説明

芯管抜き取り方法及び芯管抜き取り装置

【課題】芯管に捲着されたプラスチック製膜から芯管を効率よく抜き取る方法及びその装置を提供する。
【解決手段】芯管捲着テープを配置する移送パレットを取り外し自在に載置して進行方向に間欠移送する材料移送手段と、前記芯管内部にカートリッジヒーターを出入自在に差し込んで捲着テープと芯管を接合する接着剤を軟化または溶融する加熱手段と、芯管の外側捲着テープに加熱したカッターを芯管の長手方向に沿って移動して切り込みする切り込み手段と、前記芯管を押し込んで捲着テープを分離させる上下動自在に設けてなる芯抜手段と、前記移送パレットを進行方向に間欠移送する動作、カートリッジヒーターを移動する動作、カッターを移動する動作及び芯管を押し込む動作に至る一連の動作を調整するコントローラーと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯管に捲着されたプラスチック製膜から芯管を効率よく抜き取る方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂、天然高分子を含むフィルムやシート(以下「プラスック製膜」と称する)は、カレンダー法、エクストルーダー法(Tダイ法)、キャスティング法、インフレーション法、コーティング法等によって大量生産されている。そして、前記の製造工程を経て製造される広幅のフィルムやシートは、一旦、紙菅、木管、金属管などの芯管に捲き取られる。更に、このようにして捲き取られたプラスック製膜は、粘着剤をコーティングした後、専用の裁断機によって裁断され狭幅の粘着テープ製品に仕上げられる。この他に、前記プラスチック製膜に印刷や表面処理を施して化粧シートとし、更にこの化粧シートの裏面に発泡シート、布帛、紙等を積層して床材、壁材等の建材、衣料、自動車内装材等に広く利用されている。
【0003】
前記プラスック製膜の製膜工程においては、原料の樹脂を加熱溶融したものをカレンダーロールで圧延し、ないしはダイスから押出して製膜化した後、冷却して芯管に捲き取る。芯管への捲き取り方法には、大別してセンター捲き取り方法と表面捲き取り方法の2通りがあり、前者は、芯管自体を駆動させてプラスック製膜を芯管に捲き取るのに対して、後者は、芯管を回転するローラー上に乗せて連れ回り方式で回転させて捲き取るのである。しかし、何れの場合も、通常捲き始めは、芯管に接着剤を塗布してプラスック製膜端を芯管に固定するとともに、回転する芯管の表面速度をプラスック製膜の供給速度よりも速めて膜に適度の引っ張り力を与えないと、弛みを生じてうまく捲き取りができないことは周知である。
【0004】
ところが、捲き取りの際に加えた引っ張り力は流動点以下の温度下においては分子の塑性流動をもたらさずに内部応力として蓄積される。この内部応力は、時間の経過とともにプラスック製膜を長手方向に収縮するように作用し、芯管を締め付ける結果となる。また、プラスック製膜は金属等に比較して熱伝導率が10−4オーダーと小さく、捲き取りまでの冷却ゾーンを経ても内部が完全に冷却されない場合が多い。特に近年装置の高速化が進むに伴ってこの傾向が強く、プラスック製膜がやや熱を帯びた状態でゴム状にのばされた状態のまま捲き取られてしまう傾向にある。そのために、時間の経過とともに冷却による体積の収縮も加わって、この芯管を締め付ける力が増大し、芯管をいっそう抜け難くくする要因となっている。
【0005】
本願出願人は、以前にプラスック製膜が捲かれた芯管捲着テープから芯管を抜き取る芯管抜き取り装置に係る発明について出願し、その発明が開示されている(特許文献1)。係る装置は、前記粘着テープの廃棄品に限らず、広幅のプラスック製膜も含めて一般にロール状の捲着プラスチック製膜に広く適用できる点と自動化の点で優れている。しかし、(1)芯管の長手方向に沿って切り込みを入れる際に回転刃の使用条件によっては切りくずが飛散する場合がある、(2)芯管内部にカートリッジヒーターを差し込んで接着剤を軟化または溶融する加熱手段においてカートリッジヒーターを持ち上げる際に捲着テープがカートリッジヒーターとともに持ち上がる場合がある、(3)芯管捲着テープの供給の簡略化について改良すべき点が見出され、更なる改良を重ねた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−222567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、前記改良すべき点について鋭意研究した結果、(1)については、回転刃に代えて加熱したカッターを用いることで解決することを見出し、(2)については、カートリッジヒーターの周囲における捲着テープと当接する位置にカートリッジヒーターを引き上げる方向と逆方向に付勢する二段ばね機構を設けることで解決することを見出し、また、(3)については、芯管捲着テープを配置する移送パレットを取り外し自在に載置することで解決することを見出して本発明に想到するに到ったものであり、本発明の目的は、前記のような問題点を解消し、回転刃の使用条件による切りくずが飛散することがなく、カートリッジヒーターを引き上げる際に捲着テープがカートリッジヒーターとともに持ち上がることがなく、更に、芯管捲着テープの供給が簡単で手際よくでき、しかも装置が比較的コンパクトで新規な芯管抜き取り方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、芯管捲着テープを配置する移送パレットを取り外し自在に載置して進行方向に間欠移送する材料移送手段と、前記芯管内部にカートリッジヒーターを出入自在に差し込んで捲着テープの芯管とプラスチック製膜部を接合する接着剤を軟化または溶融する加熱手段と、前記捲着テープのプラスチック製膜部に加熱したカッターを芯管の長手方向に沿って移動して切り込みする切り込み手段と、前記芯管を押し込んで芯管とプラスチック製膜部を分離させる上下動自在に設けてなる芯抜手段と、前記移送パレットを進行方向に間欠移送する動作、カートリッジヒーターを移動する動作、カッターを移動する動作及び芯管を押し込む動作に至る一連の動作を調整するコントローラーと、を備えたことを特徴とする芯管抜き取り装置とする(請求項1)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記カッターは、前記芯管捲着テープの芯管の長手方向に沿って往復運動するように構成し、刃が往復運動の方向に対して斜めに且つ上向き及び下向きに設けてなることを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記カッターは、前記捲着テープの軟化温度または溶融温度よりも高い温度に加熱してなることを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、ヒーター上下動シリンダーのシリンダーロッドに昇降ボックスとカートリッジヒーターがヒーター上下動シリンダーに連動して上下動可能に連結されていて、この昇降ボックスを上下方向に貫通する吊下棒が上下動自在に係止しており、吊下棒の上端部の連結ピンと昇降ボックス前面との間に吊下棒を下方に押下する方向に付勢する第1ばねが設けられており、吊下棒の下端部にはピン押台が吊下していて、ピン押台の中央部には、カートリッジヒーターを遊貫する貫通孔が穿設されており、この貫通孔の周囲の捲着テープと当設する位置に押下ピンを遊貫する複数の貫通小孔が穿設けられており、この貫通小孔にそれぞれ押下ピンを遊貫すると共に、押下ピンの上端とピン押台との間には押下ピンを降下する方向に付勢する第2ばねが設けられており、押下ピンの下端部には滑り防止と衝撃を吸収して安定性を維持するために弾性部材が取着されていることを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項4)。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記押下ピンは、前記カートリッジヒーターと連動して上下動し、前記カートリッジヒーターが上昇して太径部部が芯管から抜出るまで捲着テープに当接し、カートリッジヒーターの太径部部が芯管から抜出したら捲着テープから離間することを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項5)。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記移送パレットには、板状体に芯管捲着テープの芯管を貫通可能な芯管孔を等間隔に穿設すると共に板状体の一側面から前記各芯管孔の中心に向かうカッターが挿出可能な間隙を形成し、前記板状体の間隙と対向する側にはパレット移送腕の突起を係止する係止孔を穿設してなることを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項6)。
【0014】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記移送パレットを進行方向に間欠移送する移送手段、カートリッジヒーターを上下動する加熱手段、カッターを上下動する切り込み手段及び芯管を押し込む芯抜手段としてシリンダーを用いて各シリンダーの動作をコントローラーで調整することを特徴とする前記の芯管抜き取り装置とすることが好ましい(請求項7)。
【0015】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、芯管捲着テープを移送パレットに配置して芯管抜き取り装置に載置する工程と、前記芯管捲着テープを配置した移送パレットを進行方向に間欠移送する材料移送工程と、前記芯管捲着テープの芯管の内側にカートリッジヒーターを差し込んで加熱して捲着テープを芯管に接合する接着剤を軟化または溶融する加熱工程と、前記加熱工程中において芯管の長手方向に沿って加熱されたカッターを移動して捲着されたテープに切り込みを入れる切断工程と、前記芯管をプラスチック製膜から抜き取る芯抜工程と、を備えたことを特徴とする芯管抜き取り方法とする(請求項8)。
【0016】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記芯管の内側にカートリッジヒーターを差し込んで加熱する加熱工程において、前記カートリッジヒーターを芯管から抜き取る際にカートリッジヒーターを引き上げる方向と逆方向に付勢する第1ばね及び第2ばねからなる二段ばね機構が作用して捲着テープがカートリッジヒーターに付着して持ち上がるのを防止することを特徴とする前記の芯管抜き取り方法とすることが好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の芯管抜き取り方法及びその装置は、前記のように構成され、回転刃に代えて加熱したカッターを用いることでテープの切りくずの飛散が全くなく、しかも切り込みのスピードが格段に早くなった。また、カートリッジヒーターを引き上げる方向と逆方向に付勢する二段ばね機構を設けることによって、捲着テープがカートリッジヒーターに付着して持ち上がることがなくなり、行程のスピードアップが図られた。更に、芯管捲着テープを予め配置した移送パレットを載せるだけで複数の芯管捲着テープを一挙に装置にセットできるので作業ミスもなく手間を要さず、作業効率の向上に更に寄与することが可能となった。装置自体もコンパクトになったことから設置にも場所をとらない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係る芯管抜き取り装置を示す正面視の説明図である。
【図2】実施例1に係る芯管抜き取り装置を示す側面視の説明図である。
【図3】移送パレットの移動経緯を示す平面視の説明図である。
【図4】図1の加熱手段、切り込み手段及び芯抜き手段の拡大説明図である。
【図5】図4のピン押台付近の拡大説明図である。
【図6】材料移送手段の説明図である。
【図7】シリンダーの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
プラスチック製膜の芯管を締め付ける締め付け力によって強固に捲着されたプラスチック製膜から芯管を容易に抜き取るという目的を、作業効率を低下させることなく、しかも、従来例のように芯管の一部がプラスチック製膜に付着したり、芯管を損傷したりすることなく実現した。
【実施例1】
【0020】
次に、実施例について以下に図に基づいて説明するが、実施例1は、粘着テープ等のカット端である芯菅に捲着された狭幅のプラスチック製膜から芯菅を抜き取る装置について例示するものである。しかして、本願発明は本実施例に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施例1に係る芯管抜き取り装置を示す正面視の説明図であり、図2は、同じく側面視の説明図である。図3は、移送パレットの移動経緯を示す平面視の説明図であり、図4は、加熱手段、切り込み手段及び芯抜き手段の拡大説明図である。図5は、ピン押台付近の拡大説明図であり、図6は、材料移送手段の説明図であり、図7は、シリンダーのエアー回路図である。これらの図において、芯管抜き取り装置1は、複数個の、芯管に捲着された捲着テープ2を一定の間隔で配置した移送パレット31を取り外し自在に載置して進行方向に間欠移送する材料移送手段3と、前記芯管内部にカートリッジヒーターを出入自在に差し込んで捲着テープの芯管とプラスチック製膜部を接合する接着剤を軟化または溶融する加熱手段4と、捲着テープのプラスチック製膜部に加熱したカッターを芯管の長手方向に沿って移動して切り込みする切り込み手段5と、前記芯管を押し込んで芯管とプラスチック製膜部を分離させる上下動自在に設けてなる芯抜手段6と、前記移送パレットを進行方向に間欠移送する動作、カートリッジヒーターを移動する動作、カッターを移動する動作及び芯管を押し込む動作に至る一連の動作を調整するコントローラーと、を備えたことを特徴とする。
【0022】
次に、前記芯管抜き取り装置1について詳細に説明する。図3又は図6に示すように、材料移送手段3に用いる移送パレット31は、捲着テープ2の芯管21を通す複数の芯管孔312を横一列に等間隔に穿設した矩形の板状体311からなり、この板状体の一側面から前記各芯管孔の中心に向かうカッターが挿出可能な狭幅の間隙313が形成してあり、前記間隙313と対向する側にはパレット移送腕の突起を係止する係止孔314が穿設してある。この移送パレット31に芯管21を通して捲着テープ2をそれぞれ配置する。プラスチック製膜部22が当接する部分である芯管孔312の周縁を一段低く形成してもよい。芯管孔312の数は作業性や装置の構成を考慮して適宜変更することができる。
【0023】
前記芯管抜き取り装置1の手前左側の基点には、移送パレット31を手前から奥の方に押し出すアームY33が、例えば(マグネット式)ロッドレスシリンダーYによって前後動(y軸方向)自在に設けられており、芯管抜き取り装置1の奥側には移送パレット31を左から右方向に移送するアームXがシリンダーによって上下動(z軸方向)自在及び左右動(x軸方向)自在に設けられており、アームX32には、移送パレット31の前記係止孔314にそれぞれ係止する突起34が上方に向かって2個設けられている。移送パレット31を芯管抜き取り装置の手前左側に手で寄せると、前記アームY33がパレット31を奥に押進し、次に、アームX32が上昇して突起321が移送パレット31の係止孔314に係止すると共に移送パレット31を右方向に間欠移送する。図3(a)は、ロッドレスシリンダーYによってアームY33が移送パレット31を奥の方に押し出した状態を示し、図3(b)は、アームY33が手前側に戻った後に、アームX32が左側に伸出するとともに上昇して突起34が移送パレット31の係止孔314に係止した状態を示す。パレット31の移動開始するタイミングや以下に記載する部材の動作の開始ないし終了のタイミングは、所定箇所に設定された光発信器・受光器の光センサーが発信する電気信号、リミットスイッチ又はシリンダーに設けられる(有接点若しくは無接点)オートスイッチが発信する電気信号からコントローラーが判断して指示するように構成することが好ましい。
【0024】
図1又は図2に示すように、前記芯管抜き取り装置1の基台9の中間には、枠体7が設けられており、枠体7の前面側には、加熱手段4と芯抜き手段6が並設されており、加熱手段4の後方には切り込み手段5が設けられている。加熱手段4は、図4又は図5に示すように、枠体7の上方にヒーター上下動シリンダー42が固定されていて、このシリンダーロッドの下端部に紡錘形の先端部を切断した形状のカートリッジヒーター41と、その中間に昇降ボックス43がシリンダー42に連動して上下動可能に連結されている。そして、この昇降ボックス43を上下方向に貫通する2本のピン押台の吊下棒44,44がシリンダーロッドの両側に上下動自在に係止している。
【0025】
前記吊下棒44,44の上端部が横棒441と連結ピン442で連結されていて、各連結ピンと昇降ボックス43の前面下方部との間に吊下棒44,44を下方に押下する方向に付勢する第1ばね46aが設けられている。吊下棒44,44の下端部にはピン押台45が吊下している。ピン押台45の中央部には、カートリッジヒーター41を遊貫する貫通孔が穿設されており、更に、この貫通孔の周囲の捲着テープ2と当設する位置に押下ピン47を遊貫する貫通小孔が穿設けられている。この貫通小孔に押下ピン47を遊貫すると共に、押下ピン47の上端とピン押台45との間には押下ピン47を降下する方向に付勢する第2ばね46bが設けられており、押下ピン47の下端部には滑り防止と衝撃を吸収して安定性を維持するためにゴムなどの弾性部材48が取着されている。また、ピン押台45の前後は左右よりも短い立方体状に形成されており、加熱カッター51が、昇降する際にピン押台45の後方部に接触しないように構成されている。
【0026】
次に、第1ばねと第2ばねの二段ばね機構の動作と作用について説明する。ヒーター上下動シリンダー42は、下降開始時には吊下棒44,44の上端部の横棒441が昇降ボックス43に接触した状態で下降する。その後、押下ピン47が捲着テープ2に当設すると昇降ボックス43はヒーター上下動シリンダー42と共に下降するが、ピン押台45は停止するので吊下棒44,44の上端部の横棒441が昇降ボックス43の上方に突出し、第1ばね46aが吊下棒44,44及びピン押台45を下降する方向に作用する。一方、ピン押台45に設けられている複数個(本実施例では4個)の押下ピン47が、第2ばね46bの衝撃吸収作用により、捲着テープ2を水平方向のバランスを保つべく小刻みに押下する結果、捲着テープ2及びヒーター上下動シリンダー42が多少動揺しても、捲着テープが移送パレットから外れたり転倒するなどの異常を来すことがない。
【0027】
カートリッジヒーター41によって芯管の接着剤が溶融される頃に、ヒーター上下動シリンダー42が上昇するが、カートリッジヒーター41の太径部が芯管から脱出する間は第1ばね乃至第2ばねからなる二段ばね機構の機序により押下ピンがそのまま捲着テープ2を押下し続ける。カートリッジヒーター41の太径部が芯管から脱出するタイミングで、吊下棒44,44の上端部の横棒441が昇降ボックス43に係止したままヒーター上下動シリンダー42とともに上昇し、ピン押台45の押下ピンが捲着テープ2から離間する。また、ヒーターは、通常、サーモスタットによる温度調節可能な電熱ヒーターが使用されるが、電熱ヒーター以外に蒸気、シリコーンオイル、ダウサムなどの熱媒や接着剤のビヒクルの材質によって、例えば塩化ビニル系樹脂の場合は高周波加熱、オレフィン系樹脂の場合は超音波加熱を使用することもできる。カートリッジヒーター41,41は、予めテープ固定用接着剤を軟化ないし溶融する温度(約100〜200℃)以上に設定してあり、約5〜30秒間加熱される。カートリッジヒーターの加熱時間や加熱温度などの条件の設定は素材に応じて自由に選択できることは云うまでもない。
【0028】
次に、切り込み手段5について説明する。切り込み手段5は、図2又は図3に示すように、加熱手段4の後方にカッター上下動シリンダー52が枠体7に固定されていて、このシリンダーロッドの下端部に加熱カッター51が捲着テープ2側に刃を向けた状態でシリンダー52に連動して上下動可能に連結されている。加熱カッター51は、停止した移送パレット31の間隙313に挟まれた状態で上下動するので刃振れすることなくプラスチック製膜部22を切断することができる。加熱カッター51の設定温度は、カッターの昇降速度やプラスチック製膜部22の材質によって適宜選択すればよく、通常、約180〜250℃、より好ましくは、約200〜230℃に設定される。加熱カッター51は、特に限定されないが、刃自体が発熱するインパルス式ヒートカッターやカートリッジヒーター式カッター等が好ましい。その他、前記の加熱手段で記載した加熱方法を用いてもよい。
【0029】
加熱カッター51の刃の形状は、往復運動する上下一方側にのみ刃を形成してもよいが、往復運動の方向に対して斜めに交差する刃を上向きと下向きにそれぞれ設けることが好ましい。例えば、図2に示すような円弧型又は山形等の凸部側に刃を形成し、刃の上下方向を転換可能に構成すれば、より確実に切断され好ましい。前記加熱カッター51を用いれば、従来の回転刃のような切り屑の飛散が防止できるばかりでなく、高温の刃をプラスチック製膜部22に当接した瞬間に切断されるので作業のスピードアップが計られる。捲着されたプラスチック製膜部22の全部を切断してもよいが、芯管押し込み部に過剰な負荷が掛からずに芯管が分離できる限りにおいて、一部を残して部分的に切り込むだけでもよい。また、加熱カッター51による切り込みは芯管を加熱している行程中に終了するように構成すれば作業時間の無駄を防止できる。
【0030】
プラスチック製膜部22の切断と加熱による芯管の接着剤の軟化ないし溶融が終了した捲着テープ2は次に芯抜き工程に移送される。芯抜き手段6は、図4に示すように、加熱手段4の横に芯管押込み部上下動シリンダー62が枠体7に固定されていて、このシリンダーロッドの下端部に芯管押込み部61がシリンダー62に連動して上下動可能に連結されている。芯管押込み部61は紡錘形の先端部を切断した形状に構成し、太径部の周縁に段違い状の周縁突部63が形成してある。この先端部を芯管に挿入し押圧することによって、前記段違い状の周縁突部63が芯管21を押し込み、芯管は容易にプラスチック製膜部22から離間して装置の裏側の排出口65を経てストックボックス64に自重で落下して回収される(図2参照)。芯管21を押し込んだ後に芯管押込み部61が引き上げられる際に、プラスチック製膜部22が芯管押込み部に吊下した状態で持ち上がった場合でも枠体7下方の横桟71に阻止されて移送パレット31上に落下する。移送パレット31上に残ったプラスチック製膜部22は回収して再生利用に供される。このようにして芯管とテープを分別回収することができる。
【0031】
本実施例における一連の動作として、例えば、移送パレットを2種類のアームXとアームYにより所定位置に移動し、最初の捲着テープの芯管内にカートリッジヒーターを挿入すると共に加熱カッターを上下動させる。次に、カートリッジヒーターを上昇させた後に移送パレットを間欠移送させて、次に、芯管押込み部上下動シリンダーで芯管押込み部を上下動させて芯抜きし、移送パレットを順次進行方向へ移動する。芯抜きが終了した移送パレットを取り除くと、次の新たなパレットが移送され、前記動作が繰り返される。以上の一連の動作は、作業員が操作盤8を手動によって操作して行うことも可能であるが、一連の動作をシーケンサのようなプログラマブルコントローラー(Programmable Controler, PC)又はプログラマブルロジックコントローラー(Programmable Logic Controler, PLC)の記憶部に例えばラダープログラム化して記憶させておいて、自動運転させることが好ましい。また、前記一連の動作をエアーシリンダーで行う場合の回路図を図7に示す。エアーシリンダーに代えて油圧シリンダーでもよく、油圧シリンダーの場合も同様に示される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る芯管抜き取り装置は、従来の紙菅抜き取り装置である粘着テープの廃棄品に限らず、一般に捲着テープ等に広く適用でき、捲着テープを配置した移送パレットを所定位置に置くだけで後は自動運転に任せればよく、操作が簡単でしかも作業効率が格段に向上し極めて有用である。
【符号の説明】
【0033】
1:芯管抜き取り装置、2:捲着テープ、21:芯管、22:プラスチック製膜部、3:材料移送手段、31:移送パレット、311:板状体、312:芯管孔、313:間隙、314:係止孔、32:アームX、33:アームY、34:突起、4:加熱手段、41:カートリッジヒーター、42:ヒーター上下動シリンダー、42’:シリンダーロッド、43:昇降ボックス、44:吊下棒、441:横棒、442:連結ピン、45:ピン押台、46a:第1ばね、46b:第2ばね、47:押下ピン、48:弾性部材、5:切り込み手段、51:加熱カッター、52:カッター上下動シリンダー、52’:シリンダーロッド、6:芯抜き手段、61:芯管押込み部、62:芯管押込み部上下動シリンダー、62’:シリンダーロッド、63:周縁突部、64:ストックボックス、排出口65、7:枠体、71:横桟、8:操作盤、9:基台、X:アームXシリンダー、X’:シリンダーロッド、Y:アームYロッドレスシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯管捲着テープを配置する移送パレットを取り外し自在に載置して進行方向に間欠移送する材料移送手段と、前記芯管内部にカートリッジヒーターを出入自在に差し込んで捲着テープの芯管とプラスチック製膜部を接合する接着剤を軟化または溶融する加熱手段と、前記捲着テープのプラスチック製膜部に加熱したカッターを芯管の長手方向に沿って移動して切り込みする切り込み手段と、前記芯管を押し込んで芯管とプラスチック製膜部を分離させる上下動自在に設けてなる芯抜手段と、前記移送パレットを進行方向に間欠移送する動作、カートリッジヒーターを移動する動作、カッターを移動する動作及び芯管を押し込む動作に至る一連の動作を調整するコントローラーと、を備えたことを特徴とする芯管抜き取り装置。
【請求項2】
前記カッターは、前記芯管捲着テープの芯管の長手方向に沿って往復運動するように構成し、刃が往復運動の方向に対して斜めに且つ上向き及び下向きに設けてなることを特徴とする請求項1記載の芯管抜き取り装置。
【請求項3】
前記カッターは、前記捲着テープの軟化温度または溶融温度よりも高い温度に加熱してなることを特徴とする請求項1または2記載の芯管抜き取り装置。
【請求項4】
ヒーター上下動シリンダーのシリンダーロッドに昇降ボックスとカートリッジヒーターがヒーター上下動シリンダーに連動して上下動可能に連結されていて、この昇降ボックスを上下方向に貫通する吊下棒が上下動自在に係止しており、吊下棒の上端部の連結ピンと昇降ボックス前面との間に吊下棒を下方に押下する方向に付勢する第1ばねが設けられており、吊下棒の下端部にはピン押台が吊下していて、ピン押台の中央部には、カートリッジヒーターを遊貫する貫通孔が穿設されており、この貫通孔の周囲の捲着テープと当設する位置に押下ピンを遊貫する複数の貫通小孔が穿設けられており、この貫通小孔にそれぞれ押下ピンを遊貫すると共に、押下ピンの上端とピン押台との間には押下ピンを降下する方向に付勢する第2ばねが設けられており、押下ピンの下端部には滑り防止と衝撃を吸収して安定性を維持するために弾性部材が取着されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の芯管抜き取り装置。
【請求項5】
前記押下ピンは、前記カートリッジヒーターと連動して上下動し、前記カートリッジヒーターが上昇して太径部部が芯管から抜出るまで捲着テープに当接し、カートリッジヒーターの太径部部が芯管から抜出したら捲着テープから離間することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の芯管抜き取り装置。
【請求項6】
前記移送パレットには、板状体に芯管捲着テープの芯管を貫通可能な芯管孔を等間隔に穿設すると共に板状体の一側面から前記各芯管孔の中心に向かうカッターが挿出可能な間隙を形成し、前記板状体の間隙と対向する側にはパレット移送腕の突起を係止する係止孔を穿設してなることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の芯管抜き取り装置。
【請求項7】
前記移送パレットを進行方向に間欠移送する移送手段、カートリッジヒーターを上下動する加熱手段、カッターを上下動する切り込み手段及び芯管を押し込む芯抜手段としてシリンダーを用いて各シリンダーの動作をコントローラーで調整することを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の芯管抜き取り装置。
【請求項8】
芯管捲着テープを移送パレットに配置して芯管抜き取り装置に載置する工程と、前記芯管捲着テープを配置した移送パレットを進行方向に間欠移送する材料移送工程と、前記芯管捲着テープの芯管の内側にカートリッジヒーターを差し込んで加熱して捲着テープを芯管に接合する接着剤を軟化または溶融する加熱工程と、前記加熱工程中において芯管の長手方向に沿って加熱されたカッターを移動して捲着されたテープに切り込みを入れる切断工程と、前記芯管をプラスチック製膜から抜き取る芯抜工程と、を備えたことを特徴とする芯管抜き取り方法。
【請求項9】
前記芯管の内側にカートリッジヒーターを差し込んで加熱する加熱工程において、前記カートリッジヒーターを芯管から抜き取る際にカートリッジヒーターを引き上げる方向と逆方向に付勢する第1ばね及び第2ばねからなる二段ばね機構が作用して捲着テープがカートリッジヒーターに付着して持ち上がるのを防止することを特徴とする請求項8記載の芯管抜き取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−246203(P2011−246203A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117980(P2010−117980)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(510143273)株式会社テック・アイ・マシナリー (1)
【Fターム(参考)】