のチオ尿素を用いて、実施例5と同様の方法で2−(2−メルカプト−1−メルカプトメチル−エチルスルファニル)−プロパン−1,3−ジチオールの製造を行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.80であった。
【0067】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例5と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値6.6であった。

[実施例7]
b*値0.65のチオグリセロール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8wt%水溶液のb*値が0.66のチオ尿素を用いて、実施例5と同様の方法で2−(2−メルカプト−1−メルカプトメチル−エチルスルファニル)−プロパン−1,3−ジチオールの製造を行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.91であった。
【0068】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例5と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値7.0であった。

[実施例8]
b*値0.08の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、8wt%水溶液のb*値が0.45のNaS、および、8wt%水溶液のb*値が0.48のチオ尿素を用いて、式(A)〜(C)で表される3種のポリチオール化合物の混合物(以下、「ポリチオール化合物」とも言う。)の製造を行った。製造方法は、特開平7−252207号公報の実施例1に記載の方法で行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.82であった。
【0069】
【化1】

【0070】
【化2】

【0071】
【化3】


このポリチオール化合物50.0gとm−キシリレンジイソシアナート51.3gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.2であった。

[実施例9]
b*値0.51の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、8wt%水溶液のb*値が0.45のNaS、および、8wt%水溶液のb*値が0.48のチオ尿素を用いて、実施例8と同様の方法で、式(A)〜(C)で表される3種のポリチオール化合物の混合物を製造した。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値1.03であった。
【0072】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例8と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.5であった。

[実施例10]
b*値0.08の2−メルカプトエタノール、b*値0.53の1,2,3,4−ブタンジエンジエポキシド、および、8wt%水溶液のb*値が0.48のチオ尿素を用いて、2,3−ビス−(2−メルカプト−エチルスルファニル)−ブタン−1,4−ジチオール(以下、「ポリチオール化合物」とも言う。)の製造を行った。製造方法は、特開平7−252207号公報の実施例3に記載の方法で行った。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値0.82であった。
【0073】
このポリチオール化合物50.0gとm−キシリレンジイソシアナート61.4gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.4であった。

[実施例11]
b*値0.34のβ−メルカプトプロピオン酸を424g、b*値0.32のペンタエリスリトールを136g、p−トルエンスルホン酸一水和物を4.0g、および、トルエンを500g、それぞれフラスコ中に装入後、窒素下で加熱攪拌してリフラックスさせ、留出液から水を抜きながら脱水縮合させた。8時間後、室温まで冷却した。この反応マスに1wt%水酸化ナトリウム水溶液を85gゆっくり加えながら攪拌した。水層を排出してトルエン層を得た後、ここに水を200g加えて攪拌したのち水層を排出した。次いで、このトルエン層を加熱攪拌してトルエンおよび低沸成分を留去させ、式(D)で表されるポリチオール化合物475gを得た。このポリチオール化合物のb*値は0.47であった。
【0074】
【化4】

このポリチオール化合物50.0gとm−キシリレンジイソシアナート38.4gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値3.5であった。

[実施例12]
b*値0.75のβ−メルカプトプロピオン酸、および、b*値0.32のペンタエリスリトールを用いて、実施例11と同様の方法で、式(D)で表されるポリチオール化合物を製造した。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値1.01であった。
【0075】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例11と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値4.4であった。

[実施例13]
実施例4で製造したb*値0.38のポリチオール化合物50gとヘキサメチレンジイソシアナート34.4gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを200ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値3.6であった。

[実施例14]
実施例4で製造したb*値0.38のポリチオール化合物50gとイソホロンジイソシアナート45.5gをよく混合し、次いで、触媒としてジブチル錫ジクロライドを300ppm(wt/wt)、内部離型剤としてZelecUNを1000ppm(wt/wt)添加し混合溶解した後、孔径3μmのメンブランフィルターでろ過を行い、次いで600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、平板のガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温して24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値3.2であった。

[比較例1]
b*値1.22の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8%水溶液のb*値が1.53のチオ尿素を用いて、実施例1と同様の方法で1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを製造した。本発明に規定する色相の条件を満たすモノマーの使用割合は、14.6mol%であった。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値3.12であった。
【0076】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例1と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値17.3であった。
【0077】
また、この樹脂に実施例1と同様に人工太陽照明灯を100時間照射したときのYI値は27.8であり、ΔYI=10.5であった。

[比較例2]
b*値0.74の2−メルカプトエタノール、b*値0.50のエピクロロヒドリン、および、8%水溶液のb*値が1.53のチオ尿素を用いて、実施例1と同様の方法で1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを製造した。本発明に規定する色相の条件を満たすモノマーの使用割合は、45.2mol%であった。得られたポリチオール化合物の色相は、b*値2.56であった。
【0078】
得られたポリチオール化合物を用い、実施例1と同様の方法でm−キシリレンジイソシアナートと重合して9mm厚の樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた9mm厚の樹脂はYI値15.8であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)または(2)の基準を満たす原料を、全原料の総量を基準として50mol%以上使用することを特徴とする、10mm長のb*値が2.0以下である光学材料用含硫黄モノマーの製造方法。
(1)使用する原料が液体の場合、10mm長のb*値が、0.8以下
(2)使用する原料が固体の場合、その8重量%水溶液を調整して測定した10mm長のb*値が、0.7以下
【請求項2】
請求項1に方法で製造された、光学材料用含硫黄モノマー。
【請求項3】
請求項2に記載の光学材料用含硫黄モノマーを含有する、光学材料用重合性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の光学材料用重合性組成物を硬化させて得られる、9mm厚の樹脂について測定したYI値が15.0以下の光学材料用樹脂。
【請求項5】
請求項4に記載の光学材料用樹脂からなるプラスチックレンズ。

【公開番号】特開2006−284920(P2006−284920A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104834(P2005−104834)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】