説明

若材齢コンクリート強度測定方法及び装置

【目的】 覆工褄部のコンクリート強度測定に適した若材齢コンクリート強度測定方法及び装置を提供する。
【構成】型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために、若材齢コンクリート強度測定装置によって覆工褄部のコンクリート強度を測定する方法であって、
前記型枠の覆工褄部位置に被固定部材を予め配設しておき、
該被固定部材の表面と、強度測定位置の覆工コンクリート表面とを露出した後、
前記被固定部材に前記測定装置を取付固定してコンクリート強度の測定を行うこと
を特徴とする若材齢コンクリート強度測定方法及び装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は若材齢コンクリート強度測定方法及び装置に関し、詳しくは覆工褄部のコンクリートの若材齢時の強度測定に適した方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
若材齢時におけるコンクリートの強度管理は、通常コンクリート打設後の経過時間、及び強度管理供試体による圧縮試験結果をもとにして行なっているが、旋工管理上は現場コンクリートによる直接的な強度管理方法が望ましい。従って若材齢時における現場コンクリートの圧縮強度を非破壊的に求める強度管理方法の検討が必要である。
【0003】
硬化コンクリートの場合には、従来技術におけるコンクリートの非破壊的な現場強度推定方法として各種の方法が提案され、規格、標準化されている。
【0004】
しかしながら、若材齢時における極めて低強度のコンクリートの場合、規格、標準化された方法はない。
【0005】
圧縮強度10kgf/cm2程度の低強度を対象とした点で、土質分野のサウンデイングにおける動的並びに静的貫入方式や回転方式が規格、標準化されているのにすぎない。
【0006】
前記動的貫入方式による標準貫入試験は、櫓を組み、地中深くに円錐状の先端部を貫入させてN値を測定する方式であり、静的貫入方式のコーン貫入試験は、入力或いは重錘で地中に円錐状の先端部を貫入させて貫入抵抗値を測定する方式であり、また回転方式の簡易ベーン試験は、断面十字形のベーン(抵抗翼)を地中に押込み、中心軸に極めて緩徐な回転を与えて抵抗モーメント値を測定する方式である。
【0007】
前記動的貫入方式の標準貫入試験は支持層の深さ及び支持力の判定、特に砂層の密度、強度変化の測定に適し、粘土の場合は硬質粘度に好適であるが、大規模であり、非破壊試験には不適当である。
【0008】
前記静的貫入方式のコーン貫入試験は携帯式で便利であるが、コーンが粗骨材に当ると抵抗値が大きくなり、精度が期待できない。
【0009】
前記回転方式の簡易ベーン試験は携帯型で便利であるが非破壊試験には不適当で、ベーンが粗骨材に当ると抵抗モーメントが大きくなり、精度が期待できない。
【0010】
そこで本発明者らは、貫入試験装置における先端面に突起状の目印が中心部で交叉するように設けられた先端貫入部を、若材齢時における極めて低強度のコンクリート表面に押当てて所定の荷重を載荷したのち前記貫入試験装置を取除き、前記コンクリート表面に形成されたくぼみに残った前記突起状の目印の跡をくぼみの径として測定し、同くぼみの径と圧縮強度との相対関係から前記若材齢のコンクリートの強度を推定する技術を先に提案した(特許文献1及び2参照)。
【0011】
当該先提案技術によれば、簡単な構成で、貫入試験結果から若材齢時における極めて低強度のコンクリートの強度発現を確認することが可能となった。
【0012】
本出願人は、先提案技術を用いて様々な条件・現場等での若材齢コンクリートの強度測定を実施したところ概ね良好な結果を得ることができたが、覆工コンクリートの脱型判定を行う際の覆工褄部のコンクリート強度測定に用いるには実用上問題があることが判った。
【0013】
即ち、覆工褄部のコンクリート強度測定では、トンネルアーチ最上部付近の覆工褄部の圧縮強度を推定することが重要であるが、当該測定位置はトンネル内の最も高い位置であると共に測定方向が水平方向となり、しかも高い圧縮強度を必要とする覆工褄部は若材齢時とは云え高い載荷力による強度測定を行う必要があるため、測定者が先提案技術の測定装置のハンドルシャフトを握持しての載荷では安定且つ正確な強度測定が困難であることが判った。特に、所定の荷重を載荷した際に、載荷の反力によって測定位置のズレや載荷方向の傾斜が生じ易く正確な測定結果が得られ難いという課題を有していることが判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第1989847号
【特許文献2】特許第1989848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明の課題は、覆工褄部のコンクリート強度測定に適した若材齢コンクリート強度測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
【0017】
1.型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために、若材齢コンクリート強度測定装置によって覆工褄部のコンクリート強度を測定する方法であって、
前記型枠の覆工褄部位置に被固定部材を予め配設しておき、
該被固定部材の表面と、強度測定位置の覆工コンクリート表面とを露出した後、
前記被固定部材に前記測定装置を取付固定してコンクリート強度の測定を行うこと
を特徴とする若材齢コンクリート強度測定方法。
【0018】
2.前記被固定部材が鉄板であり、該鉄板への強度測定装置の取付固定が磁力固定により行われる構成であることを特徴とする上記1に記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【0019】
3.前記被固定部材が雄ネジ及び/又は雌ネジが取付けられた板材であり、該板材への強度測定装置の取付固定が螺合固定により行われる構成であることを特徴とする上記1に記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【0020】
4.強度測定を行う覆工褄部位置が、覆工コンクリートのスプリングラインより上方の褄部位置であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【0021】
5.強度測定を行う覆工褄部位置が、覆工コンクリートのトンネルアーチの最上部乃至は最上部付近の褄部位置であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【0022】
6.強度測定位置のコンクリート表面に突起部を押し当て所定の荷重を載荷することで該突起部による載荷痕を前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕の深さ及び/又は大きさで覆工コンクリートの強度を測定する強度測定装置を用いることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【0023】
7.型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために、覆工褄部の若材齢コンクリートの強度を測定する若材齢コンクリート強度測定装置であって、
前記型枠の覆工褄部位置に予め配設される被固定部材と、
強度測定位置のコンクリート表面の強度を測定する強度測定装置と、
該強度測定装置の前端部分に取り付けられ、前記被固定部材に固定することで前記強度測定装置を強度測定位置に安定状態で保持固定する固定手段と、
を有して構成されることを特徴とする若材齢コンクリート強度測定装置。
【0024】
8.前記被固定部材が鉄板であり、前記固定手段が磁石であることを特徴とする上記7に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0025】
9.前記被固定部材が雄ネジ及び/又は雌ネジが取付けられた板材であり、前記固定手段が前記雄ネジ及び/又は雌ネジに螺合する雌ネジ及び/又は雄ネジを有する螺合部材であることを特徴とする上記7に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0026】
10.前記被固定部材が、前記強度測定装置による強度測定位置の前記コンクリート表面が露出するように透孔又は間隙又は切欠が設けられた構成であることを特徴とする上記7〜9のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0027】
11.前記被固定部材が、強度測定位置の覆工コンクリート表面が1箇所又は2箇所以上露出可能な構成であることを特徴とする上記10に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0028】
12.前記強度測定装置が、強度測定位置のコンクリート表面に突起部を押し当て所定の荷重を載荷することで該突起部による載荷痕を前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕の深さ及び/又は大きさで覆工コンクリートの強度を測定する構成であることを特徴とする上記7〜11のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0029】
13.前記強度測定装置が、空気圧により荷重を載荷する構成であることを特徴とする上記12に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【0030】
14.前記強度測定装置が、鋼板を十字状に組合せた突起部によりコンクリート表面に十字状の載荷痕を形成可能な構成であることを特徴とする上記12又は13に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【発明の効果】
【0031】
請求項1又は7に示す発明によれば、覆工褄部のコンクリート強度測定に適した若材齢コンクリート強度測定方法及び装置を提供することができる。
【0032】
特に、強度測定装置を型枠の覆工褄部位置に配設した被固定部材に取付固定した状態で強度測定を行う構成により、水平方向での強度測定であっても測定位置のズレや測定方向の傾斜等が生じることなく安定且つ正確な強度測定結果を得ることができる。
【0033】
請求項2又は8に示す発明によれば、強度測定装置を覆工褄部の強度測定位置に極めて容易且つ安定状態で保持固定することができる。
【0034】
請求項3又は9に示す発明によれば、強度測定装置を覆工褄部の強度測定位置に容易に且つ極めて安定した状態で保持固定することができる。
【0035】
請求項4に示す発明によれば、測定位置が測定の容易なトンネル内の低層位置ではなく、スプリングラインより上方位置の覆工褄部の測定であっても、測定位置のズレや測定方向の傾斜等が生じることなく安定且つ正確な強度測定結果を得ることができる。
【0036】
請求項5に示す発明によれば、測定位置が測定の容易なトンネル内の低層位置ではなく、測定の最も困難なトンネル内の最も高い位置となるトンネルアーチ最上部付近の覆工褄部の圧縮強度の測定であっても、測定位置のズレや測定方向の傾斜等が生じることなく安定且つ正確な強度測定結果を得ることができる。
【0037】
請求項6又は12に示す発明によれば、コンクリート表面に形成された載荷痕の深さ及び/又は大きさを測定することで覆工コンクリートの強度を容易に推定することができる。
【0038】
請求項10に示す発明によれば、測定位置のコンクリート表面を露出させることができるので、測定位置における強度測定を速やかに行うことができる。
【0039】
請求項11に示す発明によれば、覆工コンクリート表面が2箇所以上露出している場合には強度測定位置を選択することもできるし、2箇所以上の測定で得られた測定結果から平均値を採ることで強度測定精度を向上させることができる。
【0040】
請求項13に示す発明によれば、空気圧により荷重を載荷する構成により、バネ等の機械的な荷重載荷構成に比して、多数回の繰り返し作動におけるバネ強度の劣化等の問題が生じる率が低く、安定して正確な荷重の載荷を行うことができる。
【0041】
請求項14に示す発明によれば、十字状の載荷痕が形成されることにより、十字状の中心から四方に延びる載荷痕の深さ及び/又は大きさを測定することで測定値の誤差を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る若材齢コンクリート強度測定方法の測定位置を説明する概略説明図
【図2】本発明によって強度測定が行われる覆工コンクリート(地山部分は図示を省略)の一例を示す概略斜視図
【図3】本発明に好ましく用いられる強度測定装置の一例を示す概略構成図
【図4】図3の強度測定装置の突起部の一例を示す概略斜視図
【図5】型枠の覆工褄部位置に配設される鉄板の他の例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る若材齢コンクリート強度測定方法及び装置について添付図面に基き詳細に説明する。
【0044】
図1〜図5は上記図面の簡単な説明で述べた通りであり、図1は図2のI方向から見た覆工褄部の一部を示す。
【0045】
本発明に係る若材齢コンクリート強度測定方法及び装置は、若材齢コンクリートの強度測定を行う技術であり、トンネルを構成する覆工コンクリート(図2の符号1参照)のコンクリート打設後の型枠の脱型時を判定するために、強度測定装置によって覆工褄部(図2の符号11参照)のコンクリート強度を測定する場合に用いて特に好適な技術である。
【0046】
本発明の若材齢コンクリート強度測定方法の構成としては、図1に示すように、型枠2の覆工褄部位置(図2の覆工褄部11の位置)に被固定部材3を予め配設しておき、強度測定時に、該被固定部材3の表面と、覆工褄部11の強度測定位置11Dのコンクリート表面とを露出した後、前記被固定部材3に強度測定装置4を取付固定してコンクリート強度の測定を行うものである。
【0047】
また、本発明の若材齢コンクリート強度測定装置の構成としては、型枠2の覆工褄部位置(図2の覆工褄部11の位置)に予め配設される被固定部材3と、覆工褄部11の強度測定位置11Dのコンクリート表面の強度を測定する強度測定装置4と、該強度測定装置4の前端部分に取り付けられ、前記被固定部材3に固定することで前記強度測定装置4を強度測定位置11Dに安定状態で保持固定する固定手段41と、を有して構成されるものである。
【0048】
覆工コンクリート1の強度を測定する際に適した位置としては、図2に示す覆工褄部11のいずれかの位置であり、特に圧縮強度が要求される覆工コンクリート1の構成上、該覆工コンクリート1のスプリングラインSLより上方の褄部位置11Aであることがより適しており、覆工コンクリート1のトンネルアーチの最上部乃至は最上部付近の褄部位置11Bであることがとりわけ適している。
【0049】
強度測定装置4は、図3に示すように、覆工褄部11(好ましくは図2の符号11Aの位置、より好ましくは図2の符号11Bの位置)の強度測定位置11Dのコンクリート表面に突起部42を押し当て、エアシリンダ43による空気圧によって所定の荷重を載荷することで該突起部42による載荷痕(図1の符号4X参照)を前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕4Xの深さ及び/又は大きさで覆工コンクリート1の強度を測定する構成のものを用いることができる。また、図3において、符号44は圧力弁、符号45は圧力計、符号46は強度測定装置4の各構成の制御を行う制御部、符号47は強度測定装置4の各部を動作させるための電源となるバッテリ、符号48はエアシリンダ43を動作させて突起部42に所定の荷重を載荷させる操作を行う操作部、を各々示す。
【0050】
図1及び図3に示す本実施例においては、被固定部材3は鉄板から成り、強度測定装置4の前端部分に取付けられることで鉄板からなる成る被固定部材3に取付固定する固定手段41は磁石体から成る。固定手段41である磁石体としては、当該強度測定装置4を強度測定位置11Dに安定状態で保持固定、特に荷重を載荷した際に該載荷の反力に抗して保持固定な磁力を有する磁石体であれば永久磁石でもよいし、電磁石であってもよいが、好ましくは磁力作用をオン/オフ可能な電磁石が強度測定装置4の強度測定位置11Dへの保持固定/固定解除の容易さの点から好ましい。
【0051】
所定の荷重をコンクリート表面に載荷することで載荷痕4Xを形成する突起部42としては、図4に示すように鋼板を十字状に組合せた構成により、前記コンクリート表面に図1に示すような十字状の載荷痕4Xを形成する構成のものが好ましい。
【0052】
エアシリンダ43による荷重が所定の値に到達したか否かの確認は、圧力計45を目視確認することで行うことも可能であるが、好ましくは強度測定装置4のいずれかの箇所(例えば、エアシリンダ43の一部、圧力計45の一部、制御部46の一部、操作部48の一部等)に所定荷重に到達したことを測定者に知らせる表示手段(例えば、ランプ点灯等)及び/又は報知手段(例えば、ブザー音等)を設けることで確認を行う構成が好ましい。
【0053】
上記構成を有する強度測定装置4は、前述した通り、該強度測定装置4の前端部分に取付けられた固定手段41を、型枠2の覆工褄部11の強度測定位置11Dに相当する部分に予め配設した被固定部材3に取付固定した状態で強度測定を行う構成である。図1において、符号31は、この固定の際の固定手段41である磁石体の被固定部材3である鉄板への固定位置を示す。
【0054】
本実施例においては鉄板から成る被固定部材3には、強度測定位置11Dの覆工褄部11のコンクリート表面を露出させるための透孔32が設けられており、該透孔32内に露出したコンクリート表面に前記強度測定装置4の突起部42を押し当てて所定の荷重を載荷することで覆工コンクリート1の強度測定を行うことが可能となる。
【0055】
被固定部材3は、型枠2の覆工褄部11の位置に予め配設するが、該固定部材3を当該位置部分の型枠として型枠2の一部とする構成としてもよいし、当該位置部分の型枠2のコンクリート打設側に該型枠2と重層する状態で配設した構成としてもよい。尚、型枠2の一部とする構成の場合、透孔32からの打設コンクリートの漏出を防ぐため透孔32部分は強度測定時までは閉塞させておくことは言うまでもない。
【0056】
上記構成による若材齢コンクリート強度測定方法及び装置によって、覆工コンクリート1の覆工褄部11の強度測定位置11Dのコンクリート表面に突起部42を押し当て所定の荷重を載荷することで該突起部42による載荷痕4Xを前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕4Xの深さ及び/又は大きさを測定することで覆工コンクリート1の強度を測定することができる。
【0057】
載荷痕4Xの深さ及び/又は大きさから覆工コンクリート1の強度を推定するには、載荷痕4Xの十字状の夫々の辺(縦辺と横辺)の長さから平均値を求め、得られた平均値を載荷痕の貫入径とし、覆工コンクリート1と同配合にて形成した供試体を用いて行った圧縮強度試験結果から得られた相関関係の関係式に前記貫入径を当てはめることで前記覆工コンクリート1の強度を推定することができる。
【0058】
以上、本発明に係る若材齢コンクリート強度測定方法及び装置について実施例に基き説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0059】
例えば、上記実施例では透孔32を有する被固定部材3を用いたが、本発明は当該構成に限定されず、図5の(A)〜(C)に示すように、被固定部材3を複数枚構成として各被固定部材の間隙からコンクリート表面の強度測定位置11Dを露出させるようにすることもできる。
【0060】
また、上記実施例の透孔32、並びに図5の(A)〜(C)に示す間隙の他に、被固定部材3の一部を切欠することで強度測定位置11Dの覆工褄部11のコンクリート表面を露出させる構成とすることもできる。
【0061】
強度測定位置11Dの覆工褄部11のコンクリート表面を露出させるために被固定部材3に設けられる透孔32・間隙・切欠は1箇所に限らず2箇所以上であってもよい。2箇所以上である場合、その配列は横並びでもよいし、縦並びでもよいし、数によっては縦横並びでもよいし、ランダムでもよい。また、被固定部材3は1枚のみ配置に限らず、2枚以上配置してもよく、透孔32・間隙・切欠を1枚につき1箇所又は2箇所以上設けてもよいし、2枚以上の各枚毎に1箇所又は2箇所以上設けてもよい。
【0062】
強度測定位置11Dの覆工褄部11のコンクリート表面を2箇所以上露出させる構成の場合、強度測定は任意の1箇所のみを選択して測定してもよいし、任意の複数箇所の測定であってもよいし、全ての箇所の測定であってもよい。2箇所以上の測定で得られた測定結果から平均値を採ることで強度測定精度を向上させることができる。
【0063】
更に、強度測定装置4は、上記実施例のエアシリンダ43による空気圧による荷重に限定されず、バネ力によって荷重を載荷する構成のものであってもよいし、モータ等の他の駆動源によって荷重を載荷する構成のものであってもよい。
【0064】
更に、載荷痕4Xを形成する突起部32についても上記実施例の十字状に限定されず、丸・三角・四角・その他の形状の点状、円・楕円・角形等の線状、二重円・三重円・その他の多重構成の角形等の多重線状、等の形状の載荷痕を形成する、この種のコンクリート強度測定装置に用いられる公知公用の突起部構成を特別の制限なく用いることもできる。
【0065】
更に、被固定部材3への強度測定装置4の取付固定は、上記実施例の鉄板から成る被固定部材3に強度測定装置4の前端部分に取り付けられた磁石体から成る固定手段41による磁力固定に限定されず、強度測定装置4を強度測定位置に取付固定できる構成であればよく、例えば、被固定部材3が雄ネジ及び/又は雌ネジが取付けられた板材として、該板材に強度測定装置4を螺合固定により取付固定する構成であってもよい。かかる螺合固定する構成の場合、被固定部材3は、上記実施例と同様の鉄板から成る板材であってもよいし、アルミ板、木製板、セラミック板、コンクリート板、硬質樹脂板等の板材であってもよい。
【0066】
更に、被固定部材3への強度測定装置4の取付固定の他の構成としては、被固定部材3にコ字状部材等の引掛掛止可能な部材を予め溶接等により固着しておき、該コ字状部材等に引掛掛止可能なL字状部材等を強度測定装置4の前端部分に取り付けておくことで、引掛掛止によって取付固定する構成を挙げることもできる。
【実施例】
【0067】
上記構成を有する若材齢コンクリート強度測定方法及び装置により、型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために覆工褄部のコンクリート強度を測定する際の具体的構成の一実施例について以下に説明する。
【0068】
覆工コンクリートの目標の圧縮強度推定範囲が最大3〜5N/mm2程度、含有される粗骨材の最大寸法40mm配合までの覆工コンクリートを山岳トンネル内に構築する場合、二次覆工コンクリートの脱型強度は1〜3N/mm2程度が要求される。
【0069】
以上の条件の場合、用いられる突起部構成は厚さ0.5mmの鋼板を直径100mm程度となるように十字状に組合せて形成し、500N(50kgf)の荷重を載荷することで強度測定を行う。
【0070】
種々条件にて強度測定を複数回行い、供試体による圧縮強度試験を行い、相関関係を調べたところ、推定精度の相関係数は0.93〜0.97となり、極めて信頼性の高い測定結果を得ることができた。
【0071】
以上のことから、脱型が可能な適切な材齢時間を得ることができるため、コンクリート硬化時間の過不足のない脱型時を判定することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 覆工コンクリート
11 覆工褄部
11A スプリングラインより上方の褄部位置
11B トンネルアーチの最上部乃至は最上部付近の褄部位置
11C スプリングラインより下方の褄部位置
11D 強度測定位置
2 型枠
3 被固定部材
31 強度測定装置取付位置
32 透孔
4 強度測定装置
41 固定手段
42 突起部
43 エアシリンダ
44 圧力弁
45 圧力計
46 制御部
47 バッテリ
48 操作部
4X 載荷痕
SL スプリングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために、若材齢コンクリート強度測定装置によって覆工褄部のコンクリート強度を測定する方法であって、
前記型枠の覆工褄部位置に被固定部材を予め配設しておき、
該被固定部材の表面と、強度測定位置の覆工コンクリート表面とを露出した後、
前記被固定部材に前記測定装置を取付固定してコンクリート強度の測定を行うこと
を特徴とする若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項2】
前記被固定部材が鉄板であり、該鉄板への強度測定装置の取付固定が磁力固定により行われる構成であることを特徴とする請求項1に記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項3】
前記被固定部材が雄ネジ及び/又は雌ネジが取付けられた板材であり、該板材への強度測定装置の取付固定が螺合固定により行われる構成であることを特徴とする請求項1に記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項4】
強度測定を行う覆工褄部位置が、覆工コンクリートのスプリングラインより上方の褄部位置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項5】
強度測定を行う覆工褄部位置が、覆工コンクリートのトンネルアーチの最上部乃至は最上部付近の褄部位置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項6】
強度測定位置のコンクリート表面に突起部を押し当て所定の荷重を載荷することで該突起部による載荷痕を前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕の深さ及び/又は大きさで覆工コンクリートの強度を測定する強度測定装置を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定方法。
【請求項7】
型枠を用いて打設した覆工コンクリートの脱型時を判定するために、覆工褄部の若材齢コンクリートの強度を測定する若材齢コンクリート強度測定装置であって、
前記型枠の覆工褄部位置に予め配設される被固定部材と、
強度測定位置のコンクリート表面の強度を測定する強度測定装置と、
該強度測定装置の前端部分に取り付けられ、前記被固定部材に固定することで前記強度測定装置を強度測定位置に安定状態で保持固定する固定手段と、
を有して構成されることを特徴とする若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項8】
前記被固定部材が鉄板であり、前記固定手段が磁石であることを特徴とする請求項7に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項9】
前記被固定部材が雄ネジ及び/又は雌ネジが取付けられた板材であり、前記固定手段が前記雄ネジ及び/又は雌ネジに螺合する雌ネジ及び/又は雄ネジを有する螺合部材であることを特徴とする請求項7に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項10】
前記被固定部材が、前記強度測定装置による強度測定位置の前記コンクリート表面が露出するように透孔又は間隙又は切欠が設けられた構成であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項11】
前記被固定部材が、強度測定位置の覆工コンクリート表面が1箇所又は2箇所以上露出可能な構成であることを特徴とする請求項10に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項12】
前記強度測定装置が、強度測定位置のコンクリート表面に突起部を押し当て所定の荷重を載荷することで該突起部による載荷痕を前記コンクリート表面に形成し、該載荷痕の深さ及び/又は大きさで覆工コンクリートの強度を測定する構成であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項13】
前記強度測定装置が、空気圧により荷重を載荷する構成であることを特徴とする請求項12に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。
【請求項14】
前記強度測定装置が、鋼板を十字状に組合せた突起部によりコンクリート表面に十字状の載荷痕を形成可能な構成であることを特徴とする請求項12又は13に記載の若材齢コンクリート強度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−243402(P2010−243402A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94142(P2009−94142)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】