説明

色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体

【課題】簡便且つより安価な手法により作製することが出来る色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体を提供する。またその分散体を用いて作製した二酸化チタン薄膜と、その薄膜を用いて作製した色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】テルピネオール、アルコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類を単独もしくは混合溶媒とするセルロース系、もしくはブチラール系添加剤を含む色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体 。 それらの分散体に有機チタン化合物、またはニオビウム化合物を添加した分散体。二酸化チタンとポリビニルブチラール樹脂を二本ロールで固形チップとし、そのチップを溶解して作製した二酸化チタン分散体。また、これらの二酸化チタン分散体 を用いて作製されたことを特徴とする二酸化チタン薄膜と、それを用いて作製した色素増感型太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池電極用の二酸化チタンをベースとした印刷用分散体及びその分散体を用いて作製した多孔質二酸化チタン薄膜、光電変換素子および色素増感型太陽電池であって、分散体は主に溶媒と二酸化チタン粒子と有機バインダからなる前記成形体用の組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池は地球環境を配慮したクリーンなエネルギー源の一つとして大きな注目を集めている。しかし、シリコン系半導体等を使用した従来の太陽電池には、製造コストが高い、原料供給が不十分などの課題が残されており、まだ広く普及するには至っていない。
【0003】
光化学電池の中でも、グレッツェルらによって公知化された(Nature 1991,353,737−740)色素増感型湿式太陽電池は、極めて低コストかつ高効率であり、この公知化以降、多くの研究がなされてきた。色素増感型太陽電池は、ガラスやポリマーといった支持体上に優れた導電性と透明性を兼ね備えた酸化インジウム系膜(ITO)やフッ素などをドープした酸化スズ系膜(FTO)がコーティングした基板(導電性支持体)上に、さらに、安価な材料である数十ナノメートルサイズの酸化チタンの多孔質構造の膜をn型酸化物半導体として積層した光電変換素子を陰極とし、同様の基板上に主に白金の薄膜を積層した陽極を用いて、主にヨウ素などの酸化還元イオンを含んだ電解液を介して陰極と陽極を配置した構造が一般的である。
【0004】
陰極には太陽光の可視領域の波長の光を吸収し励起電子を発生させるために、錯体色素に代表される光増感剤が担持されていることが多い。光増感剤から発生した励起電子は、n型酸化物半導体に移動し、更に両電極を接続する導線を通って陽極へ移動する。陽極へ移動した電子は、電解液を還元し、電解液は電子を放出して酸化状態となった光増感剤を還元する。こうした一連の流れを繰り返すことで、色素増感型湿式太陽電池は機能する。しかしながら実用化のためにはさらなる変換効率の向上が必要であり、より高い光電変換性能を有する二酸化チタン薄膜が必要とされている。
【特許文献1】特開2001−243995号公報
【特許文献2】特開2002−100416号公報
【特許文献3】特開2002−367686号公報
【特許文献4】特開2002−280087号公報
【特許文献5】特開2003−007358号公報
【特許文献6】特開2003−288954号公報
【特許文献7】特開2003−308889号公報
【特許文献8】特開2003−317815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は簡便且つより安価な手法により二酸化チタン分散体 および半導体微粒子薄膜、並びに該薄膜を用いることにより高い光電変換効率を有する光電変換素子及び該光電変換素子からなる色素増感型太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこのような状況に鑑み鋭意検討した結果、スクリーン印刷において適切な分散体特性を維持でき、しかもこれを焼成して得られる半導体多孔膜に何ら悪影響を与えることのない、高い光電変換効率を有する二酸化チタン微粒子薄膜を作製することができる分散体組成を見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明において、第1の発明の要旨は、有機溶媒30〜90重量部、酸化物半導体5〜60重量部及びエチルセルロース1〜30重量部、もしくはポリビニルブチラール1〜30重量部を含む色素増感型太陽電池用二酸化チタン印刷用分散体にある。また、第2の発明の要旨は、この印刷用分散体にチタンアルコキシド等の有機チタン化合物を0.1〜30重量部、もしくはニオビウムエトキシドなどのニオビウム化合物を0.1〜30重量部含む印刷用分散体にある。第3の発明は二本ロールにより高圧処理し二酸化チタンと樹脂を固形化しチップとし、これを溶解して作製した印刷用分散体にある。また同様にこの印刷用分散体にチタンアルコキシド等の有機チタン化合物0.1〜30重量部、もしくはニオビウム化合物を0.1〜30重量部を含む印刷用分散体にある。さらに第4の発明は、透明導電性基板の導電層上に上記の印刷用分散体をスクリーン印刷し、これを焼成することを特徴とする半導体多孔膜の形成方法にある。さらに、第5の発明の要旨は透明導電性基板上に増感色素を担持した半導体多孔膜を有してなる半導体電極と、該半導体電極と間隔をおいて対向配置された対極と、これら半導体電極と対極の間に設けられそれらの極と接する電解質とを含む色素増感型太陽電池において、半導体多孔膜が上記の印刷用分散体を用いて形成されたものであることを特徴とする色素増感型太陽電池にある。
【0007】
本発明の印刷用分散体においては、分散媒としては、テルピネオール、アルコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類を用いることが出来るが、特にこれに限定されるものではなく、エチルセルロースもしくはポリビニルブチラールを溶解するものであればどのようなものも用いることができ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなど種々の有機溶媒を単独、あるいは2種以上を組み合わせたものを求める分散体特性に応じて使用することができる。
【0008】
TiO2としては、市販の微粒子や、水熱合成法、ゾルゲル法などにより得られたものを使用することができる。また固形化したチップ由来のTiO2も使用することができる。TiO2は5〜60重量部用いられる。しかし、スクリーン印刷に適当な粘度を有する分散体を作製する必要があること、及び太陽電池電極として電解液が浸透し易く、かつ光に対する批表面積が広い適度なTiO2充填程度を有するTiO2薄膜を作製できる分散体を作製する必要があるということから、5〜15重量部であることが好ましい。
【0009】
エチルセルロース及びポリビニルブチラールは5000という比較的低分子量のものから1,000,000以上の高分子量のものまで、求める粘度などに応じて種々のものを用いることができ、異なる分子量のものを組み合わせて用いることができる。エチルセルロース及びポリビニルブチラールは1〜30重量部用いられるが、スクリーン印刷に適当な粘度を有する分散体を作製する必要があること、及び太陽電池電極として電解液が浸透し易く、かつ光に対する批表面積が広い適度なTiO2充填程度を有するTiO2薄膜を作製できる分散体を作製する必要があるということから、5〜15重量部であることが好ましい。本発明の印刷用分散体には、上記の成分以外にも必要に応じてキレート剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤などを添加してもよい。
【0010】
チタンアルコキシド等の有機チタン化合物は0.1〜30重量部用いられるが、1〜20重量部であることが好ましい。チタンアルコキシドを分散体中に混合することで、焼結後の二酸化チタン薄膜中の二酸化チタン微粒子間において、光励起によって生じた電子―ホール対の再結合中心となるボトルネックの部分を太くすることにより、電子の流れを促進する効果があると期待される。本発明の印刷用分散体には、上記の成分以外にも必要に応じてキレート剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤などを添加してもよい。
【0011】
ニオビウム化合物は0.1〜30重量部用いられるが、0.1〜10重量部であることが好ましい。ニオビウム化合物を分散体に混合することで、ニオビウムのドーピング効果による光電流値の向上が可能である。本発明の印刷用分散体には、上記の成分以外にも必要に応じてキレート剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤などを添加してもよい。
【0012】
本発明の印刷用分散体は、分散媒に酸化物半導体粒子を加えエチルセルロースもしくはポリビニルブチラールを徐々に加えることによって得ることができる。
【0013】
次に、半導体多孔膜の形成方法について説明する。本発明においては、透明導電性基板の導電層上に上記の印刷用分散体をスクリーン印刷する。透明導電性基板は、透明基板の少なくとも一方の面に透明導電層が形成されたものである。本発明に用いられる透明基板としては、光透過性の素材からなる板が用いられ、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなど、通常太陽電池の透明基板として用いられるものであればどのようなものも用いることができ、電解質への耐性などを考慮して適宜選択すればよいが、用途上、できるだけ光透過性の高い基板が好ましい。
【0014】
透明基板の少なくとも一方の面には金属、炭素、導電性金属酸化物層などからなる透明導電層が形成されている。金属層や炭素層を形成する場合には透明性を著しく損ねない構造とすることが好ましく、導電性と透明性を損なわない薄膜を形成できるものという観点から金属の種類も適宜選択される。導電性金属酸化物としては、例えばITO、SnO2 、フッ素ドープのSnO2 、導電性ZnOなどを用いることができる。好ましい透明導電性基板として、例えば、フッ素ドープのSnO2 、ITOなどを蒸着した導電性ガラスを例示できる。
【0015】
本発明において用いられるスクリーン印刷法は通常のスクリーン印刷法を採用でき、透明導電性基板上に形成すべき多孔質膜の形状に合わせた形状の穴を開けた型枠を用い、スクリーンに密着させ、これを用いてスクリーン印刷機により上記の印刷用分散体を塗布する。スクリーンはナイロンやステンレス製のものが好ましく用いられ、メッシュは用いた金属酸化物の粒度、分散体の粘度などに応じて適宜選択される。印刷された塗膜の厚みは5〜200μm程度であることが好ましい。こうして得られた塗膜を、仮乾燥後、焼成することによって、半導体多孔質膜が透明導電性基板上に形成される。適切な仮乾燥の温度は用いた分散液によって異なるが、通常、50〜150℃で行う。乾燥はどのような方法をも用い得るが、加熱板、IR炉、熱風循環炉等による乾燥が好ましい。焼成温度は180〜500℃であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の色素増感型太陽電池について説明する。この色素増感型太陽電池(以下、太陽電池と略記する。)は、透明導電性基板の導電性を有する面に増感色素を担持した半導体多孔膜を成膜した半導体電極と、該半導体電極と間隔をおいて対向配置された対極と、これら半導体電極と対極の間に設けられ、それらの極と接する電解質からなる。透明導電性基板上の導電層の上には上記のようにして形成された半導体多孔膜に増感色素を担持させて、半導体電極が形成される。増感色素としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体をはじめ、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素なども使用することができ、用途、使用半導体に適した励起挙動をとるものを特に限定無く選ぶことができる。対極としては、基板の上に導電膜を設けた電極が用いられ、例えば導電性基板上に炭素や白金などの層を、蒸着、スパッタ、塩化白金酸塗布後に熱処理を行ったものなどを用いることができるが、電極として用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0017】
該半導体電極と対極とは、間隔をおいて対向配置されており、これらの電極の間にはこれらの極に接触するように電解質が設けられる。電解質としては酸化・還元種を含む電解液であってもよく、この電解液を高分子マトリクスでゲル化させたものでもよく、電解液の代替として導電性高分子やp型半導体によるホール輸送層を設けたものであってもよい。電解液の場合は、酸化・還元種を含む非水系電解液が好ましく用いられる。本発明においては、これらをあわせて電解質という。
【0018】
酸化・還元種として用いられる塩類としては、例えばアニオンとして、ヨウ化物イオン、臭化物イオンなどを、また、カチオンとしてリチウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。さらに必要に応じてヨウ素などを添加してもよい。
【0019】
電解液が非水系の場合は溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトンなどを用いることができるが、色素増感型太陽電池の電解液として既に報告されているものであればどのようなものも用いることができ、求める特性に応じて適宜選択され、これらの溶媒を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0020】
半導体電極と対極の間の周辺部にはエポキシ樹脂などからなる封止剤が設けられ、電解液が漏出したり、揮発性成分が揮発したりするのを防いでいる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の印刷用分散体はスクリーン印刷を行うことができ、この分散体を用いて連続してスクリーン印刷を行った場合、均一な塗膜を得ることができ、これを焼成して得られる半導体多孔膜もショット間のずれの少ない、良好な多孔膜となる。さらにこの多孔膜を用いて得られる色素増感型太陽電池も良好な光電特性を示す。これは、分散体にエチルセルロースもしくはポリビニルブチラールが添加されているので、これを用いて得られた半導体多孔膜は比較的大きな空孔を有し、多孔膜内への電解液の浸透が容易となるためと考えられる。また、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物が分散体に添加されると焼結した時に、光によって励起された電子―ホールの再結合中心と言われているチタニア粒子間のボトルネックが改善され、変換効率が上昇する。また、ニオビウムをドープすることによりドナー密度が増加し、薄膜の導電性が増加し変換効率の向上を可能にした。さらに二本ロールにより高圧をかけ作製した固形化チップを元に作製した二酸化チタン分散体は、同組成の単に混合しただけの分散体と比較して、高い変換効率を示す太陽電池を作製できた。
【実施例】
【0022】
(実施例1) テルピネオール65gに、チタニア微粒子P25(独 デグサ社)を25g、分子量約20000〜50000のエチルセルロースを10g添加し、15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。 この分散体 を65μmのスペーサーを用い流延し膜を作製し、この膜を500℃1時間焼成し、多孔質チタニア薄膜を作製した。作製したチタニア膜を0.3mmolのN3dye溶液に浸漬し25℃で24時間請置し色素を吸着させ光電変換素子を得た。対極に白金を用い、電解質としてアセトニトリルにヨウ化リチウム、ヨウ素、t‐ブチルピリジン、1.2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドをそれぞれ0.1、0.05、0.5、0.6mol/lとなるように溶解、調整いたものを用い、セルを作製した。太陽電池 の評価はAM1.5、100mA/cm2の擬似太陽光を照射し行った。
短絡電流 Jscは 11.0 mA、開放電圧 Vocは703 mV、フィルファクターFFは、0.496、光電変換効率ηは3.84%となった。
【0023】
(実施例2)テルピネオール65gに、チタニア微粒子P25(独 デグサ社)を25g、分子量約20000〜50000のポリビニルブチラールを10g添加し、15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。 この分散体 を65μmのスペーサーを用い流延し膜を作製し、この膜を500℃1時間焼成し、多孔質チタニア薄膜を作製した。作製したチタニア膜を0.3mmolのN3dye溶液に浸漬し25℃で24時間請置し色素を吸着させ光電変換素子を得た。対極に白金を用い、電解質としてアセトニトリルにヨウ化リチウム、ヨウ素、t‐ブチルピリジン、1.2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドをそれぞれ0.1、0.05、0.5、0.6mol/lとなるように溶解、調整いたものを用い、セルを作製した。太陽電池 の評価はAM1.5、100mA/cm2の擬似太陽光を照射し行った。
短絡電流 Jscは 11.1 mA、開放電圧 Vocは708 mV、フィルファクターFFは、0.495、光電変換効率ηは3.89%となった。
【0024】
(実施例3)テルピネオール65gに、チタニア微粒子P25(独 デグサ社)を25g、分子量約20000〜50000のエチルセルロースを10g添加し、15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。この分散体にチタンイソプロポキシドを3g加え、さらに15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。この分散体 を65μmのスペーサーを用い流延し膜を作製し、この膜を500℃1時間焼成し、多孔質チタニア薄膜を作製した。作製したチタニア膜を0.3mmolのN3dye溶液に浸漬し25℃で24時間請置し色素を吸着させ光電変換素子を得た。対極に白金を用い、電解質としてアセトニトリルにヨウ化リチウム、ヨウ素、t‐ブチルピリジン、1.2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドをそれぞれ0.1、0.05、0.5、0.6mol/lとなるように溶解、調整いたものを用い、セルを作製した。太陽電池 の評価はAM1.5、100mA/cm2の擬似太陽光を照射し行った。
短絡電流 Jscは 11.8mA、開放電圧 Vocは711 mV、フィルファクターFFは、0.502、光電変換効率ηは4.21%となった。
【0025】
(実施例4)テルピネオール65gに、チタニア微粒子P25(独 デグサ社)を25g、分子量約20000〜50000のエチルセルロースを10g添加し、15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。この分散体にニオビウムエトキシドを3g加え、さらに15分間攪拌しチタニア分散体 を作製した。この分散体 を65μmのスペーサーを用い流延し膜を作製し、この膜を500℃1時間焼成し、多孔質チタニア薄膜を作製した。作製したチタニア膜を0.3mmolのN3dye溶液に浸漬し25℃で24時間請置し色素を吸着させ光電変換素子を得た。対極に白金を用い、電解質としてアセトニトリルにヨウ化リチウム、ヨウ素、t‐ブチルピリジン、1.2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドをそれぞれ0.1、0.05、0.5、0.6mol/lとなるように溶解、調整いたものを用い、セルを作製した。太陽電池 の評価はAM1.5、100mA/cm2の擬似太陽光を照射し行った。
短絡電流 Jscは 12.0mA、開放電圧 Vocは724 mV、フィルファクターFFは、0.517、光電変換効率ηは4.49%となった。
【0026】
(比較例1) 実施例1〜4の組成において、テルピネオールを水に、チタニア微粒子P25(独 デグサ社)を25g、分子量約20000〜50000のエチルセルロースの変わりに分子量約20000〜50000のポリエチレングリコールを用いて、同組成で15分間攪拌しチタニア分散体 を作製し、実施例1〜4と同様に太陽電池特性測定実験を行った。
短絡電流 Jscは 7.7 mA、開放電圧 Vocは668.3 mV、フィルファクターFFは、0.504、光電変換効率ηは2.61%となった。
【0027】
(実施例5) 二酸化チタンとポリビニルブチラールとテルピネオールを二本ロールを用いて混合することにより固形チップとした。このチップを溶媒で溶解し、25wt%二酸化チタン分散体に調整した。そして、同様に太陽電池特性測定実験を行った。
短絡電流 Jscは 11.5 mA、開放電圧 Vocは715.7mV、フィルファクターFFは、0.492、光電変換効率ηは4.04%となった。
【0028】
(比較例2)実施例5の組成と同組成の二酸化チタン分散体を攪拌により混合するだけで作製し、同様に太陽電池特性測定実験を行った。
短絡電流 Jscは 8.3mA、開放電圧 Vocは716.9mV、フィルファクターFFは、0.563、光電変換効率ηは3.37%となった。
【0029】
実施例1〜5、比較例1、2、の太陽電池としての評価を下表にまとめた。
表中、Jscは、短絡電流を示す。Vocは、開放電圧を示す。FFは、フィルファクターを示す。ηは、光電変換効率を示す。
実施例1、2とも比較例1より、高い光―エネルギー変換効率を示した。溶媒にテルピネオール、添加剤としてエチルセルロース、もしくはポリビニルブチラールを用いることにより、従来から用いられている水とポリエチレングリコールをベースとする二酸化チタン分散体と比較して、適度な二酸化チタン粒子径と電解質浸透のための細孔径、そして光に対する批表面積を有する二酸化チタン薄膜を作製することができ、高い光―エネルギー変換効率を得ることができた。
実施例3は比較例1より、高い光―エネルギー変換効率を示した。チタンアルコキシド等の有機チタン化合物が分散体に添加されると焼結した時に、光によって励起された電子―ホールの再結合中心と言われているチタニア粒子間のボトルネックが改善され、変換効率が上昇する結果となった。
実施例4は比較例1よりニオビウム化合物を分散体に混合することで、焼結時に二酸化チタン薄膜にニオビウムがドープされ、二酸化チタンのドナー密度が増加し、薄膜の導電性が増加し変換効率の向上を可能にした。
実施例5は比較例2より、高い光―エネルギー変換効率を示した。二本ロールで分散することで、より粒子径が最適化され、またアナターゼの結晶相が変化した(X線回折法で確認済み)ことに起因すると思われる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくともテルピネオール、アルコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類より選ばれるいずれか1種類以上の溶媒と、(b)二酸化チタンと、(c)セルロース系物質あるいはブチラール系物質より選ばれる1種類以上の添加剤を含む色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体 。
【請求項2】
(c)の該セルロース系添加剤がエチルセルロース、該ブチラール系添加剤がポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体。
【請求項3】
(a)単独もしくは混合溶媒として30〜90重量部、(b)二酸化チタン5〜60重量部、(c)添加剤が1〜30重量部である請求項1〜2に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体。
【請求項4】
(c)の添加剤の分子量が、1万から20万の単独もしくは2種以上の混合物である請求項1〜3に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体。
【請求項5】
チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を0.1〜30重量部添加した請求項1〜4
に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体。
【請求項6】
ニオビウムエトキシドなどのニオビウム化合物を0.1〜30重量部添加した請求項1〜4に記載の色素増感型太陽電池用二酸化分散体。
【請求項7】
二酸化チタンとポリビニルブチラール樹脂を二本ロールで高圧処理することにより固形化チップとし、そのチップを溶解して作製した請求項1〜6に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の色素増感型太陽電池用二酸化チタン分散体を用いて作製されたことを特徴とする色素増感型太陽電池用多孔質二酸化チタン薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の色素増感型太陽電池用多孔質二酸化チタン薄膜に色素を吸着させたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項10】
請求項9に記載の光電変換素子を用いて作製したことを特徴とする色素増感型太陽電池。

【公開番号】特開2007−115602(P2007−115602A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307747(P2005−307747)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(591075467)冨士色素株式会社 (24)
【Fターム(参考)】