説明

荷室の仕切り棚構造

【課題】 仕切り棚の収納時には車両重心を低くすることができると共に、車両後方側壁部からの視認性を悪化させることのない荷室の仕切り棚構造の提供。
【解決手段】 荷室1を上下方向に仕切る仕切り棚2の基端部が、荷室1の側壁の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚2を2略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより、荷室1の側壁3内面に取り付けられたトリム31に形成された収容凹部32内に収納されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室の仕切り棚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の荷室の仕切り棚構造としては、例えば、シート状巻取器及びネット巻取器がそれぞれ収納された一対の筒体が、前後方向に互いに間隔を置いて同一面状に連結されると共に、筒体の基端部が筒体を荷室の側壁に沿った格納位置から車幅方向位置になるように下方へ回動させ得るように荷室の側壁のタイヤエプロン部の上部に軸支された構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−318529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、上述のように、荷室を上下方向に仕切る仕切り棚(一対の筒体)が荷室の側壁の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、荷室の側壁の上方へ向けて回動させることにより荷室の側壁に沿って収納させる構造であるため、仕切り棚の収納時における車両重心が高くなると共に、仕切り棚の収納部分には窓を設けることができなくなるため、車両後方側壁の視認性が悪化するという問題があった。
【0004】
本発明は、上述のような従来の問題点に着目して成されたもので、仕切り棚の収納時には車両重心を低くすることができると共に、車両後方側壁部からの視認性を悪化させることのない荷室の仕切り棚構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本願請求項1に記載の荷室の仕切り棚構造は、荷室を上下方向に仕切る仕切り棚の基端部が前記荷室の側壁の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚を略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより前記荷室の側壁に沿って収納されるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の荷室の仕切り棚構造では、上述のように、荷室を上下方向に仕切る仕切り棚の基端部が荷室の側壁の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚を略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより前記荷室の側壁に沿って収納されるように構成されたことで、仕切り棚の収納時には車両重心を低くすることができると共に、仕切り棚収納部の上方には窓を設けることができるため、車両後方側壁部からの視認性を悪化させることがなくなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
この実施例の荷室の仕切り棚構造は、請求項1〜8に記載の発明に対応する。
【0009】
図1はこの実施例の荷室の仕切り棚構造における仕切り棚の収納状態を示す斜視図、図2は図1のA−A線における拡大縦断面図、図3は実施例の荷室の仕切り棚構造における仕切り棚の使用状体を示す斜視図、図4は図3のB−B線における縦断面図、図5は実施例の荷室の仕切り棚構造を示す要部の分解斜視図である。
【0010】
この実施例の荷室の仕切り棚構造は、荷室1を上下方向に仕切る仕切り棚2の基端部が、荷室1の側壁3の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚2を略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより、荷室1の側壁3内面に取り付けられたトリム31に形成された収容凹部32内に収納されるようになっている。
【0011】
さらに詳述すると、上記仕切り棚2は、図5に示すように、後述の支軸42に対してそれぞれ基端部が軸支された一対の基板2aと両基板2a−2a間を接続する複数本(4本)のバー2bとで構成されている。
【0012】
上記基板2aは、支軸42に対し軸支された軸支部21と、バー2bで接続された棚部23と、該棚部23と軸支部21とを連結する連結部22とで略クランク状に形成され前記軸支部21にはその長手方向に沿って支軸42に軸支される長孔21aが形成されている。
【0013】
上記支軸42は図2、4、5に示すように、収容凹部32内上面と前面に当接させた状態でボルト43によって取り付け固定された断面L字状ブラケット4の両軸支部41−41相互間に挿通したボルトで構成されている。
【0014】
そして、図4に示すように、仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該仕切り棚2を収容凹部32内方向へ押し込むことにより、両基板2aにおける軸支部(基端部)21の先端側の上面が係合して仕切り棚2を略水平状体に維持させる係合部が断面L字状ブラケット4における水平片4aの先端部に下方へ向けて突設されたリブ4bで構成されている。
【0015】
また、該仕切り棚2を収容凹部32内方向へ押し込んだ状態に維持させる係合凹部21bが長孔21aの基端部上面側に形成されている。
【0016】
そして、図4、5に示すように、一対の仕切り棚2、2が荷室1における左右両側壁に対面する状態で設けられ、該両仕切り棚2、2を略水平状態に維持させた状態で両基板2a、2aにおける棚部23、23の先端部同士を連結する連結部材5が備えられている。
【0017】
この連結部材5は、筒体で構成される第1連結片51と該第1連結片51の筒体内に摺動自在に挿入可能な第2連結片52とで分離可能に構成され、第1連結片51の側壁に形成されたボルト挿通孔の外側に溶接固定されたナット53に螺合した止めねじ54により第1連結片51と第2連結片52を任意の長さで固定可能に構成されている。
【0018】
また、両棚部23、23には、その先端部付近に切欠部23aが形成されることで先端上面に上向きに突出する係合凸部23bが形成され、第1連結片51と第2連結片52の先端部には上記係合凸部23bに係合する係合孔51a、52aがそれぞれ形成されている。
【0019】
そして、連結部材5を取り付けた状態で、図4に示すように、該連結部材5の上面の高さが両仕切り棚2の上面の高さと略同一になるように構成されている。
【0020】
また、収容凹部32の開口部には、図1、3、5に示すように、下端側軸支部6aを中心として開口部を開閉自在に閉じる蓋体6が備えられ、
【0021】
上記蓋体6の上端縁部には、仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該蓋体6を閉じるための切欠部61が形成されている。また、切欠部61の下方には取っ手部を構成するための開口部6bが形成されている。
【0022】
また、蓋体6の裏面下部には、該蓋体6を閉じた状態で、該蓋体6と収容凹部32内に収容された仕切り棚2の棚部23との間の隙間の範囲内に収容可能な小物入れ62が形成されている。
【0023】
なお、収容凹部32が形成されたトリム31の上方は、窓ガラス7が備えられている。
【0024】
次に、実施例の作用・効果について説明する。
【0025】
この実施例の荷室の仕切り棚構造では、上述のように構成されるため、仕切り棚2を使用する時は、蓋体6を開け、図3、4に示すように、支軸42を中心として仕切り棚2を略水平状態になるまで上方へ回動させた状態で、該仕切り棚2を収容凹部32内方向へ押し込むことにより、両基板2aにおける軸支部(基端部)21の先端側の上面が断面L字状ブラケット4のリブ4bで構成される係合部に係合して仕切り棚2を略水平状体に維持させることができる。
【0026】
また、蓋体6の上端縁部には、仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該蓋体6を閉じるための切欠部61が形成されているので、この状態で蓋体6を閉じることができる。
【0027】
そして、一対の仕切り棚2、2の両基板2a、2aにおける棚部23、23の先端部同士を一対の連結部材5、5で連結する。即ち、第1連結片51の筒体内に第2連結片52を摺動自在に差し込んだ状態で、両端係合孔51a、52aをそれぞれ両棚部23、23の先端部上面に形成された係合凸部23b、23bにそれぞれ係合させた状態で止めねじ54をねじ込むことにより、第1連結片51と第2連結片52が連結固定される。
【0028】
また、両仕切り棚2、2を使用しない時は、以上とは逆に、まず、両連結部材5、5を取り外し、止めねじ54を緩めることにより第1連結片51と第2連結片52を分割する。
【0029】
次に、蓋体6を開け、その裏面下部に形成された小物入れ62内に収容すると共に、両仕切り棚2、2を収容凹部32外方向へ引き出すことにより、リブ4bに対する係合状態されるため、支軸42を中心として両仕切り棚2、2を下方へ回動させることにより、両仕切り棚2、2が収容凹部32内に収容され、蓋体6を閉じることにより、収容凹部32の開口部が閉塞された状態になる。
【0030】
以上詳細に説明してきたように、この実施例の荷室の仕切り棚構造では、荷室1を上下方向に仕切る仕切り棚2の基端部が荷室1の側壁3の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚2を略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより荷室1の側壁に沿って収納されるように構成されたことで、仕切り棚2の収納時には車両重心を低くすることができると共に、仕切り棚2の収納部の上方には窓を設けることができるため、車両後方側壁3部からの視認性を悪化させることがなくなるという効果が得られる。
【0031】
さらに、仕切り棚2の収納時には、仕切り棚2の基端部が上方となるように軸支されるため、仕切り棚2の自重による回動方向の力が働き難い。従って、収納時に、大がかりな装置で仕切り棚2を固定する必要がなく、固定装置の小型化、または廃止が可能となる。
【0032】
また、略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させた仕切り棚2がトリム31に形成された収容凹部32内に収容されるように構成されたことで、荷室1内への突出部をなくすことができ、荷室1を広く使用できるようになる。
【0033】
また、仕切り棚2の基端部を軸支する支軸42が収容凹部32内上端部近傍に備えられ、仕切り棚2が支軸42に対してそれぞれ基端部が軸支された一対の基板2aと両基板2a、2a間を接続する複数本のバー2bとで構成され、両基板2a、2aの基端部にその長手方向に沿って形成された長孔21aに対し支軸42が回動かつ摺動自在に係合され、仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該仕切り棚2を収容凹部内方向へ押し込むことにより両基板2a、2aの基端部の上面が係合して仕切り棚2を略水平状体に維持させる係合部(リブ4b)が形成されている構成としたことで、仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該仕切り棚2を収容凹部32内方向へ押し込む操作だけで、容易に水平状態に維持させることができるようになる。
【0034】
また、収容凹部32の開口部には下端側を中心として開口部を開閉自在に閉じる蓋体6が備えられ、蓋体6の上端縁部には仕切り棚2を略水平状態に回動させた状態で該蓋体6を閉じるための切欠部61が形成されている構成としたことで、収容凹部32内に仕切り棚2を収容した時だけでなく、仕切り棚2の使用時においても収容凹部32の開口部を蓋体で閉塞することができるようになる。
【0035】
また、仕切り棚3における両基板2a、2aが略クランク状に形成され、蓋体6の裏面下部には該蓋体6を閉じた状態で、該蓋体6と収容凹部32内に収容された仕切り棚2の棚部23との間の隙間の範囲内に収容可能な小物入れ62が形成されている構成としたことで、収容凹部32内に仕切り棚2を収納しつつ、収容凹部32内スペースを連結部材5等の小物入れ62として無駄なく有効利用できるようになる。
【0036】
また、仕切り棚2が荷室1における左右両側壁3、3に対面する状態で設けられ、該両仕切り棚2、2を略水平状態に維持させた状態で該両仕切り棚2、2の先端部同士を連結する連結部材5が備えられている構成としたことで、車幅全体を仕切り棚として有効利用することができるようになる。
【0037】
また、連結部材5の上面の高さが両仕切り棚2、2の上面の高さと略同一になるように構成したことで、大きな荷物を安定良く載せることができるようになる。
【0038】
また、連結部材5が筒体で構成される第1連結片51と該第1連結片51の筒体内に摺動自在に挿入可能な第2連結片52とで分離可能に構成され、第1連結片51の側壁に螺合した止めねじ54により第1連結片51と第2連結片52を任意の長さで固定可能に構成したことで、不使用時には分解してコンパクトに収納することができるようになる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づき説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0040】
例えば、実施例では、仕切り棚2をトリム31に形成した収容凹部32内に収容するようにしたが、トリム31の外面に沿わせた状態で収容させるだけでもよい。
【0041】
また、実施例では、仕切り棚3における両基板2a、2aを略クランク状に形成したが、蓋体6の裏面側に小物入れ62を設けない場合は、直線状に形成させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例の荷室の仕切り棚構造における仕切り棚の収納状態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における拡大縦断面図である。
【図3】実施例の荷室の仕切り棚構造における仕切り棚の使用状体を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線における縦断面図である。
【図5】実施例の荷室の仕切り棚構造を示す要部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 荷室
2 仕切り棚
2a 基板
2b バー
21 軸支部(基端部)
21a 長孔
21b 係合凹部
22 連結部
23 棚部
23a 切欠部
23b 係合凸部
3 側壁
31 トリム
32 収容凹部
4 ブラケット
4a 水平片
4b リブ(係合部)
41 軸支部
42 支軸
43 ボルト
5 連結部材
51 第1連結片
51a 係合孔
52 第2連結片
52a 係合孔
53 ナット
54 止めねじ
6 蓋体
6a 下端側軸支部
6b 開口部
61 切欠部
62 小物入れ
7 窓ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室を上下方向に仕切る仕切り棚の基端部が前記荷室の側壁の中途部に上下方向回動自在に軸支されていて、該仕切り棚を略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させることにより前記荷室の側壁に沿って収納されるように構成されていることを特徴とする荷室の仕切り棚構造。
【請求項2】
略水平の棚使用状態から下方へ向けて回動させた前記仕切り棚がトリムに形成された収容凹部内に収容されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項3】
前記仕切り棚の基端部を軸支する支軸が前記収容凹部内上端部近傍に備えられ、
前記仕切り棚が上記支軸に対してそれぞれ基端部が軸支された一対の基板と両基板間を接続する複数本のバーとで構成され、
前記両基板の基端部にその長手方向に沿って形成された長孔に対し前記支軸が回動かつ摺動自在に係合され、
前記仕切り棚を略水平状態に回動させた状態で該仕切り棚を前記収容凹部内方向へ押し込むことにより前記両基板の基端部の上面が係合して仕切り棚を略水平状体に維持させる係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項4】
前記収容凹部の開口部には下端側を中心として開口部を開閉自在に閉じる蓋体が備えられ、
前記蓋体の上端縁部には前記仕切り棚を略水平状態に回動させた状態で該蓋体を閉じるための切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項5】
前記仕切り棚における両基板が、前記長孔が形成された軸支部と、前記バーで接続された棚部と、該棚部と前記軸支部とを連結する連結部とで略クランク状に形成され、
前記収容凹部の開口部には下端側を中心として開口部を開閉自在に閉じる蓋体が備えられ、
前記蓋体の裏面下部には該蓋体を閉じた状態で、該蓋体と前記収容凹部内に収容された前記仕切り棚の棚部との間の隙間の範囲内に収容可能な小物入れが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項6】
前記仕切り棚が前記荷室における左右両側壁に対面する状態で設けられ、
該両仕切り棚を略水平状態に維持させた状態で該両仕切り棚の先端部同士を連結する連結部材が備えられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項7】
前記連結部材の上面の高さが前記両仕切り棚の上面の高さと略同一になるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の荷室の仕切り棚構造。
【請求項8】
前記連結部材が筒体で構成される第1連結片と該第1連結片の筒体内に摺動自在に挿入可能な第2連結片とで分離可能に構成され、
前記第1連結片の側壁に螺合した止めねじにより第1連結片と第2連結片を任意の長さで固定可能に構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の荷室の仕切り棚構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−68657(P2008−68657A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246863(P2006−246863)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】