説明

茶葉製品およびその製造方法

カメリアシネンシスアッサミカ種からの味の良い緑茶が開示されている。茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出することによって、カテキンを、飲料の0.01から0.1重量%の間の量で含む飲料が生成される。また、アッサミカ種からの新鮮な茶葉を、動翼とダブルコーンプロセッサとの組合せを使用して浸軟させる、茶葉製品を製造するための方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶は、何百年にもわたって中国および日本で消費されてきた、一般的な飲料である。最近、広範囲にわたる実験室での研究および疫学的研究では、緑茶中に存在する化合物(特に、カテキンなどのフラバノール)が、様々な病気の危険性を低下させることができることが示されている。これらの研究は、消費者の味覚の複雑さが増すと共に、緑茶を消費する習慣のない市場(米国や西欧など)においても緑茶の消費の増大をもたらした。
【0003】
茶樹には、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)、即ちシネンシス種(var.sinensis)およびアッサミカ種(var.assamica)の2種がある。様々なカメリアシネンシスアッサミカ種は、典型的には最も高いカテキン含量を有し、アミノ酸テアニンなどの、ある非フラバノール活性にも比較的富んでいる。
【0004】
フラバノールは、茶浸出液の苦みおよび渋みに大きな影響を及ぼす。したがって、アッサミカ種の高いフラバノール含量により、この種類からの緑茶の浸出液は、口に合わなくなるほど苦くなることが見出されている。その結果、アッサミカ種は、緑茶製品に使用するのに不適切とみなされる(例えば、「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第13章、第414頁参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第1175559号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第13章、第414頁
【非特許文献2】「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第14章、特に第486〜487頁
【非特許文献3】「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第13章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、アッサミカ種に典型的な高レベルの活性を有するが、シネンシス種から調製された伝統的な緑茶飲料のおいしさを有する製品を製造する、緑茶を提供することが求められていると理解した。本発明者等は、そのような必要性が、緑茶によって送達されるカテキンの量を制御することによって満たされることを見出した。
【0008】
(試験および定義)

本発明における「茶」は、カメリアシネンシスのシネンシス種および/またはカメリアシネンシスのアッサミカ種からの材料を意味する。
【0009】
本発明における「茶葉」は、茶の葉および/または茎を非浸出形態で含有し、その含水量を30重量%未満にまで乾燥した茶製品、通常は、1から10重量%の範囲内の水分を有する茶製品を意味する(即ち、「製茶」)。「緑茶」は、実質的に発酵させていない茶葉を指す。「発酵」は、例えば葉の浸漬による細胞の機械的な破壊によって、ある内生酵素および基質が一緒になったときに茶が受ける酸化的および加水分解的プロセスを指す。このプロセス中、葉の中の無色のカテキンは、黄およびオレンジから暗褐色ポリフェノール物質の、複雑な混合物に変換される。
【0010】
「新鮮な茶葉」は、含水量を30重量%未満にまで乾燥させておらず、通常は35から90%の範囲の含水量を有している茶の葉および/または茎を指す。
【0011】
飲料
本明細書で使用される「飲料」は、人が消費するのに適切な、実質的に水性の飲料可能な組成物を指す。
【0012】
90℃の湯200mlで1.5分間の2gの茶葉の浸出による飲料の製造
本発明の目的のため、カテキン、カフェイン、および/またはテアニンなどの活性物質を送達することができる茶葉の能力、並びに良好な色および/または透明度を有する飲料を送達することができる茶葉の能力を、下記の標準的な浸出条件を使用して、決定することができる。
【0013】
1.茶葉を任意のパッケージから取り出し、2gを、500ml容器に入れる。
2.次いで1リットルの脱イオン水を沸騰させ、200gをすぐに500ml容器に添加する。
3.容器を20℃の空気温度で保存し、茶葉を、水中で静かに浸出させる。
4.1.5分後、スプーンを使用して、手で浸出液を5秒間撹拌し、次いですぐに、モスリンを通して容器の内容物を漉し取ることにより、浸出液から茶葉を除去する。
【0014】
カテキン
本明細書で使用される「カテキン」という用語は、カテキン、ガロカテキン、没食子酸カテキンガレート、没食子酸ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、およびこれらの混合物の一般名として使用される。
【0015】
茶葉中のカテキンおよびカフェインの決定
茶葉中のカテキンおよびカフェインの量は、下記の逆相HPLCによって同時に決定する。
【0016】
サンプルの調製
1.細かい粉末になるまで、1.0μmスクリーンを備えたCyclotech(商標)1093サンプルミル(FOSS Ltd、Warrington、Cheshire、英国)を使用して、粉砕した茶葉を実現する。
2.粉砕した茶葉を約200mg、正確に計量して抽出管に入れ、その質量を記録する。
3.メタノール-水の溶液(70%v/vメタノールを蒸留水に溶かしたもの)を少なくとも20ml、70℃に温める。
4.温めたメタノール-水の溶液5mlを、抽出管に添加する。メタノール-水と茶葉とを、ボルテックスミキサで穏やかに混合し;70℃の水浴中に5分間置き;再び混合し、次いで70℃の水浴にさらに5分間置く。
5.メタノール-水と茶葉とを、再びボルテックスミキサで穏やかに混合し、次いで20℃の空気温度で10分間冷ます。
6.抽出管を、2900gの相対遠心力(RCF)で10分間遠心分離する。
7.次に抽出管は、茶の材料のプラグの最上部に、液体の上澄みを含有すべきである。上澄みを、清浄な目盛り付き試験管に慎重にデカントする。
8.温めたメタノール-水の溶液5mlを、抽出管のプラグに添加する。メタノール-水と茶の材料とを、ボルテックスミキサで穏やかに混合し;70℃の水浴中に5分間置き;再び混合し、次いで70℃の水浴中にさらに5分間置く。
9.メタノール-水と茶の材料とを、再びボルテックスミキサで穏やかに混合し、次いで20℃の空気温度で10分間冷ます。
10.抽出管を、2900gのRCFで10分間遠心分離する。
11.次に抽出管は、茶の材料のプラグの最上部に、液体の上澄みを含有すべきである。上澄みを、ステップ7から得た上澄みが入っている目盛り付き試験管に慎重にデカントする。
12.溜まった上澄みを、メタノール-水の溶液で10mlにする。
13.2.5mg/ml EDTAおよび2.5mg/mlアスコルビン酸を蒸留水に溶かした溶液1mlを、目盛り付き試験管に添加する。
14.溜まった上澄み混合物1部を、10%アセトニトリル安定化剤溶液(10%v/vアセトニトリル、0.25mg/mlアスコルビン酸、および0.25mg/ml EDTAを、蒸留水に溶かしたもの)4部(体積で)で希釈する。
15.希釈された溜まった上澄み混合物を、微小遠心管にデカントし、14000gのRCFで10分間、卓上遠心分離器で遠心分離する。
【0017】
HPLC分析条件
カラム:Luna Phenyl hexyl 5μ、250×4.60mm
流量:1ml/分
炉の温度:30℃
溶媒:A:2%の酢酸をアセトニトリルに溶かしたもの
B:2%の酢酸および0.02mg/mlのEDTAを水に溶かしたもの
注入体積:10μl
【0018】
【表1】

【0019】
定量:較正曲線に対するピーク面積を、毎日作成した。較正曲線はカフェインから作成し、カテキンの濃度は、カフェインに対する個々のカテキンの相対感度係数を使用して計算する(ISOカテキン法から-ISO/CD 14502-2)。個々のカフェイン標準(Sigma、Poole、Dorset、英国)を、ピーク同定マーカーとして使用する。
【0020】
飲料中のカテキンおよびカフェインの測定
飲料中のカテキンおよびカフェインの量を、下記の通り逆相HPLCによって同時に測定する。
【0021】
サンプル調製
1.新たに淹れた飲料9mlを採取し、2.5mg/ml EDTAおよび2.5mg/mlアスコルビン酸を蒸留水に溶かした溶液1.12mlと一緒に、アセトニトリル1.12mlを添加する。
2.次いで得られた溶液を微小遠心管にデカントし、14000gのRCFで10分間遠心分離する。
【0022】
HPLC分析条件
HPLC分析条件は、茶葉に関して既に述べたものと同一である。
【0023】
飲料中のテアニンの測定
飲料中のテアニンの量を、o-フタルアルデヒドを用いたポストカラム誘導体化に従って、蛍光検出を使用した逆相HPLCクロマトグラフィにより測定する。
【0024】
サンプル調製
新たに淹れた飲料を、脱イオン水(25℃)で、飲料:水の重量比1:10で希釈する。
【0025】
HPLC分析条件
カラム:Hypersil HyPURITY Elite(商標)C18、5μ、150mm×4.6cm
流量:1ml/分
炉の温度:35℃
溶媒:A:5mMペンタデカフルオロオクタン酸を水に溶かしたもの
B:5mMペンタデカフルオロオクタン酸をアセトニトリルに溶かしたもの
【0026】
【表2】

【0027】
定量:カラムからの溶離液を、低デッドボリューム3方接合に供給し、o-フタルアルデヒド試薬と1:1の比で混合したが、このo-フタルアルデヒド試薬は、定組成ポンプにより1ml/分でポンプ送出される(o-フタルアルデヒド試薬は、1.0g/l o-フタルアルデヒド、5ml/lメタノール、2ml/l Brij35、および3ml/l 2-メルカプトエタノールを、pH10のホウ酸緩衝液に溶かしたものである)。
【0028】
蛍光検出は:励起=340nmおよび発光=425nmである。毎日作成された較正曲線に対するピーク面積を、定量に使用する。較正曲線は、Suntheanine(商標)(太陽(株))の標準溶液の希釈から作成する。
【0029】
飲料の濁りの測定
飲料の濁りを25℃で測定する。浸出直後、新たに淹れた飲料を25℃に冷まし、次いで即座に、Hach 2100P濁度計(Hach Lange Ltd、Salford、英国)を使用して分析する。2100Pは、光源としてタングステン電球を備えた可搬式濁度計である。サンプル体積は15mlである。セル光路長は2cmである。濁りをNTU(ネフェロメトリック濁度単位)として報告する。
【0030】
飲料の色の測定
飲料の色を25℃で測定する。浸出直後、新たに淹れた飲料を25℃に冷まし、次いで即座に、ミノルタCT-310透過型色度計を使用して分析する。使用した色空間CIELabであり、光源はCであり、セル光路長は10mmである。測定器を、蒸留水に関して0に設定し、L*=91.44、a*=-15.92、b*=102.38、C*=103.61、およびh*=98.84を有するYellow 101フィルタ(Lee Filters、Andover、英国から入手可能)を使用して較正するが、但しL*は明-暗であり、a*は赤-緑であり、b*は黄-青であり、C*は彩度であり、h*は色相である。
【0031】
実施サイズ
本発明において、粒度は、下記の規則を使用した篩目サイズを特徴とする。
・Tylerメッシュサイズを全体として使用する。
・篩目の前の「+」は、粒子が篩によって保持されることを示す。
・篩目の前の「-」は、粒子が篩を通過することを示す。
【0032】
例えば、粒度が-5+20メッシュと示される場合、粒子は5メッシュの篩を通過し(4.0mmよりも小さい粒子)、20メッシュの篩に保持される(841μmよりも大きい粒子)ことになる。
【0033】
動翼
動翼は、従来、紅茶の製造中にCTC(破砕、引裂き、カール)機で加工する前に、茶葉に傷を付けるのに使用されてきたタイプの茶葉コンディショナである。動翼は、製茶産業で広く使用されており、例えば、「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (ロンドン)、第14章、特に第486〜487頁に記載されている。動翼の供給者には、Vkram India Ltd(Kolkata、インド)およびPlamac(インド)Pvt Ltd(Kolkata、インド)が含まれる。
【0034】
ダブルコーンプロセッサ
ダブルコーンプロセッサは、連続茶葉回転機タイプである。ダブルコーンプロセッサは、例えばPlamac(インド)Pvt Ltd(Kolkata、インド)から入手可能である。
【0035】
ダブルコーンプロセッサは、英国特許第1175559号(Peter John Parr)に開示されている加工機械に類似しているが、例外として、バレルおよびロータシャフトはそれぞれ図1および2に示されているように修正されている。具体的には、ダブルコーンプロセッサは、静止バレル(10)を含み、このバレル(10)は、バレル(10)の内壁から突出している3組の抵抗器(11)と、浸軟させる新鮮な茶葉を供給するための、バレル(10)の一方の端部(供給端部)付近の開口(12)と、内部での軸方向の回転によって供給端部からバレル(10)のもう一方の端部(放出端部)に茶葉を前進させるように、かつ同時に茶葉を浸軟させるように適合させたロータシャフト(1)とを有する。ロータ(1)は、バレル(10)の供給端部付近に対応するその長さの一部にある螺旋状供給ウォーム(2)と、供給ウォーム(2)から延びかつバレルの放出端部に向かって延びる第1の裁頭円錐部材(3)と、第1の裁頭円錐部材(3)からバレル(10)の放出端部に延びる第2の裁頭円錐部材(4)とを含む。第1の裁頭円錐部材(3)は、そこから半径方向に突出している3組の翼(3A)を有し、これらの翼(3A)は、バレル壁の抵抗器(11)と互い違いに配されている。第2の裁頭円錐部材(4)は、螺旋状に配置された溝(4A)が彫られている傾斜面を有する。バレル(10)の放出端部は、英国特許第1175559号に開示されているスリーブと同様の圧力スリーブ(13)を備えており、このスリーブは、その内面から突出する複数のスタッド(13A)を有している。
【課題を解決するための手段】
【0036】
第1の態様では、本発明は、カメリアシネンシスアッサミカ種から緑茶を提供し、茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出させることにより、飲料の0.01から0.1重量%の間の量でカテキンを含む飲料が生成される。
【0037】
本発明者等は、そのような茶葉を、少なくともシネンシス種から調製された緑茶飲料と同じように味の良い飲料を調製するのに、使用することができることを見出した。
【0038】
本発明者等は、所望の浸出特性を有する、カメリアシネンシスアッサミカ種から緑茶を生成する特に都合の良い方法は、新鮮な茶葉を、動翼およびダブルコーンプロセッサの組合せで浸軟させることによるものであることも見出した。
【0039】
したがって他の態様では、本発明は、
(a)植物カメリアシネンシスアッサミカ種から新鮮な茶葉を得るステップと、
(b)新鮮な葉を熱処理して、酵素作用を停止させるステップと、
(c)好ましくは新鮮な葉を動翼に通して部分的に浸軟した葉を生成し、次いでこの部分的に浸軟した葉をダブルコーンプロセッサ内に通して浸軟した葉を生成することにより、新鮮な葉を動翼およびダブルコーンプロセッサで浸軟させるステップと、
(d)浸軟した葉を乾燥するステップと、
(e)任意選択で、粒度に応じて乾燥した浸軟済みの葉を選別するステップと
を含む、緑茶を製造するための方法を提供する。
【0040】
本発明は、本発明の方法によって得られた、かつ/または得ることが可能な緑茶も提供する。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、高レベルの活性および/または良好な色および透明度を有するが、伝統的な緑茶に典型的なカテキンレベルも有する、新しい茶葉に関する。したがって本発明は、カメリアシネンシスアッサミカおよび/またはシネンシス種からの緑茶を提供し、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出することによって、飲料の0.01から0.1重量%の間、より好ましくは飲料の0.04から0.09重量%の間、最も好ましくは0.06から0.085%の量でカテキンを含む飲料が生成され、この飲料はさらに、
飲料の少なくとも0.004重量%、好ましくは0.005から0.02%の量でテアニンを含み、かつ/または
20NTU未満、好ましくは1から15NTUの濁りを有し、かつ/または
103から115の間、好ましくは104から110の間の色相(h*)を有し、かつ/または
6から15の間、好ましくは8から10の間の彩度(C*)を有し、かつ/または
94から100の間、好ましくは96から99の間の明度(L*)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ダブルコーンプロセッサのロータの正面図である。
【図2】ダブルコーンプロセッサのバレルの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
緑茶
本発明者等は、カメリアシネンシスアッサミカ種から得た緑茶を、味の良い緑茶飲料の生成に使用できることを見出した。本発明者等は、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させたときに、カテキンを飲料の0.1重量%未満の量で含む飲料が生成されるように、茶葉の浸出特性が制御される場合、その茶葉は、味の良い飲料を調製するのに適していることを見出した。飲料の苦みは、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させたときに、カテキンを飲料の0.09重量%未満、より好ましくは0.085%未満の量で含む飲料が生成されるように、茶葉によって送達されるカテキンの量を減少させることによって、さらに低下させることができる。
【0044】
しかし本発明の茶葉は、緑茶に関連した味および/または健康上の利益を得るために、かなりの量のカテキンを依然として含んでいる。したがって茶葉の浸出特性は、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させたときに、カテキンを飲料の少なくとも0.01重量%の量で含む飲料が生成されるように、制御される。実際に本発明者等は、茶葉によって送達されたカテキンの量が、味をまずくすることなく、カメリアシネンシスシネンシス種から得られた最高品質の従来の茶葉と同じように多くまたはそれよりもさらに多くなり得ることを見出した。したがって茶葉の浸出特性は、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させたときに、カテキンを飲料の少なくとも0.04重量%の量で、より好ましくは少なくとも0.05%、最も好ましくは少なくとも0.06%の量で含む飲料が生成されるように、制御されることが好ましい。
【0045】
緑茶によって送達された比較的低いレベルのカテキンにも関わらず、本発明者等は、ある種類のその他の活性(テアニンやカフェインなど)のレベルが、従来の茶葉に比べて比較的高いレベルで送達できることを見出した。したがって緑茶は、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させることによって、テアニンを飲料の少なくとも0.004重量%の量で、より好ましくは0.005から0.02%の量で、最も好ましくは0.006から0.01%の量で含む飲料をもたらすように、テアニンを送達することが好ましい。
【0046】
あるいは、またはさらに、茶葉の浸出特性は、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させたときに、カフェインを飲料の少なくとも0.008重量%の量で、より好ましくは少なくとも0.01%、最も好ましくは0.012から0.03%の量で含む飲料が生成されるというものである。
【0047】
緑茶の浸出特性は、緑茶が高い透明度および良好な色を有する飲料を生成するようなものであることが好ましい。特に、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させることによって生成された飲料は、20NTU未満、より好ましくは15NTU未満、最も好ましくは1から10NTUの濁りを有することが好ましい。あるいは、またはさらに、茶葉2gを90℃の湯200mlで1.5分間浸出させることによって生成された飲料は、103から115の間の色相(h*)、より好ましくは104から110の間の色相;6から15の間の彩度(C*)、より好ましくは8から10の間の彩度;および/または94から100の間の明度(L*)、より好ましくは96から99の間の明度を有する。
【0048】
茶葉の浸出特性は、茶葉の粒度の制御、茶葉のカテキン含量の制御、および/または加工中の茶葉への損傷の程度の制御を含むいくつかの方法で得ることができる。
【0049】
一般に、茶葉の粒度が大きいほど、カテキン送達の効率は低くなる。したがって、茶葉の少なくとも90重量%は、30メッシュ(595μm)よりも大きい粒度、より好ましくは25メッシュ(707μm)よりも大きい粒度、最も好ましくは20メッシュ(841μm)よりも大きい粒度を有することが好ましい。しかし、粒度が大きすぎる場合、茶は非常にゆっくりと浸出される可能性があり、かつ/または分配し若しくは取り扱うのが難しくなる可能性がある。したがって、茶葉の少なくとも90重量%は、3メッシュ(5.66mm)よりも小さい粒度、より好ましくは4メッシュ(4.76mm)よりも小さい粒度、最も好ましくは5メッシュ(4.00mm)よりも小さい粒度を有することが好ましい。
【0050】
茶葉の浸出特性は、茶葉のカテキン含量を制御することによって操作することができるが、これを実現するのに必要なプロセス(例えば、茶葉を部分発酵しまたは抽出する)は、茶葉によって得られる味および/または非フラバノール活性を必ず変化させると考えられる。したがって、茶葉は、アッサミカ種に典型的な高カテキンレベルを保持することが好ましい。したがって、緑茶のカテキン含量は、茶葉の少なくとも11乾燥重量%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも12%、最も好ましくは13から20%であることが好ましい。
【0051】
茶葉の特定の浸出特性をもたらす最も好ましい方法は、加工中の茶葉に対する損傷の程度を制御することによるものであり、例えば、本発明の方法を用いることによって行われる。
【0052】
方法
本発明の方法は、
(a)植物カメリアシネンシスアッサミカ種から新鮮な茶葉を提供するステップと、
(b)新鮮な茶葉を熱処理して、酵素活性を停止させるステップと、
(c)好ましくは新鮮な葉を動翼に通して部分的に浸軟した葉を生成し、次いでこの部分的に浸軟した葉をダブルコーンプロセッサ内に通して浸軟した葉を生成することにより、新鮮な葉を動翼およびダブルコーンプロセッサで浸軟させるステップと、
(d)浸軟した葉を乾燥させるステップと、
(e)任意選択で、粒度に応じて、乾燥した浸軟済みの茶葉を選別するステップとを含む。
【0053】
新鮮な茶葉の提供
その最も単純な形態において、新鮮な茶葉は、新たに摘み取られた形で提供され、即ちさらなる加工を全く行わずに提供され、76から80重量%の含水量を有する。新鮮な茶葉は、葉と茎の材料を含むことが好ましい。新鮮な茶葉は、活発に成長するつぼみを、例えば最初の2または3枚の葉とまだ開いていないつぼみとを加えた形で含むことが最も好ましい(いわゆる「一芯二葉(two-and-a-bud)」および/または「一芯三葉(three-and-a-bud)」)。
【0054】
熱処理
新鮮な茶葉の熱処理は、新鮮な茶葉での酵素の作用を抑制する。熱処理は、発酵に関与する内生酵素を不活性化するようにすべきであり、したがって、浸軟の間または後(ステップ(c))に、発酵を実質的に防止するよう十分であるべきである。適切な熱処理は、当業者に周知であり、水蒸気処理および/または釜炒りを含む(例えば、「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第13章参照)。水蒸気処理は、釜炒りなどの接触加熱でときどき生ずる茶葉表面の焼焦げが回避されるので、熱処理の好ましい形態である。茶葉表面の焼焦げは、製茶の浸出特性を不十分にする可能性があり、特に得られる飲料の色および透明度が不十分になる可能性がある。
【0055】
本発明者等は、熱処理前の新鮮な茶葉の含水量を制御することによって、下流プロセスでの茶葉の都合の良い取扱いが可能になることを見出した。特に、茶葉の含水量は、74から76重量%の範囲内になるよう制御されることが好ましい。この含水量は、茶葉を部分的に乾燥することによって実現されることが適切である。
【0056】
浸軟
浸軟は、2つの機能を果たす。第1に、茶葉の内容物が、飲料を製造するのに使用される水にほとんど接触し易くなるように、茶葉に損傷を与えることである。第2に、茶葉の形状およびサイズを変化させることである。
【0057】
伝統的に、緑茶は、ローラとして知られるバッチ式装置を使用して(例えば、「Tea: Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall (London)、第13章参照)または手で回転させることによって、浸軟させる。緑茶は、CTC機などの連続装置を使用して浸軟させることも、知られている。本発明者等は、これらの知られているプロセスが、連続製造に不適切であるという欠点、または製茶の所望の浸出特性を得るには過剰な茶葉の損傷をもたらすという欠点を有することを見出した。
【0058】
本発明者等は、驚くべきことに、動翼とダブルコーンプロセッサとの組合せを使用した浸軟によって、味の良い緑茶飲料の提供を可能にするアッサミカ緑茶が生成されるように、必要量の茶葉の損傷をもたらすことを見出した。特に、茶葉の損傷は、緑茶の味および活性を与える茶葉をもたらすようなものであり、同時に、カテキンの送達効率が非常に高いために、それから生成された飲料が口に合わないほど苦くなる茶葉を提供するほどひどくならないようなものである。さらに、得られる緑茶は、高品質の手揉みによる茶と同様の「拗り」外観を有することがわかる。
【0059】
好ましい配置構成は、茶葉が最初に動翼を通過し、次いでダブルコーンプロセッサを通過するものである。したがって好ましい実施形態では、熱処理の後、新鮮な茶葉を動翼に通して、部分的に浸軟させた茶葉を生成し、次いで部分的に浸軟させた葉をダブルコーンプロセッサに通して、浸軟した茶葉を生成する。
【0060】
浸軟は、含水量が多すぎない新鮮な茶葉に対して行われる場合、特に効果的である。したがって、新鮮な茶葉は、浸軟前に65から70重量%の含水量になるまで部分的に乾燥することが好ましい。
【0061】
浸軟は、茶葉が低温にある場合も、最も効果的である。したがって、新鮮な茶葉が、浸軟前に5から40℃の温度まで冷却することが好ましい。
【0062】
乾燥
浸軟の後、茶葉を乾燥する。長期の貯蔵安定性を可能にするには、茶葉の30重量%未満の含水量にまで、より好ましくは1から10重量%にまで乾燥することが好ましい。
【0063】
適切な乾燥プロセスは、当技術分野で知られており、トレー乾燥を含む。しかし、最も好ましい実施形態では、乾燥ステップは、浸軟した茶葉を流動床乾燥器内で乾燥するステップを含むが、これは、より均一な加熱が可能になるからであり、かつ燃焼による不快な風味および臭いの発生を防止するからである。流動床乾燥器による乾燥は、茶葉表面の焼焦げも回避する。焼焦げは、特に得られる飲料の色および透明度に関して、製茶の浸出特性を不十分にする可能性がある。
【0064】
選別
乾燥した浸軟済み茶葉は、粒度に応じて選別することが好ましい。特に茶葉は、サイズが30メッシュ(595μm)より大きい粒子が回収されるように選別することが好ましく、より好ましくは25メッシュ(707μm)よりも大きい粒子、最も好ましくは20メッシュ(841μm)よりも大きい粒子である。選別は、粒度が3メッシュ(5.66mm)よりも小さい粒子、より好ましくは4メッシュ(4.76mm)よりも小さい粒子、最も好ましくは5メッシュ(4.00mm)よりも小さい粒子を回収するステップを含んでもよい。茶葉を選別するステップは、乾燥した浸軟済み茶葉を篩にかけるステップを含むことが適切である。
【0065】
(実施例)
本発明について、以下の実施例を参照しながらさらに記述する。
【0066】
(実施例1)
カメリアシネンシスアッサミカ種からの新鮮な茶葉(一芯二葉)を、ケニアの畑から収穫した。新鮮な茶葉は、76〜80重量%の含水量を有している。次いで新鮮な茶葉を空気乾燥して、茶葉の含水量を75(±1)%にした。次いで茶葉を、96℃の温度で60秒間水蒸気処理することにより、全ての内生酵素を不活性化し、したがって発酵を防止した。
【0067】
次いで茶葉を、直列の高温空気ドラム乾燥器に通し、その後、振動床空気乾燥器に通すことによって、水蒸気処理した茶葉の含水量を67(±1)%に減少させた。
【0068】
振動床の端部の茶葉を、室温(約25℃)に冷却し、次いで1500kg/時で動作しかつアイリス開口が5.0cmに設定されている動翼に供給した。次いで動翼からの浸軟茶葉を、2つに分け、それぞれを、750kg/時で動作しているダブルコーンプロセッサ内に供給した。ダブルコーン加工の後、浸軟茶葉を流動床乾燥器内で乾燥して、含水量を3%よりも低くした。
【0069】
次いで繊維および副産物を茶葉から除去し、茶葉を篩にかけた。得られる選別済みの緑茶(サンプルA)は、そのサイズ範囲が-5+20メッシュであり、カテキン含量は13.4重量%であった。
【0070】
この茶葉の性質と、ダブルコーンプロセッサの代わりに動翼から得た浸軟茶葉を2つのCTC機に通したこと以外は同一の手法で調製した第2の茶葉(サンプルB)とを、比較した。これらの性質を、高品質の商用の緑茶(サンプルC)の性質とも比較した。結果を表1に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例2)
緑茶(サンプルD)を、実施例1で詳述したサンプルAに関して示された方法を使用して、アッサミカ種から調製した。この茶葉の性質を、商用の日本茶(サンプルE)の性質と比較した。結果を表2および3に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【符号の説明】
【0075】
1 ロータ
2 供給ウォーム
3 第1の裁頭円錐部材
3A 翼
4 第2の裁頭円錐部材
4A 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより、カテキンを飲料の0.01から0.1重量%の間の量で含む飲料が生成される、カメリアシネンシスアッサミカ種から得た緑茶。
【請求項2】
緑茶の少なくとも90重量%が30メッシュよりも大きい粒度を有する、請求項1に記載の緑茶。
【請求項3】
緑茶の少なくとも90重量%が3メッシュよりも小さい粒度を有する、請求項1または請求項2に記載の緑茶。
【請求項4】
緑茶の少なくとも90重量%が-5+20メッシュの粒度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項5】
緑茶のカテキン含量が少なくとも11乾燥重量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項6】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、カテキンを、前記飲料の0.04から0.09重量%、好ましくは0.06から0.085重量%の量で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項7】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、テアニンを、前記飲料の少なくとも0.004重量%、好ましくは0.005から0.02重量%の量で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項8】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、20NTU未満、好ましくは1から15NTUの濁度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項9】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、103から115の間、好ましくは104から110の間の色相(h*)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項10】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、6から15の間、好ましくは8から10の間の彩度(C*)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項11】
茶葉2gを、90℃の湯200mlで1.5分間浸出することにより生成された飲料が、94から100の間、好ましくは96から99の間の明度(L*)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項12】
(a)植物カメリアシネンシスアッサミカ種から新鮮な茶葉を得るステップと、
(b)新鮮な葉を熱処理して、酵素作用を抑制するステップと、
(c)好ましくは新鮮な茶葉を動翼に通して部分的に浸軟した茶葉を生成し、次いでこの部分的に浸軟した茶葉をダブルコーンプロセッサ内に通して浸軟した葉を生成することにより、新鮮な茶葉を、動翼およびダブルコーンプロセッサで浸軟させるステップと、
(d)浸軟した茶葉を乾燥するステップと、
(e)任意選択で、粒度に応じて乾燥した浸軟済みの葉を選別するステップと
を含む方法によって得ることが可能な、請求項1から11のいずれか一項に記載の緑茶。
【請求項13】
(a)植物カメリアシネンシスアッサミカ種から新鮮な茶葉を得るステップと、
(b)新鮮な葉を熱処理して、酵素作用を抑制するステップと、
(c)好ましくは新鮮な茶葉を動翼に通して部分的に浸軟した茶葉を生成し、次いでこの部分的に浸軟した茶葉をダブルコーンプロセッサ内に通して浸軟した葉を生成することにより、新鮮な茶葉を、動翼およびダブルコーンプロセッサで浸軟させるステップと、
(d)浸軟した茶葉を乾燥するステップと、
(e)任意選択で、粒度に応じて乾燥した浸軟済みの葉を選別するステップと
を含む、緑茶を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−505402(P2010−505402A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530830(P2009−530830)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059709
【国際公開番号】WO2008/040627
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】