説明

芝刈機

【課題】
簡便且つ安価な構造にて、冷却効率および衝撃強度が向上することができる芝刈機を提供すること。
【解決手段】
機体の上部に回転主軸上端に冷却ファンを備えたモータとモータ冷却風路を形成するモータカバーを設置し、モータカバーとは異なりモータを介さない集草風路を形成し、モータ冷却風路と集草風路を分離した芝刈機において、
モータカバー天井に至る外郭構造を緩斜壁によって構成することで、風路抵抗を少なくし、衝撃荷重を広い面積で受けるようにして衝撃強度を増加させ、さらに該外郭構造のモータカバー天井裏側に設けられた整流板は衝撃荷重に対するモータカバーを補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって回転刃を駆動して芝や草を刈り取る芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後方に立設されたハンドルを保持して作業を行う芝刈機が知られている。図7は従来の芝刈機101を上から見た上面図であり、図8に芝刈機101の横断面図(図7中のC−C断面図)、図9に芝刈機101の横断面図(図7中のD−D断面図)を示す。図8および図9において、モータ122の駆動によりギヤ123を介して前記刈取刃124を回転させ芝を刈る。ギヤ123を介して集草ファン125を駆動させ、集草流れ133を発生させ刈った芝を集草袋106へ格納する。またモータ122は冷却ファン128により冷却される。集草流れ131と冷却流れ132は粉塵の影響の少ない前方の開口部135(断面C−C)開口部136(断面D−D)より流入する。この様な構成の芝刈機は、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−105434号公報
【特許文献2】実開平5−21620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に記載の従来の芝刈機においては刈った際に発生する粉塵などでモータ性能が低下しないように集草流れには集草ファン、冷却流れには冷却ファンが分離して構成されていたが、このような構成においては、軽量化や低コスト化のためにモータの冷却ファンを小さなものにした場合に、モータの温度上昇が課題となっていた。
【0005】
また、軽量化や低コスト化を進めると、構造物の応力低下が懸念され、例えば、ハンドル部を持ち矢印の方向へ推し進めながら芝を刈る際に、刈取刃が石を弾くなど飛来物による衝撃加重がモータカバに生じ破損するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題を鑑みてなされたもので、その解決しようとする技術的課題は、簡便且つ安価な構成にて冷却効率の高い芝刈機を提供することである。また、石などの飛来物による衝撃加重にも十分耐えうる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の芝刈機は、車輪が取り付けられる本体と、前記本体に積載されると共に、進行方向と略垂直な上下方向に延びる回転軸を備えた電動モータと、前記電動モータに取付けられた冷却ファンと、前記本体の下部に露出し、前記電動モータの駆動を受けて回転する回転刃と、前記本体に前記電動モータを覆って取り付けられ、前記本体から上方に突出するモータカバーと、を備え、前記モータカバーは、下端側に開口し、入口付近に複数の第一整流板が配設された吸気口が開口すると共に、前記電動モータの回転軸に対して傾斜して形成された傾斜壁を備え、前記冷却ファンによって前記吸気口に導入された冷却風が、前記傾斜壁に沿って上昇した後、前記電動モータを通過する冷却風路を形成している。
【0008】
また、芝刈機は、前記モータカバーの天井付近に、前記冷却風路に沿って延びる複数の第二整流板を備えていることが望ましい。
【0009】
また、前記冷却風路は、前記吸気口から前記傾斜壁の下端までの間において、通路面積が増加する拡幅部を備えていることが望ましい。
【0010】
また、前記傾斜壁は、前記モータカバーの天井付近にて前記傾斜壁より斜度の緩い緩斜部と接続されていることが望ましい。
【0011】
また、前記冷却風路上において、前記電動モータより上流には、塵埃を濾過するフィルタを備えていることが望ましい。
【0012】
また、前記モータカバーには、前記吸気口と異なる集草用開口を有し、前記集草用開口から前記電動モータを介さずに後端に向かって芝草を送る集草風路が構成されていることが望ましい。
【0013】
また、前記冷却風路は、前記電動モータを通過した後に、前記集草風路に合流し、後端に向かって送られるよう構成されていることが望ましい。
【0014】
また、前記傾斜壁は、前記モータの回転軸に対して約25度から40度の傾きをもって傾斜していることが望ましい。
【0015】
また、前記傾斜壁の前記モータに対する傾斜角度は、約30度であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構成で、冷却効率が高く、衝撃強度を向上させた芝刈機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した芝刈機の側面図
【図2】本発明を適用した芝刈機の上面図
【図3】本発明を適用した芝刈機の断面図(図2の断面A−A)
【図4】本発明を適用した芝刈機の断面図(図2の断面B−B)
【図5】本発明を適用した芝刈機のモータカバー斜視図
【図6】本発明を適用した芝刈機のモータカバー裏側斜視図
【図7】従来の芝刈機の上面図
【図8】従来の芝刈機の断面図(図7の断面A−A)
【図9】従来の芝刈機の断面図(図7の断面B−B)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付の図1乃至図6に沿って説明する。図1は本発明を適用した芝刈機1の側面図、図2は本発明を適用した芝刈機1を上から見た平面図であり、図3に芝刈機1の横断面図(図2中のA−A断面図)、図4に芝刈機1の横断面図(図2中のB−B断面図)を示す。また、図5及び図6にはモータカバー単体の斜視図を示す。
【0019】
図1乃至図5に示すように、芝刈機1は、シャーシ2と、ボディカバー3と、モータカバー4と、ハンドル部5と、モータ22と、を備えている。シャーシ2は、鉄などの金属からなり、モータ22が上下方向に回転軸を備えた状態で積載され、底面には車輪を回動可能に備える。ボディカバー3は、硬質の樹脂によって形成され、内部に空洞を備え、シャーシ2を上方から覆っている。ボディカバー3には、所定の範囲内で回動可能なハンドル部5と、後端に着脱自在に取り付けられる集草袋6と、を備える。ハンドル部5は作業状態において図1に示すように芝刈機1の本体から後方に立設した状態となる。尚、本明細書中において、芝刈機1のハンドル部5が立設する方向を進行方向後方、その反対を進行方向前方として説明する。また、ボディカバー3の上部には上方に開口を有する円筒状のモータケースがボディカバー3から突出して形成されると共に、前記開口を覆う樹脂製のモータカバー4が取り付けられている。
【0020】
シャーシ2の底面中央には、芝や草を刈り取るための切断部24が設けられ、モータ22の駆動を受けて回転し、刈り取り作業を行えるよう構成されている。ハンドル部5にはスイッチ機構5a及び図示しない電源ケーブルが設けられ、作業者がスイッチ機構5aを操作することで、モータ22に通電され、駆動部24が動作するよう構成されている。シャーシ2の前方底面には、左右一対の車輪7が設けられ、後方底面には、ローラ8が、それぞれ回転可能に設けられている。車輪7及びローラ8はリンク機構で接続され、ボディカバー3から突出する刈込高さ調整部10を操作することで、車輪7及びローラ8に対するシャーシ2の高さ位置を変更可能に構成され、任意の刈込高さを得ることが可能となっている。
【0021】
シャーシ2に配置された切断部24は、回転刃24a及び固定刃24bから構成され、それぞれスプリングにより常に擦れ合うよう付勢されている。シャーシ2に固定されたモータ22は、下方に延出する出力軸22aを備え、ギヤ23と接続されている。また、モータ22の出力軸22aは、ギヤ23が設けられる側と反対側に冷却風を発生させるための冷却ファン28が固定されている。ギヤ23は切断部24の回転刃24aと接続され、モータ22の回転力を回転刃24aに伝達可能に構成されている。また、ギヤ24は他方にて集草ファン25と接続されている。
【0022】
図4に示すように、集草ファン25の回転により発生した集草流31は、シャーシ2下面に設けられた送風ガイドによって後方に向かって流れ、切断部24周辺を通過し、刈り取った芝を集草袋6へ格納する。またモータ22は、図3に示すように回転軸上に冷却ファン28を備え、モータ22の回転によりモータ22を上方から下方に向かって通過する冷却流れ32を発生させ、モータ22を冷却させる。また、モータカバー4には、外部空間からカバー3、4の内部空間へと空気を引き込むための冷却流れ開口部35及び集草流れ開口部36が形成されている。冷却流れ開口部35及び集草流れ開口部36は粉塵の侵入を抑制するため、モータカバー4前方に配置され、更に、内部で発生した騒音が上方に漏れないよう、カバー4の下端に配置されている。
【0023】
モータカバー4はボディカバー3の上面により下方が閉じられることで、複数の通路を形成している。冷却流れ開口部35は、前後方向に延びる水平通路14と接続され、水平通路14は奥行き(拡幅部)4cを有し、傾斜通路15と接続され、天井通路16に連通している。水平通路14には、冷却流れ開口部35から前後方向に亘って延びるから水平壁41が一体に形成されている。第一整流板41は薄板状に複数形成され、流れ方向に沿って平行に配列されている。第一整流板41の奥にはフィルタ43が設けられ(図3では省略)、水や粉塵の浸入を抑制している。モータカバー4の傾斜壁4aはモータ22の回転主軸に対しておおむね30度傾けて形成されている。
【0024】
モータカバー4の傾斜壁4aは、モータカバー4内に侵入した冷却風32が進行方向を変更するために極力抵抗とならない範囲で傾斜していることが望ましく、モータ回転軸22aに対しおおむね25度から40度の範囲であることが望ましい。傾斜通路15は、モータの回転主軸に対して傾きを有して形成された傾斜壁4aと、略垂直に設けられたモータケース26とによって画成され、下方が上方より前後方向に広くなるよう構成され、水平通路14との接続部において前後方向に奥行き4cを形成している。また、傾斜壁4aは、傾斜壁4aより角度の緩い外郭構造を有する緩斜部4bにより天井壁となだらかに接続されている。傾斜壁4aの終端から緩斜壁4b、天井壁にかけては、前後方向に亘って延びる第二整流板42が一体に形成されている。第二整流板42は平行に複数設けられ、緩斜部4bにおいて最も突出すると共に、天井壁の後方側まで形成される。
【0025】
集草流れ開口部36は、冷却流れ開口部35より前方に形成されており、ファン25が配置された部屋と連通する水平通路18と接続されている。集草ファン25は遠心ファンにより構成され、水平通路18を通過する風が集草ファン25に中心軸付近から導入され、外周方向に送られると共に、送風ガイドによって反転し、集草袋6へと流れる集草流れ31を形成している。尚、集草流れ31の通過する水平通路18は、冷却流れ開口部35と反対側の端部にてモータ22の下端と連通しており、モータ22を冷却した後の冷却流れ32(排出流れ34)は、集草流れ31と共に集草ファン25に導入され、集草バッグ6へと送られる。
【0026】
このように構成される芝刈機1では、作業者が図示しない電源ケーブルを外部電源に接続し、作業者はハンドル部5を把持し、スイッチ機構5aを操作することでモータ22に電力が供給され、切断部24が駆動する。この状態で矢印9の方向へ推し進めることで、芝の刈り取り作業を行うことができる。
【0027】
モータ22に電力が供給されると、モータ22の軸に取り付けられた冷却ファン28、及びギヤ23を介してファン25が回転する。
【0028】
冷却流れ32と集草流れ31とはそれぞれの開口部を通ってボディカバー3とシャーシ2及びモータカバー4とボディカバー3の内部空間に流入する。
【0029】
冷却流れ32は、従来より大きく開けたモータカバーと本体カバの組み合わせで形成された冷却流れ開口部35において十分取り込まれ、また、従来より長く設定したモータ冷却風取入口整流板41で十分整えられ、モータ22回転主軸に対しおおむね30度傾けて機体上向きに冷却風を案内するように設けた傾斜壁15を伝いながら上昇する。このとき開口部から傾斜壁4aへと流れが変化する部分の奥行き4cを広く取ることで流れ損失を減少させる。冷却風32は、吸気口35によって内部に導入され、整流板41が形成された水平通路14を通過し、奥行き4cによってモータケース26と衝突することなくモータカバー4の奥に入り込むことで、滑らかに傾斜通路15に接続される。
【0030】
次に、モータを通過し冷却を終えた排出流れ34は、開口部36から流入した集草流れ31とともに集草ファン25に取り込まれる。冷却ファン28に取り込まれる冷却風が増大することで、冷却風の排出流れ34も増大し、集草ファン25の効率を向上させることが出来る。
【0031】
冷却ファン28へと無理なく案内させるため、傾斜壁4aをモータ22回転主軸に対し傾斜させ、緩斜壁4bにより天井壁に設けた整流板42へと案内され、冷却ファン28に吸い込まれるよう構成したことにより、冷却流れ32の流れ損失を極力抑制し、冷却ファン28に取り込まれる冷却風が増大する。また、冷却効率を向上することで、冷却ファンのコンパクト化が可能となる。
【0032】
また、傾斜部と天井壁とをなだらかに形成された緩斜部4aにより接続したことで、衝撃荷重を広い面積で受けることが可能となり、石を弾くなど飛来物の衝撃加重によるモータカバ4の破損が抑制される。さらに、このような構成によれば、鋭角に変形する箇所を極力減らすことで局所的な面の変形を抑制し、バネ定数を低く構成できるため、モータカバー4全体で変形を受け持つことが可能となり、衝撃荷重に対する強度を向上させることができる。
【0033】
また、モータカバー4天井裏側に設けられた整流板42は、モータ22へと向かう冷却流れ32を整流させると共に、衝撃荷重に対するモータカバー4の補強構造となり、さらなる衝撃強度向上が可能である。
【0034】
以上、本発明を説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、本実施の形態においては、回転鋏式の芝刈機を例に説明を行ったが、回転刃のみから構成されるロータリー式芝刈機やリール刃からなるリール式の芝刈機などに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1.芝刈機本体 2.シャーシ 3.ボディカバー 4.モータカバー
5.ハンドル部 5a.スイッチ機構 6.集草袋 7.車輪
8.ローラ 9.刈込進行方向 10.刈込高さ調整部材
22.モータ 23.ギヤ 24.刈取刃 25.集草ファン
28.冷却ファン 31.集草流れ 32.冷却流れ 34.排出流れ
35.冷却流れ開口部 36.集草流れ開口部
41.モータ冷却流れ取入口整流板 42.整流板 43.フィルター
15.傾斜壁 16.緩斜壁 14a.奥行き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられる本体と、
前記本体に積載されると共に、進行方向と略垂直な上下方向に延びる回転軸を備えた電動モータと、
前記電動モータに取付けられた冷却ファンと、
前記本体の下部に露出し、前記電動モータの駆動を受けて回転する回転刃と、
前記本体に前記電動モータを覆って取り付けられ、前記本体から上方に突出するモータカバーと、を備えた芝刈機であって、
前記モータカバーは、下端側に開口し、入口付近に複数の第一整流板が配設された吸気口が開口すると共に、前記電動モータの回転軸に対して傾斜して形成された傾斜壁を備え、前記冷却ファンによって前記吸気口に導入された冷却風が、前記傾斜壁に沿って上昇した後、前記電動モータを通過する冷却風路を形成している、
ことを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記モータカバーの天井付近には、前記冷却風路に沿って延びる複数の第二整流板を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記冷却風路は、前記吸気口から前記傾斜壁の下端までの間において、通路面積が増加する拡幅部を備える、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記傾斜壁は、前記モータカバーの天井付近にて前記傾斜壁より斜度の緩い緩斜部と接続されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記冷却風路上において、前記電動モータより上流には、塵埃を濾過するフィルタを備えている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記モータカバーには、前記吸気口と異なる集草用開口を有し、前記集草用開口から前記電動モータを介さずに後端に向かって芝草を送る集草風路が構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記冷却風路は、前記電動モータを通過した後に、前記集草風路に合流し、後端に向かって送られる、ことを特徴とする請求項7に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記傾斜壁は、前記電動モータの回転軸に対して25度から40度の傾きを有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項9】
前記傾斜壁は、前記電動モータの回転軸に対して約30度の傾きを有して形成されていることを特徴とする請求項9に記載の芝刈機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−177094(P2011−177094A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43570(P2010−43570)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】