説明

芯つき電極における変性されたフラックスシステム

【課題】水分取り込み性が減少した溶接電極、溶接ビード中の拡散性水素の量を減少させる溶接電極、ガス遮蔽された芯つき電極の使用を含む溶接法、フラックス系の水分取り込み性を低下させるためにフラックス系中にナトリウム−珪素−チタネート化合物を含む溶接電極の提供。
【解決手段】金属さやおよび充填組成物からなる低拡散性水素を有する溶接ビードを形成する水分取り込み性の低い芯つき電極において、該充填組成物が二酸化チタン、スラグ形成剤および水分抵抗性化合物を含み、該水分抵抗性化合物がチタン化合物、カリウム化合物、ナトリウム化合物およびコロイド状シリカを含む芯つき電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、溶接の分野に関し、特に改善された溶接ビード形成性を有する電極に関し、さらに特に拡散性水素の量が減少した溶接ビードを形成ししかも水分取り込み性が低い芯つき電極に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接の分野において、溶接法の主なタイプは、固体によるガス・金属アーク溶接(GMAW)、または金属の芯つきワイヤによるガス・金属アーク溶接(GMAW−C)、ガス遮蔽フラックス・芯つきアーク溶接(FCAW−G)、自己遮蔽フラックス・芯つきアーク溶接(FCAW−S)、遮蔽金属アーク溶接(SMAW)および浸漬アーク溶接(SAW)である。これらの方法のなかで、固体または金属芯つきの電極によるガス金属アーク溶接は、金属性成分を結合するためまたは重ねるために次第に使用されてきている。これらのタイプの溶接法は、生産性および多様性を拡大するために、次第に普及してきている。生産性および多様性におけるこの拡大は、ガス金属アーク溶接(GMAWおよびGMAW−C)における溶接電極の連続的な性質から生じ、それは遮蔽金属アーク溶接(SMAW)よりも実質的な生産性を得ることができる。その上、これらの電極は、非常に少ないスラグで非常に外観の良い溶接部を生じさせるため、溶接部をきれいにしそしてスラグを処理すること(他の溶接法でしばしば生ずる問題)により生ずる時間および費用を節約することができる。
【0003】
固体または芯つきの電極によるガス金属アーク溶接では、遮蔽ガスは、溶接中大気の汚染に対して溶接部を保護するのに使用される。固体電極は、遮蔽ガスと組み合わされて、所望の物理的かつ機械的な性質を有する孔のない溶接部をもたらす成分と適切に合金化される。芯つき電極では、これらの成分は、外側が金属性であるさやの内側すなわち芯(詰めもの(fill))にあり、そして固体電極の場合と同じ機能をはたす。
【0004】
固体および芯つきの電極は、適切なガス遮蔽の下、最終の応用が満足に実施できる降伏強さ、引張り強さ、延性および衝撃強さを有する固体の実質的に孔のない溶接部をもたらすようにデザインされる。これらの電極は、また、溶接中発生するスラグの量を最低にするようにデザインされる。芯つき電極は、構造用成分の溶接構成の生産性の増大のために、固体ワイヤの代替物として次第に使用されている。芯つき電極は、金属性の外側のさやにより囲まれた芯(詰めもの)材料からなる複合電極である。芯は、主として、アークの安定性、溶接部のぬれ(wetting)および外観などを助けるために金属粉末およびフラックス成分からなり、溶接部は所望の物理的および機械的な性質を得る。芯つき電極は、芯材料の成分を混合し、そして形成されたストリップの内側に溶着し次にストリップを閉じそして最終の直径に延伸することにより製造される。芯つき電極は、溶着速度を早くしそして固体電極に比べてより広い、かつより一定した溶接浸透プロフィルを生ずる。その上、それらは、固体電極に比べて、アークの作用を改善し、燻煙およびスパッターがより少なく、そしてより良好なぬれを有する溶接溶着部を生成する。
【0005】
溶接の技術において、多くの従来の努力は、予定されたやり方で行うことを目的とする予定されたフラックス成分を有するタイプのフラックス成分を開発するのに費やされてきた。多数の組成物が、アーク溶接におけるフラックスとして使用されるために開発されてきている。フラックスは、アーク安定性をコントロールし、溶接金属の組成を改変し、そして大気の汚染から保護をもたらすためにアーク溶接で利用されている。アーク安定性は、通常、フラックスの組成を改変することによりコントロールされる。そのため、フラックス混合物中でプラズマ電荷担体として十分に機能する物質を有することが望ましい。フラックスは、また金属中の不純物をさらに容易に融合可能にし、そしてこれらの不純物がそれにより金属より優先して組み合わされてスラグを形成する物質をもたらすことにより溶接金属組成物を改変する。他の材料は添加されて、スラグの融点を低下させ、スラグの流動性を改善しそしてフラックス粒子用の結合剤として働くことができる。
【0006】
芯つき電極は、普通、鋼に基づく金属の電気アーク溶接で使用される。これらの電極は、一般に、早い溶接速度で単一のパスおよび複数のパスで高い強さの溶接部を生ずる。これらの電極は、種々の応用面での所望の最終用途を満足する引張り強さ、延性および衝撃強さを有する固体の実質的に無孔性の溶接ビードを得るように処方される。
【0007】
溶接金属の処方中の多くの問題の1つは、溶接ビード中の拡散性水素の量を減少させることである。拡散性水素は、溶接ビードにおけるクラックの周知の原因である。多くの研究が、フラックスシステム中の水分の量が増加すると、溶接金属中の拡散性水素の量を増加させる。溶接金属中の水素は、水素により誘導されるクラッキングをもたらしさらに溶接部の最終的に発生する有害な損失を生ずる。珪酸ナトリウムおよび珪酸カリウムは、通常アーク安定剤として使用され、そしてときにはフラックス成分の結合剤システムに使用される。珪酸カリウムは、水分を良く取り込む傾向があることが知られている。
【0008】
芯つき溶接電極に関連して使用される充填組成物の技術の現在の状況からみて、水素含量の少ない溶接ビードを形成する溶接電極を必要としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水分取り込み性が減少した溶接電極を提供するのが本発明の主な目的である。
本発明の他の目的および/または別の目的は、溶接ビード中の拡散性水素の量を減少させる溶接電極および溶接法の提供である。
本発明の他の目的および/または別の目的は、ガス遮蔽された芯つき電極の使用を含む溶接法の提供である。
【0010】
本発明の他の目的および/または別の目的は、フラックス系の水分取り込み性を低下させるためにフラックス系中にナトリウム−珪素−チタネート化合物を含む溶接電極の提供である。
これらおよび他の目的並びに利点は、本発明と従来の技術との間の相違の議論そして好ましい態様を考えたとき、明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、溶接電極に関し、さらに特に、水分の取り込み性が減少した充填組成物を含みさらに溶接ビード中の水素の量の減少を容易に行う溶接電極に関する。本発明の充填組成物は、特に、さやの芯において充填組成物を囲む金属さやを有する芯つき電極に関するが、しかし、充填組成物は、他のタイプの電極に適用できるか(例えば、スティック電極上のコーティングなど)、または浸漬アーク溶接法におけるフラックス組成物の一部として使用できる。本発明の充填組成物は、特に、可鍛性かつ低合金鋼を溶接するのに使用される電極について使用されるように処方されるが、しかし、充填組成物は、他のタイプの金属上の溶接ビードの処方用の電極について使用できる。金属電極は、典型的には、鉄(例えば、炭素鋼、低炭素鋼、ステンレス鋼、低合金鋼など)から主として形成されるが、しかし、基本的な金属は他の材料から主として形成できる。充填組成物は、典型的に、全電極重量の少なくとも約1重量%そして全電極重量の約80重量%以下、そして典型的に全電極重量の約8−60重量%、そしてさらに典型的に全電極重量の約10−40重量%、より特に全電極重量の約11−30重量%、さらに全電極重量の約12−20重量%を構成する。
【0012】
本発明の1つの構成では、フラックス芯つき電極で使用されるように処方される二酸化チタンに基づくフラックス系が提供されるが、しかし、このフラックス系は他のタイプの溶接システムで使用できることを理解すべきである。本発明のフラックス系は、二酸化チタン、スラグ形成剤および水分抵抗性化合物を含む。フラックス系の二酸化チタンの含量は、水分抵抗性化合物中の二酸化チタン含量を含むことなく、一般に、フラックス系の少なくとも約2重量%、典型的にフラックス系の約5−40重量%、そしてさらに典型的にフラックス系の約5−35重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。フラックス系の1つ以上のスラグ形成剤は、一般に、溶接ビードの形成を容易にするおよび/または形成された溶接ビードを大気から少なくとも一部遮蔽するのに使用されるが、しかし、スラグ形成剤は、他のまたは追加の機能を有することができる。これらスラグ形成剤の例は、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化錫、酸化バナジウム、酸化ジルコンなど)、金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウムなど)および/または金属フッ化物(例えばフッ化バリウム、フッ化ビスマス、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、Teflonなど)を含むが、これらに限定されない。フラックス系のスラグ形成剤の含量は、典型的に、フラックス系の少なくとも約5重量%、さらに典型的にフラックス系の約10−60重量%、そしてより典型的にフラックス系の約20−45重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。水分抵抗性化合物は、少なくとも4つの化合物、すなわち二酸化チタン、カリウム化合物、コロイド状シリカおよびナトリウム化合物のユニークな組み合わせである。水分抵抗性化合物は、珪酸塩化合物(例えば、珪酸カリウム、珪酸ナトリウムなど)を含むフラックス系より顕著に吸湿性ではない。水分抵抗性化合物のカリウムおよびナトリウムの化合物は、水分抵抗性化合物のための結合剤として機能するおよび/または溶接工程中アークへアーク安定性をもたらす。フラックス系の水分抵抗性化合物の含量は、一般に、フラックス系の少なくとも約1重量%、典型的にフラックス系の約2−40重量%、そしてさらに典型的にフラックス系の約2−35重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。
【0013】
本発明の他の構成では、水分抵抗性化合物は、過半数の重量%の二酸化チタン、および或る重量%の比の酸化カリウム対酸化ナトリウムを含むように処方される。水分抵抗性化合物の二酸化チタン含量は、少なくとも約60重量%、典型的に約75−92重量%、そしてさらに典型的に約80−88重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。水分抵抗性化合物中のナトリウム化合物の重量%は、一般に、カリウム化合物の重量%より大きいが、しかしこれは必須ではない。水分抵抗性化合物のナトリウム化合物含量対カリウム化合物含量の重量%の比は、約1.1−5:1であり、典型的に約1.5−3.5:1そしてさらに典型的に約2−3:1であるが、しかし、他の重量%比も使用できる。ナトリウム化合物は、典型的に二酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび/または珪酸ナトリウムであるが、しかし、他のまたは追加のナトリウム化合物も使用できる。カリウム化合物は、典型的に、酸化カリウムおよび/または珪酸カリウムであるが、しかし、他のまたは追加のカリウム化合物も使用できる。水分抵抗性化合物のナトリウム化合物含量は、水分抵抗性化合物の少なくとも約3重量%、典型的に水分抵抗性化合物の約5−15重量%、そしてさらに典型的に水分抵抗性化合物の約7−12重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。水分抵抗性化合物は、追加の化合物例えばリチウム化合物(例えば、水酸化リチウム、酸化リチウムなど)、炭素、硫黄などを含むことができるが、これらに限定されない。水分抵抗性化合物のコロイド状シリカ含量は、典型的に少なくとも約1重量%、典型的に約2−10重量%そしてさらに典型的に約2−8重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。コロイド状シリカの平均粒子サイズは、約40nmより小さく、典型的に約0.5−20nmそしてさらに典型的に約4−15nmであるが、しかし、他のサイズも使用できる。シリカの源は、天然および/または人工である。
【0014】
本発明のなお他の構成では、水分抵抗性化合物は、典型的に、コロイド状シリカの溶液と水分抵抗性化合物の他の成分との組み合わせにより形成される。溶液は、一般に、約10−70重量%のコロイド状シリカ、典型的に約15−50重量%のコロイド状シリカ、そしてさらに典型的に約25−40重量%のコロイド状シリカを含むが、しかし、他の重量%も使用できる。溶液の水分含量は、一般に、少なくとも約10重量%、典型的に約30−80重量%そしてさらに典型的に約60−75重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。溶液は、また、他の成分例えばナトリウム化合物を含むことができるが、これに限定されない。ナトリウム化合物が溶液に含まれるとき、ナトリウム化合物は、一般に、酸化ナトリウムであるが、しかし、他のまたは追加のナトリウム化合物も使用できる。溶液中のナトリウム化合物含量は、含まれたとき、一般に、約0.05−1.5重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。溶液のpHは、典型的に塩基性であるが、しかし、これは必須ではない。
【0015】
本発明の他の構成では、水分抵抗性化合物は、水分抵抗性化合物の平均粒子サイズが約30メッシュより小さく、典型的に約40−250メッシュそしてさらに典型的に約50−200メッシュである。水分抵抗性化合物は、典型的に所望の粒子サイズに粉砕される。
【0016】
本発明の他の構成では、充填組成物は、1つ以上の金属合金化剤および/または1つ以上の脱酸素剤を含む。1つ以上の金属合金化剤は、一般に、充填組成物に含まれ、所望の溶接金属の組成に少なくとも密接に調和するおよび/または形成された溶接ビードの所望の性質を得る。これらの合金化金属の例は、アルミニウム、硼素、カルシウム、炭素、クロム、鉄、マンガン、ニッケル、珪素、チタンおよび/またはジルコンであるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の他の構成では、フラックス芯つき電極は、一般に、金属さやを含む。金属さやは、一般に、鉄に基づく素材(例えば、炭素鋼、ステンレス鋼など)を溶接するとき、大部分鉄を含むが、しかし、さやの組成物は、特別の溶接ビード組成物を達成するために種々のタイプの金属を含むことができる。本発明の1つの態様では、金属さやは主として鉄を含み、そして1つ以上の他の元素を含むことができ、例えば、アルミニウム、アンチモン、ビスマス、硼素、炭素、コバルト、銅、鉛、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、珪素、硫黄、錫、チタン、タングステン、バナジウム、亜鉛および/またはジルコンがあるが、これらに限定されない。本発明のなお他の態様および/または別の態様では、金属さやの鉄含量は、少なくとも約80重量%である。
【0018】
本発明のさらなる構成および/または別の構成では、遮蔽ガスは、溶接電極と関連して使用されて、大気中の元素および/または化合物から溶接ビードを保護する。遮蔽ガスは、一般に、1つ以上のガスを含む。これらの1つ以上のガスは、一般に、溶接ビードの組成について不活性または実質的に不活性である。1つの態様では、アルゴン、二酸化炭素またはこれらの混合物は、遮蔽ガスとして少なくとも一部使用される。この態様の1つの構成では、遮蔽ガスは、約2−40容量%の二酸化炭素を含み、残りはアルゴンである。この態様の他の構成および/または別の構成では、遮蔽ガスは、約5−25容量%の二酸化炭素を含み、残りはアルゴンである。理解できるように、他のおよび/または追加の不活性または実質的に不活性なガスも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の芯つき電極は、芯つき電極のフラックス系の水分取り込み性を低下させるナトリウム−珪素−チタネート化合物を含むことによって、従来技術の芯つき電極に下されていた過去の制限を克服することができる。
【0020】
本発明による充填組成物(重量%)の一般的な処方は、以下の通りである。TiO2−50%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物1−55%、スラグ形成剤1−60%、金属合金化剤0−70%。
【0021】
充填組成物(重量%)の他のさらに特定の一般的な処方は、以下の通りである。TiO3−40%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物1−55%、スラグ形成剤20−50%、金属合金化剤0−55%。
【0022】
充填組成物(重量%)の他のさらに特定の一般的な処方は、以下の通りである。TiO20−40%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物20−50%、スラグ形成剤25−45%、金属合金化剤0−35%。
【0023】
充填組成物(重量%)の他のさらに特定の一般的な処方は、以下の通りである。TiO3−15%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物15−25%、スラグ形成剤30−40%、金属合金化剤35−45%。
【0024】
充填組成物(重量%)の他のさらに特定の一般的な処方は、以下の通りである。TiO20−30%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物1−5%、スラグ形成剤20−30%、金属合金化剤45−55%。
【0025】
上記の例において、充填組成物の重量%は、典型的に芯つき電極の約8−60重量%、そしてさらに典型的に芯つき電極の約10−28重量%であるが、しかし、他の重量%も使用できる。溶接ビードを形成するのに使用できる金属さやは、約0−0.2重量%のB、約0−0.2重量%のC、約0−12重量%のCr、約0−5重量%のMn、約0−2重量%のMo、約0.01%のN、約0−5重量%のNi、約0.014%より少ないP、約0−4重量%のSi、約0.02%より少ないS、約0−0.4重量%のTi、約0−0.4重量%のVおよび約75−99.9重量%のFeを含む。アーク溶接工程中、遮蔽ガスは、典型的に、芯つき電極とともに使用されるが、しかし、これは必須ではない。遮蔽ガスが使用されるとき、遮蔽ガスは典型的に二酸化炭素とアルゴンとのブレンドである。
【0026】
スラグ形成剤は、典型的に、金属酸化物例えば酸化アルミニウム、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化カリウム、二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化錫、酸化バナジウムおよび/または酸化ジルコンを含むが、これらに限定されない。金属合金化剤は、使用されるとき、典型的に、アルミニウム、硼素、カルシウム、炭素、鉄、マンガン、ニッケル、珪素、チタンおよび/またはジルコンを含むが、これらに限定されない。フラックス系は、他の化合物例えば金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムなど)および/または金属フッ化物(例えば、フッ化バリウム、フッ化ビスマス、フッ化カルシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、Teflonなど)を含むが、これらに限定されない。フラックス系の特別な成分は、典型的に、使用される溶接工程(SAW、SMAW、FCAW)および/または溶接される素材のタイプに依存する。
【0027】
ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、アーク安定性をもたらしそしてフラックス系の水分取り込み性を低下させるように特に処方される。ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、典型的に、二酸化チタン、珪酸カリウム、珪酸ナトリウムおよびコロイド状シリカを含む。ナトリウム−珪素−チタネート化合物の二酸化チタン含量は、典型的に、主要な重量%である。珪酸ナトリウム対珪酸カリウムの重量%の比は、一般に、約1.5−3.5:1そしてさらに典型的に約1.75−2.5:1である。典型的に、コロイド状シリカを形成する二酸化珪素の大部分は、純粋な源からのものである。典型的に、シリカの粒子は、約2−25ナノメーターの平均粒子サイズ、そしてさらに典型的に、約6−12ナノメーターの平均粒子サイズを有する。ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、他のナトリウム化合物例えば炭酸ナトリウムを含むが、これに限定されない。これらのナトリウム化合物は、溶接工程中アーク安定性および/またはガス遮蔽をもたらすために使用できる。ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、また、他の成分例えば水、リチウム化合物、硫黄、炭素などを含むことができるが、しかし、これは必須ではない。これらの他の成分は、ナトリウム−珪素−チタネート化合物に含まれるとき、典型的にナトリウム−珪素−チタネート化合物の約10重量%より少ない量を占める。
【0028】
ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、典型的に、コロイド状シリカの溶液を酸化チタン(例えばルチル)、珪酸塩およびナトリウム−珪素−チタネート化合物の任意の他の成分と混合することにより形成される。ナトリウム−珪素−チタネート化合物の成分が適切にともに混合された後に、ナトリウム−珪素−チタネート化合物を乾燥して、ナトリウム−珪素−チタネート化合物から水を取り除く。ナトリウム−珪素−チタネート化合物を乾燥した後、ナトリウム−珪素−チタネート化合物の水含量は、一般的に、約0.1重量%より少なく、典型的に約0.08重量%より少なく、そしてさらに典型的に約0.06重量%より少ない。ナトリウム−珪素−チタネート化合物を乾燥した後、ナトリウム−珪素−チタネート化合物は、典型的に、サイズを揃えられる。このサイズを揃える工程は、典型的に、粉砕およびスクリーニングの操作により行われるが、しかし、他のまたは追加のサイズを揃える工程も使用できる。サイズを揃える工程後のナトリウム−珪素−チタネート化合物の平均粒子サイズは、典型的に40メッシュより小さく、そしてさらに典型的に約50−200メッシュである。
【0029】
ナトリウム−珪素−チタネート化合物の例は、以下の通りである(ナトリウム−珪素−チタネート化合物の重量%)。
【実施例1】
【0030】
TiO60−90%、珪酸ナトリウム1−20%、珪酸カリウム1−15%、ナトリウム化合物1−20%、コロイド状シリカ1−10%、他の成分0−5%。
【実施例2】
【0031】
TiO70−90%、珪酸ナトリウム4−15%、珪酸カリウム1−10%、ナトリウム化合物3−16%、コロイド状シリカ2−6%、他の成分0−1%。
【実施例3】
【0032】
TiO70−80%、珪酸ナトリウム3.5−10%、珪酸カリウム1.5−6%、ナトリウム化合物5−15%、コロイド状シリカ2−5%、他の成分0−0.05%。
【0033】
本発明の記述された態様および他の態様のこれらおよび他の改変は、本明細書から当業者に明らかでありそして示唆されており、それにより前述が本発明の例示としてのみ解釈されそれを制限するものと解釈されてはならないことは、はっきり理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属さやおよび充填組成物からなる低拡散性水素を有する溶接ビードを形成する水分取り込み性の低い芯つき電極において、該充填組成物が二酸化チタン、スラグ形成剤および水分抵抗性化合物を含み、該水分抵抗性化合物がチタン化合物、カリウム化合物、ナトリウム化合物およびコロイド状シリカを含むことを特徴とする芯つき電極。
【請求項2】
該二酸化チタンから該水分抵抗性化合物中のすべての二酸化チタンを減じた量が、該充填組成物の約2−40重量%である請求項1の芯つき電極。
【請求項3】
該スラグ形成剤が、該充填組成物の約10−50重量%を占める請求項1または2の芯つき電極。
【請求項4】
該スラグ形成剤が、金属酸化物を含む請求項1−3の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項5】
該スラグ形成剤の大部分が該金属酸化物を含む請求項4の芯つき電極。
【請求項6】
該水分抵抗性化合物が、該充填組成物の約1−40重量%を占める請求項1−4の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項7】
該水分抵抗性化合物が、過半数の重量%のチタン化合物、1.1−5:1の重量%の比のナトリウム化合物対カリウム化合物、そして少なくとも1重量%のコロイド状シリカから構成される請求項1−6の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項8】
金属合金化剤を含み、該金属合金化剤はアルミニウム、マグネシウム、珪素、チタンおよびこれらの混合物を含む請求項1−7の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項9】
該充填組成物が、TiO5−50%、ナトリウム−珪素−チタン化合物2−50%、スラグ形成剤1−60%および金属合金化剤0−70%を含む請求項1−8の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項10】
該充填組成物が、TiO3−40%、ナトリウム−珪素−チタン化合物1−55%、スラグ形成剤20−50%および金属合金化剤0−55%を含む請求項1−9の何れか1つの項の芯つき電極。
【請求項11】
a)金属さやおよび充填組成物を含む芯つき電極を用意し、該充填組成物が二酸化チタン、スラグ形成剤および水分抵抗性化合物を含み、該水分抵抗性化合物がチタン化合物、カリウム化合物、ナトリウム化合物およびコロイド状シリカを含み、そして
b)電流により該芯つき電極を少なくとも一部溶融して該芯つき電極の該溶融した部分を素材上に溶着させる
ことからなることを特徴とする低下した水分の取り込み性を有する電極の使用によって低拡散性水素含量を有する溶接ビードを形成する方法。
【請求項12】
遮蔽ガスを該素材に導いて、素材上に溶着される該芯つき電極の該溶融した部分を少なくとも一部遮蔽する段階を含む請求項11の方法。
【請求項13】
該遮蔽ガスがアルゴン、二酸化炭素またはこれらの混合物を含む請求項12の方法。
【請求項14】
該二酸化チタンから該水分抵抗性化合物中のすべての二酸化チタンを減じた量が、該充填組成物の約2−40重量%である請求項11−13の何れか1つの項の方法。
【請求項15】
該スラグ形成剤が該充填組成物の約10−50重量%を占める請求項11−14の何れか1つの項の方法。
【請求項16】
該スラグ形成剤が金属酸化物を含む請求項11の方法。
【請求項17】
該スラグ形成剤の大部分が該金属酸化物を含む請求項11の方法。
【請求項18】
該水分抵抗性化合物が該充填組成物の約1−40重量%を占める請求項11−17の何れか1つの項の方法。
【請求項19】
該水分抵抗性化合物が、過半数の重量%のチタン化合物、1.1−5:1の重量%の比のナトリウム化合物対カリウム化合物、および少なくとも約1重量%のコロイド状シリカを占める請求項11−18の何れか1つの項の方法。
【請求項20】
金属合金化剤を含み、該金属合金化剤がアルミニウム、マグネシウム、珪素、チタンおよびこれらの混合物を含む請求項11−19の何れか1つの項の方法。
【請求項21】
該充填組成物が、TiO5−50%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物2−50%、スラグ形成剤1−60%、金属合金化剤0−70%を含む請求項11−20の何れか1つの項の方法。
【請求項22】
該充填組成物が、TiO3−40%、ナトリウム−珪素−チタネート化合物1−55%、スラグ形成剤20−50%、金属合金化剤0−55%を含む請求項11−21の何れか1つの項の方法。
【請求項23】
華氏80度(約26.7℃)および相対湿度80%で96時間の期間アーク安定化成分の水分取り込み性が、40−200メッシュの平均粒子サイズを有する粒子について約0.2%より低いような水分取り込み性が減少した該アーク安定化成分を有し、該アーク安定化成分が過半数の重量%のチタン化合物、1.1−5:1の重量%の比のナトリウム化合物対カリウム化合物、および少なくとも約1重量%のコロイド状シリカを含むことを特徴とする溶接工程中溶接電極とともに使用されるアーク安定化成分。
【請求項24】
TiO60−90重量%、珪酸ナトリウム1−20重量%、珪酸カリウム1−15重量%、ナトリウム化合物1−20重量%、コロイド状シリカ1−10重量%、他の成分0−5重量%を含む請求項23のアーク安定化成分。
【請求項25】
TiO70−90重量%、珪酸ナトリウム4−15重量%、珪酸カリウム1−10重量%、炭酸ナトリウム3−16重量%、コロイド状シリカ2−6重量%、他の成分0−1重量%を含む請求項24のアーク安定化成分。
【請求項26】
TiO70−80重量%、珪酸ナトリウム3.5−10重量%、珪酸カリウム1.5−6重量%、炭酸ナトリウム5−15重量%、コロイド状シリカ2−5重量%、他の成分0−0.5重量%を含む請求項25のアーク安定化成分。
【請求項27】
該アーク安定化成分が、約0.08重量%より少ない乾燥後水含量を有する請求項23のアーク安定化成分。
【請求項28】
該アーク安定化成分が、約40−200メッシュの平均粒子サイズを有する請求項23のアーク安定化成分。

【公開番号】特開2006−289492(P2006−289492A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365936(P2005−365936)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(399011597)リンカーン グローバル インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】