説明

草刈り機の集草装置

【課題】集草容器の着脱を容易に行えるようした草刈り機の集草装置を提供する。
【解決手段】 集草容器7の上部の左右向きの横軸回りに回動可能に支持し、集草容器7が下向きに開放された離間姿勢と、集草容器7の前部が支持枠28に接続された取付姿勢とに切換え回動可能に構成し、支持枠28と集草容器7の前端下部との間に、集草容器7を取付姿勢に姿勢変更したときに付勢手段67により係合方向に付勢されたフック63に自動的に係合して集草容器7を取付姿勢に固定するロック機構61を備えていると共に、付勢手段67の初期付勢力を強弱に切り換える切り換え手段69を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に装着した草刈装置で刈り取った刈草を回収する集草容器を、走行機体に対して着脱自在に構成した草刈り機の集草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈り機の集草容器として、走行機体に草刈装置を装備し、草刈装置から走行機体の後部に向けてダクトを延出し、走行機体の後部に設けられた支持枠に集草容器を着脱自在に取り付け、集草容器の前部に形成した開口とダクトとを連通接続し、草刈装置で刈り取られた刈草を、ダクトを介して集草容器に回収するよう構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された集草容器を装着するときは、集草容器の上部を左右向きの横軸回りに回動可能に走行機体の後部の支持枠に取り付けた後、集草容器の下部をロックする手段として、集草容器のロック金具26に係合するロック部材25を操作ロッド29を引上げて持上げ開放しておいて、集草容器のロック金具を所定位置に位置決めした後、操作ロッド29を操作してロック部材25をロック金具26に係合させることで集草容器の下部をロックして、集草容器を支持枠に固定するように構成されていた。
【特許文献1】特開2006−6209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、集草容器を走行機体の後部に装着するときは、集草容器の上部を支持枠に取り付けた後、集草容器の下部をロックする場合に、その都度、操作ロッド29を引上げ操作してロック部材25の係合部を開放する必要あり、ロックするときはロック部材25が所定のロック位置にセットされていることを確認してからでないと、ロック操作してもロックできないものであり、ロック作業が煩わしい不都合があった。
【0005】
本発明は、集草容器を装着するときに集草容器の下部を容易にロックできるようにしてロック作業の簡便化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、走行機体に草刈装置を装備し、草刈装置から走行機体の後部に向けて搬送ダクトを延出し、走行機体の後部に設けられた支持枠に集草容器を着脱自在に取り付け、集草容器に形成した開口と搬送ダクトとを連通接続し、草刈装置で刈り取られた刈草を、搬送ダクトを介して集草容器に回収するよう構成した草刈り機の集草装置であって、集草容器を、集草容器の上部の左右向きの横軸回りに回動可能に支持し、集草容器の前部が支持枠から離間して下向きに開放された離間姿勢と、集草容器の前部が支持枠に接続された取付姿勢とに切換え回動可能に構成し、支持枠と集草容器の前端下部との間に、集草容器を離間姿勢から取付姿勢に姿勢変更したときに付勢手段により係合方向に付勢されたフックに自動的に係合して集草容器を取付姿勢に固定するロック機構を備えていると共に、付勢手段の初期付勢力を強弱に切り換える切り換え手段を備えてあることを特徴とする。
【0007】
〔第1発明の作用〕
第1発明によると、草刈作業をして、集草容器に満杯になった刈草を放出するときは、取付姿勢にある集草容器を、上部の左右向きの横軸の軸芯を中心に後方に揺動操作することにより、集草容器の回動に伴って集草容器下部のフックが付勢力に抗して解除側に移動して、集草容器が回動して離間姿勢となり、刈草を所望の場所に放出することができる。集草容器を取付姿勢に戻すときは、取付姿勢に戻る直前に集草容器の戻し操作力で前記フックが付勢力に抗して開き、集草容器が取付姿勢に戻ると、付勢手段による初期付勢力でフックがロックして、集草容器を取付姿勢に維持させることができる。
集草容器を走行機体から取り外すときは、集草容器の上部を支持枠から外すとともに、集草容器の前端下部のフックの初期付勢力を切り換え手段を操作して弱め、これにより、集草容器の下部を後方に容易に引き出すことができ、集草容器を後方に引き出すことで、フックとの係合を容易に脱して集草容器を取り外すことができる。
集草容器を走行機体に取り付けるときは、前記フックの初期付勢力を「弱」に操作しておくことで、集草容器の下部を、容易にフックに係合させることができる。支持枠と集草容器とがフックで係合させた状態で、集草容器の上部を左右向きの横軸を介して支持枠に取り付ける。そして、付勢手段を操作して前記フックの初期付勢力を「強」にすることで、集草容器の下部を支持枠に固定することができる。
殊に、この発明においては、集草容器下部の連結を、前記フックの初期付勢力を「弱」に操作しておくことで、容易に行うことができる。
【0008】
〔第1発明の効果〕
第1発明によると、付勢手段の初期付勢力を切り換え手段の操作で弱めて集草容器の下部をロックするフックによるロック機構の係合力を緩めることで、集草容器を容易に取り外すことができるとともに、作業時にはフックの初期付勢力を強くすることで、集草容器の取付姿勢でフックが緩んで集草容器の口が開いてしまうということがなく、切り換え手段で付勢手段の初期付勢力を切り換えるだけで、集草容器の取り外しが楽でしかも作業時には確実にフックの係合が行えるので、良好に刈草回収作業が行えるにようになった。
【0009】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記ロック機構を集草容器の左右側部に配置し、付勢手段をコイルスプリングで構成し、切り換え手段を揺動自在な切り換えレバーで構成し、切り換えレバーとフックとの間にコイルスプリングを張設し、切り換えレバーを弱位置に切り換えるとコイルスプリングを取り付けている切り換えレバーとフックの取り付け部間の距離が短くなってコイルスプリングによるフックに対する付勢力が弱くなり、切り換えレバーを強位置に切り換えるとコイルスプリングを取り付けている切り換えレバーとフックの取り付け部間の距離が長くなってコイルスプリングによるフックに対する付勢力が強くなるように構成してある。
【0010】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によると、切り換えレバーを操作するだけで、コイルスプリングによるフックに対する初期付勢力を変更することができ、簡単な構成で容易にフックによる係止力を変更することができるに至った。
【0011】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第2発明の構成において、前記切り換えレバーは、前後軸回りに左右方向に操作することで、コイルスプリングの初期付勢力が強弱に切り換わるように構成され、切り換えレバーを弱位置に操作すると該切り換えレバーが集草容器の左右横外側端の位置よりも外方にはみ出し、切り換えレバーを強位置に操作すると該切り換えレバーが集草容器の左右横外側端の位置よりも左右方向中央側に傾倒するように構成してある。
【0012】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によると、作業中は、切り換えレバーを強位置に操作すると、前後軸回りで集草容器の左右横外側端の位置よりも左右方向中央側に傾倒した状態になるので、切り換えレバーが作業中に不測に障害物に当たって変形を起すことがない。切り換えレバーが、弱位置にあるときは集草容器の外に出るので作業者の目に付き易く、切り換えレバーが弱位置に位置していることを認識し易い。従って、切り換えレバーの強位置への切り換え忘れが少なくなり、切り換えレバーの操作間違いを少なくさせることができる。
【0013】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれかの発明の構成において、前記ロック機構のフックに係合する係合部材を集草容器の前端下部に取り付け、支持枠に、フックと、該フックと協働して係合部材をロック保持するロック保持部材とを、フックの下方にロック保持部材が位置する状態で取り付け、ロック保持部材に集草容器の装着時に係合部材を上方から受け止めることで集草容器を載置できる受け部材を取り付けるとともに、受け部材を前支点として後部が上方に揺動可能で、後部の下方への揺動をストッパーにより規制してある。
【0014】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によると、取り外した集草容器を走行機体後部の支持枠に装着するとき、集草容器の下部の係合部材がロック保持部材に近接する位置で持ち上げて、係止部材が受け部材に当たる状態で集草容器が持ち上げられても受け部材が一旦上方に揺動して、係止部材が受け部材の下端縁から外れると受け部材が元の姿勢に戻って、係合部材をロック保持部材又は受け部材上に載せることができる。又、ロック保持部材と受け部材とにより、係止部材を載置する距離が長くなる。これによって、集草容器を装着するときに、集草容器をロック機構にロックさせやすくなった。
【0015】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第1発明〜第4発明のいずれかの発明の構成において、前記集草容器の装着時に集草容器の上部を支持する左右横軸の位置決めをするための位置決めステーを左右横軸の近傍に設けてある。
【0016】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によると、集草容器の上部を連結するときの位置決めが容易に行えるので、集草容器上部の連結が簡単に行えるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る草刈装置20が装備された乗用型草刈り機の全体側面図である。この図に示すように、この乗用型草刈り機は、左右一対の操向操作自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走するよう構成され、かつ走行機体の後部に設けた運転座席3が装備された運転部を有した乗用型の自走車と、この自走車の車体フレーム4の前後輪間にリンク機構10を介して連結された草刈装置20と、車体フレーム4の後部に連結された集草容器7を有した集草装置8とを備えている。
【0018】
この作業車は、芝や草を刈り込む草刈り作業を行う。
すなわち、自走車は、車体フレーム4の前部に設けたエンジン5と、このエンジン5の下方に設けた動力取り出し機構40とを備えている。動力取り出し機構40は、エンジン5の出力を、伝動ベルト42を介して入力軸41に入力し、入力軸41の駆動力を油圧操作式の作業クラッチ45を介して動力取り出し軸43に伝達し、この動力取り出し軸43の駆動力を、回転軸46を介して草刈装置20の刈り刃駆動機構22に伝達する。
【0019】
前記刈り刃駆動機構22は、回転軸46に連動された入力軸22aの駆動力により刈り刃26を回転させる。
【0020】
前記リンク機構10は、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の前揺動リンク11,11と、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の後揺動リンク12,12と、左右一対の連動リンク13,13とを備えている。
【0021】
前記左右一対の前揺動リンク11,11の先端部は、草刈装置20の刈り刃ハウジング21の前部に位置する前連結部材23に連結されている。左右一対の後揺動リンク12,12の先端部は、刈り刃ハウジング21の後部に位置する後連結部材24に連結されている。右及び左の連動リンク13は、それぞれ右及び左の前揺動リンク11と後揺動リンク12とを連動させている。左右一対の前揺動リンク11,11の一方にリフトシリンダ15が連動されている。
【0022】
つまり、前記リンク機構10は、リフトシリンダ15によって一方の前揺動リンク11が揺動操作されると、左右一対の前揺動リンク11,11が回転支軸14による連動のために一体に揺動することによって車体フレーム4に対して上下に揺動操作され、草刈装置20を刈り刃ハウジング21の前後側に支持された接地ゲージ輪25が地面に接地した下降作業状態と、各接地ゲージ輪25が地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
【0023】
前記草刈装置20を下降作業状態にして自走車を走行させると、草刈装置20は、刈り刃ハウジング21の内部に横方向に並んで位置する二枚の刈り刃26を刈り刃駆動機構22によって上下向きの軸芯まわりに回転駆動して各刈り刃26によって草刈りを行い、刈り草を刈り刃26の回転によって発生した風によって刈り刃ハウジング21の上部に位置する刈り草排出ダクト27から走行機体の後方上方向きに排出する。
【0024】
前記刈り草排出ダクト27から排出された刈り草は、刈り刃26からの風による搬送作用と、自走車に左右一対の後車輪2,2の間を車体前後方向に通して設けてある搬送ダクト6による案内作用とによって集草容器7に送り込まれ、この集草容器7によって回収されて貯留される。
【0025】
前記集草装置8は、図2及び図12に示すように、車体フレーム4に連結された支持枠28に対して、左右向きの横軸30回りに油圧シリンダ34によって、集草容器7を下降集草位置(取付姿勢)と上昇排出位置(離間姿勢)とに昇降操作されるように構成してある。
【0026】
図2〜図6及び図12に示すように、集草容器7を支持する支持枠28は、前面開口枠29を介して車体フレーム4の後端部に連結固定されている。支持枠28の上部の横軸30の左右方向複数箇所に集草容器7を着脱自在に取り付けるための連結軸31を支持するブラケット32と、連結軸31を支持するとともに当該連結軸31を揺動させる油圧シリンダ34の一端を取り付けるブラケット33とを設けてある。
【0027】
前記支持枠28は、後向きに開放された箱蓋状の蓋板35と、蓋板35の前面に取り付けられた車体フレーム4に固定するための左右一対の前面開口枠29と、蓋板35を保持する左右一対の縦フレーム36とを備えている。蓋板35の外周には、後方に折り曲げ片35aを突出させることで、上下左右の端部から折り曲げ片35aで後方を囲むようにして後向きに開放された箱蓋状に形成されている。一対の前面開口枠29の間に、搬送ダクト6の後端部に連通接続される矩形の開口9が形成されている。開口9の開口部に搬送ダクト6の板フランジ片6aが固定されている。
【0028】
図1、図2に示すように、前記集草容器7は、金属丸パイプ材を箱形に組み立てた容器フレーム51の下面に図示しない鋼板からなる底板を連結するとともに、上壁面、左右の側壁面、および、後壁面とを適度の大きさの目合いの金網、パンチングメタル、樹脂あるいは布製のシート材52を固定して箱状に構成されている。集草容器7の上部には、上壁面と適当間隔をもって図示しない上部カバーが配備されており、開口9から刈草と共に吹き込まれた搬送風が通気可能なシート材52からなる上壁面、左右側壁面、および、後壁面から抜け出てゆくとともに、上壁面を通過した搬送風は上部カバーで案内されて後壁面の後部から下方に向けて流動するようになっている。
【0029】
前記集草容器7は、支持枠28に対して左右向きの横軸30回りに上下揺動可能で、又、脱着可能なように支持されており、その揺動操作構造および脱着構造を以下に説明する。
【0030】
図2〜図6に、集草容器7の上部連結構造55が示されている。容器フレーム51の左右の前端上部には連結用のブラケット53が固定されている。
【0031】
前記ブラケット53は集草容器7の前側上部の左右に夫々一対ずつ設けられている。外側のブラケット53には、容器フレーム51を構成する側面視コ字状の枠フレーム51aの上部前端部と、左右の前側部縦フレーム51bの上端部と、前上部横フレーム51cとが連結されている。左右の一対のブラケット53には、連結軸31に後側から嵌合する嵌合凹部54が形成されているとともに、集草容器7を装着するときに、集草容器7を固定するための固定用ピン56と、固定用ピン56を操作するピン操作具57が貫通保持され、一対のブラケット53の間におけるピン操作具57の出退ロッド部57aに、固定用ピン56を内側に突出付勢するスプリング58が被嵌されている。外側のブラケット53においては、連結軸31に嵌合する嵌合凹部54の上部の受け部53aを、内側の受け部よりも前方側に長く突出形成してある。この受け部53aによって、集草容器7を装着するときに、連結軸31に受け部53aを載せることで、連結軸31にブラケット53の嵌合凹部54を嵌合させやすくなっている。
【0032】
集草容器7の上部は、支持枠28に集草容器7を装着しているときに、集草容器7の左右のピン操作具57の操作部57bを外側に引いて、図6に示されている固定用ピン56を、図5に示すブラケット32に形成されたピン孔59から離脱させるだけで、集草容器7の上部の連結固定状態が解除され、その状態から集草容器7の上部を後方に移動させると集草容器7の上部が連結軸31から離脱される。
【0033】
図2、図7〜図11に、集草容器7の下部連結構造60が示されている。容器フレーム51の左右の前端下部には連結用のブラケット68が固定されている。
【0034】
前記ブラケット68は集草容器7の前端下部の左右に設けられている。ブラケット68には、容器フレーム51を構成する側面視コ字状の枠フレーム51aの前端下部と、左右の前側部縦フレーム51bの下端部と、前下部横フレーム51dとが連結されている。ブラケット68には、集草容器7の下部を連結固定するための係合ピン64からなる係合部材が外方に向けて突設されている。
【0035】
前記支持枠28の下部と、集草容器7の前端下部との間に、集草容器7の下部を支持枠28に連結固定するロック機構61が設けられている。このロック機構61は、支持枠28の下部の左右に横向きの支点軸62回りに回動自在に枢支されたフック63と、集草容器7の前端下部のブラケット68に配置された係合ピン64と、支持枠28の下部に備えられ、フック63との協働で係合ピン64を保持するロック保持部材65と、フック63を係合ピン64へ係合する方向に付勢する付勢機構66とで構成されている。
【0036】
前記フック63は、付勢機構66の付勢手段としてのコイルスプリング67によって下方、つまり、ロック方向に回動付勢されている。集草容器7を離脱した図8の状態において、フック63はストッパー63aによって、図示の状態より時計方向に回転することが規制されている。集草容器7を刈草排出姿勢(離間姿勢)から刈草回収姿勢(取付姿勢)に回動させると、係合ピン64が図8に示されているフック63との離脱状態からロック保持部材65の案内支持部65Aに支持されて、フック63の先端部の傾斜下端縁63Aに摺接することでフック63を一旦持上げて後、図7のように、フック63の側面視で逆V字状に切り欠かれた係合部63Bに係合ピン64が係合してロックされる。又、集草容器7を刈草回収姿勢から刈草排出姿勢にするときは、油圧シリンダ34を伸長させることで、係合ピン64をフック63から離脱する方向に移動させてロック解除を行えるようになっている。なお、フック63における傾斜下端縁63Aと係合部63Bとの間の形状は、湾曲した形状に形成されている。
【0037】
前記付勢機構66は、図11に示されているように、背面視で切り換えレバー69を、実線で示すように、集草容器7の内側(内位置)に操作しているときは、コイルスプリング67の張力が大きく、二点鎖線で示すように、切り換えレバー69が前後軸70回りで回動されて集草容器7の幅よりも外側(外位置)に操作しているときは、コイルスプリング67の張力が小さくなる。通常の作業中は、外位置に設定しているが、外位置でも作業は可能である。
【0038】
図11の実線で示す切り換えレバー69が内位置に操作された状態から、切り換えレバー69を前後軸70の軸心周りで横外側に揺動操作すると、その揺動操作力により切り換えレバー69の内位置と外位置との間のデッドポイントDPまでコイルスプリング67が伸長する。そして、このデッドポイントDPを超えると、コイルスプリング67が短縮してその付勢力により切り換えレバー69が外位置側に揺動操作されて集草容器7側から前向きに突設されたストッパーSに接当し、切り換えレバー69が図11の2点鎖線で示す外位置に位置決めされる。この切り換えレバー69が外位置でストッパーSに接当した状態では、コイルスプリング67の付勢力が作用するように構成されており、これにより、切り換えレバー69を外位置で保持することができる。
【0039】
一方、図11の2点鎖線で示す切り換えレバー69が外位置に操作された状態から、切り換えレバー69を前後軸70の軸心周りで上側に揺動操作すると、その揺動操作力により切り換えレバー69の内位置と外位置との間のデッドポイントDPまでコイルスプリング68が伸長する。そして、このデッドポイントDPを超えると、コイルスプリング67が短縮してその付勢力により切り換えレバー69が内位置側に揺動操作されて集草容器7側から前向きに突設されたストッパーSに接当し、切り換えレバー69が図11の実線で示す内位置に位置決めされる。この切り換えレバー69が内位置でストッパーSに接当した状態では、コイルスプリング67の付勢力が作用するように構成されており、これにより、切り換えレバー69を内位置で保持することができる。
【0040】
上記のように、前記草刈り機の集草装置8は、走行機体に草刈装置20を装備し、草刈装置20から走行機体の後部に向けて搬送ダクト6を延出し、走行機体の後部に設けられた支持枠28に集草容器7を着脱自在に取り付け、集草容器7に形成した開口9と搬送ダクト6とを連通接続し、草刈装置20で刈り取られた刈草を、搬送ダクト6を介して集草容器7に回収するよう構成したものであって、前記集草容器7を、集草容器7の上部の左右向きの横軸30回りに回動可能に支持し、集草容器7の前部が支持枠28から離間して下向きに開放された離間姿勢と、集草容器7の前部が支持枠28に接続された取付姿勢とに切換え回動可能に構成し、支持枠28と集草容器7の前端下部との間に、集草容器7を離間姿勢から取付姿勢に姿勢変更したときにコイルスプリング67により係合方向に付勢されたフック63に自動的に係合して集草容器7を取付姿勢に固定するロック機構61を備えていると共に、コイルスプリング67の初期付勢力を強弱に切り換える切り換えレバー69を備えてある。
【0041】
そして、前記ロック機構61を集草容器7の左右側部に配置し、コイルスプリング67を切り換えレバー69とフック63との間に張設し、切り換えレバー69を弱位置に切り換えると、該切り換えレバー69が集草容器7の左右横外側端の位置よりも外方にはみ出し、コイルスプリング67の張設間距離が短くなってコイルスプリング67によるフック63に対する付勢力が弱くなる。又、切り換えレバー69を強位置に切り換えると、切り換えレバー69が集草容器7の左右横外側端の位置よりも左右方向中央側に傾倒してコイルスプリング67によるフック63に対する付勢力が強くなる。
【0042】
尚、図13の符号16は、バッテリーの接続線や各種電気機器用ハーネス17を配線するクランプ金具である。クランプ金具16の基部を車体フレーム4やその他の車体構成部材にスポット溶接等で固定し、ハーネス17を弾性的に開閉する保持部16aで保持するように構成してある。
【0043】
〔別実施の形態〕
図14は、下部連結構造60の別実施の態様を示し、ロック機構66を構成するロック保持部材65の後端部に水平または略水平姿勢よりも上方への回動が可能で水平姿勢よりも下方への回動が規制されている係合ピン64の受け部材71を取り付けてある。受け部材71は、横軸72に枢支され、下端縁にストッパー片73が一体に形成されている。ロック保持部材65の後端は、ストッパー片73が回動できるように後端縁が半円形に形成されている。
【0044】
つまり、この別実施の形態では、ロック機構61のフック63に係合する係合ピン64を集草容器7の前端下部に取り付け、支持枠28に、フック63と、フック63と協働して係合ピン64をロック保持するロック保持部材65とを、フック63の下方にロック保持部材65が位置する状態で取り付け、ロック保持部材65に集草容器7の装着時に係合ピン64を上方から受け止めることで集草容器7を載置できる受け部材71を取り付けるとともに、受け部材71を、横軸72を前支点として後部が上方に揺動可能で下方への揺動をストッパー73により規制してある。
【0045】
これによって、離脱した集草容器7を装着するときは、集草容器7の下部の係合ピン64がロック保持部材65の後方付近を通るように持上げて集草容器7の下部の係合ピン64をロック保持部材65の上端縁又は受け部材71の上端縁に載置して、集草容器7の過重をロック保持部材65又は受け部材71に支持させる。
上記の場合、集草容器7を持上げたときに、係合ピン64が受け部材71の直下に位置する状態で持ち上げられても係合ピン64で受け部材71は一旦上方に揺動され、係止ピン64が受け部材71の下端縁から外れると受け部材71は元の水平姿勢に戻り、係合ピン64をロック保持部材65又は受け部材71に載せやすくなる。
【0046】
受け部材71を横軸72に嵌着した図示しないコイルスプリングにより図14の時計回りに付勢しておけば、受け部材71は、反時計回りに回動されても確実に元の水平姿勢に復元することができるので、より好適に実施できる。
【0047】
図15、図16は、上部連結構造55の別実施の態様を示す。支持枠28の上部に、集草容器7を左右向きの軸芯回りに回動させる横軸30が支持され、この横軸30の左右両側部に集草容器7を着脱自在に取り付けるための図示しない連結軸を挿通させるボス75と図示しないロックボルトを挿通させるボルトホルダ76とを形成したブラケット32aが備えられている。
【0048】
前記集草容器7側の前端上部のブラケット74には、ボス75とともに連結軸を挿通させる軸孔77と、ボルトホルダ76とともに図示しないロックボルトを挿通させるボルト孔78と、位置決めステー79が形成されている。ステー79の前面はブラケット32aの後端縁の円弧面と一致する形状で、軸孔77の中心から一定の半径で描かれる円弧面に形成されている。
【0049】
集草容器7を装着するときは、切り換えレバー69を外方に操作して、コイルスプリング67の付勢力を緩めておいて、集草容器7の下部の係合ピン64をフック63に係止させて、集草容器7の下部を連結する。この状態で集草容器7の上部の軸孔77がボス75の軸孔75aと一致するように近づけるように、ステー79の内面をブラケット32aの後端縁の円弧面に接当させる。そして油圧シリンダ34を伸縮させて、ボス75の軸孔75aと集草容器7側のブラケット74の軸孔77とを一致させ、この状態で図示しない連結軸を挿通して該連結軸を止着するとともに、ブラケット74に形成したボルト孔78とボルトホルダ76のボルト挿通孔80とに亘ってロックボルト81を挿通して螺着する。
上記のようにステー79で位置決めするようにしておけば、人手による孔のセンタ合わせのための微調整が必要なくなり、連結軸による集草容器7の連結が容易に行える。
【0050】
上記の発明を実施するための最良の形態では、切り換えレバー69を操作して付勢機構66による初期付勢力を弱にしたときには、コイルスプリング67に多少の引張力が作用しているように構成してあるが、切り換えレバー69を操作して初期付勢力を弱にしたときの初期付勢力を零(コイルスプリング67による引張力が「強」から非引張状態の「零」)を含むものとする。更には、切り換えレバー69を「弱」位置に操作したときには、コイルスプリング67の引張力が零になるとともに、コイルスプリング67を介してフック63を開き操作することも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】草刈り機の全体側面図
【図2】集草装置の側面図
【図3】集草装置における集草容器を取り外した状態の支持枠を示す背面図
【図4】集草容器を取り付けた状態の上部連結構造を示す部分側面図
【図5】集草容器を取り外した状態の上部連結構造を示す部分側面図
【図6】集草容器を取り付けた状態の上部連結構造を示す部分平面図
【図7】集草容器を取り付けた状態の下部連結構造を示す部分側面図
【図8】集草容器を取り外した状態の下部連結構造を示す部分側面図
【図9】集草容器のロック機構におけるロック金具を示す部分背面図
【図10】フックの斜視図
【図11】付勢機構を示す部分正面図
【図12】集草容器を刈草排出姿勢に持上げた状態を示す側面図
【図13】(a)はハーネスの止着構造を示す斜視図、(b)はハーネスの止着構造を示す断面図
【図14】(a),(b)は下部連結構造の別実施の態様の集草容器の取り付け時の状態を示す部分側面図
【図15】(a),(b)は上部連結構造の別実施の態様の集草容器の着脱状態を示す部分側面図
【図16】上部連結構造の別実施の態様の集草容器の離脱状態を示す部分平面図
【符号の説明】
【0052】
6 搬送ダクト
7 集草容器
9 開口
20 草刈装置
28 支持枠
30 左右向きの横軸
61 ロック機構
63 フック
64 係合部材(係合ピン)
65 ロック保持部材
67 付勢手段(コイルスプリング)
69 切り換え手段(切り換えレバー)
79 位置決めステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に草刈装置を装備し、前記草刈装置から走行機体の後部に向けて搬送ダクトを延出し、走行機体の後部に設けられた支持枠に集草容器を着脱自在に取り付け、前記集草容器に形成した開口と前記搬送ダクトとを連通接続し、前記草刈装置で刈り取られた刈草を、前記搬送ダクトを介して前記集草容器に回収するよう構成した草刈り機の集草装置であって、
前記集草容器を、該集草容器の上部の左右向きの横軸回りに回動可能に支持し、前記集草容器の前部が前記支持枠から離間して下向きに開放された離間姿勢と、前記集草容器の前部が前記支持枠に接続された取付姿勢とに切換え回動可能に構成し、前記支持枠と前記集草容器の前端下部との間に、前記集草容器を離間姿勢から取付姿勢に姿勢変更したときに付勢手段により係合方向に付勢されたフックに自動的に係合して前記集草容器を取付姿勢に固定するロック機構を備えていると共に、前記付勢手段の初期付勢力を強弱に切り換える切り換え手段を備えてあることを特徴とする草刈り機の集草装置。
【請求項2】
前記ロック機構を前記集草容器の左右側部に配置し、前記付勢手段をコイルスプリングで構成し、前記切り換え手段を揺動自在な切り換えレバーで構成し、前記切り換えレバーと前記フックとの間に前記コイルスプリングを張設し、前記切り換えレバーを弱位置に切り換えると前記コイルスプリングを取り付けている前記切り換えレバーと前記フックの取り付け部間の距離が短くなって前記コイルスプリングによる前記フックに対する付勢力が弱くなり、前記切り換えレバーを強位置に切り換えると前記コイルスプリングを取り付けている前記切り換えレバーと前記フックの取り付け部間の距離が長くなって前記コイルスプリングによる前記フックに対する付勢力が強くなるように構成してある請求項1記載の草刈り機の集草装置。
【請求項3】
前記切り換えレバーは、前後軸回りに左右方向に操作することで、前記コイルスプリングの初期付勢力が強弱に切り換わるように構成され、前記切り換えレバーを弱位置に操作すると該切り換えレバーが前記集草容器の左右横外側端の位置よりも外方にはみ出し、前記切り換えレバーを強位置に操作すると該切り換えレバーが前記集草容器の左右横外側端の位置よりも左右方向中央側に傾倒するように構成してある請求項2記載の草刈り機の集草装置。
【請求項4】
前記ロック機構の前記フックに係合する係合部材を前記集草容器の前端下部に取り付け、前記支持枠に、前記フックと、該フックと協働して前記係合部材をロック保持するロック保持部材とを、前記フックの下方に前記ロック保持部材が位置する状態で取り付け、前記ロック保持部材に前記集草容器の装着時に前記係合部材を上方から受け止めることで前記集草容器を載置できる受け部材を取り付けるとともに、前記受け部材を前支点として後部が上方に揺動可能で、後部の下方への揺動をストッパーにより規制してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の草刈り機の集草装置。
【請求項5】
前記集草容器の装着時に該集草容器の上部を支持する前記横軸の位置決めをするための位置決めステーを前記横軸の近傍に設けてある請求項1〜4のいずれか一項に記載の草刈り機の集草装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−148403(P2010−148403A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328581(P2008−328581)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】