説明

芳香剤及び/又は消臭剤

【課題】安全性が高く、鮮やかな赤乃至紫赤色を有し、耐熱性及び耐光性に優れると共に、色素特有の臭気が芳香剤及び/又は消臭剤成分のフレーバーリリースに影響を与えることがない芳香剤及び/又は消臭剤を提供する。
【解決手段】芳香剤及び/又は消臭剤中に、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体を、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出後、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行って得られる色素を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性が高く、鮮やかな赤乃至紫赤色を有し、耐熱性及び耐光性に優れると共に、色素特有の臭気が芳香剤及び/又は消臭剤成分のフレーバーリリースに影響を与えることがない芳香剤及び/又は消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車、居間、トイレなどの限定された空間内に設置され、当該空間内に芳香を漂わせる芳香剤、消臭機能を有する消臭剤、並びに消臭機能及び芳香機能を有する消臭芳香剤が広く使用されている。これら芳香剤、消臭剤は、限定空間に芳香を漂わせるという機能の他に、美しい外観を有するものを適宜の箇所に設置することにより、アクセサリーとしての機能をも有している。そのため芳香剤、消臭剤組成物に各種色素を添加し、それを透明な容器に収容して芳香剤、消臭剤に美しい色彩が現れるようにしたものが使用されている。
【0003】
従来、これら芳香剤、消臭剤の着色成分としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが用いられてきた(特許文献1)が、例えば乳児や子供などが誤食した場合に備え、安全性の高い芳香剤及び/又は消臭剤が求められている。目的とする赤乃至紫赤色を呈する天然色素としては、コチニール色素、ラック色素等のキノン系色素、ブドウ果汁、ブドウ果皮色素、赤キャベツ色素、紫トウモロコシ色素、紅麹色素、ビートレッド等が知られている。しかし、例えばブドウ果汁、ブドウ果皮色素、赤キャベツ色素、紫トウモロコシ色素は色素特有の臭気が強く、芳香剤や消臭剤自体に影響を与える、芳香成分のフレーバーリリースが悪化するなどといった不具合があり、紅麹色素は耐光性が、ビートレッドは耐熱性が劣り使い勝手に欠けるといった問題点があった。更に、芳香剤、消臭剤は、例えばアンモニア臭などのアルカリ臭を中和して消臭するために、酸性成分を含み、pHが酸性に設定されることが多々ある。しかし、例えばコチニール色素であればpHが5以下の場合黄色から橙色となり所望の赤乃至紫赤色に着色できないなど、天然色素の種類によっては、色調が変化し目的とする赤乃至紫赤色を呈しない、色素の沈殿が生じる、色素の退色が進行するなど各種問題点を抱えており、かかる酸性条件においても安定性の高い色素が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平09−173430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安全性が高く、鮮やかな赤乃至紫赤色を有し、耐熱性及び耐光性に優れると共に、色素特有の臭気が芳香剤及び/又は消臭剤成分のフレーバーリリースに影響を与えることがない芳香剤及び/又は消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記問題点に鑑みて鋭意研究を行った結果、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体を、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出後、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行って得られる色素を含有することにより、安全性が高く、耐熱性及び耐光性に優れると共に、色素特有の臭気が芳香剤及び/又は消臭剤成分のフレーバーリリースに影響を与えることのない赤乃至紫赤色に着色された芳香剤及び/又は消臭剤となることを見出して本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する芳香剤及び/又は消臭剤の着色方法に関する;
項1.Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体を、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出後、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行って得られる色素を含有することを特徴とする芳香剤及び/又は消臭剤。
【発明の効果】
【0008】
色素が有する特有の臭気が消臭剤成分や芳香剤成分に影響を与えることなく、安全性、耐熱性及び耐光性に優れた、色鮮やかに着色された赤乃至紫赤色を呈する芳香剤及び/又は消臭剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のConvolvulaceae科Ipomoea属の植物体としては、Ipomoea Batatas、Ipomoea nil、Ipomoea congesta、Ipomoea alba等を挙げることができ、好ましくはIpomoea Batatasである。かかる植物体の抽出液は、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体中、赤乃至紫赤色を呈する部位、例えば葉や茎、又は塊根をpH1.0〜6.5、好ましくはpH2〜4の酸性条件下で、水又は含水アルコールで抽出することにより得られる。
【0010】
上記植物体抽出時の酸性条件へのpH調整は、通常酸味料が用いられる。制限はされないが、かかる酸味料としては、具体的にはクエン酸、乳酸、酢酸、氷酢酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、フィチン酸、グルコン酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコノデルタラクトン等の有機酸またはその塩(例えばクエン酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム);リン酸及び二酸化炭素(炭酸ガス)、硫酸、塩酸等の無機酸を例示することができ、好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の食品添加物で認められているものを好適に使用できる。抽出に用いる含水アルコールとしては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、多価アルコールなどの水と均一に混合可能な溶剤をいう。好ましい抽出液としてはエタノールを例示できる。含水アルコールとしては、例えばアルコール量が40容量%以下、好ましくは約25容量%以下の含水アルコールを好適に使用できる。
【0011】
抽出方法としては、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体の抽出部位を洗浄後そのまま、若しくは適当な大きさに裁断、もしくはペースト状に摩砕後、酸性に調整した抽出液に投入し、例えば4〜12時間若しくは一晩、植物を冷浸又は温浸によって浸漬する方法を挙げることができる。得られた抽出液は、必要に応じて濾過、共沈または遠心分離によって固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮することができる。
【0012】
本発明では、かくして得られた抽出液を更に、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行うことを特徴とする。
【0013】
吸着処理は、常法に従って行うことができ、例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS−861(商標Duolite,U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS−862、デュオライトS−863又はデュオライトS−866;芳香族系のセパビーズSP70(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、セパビーズSP825;ダイヤイオンHP10(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、ダイヤイオンHP40、及びダイヤイオンHP50;あるいはアンバーライトXAD−4(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD−7、アンバーライトXAD−2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着処理を挙げることができる。その後、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物色素抽出液が付されて色素成分を吸着した樹脂担体を例えば含水アルコールなどの適当な溶媒で洗浄することによって、回収取得することができる。含水アルコールとしては、通常1〜20容量%程度のエタノールを含有する水を好適に例示することができる。
【0014】
イオン交換処理は、特に制限されず慣用のイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂)を用いて常法に従って行うことができる。例えば陽イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオンSK1B(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンSK102、ダイヤイオンSK116、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンWK10、ダイヤイオンWK20などが、また陰イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオンSA10A(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンSA12A、ダイヤイオンSA20A、ダイヤイオンPA306、ダイヤイオンWA10、ダイヤイオンWA20などが例示される。
【0015】
酸処理は、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体をpH1.0〜6.5の酸性条件下で、水又は含水アルコールで抽出して得られた抽出液、若しくは上記の各種処理(吸着処理、イオン交換処理、抽出処理または膜分離処理等)が施された処理液をpH1〜4、好ましくはpH1〜3の酸性条件下に曝すことによって実施できる。酸処理は、具体的には上記処理液に酸を添加配合することによって簡便に行うことができる。かかる酸としては、上述の酸を使用することができる。
【0016】
酸処理を行う温度条件は特に制限されず、通常5〜100℃の範囲から適宜選択使用することができる。例えば20〜100℃や40〜100℃の範囲を例示することができる。酸処理時間も特に制限されず、通常1〜300分の範囲から適宜選択することができる。一般に高温下での酸処理であればより短い処理時間で十分であり、よって例えば40〜100℃での酸処理の場合は5〜60分の範囲から処理時間を採択することができる。なおこの時、処理液は撹拌してもしなくても特に制限されない。
【0017】
本発明でいう膜分離処理とは、膜による濾過方法を広く意味するものであり、例えばメンブレンフィルター(MF)膜、限外濾過(UF)膜、逆浸透膜(NF)および電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた濾過処理を挙げることができる。また膜分離処理としてはこれらの膜を利用した限外濾過法や逆浸透膜法などのほか、イオン選別膜による濃度勾配を利用した透析法、隔膜としてイオン交換膜を使用し電圧を印加する電気透析法などが知られている。工業的には逆浸透膜法による膜分離法が好ましい。かかる膜分離法に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジ−アセテート若しくはトリ−アセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0018】
本発明で用いる膜分離処理には、分画分子量が例えば10〜10の範囲にある膜を用いて高分子化合物を分離除去する処理方法と、分画分子量が約2,000〜4,000程度、好ましくは3,000程度の膜を用いて低分子化合物を分離除去する処理方法が含まれる。前者の方法として具体的にはNTU−3150膜、NTU−3250膜、NTU−3550膜、NTU−3800 UF膜(以上、日東電工製);Cefilt−UF(日本ガイシ製);AHP−2013膜、AHP−3013膜、AHP−1010膜(以上、旭化成製);等を利用した限外濾過(UF)膜処理を挙げることができ、また後者の方法として具体的にはNTR−7250膜、NTR−7410膜、NTR−7430膜、NTR−7450膜(以上、日東電工製);AIP−3013膜、ACP−3013膜、ACP−2013膜、AIP−2013膜、AIO−1010膜(以上、旭化成製)などの膜を利用した逆浸透膜(分画分子量3,000程度)処理を挙げることができる。
【0019】
これらの各種処理は、1種単独で行っても、また2種以上を任意に組み合わせて行ってもよく、また同一処理を、同一もしくは異なる条件で、繰り返し実施してもよい。
好ましい処理方法は、特に制限されないが、Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物色素抽出液の吸着処理液を脱蛋白処理し、ついでこの脱蛋白処理した処理色素液について膜分離処理を行う方法である。
【0020】
脱蛋白処理は、前述した抽出処理、イオン交換処理または限外濾過膜等を利用した膜分離処理によって実効的に行うことができる。なお、この場合、膜分離処理は、高分子化合物の分離除去に使用される分画分子量約10〜10の範囲にある膜を用いた処理を好適に採用することができる。ただし、脱蛋白処理は、これらの方法に限定されることなく、ゲルろ過処理などの常法の脱蛋白処理に従って行うこともできる。
【0021】
必要に応じて上記脱蛋白処理後に更に吸着処理を行うこともできる。好ましい処理方法としては、脱蛋白処理した処理色素液を、必要に応じて吸着処理し、次いで酸処理し、斯くして得られる処理色素液に対して膜分離処理を行う方法を挙げることができる。なお、ここで膜分離処理は、好ましくは逆浸透膜処理または限外濾過膜処理であり、より好ましくは逆浸透膜処理である。また、当該膜分離処理は、分画分子量が2,000〜4,000、好ましくは3,000付近である膜を用いて行うことが好ましい。
【0022】
本発明は、かくして得られた色素を含有することを特徴とする芳香剤及び/又は消臭剤に関する発明である。かかる色素は、植物由来の異臭あるいは悪臭の原因となる香気成分が効果的に除去されており、該色素を用いることにより消臭剤や芳香剤の消臭成分及び芳香成分に色素特有の臭気が影響を与えることのない、優れた芳香剤及び/又は消臭剤を提供することができる。
【0023】
このとき、本発明で得られた色素は、上記形状のごとく液状品でも、また、デキストリン、乳糖等の賦形剤を添加し噴霧乾燥して粉末化した形状でも、乳化剤、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム等を使用した乳化あるいは二重乳化の形状でもよい。本発明の芳香剤及び/又は消臭剤は、このようにして得られた本発明の色素製剤を含有することを特徴とする。
【0024】
従来の芳香剤及び/又は消臭剤は、青、紫や黒、無色透明といった暗色系色を有するもので色のバリエーションに乏しかったが、本発明にかかる色素を用いることにより、赤乃至紫赤色といった暖色系の色を呈する芳香剤及び/又は消臭剤を提供することが可能となり、芳香剤及び/又は消臭剤に豊富な色のバリエーションを付与することに寄与するものである。また、本発明の色素は、天然色素を用いているため極めて安全性の高い芳香剤及び/又は消臭剤を提供することが可能であり、更に耐熱性及び耐光性が高いことから、経時的な色調変化や色素の退色が優位に抑制された芳香剤及び/又は消臭剤を提供することが可能となった。
【0025】
芳香剤及び/又は消臭剤に対する本発明の色素の添加量は、芳香剤及び/又は消臭剤に所望の色を付与できる量であればよく、特に制限されない。一例としてあげれば、芳香剤及び/又は消臭剤100質量%に対する本発明の色素(E10%1cm =160)の配合割合として0.0005〜1.0質量%、好ましくは0.001〜0.5質量%を挙げることができる。
【0026】
なお、本発明の色素における「E10%1cm =160」とは、芳香剤及び/又は消臭剤に配合する本発明の色素濃度(色価)を意味するものであって、具体的には、本発明の色素の10wt/v%溶液の可視部での極大吸収波長における吸光度を液層幅1cmで測定した場合、160であることを意味する。
【0027】
本発明でいう芳香剤及び/又は消臭剤とは、自動車、玄関、居間、トイレなどの限定された空間内に設置され、当該空間内の消臭及び芳香を漂わせることを目的とするものであれば特に限定されず、その形態は液状でも、ペースト状等の半固形状であってもゲル状、固形状であってもよい。
【0028】
芳香剤及び/又は消臭剤に用いられる芳香成分としては、特に限定されず、芳香性を付与することのできる機能性成分としては、揮散性を有し芳香性を有する物質であれば特に限定はされないが、例えば医薬品、医薬部外品、香粧品(化粧料、芳香料を含む)、食品等の分野において従来より使用されている香料等を広く挙げることができる。
【0029】
具体的には、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油等の天然精油;α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−サイメン、ターピノレン、α−ターピネン、γ−ターピネン、α−フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラ−ル、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、イソアミルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、安息香酸リナリル、エチルシンナメート、ヘキシルサリシレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン酸;アニソール、p−クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキメン、メチルオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis−3−ヘキセノール、ヘプタノール、2−オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、テトラハイドロゲラニオール、l−メントール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、アセトフェノン、α−又はβ−ダマスコン、α−又はβ−ダマセノン、α−、β−又はγ−ヨノン、α−、β−又はγ−メチルヨノン、メチル−β−ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α−又はβ−イソメチルヨノン、α−、β−又はγ−イロン、マルトール、エチルマルトール、cis−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、ジヒドロカルボン等のケトン類等を例示することができる。これらは、1種単独で使用することもでき、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは、食品素材もしくは食品添加物として認められている芳香成分である。
【0030】
本発明の消臭剤における芳香成分の配合量は、芳香剤及び/又は消臭剤に求められる香質及び力価などにより適宜調節することが可能であるが、通常、芳香剤及び/又は消臭剤中に0.3〜10質量%であることが好ましい。
【0031】
芳香剤及び/又は消臭剤に用いられる消臭成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸、燐酸、ミョウバン、塩酸、二酸化塩素、次亜塩素酸塩、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等の無機系消臭成分、酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、アクリル酸、乳酸、フタル酸、安息香酸、ニコチン酸等の有機系消臭成分や、つばき科植物、くすのき科植物、ハイビスカス抽出物、シソ科植物抽出物、升麻抽出物、緑茶抽出物、甜茶抽出物等の各種植物抽出物、サイクロデキストリン、銅クロロフィリンナトリウム、シャンピニオンエキス、プロポリス抽出物、活性炭、シリカゲル、アルミナなどの吸着剤や多孔質材料等があげられ、食品素材もしくは食品添加物として認められている上記消臭成分を用いることが安全性の面から好ましい。
【0032】
一般的に住居内の臭気としては、低級脂肪酸類、メチルメルカプタンが主成分である体臭、口臭;アセトアルデヒドが主成分であるタバコ臭;アンモニア、アミン類が主成分となる糞尿臭がある。食品工場、病院等の施設内の臭気としては、アルデヒド類、エステル類、硫化水素が主成分である調理臭、生ゴミ臭等がある。いずれも複数の臭気成分から構成されている。このような住居内、施設内における前記複合臭気成分に対して、防臭、消臭が必要とされることから、単一の消臭成分よりも複数の消臭成分が共存していることが好ましく、食品素材もしくは食品添加物として認められている上記消臭成分の中でも、数種から数十種の消臭成分から構成される植物抽出物が好ましい。
【0033】
本発明の消臭剤における消臭成分の配合量は、芳香剤及び/又は消臭剤中に1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の芳香剤及び/又は消臭剤が以下に示すゲル化剤や吸水性樹脂を添加することにより、ゲル状の形態をとることが可能である。ゲル化剤としては、具体的には、カラギーナン、ローストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、寒天、グァーガム、アラビアガム、ゼラチン等のアミノ酸、ペクチン、デンプン類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸若しくはそのアミン塩やアルカリ塩、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム塩、ポリウレタン等の水性ゲル化剤や、オクチル酸アルミニウム(例えば、2−エチルヘキサン酸アルミニウム等)、熱可塑性ポリアミド樹脂(例えば、ESTER−TERMINATEDO POLYAMIDES(ETPA)等)、1、2−ヒドロキシステアリン酸、1、2−ヒドロキシステアリン酸の金属石鹸等、シリコンゲル、リモネンゲル、高級脂肪酸石鹸(例えば、ステアリン酸ナトリウム等)、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸系ゲル化剤(例えば、n−アシルアミノ酸のアミド、エステル、アミン塩類等)等の油性ゲル化剤を挙げることができ、吸水性樹脂としては、アクリル酸系の樹脂、イソブチレンと無水マレイン酸との交互重合体物の塩の架橋物、デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体架橋物等が例示できる。好ましくは食品素材もしくは食品添加物として認められている水性ゲルである。本発明の芳香剤及び/又は消臭剤における上記ゲル化剤または吸水性樹脂の配合量は、通常、芳香剤及び/又は消臭剤中に0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0035】
なお、上記ゲル状の形態をとる場合は、必要に応じて、ゲル化助剤としてカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム等の金属イオン;コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アスパラギン酸等の有機酸若しくはそれらの塩;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸若しくはそれらの塩等を含有させることができる。具体的には、乳酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等を例示することができる。これらのゲル化助剤の種類やその含有量は、所望のゲル強度に応じて適宜選択することができ、使用するゲル化助剤の種類によっても異なるが、通常消臭剤及び/又芳香剤に対して0.01〜3質量%の範囲で使用される。
【0036】
その他、本発明の芳香剤及び/又は消臭剤は、上記本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分の他に、その他のゲル化剤、増粘剤、香料、消臭剤、防腐剤、抗菌剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。これらは、医療分野、医薬部外品分野、香粧品分野、食品分野において通常使用されるものを任意に用いることができる。
【0037】
本発明の芳香剤及び/又は消臭剤の調製方法は特に限定されないが、例えばゲル状芳香剤及び/又は消臭剤であれば、例えば、水に上記ゲル化剤、吸水性樹脂を添加、加熱溶解後、所定温度(ゲル化しない温度)まで冷却し、消臭成分、芳香成分及び本発明の色素を添加、撹拌し、ゲル化温度まで冷却、もしくは室温で放冷することにより調製することができる。また、消臭成分、芳香成分及び本発明の色素は、ゲル化剤を溶解する段階で添加しても良いが、芳香成分などの揮発性成分は高温下では不安定になりやすいので、ゲル化温度に近い温度まで冷却した時点で添加することが好ましい。液状の芳香剤及び/又は消臭剤であれば、水に消臭成分、芳香成分及び本発明の色素を添加、撹拌溶解することにより調製することができる。
【0038】
通常、芳香剤及び/又は消臭剤は、アンモニア臭などのアルカリ臭を中和して消臭するために酸性の消臭成分が用いられ、又は芳香剤及び/又は消臭剤の雑菌繁殖の防止を目的としてクエン酸などのpH調整剤が添加され、そのpHは0.5〜5.0、更には1.0〜3.8を示すことが多い。従来、かかる酸性条件下では、天然色素は種類によっては、色調が変化し目的とする赤乃至紫赤色を呈しない、色素の沈殿が生じる、色素の退色が進行するなど各種問題点を抱えていたが、本発明に係る色素を用いることにより、安全性が高く、その上、上記pHの範囲内においても安定性の高い芳香剤及び/又は消臭剤を提供することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0040】
実施例1 芳香剤の調製
硫酸によりpH2に調整した酸性水20LにIpomoea Batatasの塊根の磨砕品10kgを投入し、室温下に一夜放置して、色素を抽出した。得られた色素抽出液に、濾過助剤と珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液としてIpomoea Batatas植物色素抽出液約25Lを得た。この抽出液を合成吸着樹脂アンバーライトXAD−7(樹脂量3L、SV=1、オルガノ製)に吸着させてから、水洗したのち、60%エタノール水溶液を用いてその吸着している色素を溶出した(10L)。溶出液のうち8Lを、限外濾過膜(AHP−2013膜(商標):旭化成製、分画分子量50,000)を用いて3.5kg/cm,20℃で処理した(膜分離処理)。次いで、得られた処理液を硫酸を用いてpH2.0に調整し、これを40〜80℃の温度条件下で30分間撹拌をした(酸処理)。つづいて、当該酸処理液に、水5Lを加えて逆浸透膜処理(NTR−7250膜(商標):日東電工製、分画分子量約3,000程度)を行い、膜処理液1Lを得た(膜分離処理)。この際、Ipomoea Batatasの香気成分および夾雑物は濾液として透過除去され、精製脱臭された色素成分が残液として濃縮された。次いでこの残液を減圧下で濃縮して、色価E10%1cm=300の有意に脱臭精製された濃縮液120gを得た。この濃縮液120gに水60gとエタノール45gを加えて色価E10%1cm=160のIpomoea Batatas(A)色素製剤225gを調製した。この製剤は全く無臭であった。次に、このようにして得られたIpomoea Batatas(A)色素製剤を用いて、表1の処方に従い芳香剤を調製した。詳細には、脱アシル型ジェランガム及びネイティブ型ジェランガムを水に加えて分散させた後、90℃に加熱撹拌溶解した。次いで75℃まで冷却した後にクエン酸を添加してpHを3に調整し、予め湯に溶解させておいた乳酸カルシウム及びプロピレングリコール、ストロベリー香料、本発明のIpomoea Batatas(A)色素製剤を添加し、撹拌しながら各成分が系内で均一になるように分散させた。これを70℃に保持した状態で容器に充填し、次いで冷却してゲル化させて芳香剤を調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
比較例としてIpomoea Batatas(A)色素製剤の代わりに、以下の製法で調製されたIpomoea Batatas(B)色素製剤(比較例1)、赤キャベツ色素、紅麹色素、ブドウ果汁及び紫トウモロコシ色素を、各々個別に、ほぼ同一の濃度感に合わせて芳香剤を調製(比較例2〜5)し、これらの芳香剤及び実施例1の芳香剤の色相及びフレーバーリリースを評価し、更に3000luxの蛍光灯下、3日間照射して耐光性を、35℃の恒温器で7日間保持し耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
比較例1 Ipomoea Batatas(B)色素製剤の調製
硫酸によりpH2に調整した酸性水20LにIpomoea Batatasの塊根の磨砕品10kgを投入し、室温下に一夜放置して、色素を抽出した。得られた色素抽出液に、濾過助剤と珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液としてIpomoea Batatas植物色素抽出液約25Lを得た。次いでこの液を減圧濃縮して色価E10%1cm=300の色素液160gを得た。この濃縮液160gに水80gとエタノール60gを加えて色価E10%1cm=160のIpomoea Batatas(B)色素製剤300gを調製した。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の評価は以下の基準に従って行った。
(色相):着色した芳香剤の色相を肉眼で観察した。
(耐光性):蛍光灯(3000lux)下で3日間照射した後、肉眼比較により色素の残存率(%)を求めた。
(耐熱性):35℃の恒温器で7日間保存後、肉眼比較により色素の残存率(%)を求めた。
(フレーバーリリース):着色した芳香剤の芳香成分のフレーバーリリースが良好なものから順に+++>++>+>±>−の5段階で評価した。
【0046】
表2から明らかなように、赤キャベツ色素製剤を用いた場合は目的とする紫赤色に芳香剤を着色することができたものの、耐光性に劣る、色素特有の臭気が芳香剤自体に影響を与えるなどの不具合があり、紅麹色素製剤を用いた場合は光照射により色素が退色し、目的とする色に芳香剤を着色することすらままならなかった(比較例2、3)。ブドウ果汁製剤、紫トウモロコシ色素製剤を用いた場合も、着色された芳香剤の色相が暗い赤色であって目的とする鮮明な赤乃至紫赤色に着色できず、その耐光性もIpomoea Batatas(A)色素製剤に比して劣っていた(比較例4、5)。また、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出されたIpomoea Batatas色素を用いた場合であっても、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行わずに得られたIpomoea Batatas(B)色素製剤(比較例1)は、本発明のIpomoea Batatas(A)色素製剤に比べて色素特有の臭気が芳香剤の芳香成分に影響を与え、目的とする芳香剤を調製することができなかった。一方、本発明のIpomoea Batatas(A)色素製剤を用いた場合は、目的とする鮮やかな赤乃至紫赤色に芳香剤が着色され、色素特有の臭気が芳香剤に影響を与えることもなく、着色された芳香剤は良好なフレーバーリリースを有していた。更に、調製された着色された芳香剤は酸性にも関わらず、耐熱性及び耐光性も高く、非常に優れた芳香剤となった。なお、本発明の色素は食用色素として用いることが可能なため、芳香剤や消臭剤の処方を食品素材や食品添加物で処方することにより、安全性の高い芳香剤及び/又は消臭剤を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
安全性が高く、鮮やかな赤乃至紫赤色を有し、耐熱性及び耐光性に優れると共に、色素特有の臭気が芳香剤及び/又は消臭剤成分のフレーバーリリースに影響を与えることがない芳香剤及び/又は消臭剤を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Convolvulaceae科Ipomoea属に属する植物体を、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出後、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行って得られる色素を含有することを特徴とする芳香剤及び/又は消臭剤。

【公開番号】特開2009−201859(P2009−201859A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49118(P2008−49118)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】