説明

苗移植機

【課題】補給用のマット苗を収容する多段の苗載台を直列展開可能に構成した予備苗枠を備えた苗移植機において、予備苗枠の展開したまま機体が走行することによる不測の事態を回避することが可能な苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、走行車体2と、移植部と、多段構成の苗載台を備えた予備苗枠38とを備えて構成され、この苗載台を移動リンク部材によって多段の収納位置から前後に直列する展開位置までの範囲で開閉可能に支持して構成され、上記苗載台が収納位置を外れて展開過程にあることを検知する苗枠状態検知部材と、機体走行を検知する走行検知部材と、この走行検知部材による走行検知の際に苗枠状態検知部材による展開過程の検知を条件として報知する報知部材とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補給用のマット苗を載せる多段収納式の予備苗枠の苗載台を直列展開可能に構成した苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、補給用のマット苗を載せる苗載台を多段に構成した予備苗枠を備えた苗移植機が知られている。この予備苗枠は、上下3段の苗載台を機体前部の両側部に備えて構成され、機上の作業スペースを損なうことなく、段数分の苗箱入りの補給用のマット苗を収容することができ、また、複数段の苗載台を前後方向に直列する位置まで展開するように移動リンク部材で可動支持することにより、圃場端における苗の積み込みの際に、畦位置まで苗載台を直列状に延ばすことにより、畦位置から苗を容易に搬入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記予備苗枠は、展開状態のまま機体を走行させると、予備苗枠に載置した苗が機体の振動や傾斜によって圃場に落下してしまい、落下した苗を拾わねばならず、作業者の労力増大を招くこととなる。また、展開状態のまま圃場端で旋回しようとすると、予備苗枠の前後端部が圃場端の土手や壁にぶつかり、破損してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、多段収容の苗載台を直列展開可能に構成した予備苗枠を備えた苗移植機において、予備苗枠を直列展開したまま機体走行することによる不測の事態を回避することが可能な苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、エンジン(20)とハンドル(34)を備え、前輪及び後輪(10,11)によって圃場走行可能に支持する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部で圃場に苗を植え付ける移植部(4)と、前記走行車体(2)の前部に苗を収納する多段構成の苗載台(38a,38b,38c)をリンク機構(39a,39b,39c)に取り付けて構成した予備苗枠(38)を設け、該予備苗枠(38)を多段の収納位置から前後に直列する展開位置までの範囲で開閉させる切替装置(300)を設けた苗移植機において、前記予備苗枠(38)の作業状態が収納位置か展開位置かを検知する苗枠状態検知部材(39s)と、機体が走行状態であるか否かを検知する走行検知部材(2s)と、該走行検知部材(2s)による走行検知の際に苗枠状態検知部材(39s)による展開過程の検知を条件として報知する報知部材(75)とを設けたことを特徴とする。
【0007】
上記苗枠状態検知部材で検知した予備苗枠の展開検知に合わせて機体走行時に苗載台の展開を報知する構成としたことにより、予備苗枠の苗載台の収納忘れや、不測の操作で予備苗枠が展開移行してしまうことを防止できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記切替装置(300)は、前記リンク機構(39a,39b,39c)の回動位置を検知する苗枠状態検知部材(39s)と、切替アクチュエータ(300m)によって回転されて前記リンク機構(39a,39b,39c)を回動させる回動部材(300g)で構成し、該切替装置(300)を予備苗枠(38)に設けたことを特徴とする。
上記切替装置の操作に対応して切替アクチュエータが回動部材を回動させて予備苗枠の苗載台を「展開」と「収納」の位置に切り替えることにより、作業者が手作業で切り替えを行う必要がなく、作業能率が向上する。
また、予備苗枠操作部材の操作によりアクチュエータの作動を任意の位置で停止させることができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の構成において、前記走行検知部材(2s)を、後輪(11)の回転を検知する後輪回転検知部材(11s)で構成したことを特徴とする。
上記苗枠状態検知部材が予備苗枠の作業状態を「展開状態」と検知した状態で、後輪回転センサが後輪の回転を検知すると報知部材が作動する構成としたことにより、積載した苗が前後に動きやすい「展開状態」のままで機体を発進させても、作業者にすぐに気付かせることができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記走行車体(2)の走行停止を踏込操作によって維持する停止ペダル(33)と、該停止ペダル(33)の踏込操作を検知するペダル操作検知部材(33s)を設け、該ペダル操作検知部材(33s)が停止ペダル(33)の踏み込みを検知すると前記アクチュエータ(300m)を駆動操作可能にする構成としたことを特徴とする。
上記機体の走行を停止させる停止ペダルが操作されないと、予備苗枠の切替装置の操作を受け付けない構成としたことにより、走行中に切替装置を操作して、予備苗枠の作業状態が切り替わって機体の前後バランスが変化してしまうことを防止できる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記走行車体(2)のハンドル(34)には、一対の予備苗枠操作部材(81,81)を互いに離間させて配置するとともに、該予備苗枠操作部材(81,81)を同時に操作すると前記アクチュエータ(300m)を駆動操作可能に構成したことを特徴とする。
上記ハンドルに一対の予備苗枠操作部材を設け、一対の予備苗枠操作部材が両方操作されていないと予備苗枠操作部材を操作しても予備苗枠のアクチュエータを作動させない構成としたことにより、作業者は予備苗枠から離れた位置で予備苗枠を操作することができる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構成において、前記予備苗枠(38)が収納位置から展開位置に切り替わり始めたことを苗枠状態検知部材(39s)が検知すると、前記アクチュエータ(300m)の駆動に連動してエンジン(20)の回転数を増加させるとともに、電源部(22)に充電制御することを特徴とする。
予備苗枠が収納状態から展開状態に切り替わり始めるとエンジンの回転数が増加して発電量が増え、この電気をバッテリーに貯めておくことにより、切替アクチュエータが電力不足で作動しなくなることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明により、苗枠状態検知部材で検知した予備苗枠の作業状態が展開状態であると、機体の走行開始時に苗載台が展開状態のままであることを報知する構成としたことにより、予備苗枠の苗載台の収納忘れや、不測の操作で予備苗枠が展開状態に切り替わり始めることを防止できるので、予備苗枠の苗載台を圃場端の土手や壁にぶつけて破損させることが防止され、耐久性が向上する。
また、積載した苗が予備苗枠上から落下することを防止できるので、落下した苗を作業者が拾う必要がなく、作業者の労力が軽減される。
【0014】
請求項2の発明により、請求項1の効果に加え、予備苗枠操作部材の操作に応じて切替アクチュエータが回動部材を回動させて予備苗枠の苗載台を「展開」と「収納」の位置に切り替えることにより、作業者が手作業で切り替えを行う必要がなく、作業能率が向上する。
また、予備苗枠操作部材の操作により切替アクチュエータの作動を任意の位置で停止させることができるので、苗載台を「展開」と「収納」の途中位置で停止させ、苗載台の端部が圃場端にぶつからない程度に展開させることにより、予備苗枠の破損を防止しつつ苗の積み込みを容易にすることができる。
そして、苗枠状態検知部材をリンク機構に設けたことにより、リンク機構の回動位置から予備苗枠の展開程度を判断することができるので、苗載台の展開行程に沿って位置検知スイッチ等を設ける必要が無くなり、部品点数が削減される。
【0015】
請求項3の発明により、請求項1または請求項2の効果に加え、苗枠状態検知部材が予備苗枠の作業状態を「展開状態」と検知した状態で、後輪回転センサが後輪の回転を検知すると報知部材が作動する構成としたことにより、積載した苗が前後に動きやすい「展開状態」のままで機体を走行させても作業者にすぐに気付かせることができるので、予備苗枠から苗が落下することが防止され、苗を拾う作業が省略される。
また、圃場端で苗を補充搬入したままの「展開状態」で旋回動作を行なうことを防止できるので、圃場端の土手や壁に予備苗枠がぶつかって破損することが防止され、予備苗枠の耐久性が向上する。
【0016】
請求項4の発明により、請求項1乃至請求項3のいずれか1項の効果に加え、機体の走行を停止させる停止ペダルが操作されないと予備苗枠の切替装置の操作を受け付けない構成としたことにより、走行中に切替装置を操作して、予備苗枠の作業状態が切り替わって機体の前後バランスが変化してしまうことを防止できるので、機体の直進性が確保され、苗の植付精度が向上する。
また、圃場端近くで予備苗枠が「展開状態」に切り替えられ、予備苗枠の先端が圃場端の土手や壁に接触して破損することを防止できるので、予備苗枠の耐久性が向上する。
【0017】
請求項5の発明により、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の効果に加え、ハンドルに2つの予備苗枠操作部材を設け、2つの予備苗枠操作部材が両方操作されると予備苗枠の切替アクチュエータを作動させて展開と収納の位置を切り替える構成としたことにより、作業者は予備苗枠から離れてハンドル操作位置で操作する必要があるので、作業者が苗載台に接触することが防止され、安全性が向上する。
また、予備苗枠操作部材のどちらか一方の操作をやめれば切替アクチュエータを停止させることができるので、予備苗枠やその駆動部に問題が生じた場合、すぐに停止させることができる。
【0018】
請求項6の発明により、請求項1乃至請求項5のいずれか1項の効果に加え、予備苗枠が「収納状態」から「展開状態」に切り替わるまでの間エンジン回転数を増加させる制御を行ない、このエンジンの駆動力を受けて充電されるバッテリーによる電源部に苗枠状態検知部材が展開または収納の切替え動作の範囲で充電するようにエンジンの回転数を増加させる構成としたことにより、切替アクチュエータが電気を消費してもバッテリーに逐次電気が溜められるので、バッテリーの蓄電量低下による他の電気機器(前照灯、施肥ブロアなど)の動作異常が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の予備苗枠の側面図
【図2】図1の予備苗枠の平面図
【図3】図1の予備苗枠の苗載台収納時の側面図
【図4】図1の予備苗枠の苗載台展開時の側面図
【図5】図4の苗載台部分の平面図
【図6】図1の予備苗枠の苗載台収納時の機体前方から見た正面図
【図7】図1の予備苗枠他の実施例の苗載台の収納時の側面図(a)と機体前方から見た正面図(b)
【図8】本発明の実施例の電動式苗載台を設けた予備苗枠の部分的側面図
【図9】本発明の実施例の電動式苗載台の側面図
【図10】操作部材の構成例を表す見取図
【図11】予備苗枠の苗載台の機体前部からの正面図
【図12】予備苗枠の苗載台の側面図
【図13】マーカ連動制御のシステム構成のブロック図
【図14】制御部による制御のフローチャート
【図15】苗載台の斜視図
【図16】大容量予備苗枠を備えた移植機の要部斜視図
【図17】電動制御システムブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本発明の適用対象となる苗移植機およびその予備苗枠について説明する。
図1及び図2は苗移植機の側面図と平面図である。この苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して移植部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレーターが苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0021】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0022】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって移植部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0023】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0024】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に移植部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として移植部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、移植部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
移植部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する供給台51、苗取出口51a、…に供給された苗を植込杆52aによって圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ184等を備えている。移植部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて移植部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0026】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0027】
移植部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、供給台51は移植部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0028】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38,38が鉛直方向に伸びた回動軸49a(図4,図5参照)を中心に機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0029】
一方の機体側面にある第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを上下三段に配置した場合の側面図を図3に示し、第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを同一平面に配置した場合の側面図を図4に示し、第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを同一平面に配置した場合の平面図を図5に示し、第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを機体前方から見た正面図を図6に示す。
【0030】
予備苗枠38はそれぞれ傾斜支持部材によるリンク機構で上下三段に構成され、最上段の第1苗載台38a、第2苗載台38b及び第3苗載台38cからなっている。最上段の第1苗載台38aの中央部側面と第2苗載台38bの最前部側面がそれぞれ回動軸38a1,38b1の回りに回動自在に第1移動リンク部材39aの両端で支持され、また最上段の第1苗載台38aの最後部側面と最下段の苗載台38cの最前部側面が第2移動リンク部材39bの両端でそれぞれ回動軸38a2,38c1の回りに回動自在に支持され、また第2苗載台38bの中央部側面が回動軸38b2の回りに回動自在に前記第2移動リンク部材39bの中央部で支持され、さらに第2苗載台38bの最後部側面と最下段の第3苗載台38cの中央部側面とがそれぞれ回動軸38b3,38c2の回りに回動自在に第3移動リンク部材39cの両端で支持されている。
【0031】
第2苗載台38bは機体に固定されており、第2苗載台38bを中心とし、その上下に第1苗載台38aと第3苗載台38cが配置され、全体として上下三段に配置される状態と第2苗載台38bを中心とし、その前後に第1苗載台38aと第3苗載台38cがそれぞれ配置され、全体として第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cをほぼ同一平面上に配置替えすることができる。すなわち、第2移動リンク部材39bは、その中央部が第2苗載台38bの中央部の両側に設けられた回動支点により支持されているので、第2移動リンク部材39bを回動させて、第1、第3苗載台38a,38cを第2苗載台38bの前後に移動させて、第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cを同一平面上に配置することで広い苗トレイの載置平面が得られる。
【0032】
また、第1移動リンク部材39aの第2苗載台38bの前端部との連結部側、第2移動リンク部材39bの第1苗載台38aの後端部側の連結部側、第2移動リンク部材39bの第3苗載台38cの前端部側の連結部側及び第3移動リンク部材39cの第2苗載台38bの後端部側の連結部側は、それぞれ第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cの長手方向に対して直角に折れ曲がって各リンク部材39a,39b,39cに設けられた短い第1,第2,第3補助リンク45a,45b,45cを介して第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cに回動自在に連結している。また、第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cの左右側面には苗トレイの落下を防ぐ第1,第2,第3仕切板48a,48b,48cを配置している。
【0033】
さらに第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置するとき(図4)には、最前部に位置する第1苗載台38aの前辺と最後部に位置する第3苗載台38cの後辺にそれぞれの平面より上方向に立ち上った第1ストッパ47a、第6ストッパ47fが立ち上がっているので、第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置するときに、第1,第2,第3苗載台38a,38b,38c上に載置された苗トレイが滑り落ちることがない。
【0034】
また第1移動リンク部材39aの第2苗載台38bの前端部との連結部にある短い第1補助リンク45aと、第2移動リンク部材39bの第1苗載台38aの後端部との連結部にある短い第2補助リンク45bと、第2移動リンク部材39bの第3苗載台38cの前端部との連結部にある短い第3補助リンク45cと、第3移動リンク部材39cの第3苗載台38cの後端部との連結部にある短い第4補助リンク45dにはそれぞれ第3、第2、第4、第5ストッパ47c,47b,47d,47eが設けられている。
【0035】
そして第3、第2、第4、第5ストッパ47c,47b,47d,47eは、それぞれ左右一対の第1、第2、第3補助リンク45a,45b,45c,45dと一体に固着されており、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cが上下三段配置されるときに第1、第2、第3、第4、第5、第6ストッパ47a,47b,47c,47d,47e,47fは図3に示すように全て立ち上がっているので、苗トレイが各ストッパ47a,47b,47c,47d,47e,47fからずり落ちることを防ぐ。
【0036】
また、図4に示すように第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを同一平面上に並べて配置するときには第2、第5ストッパ47b、47eが第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cの上平面より下方に移動し、第1、第6ストッパ47a、47fが立ち上がっているので、苗トレイは第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを同一平面上に障害物が無い状態で載置でき、また第1、第6ストッパ47a、47fで滑り落ちることがない。
【0037】
また、図6に示すように第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cは、機体への支持部材49の内側に配置されているので、上下三段の苗載台38a,38b,38cを同一平面上の一段に配置替えする場合に第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cが回動する過程で操縦者などが稼動する第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cなどに挟み込まれるおそれがない。
【0038】
しかも、これらの第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cを回動させる操作をワンタッチで行うことで、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを、通常の上下三段に配置される状態と同一平面状に一段に配置替えすることができる。
【0039】
この第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cの段数の変更は、作業(圃場条件含む)形態により切り替える。例えば、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを苗トレイなどの補給時には同一平面上に並べ、また苗植付作業時には上下三段とする。また圃場条件が、例えば高畦などで第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを機体の外方又は前方に拡げられないときは上下複数段とし、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを機体の外方又は前方に展開するのに支障がないときには第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを展開して一段とする。
【0040】
また、上下三段からなる第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cを前後に一段の平面状にする切り換えは、苗トレイを載せたまま行うことができる。
【0041】
また、3つの第1、第2、第3苗載台38a,38b,38cに代えて2つの第1、第2苗載台38a,38bを用いて上下二段又は同一平面上に並べた構成を採用してもよい。
【0042】
苗載台38a,38b,38cを用いる場合と苗載台38a,38bを用いる場合にも、上下三段又は上下二段又は同一平面上に並べ替えるときには第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39c又は第1、第2移動リンク部材39a,39bは第1苗載台38aを機体前方に配置する構成、又は第1苗載台38aを機体後方に配置する構成のいずれでも良い。
【0043】
また第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bを用いる場合に上下三段又は上下二段又は同一平面上に並べ替えるときには第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39c又は第1、第2移動リンク部材39a,39bの作動を電動モータ(図示せず)で行ってもよい。このときには電動モータの作動スイッチはオペレーター側とオペレーターとは苗移植機周りの別の場所に居る補助者側の2個所に設けると作業性がよい。
【0044】
上記第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bは支持部材49の回動軸49a(図4,図5)の回りに鉛直方向の仮想回転軸を中心に回転させて機体内側、外側どちらでも鉛直方向に回転可能な構成とすることができる。こうして第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bを畦際に近づけることができる。
【0045】
また、図7(a)の側面図、図7(b)の正面図に示すように、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bを用いる場合に、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bの回動ロック板73aを回動させる回動ロックレバー73bを第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は第1、第2苗載台38a,38bの回動方向と合わせ前後方向に回動操作することができる。
【0046】
回動ロックレバー73bの操作により、第1、第2、第3苗載台38a,38b,38c又は苗載台38a,38bの回動と同時に回動ロック板73aを操作することができるので、切替操作を何度も行う必要が無く、作業能率が向上する。このとき苗枠回動ロックレバー73bを苗載台38a〜38c又は苗載台38a,38bの支持部材49の回動ロックピン73cの位置に設けた。このとき苗枠回動ロックレバー73bのロック状態で前側(畦側)に伸びる構成とすることで、前記回動ロックレバー73bを畦側からも田植機側でも行える。なお、支持部材49と苗載台38bを補強板73eで接続している。
【0047】
回動ロック板73aは、移動リンク39bの中央で該リンク39bと一体で回動する中間軸38b1と一体回動する。回動ロックレバー73bは、支持部材49に前後回動自在に取り付けられています。回動ロックピン73cは、支持部材49に進退自在に取り付けられ、ケーブル73dを介して回動ロックレバー73bに連結されている。回動ロック板73aには、回動ロックピン73cが入る孔がある。苗載台38a,38b,38cが上下複数段に配置された状態で回動ロックピン73cが回動ロック板73aの前記孔に入って回動ロック板73aの回動を規制する。
【0048】
(電動式苗載台)
上で述べたように、予備苗枠38において、そのリンク機構を電動モータで作動させることも可能である。このときの予備苗枠38の構成例を図8,図9に示す。ここでは、予備の苗を積載する複数の予備苗載部材である第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを上下三段に並べた「収納状態」と、第1苗載台38a,第2苗載台38b,第3苗載台38cを前後一列・同一平面に並べた「展開状態」とを重ねて図示している。
【0049】
第1,第2,第3苗載台38a,38b,38cの回動軸ax1,ax2は、走行車体2の前側に設けられた支持フレーム301上部の取付支柱301p1,301p2によりそれぞれ支持されている。そしてこの電動式の予備苗枠38には、正転/逆転して駆動力を発生する切替アクチュエータとしての切替モータ300mと、切替モータ300mから駆動力が与えられると回動軸ax1周りに第2移動リンク部材39bを回動させる回動部材としての回動ギア300gとからなる切替装置300が設けられている。
【0050】
作業者が切替モータ300mを作動させると、切替モータ300mの駆動力が回動ギア300gに伝わって第2移動リンク部材39bが回動軸ax1周りに回動し、これにともなって、予備苗枠38の「展開状態」と「収納状態」とが自動的に切り替わる。切替装置300の切替モータ300mを作動させると回動ギア300gに駆動力が伝わり、予備苗枠38を自動的に「展開状態」と「収納状態」とに切り替えることができるので、作業者が手作業で予備苗枠38の切り替えを行う必要がなくなり、作業能率が向上する。
【0051】
また、図示は省略するが、切替モータ300mが作動を停止する位置を0〜100%の間で任意に指定することが可能な停止位置調節部材としての調節ダイヤルを設けておき、この調節ダイヤルにより指定された位置で切替モータ300mが作動停止するように構成することで、切替モータ300mの作動を調節ダイヤルにより任意の位置で停止させることができるので、予備苗枠38を「展開状態」と「収納状態」との動作途中で停止させ、予備苗枠38の端部が圃場端にぶつからない程度に予備苗枠38を「展開状態」とすることにより、予備苗枠38の破損を防止しつつ苗の積み込みを容易にすることもできる。
【0052】
(電動制御)
次に、予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cの展開収納の電動制御について説明する。
予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cは、図17の電動制御システムブロック図に示すように、上下多段収納状態の収納位置を外れたことを検知する苗枠状態検知センサ39sと、機体走行を検出する走行検知センサ2sと、この走行検知センサ2sによる走行検知の際に苗枠状態検知センサ39sによる検出を条件として報知するブザー75aやランプ75b等の報知部材75を設けて予備苗枠38の展開中の機体走行を報知するように構成る。
【0053】
苗枠状態検知センサ39sは、収納位置から展開動作を開始して収納位置に戻るまでの範囲を検出し、苗枠状態検知センサ39sで検知した予備苗枠38の展開検出結果に合わせて機体走行時に苗載台の展開を報知する構成としたことにより、予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cの収納忘れや、不測の操作で予備苗枠38が展開移行してしまうことを防止できるので、予備苗枠38の苗載台を圃場端の土手や壁にぶつけて破損させることが防止され、耐久性が向上する。
また、積載した苗が予備苗枠38上から落下することが防止されるので、落下した苗を作業者が拾いに行く作業が不要となるため、作業者の労力が軽減されると共に、作業能率が向上する。
【0054】
(予備苗枠操作部材)
この場合において、上記苗枠状態検知センサ39sは、予備苗枠38の移動リンク部材39a,39b,39cの回動位置を検出可能に配置し、この移動リンク部材39a,39b,39cに電動式の切替モータ300mによって回動駆動される回動部材300gを取付け、該切替モータ300mの駆動を調節操作する予備苗枠操作部材を備えることにより、切替装置300の操作に合わせて切替モータ300mが回動ギア300gを回動させて予備苗枠38の苗載台を「展開」と「収納」の位置に電動で切替可能に構成することにより、作業者が予備苗枠38の側方まで移動して手作業で切り替えを行う必要がなく、作業能率を向上することができると共に、作業者の労力が軽減される。
【0055】
上記切替装置300は、例えば復帰動作型の開閉調節具を用いることにより、調節操作により切替モータ300mの作動を任意の位置で停止させることができるので、苗載台38a,38b,38cを「展開」と「収納」の途中位置で停止させ、苗載台38a,38b,38cの端部が圃場端にぶつからない程度に展開することにより、予備苗枠38の破損を防止しつつ苗の積み込みを容易にすることができる。
【0056】
そして、苗枠状態検知センサ39sをリンク機構39に設けることにより、該リンク機構39の回動位置から予備苗枠38の展開程度を判断することができるので、各苗載台38a,38b,38cの展開行程に沿って位置検出スイッチ等を設ける必要が無くなり、部品点数が削減される。
【0057】
(走行検知)
上記走行検知について、前記走行検知センサ2sを後輪11の回転を検出する後輪回転検知センサ11sとし、前記苗枠状態検知センサ39sが予備苗枠38の作業状態を「展開状態」と検知した状態で、且つ後輪回転検知センサ11sが後輪11の回転を検出すると、報知装置75が作動する構成としたことにより、積載した苗が前後に動きやすい「展開状態」のままで機体を走行させても作業者にすぐに気付かせることができるので、予備苗枠38から苗が落下することが防止され、苗を拾う作業が省略されて作業者の労力が軽減される。
また、圃場端で苗を補充搬入したままの「展開状態」で旋回動作を行なうことを防止できるので、圃場端の土手や壁に予備苗枠がぶつかって破損することが防止され、予備苗枠の耐久性が向上する。
【0058】
(停止ペダル)
踏込み操作することによって走行車体の停止状態を維持させる停止ペダル33と、該停止ペダル33の踏込操作を検出するペダル操作検知センサ33sを設け、前記停止ペダル33の踏込操作を条件として切替モータ300mを駆動する制御処理を構成する。
前記停止ペダル33の踏込み操作は、走行停止を維持しうる程度の所定の踏込量を基準とする。
【0059】
前記停止ペダル33に基づく切替モータ300mの制御により、停止ペダル33が操作されないと予備苗枠操作装置300の操作を受け付けない構成としたことにより、走行中に予備苗枠切替装置300を操作して、予備苗枠38の作業状態が切り替わって機体の前後バランスが変化してしまうことを防止できるので、機体の直進性が確保され、苗の植付精度が向上する。
また、圃場端近くで予備苗枠38が「展開状態」に切り替えられ、予備苗枠38の先端が圃場端の土手や壁に接触して破損することを防止できるので、予備苗枠38の耐久性が向上する。
【0060】
(操作認証スイッチ構成)
予備苗枠38の切替装置300の動作の可否を切り替える、操作認証スイッチの具体的な構成については、図10の操作部材の構成例を表す見取図に示すように、ハンドル34の左右に一対の操作認証スイッチ81,81を互いに離間して両手操作に適する位置に配置するとともに、両方の操作に限り切替モータ300mの駆動を調節操作可能に構成する。
【0061】
上記のとおり、ハンドル34に一対の操作認証スイッチ81,81を設け、該操作認証スイッチ81,81がどちらか一方でも操作されていないと、切替装置300の切替モータ300mが作動せず、操作認証スイッチ81,81が同時操作されていると、切替モータ300mが展開と収納の位置を切り替える構成としたことにより、作業者位置が予備苗枠38から離れたハンドル34の操作位置、すなわち、操縦席31に着座した状態の操作に限定されることから、作業者が予備苗枠38の回動範囲にいないため、予備苗枠38の動きに合わせて移動する必要がなく、操作性や作業能率が向上する。
また、上記操作認証スイッチ81,81のどちらか一方の操作をやめれば、切替モータ300mをその場で停止させることができるので、予備苗枠38やその開閉駆動部に問題が生じた場合、すぐに停止させることができるので、予備苗枠38が破損しにくくなり、耐久性が向上する。
【0062】
(開閉連動でエンジン増速)
(エンジン制御)
つぎに、予備苗枠38の電動制御とエンジン制御との関係については、切替モータ300mが動作すると連動してエンジン20の回転数を増速制御し、エンジン20の回転数増加によって発生した電気を、電気機器用のバッテリー22に充電する構成とする。
特に、エンジン20をアイドリング状態としておく傾向のある圃場端では、アイドリング状態で予備苗枠38を収納状態から展開状態に切替操作することが多く、切替モータ300mの作動により、バッテリー22に蓄電された電気が不足して、機体の機能、例えば施肥装置のブロア38や前照灯が使用不能となることがあるので、苗枠状態検知センサ39sが収納状態から展開状態に切り替える操作が行なわれたことを検知すると、エンジン20の回転数を増加させる制御構成としてもよい。
上記の通り、予備苗枠38の作業状態を切り替え、展開状態から収納状態、または収納状態から展開状態に移行している間、エンジン回転数を増加する制御を行ない、このエンジン20の駆動力により発生する電気をバッテリー22に蓄電する構成としたことにより、切替モータ300mが作動して電気を消費してもバッテリー22に逐次電気が貯められるので、苗が複数載置されて予備苗枠38の重量が重くなっていても、切替モータ300mが安定して動作することにより確実に作動させることができるので、作業能率が向上する。
特に影響を受けやすいガソリンエンジンについて、バッテリー22の蓄電量低下による他の電気機器、例えば、前照灯、施肥ブロア38などの動作異常が防止される。
【0063】
(補助苗載台)
次に、予備苗枠の補助苗載台について説明する。
3段構成の予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cについて、図11、図12の機体前部からの正面図および側面図に示すように、最上部に4段目として補助苗載台91を支軸92によって回転式にフレーム93に支持し、回転した内側位置(A)で更に高い上端位置(B)に上昇保持可能に構成する。
【0064】
このように、最上段に回転昇降式の補助苗載台91を設けたことにより、作業の都合の良い角度位置に補助苗載台91を回動して苗を取扱うことができ、また、3段構成の苗載台38a,38b,38cの展開動作に際して、補助苗載台91を事前に内側位置(A)または上端位置(B)に移動することにより、苗載台38a,38b,38cを支障なく展開収納することができる。
【0065】
(マーカ連動)
次に、マーカ連動制御について説明する。
図13のシステム構成のブロック図に示すように、左右のマーカ184,184の作動を検出するマーカリミットスイッチ101の信号に基づいて制御部Cにより予備苗枠38の展開収納を動作制御可能に構成する。制御部Cによる具体的な制御は、図14のフローチャートに示すように、マーカリミットスイッチ101の信号に基づいてその非作動状態を両マーカ184,184の収納として判定処理する第1のステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)により、該当すれば予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cを収納位置に戻し(S2)、両マーカ184,184の収納に該当する範囲で継続(S3)する。
【0066】
このように、左右のマーカ184,184動作に基づく予備苗枠38の制御により、両マーカ184,184の収納と対応する苗移植機の所定の旋回の際に、その範囲で予備苗枠38の苗載台38a,38b,38cが一時的に収納されることで、苗載台38a,38b,38cを展開したままの機体旋回に伴う危険を回避して安全性を確保することができるのみならず、機体を格納庫に入れる場合においても、苗載台38a,38b,38cの収納忘れの回避、予備苗枠38の誤作動防止による安全性の向上、1回の動作で2つの作業ができることによる操作性の向上等の効果を得ることができる。
【0067】
(空箱入れ)
次に、空箱入れの構成について説明する。
図15の苗載台の斜視図に示すように、各苗載台38a,38b,38cの外側方にスライド動作可能にマット苗を載置可能な拡張台111を設ける。この拡張台111は、各苗載台38a,38b,38cの下面に取付けたカラー状のガイド部材112によってスライド可能に支持する。
【0068】
この拡張台111は、苗載台38a,38b,38cの展開と収納のいずれの位置についても、必要に応じて各苗載台38a,38b,38cの外側方にスライドさせてスペースを要することなく拡張することができ、補給用のマット苗をそれぞれ載せることができるほか、補給用のマット苗を移植部4に供給した後の空容器をそれぞれ4枚以上重ねて載せることができる。マット苗の供給移動の際に、残った空箱を横にずらすだけでいいので、空箱の移動を最小限に抑えて空箱の取扱が容易となり、また、空箱による障害なしにマット苗をスムーズに移動することができる。
【0069】
(大容量予備苗枠)
次に、大容量予備苗枠について説明する。
大容量の予備苗枠を構成する場合に、展開移動可能な3段の苗載台38a,38b,38cによる可動部の更に上位に4段目として複数段の苗載台を設ける例があり、この4段目の苗載台を機体に固定配置した例にあっては、可動部との干渉を避けるために高い位置に構成する必要があるので、苗移植機上の作業において大きな労力を要するという問題があった。
【0070】
このような問題を解決するために、大容量予備苗枠121は、図16の移植機の要部斜視図に示すように、展開移動可能な3段の苗載台38a,38b,38cによる可動部の更に上位に複数段の苗載台122,123を4段目と5段目として可動部最上段の苗載台38aの上にフレーム124によって固定し、畦からの苗補給の際に、展開した苗載台38aの前方の苗が補給しやすい位置に移動するようにレイアウトを行う。また、可動式の3段の苗載台38a,38b,38cの展開時に、多段式による前後の重量バランスが必要であれば、後方への移動側ウエートを設けてバランスをとる。
【0071】
上記構成の大容量予備苗枠121は、展開移動可能な3段の苗載台38a,38b,38cの技術をベースにして10条植え等の大型移植機に適用が可能となる上に、4段目と5段目の苗載台122,123の高さを苗丈に合わせて配置できることから、高さが抑えられて作業が容易となる。また、4段目と5段目の苗載台122,123を畦側の補助者に近付けて苗補給作業ができるので、苗移植機上の作業負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 苗移植機
2 走行車体
2s 走行検知部材
4 移植部
10 前輪
11 後輪
11s 後輪回転検知部材
20 エンジン
22 電源部
31 座席
33 停止ペダル
33s ペダル操作検知部材
34 ハンドル
38 予備苗枠
38a 苗載台
38b 苗載台
38c 苗載台
39a 移動リンク部材(リンク機構)
39b 移動リンク部材(リンク機構)
39c 移動リンク部材(リンク機構)
39s 苗枠状態検知部材
75 報知部材
81 予備苗枠操作部材(操作認証スイッチ)
300 切替装置(予備苗枠操作部材)
300m アクチュエータ(切替モータ)
300g 回動部材(回動ギア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)とハンドル(34)を備え、前輪及び後輪(10,11)によって圃場走行可能に支持する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部で圃場に苗を植え付ける移植部(4)と、前記走行車体(2)の前部に苗を収納する多段構成の苗載台(38a,38b,38c)をリンク機構(39a,39b,39c)に取り付けて構成した予備苗枠(38)を設け、該予備苗枠(38)を多段の収納位置から前後に直列する展開位置までの範囲で開閉させる切替装置(300)を設けた苗移植機において、
前記予備苗枠(38)の作業状態が収納位置か展開位置かを検知する苗枠状態検知部材(39s)と、機体が走行状態であるか否かを検知する走行検知部材(2s)と、該走行検知部材(2s)による走行検知の際に苗枠状態検知部材(39s)による展開過程の検知を条件として報知する報知部材(75)とを設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記切替装置(300)は、前記リンク機構(39a,39b,39c)の回動位置を検知する苗枠状態検知部材(39s)と、切替アクチュエータ(300m)によって回転されて前記リンク機構(39a,39b,39c)を回動させる回動部材(300g)で構成し、該切替装置(300)を予備苗枠(38)に設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記走行検知部材(2s)を、後輪(11)の回転を検知する後輪回転検知部材(11s)で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項4】
前記走行車体(2)の走行停止を踏込操作によって維持する停止ペダル(33)と、該停止ペダル(33)の踏込操作を検知するペダル操作検知部材(33s)を設け、該ペダル操作検知部材(33s)が停止ペダル(33)の踏み込みを検知すると前記アクチュエータ(300m)を駆動操作可能にする構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項5】
前記走行車体(2)のハンドル(34)には、一対の操作認証スイッチ(81,81)を互いに離間させて配置するとともに、該操作認証スイッチ(81,81)を同時に操作すると前記アクチュエータ(300m)を駆動操作可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項6】
前記予備苗枠(38)が収納位置から展開位置に切り替わり始めたことを苗枠状態検知部材(39s)が検知すると、前記アクチュエータ(300m)の駆動に連動してエンジン(20)の回転数を増加させるとともに、電源部(22)に充電制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の苗移植機

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−170386(P2012−170386A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34727(P2011−34727)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】