説明

芳香性粘着剤およびその用途

【課題】本発明は、製造工程が簡単で、リワーク性があり、被着面への糊残りがなく、且つ芳香剤添加による接着力不良が無く、適度の芳香が長期間放散され、好ましくはさらに透視性が優れた、表面保護用に適した芳香性粘着剤を提供する。
【解決手段】芳香性粘着剤成分として熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着剤成分と、この粘着性成分と実質的に相溶性を有する芳香成分と配合する。そして、より強力な粘着力が必要な場合は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを上記粘着剤に配合し、及び/又はそれらの成分を主成分とする接着剤をアンカー層として下塗りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤に関し、さらに詳しくは、芳香性を有する芳香性粘着剤およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の加工時や搬送時の傷付きや汚れから物品を保護するために、合成樹脂板、化粧合板、金属板、塗装鋼板等の物品の表面に、基材フイルムの片面に粘着層を積層した表面保護用粘着フイルムが被覆されている。また、物品の使用中でも、テレビやパソコン、携帯電話などのフラットパネルディスプレイのディスプレイ画面は、ディスプレイ画面の表面の傷付きや汚れから保護するため、表面保護用粘着フイルムを貼り付けた状態で使用されることが多い。そして、近年、使用時の快適性の改善のため、かかる表面保護用粘着フイルムに芳香性を付与することが試みられている。
【0003】
上記のような粘着フイルムに芳香性を付与する方法として、(1)基材フイルムの原料であるポリオレフィン樹脂に、極性基を有するモノマーを構成単位として含む樹脂および香料を添加して芳香性を付与する方法(特許文献1)が提案されている。また、粘着剤層に芳香性を付与するために、接着剤組成物中に芳香剤を直接添加しようとすると、接着剤の主剤と相溶性が低く、芳香剤が接着剤層表面にブリードして表面の接着性を損なうという問題があるため、(2)無数の微小なシリカやセピオライト等の多孔質セラミックスから成る保持基体に芳香剤を含浸或いは吸着等させたもの、或いは粉末体や小粒体に芳香剤を担持させたものを接着剤に添加して芳香性を与える方法(特許文献2)や、(3)香料入りマイクロカプセルを支持体および/または熱接着層中に含有させて芳香性を付与する方法(特許文献3)などのように、芳香成分を原料形態のまま直接添加することなく、各種の二次加工を施して接着剤層中に含有させる方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−201374号公報
【特許文献2】特開平11 −089922号公報
【特許文献3】特開平11 −149172号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の基材フイルムは、その表面全体が大気に露出しているために、添加された香料が基材フイルムの全表面から放散されるため芳香の強さが強すぎて不快臭になったり、適度の放散速度に調節するために添加量を減少すると放散する寿命が短期間となるという欠点がある。また、上記の特許文献2および特許文献3に記載の接着剤層は、接着剤成分中に粉体またはカプセルが添加されることになるため、粉体やカプセルの準備が必要となり、製造工程が複雑でコストアップ要因になると共に、通常、接着剤層の透明性が損なわれる。従って、前記のディスプレイ表面に保護フイルムとして貼り付ける用途においては、透視性を損なうという欠点がある。また、通常の粘着剤は、一旦貼付した後剥離すると、剥離面に糊残りが生じたり、再び貼付しようとしてもきれいに貼付できないといったリワーク性に乏しいという欠点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の欠点を改良し、製造工程が簡単で、リワーク性があって被着面への糊残りがなく、芳香剤添加による接着力不良が無く、さらに透視性が優れた、芳香性粘着剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の要旨は、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着剤成分と、この粘着性成分と実質的に相溶性を有する芳香成分とを含有することを特徴とする芳香性粘着剤に存する。
【0008】
本発明の第二の要旨は、上記の芳香性粘着剤と、アンカー剤としてのカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする接着剤とを含むキットに存する。
【0009】
本発明の第三の要旨は、上記の芳香性粘着剤を塗布する面に、予めカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする接着剤をアンカー剤として塗布しておくことを特徴とする上記の芳香性粘着剤の使用方法に存する。
【0010】
本発明の第四の要旨は、上記の芳香性粘着剤を使用した種々の芳香放散性物品に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の芳香性粘着剤は、その主成分が相互に相溶性がある粘着剤成分と芳香成分とから構成されているため、芳香成分を二次加工することなくそのまま配合できて工程が簡単であり、芳香成分が粘着層に含有されているにも拘わらず粘着層の透明性がよく且つ芳香成分のブリードが無いため粘着力不良がなく、さらに、接着面に気泡を巻き込まずに容易に貼付することができ、リワーク性があり、被着面への糊残りが無い。なお、上記のリワーク性とは、粘着剤層表面を被着体に一度粘着した後に剥離し、その粘着面を、同じ被着体に再度粘着させたとき、最初の粘着したときと同程度の粘着性を呈し且つ粘着界面の肌荒れが無い性質をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の芳香性粘着剤は、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着剤成分と、この粘着性成分と実質的に相溶性を有する芳香成分とを含有する。上記の粘着剤の各成分は、熱可塑性エラストマーが可塑剤により可塑化され、凝集力が低下して自己粘着性が向上するように組み合わせて選択される。なお、上記の自己粘着性とは、実質的にこの粘着剤層を形成した粘着フイルムが自重による圧力により被着面に対して粘着性を示す特性をいう。
【0013】
上記の性質を有する熱可塑性エラストマーとして、特に制限されないが、例えば、スチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントで構成されているものを挙げることができる。かかる熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリイソプレン(SI)、ポリスチレン−ポリブチレン(SB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)などを挙げることができる。
【0014】
上記のエラストマーの重合度は、添加する可塑剤の種類、添加量、および、得られる粘着剤として期待する特性により適宜選択することができるが、例えば、SEBSの場合、その質量平均分子量として、通常15,000〜500,000のものが好適に使用され、100,000〜500,000のものがより好適に使用される。
【0015】
また、上記の可塑剤は、上記のエラストマーに添加して自己粘着性を付与するのに効果的なものが選択されるが、かかる可塑剤としては、使用する熱可塑性エラストマー成分がポリスチレン相とゴム相とを有する場合は、ゴム相に対する親和性が高くポリスチレン相に対する親和性が低い高分子量の化合物が好ましく、具体的には、ナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルが挙げられる。
【0016】
上記のナフテンオイルとして、その引火点が100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が0.83〜0.87であるものが好ましく、0.837〜0.868であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が3〜8であるものが好ましく、5〜6のものがより好ましい。
【0017】
一方、パラフィンオイルの場合は、その引火点が100〜300℃のものが好ましく、150〜280℃のものがより好ましい。また、その流動点が−30〜−5℃のものが好ましく、−25〜−10℃のものがより好ましい。また、その比重が0.89〜0.91であるものが好ましく、0.8917〜0.9065であるものがより好ましい。さらに、その炭素数が20〜35であるものが好ましく、21〜33のものがより好ましい。上記の粘着剤成分を構成する主要成分である熱可塑性エラストマーと可塑剤との混合比は、質量比として、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲とされる。
【0018】
前記の芳香成分は、上記の粘着剤成分と実質的に相溶性があるものの中から、本発明の芳香性粘着剤を使用した芳香放散性物品の使用環境、使用者の嗜好などを勘案して適宜選択して使用され、その際、希望により2種または3種以上を組み合わせて配合することができる。
【0019】
上記の芳香成分の内、液体状のものとしては、例えば酢酸リナリル(ペルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル(ごくわずかな甘い香り)、酢酸テルピニル(ラベンダーに似た香り)、酢酸トリシクロデセニル、酢酸ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル(ジャスミンの香気)、酢酸オイゲノール(丁香のような香気)、酢酸ゲラニル(バラの花の香り)酢酸シトロネリル(ローズ調の果実のような香り)酢酸シンナミル(おだやかな甘い花香)、酢酸ジヒドロテルピニル(フレッシュなパインシトラスのような香気)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(ライラック)、ゲラニオール(バラに似た弱い花香)、酢酸イソアミル(洋梨に似た芳香)、酢酸イソオイゲノール、酢酸イソブチル(甘い果実のようなフレーバ)、ケイ皮酸エチル、クミンアルデヒド(カレーの香気)、ケイ皮アルデヒド、l−カルボン(スペアミント油のような匂い)、ギ酸エチル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、カプリル酸エチル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸アリル(パイナップルに似た香気)、カプロン酸エチル(リンゴ、梨に似た香気)、ガラクソリド、エチル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(甘いグリーンノート)、エチレンドデカンジオエート(ムスク香)、エチレンブラシレート(ジャ香)、オイゲノール(丁子に似た香気)、10−オキサヘキサデカノリド(ジャ香)、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル(特異な強い刺激臭)、イロン(バイオレット香)、γ−ウンデカラクトン(油気くさい香気)、ウンデシレンアルデヒド(ローズシトラスのような香気)、安息香酸メチル、イソオイゲノール(カーネーションに似た香気)、イソカンフィルシクロヘキサノール(ムスクのようなサンダルウッド香)、イソ吉草酸イソアミル(リンゴ、バナナに似た香気)、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド(さんざしのような匂い)、リモネン及びペンテン、ロジノール(ローズ、ゼラニウムのような香気)、酪酸イソプロピル(強い果実のような香気)、酪酸エチル(果実のような香気)、酪酸ブチル(果実のような香気)、リナロール(スズランの香気)、α−ヨノン、酪酸イソアミル(西洋ナシ、バナナの芳香)、エチルフェニルグリシッド酸エチル(イチゴの芳香)、p−メチルアセトフェノン(さんざしの花に似た芳香)、プロピオン酸ベンジル(バナナ、ストロベリーの果実香)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(甘い香気)、ベンジルアルコール(クリーム香料)、フェニル酢酸エチル(蜂蜜のような香気)、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(ユリの香気)、プロピオン酸イソアミル(パイナップル、梨に似た香気)、プロピオン酸エチル(パイナップルの芳香)、ヒドロキシトロネテール(ユリの花)、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(スズランのような香気)、フェニルアルデヒド(ヒヤシンスの優れた花香)、β−フェニルエチルアルコール、β−ナフチルメチルアルコール(ココナットの香気)、ジメチルベンジルカルビノール(ライラック、ナルシス)、ジャスミンラクトン、デシルアルデヒド(花のような芳香)、テトラヒドロリナロール(ローズ、リリーのような芳香)、テルピネオール(ライラックの香気)、1,8−シネオール(ショウノウのような香気)、ジヒドロジャスミン酸メチル(ジャスミンのような香気)、ジヒドロジャスミン(強い花香)、シトラール(レモンの強い香気)、シトロネラール(サンショウの香り)、シトロネロール(バラのような香り)、シクロヘキシルプロピオン酸アリル(パイナップルの香気)、酢酸リナリル(ベルガモットに似た香り)、サリチル酸イソアミル(蘭のような香気)、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル(ウインターグリーンに似た強い香り)及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0020】
上記の芳香成分の内、固体状のものとしては、例えば、酢酸イソオイゲノール、テトラヒドロナフタレン、エチルバンリン、ケイ皮酸、酢酸セドリル、β−ナフチルメチルエーテル、バニリン、ローズフェノン等およびこれらの変性物が挙げられる。
【0021】
上記の粘着剤成分への芳香成分の添加量は、とくに限定されるものではないが、芳香成分が増加するにつれて粘着性が低下するため、通常、熱可塑性エラストマーおよび可塑剤を主成分とする粘着剤成分の固形分に対して20質量%以下、実用的には1〜15質量%とされる。
【0022】
本発明の芳香性粘着剤には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填材、紫外線吸収剤および/または帯電防止剤などを含有させることができる。
【0023】
上記の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0024】
上記のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0025】
また、上記のベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0026】
また、上記のサリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどを挙げることができる。
【0027】
また、上記のシアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0028】
本発明の芳香性粘着剤への上記の紫外線吸収剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常、0.1〜30質量%、好ましくは4〜15質量%である。
【0029】
本発明の芳香性粘着剤は、上記の粘着剤成分、芳香成分および紫外線吸収剤などの添加剤を共通して溶解できる溶剤、例えば、トルエンに溶解して芳香性粘着剤溶液として得ることができる。上記の溶解に使用する有機溶剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、上記の主要成分であるエラストマーおよび可塑剤の合計100質量部に対して、通常200〜400質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0030】
以上のようにして得られる本発明の芳香性粘着剤は、(1)通常の接着剤と同様に二つの物品の芳香性接着用途の他に、(2)基材シートに塗布して芳香性粘着シートとして、あるいは(3)物品表面に塗布して単に芳香放散剤としても実用することができる。以下、これらの用途について説明する。
【0031】
上記のシートまたは物品の素材は、その目的に応じて適宜選択されるが、例えば、従来知られている種々の素材に適用することができ、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂類、ポリオレフィン系樹脂類、ポリアミド系樹脂類、ポリカーボネート系樹脂類、ポリイミド系樹脂類、アクリル系樹脂類、ポリ塩化ビニル系樹脂類、金属類等が挙げられ、、その形態は、繊維、シート、織布、不織布、及び、置物、装飾物など各種の造形物を挙げることができる。上記の芳香性粘着剤の物品表面への接着性が低い場合、必要により、物品表面に、易接着化処理、例えばコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理などの表面処理を行うことができる。
【0032】
上記の芳香性粘着剤は、溶剤を含有しているため、物品表面に塗布した後、通常、80〜150℃の温風中で30〜120秒間、好ましくは100〜130℃の温風の中で40〜90秒間乾燥するが、塗布後の表面の粘着性を保護するため、必要により表面に、離型層を設けることができる。かかる離型層は、上記のように実用前の段階での芳香成分の放散を防止する作用に鑑み、芳香成分の透過を抑制しうる素材のものが好ましく、かかる離型層としては、表面が平面の場合は、表面にシリコーン処理したPETフイルム、シリコーン処理したポリオレフィンフイルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
上記の芳香性粘着剤は、上記のような通常の乾燥条件で乾燥した場合の接着強度は、例えば、ガラス表面に対する接着強度が0.004N/cm程度の水準であるが、その水準での接着強度では不十分な場合は、(イ)接着位置を確定した後に芳香性粘着剤層を加熱処理する、(ロ)芳香性粘着剤を塗布する前に、予め被着体の接着表面に後述のアンカー用接着剤層を設ける、(ハ)芳香性粘着剤に上記のアンカー用接着剤成分を配合する、などの方法により接着強度強化することができる。
【0034】
上記(イ)の加熱処理条件は、通常、80〜150℃で10分〜1時間程度であり、希望する接着強度に応じて適宜、条件を選択する。
【0035】
前記(2)の芳香性粘着シートは、上記の芳香性粘着剤溶液を前記の素材から成るシート表面に塗布し、乾燥して得られる。上記の塗布量は、通常、乾燥後の厚さとして10〜100μm、実用的には25〜50μmとされる。上記の塗布方法は、公知の方法でよいが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターなどを用いた方法が挙げられる。そして、上記の塗布層は、通常、80〜150℃の温風中で30〜120秒間、好ましくは100〜130℃の温風の中で40〜90秒間乾燥することにより粘着剤層を形成し、芳香性粘着シートを得る事ができる。
【0036】
上記の芳香性粘着シートの用途としては、例えば、(2−1)透明基材フイルムまたは芳香性粘着剤層に紫外線防止剤を添加したものである場合は、窓ガラスなどに貼り付けて芳香性紫外線防止フイルムとして使用する用途、(2−2)着色しまたは図柄を描いた透明、半透明または不透明のシート基材を用い、その上に上記の芳香性粘着剤層を設けて、透明傘の内面、下敷き、筆箱などの各種の文具、防護用ゴーグルの内面、身の回り品への装飾用・保護用として貼り付けて芳香性飾りシール材、芳香性図柄シールとして使用する用途を挙げることができる。この場合、シート基材が透明または半透明のシートの場合、複数枚積層して、好みの色相または図柄を組み合わせて使用することもできる。更に、特殊な用途例として、芳香成分を含有しない請求項1乃至6に記載の粘着剤成分を、予め各種材料・形態の物品に塗布し、これと各種芳香性成分との組み合わせをキットとして取り扱い、好みに応じて、特定の芳香成分を物品表面に含ませることもできる。
【0037】
また、上記の(3)の、他の物品表面に塗布して単に芳香放散剤としても実用する例としては、飾り物、置物等の前面または裏面などに塗布して芳香放散性飾り物、置物として、また、任意の基材の表面に芳香粘着剤を塗布した芳香放散材としても使用することもできる。この場合、物品表面への塗布量は、前記の接着用途の場合とは違って、更に厚くすることもできる。また、芳香性粘着剤塗布層表面は、芳香放散速度を調節するため、適宜の割合で開口した芳香遮蔽性皮膜で被覆することもできる。
【0038】
前記(ロ)または(ハ)において使用されるアンカー用接着剤としては、例えば、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分として含む接着剤が好適に挙げられる。
【0039】
上記のアンカー用接着剤層を構成するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、種々のカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。上記のカルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。これらの中で、脂肪族不飽和ジカルボン酸による変性であるものが好ましく、さらに好ましくは、マレイン酸による変性であるものが好ましい。
【0040】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーは、例えば水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー、具体的にはマレイン酸変性SEBSエラストマーが挙げられる。また、上記の水添された熱可塑性エラストマーとして水添されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるものが好ましく、3〜7g/10分であるものがより好ましい。
【0041】
また、水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、本発明においては、水素添加率が実質的に100%であるものが好ましいが、本発明の効果が得られる限り100%未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSエラストマーを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば10:90〜40:60であるのが好ましく、20:80〜30:70であるのがより好ましい。さらに、水添されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価は、好ましくは2〜10である。その範囲の中で、酸価が3未満のものは無色透明とすることができ、一方、酸価が3〜10のものは黄色がかったものとすることができる。上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーまたはその水素添加物として市場で入手されるものとして例えば、タフテックM1911、M1913、M1943(以上、商標、旭化成工業株式会社製)、およびFG−1901X(商標、クレイトンポリマー社製品)などを挙げることができる。
【0042】
上記のアンカー用接着剤層に配合する架橋剤は、その種類は特に制限されず、使用するカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの種類などを考慮して適宜決定することができるが、例えば、コロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート HDI−TMPアダクト、商標、日本ポリウレタン工業株式会社製品)を用いることができる。
【0043】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤との配合比は、特に制限されないが、例えば、100:1〜2:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは50:1〜12:1とされる。
【0044】
上記のアンカー用接着剤成分には、上記の主成分の他に、耐電防止剤などの添加剤を添加することができる。上記の帯電防止剤としては、例えば、カチオン性帯電防止剤であるエレガン264wax(商標、日本油脂株式会社製)を挙げることができ、その添加量は、上記のアンカー用接着剤の質量に対して、通常0.1〜3.6質量%好ましく、0.6〜1.8質量%とされる。このような添加量範囲にすることにより、いわゆる「ゆずはだ」の発生を良好に防止することができる。
【0045】
前記のアンカー用接着剤層は、上記の接着成分および他の添加剤などの配合品を適当な有機溶剤に溶解して接着剤溶液とし、前記の物品表面に塗布し、乾燥して形成される。上記の有機溶剤としては、上記のエラストマーに対する溶解性があるものであれば特に制限されないが、例えば、トルエンを好適に挙げる事ができる。また、その使用量は溶液を接着剤液として使用できればよく、通常、上記の主要成分であるエラストマーおよび可塑剤の合計100質量部に対して200〜500質量部、好ましくは250〜350質量部とされる。
【0046】
上記のアンカー用接着剤液の塗布方法は、公知の方法でよいが、具体例としては、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターなどを用いた塗布方法が挙げられる。そしてその塗布量は、特に制限されないが、接着用途の場合は、通常、乾燥後の厚さが1〜50μm、好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜5μmとされる。上記の塗布層は、通常80〜150℃の温風中で20〜60秒間、好ましくは100〜130℃の温風中で30〜50秒間乾燥することによりアンカー用接着剤層を形成し、後述の粘着剤層のアンカー層として適用することができる。
【0047】
また、前記(3)のように芳香性粘着剤にアンカー用接着剤成分を配合する場合、配合するアンカー層接着剤の処方は、基本的には上記(2)に記載したアンカー用接着剤をそのまま転用してもよく、その配合量は、芳香性粘着剤成分の固形分100質量部に対して固形分として0.1〜150質量部、好ましくは1〜100質量部とされる。なお、上記のアンカー用接着剤層を設けた場合およびアンカー用接着剤成分を配合した場合は、得られた芳香放散性物品の品質安定のため、使用または出荷の前に、40〜80℃の環境下で2〜60日間エージングが行うのが好ましい。
【0048】
以上のように、本発明の芳香性粘着剤は、主機能としての芳香放散性の他に、リワーク性、自己粘着性および透明性を有しており、接着の際、特に被着体がガラス、金属など表面が平滑な場合は、接着界面に気泡の巻き込みが著しく少なく、且つ貼り付け位置が正しくない場合は容易に張り直しが可能であり、接着操作が手軽である。また、接着後に強力な接着強度を必要とする場合は、アンカー用接着剤によるアンカー層を併用するのが好ましいことに鑑み、粘着剤そのものを商品として取り扱う場合は、上記の芳香性粘着剤と、上記のアンカー用接着剤とを組み合わせたキットとして流通させるのが便利である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明を、実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
(芳香性粘着剤)
SEBSエラストマー(質量平均分子量250,000)17質量部と可塑剤としてのナフテンオイル(引火点220℃、流動点−25℃、比重0.8387、炭素数5〜6)83質量部とをトルエン270質量部を用いて溶解した後、芳香成分としてグレープフルーツの香りを呈するAR25204(商品名、小川香料株式会社製)10質量部を添加し、よく攪拌・溶解して粘着剤溶液を得た。
【0051】
(芳香性粘着剤層形成)
この溶液をメイヤーバーにより、基材としての厚さ75μmのPETフイルム(ルミラー75T60、東レ株式会社製:以下基材PETフイルムという)の片面に塗布し、100℃の熱風中で1分間加熱乾燥して厚さ45μmの粘着剤層を有する芳香性シートを得た。この芳香性シートの粘着剤層の表面に離型層として表面をシリコーン処理した厚さ75μmのPETフイルム(以下、離型フイルムという)を積層し、芳香性粘着シートを得た。
【0052】
以上のようにして得られた芳香性粘着シートの特性について、以下の要領で評価した。
(1:光透過性)
上記の芳香性粘着シートから光透過性測定用として3試験片を採り、離型フイルムを剥離した後、C光源用ヘーズメーターHGM−2(スガ試験機株式会社製)を使用して、各シートの、全光透過率を測定したところ、すべて90%以上であった。
【0053】
(2:対ガラス表面への粘着力、再粘着力)
上記の芳香性シートから幅25mm、長さ250mmの短冊形試験片を裁断し、島津製作所性AUTOGRAPH AGS−50Dを用い、JIS Z 0237号の粘着力試験方法に準じて粘着剤層表面の離型フイルムを剥離した後、その粘着剤層表面を、被着体としてのガラス面に圧着し、粘着面の巻き込み気泡の有無を評価した後、30℃で30分後放置したものと80℃オーブン内に30分間放置したものについて、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香性シートを剥離して、粘着面と被着体としてのガラス面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。さらに上記のガラス板側の剥離面の糊残り状態を100倍の顕微鏡で観察した。次いで、リワーク性評価のため、30℃でエージングした試験片について、その粘着面をガラス面に再度圧着し、粘着界面の肌荒れを観察した後、引き続いて上記の要領で再度、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で剥離して、粘着面とガラス面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を再粘着時の粘着力とした。
【0054】
(3:対PETフイルム表面への粘着力、再粘着力)
また、別に、上記(1)の場合と同様にして作製した試験片の基材PETフイルム面を、厚さ5mmのポリプロピレン板から成る試験板表面に両面粘着テープを介して固定し、粘着剤層表面に、被着体としてのPETフイルム(厚さ25μm、幅25mm)を圧着し、粘着面の巻き込み気泡の有無を評価した後、上記の(1)の場合と同様にして30℃と80℃による30分間のエージング処理をした後、剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香性シートを剥離して、粘着面と被着体としてのPETフイルム面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。さらに上記の被着体としてのPETフイルム側の剥離面の糊残り状態を100倍の顕微鏡で観察した。次いで、リワーク性を評価のため、30℃でエージングした試験片についてその粘着面に被着体としてのPETフイルムを再度圧着し、粘着界面の肌荒れを観察した後、引き続いて上記の要領で剥離角度180度法により、剥離速度毎分300mm条件で芳香シートを剥離して粘着面と被着体としてのPETフイルム面との間の粘着力(粘着面粘着強度)を測定し、各3試験片の測定値の平均値を再粘着時の粘着力とした。
【0055】
(4:基材PETフイルム面との粘着力)
また、別に、上記(1)の場合と同様にして作製した試験片について、基材PETフイルム面を厚さ5mmのポリプロピレン板から成る試験板表面に両面粘着テープを介して固定し、粘着剤層表面に離型フイルムを積層した状態で30℃による30分間のエージング処理をした後、離型フイルムを取り除き、基材PETフイルムと粘着剤層との界面に剥離口を設けた後、粘着剤層を掴んで、剥離角度90度法により、剥離速度毎分300mm条件で粘着剤層の剥離を続けて、基材PETフイルム面と粘着面との間の粘着力を測定し、各3試験片の測定値の平均値を粘着力とした。
なお、80℃による30分間のエージング処理をしたものは、基材PETフイルム面と粘着面との間の粘着力が強く、粘着剤層との界面に剥離口を設ける段階で粘着剤層が切断したため、測定を中止した。
【0056】
(5:芳香耐久性)
また別に、得られた本発明の芳香性シートから、縦10cm、幅6cmの試験片を裁断し、表面の離型フイルムを剥離し、露出した粘着剤面を、被着体としての縦29cm、幅21cmのソーダガラス板の表面に貼付して芳香耐久性評価用試験体とした。この貼付の時、粘着剤面は気泡を巻き込まずに滑らかにガラス面に吸い付けられるように貼付することができた。この試験体を通風がよく室温が10〜30℃の範囲内で変動した静かな室内のテーブル上に載置し、毎週1回、上記の試験体の上方約30cmの位置に顔を近づけて、試験体に含まれる芳香成分に由来する芳香を嗅ぎ取り、芳香を感じることができなくなるまでの期間、すなわち芳香耐久性の評価を続けた。その結果、6ヶ月経過した後もなお芳香を感知することが出来た。以上の各結果を表1に示した。
【0057】
[実施例2]
(アンカー層用接着剤液)
マレイン酸変性SEBSであるタフテックM1911(メルトインデックスが3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比が30:70、酸価が2、旭化成工業株式会社製)13質量部を、トルエン87質量部中に投入し、プロペラ攪拌機を用いて溶解した。この溶液100質量部に対してコロネートHLの1.04質量部と、帯電防止剤としてエレガン264waxの0.13質量部とを常温において添加して、接着剤液を得た。
【0058】
(アンカー層・粘着剤層形成)
この接着剤液を、メイヤーバーを使用して実施例1において使用したものと同じ基材シートに塗布し、120℃の熱風中で40秒間乾燥して、厚さ2μmのアンカー用接着剤層を形成した。このアンカー用接着剤層の上に、実施例1の場合と同様にして粘着剤層を乾燥後の厚さが45μmとなるように塗布し、乾燥して芳香性シートを得た。上記の芳香性シートの粘着剤層の表面に離型層として表面をシリコーン処理した厚さ75μmのPETフイルムを積層して、芳香性粘着シートを得た。
【0059】
(諸特性評価)
次いで45℃の室内において4日間エージングを行った後、実施例1の場合と同様に、粘着面の巻き込み気泡の有無、透明性、芳香耐久性、粘着力(粘着面−被着体としてのガラス面間、粘着面−被着体としてのPETフイルム面間、基材PETフイルム面−粘着剤層間)、各剥離面の糊残りを評価した。さらに、リワーク性の評価のため、30℃でエージングした試験片の剥離面について、それぞれの被着体と再粘着し、その時の粘着界面の肌荒れ及び粘着力を評価し、それらの結果を実施例1の場合と同様に表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
上記の実施例の結果(表1)から明らかな様に、何れの試験片においても、最初の粘着界面には気泡は巻き込まれておらず、剥離面において再粘着した界面にも気泡は巻き込まれておらず、且つ肌荒れも無く、リワーク性、自己粘着性が優れていた。また、透明性、芳香の耐久時間も十分満足できるレベルにあり、更に、粘着力については、80℃の高温エージングを行わなかったものは、一旦剥離した後再度粘着しても、粘着力の低下は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の芳香性粘着剤は、熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とし、粘着剤成分に芳香成分を添加する際、従来のように微粒子に担持したりカプセルに充填することなしに、通常の原料形態のまま直接添加することができるため、得られる芳香性粘着剤の透明性が優れており、且つ、接着に際しては自己粘着性、リワーク性に優れているため、貼り直しが容易であり、使用勝手が優れており、接着後に強力な接着力が必要な場合は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とする配合物を添加し、またはアンカー材として併用することにより、十分強力な接着強度を得ることができる。また、この粘着剤は、(1)通常の接着剤と同様に二つの物品の芳香性接着用途、(2)基材シートに塗布して芳香性粘着シートとして、あるいは(3)他の物品表面に塗布して単に芳香放散剤としても実用することができ、産業上の効果は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーと可塑剤とを主成分とする粘着剤成分と、この粘着性成分と実質的に相溶性を有する芳香成分とを含有することを特徴とする芳香性粘着剤。

【請求項2】
熱可塑性エラストマーがスチレンモノマーのブロックとゴムモノマーのブロックから成るブロックセグメントで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の芳香性粘着剤。

【請求項3】
可塑剤がナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルであることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香性粘着剤。

【請求項4】
芳香成分を添加する際、原料形態のまま直接添加されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の芳香性粘着剤。

【請求項5】
さらに、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを配合することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の芳香性粘着剤。

【請求項6】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の芳香性粘着剤塗布の前に塗布される、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーと架橋剤とを主成分とするアンカー用接着剤。

【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一つの芳香性粘着剤と、請求項6に記載のアンカー用接着剤とを含むキット。

【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一つの芳香性粘着剤を塗布する際に、あらかじめ基材表面に、請求項6に記載の接着剤をアンカー層として塗布しておくことを特徴とする上記の芳香性粘着剤の使用方法。

【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の芳香性粘着剤を塗布して成る芳香放散性物品。

【請求項10】
基材表面が、物品の外観面または非外観面の全面または一部である請求項9に記載の芳香放散性物品。

【請求項11】
基材が、図柄を描いたシート層である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の芳香性粘着剤層を設けた芳香性図柄シール。

【請求項12】
粘着剤層が、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の芳香性粘着剤にさらに紫外線防止剤を添加した粘着剤の層が、透明基材フイルムに設けられて成る芳香性紫外線防止フイルム。


【公開番号】特開2006−28338(P2006−28338A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209322(P2004−209322)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】