説明

芳香族アミド高分子化合物及びその合成方法

【課題】より広範な組成物及び物性変化を有し特定の応用例にも応えうる新規ポリアミドを合成する。
【解決手段】本発明は、分子内相互作用を促進することにより、骨格構造の剛直性、安定性及び/又は共平面性を改善したアミドポリマを合成する。本発明の実施の形態におけるアミドポリマは、芳香族ジカルボン酸と複素環式ジアミン前駆体又は反応性の複素環式アミノ酸前駆体を用いて合成される。本発明において用いる複素環式前駆体は、1以上の反応性アミン基に対するβ位にヘテロ原子を含む複素環式構造を有する。好ましくは、ヘテロ原子は、窒素原子である。また、本発明の別の実施の形態は、分子間相互作用、分子内相互作用を促進する、及び/又は合成されたアミドポリマの溶解性を強化する官能基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、高分子化合物及びその合成する方法に関し、より詳しくは、アミドポリマ、アミド高分子化合物及びその合成方法に関する。
【0002】
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2003年2月27日に出願され、同時に係属中の米国仮特許出願第60/450,302号、発明の名称「芳香族アミドポリマ及びその使用方法(AROMATIC AMIDE POLYMERS AND METHOD FOR USE)」に対する優先権を主張する。2003年2月27日に出願され、同時に係属中の米国仮特許出願第60/450,302号、発明の名称「芳香族アミドポリマ及びその使用方法(AROMATIC AMIDE POLYMERS AND METHOD FOR USE)」は、参照により本願に援用される。
【背景技術】
【0003】
アミドポリマは、重要な材料の1つに分類することができる。ナイロン(登録商標)及びケブラ(登録商標)は、最も重要な周知のアミドポリマ系材料の1つである。ケブラ(登録商標)は、芳香族ポリアミドであり、一般的にアラミドと呼ばれる材料に分類される。アラミドは、軽量で、かつ耐燃性材料、高い耐衝撃性材料及び耐薬品性を含む高い強度耐性を有する材料を製造するにあたり多くの応用例を有する。例えば、ケブラ(登録商標)繊維は、樹脂と結合剤とが混合されてできており、表面又は生地に強度と耐久性を付与するために、表面に被覆されるか生地に織り込まれるかして用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、ポリアミド系材料は、非常に幅広い分野で利用されており、高い耐久性を有する材料として、最高水準の技術として発展し続けているという一方で、幾つかの欠点もある。例えば、ケブラ(登録商標)繊維は、分子内水素結合及び分子内の芳香族基のスタッキングから生じる強力な分子間力のために分離が極めて困難である。また、新規ポリアミド系材料を合成する分野では相当な発展があった一方、典型的な方法を用いて形成できる材料の組成物は、後段で詳細に説明するように、構造的な考察から制限されていた。したがって、より広範な組成物及び物性変化を有し、特定の応用例にも応えうるポリアミド系材料を合成する新規方法を発展させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アミドポリマ、アミド高分子化合物及びこれらを重合する方法に関する。本発明の実施の形態に係る高分子化合物は、耐力を有する骨格構造を強化することにより骨格構造強度を向上するとともに、分子内水素結合の促進により二重結合性を強固にすることができる。アミドポリマは、アミド結合或いは他の部分で互いに結合された芳香環及び/又は複素環式構造を有していてもよい。アミド結合は、パラ配置、メタ配置及び/又はオルト配置であってもよく、また互いに関連して配置されていてもよい。パラ型及びメタ型で結合されたアミド結合は、延長された線形構造を形成するのに好ましく、パラ型とメタ型とが交互に結合されたアミド結合は、湾曲構造、環状構造、コイル状又は螺旋状構造を形成するのに好ましい。2次元及び3次元ポリマ配列の別の例は、2004年2月24日に出願された「剛直性骨格構造ポリマ及びポリマ配列」に開示されている。この特許出願の内容は、ここで参照することによって本願発明に含まれるものとする。
【0006】
本発明の好ましい実施の形態において、アミドポリマ内の少なくとも複素環式構造の一部は、アミド結合を形成する窒素原子に対するβ位(2原子分離れた位置)に配置されたヘテロ原子を有する。ヘテロ原子として窒素原子を用いることが最も好ましい。
【0007】
アミド結合を形成する窒素原子に対するβ位に配置されたヘテロ原子を有すると、アミド結合のエノール類似立体構造が促進されると考えられており、後段で詳細に説明するように、このヘテロ原子は、分子内水素結合を次々に助長するとともに、アミドポリマ骨格構造の強度、機能性及び/又は剛直性を増加させる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態において、アミドポリマの芳香環及び/又は複素環式構造は、アミド結合に対するβ位に配置された官能基を有する(アミド結合を形成する窒素原子又は炭素原子の2つの原子に配置された原子に結合されている)。官能基は、ルイス酸として機能し、近隣のヘテロ原子から電子密度を若干吸引する官能基であることが好ましい。また、官能基は、後述のように水素結合に関与できる水素含有官能基とすることができる。水素含有官能基は、特に限定されないが、アルコール基、チオール基及びアミノ基であることが好ましい。アミド結合のβ位に水素含有官能基を有することは、分子内水素結合をより促進し、アミドポリマ骨格構造の安定性及び剛直性を高めると考えられている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態において、アミドポリマは、適切な溶液中で1以上の芳香族ジカルボン酸前駆体を1以上の複素環式のモノ又はジアミン前駆体と結合することによって合成される。また、少なくとも1つの複素環式ジアミン前駆体が反応性のアミノ基の1又は両者に対するβ位に窒素原子のようなヘテロ原子を含むことが好ましい。また、芳香族ジカルボン酸前駆体及び複素環式ジアミン前駆体は、反応性のカルボキシル基及び/又は反応性のアミノ基に対するβ位にルイス酸官能基を含んでいてもよい。上述のように、ルイス酸官能基は、アルコール、チオール及びアミノ基を含む水素含有官能基であってもよい。これらは、そこから結合が形成された結果生じるアミドポリマの剛直性に関与している。
【0010】
反応性官能基としては、炭素環式酸性基及びアミノ基があげられているが、酸無水物、酸性ハロゲン化物、酸性塩、酸性エステル及びアミン塩に限定されることなく、あらゆる炭素環式酸性基の誘導体又はアミノ誘導体が含まれる。なお、前駆体が2つの反応性官能基を有するとして記述されているが、前駆体を2つの反応性官能基に限定するべきものではない。実際、前駆体として、多くの環式炭素酸性基及び/又はアミノ基がある。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態の他の例として、アミドポリマは、複素環式構造を含む1以上の前駆体を反応させることによって合成される。ここで、複素環式構造は、ここで複素環式アミノ酸前駆体と呼ぶ少なくとも1つの反応性カルボキシル基及び少なくとも1つの反応性アミノ基である。複素環式構造は、ヘテロ原子を含み、ヘテロ原子として好ましくは窒素原子であり、このヘテロ原子は、反応性アミノ基の窒素原子に対するβ位にある。上述のように、複素環式前駆体は、反応性のカルボキシル基に対するβ位にルイス酸官能基を含んでいてもよい。また、上述した方法によれば、前駆体のあらゆる組合せを用いて重合することができるが、“自己重合”プロセスでは、1つの前駆体だけでアミドポリマを形成することが好ましい。重合プロセスは、触媒、酸、塩基、熱、脱水素、又はこれらの組合せを用いて開始することができる。重合プロセスを開始するため実際の反応条件は、使用する1つの前駆体又は複数の前駆体に依存する。
【0012】
アミドポリマが形成されると、アミドポリマは、未反応の前駆体及び/又は溶液から分離され、複合材料を合成するための多くの異なる材料と化合される。例えば、アミドポリマは、エポキシ樹脂、ゴム、合成樹脂、ポリウレタン及びケイ素樹脂をはじめとする結合材と化合することができ、及び/又はコンクリート、金属及びセラミック等の材料の表面上に被覆することもできる。更に、アミドポリマの繊維は、モノフィラメント糸の内部に包含してもよい。また、ロープ、ケーブル又は生地に織り込むこともできる。
【0013】
本発明に係るアミドポリマ内の全てのアミド結合が水素結合で安定化されたアミド結合である必要はないことは、下記の説明から明らかである。実際、典型的なアミド結合と水素結合で安定化されたアミド結合とが組み合わされたアミドポリマを合成することが好ましい場合がある。また、アミドポリマは、アミド結合をもつ又はもたない柔軟なブロックと、水素結合により安定化されたアミド結合のブロックとを含み、後者のブロックは、柔軟なブロックによって分離されて形成されてもよい。なお、前駆体の芳香環及び/又は複素環式構造、及びこれらから形成されるアミドポリマは、単一構造又は複雑な構造を有していてもよい。例えば、芳香環及び/又は複素環式構造は、異なる官能基を複数含む多環式構造及び/又は伸展構造であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、それぞれアミド結合及びポリアミド結合を合成する反応スキーム(1)及び(2)を示している。反応スキーム(1)によれば、アミド部位3は、カルボン酸1を第1級アミド2と反応させることにより合成することができる。このときの副生成物は、通常、水4である。反応スキーム(1)は、一般的に、アミドポリマの合成に用いられる反応と同じ「型」である。反応スキーム(2)によれば、ポリアミド7は、芳香族ジアミンプロセッサ5と芳香族ジカルボン酸前駆体6とを反応させて合成することができる。合成されるポリアミド7は、通常、アミド結合により互いに結合された芳香族が延長された構造を有する。これは、ケブラ(登録商標)のようなアミドポリマの基本的な合成方法である。
【0016】
図2(a),(b)は、2量体構造200,250を示し、それぞれ図1に関して示されたアミドとカルボン酸モノマ前駆体の反応中に生成される中間体を示す。図2(a)は、アミン結合に関してシス型構造を有する2量体構造200を示し、図2(b)は、アミド結合に関してトランス型構造を有する2量体構造250を示す。また、2量体構造250は、2量体構造200をアミド結合を形成する窒素−炭素結合で180°回転させたものである。
【0017】
ポリマ中の芳香族性を増加することから多くの好ましい特徴を付与するためには、隣接した芳香環が同一平面上に配座されることが好ましい。しかし、標準的なアラミドポリマ構造における立体化学的な議論では、図2(a)に示す“シス型”でも、図2(b)に示す“トランス型”でもない構造が支持されている。シス型の2量体構造200は、環状構造を構成する炭素原子201及び炭素原子203とそれらに結合した水素原子の重なりとの極端な不一致(以下、コンフリクトという)により、その両者は、有り得ないシス型構造になる。トランス型の2量体構造250は、第1の芳香環における水素原子253と、アミドの酸素原子257とが立体化学的に密集していることを示し、その両者は、エネルギー的に好ましからぬ環状構造の共平面性を形成している。芳香環内の問題の水素原子が結合した炭素原子を、後述するようにヘテロ原子で置換することにより、立体障害及びその立体障害により強要された構造的な限界を取り除く又は減じることができる。
【0018】
上述のシス型構造及びトランス型構造のほかに、図1における芳香族ジアミンプロセッサ5、芳香族ジカルボン酸前駆体6のような前駆体モノマで形成されるポリマの構造を決定する重要な因子が複数ある。また、芳香環における反応性のカルボキシル基及び反応性のアミン基の相対的な位置は、形成されるポリマの伸展構造の決定において極めて重要である。芳香族ジアミンプロセッサ5及び芳香族ジカルボン酸前駆体6はともに、反応性アミン基及び反応性カルボキシル基をパラ位にもち、結果として生じるアミドポリマ7は、パラ位でのみ結合されている。図5(a),(b)及び図6(a),(b)に示すように、モノマ前駆体がメタ位、オルト位、又はその組合せの位置に反応性官能基を有するときでは、重合の結果生じる構成は全く異なる。
【0019】
本発明は、反応性のアミン基の窒素原子に対するβ位にヘテロ原子を有する少なくとも1つの前駆体に対して適用される。したがって、形成されるアミドポリマは、アミド結合を形成する窒素原子に対するβ位にヘテロ原子を含んでいる。そのような構造により、アミドポリマ骨格構造の分子内安定化が促進されるという考えから、更に、適切な前駆体を選択することにより、より多様なアミドポリマ構造が想像される。また、アミド結合に対するβ位に水素含有官能基のようなルイス酸基を含んでいると、分子内水素結合を更に促進し、アミドポリマ骨格構造をより安定化することができるといわれている。したがって、以下に示す実施例は、実例として与えられたものであり、多くの他の関連するアミドポリマ構造は、本発明の範囲に含まれる。
【0020】
図3(a)は、芳香環301と、複素環式構造305と、これらを結合するアミド結合303とを有するポリアミド300の1ユニットを示す。本発明の実施の形態によれば、複素環式構造305は、ヘテロ原子309,309’を有し、ヘテロ原子309,309’は、アミド結合303のようなアミド結合を形成する窒素原子306に対するβ位に配置される。アミド結合内の各窒素原子306のβ位は、潜在的に2つ存在し、ヘテロ原子は、何れか又は両方の位置に配置されることができる。ヘテロ原子309,309’は、窒素原子であることが好ましいが、図中、305として示すような複素環式構造内で安定しているリン原子又は他のヘテロ原子であってもよい。図3(a)及び本発明の更なる実施の形態によれば、芳香環301は、アミド結合303のようなアミド結合を形成する炭素原子302に対するβ位に配置された水素含有官能基307,307’のような1以上のルイス酸基を含む。また、炭素原子302のβ位は、2つ存在し、何れか又は両方に水素含有官能基のようなルイス酸基を有することができる。水素含有官能基307,307’は、下記図4(c)〜(d)に示すような分子内水素結合を促進することができる。水素含有官能基307,307’は、特に限定されないが、アルコール基、チオール基、アミノ基等が好ましい。
【0021】
図3(b)は、本発明の他の実施の形態であるポリアミド骨格構造350の1ユニットを示す。図3(a)に示すように、ポリアミド骨格構造350は、アミド結合353で結合された芳香環及び/又は複素環式構造351と複素環式構造355とを含む。複素環式構造355は、アミド結合353のようなアミド結合を形成する窒素原子360,360’に対するβ位に配置されるヘテロ原子359,359’を有することが好ましい。また、ヘテロ原子359,359’は、窒素原子であることが好ましいが、他のヘテロ原子であってもよい。
【0022】
図3(b)に示すように、芳香環351及び/又は複素環式構造355は、アルコール基又はチオール基のような有機官能基356,356’,358,358’を1以上の含むことができ、これら有機官能基は、水のような溶液中でポリアミド骨格構造350の溶解性を促進するとともに、架橋のような分子間結合を促進し、及び/又は図4(c)〜(d)に示すように、水素結合のような分子内結合を促進する。更に、芳香環351及び/又は複素環式構造355は、多環式構造であってもよいし、芳香環351の一部分間、及び/又は複素環式構造355の一部分間を結合する延長された結合部分361,363を有することもできる。他の官能基356,356’,358’は、金属含有官能基であってもよく、反応性官能基であってもよい。
【0023】
図4(a),(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態においてヘテロ修飾されたアミド結合402のケト型構造400とエノール型構造450を示す。本発明の実施の形態における窒素原子のようなヘテロ原子401は、アミド結合402を形成する窒素原子403に対するβ位に配置されることにより、アミド結合402のエノール型構造450は、より重要な共鳴構造となる。実際には、エノール型構造450が優勢な互変異性体である。アミド結合402のエノール型構造450は、エノール水素原子405とヘテロ原子401との間の点線451によって示されるような水素結合を促進することができる。この水素結合451は、複素環式構造454、アミド結合402、芳香環457の共平面性を促進し、アミド結合の炭素−窒素間結合459の二重結合性を増加し、これにより図4(a),(b)中において402として示すアミド結合を有する、延長されたポリアミド骨格構造に剛直性及び/又は安定性を与える。
【0024】
図4(c)は、上述した図4(b)に類似する、芳香環472と複素環式構造474とを結合するアミド結合478のエノール型構造470を示す。また、ヘテロ原子471は、窒素原子であり、このヘテロ原子471は、アミド結合478を形成する窒素原子476に対するβ位に配置される。エノール型構造470は、エノール水素原子475とヘテロ原子471との間の水素結合479を促進することができる。また、エノール型構造470は、アミド結合478に関連する芳香環472上のβ位476に水酸基又はアルコール基473を有することもできる。水酸基473のような水酸基は、点線477で示されたアミド結合478を形成する窒素原子476との水素結合に関与すると考えることができる。また、水素結合477は、図中478のようなアミド結合を有する延長されたポリアミド構造に剛直性及び/又は安定性を与え、アミド結合478をより安定化すると考えることができる。
【0025】
更に上述した原理を詳述する。図4(d)は、水素含有官能基を介して生じ得る更に別の水素結合を有するエノール型構造480を示す。エノール型構造480は、アミド結合488で結合された芳香環482と複素環式構造484とを有する。複素環式構造484は、アミド結合488を形成する窒素原子486に対するβ位に配置された窒素原子のようなヘテロ原子481を有する。エノール型構造480は、エノール水素原子496とヘテロ原子481との間の水素結合483を促進することができる。更に、エノール型構造480は、アミド結合488に結合された芳香環482上のβ位489,491に配置された水酸基又はアルコール基495,497を含む。また、エノール型構造480は、複素環式構造484のメタ位493にアルキル基のαヒドロキシル置換体の一部である水酸基又はアルコール基499を含むことができる。また、複素環式構造484とアミド結合488のオルト位493にアルキル基のαヒドロキシル置換体の一部である水酸基又はアルコール基499が配置されてもよい。場合によっては、水酸基495,497,499の全てが点線485,487で示される水素結合に関与することもでき、このような水素結合は、アミド結合488をより安定化することができるとともに、アミド結合488のようなアミド結合を有する延長されたポリアミド構造に剛直性及び/又は安定性を付与することができる。
【0026】
図5(a)〜(d)は、単純なモノマ前駆体から形成されたアミドポリマの一部を示す。図5(a)は、芳香族ジカルボン酸前駆体及び複素環式ジアミン前駆体を組み合わせて合成できるアミドポリマ500の一部を示す。アミドポリマ500を合成するために用いた芳香族ジカルボン酸前駆体は、芳香環において互いにパラ位に反応性のカルボキシル基を有し、アミドポリマ500を合成するために用いた複素環式ジアミン前駆体は、複素環式構造において互いにパラ位に反応性のアミン基を有する。
【0027】
図5(b)は、複素環式アミノ酸前駆体から自己重合反応によって誘導することができるアミドポリマ525の一部を示す。アミドポリマ525を合成するために用いた複素環式アミノ酸前駆体は、複素環式構造において互いにパラ位に反応性のカルボキシル基及び反応性のアミン基を有する。
【0028】
図5(c)は、芳香族ジカルボン酸前駆体と複素環式ジアミン前駆体との化合により合成されたアミドポリマ550の一部を示す。アミドポリマ550を合成するために用いた芳香族ジカルボン酸前駆体は、芳香環において互いにメタ位に反応性のカルボキシル基を有し、アミドポリマ500を合成するために用いた複素環式ジアミン前駆体は、複素環式構造において互いにパラ位に反応性のアミン基を有する。
【0029】
図5(d)は、複素環式アミノ酸前駆体から自己重合反応によって誘導することができるアミドポリマ575の一部を示す。アミドポリマ575を合成するために用いた複素環式アミノ酸前駆体は、複素環式構造において互いにパラ位に反応性のカルボキシル基及び反応性のアミン基を有する。
【0030】
図6(a)は、メタ型のジカルボン酸モノマとパラ型の複素環式ジアミンモノマとを交互に組み合わせてできるかなり湾曲したアミドポリマ600の一部を示す。アミドポリマ600は、点551から旋回を開始し、点551で終了する構造であってもよい。また、螺旋状又はヘリカル状に成長し続ける構造であってもよい。
【0031】
図6(b)は、アミドポリマ600よりも大きい曲率を有するアミドポリマ650の一部を示す。アミドポリマ650は、複素環式アミノ酸モノマの自己重合により合成される。この場合、カルボキシル基は、反応性アミン基に対するメタ位に配置される。上述の反応によって合成されたアミドポリマ650は、点563から旋回を開始し、点563で終了する構造であってもよいし、螺旋状又はヘリカル状に成長し続ける構造であってもよい。
【0032】
図7は、本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適のジカルボン酸前駆体の構造式を示し、下記表1は、図7に示す構造式の式番号と名称を示す。アミドポリマは、以下から選ばれる1以上のジカルボン酸前駆体を用いて合成することができる。例えば、1)2,3−ジヒドロキシテレフタル酸、2)2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、3)4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4)3,5−ジヒドロキシ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、5)1,5−ジヒドロキシ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、6)3,7−ジヒドロキシ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、7)3,6−ジヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、及び8)1,8−ジヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、これら各前駆体をあげることができる。
【0033】
【表1】

【0034】
図8は、本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適の複素環式ジアミン酸前駆体の構造式を示し、下記表2は、図8に示す構造式の式番号と名称を示す。アミドポリマは、以下から選ばれる1以上の複素環式ジアミン前駆体を用いて合成することができる。例えば、1)3,6−ジアミノピリダジン、2)2,5−ジアミノピラジン、3)4,6−ジアミノピリミジン、4)1,4−ジアミノフタラジン、5)2,6−ジアミノピリド[3,4−b]ピリジン、6)2,6−ジアミノピリド[2,3−b]ピリジン、7)3,6−ジアミノ−[2,7−ジベンゾアジン]、8)3,7−ジアミノ−[2,6−ジベンゾジアジン]、9)2,6−ジアミノ−[1,3,5−ジベンゾトリアジン]、10)2,6−ジアミノ−[1,3,7−ジベンゾトリアジン]、11)2,6−ジアミノ−[1,3,5,7−ジベンゾテトラジン]、12)2,6−ジアミノプテリン、13)2,7−ジアミノナフチリジン、14)2,5−アミノピリド[4,3−b]−ピリジン、15)2,3−ジアミノピラジン、及び16)1,7−アミノピリド[2,3−c]ピリジン、これら各前駆体をあげることができる。
【0035】
【表2】

【0036】
図9は、本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適の複素環式カルボン酸前駆体の構造式を示し、下記表3は、図9に示す構造式の式番号と名称を示す。アミドポリマは、以下から選ばれる1以上の複素環式カルボン酸前駆体を用いて合成することができる。例えば、1)2−アミノ−3−カルボキシ−4−ヒドロキシピリジン、2)2−アミノ−5−カルボキシ−4−ヒドロキシピリジン、3)2−アミノ−5−カルボキシ−6−ヒドロキシピリジン、4)2−アミノ−4−カルボキシ−3−ヒドロキシピリジン、5)2−アミノ−4−カルボキシ−5−ヒドロキシピリジン、6)2−アミノ−6−カルボキシ−5−ヒドロキシピリジン、4a)1−アミノ−6−カルボキシ−7−ヒドロキシイソキノリン、4b)1−アミノ−6−カルボキシ−7−ヒドロキシ−2−アザアントラセン、及び4c)3−アミノ−7−カルボキシ−6−ヒドロキシ−2−アザフェナンセレン、これら各前駆体をあげることができる。
【0037】
【表3】

【0038】
表1〜3では、典型的な前駆体のみを掲示したが、多くの修飾された又は関連した前駆体もまた、本発明に含まれる。例えば、前駆体は、分子間及び分子内結合を強化する、及び/又は水のような溶液中に対する合成されたポリアミドの溶解性を増加させるアルコール基を含んでいてもよい。更に、前駆体は、伸展構造を有することができる。また、上述した前駆体は、モノマ前駆体であるが、前駆体として2量体及び3量体を用いることもできる。
【0039】
本発明は、ヘテロ原子を含む複素環式構造を有する少なくとも1つの前駆体を利用し、このヘテロ原子は、合成された対応するポリアミドにおけるアミン基の窒素原子に対するβ位に配置される。複素環式前駆体は、単独、或いは複素環式前駆体又は芳香族前駆体といった他の前駆体と組み合わせて反応させることができる。前駆体は、水素結合に寄与できる水素含有官能基のようなルイス酸基を含むことができる。そして、この前駆体を用いれば、安定した骨格構造を有する種々の新規アミドポリマを合成することができる。合成された新規アミドポリマは、多くの異なる用途に用いることができる。例えば、アミドポリマは、結合剤と化合することができ、表面を被覆する及び/又は生地材料に織り込むことができる。
【0040】
本発明は、発明の構成及び作用の原理を分かり易く説明するために、詳細を取り入れた特定の実施例に関して記述されているが、これら特定の実施例及び詳細な説明は、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは、当業者にとって明らかである。例えば、そこから合成される前駆体及びポリマは、多くの反応性基及び官能基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】アミド結合及びポリアミド結合を合成するスキームを説明する図である。
【図2】(a),(b)は、アミド結合を介して結合される有機官能基のトランス型構造及びシス型構造と、シス型構造で起こり得る立体障害を説明する図である。
【図3】(a)は、本発明の実施の形態において、芳香環と複素環式構造とを結合するアミド結合を示す図であり、bは、本発明の実施の形態において、延長された構造を有する芳香環と複素環式構造とを結合するアミド結合を示す図である。
【図4A】(a),(b)は、本発明の実施の形態におけるアミド結合のケト類似構造及びアミド結合のエノール類似構造を説明する図である。
【図4B】(c),(d)は、本発明の別の実施の形態におけるアミド結合のβ位に配置される水素含有官能基によって安定化された水素結合であるアミド結合を示す図である。
【図5A】(a),(b)は、本発明の実施の形態におけるアミドポリマの一部を示す図である。
【図5B】(c),(d)は、本発明の実施の形態におけるアミドポリマの一部を示す図である。
【図6A】(a)は、本発明の実施の形態における2次元及び3次元のポリアミド構造を示す図である。
【図6B】(b)は、本発明の実施の形態における2次元及び3次元のポリアミド構造を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適のジカルボン酸前駆体の構造式を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適の複素環式ジアミン酸前駆体の構造式を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態の方法でアミドポリマを合成するために用いる最適の複素環式カルボン酸前駆体の構造式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド結合を形成する窒素原子に対するβ位に配置されるヘテロ原子を有するアミド結合からなる高分子化合物。
【請求項2】
上記アミド結合は、1以上の芳香環及び複素環式構造を結合することを特徴とする請求項1記載の高分子化合物。
【請求項3】
上記ヘテロ原子は、窒素原子であることを特徴とする請求項2記載の高分子化合物。
【請求項4】
上記複素環式構造は、少なくともアミド結合の一部に対してβ位で配置されるアルコール基を含むことを特徴とする請求項2記載の高分子化合物。
【請求項5】
上記芳香環は、少なくともアミド結合の一部に対してβ位で配置される1以上の官能基を含み、該1以上の官能基は、アルコール基、チオール基及びアミノ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項2記載の高分子化合物。
【請求項6】
上記芳香環は、二環式のサブ構造を含むことを特徴とする請求項2記載の高分子化合物。
【請求項7】
結合剤を含むことを特徴とする請求項1記載の高分子化合物。
【請求項8】
上記結合剤は、エポキシ樹脂、ゴム、合成樹脂、ポリウレタン及びケイ素樹脂を含む群から選択される1以上から選択される材料からなることを特徴とする請求項7記載の高分子化合物。
【請求項9】
上記アミド結合は、上記芳香環及び上記複素環式構造との間のパラ位にあることを特徴とする請求項2記載の高分子化合物。
【請求項10】
芳香環と複素環式構造とがアミド結合で結合され、上記複素環式構造は、アミド結合の窒素原子に対するβ位に配置されるヘテロ原子を有することを特徴とする重合体。
【請求項11】
上記芳香環と上記複素環式構造の少なくとも一方のアミド結合に対するパラ位にアルコール基が配置されていることを特徴とする請求項10記載の重合体。
【請求項12】
上記ヘテロ原子は、窒素原子を含むことを特徴とする請求項10記載の重合体。
【請求項13】
上記窒素原子は、上記アミド結合の窒素原子に対するβ位に配置されることを特徴とする請求項12記載の重合体。
【請求項14】
上記芳香環及び上記複素環式構造は、上記アミド結合を介してパラ型構造で結合されることを特徴とする請求項10記載の重合体。
【請求項15】
水酸基を含むことを特徴とする請求項10記載の重合体。
【請求項16】
上記水酸基は、上記芳香環と上記複素環式構造の少なくとも一方のアミド結合に対するβ位に配置されることを特徴とする請求項15記載の重合体。
【請求項17】
a)カルボン酸前駆体及びアミン前駆体を溶液中で反応させて芳香族ポリアミドを合成するステップと、
ここで、上記カルボン酸前駆体は、芳香環と2つの反応性のカルボキシル基とからなり、上記アミン前駆体は、複素環式構造と2つの反応性のアミン基とからなり、上記複素環式構造は、1以上の反応性のアミン基に対するβ位にヘテロ原子を有する。
b)芳香族ポリアミドを分離するステップと
を有する高分子化合物の合成方法。
【請求項18】
上記ヘテロ原子が窒素原子であることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項19】
上記芳香族カルボン酸前駆体は、1以上の反応性カルボキシル基に対してβ位に配置された官能基からなり、上記1以上の官能基は、アルコール基、チオール基及びアミノ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項20】
上記複素環式アミン前駆体は、上記1以上の反応性アミン基に対してβ位に配置された官能基からなり、上記官能基は、アルコール基、チオール基及びアミノ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項21】
上記2つのカルボキシル基は、上記芳香環上において互いにパラ位に配置されることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項22】
上記反応性アミン基は、上記複素環式構造において互いにパラ位に配置されることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項23】
上記芳香族ポリアミドを結合剤中に混合してなることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項24】
上記結合剤は、エポキシ樹脂、ゴム、合成樹脂、ポリウレタン及びケイ素樹脂を含む群から選択されることを特徴とする請求項23記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項25】
上記芳香族ポリアミドが更に生地材料に織り込まれてなることを特徴とする請求項17記載の高分子化合物の合成方法。
【請求項26】
a)第1の前駆体と第2の前駆体とを化合するステップと、
ここで上記第1の前駆体は、芳香環に結合した2つの反応性のカルボキシル基を有し、上記第2の前駆体は、複素環式構造に結合した2つの反応性のアミン基を有する。
b)上記芳香族ポリアミドを分離するステップと
を有する芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項27】
第3の前駆体と上記第1の前駆体と上記第2の前駆体とを化合するステップを有し、上記第3の前駆体は、上記第1の前駆体における芳香環とは異なる芳香環に結合した2つの反応性のカルボキシル基を有することを特徴とする請求項26記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項28】
更に、第3の前駆体と上記第1の前駆体と上記第2の前駆体とを化合するステップを有し、上記第3の前駆体は、上記第2の前駆体における複素環式構造とは異なる複素環式構造に結合した2つの反応性のアミン基とすることを特徴とする請求項26記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項29】
上記第2の前駆体における複素環式構造は、少なくとも1つの上記反応性のアミン基に対するβ位に配置された窒素原子を有することを特徴とする請求項26記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項30】
上記第2の前駆体における複素環式構造は、アルコール基を有することを特徴とする請求項29記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項31】
上記アルコール基は、少なくとも1つの上記反応性のアミン基に対してβ位に配置されることを特徴とする請求項30記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項32】
上記芳香環は、アルコール基を有することを特徴とする請求項26記載の芳香族ポリアミドの合成方法。
【請求項33】
上記アルコール基は、少なくとも1つの上記反応性のカルボキシル基に対してβ位に配置されることを特徴とする請求項32記載の芳香族ポリアミドの合成方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−500275(P2007−500275A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532303(P2006−532303)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/006057
【国際公開番号】WO2005/005486
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505324803)
【Fターム(参考)】