説明

色素増感太陽電池用ポリエステルフィルム

【課題】 色素増感太陽電池の構成部材として使用される二軸延伸ポリエステルフィルムであり、当該フィルムはベンゾオキサジン系紫外線吸収剤を0.01〜10重量%含有し、波長380nmの光線透過率が20.0%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
【解決手段】 色素増感太陽電池の構成部材として使用される二軸延伸ポリエステルフィルムであり、当該フィルムはベンゾオキサジン系紫外線吸収剤を0.01〜10重量%含有し、波長380nmの光線透過率が20.0%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線による劣化の少ない色素増感太陽電池用のポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光の電気への変換効率が良いことから、シリコン半導体の接合を応用した太陽電池が商業化されているが、製造コストが高いことがその普及の妨げとなっている。一方、製造工程が簡単で、低コストが見込まれる色素増感太陽電池が提案され、最近、シリコンを使った太陽電池に匹敵する性能を有するものをGraetzelらが発表したことから(非特許文献1)、研究が一層活発となった。
【0003】
色素増感太陽電池の基本構造は、透明な基板上に設けた透明電極、表面に色素を吸着した半導体層、電解質層、および対向電極からなる。Graetzelらは、半導体層として、多孔質化した酸化チタン(TiO)を使い、多孔質化した広い表面に色素を吸着することでおよび色素としてルテニウム錯体を単分子吸着させたことにより、光電変換効率を著しく向上させた。色素増感太陽電池の光が入射する側の透明基板には、ITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛のような金属酸化物の透明電極を設けてなる基板が使われ、基板の多くはガラス製であったが、最近はフレキシブルな太陽電池を目指し、透明基板にポリエステルフィルムを使う検討がなされている。
【0004】
先述のGraetzelらの発表以降も多くの性能向上の検討がなされている。このような色素増感太陽電池では、400nm以上の光線によって色素が励起されることを活用しているが、内在する根本的な問題として、太陽光等に含まれる紫外線により色素が分解し、光電変換特性が大きく劣化することである。さらに、色素が吸着されている多孔質化した酸化チタンは、紫外線によって励起され、その表面で酸化還元反応が起こり、色素等の有機物が分解することが知られている。この問題を解決する方法として、光が入射する面に紫外線吸収部材を設けることが提案されている(特許文献1)。特許文献1は、特定化合物を配合するものであるが、薄くて強靱なポリエステルフィルムを得ることは難しく、特に、フレキシブルな色素増感太陽電池用の透明基板に使うポリエステルを得ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002―25634号公報
【特許文献2】特開2003−346999号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.115(1993)6382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、紫外線劣化の少ない色素増感太陽電池の製造に適した紫外線吸収能のある強靱なポリエステルフィルム、特に、透明基板に適したポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の二軸延伸ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、色素増感太陽電池の構成部材として使用される二軸延伸ポリエステルフィルムであり、当該フィルムはベンゾオキサジン系紫外線吸収剤を0.01〜10重量%含有し、波長380nmの光線透過率が20.0%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線による光電変換効率の劣化の少ない色素増感太陽電池の開発が可能となる。さらに、フレキシブルな色素増増感太陽電池の開発が可能となり、その工業的な価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリエステルフィルムは、単層あるいは2層以上の多層であってもよく、押出口金から溶融押し出され、次いで、縦方向および横方向の二軸方向に延伸させたフィルムである。特に、フレキシブルな色素増感太陽電池を作成するには、薄くて強度のあるポリエステルフィルムがよく、二軸延伸ポリエステルフィルムが最適である。
【0012】
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレ−ト(PEN)等が例示される。
【0013】
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは、400nm以上の光線を多く透過することが必要であり、フィルムヘーズが10.0%以下であることが望ましく、さらに好ましくは5.0%以下、特に好ましくは2.0%以下である。本発明のポリエステルフィルムは、光が入射する側に使われるので、フィルムヘーズが10.0%を超えると色素へ到達する励起に有効な光線の量が減少し、有利ではない場合が多い。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、紫外線吸収剤を0.01〜10重量%、好ましくは0.3〜1.8重量%の範囲で含有するものであり、波長380nmの光線透過率が20.0%以下、好ましくは5.0%以下、最も好ましくは2.0%以下である。紫外線吸収剤が0.01重量%未満の場合には、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、色素が分解し、その光電変換性能が低下する。一方、10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させても、もはや色素の分解を防止する効果は飽和に達しており、逆に、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下や紫外線吸収剤の析出による外観不良等、表面特性の悪化を生ずるため好ましくない。また、波長380nmの光線透過率が20.0%より大きくなると、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、色素が分解するのを防ぐのに十分とは言えなくなる。
【0016】
色素増感太陽電池の色素は、400nm以上の光によって励起される色素を活用しているので、400nmの光線透過率が40%以上あることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる紫外線吸収剤としてはポリエステルに含有させることができる紫外線吸収剤であればよい。例えば、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物等がある。中でも、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾオキサジン系化合物がポリエステルとの相溶性が良く好ましい。トリアジン系化合物の例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールを挙げることができる。ベンゾオキサジン系化合物は、配合量が比較的少ない量で380nmの光線透過率を20%以下とできるので、より好ましい。ベンゾオキサジン系化合物の例として、下記構造のものを挙げることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素残基を表し、X1およびX2はそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、ニトロ基
【0020】
代表的な化合物として、2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が挙げられる。
本発明では、単層構成の二軸延伸ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合したフィルムであってもよい。色素増感太陽電池の透明電極にガラス基板を使い、ガラスの外面に本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを貼合する使い方なら問題はないが、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性がある。特に、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを透明基板として使う際には、フィルムの表面にITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛の様な金属酸化物の透明電極をスパッタリング法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等によって設けるが、単層フィルムの場合には、透明電極の設層工程で紫外線吸収剤が表面に存在することによる弊害が懸念される。また、単層フィルムに紫外線吸収剤を配合すると、押出工程や、テンター内で紫外線吸収剤が揮散し、汚染の原因となり、最適な設計とは言えない。
【0021】
本発明の効果をより活かすには、積層構造のフィルムとし、内層に紫外線吸収剤を配合することが好ましい。内層に紫外線吸収剤を配合する方法としては、紫外線吸収剤を含有するポリエステルと紫外線吸収剤を含まないかまたは少量の紫外線吸収剤を含むポリエステルとを共押出しする方法が良い。最外層には紫外線吸収剤がないことが好ましいが、工程の汚れやフィルムの特性を損ねない範囲で含有していても構わない。また、最外層の厚みは片側の厚み分として、0.5μmからフィルム全体の厚みの2/5の範囲が好ましい。薄すぎると紫外線吸収剤のブリードアウトを防ぐことができず、厚すぎると紫外線吸収剤を含有させる層の紫外線吸収剤が多くなり濁りが出たり、デラミネーションの原因と成ったりしやすい。
【0022】
積層フィルムの製膜方法の例としては、例えば、2種(A,B)のポリエステルを2台の押し出し機から押し出し、口金内で2種3層(A/B/A)に積層させ、口金より溶融押し出し、冷却ロール上でシート状に成形し、次いで二軸に延伸する方法を挙げることができる。二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜方法は、得られたシート状フィルムをまず、ロール延伸法により、60〜120℃で2〜7倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜150℃で2〜7倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行う製膜方法でよい。必要に応じて、一軸延伸後のフィルムに高分子化合物を主体とする易接着層を塗布し、その後テンター内で延伸しても構わない。
【0023】
本発明フィルムには、実質的に粒子を含有させなくてもよいし、フィルムの走行性を向上する等の目的で、粒子を含有させてもよい。粒子を含有させる場合には、単層の場合は全層に、積層の場合は、最外層に、それぞれ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、ゼオライト、硫化モリブデン酸等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂、フッ素樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を含有させることができる。使用する粒子の粒径や含有量は、本発明の要旨を満たす範囲で適宜決めることができる。例えば、平均粒径としては、通常0.02〜3μm、好ましくは0.02μm〜2.5μmの範囲であり、配合する量としては、通常0.001〜10.0重量%、好ましくは、0.005〜5.0重量%の範囲である。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を加えることもできる。
【0024】
また本発明のフィルムの厚みには制限はないが、9〜250μmの範囲が好ましく、フレキシブルな基板の作成には、50〜250μmの範囲が好ましい。
【0025】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、色素増感太陽電池に使われるが、その基本構造は、透明な基板上に設けた透明電極、表面に色素を吸着した半導体層、電解質層、および対向電極からなる。透明な基板の構成に通常のポリエステルフィルムを使うと、透過する紫外線が原因で、時間の経過につれ色素の分解が生じ、光電変換機能が劣化することが知られているが、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを使うと、紫外線が色素を吸着した半導体層に到達しないため、色素の分解がなく、性能の劣化を抑えることができる。
【0026】
フレキシブルな色素増感太陽電池を作成するには、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに、透明電極を設けるが、ITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛が良く知られている。設層する方法としては、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等を挙げることができる。これら電極を設ける前にポリエステルフィルムに酸素や水蒸気を遮断する層や透明電極の密着力を向上する層を設けておいてもよい。遮断層は、蒸着やスパッタリングおよびコーティングで設けることができる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムを色素増感太陽電池の最表層に使う場合には、ポリエステルフィルムの最表層面にキズが入ることを防止するためのハードコート層や反射光を削減するための反射防止層を設けてもよい。また、これらの層を設ける前に酸素や水蒸気を遮断する層を設けておいてもよい。
【0028】
色素を吸着させる半導体層としては、多孔質化した酸化チタンが知られている。作成方法の例としては、ガラス上に、Ti(OPr)の水溶液に酢酸とTiO微粉末を配合した液を塗布し、乾燥後450℃で焼成する工程を複数回繰り返して、厚み約10μm程度の多孔質化した膜を得る方法を挙げることができる。この多孔質膜を、色素を溶かした溶液に浸漬することで、色素を吸着させることができる。色素としては、ルテニウムビピリジル誘導体、亜鉛ポリフィリンなどのポリフィリン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン類、クロロフィル類、ローズベンガルなどのフェニルキサンテン類、シアニン類、メロシアニン類等の色素等が知られている。色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホン基等の官能基を有すると、TiO表面に当該色素が化学的に固定されるため好ましい。代表的な色素として、[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)(イソチオシアナト)]で表されるルテニウム錯体がある。このようにして得た色素を吸着させた多孔質化した酸化チタン層を、本発明のポリエステルフィルムを使った透明基板の透明電極の面に転写することによって、フレキシブルな色素増感太陽電池の一部を得ることができる。
【0029】
電解質層としては、I/I、Br/Br等の酸化還元対を有する溶液状またはゲル状の電解質、ヨウ化銅やチオシアン化銅の微結晶からなる固体電解質、イオン導電性を有する高分子や電子伝導性を有するπ共役系高分子、あるいはポリアリールアミン系化合物を用いた固体電解質などの各種電解質が知られている。
【0030】
対向電極としては、ガラスや二軸延伸ポリエステルフィルムに金や白金をコートした層や蒸着した層からなる導電性基板を挙げることができる。フレキシブルな色素増感太陽電池には、二軸延伸ポリエステルフィルムが良く、酸素や水蒸気を遮断する層を設けた二軸延伸ポリエステルフィルムでもよい。
【0031】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを使用するに際しては、上述のように、透明電極層、ハードコート層、酸素や水蒸気を遮断する層等を設けるが、その接着性を向上する目的でポリエステルフィルムに下引き層を設けておくことが好ましい。かかる下引き層は、ポリエステルフィルムの製膜後に設けてもよいが、コストを勘案するとフィルム製膜時に設けることが好ましい。 例えば、逐次二軸延伸法においては 縦一軸延伸後のフィルムに下引き層をコートした後、横に延伸しその後、熱処理する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0032】
かかる下引き層としては、有機溶媒に溶解させた高分子や、水に溶解、乳化または懸濁する水性高分子を挙げることができるが、一軸延伸した後にコートする方法では、水に溶解、乳化または懸濁する水性高分子が好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびこれらの共重合体等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0033】
下引き層の耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性、耐擦傷性を改善するために、コート液の成分として架橋剤を使用しても構わない。架橋剤としては、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、アミド系などの化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ポリイソシアヌレート、ブロックポリイソシアネート、オキサゾリン基含有水溶性ポリマー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネートカップリング剤が挙げられる。また、コート液中には、コート性を向上するために、本発明の効果を損わない範囲で、無機や有機の粒子、潤滑剤、帯電防止剤、消泡剤、各種界面活性剤等を含有させてもよい。
【0034】
かかる下引き層には、帯電防止性能があることがより好ましく、帯電防止剤を含有させることもできる。 代表的な帯電防止剤としては、スルホン酸金属塩やカチオン系帯電防止剤がある。
【0035】
スルホン酸金属塩としては、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホイソフタル酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩を挙げることができる。金属塩の金属元素としては、リチウム、カリウム、ナトリウムが良い。
【0036】
カチオン系帯電防止剤としては、例えば、4級アンモニウム塩基を有する化合物がある。これは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つ化合物を指す。 そのような構成要素としては例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0037】
特に、4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物が良く、数平均分子量が通常は1000以上であり、さらには2000以上、特に5000以上、500000以下であることが望ましい。分子量が低すぎる場合は、帯電防止剤がブリードアウトし、接触する面に転移するトラブルを発生させる。分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎ、塗布性が悪くなるトラブルが発生する。
【0038】
かかる下引き層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm。薄いと接着性を発揮できないことがあり、厚いとポリエステルフィルム同士のブロキングが生じることがある。
【0039】
ポリエステルフィルムにコート液をコートする方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0040】
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素残基を表し、X1およびX2はそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、ニトロ基
代表的な化合物として、2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が挙げられる。
【0041】
本発明では、単層構成の二軸延伸ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合したフィルムであってもよい。色素増感太陽電池の透明電極にガラス基板を使い、ガラスの外面に本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを貼合する使い方なら問題はないが、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性がある。特に、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを透明基板として使う際には、フィルムの表面にITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛の様な金属酸化物の透明電極をスパッタリング法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等によって設けるが、単層フィルムの場合には、透明電極の設層工程で紫外線吸収剤が表面に存在することによる弊害が懸念される。また、単層フィルムに紫外線吸収剤を配合すると、押出工程や、テンター内で紫外線吸収剤が揮散し、汚染の原因となり、最適な設計とは言えない。
【0042】
本発明の効果をより活かすには、積層構造のフィルムとし、内層に紫外線吸収剤を配合することが好ましい。内層に紫外線吸収剤を配合する方法としては、紫外線吸収剤を含有するポリエステルと紫外線吸収剤を含まないかまたは少量の紫外線吸収剤を含むポリエステルとを共押出しする方法が良い。最外層には紫外線吸収剤がないことが好ましいが、工程の汚れやフィルムの特性を損ねない範囲で含有していても構わない。また、最外層の厚みは片側の厚み分として、0.5μmからフィルム全体の厚みの2/5の範囲が好ましい。薄すぎると紫外線吸収剤のブリードアウトを防ぐことができず、厚すぎると紫外線吸収剤を含有させる層の紫外線吸収剤が多くなり濁りが出たり、デラミネーションの原因と成ったりしやすい。
【0043】
積層フィルムの製膜方法の例としては、例えば、2種(A,B)のポリエステルを2台の押し出し機から押し出し、口金内で2種3層(A/B/A)に積層させ、口金より溶融押し出し、冷却ロール上でシート状に成形し、次いで二軸に延伸する方法を挙げることができる。二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜方法は、得られたシート状フィルムをまず、ロール延伸法により、60〜120℃で2〜7倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜150℃で2〜7倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行う製膜方法でよい。必要に応じて、一軸延伸後のフィルムに高分子化合物を主体とする易接着層を塗布し、その後テンター内で延伸しても構わない。
【0044】
本発明フィルムには、実質的に粒子を含有させなくてもよいし、フィルムの走行性を向上する等の目的で、粒子を含有させてもよい。粒子を含有させる場合には、単層の場合は全層に、積層の場合は、最外層に、それぞれ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、ゼオライト、硫化モリブデン酸等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂、フッ素樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を含有させることができる。使用する粒子の粒径や含有量は、本発明の要旨を満たす範囲で適宜決めることができる。例えば、平均粒径としては、通常0.02〜3μm、好ましくは0.02μm〜2.5μmの範囲であり、配合する量としては、通常0.001〜10.0重量%、好ましくは、0.005〜5.0重量%の範囲である。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を加えることもできる。
【0045】
また本発明のフィルムの厚みには制限はないが、9〜250μmの範囲が好ましく、フレキシブルな基板の作成には、50〜250μmの範囲が好ましい。
【0046】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、色素増感太陽電池に使われるが、その基本構造は、透明な基板上に設けた透明電極、表面に色素を吸着した半導体層、電解質層、および対向電極からなる。透明な基板の構成に通常のポリエステルフィルムを使うと、透過する紫外線が原因で、時間の経過につれ色素の分解が生じ、光電変換機能が劣化することが知られているが、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを使うと、紫外線が色素を吸着した半導体層に到達しないため、色素の分解がなく、性能の劣化を抑えることができる。
【0047】
フレキシブルな色素増感太陽電池を作成するには、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに、透明電極を設けるが、ITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛が良く知られている。設層する方法としては、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法等を挙げることができる。これら電極を設ける前にポリエステルフィルムに酸素や水蒸気を遮断する層や透明電極の密着力を向上する層を設けておいてもよい。遮断層は、蒸着やスパッタリングおよびコーティングで設けることができる。
【0048】
本発明のポリエステルフィルムを色素増感太陽電池の最表層に使う場合には、ポリエステルフィルムの最表層面にキズが入ることを防止するためのハードコート層や反射光を削減するための反射防止層を設けてもよい。また、これらの層を設ける前に酸素や水蒸気を遮断する層を設けておいてもよい。
【0049】
色素を吸着させる半導体層としては、多孔質化した酸化チタンが知られている。作成方法の例としては、ガラス上に、Ti(OPr)の水溶液に酢酸とTiO微粉末を配合した液を塗布し、乾燥後450℃で焼成する工程を複数回繰り返して、厚み約10μm程度の多孔質化した膜を得る方法を挙げることができる。この多孔質膜を、色素を溶かした溶液に浸漬することで、色素を吸着させることができる。色素としては、ルテニウムビピリジル誘導体、亜鉛ポリフィリンなどのポリフィリン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン類、クロロフィル類、ローズベンガルなどのフェニルキサンテン類、シアニン類、メロシアニン類等の色素等が知られている。色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホン基等の官能基を有すると、TiO表面に当該色素が化学的に固定されるため好ましい。代表的な色素として、[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)(イソチオシアナト)]で表されるルテニウム錯体がある。このようにして得た色素を吸着させた多孔質化した酸化チタン層を、本発明のポリエステルフィルムを使った透明基板の透明電極の面に転写することによって、フレキシブルな色素増感太陽電池の一部を得ることができる。
【0050】
電解質層としては、I/I、Br/Br等の酸化還元対を有する溶液状またはゲル状の電解質、ヨウ化銅やチオシアン化銅の微結晶からなる固体電解質、イオン導電性を有する高分子や電子伝導性を有するπ共役系高分子、あるいはポリアリールアミン系化合物を用いた固体電解質などの各種電解質が知られている。
【0051】
対向電極としては、ガラスや二軸延伸ポリエステルフィルムに金や白金をコートした層や蒸着した層からなる導電性基板を挙げることができる。フレキシブルな色素増感太陽電池には、二軸延伸ポリエステルフィルムが良く、酸素や水蒸気を遮断する層を設けた二軸延伸ポリエステルフィルムでもよい。
【0052】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを使用するに際しては、上述のように、透明電極層、ハードコート層、酸素や水蒸気を遮断する層等を設けるが、その接着性を向上する目的でポリエステルフィルムに下引き層を設けておくことが好ましい。かかる下引き層は、ポリエステルフィルムの製膜後に設けてもよいが、コストを勘案するとフィルム製膜時に設けることが好ましい。 例えば、逐次二軸延伸法においては 縦一軸延伸後のフィルムに下引き層をコートした後、横に延伸しその後、熱処理する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0053】
かかる下引き層としては、有機溶媒に溶解させた高分子や、水に溶解、乳化または懸濁する水性高分子を挙げることができるが、一軸延伸した後にコートする方法では、水に溶解、乳化または懸濁する水性高分子が好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびこれらの共重合体等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0054】
下引き層の耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性、耐擦傷性を改善するために、コート液の成分として架橋剤を使用しても構わない。架橋剤としては、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、アミド系などの化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ポリイソシアヌレート、ブロックポリイソシアネート、オキサゾリン基含有水溶性ポリマー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネートカップリング剤が挙げられる。また、コート液中には、コート性を向上するために、本発明の効果を損わない範囲で、無機や有機の粒子、潤滑剤、帯電防止剤、消泡剤、各種界面活性剤等を含有させてもよい。
【0055】
かかる下引き層には、帯電防止性能があることがより好ましく、帯電防止剤を含有させることもできる。 代表的な帯電防止剤としては、スルホン酸金属塩やカチオン系帯電防止剤がある。
【0056】
スルホン酸金属塩としては、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホイソフタル酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩を挙げることができる。金属塩の金属元素としては、リチウム、カリウム、ナトリウムが良い。
【0057】
カチオン系帯電防止剤としては、例えば、4級アンモニウム塩基を有する化合物がある。これは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つ化合物を指す。 そのような構成要素としては例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0058】
特に、4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物が良く、数平均分子量が通常は1000以上であり、さらには2000以上、特に5000以上、500000以下であることが望ましい。分子量が低すぎる場合は、帯電防止剤がブリードアウトし、接触する面に転移するトラブルを発生させる。分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎ、塗布性が悪くなるトラブルが発生する。
【0059】
かかる下引き層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm。薄いと接着性を発揮できないことがあり、厚いとポリエステルフィルム同士のブロキングが生じることがある。
【0060】
ポリエステルフィルムにコート液をコートする方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0062】
(1)ポリマーの極限粘度[η](dl/g)の測定方法
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中に溶解させ、ウベローデ型粘度計にて30℃で測定した。
【0063】
(2)フィルム厚みの測定方法
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し、測定値を10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0064】
(3)積層ポリエステル層の厚みの測定方法
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0065】
(4)ヘーズの測定方法
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0066】
(5)380nm、400nmの光線透過率の測定方法
島津製作所社製 分光光度計UV3100により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300〜700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nmおよび400nm波長での光線透過率を検出した。
【0067】
(6)引張破断強度の測定方法
(株)インテスコ製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料フィルムを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm)
【0068】
実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。なお、これら原料は、重合時に異物の発生や混入のないように、最適な触媒と重合手段を採用した。
<ポリエステル1>
通常の溶融宿重合法にて、実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエステル1を製造した。
<ポリエステル2>
通常の溶融宿重合法にて、粒径0.37μmの有機粒子を0.03部含有する、極限粘度0.66のポリエステル2を製造した。
<ポリエステル3>
通常の溶融宿重合法にて、平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.12部含有する極限粘度0.66のポリエステルチップを得た。
【0069】
<ポリエステル4>
ポリエステル1をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638 分子量 369 ベンゾオキサジン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルを製造した。得られたポリエステル4の極限粘度は、0.59であった。
<ポリエステル5>
ポリエステル1をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤としてビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン(旭電化工業(株)社製 アデカスタブLA−51 分子量469 ベンゾフェノン系)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステル5を作成した。得られたポリエステル5の極限粘度は、0.59であった。
【0070】
これらチップは、十分に乾燥し、水分量を50ppm以下にしてから使用した。
【0071】
実施例1:
ポリエステル1とポリエステル4をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料をポリエステル6とし、ポリエステル6とポリエステル2とをそれぞれ別の押出機にて溶融させて、異物を除去すべく最精細なフィルムターで濾過した後、積層ダイへ導き、ポリエステル2(A層)/ポリエステル6(B層)/ポリエステル2(A層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を得、次いで、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得た。次いでフィルム温度82℃にて縦に3.4倍延伸し、次いで120℃の雰囲気で横に3.6倍延伸し、次いで225℃にて熱処理して厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。 A層/B層/A層 の厚み構成は、5μm/90μm/5μmであった。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの縦および横方向の破断強度は共に190MPa、フィルムヘーズは0.7%、380nmの光線透過率は0.05%以下だった。また、400nmの光線透過率は85%で色素の励起を妨げることはなかった。この二軸延伸ポリエステルフィルムは、強度が高く、紫外線を完全に吸収し、かつ400nm以上の光線透過率が優れるので、フレキシブルな色素増感太陽電池の透明基板に最適であった。
【0072】
実施例2:
ポリエステル1とポリエステル4をそれぞれ90%、10%の割合で混合する以外は、実施例1と同様にして厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの縦および横方向の破断強度は共に190MPa、フィルムヘーズは0.7%、380nmの光線透過率は0.5%だった。また、400nmの光線透過率は86%で色素の励起を妨げることはなかった。
【0073】
比較例1:
ポリエステル1とポリエステル5をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料をポリエステル7とし、ポリエステル7とポリエステル3を用いて実施例1と同様な方法で厚さ100μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。ポリエステル3(A層)/ポリエステル7(B層)/ポリエステル3(A層)の厚み構成は、5μm/90μm/5μmであった。得られたポリエステルフィルムの縦および横方向の破断強度は共に190MPa、フィルムヘーズは4.0%、380nmの光線透過率は1.4%だった。また、400nmの光線透過率は44%であり、色素の励起に有効な波長を少し吸収していた。
【0074】
比較例2:
ポリエステル1とポリエステル2とをそれぞれ別の押出機にて溶融させて、異物を除去すべく最精細なフィルムターで濾過した後、積層ダイへ導き、ポリエステル2(A層)/ポリエステル1(B層)/ポリエステル2(A層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を得、次いで、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得た。次いでフィルム温度82℃にて縦に3.4倍延伸し、次いで120℃の雰囲気で横に3.6倍延伸し、次いで225℃にて熱処理して厚み100μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。A層/B層/A層の厚み構成は、5μm/90μm/5μmであった。得られたポリエステルフィルムの縦および横方向の破断強度は共に190MPa、フィルムヘーズは0.7%、380nmの光線透過率は78%だった。また、400nmの光線透過率は89.2%だった。このポリエステルフィルムは、色素の励起には全く問題はないが、紫外線を透過し、酸化チタンの励起を促すため、色素の分解が生じやすくなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、紫外線による劣化の少ない色素増感太陽電池を得るための二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、特にフレキシブルな色素増感太陽電池の開発が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素増感太陽電池の構成部材として使用される二軸延伸ポリエステルフィルムであり、当該フィルムはベンゾオキサジン系紫外線吸収剤を0.01〜10重量%含有し、波長380nmの光線透過率が20.0%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−15117(P2012−15117A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180168(P2011−180168)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2004−162840(P2004−162840)の分割
【原出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】