説明

苗移植機

【課題】圃場が荒れやすい枕地あるいは枕地近くにおいて適正に整地が行え、苗の植付精度が良くなる畦クラッチ自動復帰装置付きの苗移植機を提供すること。
【解決手段】車体2の植付部4を上昇させる上リンク40と畦クラッチレバー19をケーブル等で連結することにより、上リンク40の上昇運動を畦クラッチに伝動させる電動機構を設け、上リンクの上昇運動に伴って、連携機構A,Bを介して畦クラッチのスイッチを「入」状態にすることを可能とした。同時に、該連携機構A,Bに整地ロータクラッチ39のクラッチケーブル99を連結し、上リンク40の上昇により整地ロータのスイッチを「入」にすることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦クラッチ自動復帰装置付きの苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの苗植付装置と、苗植付装置による苗植付の直前に圃場を均平化するためのロータを備えた苗移植機(田植機と言うことがある)において、車速に応じてフロートが上昇する構成を備えていたり、車速だけでなく荒れた農地で、圃場の荒れ具合に応じて整地作用と植付効果を高めることが可能な構成を備えた技術が知られている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向って左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された苗移植機は、圃場端で旋回する際、苗植付装置を昇降させても畦クラッチ操作レバーは動かず、畦クラッチは「入」状態または「切」状態のまま維持されてしまうため、旋回後の植付作業開始時に畦クラッチの操作を忘れてしまい、苗の植え付けが必要な条で植え付けが行なわれず、後から作業者が手作業で苗を植える必要があり、作業者の労力が増大していた。
【0005】
また、上記特許文献1に開示された苗移植機では、旋回操作の工程数が増大してしまい、畦クラッチの操作が追いつかず苗の植え付けが行なわれない部分が生じるという問題や、畦クラッチの操作を正確に行なうために旋回途中で走行を停止し、作業能率を低下させてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、走行車体の圃場端での旋回時に、苗が植え付けられない圃場面が生じる事を防止し、また、荒れた圃場端を整地させることで、作業者の旋回操作の工程数を軽減し、作業能率を高めることができる苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、前後一対の車輪(10,11)を備えた走行車体(2)と、該走行車体(2)を旋回させる操舵装置(34)と、前記走行車体(2)の後部に圃場に植える苗を積載しておく苗載台(51)と前記苗載台(51)から苗を取って圃場に植え付ける複数条分の苗植付具(52a)を備えた植付装置(52)を有する苗植付部(4)と、前記苗植付部(4)を昇降させる昇降リンク装置(3)と、該苗植付部(4)への駆動力の伝達を入切し、かつ複数条のうちの特定の植付条に対応するそれぞれの前記植付装置(52)の駆動力の伝達を入切する複数の畦クラッチと、複数の畦クラッチを各々操作する複数の畦クラッチ操作レバー(19)と、前記苗植付部(4)に対して昇降自在に、かつ走行車体(2)の横幅方向に向けて配置され、接地して地面を整地する整地装置(27a,27b)と、該整地装置(27a,27b)への駆動力を入切する整地装置クラッチ(39)を設けた苗移植機において、
前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の昇降に連動して全ての前記畦クラッチ操作レバー(19)を切り替えるための、前記昇降リンク装置(3)と前記畦クラッチ操作レバー(19)を連携する牽引部材(48)を含む連携機構(A)を備えたことを特徴とする苗移植機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の上昇に連動して前記整地装置クラッチ(39)を「切」にし、前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の下降に連動して前記整地装置クラッチ(39)を「入」にするための、前記昇降リンク装置(3)と前記整地装置クラッチ(39)を連結する連携機構(B)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記連携機構(A)の一構成部材である前記牽引部材(48)は第1牽引部材(48a)と第2牽引部材(48b)と連結部材(112)から構成され、前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の昇降に連動して回動する前記連動部材(115)の基部に第1牽引部材(48a)の一端を接続し、複数の前記畦クラッチ操作レバー(19)に第2牽引部材(48b)の一端を連携し、前記第1牽引部材(48a)の他端と複数の前記第2牽引部材(48b)の他端を連結部材(112)に接続したことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記畦クラッチ操作レバー(19)を支持して走行車体(2)に設けられた回動軸(22)を中心に回動するハブ(19a)にレバー操作アーム(110)の中央部を回動自在に設置し、該レバー操作アーム(110)の一端にピン(107)を設け、前記ハブ(19a)に該ハブ(19a)の一方向への回転時に前記ピン(107)を押す接触アーム(109)を固定し、該レバー操作アーム(110)の他端に前記第2牽引部材(48b)の一端を接続した係止部材(83)を回動自在に連結したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、連携機構Aにより苗植付部4の上昇に連動して畦クラッチ操作レバー19が移動して、全ての畦クラッチ(図示せず)の「入」に切り替えることができるため、圃場端で全ての畦クラッチは「入」状態のまま苗植付部4を上昇させて走行車体2を旋回させ、旋回直後から苗植付部4を下降させるだけですぐさま苗の植付が行われるので、走行車体2の旋回後に苗が植え付けられない条が発生することが防止され、苗が植え付けられなかった圃場に作業者が後から手作業で苗を植える必要が無く、作業者の労力が軽減され作業能率が向上する。
【0012】
連携機構Aは、図8に示す実施例では、カム115、牽引部材(自動復帰ケーブル)48から構成され、図10に示す実施例では、カム115、連結部材112、牽引部材(自動復帰ケーブル)48a、48bから構成される。
【0013】
このとき、連携機構Aを構成する、実施の態様で説明するケーブルについては図8、図10で異なる構成を示すので本明細書中では、以降「自動復帰ケーブル48(48a、48b)」と記す。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、昇降リンク装置3の上昇に連動して連携機構(A)により畦クラッチを「入」状態に切り替え、同時に連携機構(B)により整地装置クラッチ39を「切」状態に切り替える構成とするとともに、前記昇降リンク装置3の下降に連動して整地装置クラッチ39を「入」状態にし、前記昇降リンク装置3の上昇により「入」状態になった畦クラッチを「入」状態のまま保つ構成とすることで、枕地整地作業の際に整地装置27の作動を忘れることを防止できるので、走行車体2の旋回により荒れた枕地が確実に整地される。
【0015】
連携機構Bは、図6と図13に示す実施例では、カム115、クラッチケーブル99、クラッチシフター97から構成される。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、前記連携機構Aの前記第1牽引部材48bを接続する連結部材112から複数の畦クラッチ操作レバー19に第2牽引部材48aを分岐させて連結した構成により、複数の畦クラッチ操作レバー19を昇降リンク3の上昇により同時に切り換えることができ、複数条の田植機における複数の畦クラッチレバー19のすべてに連携機構Aを適用することができるので、作業者の労力が軽減され作業能率が向上する。
【0017】
請求項4によれば、請求項3に記載の発明に加えて、畦クラッチ操作レバー19にレバー操作アーム110を連結し、レバー操作アーム110の端部にピン107を設け、畦クラッチ操作レバー19のハブ19aに接触アーム109を設けたことにより、「てこの原理」により苗植付部4が下降して連動部材が回動するとピン107の一方向への回転時に接触アーム109を押して畦クラッチ操作レバー19を「入」方向に自動的に復帰させることができ、作業者の労力が軽減され作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1に記載の乗用型田植機に搭載されている苗予備載台の平面図(図3(a))、と斜視図(図3(b))である。
【図4】図1の乗用型田植機の苗植付部の要部側面図である。
【図5】図1の乗用型田植機の苗載台の支持構造の要部背面図である。
【図6】図1の乗用型田植機の苗植付部の要部平面図である。
【図7】図1の乗用型田植機のロータ近傍にディスクを設置した構成を示す要部背面図である。
【図8】図1の畦クラッチ操作レバーから植付部に至るまでの連携機構の要部側面図である。
【図9】図8の自動復帰ケーブルから畦クラッチレバーの構成を示した要部分解斜視図である。
【図10】図8の畦クラッチの連携機構(A)を6条植え田植機用に構成したときの連携機構の要部側面の概念図である。
【図11】図8の畦クラッチの連携機構(A)の畦クラッチ操作レバー回動支点の変形例の要部の構成を示す要部側面図(図11(a))と図11(a)のレバー操作アーム110と係止部材83の要部斜視図(図11(b))である。
【図12】図11に示す構成の変形例の畦クラッチ操作レバー回動支点の要部の側面図である。
【図13】図8の畦クラッチの連携機構(A)のカムに整地ロータクラッチケーブルを接続したの構成の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。 本説明において操縦席31にハンドル34に向かって座った操縦者を基準として、進行方向である正面を前として、前後方向と左右方向を規定する。
【0020】
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0021】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、走行車体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0022】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び静油圧式無段変速装置(HST)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されると共に、施肥連携機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0023】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
図3(a)、(b)には、走行車体2の前部左右両側で、走行車体よりも側方外側に張り出して設けられている補給用の苗を載せておく予備苗載台38を示す。
【0024】
本実施例は、予備苗載台38の左右苗スライダー支柱部17に、肥料が入った施肥袋(図示せず)を搬送するガイド80を、走行車体2の前方を下げることができるように傾斜させ、かつガイド80の両端を水平にして設置することで、田植機に乗車しない補助者が、走行車体2の前方の下方から施肥袋(図示せず)をガイド80に載せることができ、ガイド80を介して走行車体2のオペレータ(操縦者)が上方より施肥袋24を受け取ることができるようにした構成を有している。
【0025】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視で門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0026】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における走行車体の進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で走行車体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が昇降するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎い角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0027】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体69、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0028】
苗植付部4には整地装置の一例である整地装置27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0029】
図4の側面図と図5の背面図はロータ支持構造の要部を示し、図6はロータ27a,27bとフロート55,56と苗植付装置52部分の要部平面図を示す。
ロータ支持構造には、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端には整地装置27(27a,27b)の駆動軸部70(70a,70b)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた苗植付装置連結部材71に連結している。
【0030】
図7は複数の整地装置27(27a,27b)の左右方向の隙間に、中心部に駆動軸部70aが回動自在に回転できるように円盤状のディスク29を駆動軸部70aに直角に貫通させて設置し、さらにディスク29の両面に円筒状のハブ29aをディスク29と同心状に設け、ハブ29aを整地装置27の左右方向で、整地装置27の駆動軸部70aに駆動軸部70aと同軸に設置した整地装置27にハブ27cをハブ29aのハブ内部に挿入した実施例の要部一部断面図である。
【0031】
上記のように、整地ロータ27a、27bにハブ29aを有するディスク29を設け、さらに整地装置27のハブ27cを設置したことにより、ディスク部29と整地装置27の隙間から夾雑物が入り込むことを防止すると同時に、夾雑物の駆動軸部70a等への絡まりを防止可能とした。
【0032】
なお、図6に示すようにロータ駆動ケース87のクラッチシフター97及び該シフター97作動用のクラッチケーブル99を後輪ギアケース18の内側で、かつ走行車体中央部へ配置している。
【0033】
ロータ昇降用モータ63が梁部材66の軸方向延長線上に設けられている。
図6に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ(センタロータということがある)27bはサイドフロート56の前方にあるロータ(サイドロータということがある)27aより前方に配置されている。そのため、左側のロータ27aの駆動軸部70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアからロータ駆動ケース87内のギアに伝達され、該ロータ駆動ケース87から自在継手72等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸部70bは左側のロータ27aの駆動軸部70aの車体内側の端部から動力が伝達されるチェーンケース73内連携機構Aは、図8に示す実施例では、カム115、ケーブル48から構成され、図10に示す実施例では、カム115、連結部材112、ケーブル48a、48bから構成される。のチェーン(図示せず)から動力伝達される。また、右側のロータ27aの駆動軸部70aはロータ27bの駆動軸部70bから右側のチェーン(図示せず)を介して動力伝達される。
【0034】
また、後輪11の通過した後の圃場には後輪11が大きな溝を作っているが、その溝を均平化すべき図6の苗植付部4の要部平面図に示す車輪が作った大きな凹部(溝)11を埋め戻すことができていなかった。そこで、図7に示すロータ27a・27bと後輪の配置関係を示す苗植付部4の要部背面図に示すように後輪11の直後にあるロータ27a1の径を従来より大きくして後輪11が作った大きな溝を埋め戻させるようにしても良い。
【0035】
ロータ27bの駆動軸部70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
【0036】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0037】
ロータ昇降用モータ63の作動により第一リンク部材76を上方へ回動する向きに梁部材66が回動し、該梁部材66の回動に伴って、第一リンク部材76と第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸部70bと駆動軸部70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0038】
本実施例では標準位置で圃場面より約40mmの高さにあるロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大約15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大約15mm低くできるように設定している。
【0039】
図5に示すように、上記ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で昇降ができる構成にしているので、ロータ27a,27bで畦際を整地しながら苗の植付を行う場合に、梁部材66の軸を回動可能にしたロータ27a,27bの作業状態からロータ27a,27bの収納状態への切替えを苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
【0040】
苗植付部4の上昇時にロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング78などを介して支持されているので、ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
また、操縦座席31近傍に設ける図示しないメータパネル上に設けたロータ高さ調節ダイヤルによりロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にしても良い。
【0041】
手動でロータ高さを設定する場合にはロータ27a,27bを収納位置に移動したままで次の苗植付作業時にロータ27a,27bを使用できないことがあるが、自動的にロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にすると、そのような不具合を防ぐことができる。
【0042】
また、図1に示すように、ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0043】
また、本実施例では、圃場の硬軟に合わせて座席31の近傍に設けた制御感度変更ダイヤル(図示せず)を調節して昇降用油圧シリンダ46の伸縮による苗植付部4の上下位置の制御感度を複数段に変更できる構成を備えている。制御感度変更ダイヤルによる制御感度の設定値毎にセンターフロート55の前後傾斜角度(仰い角)が圃場が硬い場合は前上がり側に、圃場が軟い場合は前下がり側になるように、複数の異なる角度にそれぞれ設定される。
【0044】
従って、前記仰い角センサの検出値が、制御感度変更ダイヤルにて設定されているセンターフロート55の傾斜角度になるように、制御装置100により昇降用油圧シリンダ46を伸縮させて、苗植付装置4が設定された上下位置になるように制御する。
【0045】
このとき、圃場が硬いと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を鈍感側にするが、これに連動してロータ27a,27bの上下位置を上昇側に補正して整地する。逆に圃場が軟らかいと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を敏感側にして、これに連動して上下位置を下降側に補正して整地する。これにより、制御感度変更によるセンターフロート55の前後傾斜角度(仰い角)の相違でロータ27a,27bの対地高さの相違を抑えることができる。また、土壌が硬い圃場で、ロータ27a,27bが深く入るとロータ27a,27bが大きな駆動抵抗となる不具合を抑え、連携機構B(後述)の破損や走行速度の低下を防止することができる(図6)。こうして圃場の硬軟度に合わせて安定した均平効果を上げることができる。
【0046】
また、静油圧式無段変速装置(HST)23のトラニオン軸の斜板の傾斜角度を調節することでHST油圧モータ(図示せず)の出力を変更する変速レバー16(図2)に連動させて、ロータ27a,27bを自動的に収納位置(上昇位置)にロータ昇降用モータ63により移動させることにすると、高速走行時に圃場の泥や水をロータ27a,27bが押すことがなくなる。このため、泥水流で隣接の既植苗を倒すようなことを防止できる。
【0047】
苗植付部4を上昇させたときにスプリング78で吊り下げられているだけのセンタロータ27bがロアリンク41に接するような位置に来るとロータ27bがバウンドしてしまい、ロータ27bを破損させてしまうおそれがある。また深田にロータ27bが潜ってしまうと、この場合もロータ27bを破損させてしまうおそれがある。
【0048】
そこで、図4に示すように、センタロータ27bがロアリンク41に接近すると、センタロータ27a,27bのカバー37の上方部37aの前端に設けた係止部37aaをロアリンク41に設けたフック101に留めるようにするとセンタロータ27bもロアリンク41も破損するおそれがない。
【0049】
本実施例において操縦席31の左右両側に畦クラッチ操作レバー19は3つ設置されており、1つの畦クラッチ操作レバー19は、走行車体2の左右両端からより組み合わせた隣り合う2条分の植付部52をセットで一体として操作できるように構成されている。
【0050】
ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている(図4、図5)。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の走行車体の右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0051】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの昇降を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
【0052】
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0053】
図8と図9は、苗植付部4の昇降に連動した畦クラッチ(図示せず)の「入/切」を行う連携機構Aの要部側面図であり、図8は単一の畦クラッチ(図示せず)と畦クラッチレバー19の作用機構についての概念図であり、また、図9は連携機構Aの畦クラッチレバー19の要部分解斜視図である。
【0054】
図8は、上リンク40の上昇運動を、自動復帰ケーブル48の張力に変換し、自動復帰ケーブル48の張力により畦クラッチ操作レバー19を「入」状態にするまでの連携機構Aの構成を示した図である。なお、連携機構Aを構成する部材は後述する。
【0055】
「く」の字型のカム115の一端には2つの小孔115a、115bがそれぞれ設けられている。また、「く」の字型のカム115の折れ曲がる位置の近傍にはカム115を回転させるための軸117aを回動自在にカム支持プレート117に設置するための孔115dが設けられ、カム115の回動運動の支点となっている。
【0056】
前記上リンク40に設けた支持片40bの先端に円盤状のローラ118が取り付けられ、ローラ118の円周が当接しているカム115の上方部分の後方側面の縁115eは凸状に構成され、また、下方部分の後方側面の縁115fは凹状に構成されており、上方の凸状の縁115eと下方の凹状の縁115fの間には、ローラ118が上リンク40の昇降に伴って上方と下方を行き来できるようにスロープ115sが設けられている。
【0057】
上リンク40の上昇によりローラ118がカム115の側面に設けられた下方の凹の縁115fから上方の凸状の縁115eに移るときに、上方の凸状の縁115eで自動復帰ケーブル48の張力が強くなることから、スロープ115sの位置を適切に配することにより、畦クラッチ操作レバー19の「入」状態にするタイミングを決定することができる。
【0058】
上リンク40が下がっているときに、下方の凹状の縁115fとローラ118の間に隙間を設け、上リンク40と共に上昇するローラ118に伴うカム115の作動に遊びが生じるようにしたので、作動不良を防止可能とし、安定的なカム115の動作が実現できる。
【0059】
カム115の小孔115bには、自動復帰ケーブル48aがたわまないように張力をかけて回動自在に接続される。カム115を回動自在に固定するためのカム支持プレート117は、走行車体2に支持されたリンクベースフレーム42にプレート117の側面が走行車体の側面を向くように固定される。カム支持プレート117の前方に設けられた折り曲げ片117bには、自動復帰ケーブル48aを鞘状に包む自動復帰アウタケーブル49等を支持するための溝117cが設けられる。
【0060】
さらに、上リンク40が下降したときにおいてもカム115の下端が前方に引っ張られるように、カム支持プレート117の溝117c近傍の折り曲げ片117bと小孔115a,b近傍のカム115とを引張スプリング113で架け渡して設置する。
【0061】
図10に示す連結部材112から、カム支持プレート117に設けられた自動復帰アウタケーブル49を固定する溝117cに至るまで、自動復帰ケーブル48は自動復帰アウタケーブル49によって鞘状に包まれて固定される。
【0062】
一方、図9は連携機構Aの自動復帰ケーブル48の張力が畦クラッチレバー19を倒す力として作用するまでの構成を示した要部分解図である。
畦クラッチ操作レバー19の下端には、畦クラッチ操作レバー19の操作により回動する支軸としての機能を果たしている円筒状のハブ19aが走行車体2の左右方向に位置するように設置されている。このとき、ハブ19aの中心軸には回動軸22が貫通しており、ハブ19aの軸を中心とした回動を可能としている。
【0063】
畦クラッチケーブルハブ19aには走行車体の前方を向く接触アーム109が固定され、ハブ19aの回動と共にハブ19aの回動支点を中心として上下方向に回転する構成を有している。
【0064】
接触アーム109は、下方から上方に向けて回転時に、後述するレバー操作アーム110のピン107と接触可能に、カム支持プレート117の両側から両面を挟みこんで設置する。なお、図9において、接触アーム109はレバー操作アーム110の左右両側に存在し、ピン107で左右の接触アーム109を下方に押す。
【0065】
側面視で「へ」の字型のレバー操作アーム110の折れ曲がり部付近にハブ19aが回動自在に貫通し、レバー操作アーム110の回動支点として機能する。また、側面視で「へ」の字型のレバー操作アーム110の一端には、自動復帰ケーブル48が接続された「コ」の字型の係止部材83を回動自在に接続する孔が設けられており、他端には、走行車体2の左右方向を向くピン107が固定され、接触アーム109の回動運動により接触アーム109がピン107の上方から衝突してレバー操作アーム110を押し下げることを可能としている。
【0066】
この時、レバー操作アーム110は、畦クラッチケーブルハブ19aを「支点」、自動復帰ケーブル48が接続された係止部材83との接続位置を「力点」、ピン107を「作用点」とする「てこ」として作用し、自動復帰ケーブル48の張力を畦クラッチレバー19の昇降や畦クラッチ(図示せず)の「入/切」の力として効率良く伝達することを可能としている。
【0067】
本実施例の上記構成のうち、上リンク40の上昇運動を自動復帰ケーブル48の張力に変換し、自動復帰ケーブル48の張力を畦クラッチレバー操作アーム110の「入」状態への切り換えを行うまでの機構を連携機構Aと呼ぶ。
【0068】
上述した連携機構Aは、汎用される6条〜10条等の複数条植えの田植機にも連携機構Aを適用することは可能である。この場合、連携機構Aは、自動復帰ケーブル48と、カム115から構成される。
【0069】
図10は6条植えの田植機に図8の畦クラッチと畦クラッチレバー19の作用機構を適用した場合の概念図である。
【0070】
また図10は、図1の6条植えの田植機の実施例の一であり、畦クラッチ操作レバー19は3つ設置され、3つの畦クラッチ操作レバー19のそれぞれに、自動復帰ケーブル48bが接続されている。
【0071】
該自動復帰ケーブル48bは苗植付部4を上昇させる上リンク40の運動が該連携機構Aによって伝達され、複数の畦クラッチ操作レバー19をほぼ同時に「切」状態から「入」状態にする連結機構であるため、それぞれの3本の自動復帰ケーブル48bは自動復帰ケーブル48にたわみが生じることがないように、一定の張力を保って1本の自動復帰ケーブル48aに連結部材112を介して連結される。
【0072】
この場合の連携機構Aはカム115と連結部材112を連携する自動復帰ケーブル48aと、連結部材112と複数の各畦クラッチ操作レバー19を連携する複数の自動復帰ケーブル48bから構成される。
【0073】
上述の上リンク40から畦クラッチ操作レバー19に至る連携機構Aにより、苗植付部4の上昇に連動して、全ての畦クラッチを「入」に切り替える構成(これを「畦クラッチの自動復帰」ということがある。)としたことにより苗植付部4を上昇させて圃場端で走行車体の向きを変えるために旋回させ苗植付部4が上昇するときに、全ての畦クラッチを「入」状態にすることができ、圃場端における走行車両2の方向転換直後に苗植付部4が下降すると同時に苗の植え付けを開始することを可能とする。
【0074】
本構成により、圃場端で苗が植え付けられない箇所が生じることを防止することも可能となり、苗が植え付けられなかった圃場に作業者が後から手作業で苗を植える必要が無く、作業者の労力が軽減され作業能率が向上する。
【0075】
図11(a)は、図8に示す連携機構Aにおける、上リンク40の上昇運動を畦クラッチ操作レバー19を「入」状態にする連携機構Aと連携機構Aに自動復帰ケーブル48の張力を畦クラッチ(図示せず)の「入」にする機構とを共に示した要部側面図である。
【0076】
図11(a)は、図8の説明で先述したように上リンク40の上昇に伴う自動復帰ケーブル48の張力によりレバー操作アーム110の回動に伴って、ピン107が接触アーム109が押し下げられる構造に加え、畦クラッチケーブルハブ19aに、上記接触アーム109とおよそ直角を成すようにアーム102が固着し、アーム102の先端にピン108を設置し、ハブ19aの回動と共に接触アーム109とアーム102がハブ19aを回動中心として上下方向に回動する構造を示した図である。
【0077】
走行車両2の側面視で「コ」の字型の第1プレート119の一端にはアーム102の先端部にあるピン108が回動自在に貫通して設置され、他端には畦クラッチに接続される畦クラッチケーブル24が接続されている係止部材84が回動自在に設置されている。係止部材84の構造は上記係止部材83と同様にして、畦クラッチケーブル24と第1プレート119に接続されている(図11(a))。
【0078】
図11(b)は係止部材83とレバー操作アーム110の接続部位の要部拡大斜視図である。「コ」の字型の係止部材83は、対向する一対の側面83b、83cと、該対向側面83b、83cの一端同士を略直角に接続する側面基準面83dを有する。対向側面83b、83cのそれぞれには、側面視で「へ」の字型のレバー操作アーム110の一端と係止部材83を回動軸86にて回動自在に接続し、レバー操作アーム110を係止部材83で噛み込むように配置し、ハブ19aの内部の貫通孔に回動軸22を通し、レバー操作アーム110と接触アーム109、アーム102を回動軸22を中心に回動自在に支持する。係止部材83の基準面83dには、自動復帰ケーブル48を固定するために小孔が設けられており、自動復帰ケーブル48は該小孔を通され固定具により設置される。
【0079】
図11(a)において、側面視で「コ」の字状の第1プレート119の両端は、走行車両2の後方を向くようにして設置されている。上リンク40の上昇に伴い生じた自動復帰ケーブル48に張力により、レバー操作アーム110を反時計回りに回動軸22を中心に回動させ、レバー操作アーム110に設置されたピン107がレバー操作アーム110の下方へ回動して接触アーム109を押し下げ、接触アーム109が回動する方向と同じ方向にアーム102が回動する。アーム102の後方への回動に伴い第1プレート119の畦クラッチケーブル24が接続されている端が前方に移動し、その結果畦クラッチ(図示せず)が「入」になる。
【0080】
この時、畦クラッチレバー19を引き上げるとアーム102が時計回り方向に回動軸22を中心に回動し、第1プレート119のピン108と接続されている下方端部が後方に移動すると共に、係止部材84が接続されている上方端点が後方に移動し、畦クラッチケーブル24が後方に移動し、その結果として畦クラッチ(図示せず)が「切」となる。
【0081】
すなわち、上記構成は、上リンク40の上昇に伴い畦クラッチレバー19が押し下げられ、畦クラッチが「入」となり、畦クラッチレバー19を引き上げると畦クラッチが「切」となる機能を有する。
【0082】
図12は、図11(a)に示されるアーム102の端部に設けられたピン108に「コ」字状の第1プレート119と第2プレート120の一端を回動自在に設置し、第2プレート120の他端にはケーブル46を固定する係止部材85を回動自在に設置し、上リンク40の上昇により生じた自動復帰ケーブル48の張力をケーブル46の張力として連携することで、施肥クラッチ(図示せず)や苗送りベルトクラッチ(図示せず)を「切」状態にすることを可能とした実施例である。
【0083】
本実施例を構成する自動復帰ケーブル48の張力を施肥クラッチ(図示せず)や苗送りベルトクラッチに連動させる機構は、図11(a)に示される部材に加え、アーム102に回動自在に設置される第2プレート120と、第2プレート120に回動自在に接続される係止部材85と、係止部材85に接続されるクラッチケーブル46等の部材により構成される。
【0084】
次にそれぞれの部材の作用様式の詳細について説明する。
【0085】
第2プレート120は側面視で「コ」字型をしており、第2プレート120の一端にピン108を介して第2プレート120とアーム102が回動自在に接続されている。第2プレート120の他端は、ケーブル46の一端が固定されている係止部材85と回動自在に接続されているが、その接続様式は前述した係止部材83,84と同様である。
【0086】
ケーブル46は、施肥クラッチ(図示せず)と苗送りベルトクラッチ(図示せず)に接続されており、アーム102の回動に伴う第2プレート120の前後方向の運動に伴うケーブル46の張力に応じて施肥クラッチと苗送りベルトクラッチが「入/切」される構成である。
【0087】
畦クラッチレバー19を上方に引き上げる際、ハブ19aの回転に伴いアーム102が回動し、アーム102のピン108が接続されている第2プレート120端部が前方上方向に回動する際に、第2プレート120のピン108が接続されている「コ」の字の内側とハブ19aが互いに接触する。その後、さらに畦クラッチレバー19を引き上げると、第2プレート120のピン108と接続されている点を「力点」、ハブ19aと第2プレート120の接触点を「支点」、第2プレート120と係止部材85の接続部位を「作用点」とする「てこの原理」により、畦クラッチレバー19の押し上げる力が軽減され、効率よく「作用点」に力をかけることが可能となり、ケーブル46によるクラッチの「入/切」を確実にする。
【0088】
図13は、カム115の一端に設けたケーブル接続用の小孔115aに、ロータ27a,27bの回転の「入/切」をするクラッチケーブル99を回動自在に接続し、前記上リンク40の上昇に伴うカム115の運動によりクラッチケーブル99が引っ張られ、整地ロータクラッチ39を「切」状態にしてロータ27a,27bを停止させることにより(図6)、走行車体2の圃場端での旋回時に、整地装置27を停止させて、ロータ27a、27bの空転を防止して駆動力の無駄とロータ27a、27bに付着した泥の飛散を防止することを可能とし、さらに、走行車体の旋回直後に上リンク40が下降した時には整地ロータクラッチ39を「入」状態にして、圃場端での整地のし忘れを防止する実施例である。
【0089】
ここで、上リンク40の上昇運動を整地ロータクラッチ39に伝達するまでのカム115と、クラッチケーブル99と、クラッチシフター97により構成される機構を連携機構Bと呼ぶ(図6、図13)。
【0090】
本実施例の構成により、前記上リンク40の上昇運動を畦クラッチ操作レバー19を「入」状態にし畦クラッチ(図示せず)を「入」にする連携機構Aの作用と同時に、連携機構Bによりロータ駆動ケース87内の整地装置クラッチ39を「切」状態にすることが可能であり、また、前記昇降リンク装置3の下降に連動して整地装置クラッチ39を「入」状態にし、前記昇降リンク装置3の上昇により「入」状態になった畦クラッチを「入」状態のまま保つ構成とすることで、枕地整地作業の際に整地装置27の作動を忘れることを防止できるので、走行車体2の旋回により荒れた枕地が確実に整地され、また、走行車体2の圃場端での方向転換直後からすぐさま圃場の整地と苗の植え付けの双方を可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は田植機の苗植付部の伝動経路に多岐な機能を付与する構成とし有用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0092】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 11a 後輪駆動軸
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 16 変速レバー
17 左右苗スライダー支柱部 18 後輪ギヤケース
19 畦クラッチ操作レバー 19a ハブ
20 エンジン 21 ベルト伝動装置
22 回動軸 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27(27a,27b)ロータ 27a1 ロータ
28 施肥連携機構 29 ディスク
30 エンジンカバー 31 座席
32 フロントカバー 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37 ロータカバー 37a 上方部
37b 後方部 38 予備苗載台
39 整地ロータクラッチ 40 上リンク
41 下リンク 42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 44 連結軸
46 昇降油圧シリンダ 48 自動復帰ケーブル
49 自動復帰アウタケーブル 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 ブロア用電動モータ
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 63 ロータ昇降用モータ
65 苗植付部支持枠体 65a 支持ローラ
65b 両側辺部材 66 梁部材
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
69 作溝体 70(70a,70b) 駆動軸部
70b’ ユニバーサルジョイント 71 苗植付装置連結部材
72 自在継手 73 チェーンケース
74 補強部材 74a 取付片
76 第一リンク部材 77 第二リンク部材
78 スプリング 80 ガイド
81 ロータ上下位置調節レバー 82 折曲片
83、84、85 係止部材 86 回動軸
87 ロータ駆動ケース 94 昇降リンクセンサ
96 ロータ連動入切スイッチ 97 クラッチシフター
99 クラッチケーブル 100 制御装置
101 フック 102 アーム
107、108 ピン 109 接触アーム
110 レバー操作アーム 112 連結部材
113 スプリング 114 ローラ(説明文を書く)
115 カム 117 カム支持プレート
118 ローラ 119 第1プレート
120 第2プレート A、B 連携機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対の車輪(10,11)を備えた走行車体(2)と、
該走行車体(2)を旋回させる操舵装置(34)と、前記走行車体(2)の後部に圃場に植える苗を積載しておく苗載台(51)と前記苗載台(51)から苗を取って圃場に植え付ける複数条分の苗植付具(52a)を備えた植付装置(52)を有する苗植付部(4)と、
前記苗植付部(4)を昇降させる昇降リンク装置(3)と、
該苗植付部(4)への駆動力の伝達を入切し、かつ複数条のうちの特定の植付条に対応するそれぞれの前記植付装置(52)の駆動力の伝達を入切する複数の畦クラッチと、複数の畦クラッチを各々操作する複数の畦クラッチ操作レバー(19)と、
前記苗植付部(4)に対して昇降自在に、かつ走行車体(2)の横幅方向に向けて配置され、接地して地面を整地する整地装置(27a,27b)と、
該整地装置(27a,27b)への駆動力を入切する整地装置クラッチ(ロータクラッチ)(39)
を設けた苗移植機において、
前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の昇降に連動して全ての前記畦クラッチ操作レバー(19)を切り替えるための、前記昇降リンク装置(3)と前記畦クラッチ操作レバー(19)を連携する牽引部材(48)を含む連携機構(A)を備えたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の上昇に連動して前記整地装置クラッチ(39)を「切」にし、前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の下降に連動して前記整地装置クラッチ(39)を「入」にするための、前記昇降リンク装置(3)と前記整地装置クラッチ(39)を連結する連携機構(B)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記連携機構(A)の一構成部材である前記牽引部材(48)は第1牽引部材(48a)と第2牽引部材(48b)と連結部材(112)から構成され、
前記昇降リンク装置(3)による前記苗植付部(4)の昇降に連動して回動する前記連動部材(115)の基部に第1牽引部材(48a)の一端を接続し、
複数の前記畦クラッチ操作レバー(19)の第2牽引部材(48b)の一端を連携し、
前記第1牽引部材(48a)の他端と複数の前記第2牽引部材(48b)の他端を連結部材(112)に接続したことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記畦クラッチ操作レバー(19)を支持して走行車体(2)に設けられた回動軸(22)を中心に回動するハブ(19a)にレバー操作アーム(110)の中央部を回動自在に設置し、
該レバー操作アーム(110)の一端にピン(107)を設け、
前記ハブ(19a)に該ハブ(19a)の一方向への回転時に前記ピン(107)を押す接触アーム(109)を固定し、
該レバー操作アーム(110)の他端に前記第2牽引部材(48b)の一端を接続した係止部材(83)を回動自在に連結した
ことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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