説明

色素増感型太陽電池

【課題】光の入射方向があらゆる方向に変化した場合であっても発電効率の変動を小さくできる色素増感型太陽電池する。
【解決手段】色素増感型太陽電池10の突起部T内に透明基板21及び対向基板22に挟まれて形成された光電極層1がシェル形状となされていることで、例えば光の入射角度が小さい場合であっても平面により形成されている場合などと比較して光電極層1に対する投影面積が確保され、発電効率の変動を小さくすることができる。
【参照図】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の入射方向の変動による発電効率の変動が小さい色素増感型太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光の入射方向の変動による発電効率の変動を小さくする色素増感型太陽電池としては、例えば円筒形状に積層した光電変換層と、円筒形状中心部の光電変換層に接して配置された電極及び円筒形状外周部の光電変換層に接して配置した電極とを有する円筒型太陽電池が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−77550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池は、円筒形状中心部を回動軸とした方向に光の入射方向が変動した場合には発電効率の変動は小さいものの、円筒形状の長さ方向に光の入射方向が変動した場合には、平板状のものと同様に発電効率の変動が起こってしまうものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、光の入射方向があらゆる方向に変化した場合であっても発電効率の変動を小さくできる色素増感型太陽電池を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる色素増感型太陽電池は、光入射側から透明基板、透明電極、半導体材料に増感色素を担持させた光電極層、電解質層、対向電極及び対向基板が積層されて形成され、少なくとも前記光電極層がシェル形状となされていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わる色素増感型太陽電池によれば、少なくとも光電極層がシェル形状となされていることで、例えば光の入射角度が小さい場合であっても光電極層に対する投影面積が確保され、発電効率の変動を小さくすることができる。
【0008】
また前記シェル形状は、半球形状であれば、殆ど全ての方向からの投影面積が等しくなされて、発電効率の変動が更に小さくなされるようにでき好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる色素増感型太陽電池によれば、少なくとも光電極層がシェル形状となされていることで、例えば光の入射角度が小さい場合であっても光電極層に対する投影面積が確保され、発電効率の変動を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係わる色素増感型太陽電池の、実施の一形態を示すもので、(a)は外観を表す斜視図、(b)は(a)のA−A断面を示す厚みを誇張して表した断面図である。まず(a)において、色素増感型太陽電池10は、対向電極22上に透明基板21が積層されて形成されたものであるが、色素増感型太陽電池10の上面には半球状の突起部Tが間隔をおいて複数設けられている。次に(b)に示すように、半球状の突起部T内においては、透明基板21、透明電極23、光電極層1、電解質層24、対向電極25及び対向基板22が等間隔に積層され、光電極層1に外界から光が照射されることで発電がおこなわれるようになされている。
【0012】
ここで、突起部Tと同様に光電極層1は半球状となされていることで、突起部Tが突設された側においては光Lの入射角度θが変化したとしても、その方向からの投影面積の変化が小さいことから、発電効率の変動は小さいものとなり得る。また光電極層1が半球状となされていることで、上述の如き発電効率の変動を小さくできる効果は全ての方向から入射する光に対して得ることができる。かかる色素増感型太陽電池10は設置方向によらず高い発電効率を得ることができることから、設置における方向合わせが必要なく設置時の作業を簡便なものとすることができる。
【0013】
また光電極層1の形状は、半球状であればあらゆる方向からの投影面積の差が小さくできるが、少なくともシェル形状であれば発電効率の変動を小さいものとできることから、適宜のシェル形状としたものを用いることができる。
【0014】
次に以下の実施例により、本発明に係わる色素増感型太陽電池による効果を示す。
【0015】
(実施例1)
図1に示した如き半球状の突起部を、一体有する色素増感型太陽電池を水平に設置することで本発明に係わる実施例1の色素増感型太陽電池とした。
【0016】
(比較例1)
実施例1と同一の構成で、且つ受光面積を同一とした平板状の色素増感型太陽電池を水平に設置して、比較例1の色素増感型太陽電池とした。
【0017】
実施例1及び比較例1の色素増感型太陽電池を晴天時の屋外に設置し、1日の発電量の推移を測定した。その結果を図2のグラフに示すが、縦軸は実施例1及び比較例1のピーク時の発電量を10としてそれに対する割合を示すもので、横軸を時刻として、時間経過に伴い発電量がどの様に推移したかを表したものである。グラフ中、発電量の推移は実施例1をa、比較例1をbとしているが、比較例1はピークに近い発電量を示すのが12時付近の極短い時間であり、それ以外の時間ではピークに対して50%以下の発電量となっているが、実施例1は、太陽光の入射角度が小さい朝や夕方においても殆どピーク時と同様の発電量を発生しており、本発明に係わる色素増感型太陽電池は発電効率の変動が極めて小さいことが顕著に現されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる色素増感型太陽電池の、実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる色素増感型太陽電池と、従来の色素増感型太陽電池との発電量を比較したグラフである。
【符号の説明】
【0019】
1 光電極層
21 透明電極
22 対向電極
23 透明電極
24 電解質層
25 対向電極
10 色素増感型太陽電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射側から透明基板、透明電極、半導体材料に増感色素を担持させた光電極層、電解質層、対向電極及び対向基板が積層されて形成され、少なくとも前記光電極層がシェル形状となされていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項2】
前記シェル形状は、半球形状であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−273199(P2007−273199A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96218(P2006−96218)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】