説明

茶ポリフェノール入りゼリー状食品

【課題】 苦渋味が抑制されていると共に嗜好性が高く、例えば、デザート感覚やおやつ感覚で手軽に高濃度の茶ポリフェノールが摂取できるような食品形態を提供すること。
【解決手段】 少なくとも茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分を含有し、茶ポリフェノール濃度とゲル強度を所定の数値に調整したゼリー状食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶ポリフェノール入りゼリー状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶、烏龍茶、紅茶等に含まれる苦渋味成分である茶ポリフェノールとして、緑茶中には、一般にカテキン類と称される、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート等のカテキン単量体の存在が、烏龍茶、紅茶中には、前記カテキン単量体に加えて、これらの重合体であるテアシネンシン類、テアフラビン類、テアルビジン等、またはこれらの加水分解生成物である没食子酸の存在が知られている。カテキン類に代表される茶ポリフェノールは、コレステロール上昇抑制作用(非特許文献1参照)、抗う触作用(非特許文献2参照)、整腸作用(非特許文献3参照)、血圧上昇抑制作用(非特許文献4参照)、血糖上昇抑制作用(非特許文献5参照)、体脂肪抑制作用(特許文献1参照)等の生活習慣病予防に関連した生理機能を有することが明らかにされ、注目を集めている。かつて成人病と呼ばれたこれらのうちのいくつかの症状は、近年では小学生等の低年齢層にも見受けられるようになり、現在ではこれらを生活習慣病として扱うように改められている。このような状況において、茶ポリフェノールの生活習慣病予防作用は、幼児から老人まで幅広い年齢層にわたって求められるものである。
【0003】
ところで、前記の茶ポリフェノールの生理機能をより良く発現させるためには、体内吸収や作用濃度域の点からその摂取量が重要であり、一日あたり緑茶10杯程度に相当する茶ポリフェノールの摂取が必要であると考えられているが(非特許文献6参照)、これだけの量の緑茶を習慣的に飲用するのは容易ではない。従って、効率良く多量の茶ポリフェノールを摂取するためのいくつかの手段が提案されている。例えば、茶ポリフェノール素材を添加することにより茶ポリフェノールが高濃度に調製された容器詰飲料形態(特許文献2参照)や、錠剤やカプセル等のサプリメント形態が既に市販等されている。しかしながら、高濃度茶ポリフェノール含有茶飲料による摂取は最も簡便ではあるものの、飲用摂取では茶ポリフェノールに特有の苦渋味が口腔内で拡散、残留し易いため、この風味が苦手である場合には飲用による摂取は非常に困難となる。また、錠剤やカプセル等では、苦渋味の心配が無く、一度に多量の茶ポリフェノールを摂取することが可能であるが、胃腸への負担が大きく、また、食品としての嗜好性に欠けており、継続的に摂取し難い。よって、高濃度茶ポリフェノール含有食品の製品化にあたっては、苦渋味の緩和と嗜好性をいかに確保するかが重要な問題である。例えば、デザート感覚やおやつ感覚で手軽に高濃度の茶ポリフェノールが摂取できるような食品形態を採用することができれば、幼児から老人までが苦渋味を気にすることなく、茶ポリフェノールの優れた生理機能を享受することができるので好ましい。
【0004】
しかしながら、現在のところ、このような観点から製品化された高濃度茶ポリフェノール含有食品は存在しない。茶ポリフェノールを含有する食品ということでは、抹茶や煎茶等を細かく砕いた茶粉末を添加したアイスクリーム、蕎麦、飴、羊羹、菓子等も知られているが、これらは単に茶の好ましい風味が付与されたものに過ぎず、多量の茶ポリフェノールを摂取することを目的としたものではない。もちろん、このような食品に多量の茶ポリフェノールを配合すれば、所望の茶ポリフェノール量を摂取することができるのではないかとも考えられるが、残念ながら、このような食品に多量の茶ポリフェノールを配合した場合、茶ポリフェノールに由来する苦渋味による風味への影響や、茶粉末中の茶ポリフェノール以外の成分によるえぐ味やクロロフィルの変色等による風味や色調への影響が避けられない。後者の問題は、茶ポリフェノール以外の成分を除去した茶ポリフェノールを高濃度に含有する茶抽出物を使用する方法を採用することで、ある程度の解決を図ることは可能である。しかしながら、前者の問題はいかんともし難く、結局のところ、食品本来の風味を損ね、嗜好性に与える影響が避けられないことに加え、茶ポリフェノールはタンパク質や脂肪分と反応し易く、加工性に影響を与える場合もある。
【0005】
また、茶ポリフェノールを含有する食品形態として、ゼリー状のものも知られている。例えば、特許文献3には、茶の成分を含有するゼリーと茶の成分を実質的に含有していないゼリーとが組となっているゼリー食品が記載されているが、このゼリー食品は、茶の成分を含有するゼリーを食した際の苦渋味を、茶の成分を実質的に含有していないゼリーを食することで緩和するといったものであり、手間のかかる上に効果的とは言い難く、また、いずれのゼリーにも甘味成分が付与されておらず、およそ嗜好性に優れるものではない。特許文献4には、飲料の嚥下に支障のある高齢者を対象とした嚥下補助用ゼリー飲料が記載されているが、このようなゼリー飲料は、ゲル強度がせいぜい50N/m2程度しかないので、多量の茶ポリフェノールを配合した場合、口に含んだ際に容易に苦渋味成分が拡散してしまうといった問題がある。
【特許文献1】特開2002−326932号公報
【特許文献2】特開2002−142677号公報
【特許文献3】特開平11−290004号公報
【特許文献4】特開2001−299297号公報
【非特許文献1】原征彦、外1名、食品工業、1995年8月、第38巻、16号、p.78
【非特許文献2】松本なつき、外1名、食品工業、1995年3月、第38巻、6号、p.81
【非特許文献3】石上正、外1名、食品工業、1997年5月、第40巻、11号、p.60
【非特許文献4】石垣史子、外1名、食品工業、1992年7月、第35巻、14号、p.20
【非特許文献5】坂井美和、外1名、食品工業、1995年4月、第38巻、8号、p.77
【非特許文献6】原征彦、ソフトドリンク技術資料、1991年、第94巻、p.41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、苦渋味が抑制されていると共に嗜好性が高く、例えば、デザート感覚やおやつ感覚で手軽に高濃度の茶ポリフェノールが摂取できるような食品形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、少なくとも茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分を含有し、茶ポリフェノール濃度とゲル強度を所定の数値に調整したゼリー状食品は、食した際に、口腔内での苦渋味成分の拡散が効果的に抑えられ、また、多量の茶ポリフェノール摂取に適していることを発見した。
【0008】
上記の知見に基づいて完成された本発明のゼリー状食品は、請求項1記載の通り、少なくとも茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分を含有し、茶ポリフェノール濃度(mg%)をA、ゲル強度(N/m2)をBとした時に、
イ)50≦A≦1000
ロ)15000≦B≦200000
ハ)20≦B/A≦1000
の関係を有してなることを特徴とする。
また、請求項2記載のゼリー状食品は、請求項1記載のゼリー状食品において、ゲル化剤の少なくとも一部がグルコマンナンであることを特徴とする。
また、請求項3記載のゼリー状食品は、請求項1または2記載のゼリー状食品において、茶ポリフェノール1重量部に対してサイクロデキストリンを0.1〜10重量部さらに含有してなることを特徴とする。
また、請求項4記載のゼリー状食品は、請求項1乃至3のいずれかに記載のゼリー状食品において、果汁、食品用香料、食品用エキスから選ばれる少なくとも1つをさらに含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、苦渋味が抑制されていると共に嗜好性が高く、例えば、デザート感覚やおやつ感覚で手軽に高濃度の茶ポリフェノールが摂取できるような食品形態として、少なくとも茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分を含有し、茶ポリフェノール濃度とゲル強度を所定の数値に調整したゼリー状食品が提供される。本発明のゼリー状食品に、さらにサイクロデキストリンの他、果汁や食品用香料や食品用エキス等を添加することにより、苦渋味を大幅に緩和することができる。従って、茶ポリフェノールに特有の呈味が苦手な幼児や老人でも、本発明のゼリー状食品は抵抗なく食することができるので、誰もが気軽に高濃度の茶ポリフェノールを摂取することができ、その優れた生理機能を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のゼリー状食品に含有される茶ポリフェノールとは、茶樹(Camellia sinensis)の主に葉、茎、およびこれらを緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等に加工したものを原料とし、それらを水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒等により抽出して得られる茶抽出物に含有される成分を指す。茶ポリフェノールの具体的な化合物としては、一般にカテキン類と称される、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート等のカテキン単量体の他、これらの重合体であるテアシネンシン類、テアフラビン類、テアルビジン等、またはこれらの加水分解生成物である没食子酸等が挙げられる。これら茶ポリフェノールは、上記茶抽出物から有機溶媒分画や吸着樹脂等により所望の濃度に精製することができる。本発明においては、これら精製品を単独で、若しくは2種以上を適宜組み合わせて使用できる他、粗精製物である上記の茶抽出物の形態で使用しても何ら差し支えない。なお、茶抽出物としては、例えば、三井農林株式会社製「ポリフェノン」、太陽化学株式会社製「サンフェノン」、株式会社伊藤園製「テアフラン」等の市販品を利用することが簡便である。茶ポリフェノールを茶抽出物の形態で使用する場合、茶抽出物中の茶ポリフェノール含有量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の茶ポリフェノール公定法である酒石酸鉄試薬法に従って求めることができる。
【0011】
本発明のゼリー状食品に含有される茶ポリフェノールの濃度は、50〜1000mg%であり、好ましくは100〜800mg%であり、さらに好ましくは150〜600mg%である。茶ポリフェノール濃度が50mg%を下回ると、目的とする生理機能を享受することが困難になる上に、茶由来の涼快な風味が感じられにくくなる。一方、茶ポリフェノール濃度が1000mg%を上回ると、苦渋味が舌に好ましくない残留性の収斂感を与え、嗜好性が劣ることになる。茶ポリフェノールを添加対象物(液)に添加する方法としては、水への茶ポリフェノールの溶解乃至分散液を利用する方法が、茶ポリフェノールを均一分散させることができる点で好ましい。添加のタイミングとしては、ゲル化以前であれば製造工程のどの段階でも構わない。
【0012】
本発明のゼリー状食品に含有される茶ポリフェノールは、大量調製が容易で、且つ多くの生理作用が明らかとなっているカテキン類を50重量%以上含有するものが好ましく、70重量%以上含有するものがより好ましく、80重量%以上含有するものがさらに好ましい。茶ポリフェノール中のカテキン類含有量は、茶抽出物中のカテキン類含有量と、上記の方法で求めた茶抽出物中の茶ポリフェノール含有量から求めることができる。茶抽出物中のカテキン類含有量は、サンプル水溶液を0.45μmのフィルターで濾過した後、以下の条件にてHPLCを用いてカテキン類8種((±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート)を定量することでその合計量として求めることができる。
(HPLC分析条件)
・装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム
(日本ウォーターズ株式会社製)
・カラム :Capcell Pak、UG120、4.6mmφ×250mm
(株式会社資生堂製)
・移動相 :アセトニトリル/酢酸エチル/0.05%リン酸水=12/0.6/90
(体積比)
・流速 :1ml/min
・検出 :UV280nm
・カラム温度:40℃
【0013】
本発明のゼリー状食品に含有されるゲル化剤としては、グルコマンナン、カラギーナン、ローカストビ−ンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、タラガム、トラガントガム、カードラン、ナタデココ、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、寒天等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いが、組み合わせて使用する事で、相乗効果により、高いゲル強度を与えることができる場合がある。特にグルコマンナンは、カラギーナン、キサンタンガム等の他のゲル化剤との併用により、強い弾性と保水力を与えるため、耐崩壊性に優れたゲルを形成することができ、苦渋味成分の口腔内拡散防止作用が優れている。ゲル強度に影響を与える因子としては、ゲル化剤の選択、配合比率、配合量が大きな影響を与える因子として挙げられるが、これらを適宜選択、調整することにより、容易に所望のゲル強度に調整することができる。ゲル化剤の使用例としては、例えば、グルコマンナン1重量部に対してカラギーナン1〜1.5重量部の配合や、グルコマンナン1重量部に対してキサンタンガム0.8〜1.5重量部の配合が挙げられ、このような配合ゲル化剤を、水100重量部に対して好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは0.8〜2重量部の割合で水に溶解することにより、高いゲル強度を得ることができる。また、その他にもゲル強度を変化させる要因として、加熱の強さ、pH、砂糖、食塩等が挙げられ、使用するゲル化剤にもよるが、一般的に低いpHや、強すぎる加熱条件、過剰の砂糖や食塩の添加でゲル強度は減少し脆いゲルとなる場合がある。
【0014】
本発明のゼリー状食品におけるゲル強度は、15000〜200000N/m2であり、好ましくは17500〜150000N/m2であり、さらに好ましくは20000〜100000N/m2である。ゲル強度が15000N/m2を下回ると、口に含んだ時に崩れやすく、苦渋味成分が口腔内に拡散しやすくなる。一方、ゲル強度が200000N/m2を上回ると、ゲル化剤特有の不快臭が目立ち、茶やその他成分が持っている風味を損ね、嗜好性が劣ったものとなってしまう。
【0015】
なお、本発明におけるゲル強度とは、破断応力値、即ち、試料にプランジャーにより一定速度で圧力を加えた際に試料が破断される直前の瞬間応力値を指し、圧力を加えた部分の単位面積あたりの応力で表すものである。このゲル強度は、カードメーターやレオメーター、またはテクスチュロメーター等により測定することができるが、測定値には使用するプランジャーの大きさ、挿入速度や試料の大きさ等が影響するため、本発明においては以下の測定条件で得られる値を原則とするが、これと同様の値を示す測定条件であれば、以下の測定条件のみに限定されない。
(ゲル強度測定条件)
・プランジャー :直径3mm
・プランジャー移動速度 :2.5mm/秒
・試料サイズ :内径約30mmの容器に25mmの高さに充填
・測定温度 :室温(25℃)
・装置 :カードメータ・ミニ ME−415(株式会社飛鳥機器製)
【0016】
本発明のゼリー状食品においては、茶ポリフェノール濃度(mg%)をA、ゲル強度(N/m2)をBとした時に、両者の関係を20≦B/A≦1000と規定する。口腔内での苦渋味成分の呈味性には、茶ポリフェノール濃度とゲル強度が関連するため、これらの比率を然るべき数値に調整することは非常に重要である。茶ポリフェノール濃度に対するゲル強度の比率(B/A)は、好ましくは25〜800であり、さらに好ましくは30〜600である。B/Aが20を下回ると、苦渋味を強く感じるようになる。一方、B/Aが1000を上回ると、ゲルが堅くなり過ぎて食感が悪くなると共にゲル化剤特有の不快臭が目立ち、嗜好性が劣るものになってしまう。
【0017】
本発明のゼリー状食品に含有される甘味成分としては、単糖・二糖・またそれらの誘導体からなる糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、合成甘味料・非糖質天然甘味料・アミノ酸系甘味料などからなる高甘味度甘味料類、デキストリン等の公知の食品用甘味成分が挙げられる。甘味成分を含有することで、茶ポリフェノールの苦味や酸味を緩和し、刺激を和らげたまろやかな呈味となり、嗜好性に優れるとともに、ゲルからの離水を防止する効果も得られる。特にショ糖などの吸水性の高い糖類を用いた場合は水に対するゲル化剤濃度が高くなる為に、ショ糖濃度が増すほどにゲル強度が増加するが、過剰のショ糖はゲルの水和水まで奪ってしまう為にゲル強度は低下する。また、糖アルコール類や高甘味度甘味料は、清涼感や特有の呈味を示すために、渋味のマスキング感に優れる。甘味成分の含有量は、その成分の示す力価にも依存するが、ショ糖の甘味度に換算して5〜50重量%の添加が妥当である。果汁など糖を含有する原料を使用する場合は、原料に含まれる糖度と合算して上記ショ糖濃度になるように調製する。特にゲル強度が高くなるほどに、甘味の呈味効率は低下するため、高い甘味度が好まれる。
【0018】
本発明のゼリー状食品は、例えば、水および甘味成分にゲル化剤を分散させ、ここに水への茶ポリフェノールの溶解乃至分散液とその他成分をあわせて添加し、よく攪拌混合しながら加熱によりゲル化剤を完全に溶解させた後、冷却してゼリー状とすることで製造することができる。水および甘味成分にゲル化剤を分散させる具体的な方法としては、例えば、ゲル化剤を液糖や水飴等の粘性の高い液体甘味成分に少量ずつ混合してからそこに水を添加する方法や、ゲル化剤をデキストリンや砂糖等の粉体甘味成分にあらかじめ均一に混合分散させた後に、液糖や水飴等の粘性の高い液体甘味成分に少量ずつ混合してからそこに水を添加する方法が挙げられる。これらの方法によれば、継粉を生じにくく、ゲル化剤の水および甘味成分への分散性に優れる。なお、ゲル化剤としてグルコマンナンを使用する場合には、膨潤に時間がかかるため、水および甘味成分にグルコマンナンを分散させた後、しばらく時間を置いてから次の工程に移ることが好ましい。ゲル化剤を溶解させる加熱条件としては、使用するゲル化剤にもよるが、通常、60〜100℃で30秒〜30分程度の条件が挙げられる。
【0019】
本発明のゼリー状食品は、茶ポリフェノール濃度とゲル強度を所定の数値に調整したものであり、これにより、苦渋味を低減する効果があるが、さらにサイクロデキストリンを併用することで、茶ポリフェノールの苦渋味の抑制効果がより一層高まり、良好な風味となる。ここで使用することができるサイクロデキストリンとしては、α−、β−、γ−サイクロデキストリン、および、分岐α−、β−、γ−サイクロデキストリンが挙げられるが、特にβ−サイクロデキストリン、およびマルトシルβ−サイクロデキストリン等の分岐β−サイクロデキストリンが最も効果的で好ましい。サイクロデキストリンの含有量は、茶ポリフェノール1重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。含有割合が0.1重量部を下回ると、茶ポリフェノールの苦渋味の抑制効果が発揮されにくくなる。一方、含有割合が10重量部を上回ると、ぼそぼそした食感になり易く、また味・香りともにぼやけたものになってしまう。
【0020】
本発明のゼリー状食品は、茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分の他、果汁、食品用香料、食品用エキス、酒類、色素、酸味料、pH調整剤、栄養強化剤、保存料等を含有していてもよい。とりわけ、梅、桃、杏、ぶどう、マスカット、アロエ、ライチ、アップル、グレープフルーツに例示される柑橘類、ブルーベリーに例示されるベリー類等の果汁や、果実様香料などの食品用香料を含有させることで、本発明のゼリー状食品は、茶由来の涼快な風味等と相まってより一層苦渋味抑制効果が発揮され、爽やかで良好な風味となる。果汁や食品用香料の使用量に特に制限はないが、ゼリーという物性の特徴上、含有成分は揮発しにくいので、果汁としてはゼリー状食品の0.1〜50重量%、食品用香料としてはその力価にもよるが、50〜1000ppm程度を添加すると嗜好性に富んだゼリー状食品となって好ましい。なお、果汁や食品用香料は、過度の加熱により風味が劣化してしまいやすいので、その添加は、ゲル化剤を加熱溶解せしめた後に、適当な温度まで冷却してから行うのが好ましい。他にも、紅茶やコーヒーなどの嗜好性飲料や他種食品の抽出エキスに例示される食品用エキスを添加することで、味にバリエーションを持たせる事も可能である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明のゼリー状食品を実施例にて詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
試験例1:実施例1〜6,比較例1〜3
表1に示す処方により各成分を配合した。なお、茶ポリフェノールは、茶抽出物の形態で使用した。茶抽出物は、三井農林株式会社製の茶抽出物「ポリフェノンCH」(茶ポリフェノール含有量35.5重量%、カテキン類含有量29.4重量%(茶ポリフェノール中の含有量として82.8重量%)、茶ポリフェノール含有量は前記酒石酸鉄試薬法により測定、カテキン類含有量は前記HPLC法により測定)を使用した。配合は、次のようにして行った。即ち、液糖(ショ糖と同等の甘味度を有する)にゲル化剤を少量ずつ混合し、水を加えて攪拌後に10分程室温で膨潤させ、あらかじめ作製しておいた茶抽出物の溶解乃至分散水溶液と酸味料を添加する。この配合物をよく攪拌混合しながら80℃で10分間加熱してゲル化剤を溶解し、続いて、これを冷却して実施例1〜6、比較例1〜3のゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品の茶ポリフェノール濃度(A)、ゲル強度(B)、茶ポリフェノール濃度に対するゲル強度の比率(B/A)を表1に示す。また、得られたゼリー状食品についてのパネラー5名による食感、風味の官能評価を行った。さらに、これらと茶ポリフェノール含量、即ち、一食分あたりの茶ポリフェノール摂取量を考慮して総合評価を行った。結果を表1に示す。
【0023】
ゲル強度は、以下の測定条件で測定した。なお、参考例として、寒天を、その濃度が0.4重量%、0.6重量%、0.8重量%、1.0重量%、1.2重量%となるようにゲル化剤として使用して寒天ゼリーを調製し、そのゲル強度をこの条件で測定したところ、それぞれ4720N/m2、12100N/m2、17300N/m2、20000N/m2、38400N/m2であった。
(ゲル強度測定条件)
・プランジャー :直径3mm
・プランジャー移動速度 :2.5mm/秒
・試料サイズ :内径約30mmの容器に25mmの高さに充填
・測定温度 :室温(25℃)
・装置 :カードメータ・ミニ ME−415(株式会社飛鳥機器製)
【0024】
食感、風味の官能評価は、5:非常に良い、4:良い、3:良くも悪くもない、2:悪い、1:非常に悪い、の5段階評価で行った。
【0025】
総合評価は、◎:非常に良い、○:良い、△:良くも悪くもない、×:悪い、の4段階評価で行った。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、茶ポリフェノール濃度とゲル強度を所定の数値に調整した、実施例1〜6の本発明のゼリー状食品は、高濃度の茶ポリフェノールを含有するのにも関わらず、苦渋味が十分に緩和されており、良好な呈味性を示すことが確認された。
【0028】
試験例2:実施例7〜12
表2に示す処方により各成分を配合した。各成分の配合方法は、試験例1に記載の方法に準じるが、β−サイクロデキストリンは、茶抽出物の溶解乃至分散水溶液に加えた。その後、配合物を80℃で10分間加熱してゲル化剤を溶解し、続いて、これを冷却して実施例7〜12のゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品について、試験例1に記載の評価を行った。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2から明らかなように、β−サイクロデキストリンの添加によって風味が改善されることが確認された。
【0031】
試験例3:実施例13〜15,比較例4〜5
各種のゲル化剤を単独または複数混合して使用し、表3に示す処方により各成分を配合した。各成分の配合方法は、試験例1に記載の方法に準じた。その後、配合物を80℃で10分間加熱してゲル化剤を溶解し、続いて、これを冷却して実施例13〜15、比較例4〜5のゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品について、試験例1に記載の評価を行った。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3から明らかなように、ゲル化剤の選択と配合組成を適宜調整することで、ゲル強度と茶ポリフェノール含量のバランスを調整できることが確認された。特に実施例13〜14のグルコマンナンと他のゲル化剤を組み合わせた処方は、とりわけ食感に優れ、総合的に良好な評価であった。
【0034】
試験例4:実施例16〜20
表4に示す処方により各成分を配合した。試験例1に記載の方法に準じて甘味料、ゲル化剤、水、茶抽出物、酸味料を添加し、その後、配合物を80℃で10分間加熱してゲル化剤を溶解した後60℃まで冷却し、果汁や食品用エキスを加えた。続いて、これを冷却して実施例16〜20のゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品について、試験例1に記載の評価を行った。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4から明らかなように、果汁や食品用エキスを添加することにより、これらの香味が加わってより一層のこと苦渋味が緩和され、風味豊かな嗜好性の高い食品となることが確認された。
【0037】
試験例5:実施例21
実施例4において、茶抽出物として、三井農林株式会社製の茶抽出物「ポリフェノンCH」を使用することに代えて、同社製のより高濃度に茶ポリフェノールを含有する茶抽出物「ポリフェノン70A」(茶ポリフェノール含有量95.8重量%、カテキン類含有量80.2重量%(茶ポリフェノール中の含有量として81.4重量%)、茶ポリフェノール含有量は前記酒石酸鉄試薬法により測定、カテキン類含有量は前記HPLC法により測定)を使用したこと以外は実施例4と同様にしてゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品の評価は、総合評価として非常に良いというものであった。
【0038】
試験例6:実施例22〜26
実施例9において、β−サイクロデキストリンを使用することに代えて、α−サイクロデキストリン(実施例22)、γ−サイクロデキストリン(実施例23)、分岐α−サイクロデキストリン(実施例24)、分岐β−サイクロデキストリン(実施例25)、分岐γ−サイクロデキストリン(実施例26)を使用したこと以外は実施例9と同様にしてゼリー状食品を調製した。得られたゼリー状食品の評価は、総合評価として非常に良いというものであったが、特に分岐β−サイクロデキストリンが優れた風味改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、苦渋味が抑制されていると共に嗜好性が高く、例えば、デザート感覚やおやつ感覚で手軽に高濃度の茶ポリフェノールが摂取できるような食品形態としてのゼリー状食品を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも茶ポリフェノールとゲル化剤と甘味成分を含有し、茶ポリフェノール濃度(mg%)をA、ゲル強度(N/m2)をBとした時に、
イ)50≦A≦1000
ロ)15000≦B≦200000
ハ)20≦B/A≦1000
の関係を有してなることを特徴とするゼリー状食品。
【請求項2】
ゲル化剤の少なくとも一部がグルコマンナンであることを特徴とする請求項1記載のゼリー状食品。
【請求項3】
茶ポリフェノール1重量部に対してサイクロデキストリンを0.1〜10重量部さらに含有してなることを特徴とする請求項1または2記載のゼリー状食品。
【請求項4】
果汁、食品用香料、食品用エキスから選ばれる少なくとも1つをさらに含有してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゼリー状食品。

【公開番号】特開2006−115783(P2006−115783A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308740(P2004−308740)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(591039137)三井農林株式会社 (7)
【Fターム(参考)】