説明

色素増感太陽電池

色素増感太陽電池であって、分子構造が末端基、疎水性部分及び固定用基を含む稠密化用化合物がフォトアノードの半導体金属酸化物層上に色素と共に共吸着されて密な混合自己集合単分子層を形成している電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池すなわちDSSCに関する。DSSCは、フォトアノードであってしかも少なくとも1種の発色物質により増感されたところの導電性基板上の少なくとも1つの半導体金属酸化物層を含むフォトアノード、対電極、及びこれらの電極間に配置された電解質を含む再生光電気化学電池である。
【0002】
このタイプの電池において、これらの電極の少なくとも一つは、光入力を可能にするのに十分に透明又は半透明である。上記の半導体金属酸化物層は、好都合には多結晶質である。この目的のために、遷移金属並びに元素周期表の第3主族又は第4、第5及び第6副族のどちらかの元素の酸化物が特に適しており、しかも電解質と接触しているフォトアノードの表面は多孔質で、好ましくは少なくとも20の多孔度率を有する。「多孔度率」は、半導体金属酸化物の層により覆われた基板の表面積に対するフォトアノードの光電気化学活性表面積の比率と定義される。
【0003】
ナノ結晶質二酸化チタンの使用が、特に有利であると示された。用語「ナノ結晶質」は、半導体金属酸化物特にTiO2が数ナノメートルの程度たとえば10から50ナノメートルの粒度測定値を有する多結晶質形態にあることを意味する。
【0004】
このタイプの電池において、発色物質(しばしば光増感剤又は光増感色素と呼ばれる)は、好ましくは、半導体金属酸化物層特にナノ結晶質TiO2層に付着された実質的に単分子層を形成する。発色物質は、カルボキシレート若しくはホスホネート若しくはシアノ基又はオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα−ケト−エノラートのようなΠ伝導特性を備えたキレート基のような固定用基により、金属酸化物層に結合され得る。いくつかの遷移金属錯体、特に複素環式配位子(二座、三座又は多座ポリピリジル化合物のような)を備えたルテニウム錯体しかしまたオスミウム又は鉄錯体は、有能な光増感色素であると示されている。このタイプの電池は既に公知であり、そしてとりわけ欧州特許第0333641号明細書及び欧州特許第0525070号明細書に記載されている。
【0005】
適当な電解質の中に、少なくとも1種の電気化学活性塩とこの塩のアニオン又はカチオンのどちらかと共に酸化還元系を形成するように意図された少なくとも1種の分子との混合物から成るレドックス系を含むものがある。該電気化学活性塩が周囲温度未満の融点を有するか又は該分子と共に周囲温度未満の融点を有する相を形成するところの電解質が、欧州特許第0737358号明細書に記載されている。
【0006】
色素増感太陽電池は、慣用の無機光起電装置の経済的に確かな代替品を与える。それらの高エネルギー変換効率及び低生産コストの故、それらはここ10年間以上かなりの注目を受けてきた。これらの電池におけるTiO2薄膜の中間視的組織は、表面に固定された電荷移動増感剤により獲得される光の横断面積を有意的に増加する一方、電解質との良好な接触を維持する。これらの光起電装置において、酸化物半導体の伝導帯中への光励起色素からの超高速電子注入、並びに引き続いて色素再生及び対電極への正孔輸送が、効率的な発電の原因である。
【0007】
J. Am. Chem. Soc.,123,1613〜1624(2001)に報告されているように、パンクロ色素及びトリヨウ化物/ヨウ化物カップルを含有する液体電解質を備えた光起電装置について、AM1.5太陽輻射照度におけるまずまずの10.4%光対電気変換効率が得られている。
【0008】
Bonhoete等(J. Am. Chem. Soc.,1999,121,1324〜1336)は、TiO2薄膜上の光増感色素及びこの色素上にグラフトされた又はこの色素と共に共吸着された電子供与性トリアリールアミンを含む集合体における光誘発電荷分離を研究した。
【0009】
国際公開第03/065394号パンフレットは、電荷移動効率を改善する及び増感色素への半導体酸化物からの電子の逆移動を低減するために、電子を増感色素に供与する能力を有するところの芳香族アミン特にトリアリールアミン及びカルバゾールを包含する物質のクラスに属する共増感剤の、半導体酸化物層の表面上における共吸着を提案する。
【0010】
しかしながら、DSSCの屋外適用について重要な要件である80〜85℃の温度における長期安定性の達成は、依然として主要な難題のままである。
【0011】
かかるDSSCモジュールからの液体電解質の漏洩、ゆるく付着された色素のあり得る脱着及び脱着状態における光分解、並びにトリヨウ化物/ヨウ化物カップルによる光電極及び/又は対電極の腐食が、DSSCの長期性能(特に、高められた温度において)を制限するいくつかの決定的な因子と考えられ得る。ヨウ化物/トリヨウ化物レドックスカップルを含有するDSSCについての80℃における安定性の特定の問題は、老化時において、不良な安定性の原因である開路電位(Voc)の低下である。トリヨウ化物とTiO2電極の裸帯域(すなわち、色素分子で完全には覆われていない)との相互作用に因り、DSSCの暗電流は増加しそしてVocは減少する、ということが信じられる。屋外使用のための安定性基準を満たす高効率の装置を実現する努力は、新規の対電極物質、代替レドックスカップル及び新規の増感剤を取り扱い得る。加えて、液体電解質を準固体状態の物質により置換するために、欧州特許第1087412明細書により開示されたように、レドックスカップルとしてトリヨウ化物/ヨウ化物が組み込まれているゲル化物質が紹介された。非導電性ポリマー及び有機溶融塩を含むポリマーゲル電解質が米国特許第6,245,847号明細書により提案されており、しかして熱応力下の漏洩に対して電位不安定性を軽減するためにリチウム電池、スーパーコンデンサー又はエレクトロクロミック窓への適用が特に強調されている。
【0012】
しかしながら、受容可能な効率と共に、80℃まで及び80℃を超える温度における満足な長期熱安定性の結果は、高パワーDSSCについて今日まで報告されておらず、そして単独で又は組合わせにてDSSCのかかる熱安定性を改善することが可能である手段を提案することが依然として必要である。
【0013】
本発明によるDSSCの第1側面によれば、両親媒性稠密化用化合物が色素と共に半導体金属酸化物層の表面上に共吸着されて、混合単分子層を形成する。該稠密化用化合物の分子構造は、少なくとも1個の固定用基、疎水性部分及び末端基を含む。
【0014】
半導体金属酸化物層の表面に結合するところの稠密化用化合物の固定用基は、COOH、PO32、PO42、SO32、SO42、CONHOH又はそれらの脱プロトン化形態から成る群から選択され得る。
【0015】
稠密化用化合物の固定用基はまた、Π伝導特性を備えたキレート基、特にオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート又はα−ケト−エノラート基であり得る。
【0016】
混合単分子層の光学密度測定値は、純色素から作られた吸着単分子層の光学密度と比較される場合光学密度の減少を示すので、稠密化剤は色素分子と共に表面上に納まってかかる単分子層を稠密にするように思える。かくして、該増感色素と該稠密化用化合物は、該半導体金属酸化物層上で自己集合稠密混合単分子層を形成する、ということが信じられる。
【0017】
稠密化用化合物の疎水性部分は色素分子の相当する部分と共に、単分子層内で密な疎水性レベルを成して、半導体金属酸化物層の表面への電解質中に存在する極性化学種の接近を妨げる、ということが更に信じられる。
【0018】
稠密化用化合物の末端基は、非荷電基であり得る。末端基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル又はポリエーテル鎖の自由端から成り得る。末端基は、分枝状アルキル又はいくつかのシクロアルキル若しくはフェニル基により置換された炭素原子のような、より多い量の空間を占める中性基から成り得る。
【0019】
理論により縛られることなく、増感色素と共に共吸着された稠密化用分子が十分な鎖長を有する場合そしてこれらの鎖の末端が分枝状アルキルのような嵩張った中性疎水性基により構成された末端基(Y)を担持するならば、これらの末端基は、電解質成分とりわけトリヨウ化物から及びまた水から(DSSC中の後者の微量の存在はほとんど避けられ得ない)色素層及びアノード表面を保護するキャッピング機能を有する、ということが信じられる。
【0020】
稠密化用化合物の末端基は、アニオン基であり得る。かかる末端基は、固定用基と同じ群の中で選択され得、すなわちSO3-、CO2-、PO32-、PO3-、CONHO-であり得る。
【0021】
稠密化用化合物の末端基は、カチオン基であり得る。かかる末端基は、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、イミダゾリウム、ピロリドニウム及びピリジニウム基の中で選択され得る。
【0022】
今度は、増感色素と共に共吸着された分子が十分な鎖長を有する場合そしてこれらの鎖の末端が荷電基(Y)を担持するならば、これらの基は単分子層の疎水性レベルに打ち勝ち、そして電解質中に存在する化学種を反発することが可能であり、それにより電解質の化学種と半導体金属酸化物表面それ自体の部分との直接的相互作用をやはりまた防ぐ。
【0023】
高められた温度において太陽に暴露される屋外使用に鑑みて、稠密化用化合物は、好ましくは、該自己集合単分子層が80℃を超える秩序無秩序転移温度を有する密充填単分子層になるように選択される。
【0024】
好ましい稠密化用化合物は、次の式(1)から(27)の化合物の中で選択される。すなわち、
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
但し、
P=Q=H(水素)又は
P=H及びQ=F(フッ化物)又は
P=Q=F
であり、
X及びX′は互いから独立して、基SO3-、CO2-、PO32-、PO3-及びCONHO-の一つであり、
n、n′及びn″は、1から20の同じ又は異なる整数を表し、
Y及びY′は互いから独立して、基SO3-、CO2-、PO32-、PO3-及びCONHO-の一つ、又は式(101)から(105)
【0028】
【化4】

【0029】
〔ここで、R1、R2、R3は互いから独立して、H、フェニル基又は1から20個の炭素原子のアルキル基を表す〕
の一つを有する基である。
【0030】
稠密化用化合物は、アルキルカルボン酸、アルキルジカルボン酸、アルキルカルボキシレート、アルキルホスホン酸、アルキルホスホネート、アルキルジホスホン酸、アルキルジホスホネート、アルキルスルホン酸、アルキルスルホネート、アルキルヒドロキサム酸、アルキルヒドロキサメート(ここで、アルキルはC1からC20の線状又は分枝状である)から成る群から選択され得る。
【0031】
稠密化用化合物は、シクロヘキサンカルボン酸、アダメンタン酢酸、アダメンタンプロピオン酸及び4−ペンチルビシクロ(2,2,2)−オクタン−1−カルボン酸から選択され得る。
【0032】
上記に挙げられた稠密化用化合物のいずれも、電子供与性化学種でない。
【0033】
該増感色素対該共吸着稠密化用化合物のモル比は、10と1/2の間好ましくは5と1の間にあり得る。色素及び共吸着剤の選択すなわちTiO2層に対するそれらの相対親和定数に依存して、色素と共吸着剤の比率は、それらが同時にすなわち同じ製造工程内で吸着される場合それらの共通の溶媒中で1:10から10:1にて変動され得る。その代わりに、稠密化用化合物は、色素の吸着前に前処理として前吸着工程にて又は色素の吸着後に後処理として別個の吸着工程にて吸着され得る。
【0034】
理論により縛られることなく、上記の比率にて共吸着された増感色素分子及び稠密化用化合物分子は、バリヤー(特にトリヨウ化物に対して)を形成する密に充填された単分子層を構成する、ということが信じられる。トリヨウ化物はもはやTiO2表面に達し得ない並びにそれ故トリヨウ化物へのTiO2の光注入電子からの逆電子移動を減少することにより暗電流は減少する、ということが信じられる。混合単分子層の疎水性部分はH2Oに対するバリヤーを構成して、水残分がフォトアノードの表面に達するのを妨げる、ということも信じられる。共吸着用の稠密化用化合物の存在は、吸着色素分子の配列を構造化するのに寄与する、ということが更に信じられる。
【0035】
本発明の対象であるDSSCの第2側面によれば、増感色素は、両親媒性構造を有する色素の中で選択され得る。これらの中で、両親媒性構造を有するルテニウム錯体は、Ruの複素環式配位子上の疎水性置換基特に調和長さの脂肪族鎖を置換することにより得られ得る。適当な色素の中に、式RuLL′X2(ここで、Lは4,4′−ジカルボン酸−2,2′−ビピリジンであり、そしてL′は4,4′−ジアルキル−2,2′−ビピリジン(ここで、アルキル置換基は中サイズの鎖長特にC6〜C20を有する)であり、そしてXはハロゲン、H2O、CN及びアミン、NCS又はNCOである)の化合物がある。
【0036】
特に好ましい増感色素はZ−907と呼ばれ、しかしてZ−907は式RuLL′(NCS)2(ここで、Lは配位子4,4′−ジカルボキシレート−2,2′−ビピリジンを表し、そしてL′は配位子4,4′−ジノニル−2,2′−ビピリジンを表す)のRu(II)錯体である。
【0037】
理論により縛られることなく、両親媒性増感色素の疎水性部分、特にC6〜C20の間の中サイズの長さの置換基アルキル鎖は、適切な長さのアルキル鎖のような上記の共吸着用の稠密化用化合物の疎水性部分と協同して、密集配列体すなわち半導体金属酸化物層の表面を遮蔽する実質的に密な疎水性層を形成する、ということが信じられる。
【0038】
本発明の対象であるDSSCの別の側面によれば、DSSCの電解質は、高沸点を有する極性有機溶媒を含み得る。標準大気圧において100℃を超える沸点が好ましい。本発明の構成において有機溶媒として用いられるべき適当な化合物は、ニトリル内にあり得る。好ましいニトリルは、3−メトキシプロピオニトリル(MPN)である。
【0039】
溶媒は、一方では、電解質中に存在する電気化学活性塩及び/又は該塩のイオンと共にレドックスカップルを形成する化合物を可溶化するのに有用であり得る。他方では、比較的低い沸点を有する溶媒は、電池の製造過程中マトリックスポリマーを溶解するのに有用であり得、しかして該溶媒の一部は該過程の完了時にたとえば真空下で吸引により除去される。電解質の1〜20重量%になり得る溶媒はまた、マトリックスポリマーに可塑剤として作用し得る。
【0040】
本発明の対象であるDSSCの更なる側面によれば、DSSCの電解質は、ゲル化用化合物、特にポリマーマトリックスを形成するポリマーを含み得る。ポリマーマトリックスは、電解質に有益な物理的状態すなわち固体状態、準固体状態、ゴム様状態又はゲル状態を与え(組成に依存する)、しかして悪条件下の電池の動作温度(すなわち少なくとも80℃まで)に維持される。適当なポリマーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−HFP−CTFE)コポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びそれらの誘導体から選択され得る。好ましいポリマーは、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−HFP)である。
【0041】
本発明の対象であるDSSCの電解質はまた、ゲル化用化合物として、ゲルマトリックスを形成することの可能なナノ粒子の形態の金属酸化物を含み得る。かかるゲルマトリックスは、電解質に有益な物理的状態すなわち固体状態、準固体状態又はゲル状態を与え、しかして悪条件下の電池の動作温度(すなわち少なくとも80℃まで)に維持される。適当なナノ粒子金属酸化物は、SiO2若しくはTiO2若しくはAl23、又はMgO若しくはTiO2ナノチューブ若しくはTiO2ナノロッドから選択され得、そしてゲルは該ナノ粒子を小割合好ましくは電解質の2〜20wt%にて含有する。好ましいゲル化用化合物は、SiO2又はTiO2ナノ粒子である。
【0042】
本発明によるDSSCの更に別の側面において、電解質は、周囲温度において固体でありそして溶媒中に溶解されるものとする電気化学活性塩の代わりに、いわゆる「室温溶融塩」、周囲温度より低い融点を有する電気化学活性塩、又は塩であってしかもこの塩とレドックス系の別の化学種とにより形成された混合物が周囲温度より低い融点を有するように選択された塩を含み得る。その場合には、溶媒の存在は避けられ得る。電気化学活性塩のカチオンは、少なくとも1個の第4級窒素を含み得る。第4級窒素は、次の一般式(a)又は(b)に相当するイミダゾリウム及びトリアゾリウムタイプの基から選択された基中に含まれ得る。すなわち、
【0043】
【化5】

【0044】
ここで、基R1、R2、R3、R4及びR5は同一又は異なり、そして水素並びに1から20個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基、1から20個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルコキシ基、アルキル基のフッ化物置換誘導体、アルケニル基、及びこれらの基の組合わせ及び対応するハロゲン化物から、あるいはアルコキシアルキル及びポリエーテル基から選択される。
【0045】
電気化学活性塩のカチオンはまた、次の一般式(c)、(d)又は(e)に相当するアンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム基であり得る。すなわち、
【0046】
【化6】

【0047】
ここで、基R1、R2、R3、R4は上記と同じ意味を有する。
【0048】
上記のイオン性液体塩のアニオンは、ハロゲン化物イオン若しくはポリハロゲン化物イオン、又は少なくとも1個のハロゲン化物イオン、CF3SO3-、CF3COO-、(CF3SO23-、NO3-、PF6-、BF4-、N(CN)2-、NCS-、SeCN-、ClO4-、C(CN)3-、RSO3-若しくはRSO4-(ここで、Rは水素並びに1から20個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキル基、1から20個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルコキシ基から選択される)を含有する錯アニオンから選択され得る。
【0049】
電解質のレドックス系は2種又はそれ以上の塩を含み得、しかしてこれらの塩の各々は周囲温度未満の融点を有し、そしてアニオンは2種の異なる電解質のカップルたとえばヨウ化物/臭化物カップルを形成する。
【0050】
本発明の対象であるDSSCの更に更なる側面において、電解質は、電気化学活性塩のアニオン又はカチオンのどちらかと協同するすなわちこのイオンと共にレドックスカップルを形成する第1化合物が組み込まれる。かかるカップルのよく知られた例として、電気化学活性塩のアニオンがI-である場合、それぞれ元素である中性分子はヨウ素である。
【0051】
本発明の対象であるDSSCの更に更なる側面において、電解質は、孤立電子対を備えた1個又はそれ以上の窒素原子を含む中性分子の形態の安定化用添加剤が組み込まれ得る。
【0052】
該中性分子は、次式
【化7】

〔ここで、R′1及びR′2は互いから独立してH、アルキル、アルコキシル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ−アルキル、ポリエーテル及び/又はフェニルであり得、しかも各置換基の炭素原子の数は1から20の範囲にあり、そして置換基は線状又は分枝状である〕
を有する分子から選択され得る。
【0053】
好ましい化合物は、ベンゾイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−フェニルベンゾイミダゾール及び1,2−ジメチルベンゾイミダゾールである。
【0054】
電解質中の上記の中性添加剤化合物の存在は、DSSCの安定性を増加する。
【0055】
本発明によるDSSCの他の詳細及び利点、特に高温における改善された性能及び安定性は、図面と共に次の例の記載から当業者に明らかになるであろう。
【0056】
例1:自己集合単分子層の製作
色素Z−907は、Langmuir,2002,18,952〜954又はNature資料2003,,402〜407に記載された方法に従って合成される。
【0057】
TiO2粒子のスクリーン印刷された二重層を、フォトアノードとして用いた。20nmサイズのTiO2粒子の10μm厚の薄膜をフッ素ドープSnO2導電性ガラス電極上に最初にプリントし、そして400nm光散乱性アナターゼ粒子(日本国のCCIC)の4μm厚の第2層により更に被覆した。500℃にて焼結しそして80℃まで冷却した後、このTiO2電極をアセトニトリル及びtert−ブタノール(容量比1:1)中のZ−907の0.3mmol・l-1溶液中に室温にて12時間浸漬することにより色素で被覆し、そして次いで熱的に白金メッキされた導電性ガラス電極と共に組み立てた。
【0058】
色素と共吸着剤化合物1−デシルホスホン酸(DPA)を併せ持つ自己集合単分子層を、上記と同じ溶媒中にZ−907及び共吸着剤化合物を4:1のモル比にて溶解することにより得た。一晩浸漬した後、この電極をアセトニトリルで洗浄して、ゆるく結合された色素及び/又は共吸着剤分子を除去した。純Z−907がTiO2層上に吸着されている光電極の太陽電池の後続構築工程と、併用されたZ−907+共吸着剤がTiO2層上に吸着されている光電極の太陽電池の後続構築工程は同じである。
【0059】
例2:ポリマーゲル電解質を備えた太陽電池の製作
電極を35μm厚のホットメルトリング(バイネル(Bynel),DuPont)により分離し、そして加熱することにより封着した。PVDF−HFP(5wt%)をMPN(3−メトキシプロピオニトリル)中のDMPII(1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド0.6mol・l-1)、ヨウ素(0.1mol・l-1)、NMBI(N−メチルベンゾイミダゾール0.5mol・l-1)から成る液体電解質と混合し、そして固体が観察されなくなるまで加熱した。セルの内部空間を、真空ポンプを用いて、生じた熱溶液で満たした。室温まで冷却した後、一様な不動のポリマーゲル層がセル中に形成された。対電極ガラス基板上に砂射出式ドリルで作られた電解質注入穴を、バイネル(Bynel)シート及び薄いガラスカバーでもって加熱により封鎖した。ポリマーゲル電解質との良好な比較をするために、液体電解質を備えた装置もまた、上記の手順を用いて製作した。
【0060】
図1は、AM1.5太陽光の照射下のZ−907色素及びポリマーゲル電解質を基剤とした電池についての典型的な光電流密度−電圧曲線を示す。短絡光電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)及びフィルファクター(FF)はそれぞれ12.5mA・cm-2、730mV及び0.67であり、6.1%の総合エネルギー変換効率(η)をもたらす。光電流の作用スペクトルは、図1の差込図に示されている。入射光子対電流変換効率(IPCE)は、540nmにおいて80%の最大効率に達する。液体電解質でもって及びポリマーゲル電解質でもって得られた光起電性能はほとんど同一であり(表1)、しかしてゲル化が変換効率に悪影響を及ぼさないことを指摘する。
【0061】
【表1】

【0062】
例3:稠密化用共吸着剤なしで増感された電池の老化試験
図2は、ポリマーゲル電解質を含有するDSSCについて80℃にて遂行された老化試験中の装置パラメーターの詳細な挙動を示す。老化の第1週後、効率は、Jsc値及びFF値の増加に因り幾分高められた。次いで、Jsc及びFFの変動をあまり伴わないVocの徐々の小さい減少は、6%の総合効率の減少を引き起こした。これは、シリコン太陽電池について容認された熱劣化の限度内に十分ある。
【0063】
該装置はまた、100mW・cm-2の強度におけるソーラーシミュレーターでの促進試験に付された場合、優秀な光安定性を示した。かくして、55℃における1,000hの光ソーキング後、効率は、UV吸収性ポリマー薄膜で覆われた電池について5%未満しか低下していなかった(図3のグラフb)。ポリマー薄膜を備えて及び備えないで試験された装置についての効率差はAM1.5太陽光においてわずか4%であり、しかしてUVフィルターに因る効率の犠牲は非常に小さいことを指摘した。
【0064】
該電池の高い変換効率は80℃における1,000hの加熱下でさえ持続されて、図2に示されているようにこの期間後その初期値の94%を維持した。液体電解質を用いての装置は、同じ条件下でその初期性能の88%しか保持しなかった。この差は、ポリマーゲル電解質の場合のシーラントを横断する溶媒透過の減少から生じ得る。ポリマーゲル電解質は室温において準固体であるが、しかしブランク液体電解質(粘度:0.91mPa.s)と比較して80℃において粘稠な液体(粘度:4.34mPa.s)になる。6%を超える効率を有するDSSCによるかかる苛酷な熱応力の許容は今までにない。N−719色素RuL2(NCS)2の場合において総合効率は80℃において第1週中にほぼ35%減少したのに対して、図3のグラフaはDSSCの安定性に対する増感剤の分子構造の効果を明らかに反映している。N−719とZ−907の間の相違は、L配位子4,4′−ジカルボン酸−2,2′−ビピリジンの一つが4,4′−ジノニル−2,2′−ビピリジンで置き換えられて色素をより疎水性にしていることである。高温におけるN−719の脱着が関連装置の不良な熱安定性をもたらすことになった、ということを我々は信じる。今までのところ、色素増感太陽電池は、80と85℃の間の温度における性能劣化により悩まされてきた。以前の研究において得られた最良の結果は、電池が875hにわたって85℃に維持された場合、初期の4.5から3%への変換効率の低下であった。ポリマーゲル電解質と共に両親媒性Z−907色素の使用は、熱応力及び光ソーキングの両方の下で顕著に安定な装置性能をもたらすことになると分かった。
【0065】
例4:稠密化用共吸着剤としてHDMAを含む自己集合単分子層及び太陽電池の製作
色素と共吸着剤化合物ヘキサデシルマロン酸(HDMA)を併せ持つ自己集合単分子層を、上記と同じ溶媒中にZ−907及び共吸着剤化合物を1:1のモル比にて溶解することにより得た。一晩浸漬した後、この電極をアセトニトリルで洗浄して、ゆるく結合された色素及び/又は共吸着剤分子を除去した。純Z−907がTiO2層上に吸着されている光電極の太陽電池の後続構築工程と、併用されたZ−907+共吸着剤がTiO2層上に吸着されている光電極の太陽電池の後続構築工程は同じである。
【0066】
電極を35μm厚のホットメルトリング(バイネル(Bynel),DuPont)により分離し、そして加熱することにより封着した。MPN(3−メトキシプロピオニトリル)中のMPII(1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド0.6mol・l-1)、ヨウ素(0.1mol・l-1)、NMBI(N−メチルベンゾイミダゾール0.5mol・l-1)から成る液体電解質を、セル中に注入した。図4に示されているように、同じ電解質に関しての総合電池効率は、HDMA共吸着剤の存在下で、開路電位(Voc)及び電流密度の増加に因り7.2から7.9に増加する。種々の光強度における装置効率が、表2に報告されている。それは、Z−907色素と共にHDMAの共吸着に因る効率の向上を明らかに示している。
【0067】
【表2】

【0068】
例5:種々の電解質に関してのZ907+DPA混合単分子層を含有するDSSCの老化試験
色素と共吸着剤化合物1−デシルホスホン酸(DPA)を併せ持つ自己集合単分子層を、例1に記載されたようにして得た。
【0069】
5種の異なる電解質を作製した。
電解質1
溶媒として3−メトキシプロピオニトリル中の
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド=0.6mol・l-1
N−メチルベンゾイミダゾール=0.5mol・l-1
ヨウ素=0.1mol・l-1
電解質2
溶媒として3−メトキシプロピオニトリル中の
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド=0.6mol・l-1
N−メチルベンゾイミダゾール=0.5mol・l-1
ヨウ素=0.1mol・l-1
グアニジニウムチオシアネート=0.1mol・l-1
電解質3
溶媒として3−メトキシプロピオニトリル中の
1,2−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド=0.6mol・l-1
N−メチルベンゾイミダゾール=0.5mol・l-1
ヨウ素=0.1mol・l-1
SiO2=5wt%
電解質4
溶媒として3−メトキシプロピオニトリル中の
1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド=0.6mol・l-1
ヨウ素=0.1mol・l-1
N−ブチルベンゾイミダゾール=0.5mol・l-1
【0070】
電解質1を含有する電池を、80℃における促進老化試験に付した。図5に示されているように、共吸着剤DPAを備えた装置におけるVocの低下は、80℃における1,000h老化試験中において、色素層中に共吸着剤を有さない装置におけるVocの低下よりも有意的に遅い。すなわち、図5のグラフaにより示されているように、共吸着剤DPAの存在下のVocの低下は約25mVであるのに対して、共吸着剤の不存在下では約90mVである。図5のグラフbにより示されているように、1sun可視光ソーキング下での総合効率は、共吸着DPAの存在下で全試験中においてより高いままである。
【0071】
図6は、電解質2を含有するDSCに関して80℃にて遂行された老化試験中において、AM1.5太陽光にて測定された装置の効率の変動を示す。
【0072】
初期に、Jsc値及びFF値の増加に因る効率の増加がある。次いで、Jsc及びFFの変動をあまり伴わないVocの徐々の小さい減少は、10%未満の総合効率の減少を引き起こした。
【0073】
図7は、準固体電解質としての電解質3を含有するDSCに関して80℃にて遂行された老化試験中において、AM1.5太陽光にて測定された装置の効率の変動を示す。
【0074】
図8は、電解質4を含有するDSCに関して80℃にて遂行された老化試験中において、AM1.5太陽光にて測定された装置の効率の変動を示す。それは、1,000hの期間にわたって優秀な熱安定性を実証した。
【0075】
例6:Z907+PPA混合単分子層を含有するDSSCの老化試験
色素と共吸着剤化合物3−フェニルプロピオン酸(PPA)を併せ持つ自己集合単分子層を、上記と同じ溶媒中にZ−907及び共吸着剤化合物を1:1のモル比にて溶解することにより得た。一晩浸漬した後、この電極をアセトニトリルで洗浄して、ゆるく結合された色素及び/又は共吸着剤分子を除去した。電池の後続構築工程は、上記に記載されたのと同じである。電解質の組成は、次のとおりである。すなわち、
【0076】
電解質5
1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド及び1−メチル−3−エチルイミダゾリウムチオシアネートのイオン性液体(65:35の容量比)中の
N−ブチルベンゾイミダゾール=0.5mol・l-1
ヨウ素=0.2mol・l-1
【0077】
図9は、100mW・cm-2の強度におけるソーラーシミュレーターでの促進試験に付された場合の、電解質5を含有する装置の優秀な光安定性を示す。かくして、55℃における1,000hの光ソーキング後、効率は、UV吸収性ポリマー薄膜で覆われた電池について5%未満しか低下していなかった。
【0078】
要約すると、上記の諸結果は、増感色素と共に稠密化用化合物を含む混合自己集合単分子層の使用が熱的悪条件下でのDSSCの安定性を非常に高めることを実証している。それはまた効率を高める。両親媒性色素の使用は、安定性及び効率の更なる改善を与える。電解質の選択された成分に関する追加の手段は上記の手段と協同して、装置の総合効率を高める。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、光電流密度−電圧曲線である。
【図2】図2は、装置パラメーター対時間を示す。
【図3】図3は、変換効率対時間の展開を示す。
【図4】図4は、16−ヘキサデシルマロン酸である稠密化用共吸着剤の存在及び不存在の電流密度/電位の比較曲線を示す。
【図5】図5は、10−デシルホスホン酸である稠密化用共吸着剤の存在及び不存在の電流密度/電位の比較曲線を示す。
【図6】図6は、3種の異なる電解質に関して、同じ色素+稠密化用共吸着剤(10−デシルホスホン酸)層を備えた装置の効率対時間曲線を示す。
【図7】図7は、3種の異なる電解質に関して、同じ色素+稠密化用共吸着剤(10−デシルホスホン酸)層を備えた装置の効率対時間曲線を示す。
【図8】図8は、3種の異なる電解質に関して、同じ色素+稠密化用共吸着剤(10−デシルホスホン酸)層を備えた装置の効率対時間曲線を示す。
【図9】図9は、同じ色素+稠密化用共吸着剤3−フェニルプロピオン酸層及びイオン性液体電解質を備えた装置の効率対時間曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトアノードであってしかも光増感剤色素により増感されたところの導電性基板上の少なくとも1つの半導体金属酸化物層を含むフォトアノード、対電極、及び該半導体金属酸化物層と該対電極の間に配置された電解質を含む再生光電気化学電池において、分子構造が少なくとも1個の固定用基、疎水性部分及び末端基を含む両親媒性稠密化用化合物が、該半導体金属酸化物層上に該光増感色素と共に混合単分子層にて共吸着されている、ことを特徴とする電池。
【請求項2】
光増感色素と稠密化用化合物が半導体金属酸化物層上で自己集合混合単分子層を形成し、しかも光増感色素対共吸着稠密化用化合物のモル比が10と1/2の間特に5と1の間にある、ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
自己集合単分子層が、80℃を超える秩序無秩序転移温度を有する密充填単分子層である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
稠密化用化合物の固定用基が、COOH、PO32、PO42、SO32、SO42、CONHOH及びそれらの脱プロトン化形態から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
稠密化用化合物の固定用基が、Π伝導特性を備えたキレート基、特にオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート又はα−ケト−エノラート基である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
稠密化用化合物の末端基が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル又はポリエーテル鎖及び分枝状アルキル並びにいくつかのシクロアルキル又はフェニル基により置換された炭素原子から選択された中性基である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
末端基が、SO3-、CO2-、PO32-、PO3-及びCONHO-から成る群から選択されたアニオン基である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
末端基が、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム基から選択されたカチオン基である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
稠密化用化合物の疎水性鎖部分の長さが、末端基が単分子層中の増感色素より上に突き出るのを可能にする、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
稠密化用化合物が、式(1)から(27)
【化1】

【化2】

【化3】

の一つを有する化合物の群から選択され、
但し、
P=Q=H(水素)又は
P=H及びQ=F(フッ化物)又は
P=Q=F
であり、
X及びX′は互いから独立して、基SO3-、CO2-、PO32-、PO3-及びCONHO-の一つであり、
n、n′及びn″は、1から20の同じ又は異なる整数を表し、
Y及びY′は互いから独立して、基SO3-、CO2-、PO32-、PO3-及びCONHO-の一つ、又は式(101)から(105)
【化4】

〔ここで、R1、R2、R3は互いから独立して、H、フェニル基又は1から20個の炭素原子のアルキル基を表す〕
の一つを有する基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項11】
稠密化用化合物が、アルキルカルボン酸、アルキルジカルボン酸、アルキルカルボキシレート、アルキルホスホン酸、アルキルホスホネート、アルキルジホスホン酸、アルキルジホスホネート、アルキルスルホン酸、アルキルスルホネート、アルキルヒドロキサム酸及びアルキルヒドロキサメート(ここで、アルキルはC1からC20の線状又は分枝状である)から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項12】
稠密化用化合物が、シクロヘキサンカルボン酸、アダメンタン酢酸、アダメンタンプロピオン酸及び4−ペンチルビシクロ(2,2,2)−オクタン−1−カルボン酸から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項13】
増感色素が、二座、三座及び多座ポリピリジル化合物から選択された配位子及び少なくとも1個の固定用基を備えたルテニウム、オスミウム又は鉄錯体である、ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
増感色素が両親媒性ルテニウムポリピリジル錯体である、ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の電池。
【請求項15】
増感色素が、式RuLL′(NCS)2(ここで、Lは配位子4,4′−ジカルボキシレート−2,2′−ビピリジンを表し、そしてL′は配位子4,4′−ノニル−2,2′−ビピリジンを表す)のRu(II)錯体である、ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の電池。
【請求項16】
電解質が、有効ゲル化量のゲル化用化合物を含む、ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
ゲル化用化合物がマトリックス形成性ポリマーである、ことを特徴とする請求項16に記載の電池。
【請求項18】
ポリマーが、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVD−HFP)、ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン(PVD+HFP+CTFE)コポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びそれらの誘導体から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項17に記載の電池。
【請求項19】
電解質がポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)のコポリマーを含み、しかも該PVDF−HFPコポリマーの量が電解質の2重量%と50重量%の間にある、ことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の電池。
【請求項20】
ゲル化用化合物が、SiO2、TiO2及びAl23ナノ粒子、MgO及びTiO2ナノチューブ、TiO2ナノロッドから成る群から選択され、しかもゲルが該ゲル化用化合物を電解質の2重量%と20重量%の間特に10wt%の小割合にて含有する、ことを特徴とする請求項16に記載の電池。
【請求項21】
電解質がレドックス系を含み、しかも該レドックス系が電気化学活性塩及びこの電気化学活性塩のアニオン又はカチオンのどちらかと共にレドックスカップルを形成する第1化合物を含む、ことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の電池。
【請求項22】
電解質が室温溶融塩を含み、しかも該溶融塩が少なくとも標準室温と該室温より80℃高い温度の間で液体である、ことを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の電池。
【請求項23】
電解質が、標準大気圧において100℃又は100℃より大の沸点を有する極性有機溶媒を更に含む、ことを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の電池。
【請求項24】
溶媒が、3−メトキシプロピオニトリル及びブチロニトリルから選択されたニトリルである、ことを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項25】
電解質が、添加剤として、孤立電子対を備えた1個又はそれ以上の窒素原子を含む中性分子により形成された化合物を更に含む、ことを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の電池。
【請求項26】
中性分子が、次式
【化5】

〔ここで、R′1及びR′2は互いから独立してH、アルキル、アルコキシル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、ポリエーテル及び/又はフェニルであり得、しかも各置換基の炭素原子の数は1から20の範囲にあり、そして置換基は線状又は分枝状である〕
を有する、ことを特徴とする請求項25に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−525632(P2006−525632A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504186(P2006−504186)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000262
【国際公開番号】WO2004/097871
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(501300470)エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル) (3)
【Fターム(参考)】