芯出し調整支援装置
【課題】 再調整が発生しない的確な調整量の指示を行うことができる芯出し調整装置を提供する。
【解決手段】 固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、変位センサーからの出力に基づいて、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定前の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定後の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、固定前のずれ量と固定後のずれ量から補正量を計算し、補正量に基づいてずれ量を補正して、補正されたずれ量から調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、を有することを特徴とする。
【解決手段】 固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、変位センサーからの出力に基づいて、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定前の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定後の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、固定前のずれ量と固定後のずれ量から補正量を計算し、補正量に基づいてずれ量を補正して、補正されたずれ量から調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯出し調整支援装置に係わり、特に、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を変位センサーを用いて測定し補正量を算出する芯出し調整支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の芯出し調整支援装置としては、例えば、2個の非接触式距離計を用いて偏心量と偏心角を演算し、必要な調整量を表示する2軸センタリング計測装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような従来の芯出し調整支援装置は、変位計から得られた測定値から調整量を演算し表示し、作業者はこの調整量に基づいて芯出し作業を行う。
【0003】
実際の芯出し作業においては、調整側回転機器、例えばモータなど、を台座にボルトで固定してずれ量を計測し、ボルトを緩めて台座とモータの間にずれ量分のライナーを挿入したり、水平方向へ移動させたりする。そして、調整側回転機器を、再びボルトで固定しずれ量を計測することを数回繰り返し、ずれ量が許容値内に収まった時点で調整が終了となり、最終的に増し締めを行う。
【特許文献1】実開昭63−27816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本来台座上のモータを4点で均等に支持すべきところを3点で支持した状態になっている場合があり、これが増し締めにより歪となって、ずれがさらに発生することがある。これにより調整側回転機器の位置の再調整が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、計測値から計算した調整量に、過去の調整履歴から得られる増し締めによる影響値を補正量として加算し、増し締め後の再調整が発生しない的確な調整量の指示を行うことができる芯出し調整支援装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、変位センサーからの出力に基づいて、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定前の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定後の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、固定前のずれ量と固定後のずれ量から補正量を計算し、補正量に基づいてずれ量を補正して、補正されたずれ量から調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芯出し調整支援装置によれば、測定結果と調整量から計算される調整後のずれと実際の測定結果から得られるずれの差を、補正量として次回の芯出し作業時の調整量指示に加味するようにしたので、台座や機器の微妙な精度外れに起因する3点支持を原因とする歪が発生しても、予めその歪による影響を見越した調整量を指示できることで、増し締め後のずれを許容値内に収めることが可能となり、再調整が必要なケースが減ることで作業を効率化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置について、図を参照して説明をする。
【0009】
図1は、本実施形態の芯出し調整支援装置を実際の固定側回転機器と調整側回転機器とに取り付けた状態を示す図である。
【0010】
まず、芯出し作業の対象となる固定側回転機器11と調整側回転機器12について簡単に説明をする。
【0011】
固定側回転機器11は、例えば、ポンプ等の回転機器であり、所定の設備に固定して設置されている。固定側回転機器11は、他の機器との接続部となる固定側回転機器フランジ13を有している。また、固定側回転機器11は、他の機器との接続時に芯出し調整の基準となる軸中心11cを有する。
【0012】
調整側回転機器12は、例えば、モータ等の回転機器であり、所定の周期で交換もしくは点検後再設置される機器である。調整側回転機器12は、他の機器との接続部となる調整側回転機器フランジ14を有している。また、調整側回転機器12は、他の機器との接続時に芯出し調整の基準となる軸中心12cを有する。また、調整側回転機器12は、前ベース12aと後ベース12bとを備え、前ベース12aと後ベース12bとを介して台座15上に固定される。なお、図示はしていないが、前ベース12aに2箇所、後ベース12bに2箇所のボルト取り付け部を有しており、調整側回転機器12は4箇所からのボルト締めにより台座15上に固定されることとなる。
【0013】
芯出し作業とは、固定側回転機器11の軸中心11cと調整側回転機器12の軸中心12cが一致するように調整側回転機器12の位置、角度を調整する作業である。
【0014】
本実施形態の芯出し調整支援装置100は、A/D変換器103と情報処理部104と表示部105と変位計D101と変位計A102とから構成される。
【0015】
本実施形態における変位計D101と変位計A102は、渦電流式の非接触変位センサーを用いている。なお、変位センサーは、渦電流式に限られず、例えば、レーザー光変位センサーや静電容量変位センサーや、超音波変位センサーや、接触式のセンサーも用いてもよい。ただし、センサーの大きさ、分解能、コストの面からは渦電流式変位センサーを用いることが好ましい。
【0016】
変位計D101と変位計A102とは、L字ブロック36により互いに直角方向を向くように固定される。また、L字ブロック36は、マグネットスタンド35の先端に固定されている。図1に示すように、マグネットスタンド35は、調整側回転機器フランジ14の外周面14b上に固定される。なお、マグネットスタンド35は、調整側回転機器フランジ14の調整側回転機器12側の端面14cに固定されても良い。また、変位計D101は、L字ブロック36により、固定側回転機器フランジ13の外周面13bと所定の間隔を有して固定されるとともに、変位計A102は、固定側回転機器フランジ13の側面13aと所定の間隔を有して固定される。
【0017】
図2は、本実施形態の芯出し調整支援装置の詳細な構成を示すブロック図である。上述したように、本実施形態の芯出し調整支援装置100は、A/D変換器103と情報処理部104と表示部105と変位計D101と変位計A102とから構成される。
【0018】
また、本実施形態の情報処理部104は、不図示の演算回路(CPU等)と不図示の記憶回路(RAMやROM等)を有し、この記憶回路に格納されたプログラムを実行し、図3〜5、7、及び、8のフローチャートに記載した動作を行うことにより、図2に記載のブロック図に示すように、中央処理部107とA/D変換インターフェース108と操作入力インターフェース109と記憶部110と外部記憶部111と表示部インターフェース112とを備えた装置として機能する。
【0019】
変位計D101と変位計A102とは、A/D変換器103に接続し、固定側回転機器フランジ13の外周面13bとの間隔、及び、固定側回転機器フランジ13の側面13aとの間隔に応じたアナログ信号を出力する。
【0020】
A/D変換器103は、A/D変換インターフェース108と接続し、上記アナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0021】
A/D変換インターフェース108は、中央処理部107と接続し、上記デジタル信号を中央処理部107に提供する際のインターフェースとなっている。
【0022】
キーボード・マウス106は、操作入力インターフェース109と接続し、使用者からの命令や入力を信号として出力する。
【0023】
操作入力インターフェース109は、中央処理部107と接続し、使用者からの信号を中央処理部107に提供する際のインターフェースとなっている。
【0024】
記憶部110は、補正データ格納部110aと寸法データ格納部110bとデータ格納部110cとを備え、所定のデータを中央処理部107へ出力するとともに、中央処理部107からのデータを所定の格納部に格納する。
【0025】
補正データ格納部110aには、補正量(eav, eah, edv, edh)に関するデータ(以下、補正データともいう)が格納される。寸法データ格納部110bには、寸法データ(A, B, D)が格納される。また、データ格納部110cは、複数の格納領域により構成され、n番目の格納領域には後述するn回目のずれ測定により取得及び計算された測定値とずれ量と調整量の各データが格納される。
【0026】
なお、補正量(eav, eah, edv, edh)とは、調整側回転機器12を台座15に固定する際の、固定用ボルトの増締め前の固定側回転機器11の軸中心11cと調整側回転機器12の軸中心12cとのずれ量と増し締め後のずれ量との差から得られたデータのことをいう。補正量の詳しい算出法については、後述する。
【0027】
また、寸法データ(A, B, D)とは、図1に示す固定側回転機器11と調整側回転機器12の各部の寸法のことをいう。寸法データのAは、調整側回転機器12の前ベース12aのボルト取り付け部から調整側回転機器フランジ14の先端面までの長さのことをいう。寸法データのBは、調整側回転機器12の前ベース12aのボルト取り付け部と後ベース12bのボルト取り付け部との間の長さを示している。寸法データのDは、固定側回転機器11の固定側回転機器フランジ13の直径を示している。
【0028】
外部記憶部111は、補正データ格納部111aと寸法データ格納部111bとを備え、所定のデータを中央処理部107へ出力するとともに、中央処理部107からのデータを所定の格納部に格納する。補正データ格納部111aには、補正量(eav, eah, edv, edh)が格納される。寸法データ格納部111bには、寸法データ(A, B, D)が格納される。
【0029】
表示部インターフェース112は、中央処理部107と接続し、中央処理部107の信号を表示部105に提供する際のインターフェースとなっている。
【0030】
表示部105は、中央処理部107からの信号に基づいて、所定の入出力画面を出力する。
【0031】
中央処理部107は、本実施形態の芯出し調整支援装置100のすべての動作を制御するとともに、変位計D101と変位計A102からの測定データについて所定の計算を行い、計算の結果得られたずれ量や補正量を表示部105へ出力する。
【0032】
以下に、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置の動作について、図を参照して説明をする。
【0033】
図3は、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置の動作を示すフローチャートである。なお、フローチャート内の実線で囲まれたステップは、本実施形態の芯出し調整支援装置100が処理を行うステップであり、点線で囲まれたステップは、本実施形態の回転機器の芯出し調整支援装置100の画面出力に基づいて、作業者が芯出し作業を行うステップである。
【0034】
ステップ100(図中ではステップをSと略す)では、中央処理部107は、記憶部110へ初期の補正量(eav, eah, edv, edh)、及び、寸法データ(A, B, D)を読み込む。
【0035】
図4は、ステップ100の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0036】
ステップ101では、中央処理部107は、外部記憶部111の補正データ格納部111aを検索して、補正データの有無を確認する。補正データがある場合にはステップ102へ進み、補正データが無い場合にはステップ103へ進む
【0037】
ステップ102では、中央処理部107は、外部記憶部111の補正データ格納部111aに格納された補正量を記憶部110の補正データ格納部110aに読み込み、ステップ104へ進む。
【0038】
ステップ103では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量を0として、ステップ104へ進む。
【0039】
ステップ104では、中央処理部107は、外部記憶部111の寸法データ格納部111bを検索して、寸法データの有無を確認する。寸法データがある場合にはステップ105へ進み、寸法データが無い場合にはステップ106へ進む。
【0040】
ステップ105では、中央処理部107は、外部記憶部111の寸法データ格納部111bに格納された寸法データを記憶部110の寸法データ格納部110bに読み込み、ステップ101へ進む。
【0041】
ステップ106では、中央処理部107は、キーボード・マウス106から入力された寸法データを記憶部110の寸法データ格納部110bに格納して、ステップ101へ進む。
【0042】
ステップ200では、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定を行う。そして、ステップ200では、変位計D101と変位計A102とによる測定結果が、中央処理部107に入力される。
【0043】
図6Aは、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定方法を説明する模式図である。図6A(a)は、両回転軸の平行度を測定する方法を説明する図であり、図6A(b)は両回転軸の偏心度を測定する方法を説明する図である。
【0044】
図6A(a)は、両回転軸の平行度を測定する方法を示す図である。図1の変位計位置を基準としてこれを0°とすれば、0°から時計回り又は反時計回りに固定側回転機器フランジ13と調整側回転機器フランジ14を同期して90°ずつ回転させ、0°、90°、180°、270°の各位置で固定側回転機器フランジ13の側面13aとの変位を、変位計A102により測定する。そして、0°、90°、180°、270°で変位を測定した平行度をそれぞれa0, a90, a180, a270とする。
【0045】
図6A(b)は、両回転軸の偏心度を測定する方法を示す図である。図1の変位計位置を基準としてこれを0度とすれば、0°から時計回り又は反時計回りに固定側回転機器フランジ13と調整側回転機器フランジ14を同期して90°ずつ回転させ、0°、90°、180°、270°の各位置で固定側回転機器フランジ13の外周面13bとの変位を変位計D101により測定する。そして、0°、90°、180°、270°で変位を測定した偏心度をそれぞれd0, d90, d180, d270とする。
【0046】
ステップ300では、中央処理部107は、上記測定結果を用いて固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ量を計算し、調整量を計算する。
【0047】
図5は、ステップ300の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0048】
ステップ301では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)を読み込み、ステップ302へ進む。
【0049】
ステップ302では、中央処理部107は、ステップ200で測定した平行度(a0, a90, a180, a270)と偏心度(d0, d90, d180, d270)を読み込み、ステップ303へ進む。
【0050】
ステップ303では、中央処理部107は、ずれ量を計算する。ここで、ずれ量の定義について簡単に説明をする。
【0051】
図6Bは、固定側回転機器11と調整側回転機器12との間に生じる偏心度と平行度を示す模式図である。図6B(a)は、両回転軸の平行度を示す図であり、図6B(b)は両回転軸の偏心度を示す図である。
【0052】
図6B(a)からわかるように、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahを、両フランジの側面13aと14aとの傾きにより生じる角度により定義するものとする。なお、図中では、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahとを同一の位置に記載しているが、これは説明の簡略化のためであり、実際には、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahとは互いに直交する位置について測定を行っている。
【0053】
また、図6B(b)からわかるように、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhを、両軸中心11cと12cとのずれにより生じる長さにより定義するものとする。なお、図中では、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhとを同一の位置に記載しているが、これは説明の簡略化のためであり、実際には、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhとは互いに直交する位置について測定を行っている。
【0054】
次に、ステップ303における、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ah、及び、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhを求める方法について説明をする。
【0055】
平行度の計算は次のごとく行われる。垂直方向の平行度は、変位計A102と変位計D101の、0°と180°における測定値の差から計算できる。水平方向の平行度は、変位計A102と変位計D101の、90°と270°における測定値の差から計算できる。
【0056】
垂直方向の平行度av=a180−a0(180°位置に対し0°位置が開く方向を正とする)
水平方向の平行度ah=a270−a90(270°位置に対し90°位置が開く方向を正とする)
【0057】
偏心度の計算は次のごとく行われる。
【0058】
垂直方向の偏心度dv=(d0−d180)÷2(180°位置に対し0°位置方向を正とする)
水平方向の偏心度dh=(d90−d270)÷2(270°位置に対し90°位置方向を正とする)
【0059】
このように計算された両回転軸の平行度及び偏心度を、ずれ量とする。ずれ量計算の後、ステップ304へ進む。
【0060】
ステップ304では、中央処理部107は、ずれ量と補正量から調整量を計算する。ここで、調整量の定義について簡単に説明をする。
【0061】
図6Cは、調整側回転機器12の調整量を示す模式図である。図6C(a)は、調整側回転機器12を横から見た場合の調整量を示す図であり、図6C(b)は、調整側回転機器12を上から見た場合の調整量を示す図である。
【0062】
図6C(a)からわかるように、調整側回転機器12の調整量は、被非調整機器12の前ベース12aと台座15との間にライナー等と挿入することで垂直方向に調整される調整量xfvと、被非調整機器12の後ベース12bと台座15との間にライナー等と挿入することで垂直方向に調整される調整量xrvとで表すことができる。
【0063】
また、図6C(b)からわかるように、調整側回転機器12の調整量は、被非調整機器12の前ベース12aを水平方向に移動させることで調整される調整量xfhと、被非調整機器12の後ベース12bを水平方向に移動させることで調整される調整量xrhとで表すことができる。
【0064】
中央処理部107が行う、ずれ量と補正量からの調整量の計算方法は以下の通りである。
【0065】
垂直方向の調整量は、変位計A102の0°と180°における測定値の差にB÷Dを乗じることで求めることができる。水平方向の調整量は、変位計A102の90°と270°における測定値の差にB÷Dを乗じることで求めることができる。
【0066】
平行度調整分として調整側回転機器の後ベース位置の調整量は以下の関係式で表すことができる。
【0067】
垂直方向:xav=(av+eav)×B÷D
水平方向:xah=(ah+eah)×B÷D
【0068】
平行度の計測値avとahに補正量eavとeahを加えたものが、増し締めによるずれを考慮した真のずれ量と考えられる。その真のずれ量に前後ベース間距離Bとフランジ直径Dの比B/Dを乗じた量xavとxahが、後ベースに挿入するライナーの厚みと後ベースを水平方向に移動する調整量となる。
【0069】
次に、上記平行度調整により新たに生じる偏心度ずれ量と調整量を計算する。新たに生じる偏心度ずれ量と調整量は、以下の関係式で表すことができる。
【0070】
垂直方向:ずれ量 av’=−xav×A÷B 調整量 xav’= xav×A÷B
水平方向:ずれ量 ah’=−xah×A÷B 調整量 xah’= xah×A÷B
【0071】
上記平行度調整では後ベースを垂直方向と水平方向に移動させるため、フランジ部は前ベースを支点として後ベースの移動方向と反対方向へずれる。平行度調整量xavとxahにフランジから前ベースの距離Aと前後ベース間距離Bの比A/Bを乗じて極性を反転した量av’とah’がずれ量となり、その極性を反転したxav’とxah’が調整量となる。
【0072】
偏心度調整分として、調整側回転機器の平行移動の調整量は以下の関係式で表すことができる。
【0073】
垂直方向:xdv=−(dv+edv)
水平方向:xdh=−(dh+edh)
【0074】
偏心度の計測値dvとdhに補正量edvとedhを加えたものが、増し締めによるずれを考慮した真のずれ量と考えられる。その真のずれ量の極性を反転したxdvとxdhが、前後ベースを垂直方向に平行移動するために挿入するライナーの厚みと前後ベースを水平方向に平行移動する調整量となる。
【0075】
そして、最終的な調整側回転機器12の調整量は以下のように求められる。
【0076】
調整側回転機器12の前ベース12aの垂直方向の調整量:xfv=xav’+xdv
調整側回転機器12の前ベース12aの水平方向の調整量:xfh=xah’+xdh
調整側回転機器12の後ベース12bの垂直方向の調整量:xrv=xav+xav’+xdv
調整側回転機器12の後ベース12bの水平方向の調整量:xrh=xah+xah’+xdh
【0077】
調整量計算の後、ステップ305へ進む。
【0078】
ステップ305では、中央処理部107は、測定値と、ずれ量と、調整量を記憶部110に保存する。具体的には、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn−1番目の格納領域にn−1回目のデータとして測定値(a0, a90, a180, a270, d0, d90, d180, d270)とずれ量(av, ah, dv, dh)と調整量(xav, xah, xav’, xah’, xfv, xrv, xfh, xrh)とを保存する。
【0079】
また、ステップ305では、中央処理部107は、測定値とずれ量と調整量を表示部105に出力し、ステップAへ進む。
【0080】
図9は、ステップ305における、表示部105への測定値とずれ量と調整量との表示画面の例である。
【0081】
図中のウィンドウP11〜P15は、0°、90°、180°、270°、360°の各角度における平行度の測定値が表示される。また、ウィンドウP21〜P25は、0°、90°、180°、270°、360°の各角度における偏心度の測定値が表示される。
【0082】
なお、P11の0°とP15の360°の平行度、および、P21の0°とP25の360°の偏心度は、同じ測定点をフランジを1回転させた状態で再び測定するもので、測定作業の誤り、ばらつきが無い事を確認するためのものである。
【0083】
ウィンドウP31、P32には、前ベース12a、後ベース12bの上下方向の調整量が表示される。また、ウィンドウP41〜P44には、前ベース12a、後ベース12bの左右方向の調整量が表示される。
【0084】
ステップAでは、作業者は、表示部105に表示されたずれ量を確認して、上下方向のずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップBへ進み、許容値外である場合にはステップCへ進む。
【0085】
ステップCでは、作業者は、表示部105に表示された調整量に基づいて、調整側回転機器12の上下方向ずれ調整を行い、ステップ200へ戻る。
【0086】
ステップBでは、作業者は、表示部105に表示されたずれ量を確認して、左右方向のずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップEへ進み、許容値外である場合にはステップDへ進む。
【0087】
ステップDでは、作業者は、表示部105に表示された調整量に基づいて、調整側回転機器12の左右方向ずれ調整を行い、ステップ200へ戻る。
【0088】
なお、ステップA〜Dの調整にあたっては、上下方向のずれ調整における調整側回転機器の前ベース12aと後ベース12bへのライナー挿入または抜き取り作業に伴い、軸の水平方向が容易にずれてしまうため、まず、ステップCで軸の上下方向の調整を行っている。上下方向のずれが許容値内に収まったところで、ステップDで軸の水平方向(左右方向)の調整を行う。水平方向の調整作業では、調整側回転機器12を水平方向に動かすだけなので、ライナーに依存する垂直方向のずれに影響はない。
【0089】
ステップEでは、作業者は、前ベース12aと後ベース12bのボルトを増し締めし、台座15へ調整側回転機器12を固定し、ステップ400へ進む。
【0090】
ステップEで、調整が終了した後には、調整側回転機器12を台座15へ固定しているボルトを増し締めすることになるが、このとき、調整側回転機器12の前ベース12aと後ベース12bの4箇所または台座15の該当4箇所が同一面になければ3点支持となり、増し締めをした時点で歪が生じて軸にずれが生じてしまう。
【0091】
解決策として理想的なのは4点支持になるようにライナーで調整することだが、これは熟練技術を要する。また、新たに設置する機器の場合は、この調整を実施する時間的余裕が確保されているかもしれないが、保守等に伴う機器の取り外しと再設置といった場合には元々ライナーは調整ずみという認識があり、作業時間が限られることが多い。
【0092】
こうした状況の中で、新設時に3点支持のままで設置され、試行錯誤の結果として芯出し調整がなされている機器は、再設置の際の芯出し調整の過程で前回設置時の最終結果へ直接至る調整過程をとることができず、再設置の度に新設時の試行錯誤と同じ過程を余儀なくされる。
【0093】
このような問題を解決するために、本実施形態の芯出し調整支援装置100は、増し締めによる歪の結果、軸がずれる量を補正量として利用するものである。
【0094】
具体的には、ステップ200での垂直、水平方向それぞれのずれ測定の最終結果と、ステップ400での増し締め後のずれ測定の結果とを比較し、その差を補正量として保持し、次回再設置時の調整過程で、ずれ量の表示は実測値を基にした計算値と補正量を加味して得られる増し締め後のずれ量の予想値を表示し、調整量の表示は、補正量を加味した調整量を表示する。
【0095】
こうすることで、増し締めの結果を予測した調整作業が可能となり、増し締め後の再調整をなくすことが可能となる。また、補正量の更新は、前回のずれ測定時の補正量を、今回のずれ測定時のステップ200における測定結果の最終値と、今回のステップ400における測定結果の差とに置き換えることで、経年変化に対応したより精度の高い補正値へと更新できる。また、測定のばらつきを考慮して、前回のずれ測定時の補正量と今回のずれ測定時に得られた補正量を任意の比率で合算したものとしてもよい。
【0096】
ステップ400では、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定を再度行う。ステップ400における測定の内容は、ステップ200と同様であるので、説明は省略する。次に、ステップ500へ進む。
【0097】
ステップ500では、中央処理部107は、上記測定結果を用いて、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ量を計算し、調整量を計算する。具体的には、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn番目の格納領域にn回目のデータとして測定値とずれ量と調整量とを保存する。ステップ500におけるずれ量の計算、及び、調整量の計算の内容は、ステップ300と同様であるので、説明は省略する。次に、ステップ600へ進む。
【0098】
ステップ600では、中央処理部107は、増締め前(n−1回目)のステップ300で得られたずれ量と、増し締め後(n回目)のステップ500で得られたずれ量から、補正量を計算し、記憶部110の補正データ格納部110aに保存する。
【0099】
図7は、ステップ600の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0100】
ステップ601では、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn番目の格納領域に保存している増し締め後(n回目)の「データn」と、n−1番目の格納領域に保存している増締め前(n−1回目)の「データn―1」から補正量としてずれ量差異を計算する。
【0101】
補正量となるずれ量差異は以下のように表される。
【0102】
垂直方向の平行度:eav=av[n−1]−av[n]
水平方向の平行度:eah=ah[n−1]−ah[n]
垂直方向の偏心度:edv=dv[n−1]−dv[n]
水平方向の偏心度:edh=dh[n−1]−dh[n]
【0103】
ステップ602では、中央処理部107は、上記ずれ量差異を、補正量(eav, eah, edv, edh)として、記憶部110の補正データ格納部110aに保存し、ステップFへ進む。
【0104】
ステップFでは、作業者は、増し締め後の上下方向ずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップGへ進み、許容値外である場合にはステップCへ進む。
【0105】
ステップGでは、作業者は、増し締め後の左右方向ずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップ700へ進み、許容値外である場合にはステップDへ進む。
【0106】
ステップ700では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)と寸法データ格納部110bに格納された寸法データ(A, B, D)を外部記憶部111の補正データ格納部111aと寸法データ格納部111bへそれぞれ格納する。
【0107】
図8は、ステップ700の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0108】
ステップ701では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)を外部記憶部111の補正データ格納部111aへ格納する。
【0109】
ステップ702では、中央処理部107は、記憶部110の寸法データ格納部110bに格納された寸法データ(A, B, D)を外部記憶部111の寸法データ格納部111bへ格納する。
【0110】
以上説明したように、本実施形態の芯出し調整支援装置によれば、測定結果と調整量から計算される調整後のずれと実際の測定結果から得られるずれの差を、次回の芯出し作業時の調整量指示に加味するようにしたので、台座や機器の微妙な精度外れに起因する3点支持を原因とする歪が発生しても、予めその歪による影響を見越した調整量を指示できることで、増し締め後のずれを許容値内に収めることが可能となり、再調整が必要なケースが減ることで作業を効率化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態の芯出し調整支援装置を実際の固定側回転機器と調整側回転機器とに取り付けた状態を示す図である。
【図2】本実施形態の芯出し調整支援装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の芯出し調整支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートのステップ100の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図5】図3のフローチャートのステップ300の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図6A】固定側回転機器と調整側回転機器との回転軸のずれ測定方法を説明する模式図である。
【図6B】固定側回転機器と調整側回転機器との間に生じる偏心度と平行度のずれを示す模式図である。
【図6C】調整側回転機器の調整量を示す模式図である。
【図7】図3のフローチャートのステップ600の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図8】図3のフローチャートのステップ700の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図9】本実施形態の表示部における測定値とずれ量と調整量の表示画面の例である。
【符号の説明】
【0112】
100:芯出し調整支援装置
101:変位計D
102:変位計A
103:A/D変換器
104:情報処理部
105:表示部
106:キーボード・マウス
107:中央処理部
108:A/D変換インターフェース
109:操作入力インターフェース
110:記憶部
111:外部記憶部
112:表示部インターフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯出し調整支援装置に係わり、特に、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を変位センサーを用いて測定し補正量を算出する芯出し調整支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の芯出し調整支援装置としては、例えば、2個の非接触式距離計を用いて偏心量と偏心角を演算し、必要な調整量を表示する2軸センタリング計測装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような従来の芯出し調整支援装置は、変位計から得られた測定値から調整量を演算し表示し、作業者はこの調整量に基づいて芯出し作業を行う。
【0003】
実際の芯出し作業においては、調整側回転機器、例えばモータなど、を台座にボルトで固定してずれ量を計測し、ボルトを緩めて台座とモータの間にずれ量分のライナーを挿入したり、水平方向へ移動させたりする。そして、調整側回転機器を、再びボルトで固定しずれ量を計測することを数回繰り返し、ずれ量が許容値内に収まった時点で調整が終了となり、最終的に増し締めを行う。
【特許文献1】実開昭63−27816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本来台座上のモータを4点で均等に支持すべきところを3点で支持した状態になっている場合があり、これが増し締めにより歪となって、ずれがさらに発生することがある。これにより調整側回転機器の位置の再調整が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、計測値から計算した調整量に、過去の調整履歴から得られる増し締めによる影響値を補正量として加算し、増し締め後の再調整が発生しない的確な調整量の指示を行うことができる芯出し調整支援装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、変位センサーからの出力に基づいて、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定前の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、台座上への調整側回転機器のボルトによる固定後の調整側回転機器の回転軸と固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、固定前のずれ量と固定後のずれ量から補正量を計算し、補正量に基づいてずれ量を補正して、補正されたずれ量から調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芯出し調整支援装置によれば、測定結果と調整量から計算される調整後のずれと実際の測定結果から得られるずれの差を、補正量として次回の芯出し作業時の調整量指示に加味するようにしたので、台座や機器の微妙な精度外れに起因する3点支持を原因とする歪が発生しても、予めその歪による影響を見越した調整量を指示できることで、増し締め後のずれを許容値内に収めることが可能となり、再調整が必要なケースが減ることで作業を効率化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置について、図を参照して説明をする。
【0009】
図1は、本実施形態の芯出し調整支援装置を実際の固定側回転機器と調整側回転機器とに取り付けた状態を示す図である。
【0010】
まず、芯出し作業の対象となる固定側回転機器11と調整側回転機器12について簡単に説明をする。
【0011】
固定側回転機器11は、例えば、ポンプ等の回転機器であり、所定の設備に固定して設置されている。固定側回転機器11は、他の機器との接続部となる固定側回転機器フランジ13を有している。また、固定側回転機器11は、他の機器との接続時に芯出し調整の基準となる軸中心11cを有する。
【0012】
調整側回転機器12は、例えば、モータ等の回転機器であり、所定の周期で交換もしくは点検後再設置される機器である。調整側回転機器12は、他の機器との接続部となる調整側回転機器フランジ14を有している。また、調整側回転機器12は、他の機器との接続時に芯出し調整の基準となる軸中心12cを有する。また、調整側回転機器12は、前ベース12aと後ベース12bとを備え、前ベース12aと後ベース12bとを介して台座15上に固定される。なお、図示はしていないが、前ベース12aに2箇所、後ベース12bに2箇所のボルト取り付け部を有しており、調整側回転機器12は4箇所からのボルト締めにより台座15上に固定されることとなる。
【0013】
芯出し作業とは、固定側回転機器11の軸中心11cと調整側回転機器12の軸中心12cが一致するように調整側回転機器12の位置、角度を調整する作業である。
【0014】
本実施形態の芯出し調整支援装置100は、A/D変換器103と情報処理部104と表示部105と変位計D101と変位計A102とから構成される。
【0015】
本実施形態における変位計D101と変位計A102は、渦電流式の非接触変位センサーを用いている。なお、変位センサーは、渦電流式に限られず、例えば、レーザー光変位センサーや静電容量変位センサーや、超音波変位センサーや、接触式のセンサーも用いてもよい。ただし、センサーの大きさ、分解能、コストの面からは渦電流式変位センサーを用いることが好ましい。
【0016】
変位計D101と変位計A102とは、L字ブロック36により互いに直角方向を向くように固定される。また、L字ブロック36は、マグネットスタンド35の先端に固定されている。図1に示すように、マグネットスタンド35は、調整側回転機器フランジ14の外周面14b上に固定される。なお、マグネットスタンド35は、調整側回転機器フランジ14の調整側回転機器12側の端面14cに固定されても良い。また、変位計D101は、L字ブロック36により、固定側回転機器フランジ13の外周面13bと所定の間隔を有して固定されるとともに、変位計A102は、固定側回転機器フランジ13の側面13aと所定の間隔を有して固定される。
【0017】
図2は、本実施形態の芯出し調整支援装置の詳細な構成を示すブロック図である。上述したように、本実施形態の芯出し調整支援装置100は、A/D変換器103と情報処理部104と表示部105と変位計D101と変位計A102とから構成される。
【0018】
また、本実施形態の情報処理部104は、不図示の演算回路(CPU等)と不図示の記憶回路(RAMやROM等)を有し、この記憶回路に格納されたプログラムを実行し、図3〜5、7、及び、8のフローチャートに記載した動作を行うことにより、図2に記載のブロック図に示すように、中央処理部107とA/D変換インターフェース108と操作入力インターフェース109と記憶部110と外部記憶部111と表示部インターフェース112とを備えた装置として機能する。
【0019】
変位計D101と変位計A102とは、A/D変換器103に接続し、固定側回転機器フランジ13の外周面13bとの間隔、及び、固定側回転機器フランジ13の側面13aとの間隔に応じたアナログ信号を出力する。
【0020】
A/D変換器103は、A/D変換インターフェース108と接続し、上記アナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0021】
A/D変換インターフェース108は、中央処理部107と接続し、上記デジタル信号を中央処理部107に提供する際のインターフェースとなっている。
【0022】
キーボード・マウス106は、操作入力インターフェース109と接続し、使用者からの命令や入力を信号として出力する。
【0023】
操作入力インターフェース109は、中央処理部107と接続し、使用者からの信号を中央処理部107に提供する際のインターフェースとなっている。
【0024】
記憶部110は、補正データ格納部110aと寸法データ格納部110bとデータ格納部110cとを備え、所定のデータを中央処理部107へ出力するとともに、中央処理部107からのデータを所定の格納部に格納する。
【0025】
補正データ格納部110aには、補正量(eav, eah, edv, edh)に関するデータ(以下、補正データともいう)が格納される。寸法データ格納部110bには、寸法データ(A, B, D)が格納される。また、データ格納部110cは、複数の格納領域により構成され、n番目の格納領域には後述するn回目のずれ測定により取得及び計算された測定値とずれ量と調整量の各データが格納される。
【0026】
なお、補正量(eav, eah, edv, edh)とは、調整側回転機器12を台座15に固定する際の、固定用ボルトの増締め前の固定側回転機器11の軸中心11cと調整側回転機器12の軸中心12cとのずれ量と増し締め後のずれ量との差から得られたデータのことをいう。補正量の詳しい算出法については、後述する。
【0027】
また、寸法データ(A, B, D)とは、図1に示す固定側回転機器11と調整側回転機器12の各部の寸法のことをいう。寸法データのAは、調整側回転機器12の前ベース12aのボルト取り付け部から調整側回転機器フランジ14の先端面までの長さのことをいう。寸法データのBは、調整側回転機器12の前ベース12aのボルト取り付け部と後ベース12bのボルト取り付け部との間の長さを示している。寸法データのDは、固定側回転機器11の固定側回転機器フランジ13の直径を示している。
【0028】
外部記憶部111は、補正データ格納部111aと寸法データ格納部111bとを備え、所定のデータを中央処理部107へ出力するとともに、中央処理部107からのデータを所定の格納部に格納する。補正データ格納部111aには、補正量(eav, eah, edv, edh)が格納される。寸法データ格納部111bには、寸法データ(A, B, D)が格納される。
【0029】
表示部インターフェース112は、中央処理部107と接続し、中央処理部107の信号を表示部105に提供する際のインターフェースとなっている。
【0030】
表示部105は、中央処理部107からの信号に基づいて、所定の入出力画面を出力する。
【0031】
中央処理部107は、本実施形態の芯出し調整支援装置100のすべての動作を制御するとともに、変位計D101と変位計A102からの測定データについて所定の計算を行い、計算の結果得られたずれ量や補正量を表示部105へ出力する。
【0032】
以下に、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置の動作について、図を参照して説明をする。
【0033】
図3は、本発明の実施形態である芯出し調整支援装置の動作を示すフローチャートである。なお、フローチャート内の実線で囲まれたステップは、本実施形態の芯出し調整支援装置100が処理を行うステップであり、点線で囲まれたステップは、本実施形態の回転機器の芯出し調整支援装置100の画面出力に基づいて、作業者が芯出し作業を行うステップである。
【0034】
ステップ100(図中ではステップをSと略す)では、中央処理部107は、記憶部110へ初期の補正量(eav, eah, edv, edh)、及び、寸法データ(A, B, D)を読み込む。
【0035】
図4は、ステップ100の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0036】
ステップ101では、中央処理部107は、外部記憶部111の補正データ格納部111aを検索して、補正データの有無を確認する。補正データがある場合にはステップ102へ進み、補正データが無い場合にはステップ103へ進む
【0037】
ステップ102では、中央処理部107は、外部記憶部111の補正データ格納部111aに格納された補正量を記憶部110の補正データ格納部110aに読み込み、ステップ104へ進む。
【0038】
ステップ103では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量を0として、ステップ104へ進む。
【0039】
ステップ104では、中央処理部107は、外部記憶部111の寸法データ格納部111bを検索して、寸法データの有無を確認する。寸法データがある場合にはステップ105へ進み、寸法データが無い場合にはステップ106へ進む。
【0040】
ステップ105では、中央処理部107は、外部記憶部111の寸法データ格納部111bに格納された寸法データを記憶部110の寸法データ格納部110bに読み込み、ステップ101へ進む。
【0041】
ステップ106では、中央処理部107は、キーボード・マウス106から入力された寸法データを記憶部110の寸法データ格納部110bに格納して、ステップ101へ進む。
【0042】
ステップ200では、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定を行う。そして、ステップ200では、変位計D101と変位計A102とによる測定結果が、中央処理部107に入力される。
【0043】
図6Aは、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定方法を説明する模式図である。図6A(a)は、両回転軸の平行度を測定する方法を説明する図であり、図6A(b)は両回転軸の偏心度を測定する方法を説明する図である。
【0044】
図6A(a)は、両回転軸の平行度を測定する方法を示す図である。図1の変位計位置を基準としてこれを0°とすれば、0°から時計回り又は反時計回りに固定側回転機器フランジ13と調整側回転機器フランジ14を同期して90°ずつ回転させ、0°、90°、180°、270°の各位置で固定側回転機器フランジ13の側面13aとの変位を、変位計A102により測定する。そして、0°、90°、180°、270°で変位を測定した平行度をそれぞれa0, a90, a180, a270とする。
【0045】
図6A(b)は、両回転軸の偏心度を測定する方法を示す図である。図1の変位計位置を基準としてこれを0度とすれば、0°から時計回り又は反時計回りに固定側回転機器フランジ13と調整側回転機器フランジ14を同期して90°ずつ回転させ、0°、90°、180°、270°の各位置で固定側回転機器フランジ13の外周面13bとの変位を変位計D101により測定する。そして、0°、90°、180°、270°で変位を測定した偏心度をそれぞれd0, d90, d180, d270とする。
【0046】
ステップ300では、中央処理部107は、上記測定結果を用いて固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ量を計算し、調整量を計算する。
【0047】
図5は、ステップ300の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0048】
ステップ301では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)を読み込み、ステップ302へ進む。
【0049】
ステップ302では、中央処理部107は、ステップ200で測定した平行度(a0, a90, a180, a270)と偏心度(d0, d90, d180, d270)を読み込み、ステップ303へ進む。
【0050】
ステップ303では、中央処理部107は、ずれ量を計算する。ここで、ずれ量の定義について簡単に説明をする。
【0051】
図6Bは、固定側回転機器11と調整側回転機器12との間に生じる偏心度と平行度を示す模式図である。図6B(a)は、両回転軸の平行度を示す図であり、図6B(b)は両回転軸の偏心度を示す図である。
【0052】
図6B(a)からわかるように、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahを、両フランジの側面13aと14aとの傾きにより生じる角度により定義するものとする。なお、図中では、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahとを同一の位置に記載しているが、これは説明の簡略化のためであり、実際には、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ahとは互いに直交する位置について測定を行っている。
【0053】
また、図6B(b)からわかるように、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhを、両軸中心11cと12cとのずれにより生じる長さにより定義するものとする。なお、図中では、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhとを同一の位置に記載しているが、これは説明の簡略化のためであり、実際には、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhとは互いに直交する位置について測定を行っている。
【0054】
次に、ステップ303における、垂直方向の平行度avと水平方向の平行度ah、及び、垂直方向の偏心度dvと水平方向の偏心度dhを求める方法について説明をする。
【0055】
平行度の計算は次のごとく行われる。垂直方向の平行度は、変位計A102と変位計D101の、0°と180°における測定値の差から計算できる。水平方向の平行度は、変位計A102と変位計D101の、90°と270°における測定値の差から計算できる。
【0056】
垂直方向の平行度av=a180−a0(180°位置に対し0°位置が開く方向を正とする)
水平方向の平行度ah=a270−a90(270°位置に対し90°位置が開く方向を正とする)
【0057】
偏心度の計算は次のごとく行われる。
【0058】
垂直方向の偏心度dv=(d0−d180)÷2(180°位置に対し0°位置方向を正とする)
水平方向の偏心度dh=(d90−d270)÷2(270°位置に対し90°位置方向を正とする)
【0059】
このように計算された両回転軸の平行度及び偏心度を、ずれ量とする。ずれ量計算の後、ステップ304へ進む。
【0060】
ステップ304では、中央処理部107は、ずれ量と補正量から調整量を計算する。ここで、調整量の定義について簡単に説明をする。
【0061】
図6Cは、調整側回転機器12の調整量を示す模式図である。図6C(a)は、調整側回転機器12を横から見た場合の調整量を示す図であり、図6C(b)は、調整側回転機器12を上から見た場合の調整量を示す図である。
【0062】
図6C(a)からわかるように、調整側回転機器12の調整量は、被非調整機器12の前ベース12aと台座15との間にライナー等と挿入することで垂直方向に調整される調整量xfvと、被非調整機器12の後ベース12bと台座15との間にライナー等と挿入することで垂直方向に調整される調整量xrvとで表すことができる。
【0063】
また、図6C(b)からわかるように、調整側回転機器12の調整量は、被非調整機器12の前ベース12aを水平方向に移動させることで調整される調整量xfhと、被非調整機器12の後ベース12bを水平方向に移動させることで調整される調整量xrhとで表すことができる。
【0064】
中央処理部107が行う、ずれ量と補正量からの調整量の計算方法は以下の通りである。
【0065】
垂直方向の調整量は、変位計A102の0°と180°における測定値の差にB÷Dを乗じることで求めることができる。水平方向の調整量は、変位計A102の90°と270°における測定値の差にB÷Dを乗じることで求めることができる。
【0066】
平行度調整分として調整側回転機器の後ベース位置の調整量は以下の関係式で表すことができる。
【0067】
垂直方向:xav=(av+eav)×B÷D
水平方向:xah=(ah+eah)×B÷D
【0068】
平行度の計測値avとahに補正量eavとeahを加えたものが、増し締めによるずれを考慮した真のずれ量と考えられる。その真のずれ量に前後ベース間距離Bとフランジ直径Dの比B/Dを乗じた量xavとxahが、後ベースに挿入するライナーの厚みと後ベースを水平方向に移動する調整量となる。
【0069】
次に、上記平行度調整により新たに生じる偏心度ずれ量と調整量を計算する。新たに生じる偏心度ずれ量と調整量は、以下の関係式で表すことができる。
【0070】
垂直方向:ずれ量 av’=−xav×A÷B 調整量 xav’= xav×A÷B
水平方向:ずれ量 ah’=−xah×A÷B 調整量 xah’= xah×A÷B
【0071】
上記平行度調整では後ベースを垂直方向と水平方向に移動させるため、フランジ部は前ベースを支点として後ベースの移動方向と反対方向へずれる。平行度調整量xavとxahにフランジから前ベースの距離Aと前後ベース間距離Bの比A/Bを乗じて極性を反転した量av’とah’がずれ量となり、その極性を反転したxav’とxah’が調整量となる。
【0072】
偏心度調整分として、調整側回転機器の平行移動の調整量は以下の関係式で表すことができる。
【0073】
垂直方向:xdv=−(dv+edv)
水平方向:xdh=−(dh+edh)
【0074】
偏心度の計測値dvとdhに補正量edvとedhを加えたものが、増し締めによるずれを考慮した真のずれ量と考えられる。その真のずれ量の極性を反転したxdvとxdhが、前後ベースを垂直方向に平行移動するために挿入するライナーの厚みと前後ベースを水平方向に平行移動する調整量となる。
【0075】
そして、最終的な調整側回転機器12の調整量は以下のように求められる。
【0076】
調整側回転機器12の前ベース12aの垂直方向の調整量:xfv=xav’+xdv
調整側回転機器12の前ベース12aの水平方向の調整量:xfh=xah’+xdh
調整側回転機器12の後ベース12bの垂直方向の調整量:xrv=xav+xav’+xdv
調整側回転機器12の後ベース12bの水平方向の調整量:xrh=xah+xah’+xdh
【0077】
調整量計算の後、ステップ305へ進む。
【0078】
ステップ305では、中央処理部107は、測定値と、ずれ量と、調整量を記憶部110に保存する。具体的には、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn−1番目の格納領域にn−1回目のデータとして測定値(a0, a90, a180, a270, d0, d90, d180, d270)とずれ量(av, ah, dv, dh)と調整量(xav, xah, xav’, xah’, xfv, xrv, xfh, xrh)とを保存する。
【0079】
また、ステップ305では、中央処理部107は、測定値とずれ量と調整量を表示部105に出力し、ステップAへ進む。
【0080】
図9は、ステップ305における、表示部105への測定値とずれ量と調整量との表示画面の例である。
【0081】
図中のウィンドウP11〜P15は、0°、90°、180°、270°、360°の各角度における平行度の測定値が表示される。また、ウィンドウP21〜P25は、0°、90°、180°、270°、360°の各角度における偏心度の測定値が表示される。
【0082】
なお、P11の0°とP15の360°の平行度、および、P21の0°とP25の360°の偏心度は、同じ測定点をフランジを1回転させた状態で再び測定するもので、測定作業の誤り、ばらつきが無い事を確認するためのものである。
【0083】
ウィンドウP31、P32には、前ベース12a、後ベース12bの上下方向の調整量が表示される。また、ウィンドウP41〜P44には、前ベース12a、後ベース12bの左右方向の調整量が表示される。
【0084】
ステップAでは、作業者は、表示部105に表示されたずれ量を確認して、上下方向のずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップBへ進み、許容値外である場合にはステップCへ進む。
【0085】
ステップCでは、作業者は、表示部105に表示された調整量に基づいて、調整側回転機器12の上下方向ずれ調整を行い、ステップ200へ戻る。
【0086】
ステップBでは、作業者は、表示部105に表示されたずれ量を確認して、左右方向のずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップEへ進み、許容値外である場合にはステップDへ進む。
【0087】
ステップDでは、作業者は、表示部105に表示された調整量に基づいて、調整側回転機器12の左右方向ずれ調整を行い、ステップ200へ戻る。
【0088】
なお、ステップA〜Dの調整にあたっては、上下方向のずれ調整における調整側回転機器の前ベース12aと後ベース12bへのライナー挿入または抜き取り作業に伴い、軸の水平方向が容易にずれてしまうため、まず、ステップCで軸の上下方向の調整を行っている。上下方向のずれが許容値内に収まったところで、ステップDで軸の水平方向(左右方向)の調整を行う。水平方向の調整作業では、調整側回転機器12を水平方向に動かすだけなので、ライナーに依存する垂直方向のずれに影響はない。
【0089】
ステップEでは、作業者は、前ベース12aと後ベース12bのボルトを増し締めし、台座15へ調整側回転機器12を固定し、ステップ400へ進む。
【0090】
ステップEで、調整が終了した後には、調整側回転機器12を台座15へ固定しているボルトを増し締めすることになるが、このとき、調整側回転機器12の前ベース12aと後ベース12bの4箇所または台座15の該当4箇所が同一面になければ3点支持となり、増し締めをした時点で歪が生じて軸にずれが生じてしまう。
【0091】
解決策として理想的なのは4点支持になるようにライナーで調整することだが、これは熟練技術を要する。また、新たに設置する機器の場合は、この調整を実施する時間的余裕が確保されているかもしれないが、保守等に伴う機器の取り外しと再設置といった場合には元々ライナーは調整ずみという認識があり、作業時間が限られることが多い。
【0092】
こうした状況の中で、新設時に3点支持のままで設置され、試行錯誤の結果として芯出し調整がなされている機器は、再設置の際の芯出し調整の過程で前回設置時の最終結果へ直接至る調整過程をとることができず、再設置の度に新設時の試行錯誤と同じ過程を余儀なくされる。
【0093】
このような問題を解決するために、本実施形態の芯出し調整支援装置100は、増し締めによる歪の結果、軸がずれる量を補正量として利用するものである。
【0094】
具体的には、ステップ200での垂直、水平方向それぞれのずれ測定の最終結果と、ステップ400での増し締め後のずれ測定の結果とを比較し、その差を補正量として保持し、次回再設置時の調整過程で、ずれ量の表示は実測値を基にした計算値と補正量を加味して得られる増し締め後のずれ量の予想値を表示し、調整量の表示は、補正量を加味した調整量を表示する。
【0095】
こうすることで、増し締めの結果を予測した調整作業が可能となり、増し締め後の再調整をなくすことが可能となる。また、補正量の更新は、前回のずれ測定時の補正量を、今回のずれ測定時のステップ200における測定結果の最終値と、今回のステップ400における測定結果の差とに置き換えることで、経年変化に対応したより精度の高い補正値へと更新できる。また、測定のばらつきを考慮して、前回のずれ測定時の補正量と今回のずれ測定時に得られた補正量を任意の比率で合算したものとしてもよい。
【0096】
ステップ400では、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ測定を再度行う。ステップ400における測定の内容は、ステップ200と同様であるので、説明は省略する。次に、ステップ500へ進む。
【0097】
ステップ500では、中央処理部107は、上記測定結果を用いて、固定側回転機器11と調整側回転機器12との回転軸のずれ量を計算し、調整量を計算する。具体的には、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn番目の格納領域にn回目のデータとして測定値とずれ量と調整量とを保存する。ステップ500におけるずれ量の計算、及び、調整量の計算の内容は、ステップ300と同様であるので、説明は省略する。次に、ステップ600へ進む。
【0098】
ステップ600では、中央処理部107は、増締め前(n−1回目)のステップ300で得られたずれ量と、増し締め後(n回目)のステップ500で得られたずれ量から、補正量を計算し、記憶部110の補正データ格納部110aに保存する。
【0099】
図7は、ステップ600の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0100】
ステップ601では、中央処理部107は、記憶部110のデータ格納部110cのn番目の格納領域に保存している増し締め後(n回目)の「データn」と、n−1番目の格納領域に保存している増締め前(n−1回目)の「データn―1」から補正量としてずれ量差異を計算する。
【0101】
補正量となるずれ量差異は以下のように表される。
【0102】
垂直方向の平行度:eav=av[n−1]−av[n]
水平方向の平行度:eah=ah[n−1]−ah[n]
垂直方向の偏心度:edv=dv[n−1]−dv[n]
水平方向の偏心度:edh=dh[n−1]−dh[n]
【0103】
ステップ602では、中央処理部107は、上記ずれ量差異を、補正量(eav, eah, edv, edh)として、記憶部110の補正データ格納部110aに保存し、ステップFへ進む。
【0104】
ステップFでは、作業者は、増し締め後の上下方向ずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップGへ進み、許容値外である場合にはステップCへ進む。
【0105】
ステップGでは、作業者は、増し締め後の左右方向ずれ量が許容値内であるか否かを確認する。許容値内である場合にはステップ700へ進み、許容値外である場合にはステップDへ進む。
【0106】
ステップ700では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)と寸法データ格納部110bに格納された寸法データ(A, B, D)を外部記憶部111の補正データ格納部111aと寸法データ格納部111bへそれぞれ格納する。
【0107】
図8は、ステップ700の詳細な処理を示す詳細フローである。
【0108】
ステップ701では、中央処理部107は、記憶部110の補正データ格納部110aに格納された補正量(eav, eah, edv, edh)を外部記憶部111の補正データ格納部111aへ格納する。
【0109】
ステップ702では、中央処理部107は、記憶部110の寸法データ格納部110bに格納された寸法データ(A, B, D)を外部記憶部111の寸法データ格納部111bへ格納する。
【0110】
以上説明したように、本実施形態の芯出し調整支援装置によれば、測定結果と調整量から計算される調整後のずれと実際の測定結果から得られるずれの差を、次回の芯出し作業時の調整量指示に加味するようにしたので、台座や機器の微妙な精度外れに起因する3点支持を原因とする歪が発生しても、予めその歪による影響を見越した調整量を指示できることで、増し締め後のずれを許容値内に収めることが可能となり、再調整が必要なケースが減ることで作業を効率化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態の芯出し調整支援装置を実際の固定側回転機器と調整側回転機器とに取り付けた状態を示す図である。
【図2】本実施形態の芯出し調整支援装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の芯出し調整支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートのステップ100の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図5】図3のフローチャートのステップ300の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図6A】固定側回転機器と調整側回転機器との回転軸のずれ測定方法を説明する模式図である。
【図6B】固定側回転機器と調整側回転機器との間に生じる偏心度と平行度のずれを示す模式図である。
【図6C】調整側回転機器の調整量を示す模式図である。
【図7】図3のフローチャートのステップ600の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図8】図3のフローチャートのステップ700の詳細な処理を示す詳細フローである。
【図9】本実施形態の表示部における測定値とずれ量と調整量の表示画面の例である。
【符号の説明】
【0112】
100:芯出し調整支援装置
101:変位計D
102:変位計A
103:A/D変換器
104:情報処理部
105:表示部
106:キーボード・マウス
107:中央処理部
108:A/D変換インターフェース
109:操作入力インターフェース
110:記憶部
111:外部記憶部
112:表示部インターフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、
前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、
前記変位センサーからの出力に基づいて、
前記台座上への前記調整側回転機器のボルトによる固定前の前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、
前記台座上への前記調整側回転機器のボルトによる固定後の前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、
前記固定前のずれ量と前記固定後のずれ量から補正量を計算し、
前記補正量に基づいて前記ずれ量を補正し、
該補正されたずれ量から前記調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、
を有することを特徴とする芯出し調整支援装置。
【請求項1】
固定側回転機器の回転軸と、少なくとも4点の台座上へのボルトによる固定箇所を有する調整側回転機器の回転軸と、の芯を出すための芯出し調整支援装置であって、
前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸との変位を計測する変位センサーと、
前記変位センサーからの出力に基づいて、
前記台座上への前記調整側回転機器のボルトによる固定前の前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算するとともに、
前記台座上への前記調整側回転機器のボルトによる固定後の前記調整側回転機器の回転軸と前記固定側回転機器の回転軸とのずれ量を計算し、
前記固定前のずれ量と前記固定後のずれ量から補正量を計算し、
前記補正量に基づいて前記ずれ量を補正し、
該補正されたずれ量から前記調整側回転機器の位置の調整量を算出する情報処理部と、
を有することを特徴とする芯出し調整支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−52919(P2009−52919A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217542(P2007−217542)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507284813)株式会社協立技術工業 (5)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507284813)株式会社協立技術工業 (5)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
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