説明

苗移植機

【課題】本発明では、苗の植え付けの際に苗の根土の真下に肥料等を供給して肥料等が直接苗に当たらなくして肥料等による苗への害を防ぎ、植え付けた苗の根が伸びるに従って肥料等が効果を発揮するようにする苗移植機を提供することが課題である。
【解決手段】苗植付け体5を上下して苗を土壌に植え付ける苗植付装置23を設けた苗移植機において、施肥装置39から苗植付け体5内に肥料等を供給する施肥供給路40を設け、苗植付け体5の上昇に伴って施肥装置39を駆動し、苗供給前の苗植付け体5に肥料等を供給する苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜苗を畝に植え付ける苗移植機に関する
【背景技術】
【0002】
野菜苗の苗移植機は、苗の植え付けと同時に施肥装置で肥料や薬剤など(以下、「肥料等」という)を植え付け苗の周辺土壌に供給することが行われる。
例えば、特開2007−43958号公報には、苗植付装置にポット状苗を供給する主供給装置をループ状に移動する複数の供給カップで構成し、この供給カップに苗を供給した後に施肥装置から供給カップに肥料等を供給する苗移植機が記載されている。
【0003】
また、特開2006−14662号公報には、苗植付装置の苗植付体に苗の受け入れ部と薬剤の受け入れ部を設け、苗の受け入れ部と薬剤の受け入れ部にそれぞれ苗と薬剤を供給して、苗植付体を土壌に差し込んだ際に苗の排出部と薬剤の排出部を同時に開いて苗の植え付けと肥料等の土壌への供給を行う苗移植機が記載されている。
【特許文献1】特開2008−99581号公報
【特許文献2】特開2006−14662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記第一の苗移植機は、主供給装置の供給カップに苗と薬剤が供給される際に、薬剤が苗の根土上へ直接撒かれたままで植え付けられるために、肥料等が苗に直接接触することによって苗が枯れたり成長が阻害されたりすることがある。
【0005】
また、前記第二の苗移植機は、植え付けの際に植付苗の側部に肥料等が供給されるために、肥料等の効果が植付苗に働き難いという難点がある。
そこで、本発明では、苗の植え付けの際に苗の根土の真下に肥料等を供給して肥料等が直接苗に当たらなくして肥料等による苗への害を防ぎ、植え付けた苗の根が伸びるに従って肥料等が効果を発揮するようにする苗移植機の施肥装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、苗植付け体5を上下して苗を土壌に植え付ける苗植付装置23を設けた苗移植機において、施肥装置39から苗植付け体5内に肥料等を供給する施肥供給路40を設け、苗植付け体5の上昇に伴って施肥装置39を駆動し、苗供給前の苗植付け体5に肥料等を供給すべく苗移植機の施肥装置を構成する。
【0007】
この構成で、苗植付け体5が昇降するタイミングで、空の苗植付け体5に肥料等が供給され、その後苗が苗植付け体5に供給されるので、ポット状苗の根土の下側に肥料等が供給された状態で土壌に植え付けられるようになる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機で、苗植付け体5の下側に肥料等のみを苗の根土から離して受ける肥料等ガイド5c,5dを設け、苗植付け体5の開閉タイミングで肥料等ガイド5c,5dも開閉すべくした。
【0009】
この構成で、苗植付け体5へ先に供給された肥料等が後で供給される苗の根土から離れた深い位置に埋め込まれる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明では、肥料等が苗の下側に供給された状態で土壌に植え付けられるので、肥料等が直接苗に当たることによる害が無く、苗の根の成長に伴って肥料等が効果を発揮する。
【0011】
また、請求項2に記載の構成で、肥料等が苗の根土から離れた深い位置に供給されるので、根土の外まで伸びた毛根に肥料等が直接接触することが無く薬害をより効果的に防ぐようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の一形態の苗移植機1を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン3を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0013】
苗移植機1は、走行装置と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動する上下動機構4に連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付け体5を備えているが、走行装置は、転動自在に支持した左右一対の前輪6とエンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7とを備えたものとしている。この前輪6及び後輪7を畝溝に案内して、機体の中央部を畝の上方にして走行することができる。
【0014】
エンジン3の後部にはミッションケース8を配置し、そのミッションケース8内にはエンジン3の出力軸が入り込んでおり、エンジン3の出力軸からミッションケース8内の伝動機構にエンジン動力が伝達される構成となっている。ミッションケース8の左右両側部にチェーン伝動ケース9を回動支点9aを中心に上下回動自在に取り付け、このチェーン伝動ケース9の回動支点9aにミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んでチェーン伝動ケース9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力はチェーン伝動ケース9内の伝動機構を介して機体後方側に伸びてその後端側方に突出する車軸10に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0015】
左右水平用油圧式の伸縮作動可能なローリングシリンダ11が機体の左側に設けられ、該左右水平用ローリングシリンダ11のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に天秤杆12が取り付けられている。また、天秤杆12の連結部の右側はロッド13に連結している。
【0016】
機体中央部に設けられた昇降用油圧シリンダ14が、後述する前鎮圧輪15で構成される畝高さ検知センサの検出結果に基づいて、そのピストンロッド14aが機体後方に突出すると、ロッド13や左右水平制御用ローリングシリンダ11も後方に移動し、前記ロッド13とローリングシリンダ11にそれぞれ連結しているアーム16が機体側面視で後方に回動し、これに伴い左右のチェーン伝動ケース9が回動支点9aを中心に下方に回動して左右の後輪7が下降し、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ14のピストンロッド14aが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム16は前方に回動し、これに伴いチェーン伝動ケース9が回動支点9aを中心に上方に回動して左右の後輪7が上昇し、機体が下降する。
【0017】
また、前記左右水平制御用ローリングシリンダ11が伸縮作動すると、左側のチェーン伝動ケース9のみを上下動させて左側の後輪7のみを昇降し、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用ローリングシリンダ11は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成にしている。
【0018】
一対の前輪6は、エンジン3の下方の左右中央位置から左右に延びる前輪支持フレーム17の左右両側部の下方に延びるアーム部分18の下端部側方に固定した車軸19に回転自在に取り付けている。
【0019】
操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム20の後端部に取り付けられている。機体フレーム20は、機体の左右中央に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム20の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部2aとしても良い。
【0020】
苗植付け体5作動用の上下動機構4は、ミッションケース8内から駆動する伝動軸21で伝動する植付伝動ケース22に装着している。植付伝動ケース22内には苗植付け体5の上下動機構4を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【0021】
なお、植付伝動ケース22内の伝動機構には、上下動機構4及び左右一対の苗植付け体5をその昇降動最上位の位置で、又はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、上下動機構4及び苗植付け体5の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付け体5による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0022】
また、苗植付け体5を備える苗植付装置23に苗を供給する苗供給装置24は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数(計32個)の苗収容体となる苗供給カップ25と、該苗供給カップ25を苗植付け体5の上方を通過するように周回移動させる移動機構26と、苗植付け体5の上方位置で苗供給カップ25底部の底蓋25aを開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体5に苗を供給する苗落下供給機構となる開放機構27とを備えている。
【0023】
前記苗供給カップ25は、上下に開口する筒状体と該筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋25aとを有し、互いにループ状に連結されている。前記移動機構26は、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で周回動させる構成となっている。前記開放機構27は、苗供給カップ25の底蓋25aを苗植付け体5の上方位置で開放する構成である。尚、この苗供給装置24は、二つの苗植付け体5に対して苗供給カップ25が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
【0024】
前記苗供給カップ25の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗供給カップ25を連結する連結体28を複数設け、該連結体28の係合部を苗供給カップ25の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗供給カップ25が回動自在に連結する状態として複数の苗供給カップ25を互いに連結した構成としている。即ち、苗供給カップ25と連結体28とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、苗供給カップ25は、直線的に移動する部分でも円弧状に移動する部分でも隣接する苗供給カップ25との間隔が変わらないので、苗供給カップ25から苗植付け体5に苗を供給する個所で苗供給カップ25が苗植付け体5に対して位置ズレが生じにくくなり、苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。
【0025】
移動機構26は、無端チェーンのように互いに連結する苗供給カップ25を左右に設けた巻掛用のスプロケット29,29の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右の巻掛用スプロケット29,29を植付伝動ケース22内から取り出した動力で駆動回転することにより、苗供給カップ25を機体平面視で左回りに周回動させる構成としている。巻掛スプロケット29を駆動回転可能に取付ける各々の回動軸30を植付伝動ケース22から左右に延びる支持フレーム31に回動可能に取付け、植付伝動ケース22上部から上方に突出させた出力軸32から各々の駆動スプロケット33、チェーン34及び従動スプロケット35を介して該従動スプロケット35と一体回転する前記回動軸30に伝動する構成としている。
【0026】
尚、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29とは、ボルト36により結合され、両者が一体回転する構成となっている。従って、苗供給カップ25の周回移動経路には、左右各々の半円状の円弧状部分37と、該円弧状部分37につながる前後各々の直線状部分38とを備える。そして、苗供給カップ25が後側の直線状部分38において右方へ移動して左右の苗植付け体25の上方を通過するようにしており、該直線状部分38に苗を苗植付け体5へ落下供給する左右の落下供給位置が設定されている。苗供給カップ25が周回する左右の回動軸30は、左右の後輪7より機体内側で、且つ、後輪7の車軸10位置より後側に配置している。また、苗植付け体5は、後輪7の車軸10位置より後側に配置している。
【0027】
前記ボルト36は、巻掛スプロケット29に設けたその回転方向に長い円弧状長孔29aを通って従動スプロケット35の螺子孔に下側から螺合している。従って、前記ボルト36を弛めることにより、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29との回転位相を、前記円弧状長孔29aの範囲内で変更して調節できる構成となっている。尚、前記ボルト36は1本だけであるので、従動スプロケット35と巻掛スプロケット29との回転位相の変更を容易に行える。前記円弧状長孔29aによる調節範囲は、巻掛スプロケット29において苗供給カップ25の配列ピッチ分に設定されている。この円弧状長孔29a及びボルト36等により、左右の落下供給位置の変更に合わせて左右各々の苗植付け体5が上動したときに該苗植付け体5へ落下供給する苗を収容する苗供給カップ25が当該落下供給位置に到達するように上下動機構4の作動に対する苗供給カップ25の周回位置を変更する周回タイミング変更機構となる。
【0028】
苗植付装置23は、先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体5と、該苗植付け体5の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに昇降するように苗植付け体5を上下動させる上下動機構4と、くちばし状の苗植付け体5の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体5の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体5を開閉する開閉機構50を備えている。
【0029】
この苗移植機1は、苗植付け体5を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成とするが、本例では、苗植付け体5を左右に設定間隔で二体並べて配備した二条植えの構成としている。
【0030】
二体の苗植付け体5は、植付伝動ケース22の左右両側部に設けた上下動機構4に一体ずつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体5を左側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとで構成して左右に分割し、後述する開閉機構50により左側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとが左右方向に回動して下端部を開く構成となっている。尚、左右の苗植付け体5は、上下動機構4及び開閉機構50により、同期して上下動及び開閉し、圃場に並木状に苗を2条植えする構成となっている。
【0031】
苗ガイド51は、苗植付け体5の上方に設けられ、苗供給装置24から供給された苗を苗植付け体5内に案内する筒状体であり、苗供給装置24から落下供給される苗を適確に苗植付け体5内に供給することができる。
【0032】
苗植付け体5の上下動機構4は、植付伝動ケース22の左右両側部に設けている。具体的には、植付伝動ケース22の左右側方に突出させた回動支点軸58に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体5に連結した上側の昇降リンク52と回動支点軸63に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体5に連結した下側の昇降リンク53と、植付伝動ケース22の側部から突出させた駆動回転する駆動軸54と、該駆動軸54に一体回転するように取付けた駆動アーム55と、該駆動アーム55の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク52とに回動自在に連結する連動アーム56とで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク52,53の各後端部(回動先端部)を連結部材57に回動自在に取付けて連結している。苗植付け体5は、前記連結部材57に取り付けられている。
【0033】
従って、駆動軸54の回転により駆動アーム55が駆動回転すると、昇降リンク52,53が上下動して、左右の苗植付け体5が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体5の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体5の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0034】
また、上側の昇降リンク52の回動支点軸58は、植付伝動ケース22から突出して回転駆動する植付出力軸59の先端部に該出力軸59の中心軸心より偏心させた位置に設けられ、該植付出力軸59の回転によって植付出力軸59の軸芯を中心として偏心量(回動支点軸58と植付出力軸59の軸芯との間隔)を半径として回転し、上側の昇降リンク52の上下動中に回動支点軸58が前後に移動することにより、苗植付け体5をその昇降動中に前後に傾け、苗植付け体5を側面視ループ状の作動軌跡で上下動させる構成となっている。
【0035】
次に、苗植付け体5の開閉機構50について説明する。左側苗植付け体5Lの上部に設けた左側開閉用アーム部60の先端部に開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aの端部を連結し、右側苗植付け体5Rの上部に設けた右側開閉用アーム部62の先端部に開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bの端部を連結し、下側の昇降リンク53の基部を枢着している回動支点軸63に回動自在に取付けた作動アーム64を設け、この作動アーム64の先端部に前記開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aの他端を連結し、機体側に開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bの他端を固定して取り付けている。
【0036】
尚、図4は左側の苗植付装置23を示すものであり、右側の苗植付装置23においては、左側の苗植付装置23と左右対称であるので、左側開閉用アーム部の先端部に開閉用ケーブルのアウターケーブルの端部を連結し、右側開閉用アーム部の先端部に開閉用ケーブルのインナーワイヤの端部を連結した構成となっている。そして、作動アーム64が、上側の昇降リンク52の基部を枢着している回動支点軸58を回転移動させる植付出力軸59と一体回転するよう取付けたカムの作用を受けて、設定したタイミングで前側に回動する構成としている。これにより、駆動軸54の駆動回転により苗植付け体5が上下動して下降下端位置に達すると、カムの作用位置の変化により作動アーム64が前側に回動し、開閉用ケーブル61のアウターケーブル61bに対してインナーワイヤ61aが右側に引かれて左側開閉用アーム部60と右側開閉用アーム部62とが互いに近づくように回動し、右側苗植付け体5Rが右方に回動し、これに連動して左側苗植付け体5Lが左方に回動して、苗植付け体5の下部側が左右に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体5が上昇してカムの作用位置の変化により作動アーム64が苗植付け体5に対して元の位置(後側)に回動して開閉用ケーブル61のインナーワイヤ61aが弛められ、左右に開いた苗植付け体5の下部がスプリング65で閉じる。左側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rとは、スプリング65により苗植付け体5の下部が閉じる側へ回動付勢されているのである。
【0037】
上下動機構4の上下の昇降リンク52,53における各々の回動先端部(後端部)は、上下各々の連結軸66,67を介して連結部材57に連結されている。前記連結部材57は、側面視三角形状のプレート68を左右に備え、この左右のプレート68で上下の昇降リンク52,53の先端部を挟んだ構成となっており、後部には左右のプレート68にまたがる左右方向のボス69を設けている。尚、側面視で前記プレート68の三角形状の各頂点付近に前記連結軸66,67及びボス69を配置しており、上下の連結軸66,67よりボス69を後側に配置しているので、ボス69に対して後述の位置調節軸70をスライドさせるときに上下の連結軸66,67や上下の昇降リンク52,53が邪魔にならないようにしている。尚、左右のプレート68は略正三角形状であり、上下の連結軸66,67部分を上下逆にして連結部材57を取り付けてもいいように構成している。前記ボス69のボス孔は、六角形状(多角形状)になっている。
【0038】
一方、苗植付け体5の基部には、左右方向に延びる六角形状(多角形状)の位置調節軸70を固着して設けている。従って、前記ボス69に位置調節軸70が挿入されて連結部材57に苗植付け体5が支持され、ボス69に対して位置調節軸70を摺動させて左右方向に移動させることにより、苗植付け体5の左右位置を変更できる構成となっている。
【0039】
この苗植付け体5の左右位置の変更は、苗供給装置24の落下供給位置の変更に合わせて該落下供給位置の下方に苗植付け体5が位置するよう苗供給カップ25における配列ピッチ分の距離を変更できるように、位置調節軸70の長さが設定されている。
【0040】
尚、位置調節軸70は、ボス69に設けたセットボルト71によりボス69に対して左右移動しないように固定でき、左右に移動させるときは前記セットボルト71を弛めて移動させる構成となっている。このセットボルト71は、ボス69及び位置調節軸70の後側に設けられ、後側から昇降リンク52,53が邪魔にならずに容易に締付又は弛緩できる。
【0041】
また、位置調節軸70の断面の六角形状(多角形状)の対向する頂点が上下に位置するようにしており、上下方向の曲げに対する断面係数が向上するので、この位置調節軸70で苗植付け体5を片持ち支持するのに必要な強度を得ることができる。また、位置調節軸70の適宜位置の外周には苗植付け体5の左右位置の目安となる溝72を設け、該溝72をボス69の端に揃えることにより狭い植付条間時と広い植付条間時との苗植付け体5の左右位置に調節できるようにしており、苗植付け体5の位置変更を容易に行える構成としている。
【0042】
そして、上下動機構4により苗植付け体5の上下動が一周期動作する間に、苗供給カップ25は各々における配列ピッチ分(一列状の苗供給カップ25の2個分)周回移動する。また、苗供給装置24の落下供給位置で苗供給カップ25の底蓋25aが開くタイミングは、苗植付け体5が苗供給カップ25の直下まで上昇したときとなるように設定している。これにより、苗供給カップ25が二つの苗植付け体5の上方を直列的に通過しながら二つの苗植付け体5に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、二つの苗植付け体5の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗供給カップ25が生じないよう余すことなく二つの苗植付け体5に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、二つの苗植付け体5に対して確実に苗を供給できる。
【0043】
苗植付け体5の苗ガイド51内に通じる肥料等パイプ(施肥供給路)40をステップ80上に設けた肥料等繰出し装置41に連結し、施肥装置39の肥料等を苗植付け体5内に供給する。ステップ80上に設ける施肥装置39の肥料等繰出し装置41のワンウエイクラッチ軸43は前記作動アーム64が前側に回動するタイミングで回すように作用するクラッチアーム44で回されて、一回分の肥料等を苗植付け体5内に供給する。その肥料等供給タイミングは、苗植付け体5の左側苗植付け体5Lと右側苗植付け体5Rが閉じて上昇中で、苗が苗植付け体5に供給される前で、肥料等が苗の根土の下側となる。なお、施肥装置39の肥料等タンク42は、座席79の右横前側のステップ80上にあるので、作業者が残量を確認して供給が楽に行える。
【0044】
この苗移植機1には鎮圧輪15,73が前後にあり、一対の前鎮圧輪15は苗植え付け前の畝面を均すだけでなく、苗植え付け高さの調節用のセンサ輪を兼ねており、該前鎮圧輪15の接地位置に応じてミッションケース8内の図示しない油圧バルブを作動制御して昇降用油圧シリンダ14を作動させて機体の高さを調整する機能も備えている。また、後鎮圧輪73は、植え付けた苗の周辺に覆土しながら苗の周辺の土壌を鎮圧する。尚、前後の鎮圧輪15,73は、機体旋回時等にレバー74の操作により上側に収納することができる。
【0045】
前記レバー74と一体で上下に回動するアーム75の回動先端部に左右方向に延びる左右支持軸76を設け、該左右支持軸76に上下に貫通するように設けた上下支持軸77の下端部に後鎮圧輪73を回転自在に設けている。尚、前記上下支持軸77は、植付条ごとに設けられ、左右に2本設けられている。また、左右支持軸76は、上下支持軸77が貫通する左右各々の可動部分と、この左右の可動部分の間で前記アーム75に連結される固定部分とを備え、前記可動部分が前記固定部分に対して該軸76方向(左右方向)にスライド移動する構成となっている。従って、左右の苗植付け体5の左右位置の変更に合わせて、可動部分をスライド移動させて後鎮圧輪73を左右移動させることができる。尚、後鎮圧輪73を左右移動に合わせて、前鎮圧輪15も左右移動する構成としてもよい。
【0046】
ボンネット78の上方には、苗供給装置24側に向くべく後向きの座席79を設け、苗供給装置24との間に足を乗せる平面状のステップ80を設けている。前記座席79は、ボンネット78の左右一方側(右側)を通って上方に延びる支持フレーム81を介して機体に支持されている。
【0047】
前記ステップ80は、機体平面視で座席79と苗供給装置24との間に配置されるメインステップ82と、座席79及びボンネット78の左右両側に設けたサブステップ83とで構成される。前記サブステップ83は、機体の前端部からメインステップ82近くまで前後に延設され、前部83aが後部83bより一段低い位置に構成され、作業者が機体の前端部から乗降することができるように構成されている。このサブステップ83の上段と
なる後部83bの下方には車輪(後輪)7を昇降させるための昇降機構を配置することができ、機体のスペースを有効利用して機体のコンパクト化を図っている。
【0048】
また、車輪(後輪)7のトレッド変更に応じて、サブステップ83の後部の下方に上下に回動する走行伝動ケースとなるチェーン伝動ケース9を配置することができる。また、メインステップ82の前端部には上方に傾斜して立ち上がる立ち上がり部82aを設けており、該立ち上がり部82aにより座席79に座る作業者の足が苗植付装置23の上下動機構4に接触しないように防護している。また、立ち上がり部82aを苗供給装置24の下方に位置させることにより、機体の前後長を短縮できる。また、メインステップ82は、立ち上がり部82aを備えることにより、強度が向上する。
【0049】
尚、立ち上がり部82aには、左右の後輪7と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を入り切り操作する乗車用主クラッチレバー84と、左右の後輪7の駆動を断つことができる左右各々のサイドクラッチペダル85とを設けており、座席79に座った作業者が機体の停止や機体の進行方向の修正を行うことができる。
【0050】
尚、上述ではサブステップ83を左右両側に設ける構成としたが、左右何れか一方のみにサブステップ83を設ける構成としてもよく、このときは座席79の支持フレーム81がない側(左側)にサブステップ83を設ける構成とすれば、前記支持フレーム81が邪魔にならずにサブステップ83により容易に乗降できる。
【0051】
左右の前輪6の間となる機体の前端部には畝Uの上面に接地して該畝Uの終端を検出する畝終端センサ86を設け、該畝終端センサ86は機体の前進により畝のないところに到達して畝上面を感知しなくなることにより畝の終端に到達したことを検出する構成となっている。この畝終端センサ86による畝の終端の検出に基づいて、主クラッチを自動的に切って左右の後輪7の駆動と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を停止し、機体を停止させると共に、警報(例えばブザー等の警告音)を出して作業者に告知する。
【0052】
座席79に座る作業者は、機体の進行方向に対して後ろ向きとなり、苗補給作業に集中しているため機体の前方を確認しにくく、機体が畝の終端に達したことに気づかず、周囲の構造物への衝突等の事故を発生させるおそれがあるが、前記畝終端センサ86により畝の終端で機体を自動停止すると共に警報で畝の終端に達したことを告知するため、安全に作業が行え、また機体の前方の状況及び畝の終端の位置を気にせずに苗供給装置24への苗補給作業を集中して行え、植付作業能率が向上する。
【0053】
前記畝終端センサ86は、機体の左右中央(左右の前後車輪6,7のトレッド)に対して右寄りの位置に配置され、ローリングシリンダ11による左側の後輪7の上下動に伴う上下動が小さいので、適確に且つ安定して畝の上面を検出することができる。また、畝終端センサ86は、機体の対地高さを制御するための前鎮圧輪15と苗植付け体5の苗植付位置とを避けた左右位置(右側の前鎮圧輪15及び苗植付位置より左側)に設けているので、苗植付位置の土壌を荒らさず、植付精度を低下させないようにしている。
【0054】
また、操縦ハンドル2の近くには、左右の後輪7と苗植付装置23並びに苗供給装置24の駆動を手動で入り切りする主クラッチレバー87と、苗植付装置28並びに苗供給装置32の駆動のみを手動で入り切りする植付操作レバー88とを備えている。尚、前記植付操作レバー88により、昇降用油圧シリンダ14を作動させて手動で機体を昇降操作することもできる。そして、この植付操作レバー88の操作位置を検出するセンサ(検出手段)を設け、該植付操作レバー88により苗植付装置23並びに苗供給装置24が駆動状態に操作されているときだけ、前述の畝終端センサ86による機体の自動停止制御及び警報が作動する構成としている。
【0055】
これにより、植付作業時のみ機体の自動停止制御及び警報を作動させることができ、移動走行時や畝終端での機体旋回時に、畝終端センサ86が畝上面を検出しないことにより不必要に機体が停止するようなことを防止でき、操作性が向上する。尚、上述の植付操作レバー88による機体の自動停止制御及び警報の作動の入り切りに代えてあるいは併用して、座席79に作業者が着座したことを検出する着座センサを設け、座席79に作業者が着座しているときだけ、機体の自動停止制御及び警報が作動する構成としてもよい。また、畝終端センサ56による畝終端の検出で、警報が先に作動し、その所定時間後(数秒後)に機体が自動停止する構成とすることができる。尚、機体の自動停止は、エンジン3を停止させることにより行ってもよい。
【0056】
座席79の左右側方には、苗載台89を配置している。該苗載台89は、載置する苗収容枠(苗箱、苗トレイ又は苗コンテナ等)の四角形状の底面に対して一部を欠如し、その欠如した部分の外縁が苗供給装置24の苗供給カップ25の周回移動軌跡の円弧状部分37に沿うような形状となっており、苗収容枠を載置していないときは苗供給カップ25への苗補給の邪魔にならないようにしている。また、苗載台89は、苗供給装置24の一部の苗供給カップ25の上方に重複するが、移動リンク機構90により機体側方に移動できる構成としたので、座席79に座る作業者が苗補給作業を行い易い位置に任意に移動でき、機体前端部からステップ80を介して乗降するときにはステップ80(サブステップ83)より左右方向外側へ移動させて、乗降の邪魔にならないようにでき、トラックへの積込時や倉庫への格納時等には左右方向外側へ移動させて、機体の左右幅を縮小することができる。
【0057】
尚、苗供給装置24の苗供給カップ25の上方に重複しない位置まで苗載台89を左右方向外側へ移動できる構成としてもよい。また、移動リンク機構90は、各リンクのリンク長を異ならせた構成となっており、苗供給装置24への苗補給のために苗載台89を左右方向内側へ移動させたときは該苗載台89を斜め後内向きに向ける構成となっている。これにより、苗補給作業の容易化が図れる。
【0058】
図6は、施肥装置39を苗植付け体5の上方に設けた実施例で、植付伝動ケース22からチェーン46を介してタイミング軸47を回転し、肥料等タンク45の繰り出し部48を間欠的に開閉し、手動で苗を供給する前の苗植付け体5へ肥料等を供給する。
【0059】
苗植付け体5の下部には、前後に開く苗受け5a,5bと該苗受け5a,5bの先端に取り付けた筒状の肥料等受け5c,5dを設けている。苗受け5a,5bは上から下に向けて径を小さくし、肥料等受け5c,5dは先端を尖らせた筒状体で、肥料等のみを受け入れる。
【0060】
従って、苗植付け体5に投入される肥料等は肥料等受け5c,5dに溜まり、苗植付け体5に投入される苗は苗受け5a,5bに留まるので、畝Uに苗植付け体5を差し込んで苗を植えると、肥料等が苗の根土から離れた深い位置に供給される状態になる。
【0061】
なお、肥料等受け5c,5dの上部内径は、肥料等のみが通過する程度の径とするが、図7に示すごとく、苗受け5a,5bの底部に苗を受ける網状体49を設けた構成でもよい。また、肥料等受け5c,5dは、苗受け5a,5bに対する取付位置を変更したり別の長さのものと交換したりして苗と肥料等の間隔を変更出来る。
【0062】
尚、この実施例における苗受け5a,5bと肥料等受け5c,5dでの苗植付け体5の構成は、前記の第一実施例においても採用可能である。
図8は、肥料等タンク91を苗供給装置24の右側上方に設けた実施例で、苗供給装置24の移動機構26を駆動する駆動軸98からチェーン97で伝動軸92を回転し繰り出し部93を間欠的に開閉し、作業者の前に移動する空の苗供給カップ25に肥料等を供給し、作業者が肥料等の入った苗供給カップ25に苗を供給する。苗供給カップ25が周回して苗供給カップ25の底蓋25aを受けるガイドプレート99が切欠かれた二箇所で底蓋25aが開き、肥料等と苗が苗植付け体5の中へ落下する。
【0063】
苗供給カップ25の底蓋25aの内底面25bは、図10に示すごとく、中央が尖った円錐形で底蓋25aに溜まる肥料等が周縁部に寄ってくるようにしている。また、ガイドプレート99の切欠き部には、図11に示す一段低いサブガイドプレート99aを設けて、切欠き部に移動してきた苗供給カップ25の底蓋25aをまず少し開かせて肥料等を先に落とし、続いて苗を落とすようにしている。
【0064】
この実施例では、苗供給装置24の前後で苗供給カップ25の下側に前苗受け5aの内部に通じる前肥料等受け94bに通じる前肥料等シュート94aと、後苗受け5bの外側に設けた後肥料等受け95bに通じる後肥料等シュート95aを設けている。苗供給カップ25に肥料等を供給した後で苗を苗供給カップ25に供給するようにすることで、肥料等を苗の根土の下側に供給した状態で畝Uに苗を植え付けるようになる。なお、前肥料等シュート94aを使うか後肥料等シュート95bを使うかは、適宜に選択可能にする。
【0065】
図12は、苗植付け体5の外周面に付着する泥土を掻き落とすスクレパ100を設けた実施例で、機体フレーム20の斜め後方へ立ち上がる部分の下側に、枢支軸103で上下に回動するスクレパレバー102を設け、このスクレパレバー102の回動で上下に回動し先端にゴム板からなるスクレパ100を取り付けたスクレパアーム101を苗植付け体5に向けて設けている。スクレパレバー102は引っ張りばね105で上方へ引っ張られ、スクレパレバー102は機体フレーム20に設けるストッパ104で上方への回りすぎを規制されている。従って、作業者は必要に応じてスクレパレバー102を押し下げるとスクレパ100が苗植付け体5の外周面に当接する位置になって、苗植付け体5の上下動で外周面に付着する泥土が掻き落とされる。
【0066】
なお、このスクレパ91は、植付操作レバー88の植え付け部上昇操作即ち機体旋回時に連動して苗植付け体5に当接するようにしても良い。
なお、肥料や薬剤を散布する装置の全てを総称して、施肥装置と謂う名称を用いて説明した。従って、施肥装置とは、肥料を散布する施肥装置も薬剤を散布する薬剤散布装置も含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】苗移植機の左側面図である。
【図2】苗移植機の平面図である。
【図3】巻掛スプロケットとその周辺を示す図である。(a:平面図、b:斜視図)
【図4】苗植付装置を示す斜視図である。
【図5】苗移植機の右側面図である。
【図6】別実施例示す苗植付装置の左側面図である。
【図7】同実施例の変形例を示す一部の側面図である。
【図8】さらに別実施例示す苗植付装置の左側面図である。
【図9】同実施例の一部拡大背面図である。
【図10】同実施例の一部拡大側面図である。
【図11】同実施例の一部拡大正面図である。
【図12】さらに別実施例示す苗植付装置の左側面図である。
【符号の説明】
【0068】
5 苗植付け体
5c,5d 肥料等ガイド
23 苗植付装置
39 施肥装置
40 施肥供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付け体(5)を上下して苗を土壌に植え付ける苗植付装置(23)を設けた苗移植機において、施肥装置(39)から苗植付け体(5)内に肥料等を供給する施肥供給路(40)を設け、苗植付け体(5)の上昇に伴って施肥装置(39)を駆動し、苗供給前の苗植付け体(5)に肥料等を供給することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗植付け体(5)の下側に肥料等のみを苗の根土から離して受ける肥料等ガイド(5c),(5d)を設け、苗植付け体(5)の開閉タイミングで肥料等ガイド(5c),(5d)も開閉すべくした請求項1に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−46041(P2010−46041A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215582(P2008−215582)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】