説明

苗移植機

【課題】旋回時にも圃場が均され過ぎないように整地できる対地作業用の旋回ロータを備えた苗移植機を提供すること。
【解決手段】走行車体2の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部4の下部に圃場面を均す左右の整地ロータ27a,27bと、エンジン20の駆動力を後輪11に供給する左右の後輪ギアケース18を設けた苗移植機において、左右の前記ギアケース18から左右両側の整地ロータ27a,27aに駆動力をそれぞれ独立して供給する左右別々のロータ駆動軸70a,70bを設け、旋回動作させたときに、旋回内側の整地ロータ駆動軸70a,70bが旋回外側の整地ロータ駆動軸70a,70bよりも低速で回転する構成としたので旋回内側の整地ロータ27a,27bで圃場の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対地作業装置付きの苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの苗植付装置を備えた苗移植機において、苗植付装置による苗植付の直前に圃場を均平化するためのロータを備えた構成が知られている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118778号公報
【特許文献2】特開2005−124442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1及び2の苗移植機では、整地ロータの旋回内外側が共に同じ速度で回転するため、旋回時に植付部を上昇させずに整地作業を行う場合、旋回内側の圃場に整地ロータが接触する時間が長くなるので、圃場が均され過ぎて圃場が柔らかくなり、流れ出た泥土が苗を押し倒す問題がある。
また、圃場が柔らかいと苗の植付深さが設定深さよりも深くなってしまい、苗の生育が遅くなり、収穫量が減少する問題がある。
本発明の課題は、旋回時にも圃場が均され過ぎないように整地できる対地作業用の旋回ロータを備えた苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)を操舵するために走行車体(2)上に搭載した操舵部材(ハンドル)(34)と、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に圃場面を均す左右の整地回転体(整地ロータ)(27a,27b)と、エンジン(20)の駆動力を走行車体(2)の後輪(11,11)に供給する左右の伝動ケース(後輪ギアケース)(18,18)を設けた苗移植機において、左右の伝動ケース(18,18)から左右両側の整地回転体(27a,27a)に駆動力をそれぞれ独立して供給する左右のロータ伝動軸(72,72)を設け、操舵部材(ハンドル)(34)を操作して走行車体(2)を旋回動作させたときに、旋回内側のロータ駆動軸(70b)が旋回外側のロータ駆動軸(70b)よりも低速で回転する動力伝達機構としたことを特徴とする苗移植機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)を操舵するために走行車体(2)上に搭載した操舵部材(ハンドル)(34)と、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に圃場面を均す左右の整地回転体(整地ロータ)(27a,27b)と、エンジン(20)の駆動力を走行車体(2)の後輪(11,11)に供給する左右の伝動ケース(後輪ギアケース)(18,18)を設けた苗移植機において、左右の伝動ケース(18,18)からそれぞれ左右整地回転体(27a,27b)に駆動力をそれぞれ独立して供給する左右別々のロータ伝動軸(72,72)と、操舵部材(ハンドル)(34)による操舵方向を検出する操舵検知装置(ポテンショメータ)(92)を設け、該操舵検知装置(92)が検知した旋回内側の整地回転体(27a)を、旋回外側の整地回転体(27a)よりも低速回転する動力伝達機構としたことを特徴とする苗移植機である。
【0007】
請求項3記載の発明は、左右両側の整地回転体(27a,27a)の間に左右並列配置される一対の中央整地回転体(27b,27b)を設け、一対の中央整地回転体(27b,27b)の左右両側に左右整地回転体(27a,27a)から駆動力を伝達する左右の第2伝動軸(73a,73a)を有する第2伝動ケース(ロータ伝動ケース)(73,73)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機である。
【0008】
請求項4記載の発明は、苗植付部(4)の下部で且つ整地回転体(27a,27b)の後方に苗植付部(4)の上下位置を検知するフロート(55,56)を配置し、該フロート(55,56)を支持する左右一対のフロート支持部材(苗植付部支持部材)(65)と整地回転体(27a,27b)を支持する左右一対の整地回転体支持部材(整地ロータフレーム)(68,68)を苗植付部(4)に設け、該整地回転体支持部材(68,68)を前後方向に摺動させて整地回転体(27a,27a)の前後位置をそれぞれ調節可能にするための前後方向の長穴(71a)を形成した一対の連結部材(71,71)をフロート支持部材(苗植付部支持部材)(65)に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0009】
請求項5記載の発明は、第2伝動軸(73a,73a)をそれぞれ有する左右一対の第2伝動ケース(ロータ伝動ケース)(73,73)の左右どちらか一側に傾斜角度を検出する傾斜角度検知部材(傾斜角度センサ)(89)を設け、該角度検知部材(89)が設定角度(例えば、センター整地ロータ27bが泥中に潜り込まない角度)以上または以下の角度を検知すると、作業者に知らせる報知部材(ブザーまたはランプ)(91)を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、操舵部材(34)の操舵操作があると、操舵部材(34)を操作して走行車体(2)を旋回動作させたときに、旋回内側のロータ駆動軸(70b)が旋回外側のロータ駆動軸(70b)よりも低速で回転するので旋回内側の整地回転体(27a,27b)の回転数が旋回外側の整地回転体(27a,27b)の回転数より減少するので、旋回内側の整地回転体(27a,27b)で整地される圃場の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止でき、圃場端の均し精度が従来以上に良くなり、苗の植付姿勢が安定し、また圃場端における旋回時に旋回痕が残るような圃場で苗移植機を旋回させるときに苗植付部(4)を下降させたまま旋回させると、特に圃場端の均し精度と苗の植付姿勢の安定化効果が発揮できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、左右の後輪(11)の車速センサ(93,93)により左右の後輪(11)の回転差で旋回方向を判断することができるが、明確に左右の後輪(11)の回転差が判断できるのは、旋回開始と同時ではなく、多少旋回方向に進行した地点となる。このため、旋回内側の整地回転体(27a)に、旋回開始直後は圃場が荒らされることになる。
【0012】
一方、操舵検出センサ(92)は、ハンドル(34)の旋回操舵が開始されると同時に旋回方向を判断できるので、旋回の開始と同時に旋回内側の整地回転体(27a)の回転速度を低速に変更することができ、旋回開始直後から圃場が荒らされることが防止される。
【0013】
操舵検出センサ(92)がハンドル(34)の右または左旋回操舵を検出すると、操舵検出センサ(92)からの制御信号に基づき制御装置(100)は、該当するサイドクラッチ(図示省略)を切って旋回内側の後輪車軸(11a)への駆動力を遮断するが、旋回内側の後輪(11)は走行車体(2)の走行に伴って回転し、その回転力がロータ伝動軸(72)に伝わって、旋回内側の整地ロータ(27a,27b)が回転する。
【0014】
したがって、請求項2記載の発明によれば、操作部材(34)の操作を操舵検知装置(92)が検知すると旋回方向を判断し、旋回内側の整地回転体(27a,27b)の回転数を減少させることにより、旋回内側の整地回転体(27a,27b)で整地される圃場の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止されるので、圃場端の均し精度が従来以上に向上し、苗の植付姿勢が安定する。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1、2記載の発明の効果に加えて、中央に一対の整地回転体(27b,27b)を並列配置したことにより、苗移植機の旋回時に一対の中央整地回転体(27b,27b)も、旋回内側と旋回外側で異なる回転数とすることができるので、旋回内側の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止され、圃場端の均し精度が従来以上に良くなり、苗の植付姿勢が安定する。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えてフロート支持部材(苗植付部支持部材)(65)とロータ支持フレーム(68)を連結する連結部材(71)に形成した前後方向に長い長穴(71a)に沿ってロータ支持フレーム(68)を前後方向に摺動させて整地回転体(27a,27b)の前後位置を調節可能にしたので、フロート(55,56)と整地回転体(27a,27b)の前後間隔を変更できる。こうして、圃場の水量が多いときには前記前後間隔を広くすると、整地回転体(27a,27b)の回転によって生じた泥土や水流がフロート(55,56)の両側に集中することを防止できるので、フロート(55,56)が泥土や水流の抵抗によって浮き上がることが防止され、苗の植え付け深さが安定する。また、圃場の水量が少ないときには前記前後間隔を狭くすることにより、整地回転体(27a,27b)で均した泥土がフロート(55,56)の左右に流れる前にフロート(55,56)で敷き込むことができるので、泥水流が苗を押し流したり埋めたりすることが防止され、苗の生育が安定する。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項3又は4記載の発明の効果に加えて、左右一対のロータ伝動軸ケース(73)のどちらか一方に該ケース(73)の水平面に対する傾斜角度を検出するポテンショメータなどからなる傾斜角度センサ(89)を設けたので、該傾斜角度センサ(89)が中央の整地回転体(27b,27b)が泥中に潜り込まない所定の傾斜角度以上(または以下)の角度を検知すると、作業者に知らせる報知部材(ブザーまたはランプ)(91)を設けることで中央の整地回転体(27b,27b)が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例の乗用型苗移植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型苗移植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型苗移植機の苗植付部の要部側面図である。
【図4】図1の乗用型苗移植機の苗載台の支持構造の要部背面図である。
【図5】図1の乗用型苗移植機のロータの駆動機構の略図である。
【図6】図1の乗用型苗移植機のロータの駆動機構の一部詳細図である。
【図7】図1の乗用型苗移植機の苗植付部の要部平面図である。
【図8】図1の乗用型苗移植機の一部制御ブロック図である。
【図9】図1の乗用型苗移植機のロータ支持フレームの側面図である。
【図10】図1の乗用型苗移植機のロータの駆動機構の詳細図である。
【図11】図1の乗用型苗移植機のロータの駆動機構の他の実施例の詳細図である。
【図12】図1の乗用型苗移植機のロータへの動力伝達機構部分の内部構造図(図12(a))とロータ駆動軸の端部の断面図(図12(b))と図12(b)の円C内の拡大図(図12(c))とロータ駆動軸の端部にはめ込まれるハブの断面図(図12(d))である。
【図13】図1の乗用型苗移植機のロータ動力伝達機構部分の内部構造図(図13(a))と図13(a)の断面図(図13(b))である。
【図14】図1の乗用型苗移植機の燃料タンクのキャップ部の断面図(図14(a)と図14(a)の円C内の拡大図(図14(b))である。
【図15】図1の乗用型苗移植機の燃焼タンクキャップ部分のボス部の断面図(図15(a))と図15(a)の円C内の拡大図(図15(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である乗用型苗移植機の側面図と平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0020】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0021】
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギアケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0022】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0023】
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0024】
エンジン20の上部に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38を設けても良い。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。
【0025】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0026】
苗植付部4は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト54,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0027】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロート傾斜角センサ94(図3)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0028】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65a(図3)をレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0029】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0030】
ロータ支持構造の要部を、図3(側面図)と図4(背面図)に示す。
ロータ支持構造には、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。また、ロータ昇降用モータ63が梁部材66の軸方向延長線上に設けられている。
【0031】
ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27(27a,27b)の駆動軸70(70a,70b)(図4)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0032】
図3に示すように、整地ロータ27aの駆動軸70a(図4)への動力は、各後輪11のギアケース18内のギアからロータ駆動ケース87内のギアに伝達される。該ロータ駆動ケース87に中空の出力シャフト85を機体後側に向けて設け、駆動軸70aには整地伝動シャフト72を機体前側に向けて設ける。そして、該出力シャフト85の内部に整地伝動シャフト72を差し込むことにより、駆動力が左右の整地ロータ27aに伝達可能に伝達される構成となる。
【0033】
前記整地伝動シャフト72の機体前端部側は、六角(多角)柱状に形成するか、またはスプライン加工を施すと、整地伝動シャフト72が出力シャフト85の回転に同調せずに回転することを防止でき、整地ロータ27a,27bの駆動回転速度が速くなり、泥を巻き上げて圃場面の視認性を低下させることが防止されると共に、駆動回転速度が遅くなり、圃場の整地が十分に行われず、苗の植付深さが揃わなくなることが防止される。
【0034】
なお、出力シャフト85と整地伝動シャフト72の接続部と、その周辺を伸縮自在な被覆ブーツ85aで覆うことにより、出力シャフト85と整地伝動シャフト72の接続部に泥土が付着して整地ロータ27a,27bの動作を停止させることを防止できると共に、前記接続部からグリス等の潤滑剤が圃場に落下し、水質や土質を汚染することを防止できる。
そして、前記メインフレーム15の後端下部に、平面視U字形状の受け部材(図示せず)を機体後方に向けて配置し、該受け部材を整地伝動シャフト72に接触させて配置する、あるいは出力シャフト85と整地伝動シャフト72の接続部に設けた被覆ブーツ85aに接触させて配置する。
【0035】
上記構成により、前記整地ロータ27a,27bが整地作業を行う際、圃場との接触抵抗等により整地伝動シャフト72が出力シャフト85から抜けることがあっても、前記受け部材が整地伝動シャフト72を受けて整地伝動シャフト72が圃場面に向かって垂れ下がることが防止でき、整地伝動シャフト72が圃場面に刺さった状態に気付かず機体を移動させた際に整地伝動シャフト72が破損することが防止され、機体の耐久性が向上する。
【0036】
図5には整地ロータ27(27a,27b)の駆動機構の略図を示し、図6には整地ロータ27(27a,27b)の駆動機構の一部詳細図を示す。
ミッションケース12から各後輪ギアケース18には中間部にユニバーサルジョイント18bを有する伝動シャフト18aから動力が伝達され、後輪ギアケース18からロータ駆動ケース87と後輪駆動軸11aを経由して後輪11に駆動力が伝達される。また、後輪ギアケース18から整地伝動シャフト72を経由して駆動軸70aが駆動することで両側の整地ロータ27aが回転する。
【0037】
また、機体左右方向の中央部には一対の整地ロータ27b,27bが並列配置されており、一対の整地ロータ27b,27bは左右並列配置されるロータ駆動軸70b,70bでそれぞれ駆動される。該ロータ駆動軸70b,70bにはロータ駆動軸ケース73,73内のそれぞれ駆動軸(ロータ伝動軸(角パイプ))73a,73a(図12)からの動力が伝達される。また左右並列配置されるロータ駆動軸70b,70bは図4にも示している。
なお、機体両側の駆動軸70a,70aから左右のロータ駆動軸70b,70bに伝達される動力はロータ駆動軸70b,70bの機体中央側の端部にある各軸受70c,70cで互いに動力伝達は遮断されていて軸受70c,70cが離間している。
【0038】
また、図5に示すように、機体両側の各駆動軸70aにはベベルギア70vが設けられており、該ベベルギア70vには整地伝動シャフト72の先端に設けられたベベルギア72vと噛合することでミッションケース12側からの駆動力が伝達される。
【0039】
図12に片方のみを示すが、左右のロータ伝動軸ケース73,73内の角パイプ状のロータ伝動軸73a,73aから、中央部にある左右のロータ駆動軸70b,70bに並列配置された一対の整地ロータ27b,27bにそれぞれ動力伝達される。このとき、旋回内側の後輪11の回転数が減少すると、旋回内側の整地ロータ27aの回転数も減少する。
【0040】
従来の構成では、旋回時は内側の後輪11が空回りしていただけなので、旋回内側の整地ロータ27aも同時に空回りしていたが、本実施例では旋回内側の整地ロータ27bの回転数も減少するので、旋回内側の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止できて圃場端の均し精度が向上し、苗の植付姿勢が安定する。
上記構成は、圃場端における旋回時に旋回痕が残るような圃場で苗移植機を旋回させるときに苗植付部4を下降させたまま旋回させると、特に圃場端の均し精度と苗の植付姿勢の安定化効果が発揮できる。
【0041】
また、苗移植機1が旋回する場合には、ハンドル34の操舵操作をポテンショメータなどで出来たハンドル旋回(操舵検出)センサ92が検出し、該ハンドル旋回(操舵検出)センサ92により検出された旋回内側のサイドクラッチ(図示省略)を制御装置100により「切」状態とすることによって、該当する側の伝動シャフト18aへの駆動力が遮断される。後輪ギアケース18への駆動力が切れたことにより、旋回内側の後輪11は駆動回転しなくなるものの、機体の旋回走行に伴い、圃場面との接触抵抗で回転する。
【0042】
図10にロータ27a,27bの動力伝動機構の詳細図を示す。
前記旋回内側の後輪11が回転すると、後輪車軸11aが回転し、該後輪車軸11aに軸着した従動スパーギア80が回転することにより、前記伝動シャフト18aから駆動力を伝動する駆動スパーギア81を回転させる。該駆動スパーギア81には、整地伝動シャフト72に回転駆動力を伝動する入力シャフト82の一側端部が差し込まれていると共に、該入力シャフト82の他側端部には、整地伝動シャフト72の端部に軸着した従動ベベルギア83bと噛合する駆動ベベルギア83aが軸着されているので、前記旋回内側の後輪11が機体の旋回走行に伴って回転する駆動力が、旋回内側のサイドロータ27a及びセンターロータ27bに伝動されて、該サイドロータ27a及びセンターロータ27bが低速で回転する。
【0043】
上記した構成は既存の伝動構成を活用するものであり、ロータ27の回転数は極めて低回転となる。もし回転数の制御が必要な場合は、図11に示す伝動機構によりロータ27a,27bを駆動させても良い。このとき、上記の入力シャフト82はないものとする。
【0044】
整地伝動シャフト72を駆動回転させる整地駆動モータ84を後輪ギアケース18に設け、該整地駆動モータ84は制御装置100の信号によって回転数を変更可能な可変速モータとし、前記操舵検出センサ92により旋回方向が検出されると、旋回内側となる側の整地駆動モータ84が低回転に切り替えられる構成とする。
こちらの構成は、コストは高くなるが、旋回内側のサイドロータ27a及びセンターロータ27bが圃場を荒らすことなく、且つ整地も可能となる回転数にしやすく、旋回時の整地性が向上する。また、整地駆動モータ84の回転数を調節するダイヤル等の操作部材を設ければ、車速に拘束されることなく整地ロータ27の回転数を自由に設定することもできるようになる。
【0045】
こうして、操舵検出センサ92の検出値により旋回方向を判断し、旋回内側の整地ロータ27bの回転数を減少させることにより、旋回内側の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止されるので、圃場端の均し精度が向上し、苗の植付姿勢が安定する。
【0046】
機体中央の整地ロータとして並列配置した一対の整地ロータ27b,27bを設けたことにより、苗移植機1の旋回時に左右一対の後輪軸11a,11aと同じく、一対の中央整地ロータ27b,27bも、旋回内側と旋回外側で異なる回転数とすることができるので、旋回内側の泥土が柔らかくなり過ぎて流れてしまうことが防止され、圃場端の均し精度が従来以上に良くなり、苗の植付姿勢が安定する。
【0047】
図7に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ(センターロータということがある)27b,27bはサイドフロート56の前方にある整地ロータ(サイドロータということがある)27aより前方に配置されている。そのため、左右の整地ロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪ギアケース18内のギアからロータ駆動ケース87内のギアに伝達され、該ロータ駆動ケース87から整地伝動シャフト72等を介して伝達される。また、並列配置された一対の整地ロータ27b,27bのロータ駆動軸70b,70bに、それぞれ対応する側の整地ロータ27aの駆動軸70aの車体内側の端部から動力が伝達され、それぞれ左右の駆動軸70aにはロータ伝動軸ケース73内のロータ伝動軸73a(図12参照)を介して動力伝達されることは前に述べた通りである。
【0048】
なお、図7に示すようにロータ駆動ケース87のクラッチシフター97及び該シフター97作動用のクラッチケーブル99を後輪ギアケース18の内側で、かつ機体中央部へ配置している。
また、整地ロータ27b,27bはロータ伝動軸ケース73を橋渡しする補強部材74を介して梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
図4に示すように、該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と両方のロータ伝動軸ケース73を橋渡しする補強部材74に支持された取付片74a(図7参照)との間に前記スプリング78が接続している。
【0049】
ロータ昇降用モータ63の作動により、第一リンク部材76を上方へ回動する向きに梁部材66が回動し、該梁部材66の回動に伴って、ロータ支持フレーム68を介して第一リンク部材76と第二リンク部材77とスプリング78に吊り下げられた整地ロータ27a,27bを上方に上げることができる。整地ロータ27a,27bを上方に移動させると、ロータ駆動軸70b,70bを介して一対の整地ロータ27b,27bも同時に上方に移動する。
【0050】
本実施例では、標準位置で圃場面より40mmの高さにある整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0051】
図4に示すように、上記整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で上下動ができる構成にしているので、整地ロータ27a,27bで畦際を整地しながら苗の植付を行う場合に、梁部材66の軸を回動可能にした整地ロータ27a,27bの作業状態から整地ロータ27a,27bの収納状態への切替えを苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
【0052】
苗植付部4の上昇時に整地ロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング78などを介して支持されているので、整地ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
また、操縦座席31近傍に設ける図示しないメータパネル上に設けたロータ高さ調節ダイヤルにより、整地ロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にしても良い。
【0053】
手動でロータ高さを設定する場合には、整地ロータ27a,27bを収納位置に移動したままで次の苗植付作業時に整地ロータ27a,27bを使用できないことがあるが、自動的に整地ロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にすると、そのような不具合を防ぐことができる。
【0054】
図4に示すように、梁部材66の一端にロータ昇降用モータ63を取り付けておき、苗植付部4が上昇すると整地ロータ27a,27bは下降するようにし、また苗植付部4が下降すると整地ロータ27a,27bは上昇するような構成としても良い。これにより、畦際旋回時に整地ロータ27a,27bを下降させて、旋回跡のみを整地することができる。この場合は、苗植付部4の上リンク40が所定高さ以上に回動するとオンとなる昇降リンクスイッチ(フロート傾斜角センサ)94(図3)が作動すると制御装置100がロータ昇降用モータ63の駆動制御を行う。この様な構成の場合はロータ昇降用モータ63を自動で作動させることができるので、操作性が従来技術に比べて向上する。
また、図1に示すように、整地ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0055】
フロート支持用の両側辺部材65bとロータ支持フレーム68を連結するジョイントアーム71を設けて、該ジョイントアーム71に前後方向に長い長穴71a(図3)を形成して、該長穴71aに沿ってロータ支持フレーム68を前後方向に摺動させて整地ロータの前後位置を調節可能にした。図9に該ジョイントアーム71に前後方向に長い長穴71aを形成した2つの例を示す。調整後はジョイントアーム71に対する長穴71aの位置がずれないようにし、適宜の締結部材で締め付け固定する。
【0056】
こうしてジョイントアーム71によりロータ支持フレーム68を前後方向に摺動させてフロート55,56と整地ロータ27の前後間隔を変更できる構成とした。この構成により、圃場の水量が多いときには前記前後間隔を広くすると、整地ロータ27の回転によって生じた泥土や水流がフロート55,56の両側に集中することを防止できるので、フロート55,56が泥土や水流の抵抗によって浮き上がることが防止され、苗の植え付け深さが安定する。また、圃場の水量が少ないときには、前記前後間隔を狭くすることにより、整地ロータ27で均した泥土をフロート55,56の左右に流れる前にフロート55,56で敷き込むことができるので、泥水流が苗を押し流したり埋めたりすることが防止され、苗の生育が安定する。
【0057】
また、図4に示すロータ昇降用モータ63に代えて支持アーム67に支持されたロータ高さ調節レバー69(図1)の操作により支持アーム67を前後方向に回動させてロータ支持フレーム68を上下動させても良い。
【0058】
前述のように、通常はロータ昇降用モータ63を作動させることで、整地ロータ27a,27bは上昇される構成であるが、本実施例では、苗植付装置52にエンジン20の動力を伝達させるための畦クラッチ(図示せず)が畦クラッチレバー19(図2)の操作により切りになると、ロータ昇降用モータ63が作動して自動的に整地ロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせる構成になっている。
そのために、畦クラッチレバー19(図2)の入・切を検知する畦クラッチレバーセンサ19a(図4)を設けている。
従って、枕地及びその近傍では植付条数あわせのために畦クラッチレバー19の操作により畦クラッチを切りにしたときに、該畦クラッチレバーセンサ19aが畦クラッチレバー19の切りを検出し、制御装置100(図4)により自動的に整地ロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせることができる。
このことにより、圃場内において荒れやすい枕地又は枕地の近くを確実に整地することができる。
【0059】
本実施例では、圃場の硬軟に合わせて座席31の近傍に設けた制御感度変更ダイヤル(図示せず)を調節して昇降用油圧シリンダ46の伸縮による苗植付部4の上下位置の制御感度を複数段に変更できる構成を備えている。また、センターフロート55の前後傾斜角度がフロート傾斜角度検出センサ(昇降リンクスイッチ(図3))94で検出されるので、制御感度変更ダイヤルによる制御感度の設定値毎にセンターフロート55の前後傾斜角度がフロート傾斜角度検出センサ94で検出され、センターフロート55の前後傾斜角度(仰角)は、圃場が硬い場合は前上がり側に、圃場が軟い場合は前下がり側になるように、複数の異なる角度にそれぞれ設定される。
従って、前記フロート傾斜角度検出センサ94の検出値が、制御感度変更ダイヤルにて設定されているセンターフロート55の傾斜角度になるように、制御装置100により昇降用油圧シリンダ46を伸縮させて、苗植付装置4が設定された上下位置になるように制御する。
【0060】
このとき、圃場が硬いと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を鈍感側にするが、これに連動して整地ロータ27a,27bの上下位置を上昇側に補正して整地する。逆に、圃場が軟らかいと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を敏感側にし、これに連動して整地ロータ27a,27bの上下位置を下降側に補正して整地する。これにより、制御感度変更によるセンターフロート55の前後傾斜角度(仰角)の相違で整地ロータ27a,27bの対地高さの相違を抑えることができる。また、土壌が硬い圃場で、整地ロータ27a,27bが深く入ると整地ロータ27a,27bが大きな駆動抵抗となる不具合を抑え、伝動機構の破損や走行速度の低下を防止することができる。こうして、圃場の硬軟度に合わせて安定した均平効果を上げることができる。
【0061】
また、静油圧式無段変速装置(HST)23のトラニオン軸の斜板の傾斜角度を調節することで、HST油圧モータ(図示せず)の出力を変更する変速レバー(図示せず)に連動させ、整地ロータ27a,27bを自動的に収納位置(上昇位置)にロータ昇降用モータ63により移動させることにすると、高速走行時に整地ロータ27a,27bが圃場の泥や水を押すことがなくなる。このため、泥水流で隣接の既植苗を倒すようなことを防止できる。
【0062】
本実施例の苗移植機(田植機)は、旋回後の苗の植え始め位置を後輪11の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができる構成を備えている。この制御モード設定は、旋回開始タイミングをハンドル34の操舵検出センサ92で検知し、該操舵検出センサ92で検知した旋回開始時からの走行距離を旋回内側の後輪11の回転数に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー(図示せず)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
この自動植付開始モード作動中には整地ロータ27a,27bを接地させないように浮かせてロータカバー37の後端部を接地させて圃場の凹凸を均平化させるように苗植付部4を少し浮かせる昇降制御をすることができる。
【0063】
左右一対のロータ伝動軸ケース73のどちらか一方に、該ケース73の水平面に対する傾斜角度を検出するポテンショメータなどからなるロータ伝動軸傾斜角度センサ89(図8)を設け、該傾斜角度センサ89が中央の整地ロータ27bが泥中に潜り込まない所定の角度以上(または以下)の角度を検知すると、作業者に知らせる報知部材(ブザーまたはランプ)91を設けることで、中央の整地ロータ27bが破損することを防止できる。
【0064】
図12(a)にロータ伝動軸ケース73内のロータ伝動軸73aとロータ駆動軸70b,70bとの動力伝達機構部分の内部構造図を示し、図12(b)に角パイプ状のロータ駆動軸70bの端部のA−A線断面図(ロータ駆動軸70bは図示せず)と、図12(c)に図12(b)の円C内の一部拡大図と、図12(d)にロータ駆動軸70bの端部にはめ込まれるハブ70bcの断面図を示す。
【0065】
ロータ伝動軸73aの先端に設けられたベベルギア73aaと噛合するベベルギア70baをロータ駆動軸70bの端部に接合しているが、該ロータ駆動軸70bの端部にはハブ70bbを差し込んでいる。そして、図12(b)の断面図に示すようにロータ駆動軸70bの先端に差し込むハブ70bbの表面には、ビード逃がし用の凹部70bb1を設け、該ハブ70bbの凹部70bb1に嵌る凸部70bc1を内周側に備えた角パイプ状のハブ70bcをロータ駆動軸70bの先端部外周に設けている。
【0066】
前記ロータ駆動軸70bの角パイプ状のハブ70bcの内周部にある凸部70bc1として板状部材を折り曲げて、その端部同士を溶接してハブ70bcを製造する際の板状部材の端部同士の溶接時にできるビードを用いる。
【0067】
従来は、角パイプ製造時の前記溶接ビードを逃がすために、全体的にハブ70bbの外形寸法を小さくとっていたが、この場合はロータ伝動軸ケース73内のロータ伝動軸73aとロータ駆動軸70bとの動力伝達機構部分の組み付け時にガタが大きくなる不具合があった。
【0068】
しかし、前述のようにハブ70bbの表面にはビード逃がし用の凹部70bb1を設け、該ハブ70bbの凹部70bb1にロータ駆動軸70bの角パイプ状のハブ70bcのビード70bc1を嵌めることで、全体的にハブ70bbの外形寸法を大きくすることが可能となり、取付時のガタが減少できて耐久性が従来品より向上した。
また、前記凹凸部があるので、前記ロータ伝動軸73aとロータ駆動軸70bの組み付け時のガイドレールにもなるため、取り付けが容易になる。
【0069】
ロータ伝動軸ケース73内のロータ伝動軸73aとロータ駆動軸70bの動力伝達機構部分の組み付け時において、図13(a)の動力伝達機構部分の内部構造図と図13(b)に図13(a)のA−A線矢視断面図に示す構成を採用しても良い。
ずなわち、ロータ駆動軸70bの動力伝達機構部分のハブに八紡星形状(正方形と菱形を組み合わせた形状)の中空部を形成した引抜パイプからなる円柱形のハブ70bdを設け、前記八紡星形状の中空部にロータ駆動軸70bの端部を差し込み、角パイプ状のハブ70bbの外形部分を保持する構成にしてもよい。この場合は、ロータ伝動軸73aからロータ駆動軸70bに確実に駆動力を伝達出来るようになる。
【0070】
従来、四角柱形状のロータ駆動軸70bの端部を、円柱形状のハブの内部に挿入して連結する構成としていたが、ロータ駆動軸70bの端部と円柱形状のハブとはロータ駆動軸70bの四隅でのみ接触しているため、接触圧力が高くなり、回転時に生じる振動等により接触部が摩耗しやすく、部品(ハブ)の交換頻度が高くなるという問題があった。また、この構成では、伝動力のロスは少なくなるが、ハブの円周径をロータ駆動軸70bの端部が入り込めるギリギリの径にしなければならないので、差し込みにくくなる問題があった。
また、四角柱を円柱の中に挿し込み易くするために、円柱の中空部の径を大きめに取ると、ロータ駆動軸70bの端部とハブの接触が甘くなり、伝動力のロスが大きくなるという問題があった。
【0071】
これに対して、図13に示すように角パイプ状のハブ70bbの外形保持をハブ70bdの八紡星形状の中空部で行うため、角パイプ状のハブ70bbの四隅の外形アール部分に均等に応力が加わるため、内径保持に比べて耐久性が向上する。
また、ハブ70bdとして八紡星形状の中空部を有する引き抜きパイプを使用する事により、従来加工品よりコストを抑えることができる。
【0072】
本実施例の苗移植機で使用する燃料タンクについて、以下の工夫をした。
図14に示す燃焼タンク47のキャップ部分のボス部47aの断面図(図14(a))と楕円C内の一部拡大図(図14(b))のように、燃焼タンク47のキャップ部分のボス部47aに挿入されるポリエチレン材などからなるフィルター48のボス部に、溝48aを設ける。このように、フィルター48のボス部は熱膨張率が高いので作業時の膨張により、フィルター48が外れ難くなり、燃焼タンク47への給油時に給油ホースを挿入する際にホース先端に付着したフィルター48の外れ防止を可能になる。
また、前記ポリエチレン材などからなるフィルター48に代えて、吸水(液)率の高い材料であるポリアミド樹脂をフィルター部分に用いると、給油時の給油ホース挿入により、ホース先端に付着したフィルター48が外れ難くなる。
【0073】
図15に燃焼タンク47のキャップ部分のボス部の断面図(図15(a))とその一部拡大図(図15(b))に示すように、燃焼タンク47のキャップ部分のボス部47aのキャップがはめられる部分のネジ部47aaをテーパ状にすることが望ましい。
燃焼タンク47は、ポリエチレン材などによるブロー成型品を用いるが、ポリエチレン材などは熱膨張率が高いのでキャップ外周のネジ部47aaをテーパ状にし、熱膨張時に拡がる側の嵌め合い部を少なくすることで、熱膨張率によるキャップの外れ難さを無くすことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 施肥装置付き乗用型苗移植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
10 前輪 11 後輪
11a 後輪駆動軸 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギアケース 18a 伝動シャフト
18b ユニバーサルジョイント 19 畦クラッチレバー
19a 畦クラッチレバーセンサ 20 エンジン
23 静油圧式無段変速装置(HST)
26 植付伝動軸
27(27a,27b) 整地ロータ
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 37 ロータカバー
38 予備苗載台 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
46 昇降用油圧シリンダ 47 燃焼タンク
47a ボス部 47aa ネジ部
48 フィルター 48a 溝
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 54 苗送りベルト
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 63 ロータ昇降用モータ
64 作溝体 65 苗植付部支持枠体
65a 支持ローラ 65b 両側辺部材
66 梁部材 67 支持アーム
68 ロータ支持フレーム 69 ロータ高さ調節レバー
70(70a,70b) ロータ駆動軸
70ba,73aa ベベルギア
70bb ハブ 70bb1 凹部
70bc 角パイプ状のハブ 70bc1 凸部(ビード)
70bd ハブ 70c 軸受
70v,72v ベベルギア 71 連結部材
72 整地伝動シャフト 73 ロータ伝動軸ケース
73a ロータ伝動軸(角パイプ)
74 補強部材 74a 取付片
76 第一リンク部材 77 第二リンク部材
78 スプリング 80 従動スパーギア
81 駆動スパーギア 82 入力シャフト
83a 駆動ベベルギア 83b 従動ベベルギア
84 整地駆動モータ 85 出力シャフト
85a 被覆ブーツ 87 ロータ駆動ケース
89 ロータ伝動軸ケース傾斜角度センサ
91 報知部材(ブザーまたはランプ)
92 ハンドル旋回(操舵検出)センサ
93 車速センサ
94 フロート傾斜角度検出センサ(昇降リンクスイッチ)
97 クラッチシフター 99 クラッチケーブル
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)を操舵するために走行車体(2)上に搭載した操舵部材(34)と、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に圃場面を均す左右の整地回転体(27a,27b)と、エンジン(20)の駆動力を走行車体(2)の後輪(11,11)に供給する左右の伝動ケース(18,18)を設けた苗移植機において、
左右の伝動ケース(18,18)から左右両側の整地回転体(27a,27a)に駆動力をそれぞれ独立して供給する左右のロータ伝動軸(72,72)を設け、
操舵部材(34)を操作して走行車体(2)を旋回動作させたときに、旋回内側のロータ駆動軸(70b)が旋回外側のロータ駆動軸(70b)よりも低速で回転する動力伝達機構とした
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)を操舵するために走行車体(2)上に搭載した操舵部材(34)と、走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)の下部に圃場面を均す左右の整地回転体(27a,27b)と、エンジン(20)の駆動力を走行車体(2)の後輪(11,11)に供給する左右の伝動ケース(18,18)を設けた苗移植機において、
左右の伝動ケース(18,18)からそれぞれ左右整地回転体(27a,27b)に駆動力をそれぞれ独立して供給する左右のロータ伝動軸(72,72)と、
操舵部材(34)による操舵方向を検出する操舵検知装置(92)を設け、
該操舵検知装置(92)が検知した旋回内側の整地回転体(27a)を、旋回外側の整地回転体(27a)よりも低速回転する動力伝達機構とした
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項3】
左右両側の整地回転体(27a,27a)の間に左右並列配置される一対の中央整地回転体(27b,27b)を設け、
一対の中央整地回転体(27b,27b)の左右両側に左右整地回転体(27a,27a)から駆動力を伝達する左右の第2伝動軸(73a,73a)を有する第2伝動ケース(73,73)
を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
苗植付部(4)の下部で且つ整地回転体(27a,27b)の後方に苗植付部(4)の上下位置を検知するフロート(55,56)を配置し、
該フロート(55,56)を支持する左右一対のフロート支持部材(苗植付部支持部材)(65)と整地回転体(27a,27b)を支持する左右一対の整地回転体支持部材(68,68)を苗植付部(4)に設け、
該整地回転体支持部材(68,68)を前後方向に摺動させて整地回転体(27a,27a)の前後位置をそれぞれ調節可能にするための前後方向の長穴(71a)を形成した一対の連結部材(71,71)をフロート支持部材(苗植付部支持部材)(65)に設けた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
第2伝動軸(73a,73a)をそれぞれ有する左右一対の第2伝動ケース(73,73)の左右どちらか一側に傾斜角度を検出する傾斜角度検知部材(89)を設け、
該角度検知部材(89)が設定角度以上または以下の角度を検知すると、作業者に知らせる報知部材(91)
を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−179014(P2012−179014A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44420(P2011−44420)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】