説明

荷役システム

【課題】設備費用を抑えかつ作業の迅速性を考慮しつつ省エネルギー化を図ること。
【解決手段】制御装置16の判定部161bが、荷役計画情報に基づき、管理装置30から指示された荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定し、動作制御部161cが、荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定部161bによって判定された場合に、ヤードクレーン1a,1bが協働して力行動作および回生動作を行うように各ヤードクレーン1a,1bの動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾等に形成されるコンテナターミナルには、コンテナの積み込みや積み降ろし等の荷役作業を行う荷役クレーンが設置される。かかる荷役クレーンとしては、たとえば、コンテナ船とトラックとの間で荷役作業を行うコンテナクレーンや、トラックとコンテナヤードとの間で荷役作業を行うヤードクレーン等がある。
【0003】
このような荷役クレーンを用いた荷役作業においては、コスト削減等の観点から、コンテナ船の停泊時間あるいはトラックの停車時間を極力短くすることが重要であり、作業の迅速化が求められてきた。
【0004】
一方、近年においては、省エネルギー化というあらたなニーズも生まれてきている。たとえば、荷役作業の省エネルギー化を図るための技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。具体的には、特許文献1には、コンテナクレーンの巻下げ動作によって生じた回生エネルギーを蓄電池に溜めておき、かかる回生エネルギーを利用して巻上げ動作を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、省エネルギー化を図ることはできるものの、回生エネルギーを貯蔵する大容量な蓄電池が必要となるため、設備費用が増大するという問題があった。また、作業の迅速性を考慮するという点で更なる改善の余地があった。なお、かかる課題は、港湾での荷役作業に限ったものではなく、複数のクレーンを用いて行われる他の荷役作業においても生じ得る課題である。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、設備費用を抑えかつ作業の迅速性を考慮しつつ省エネルギー化を図ることができる荷役システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する荷役システムは、複数のクレーンを用いて荷役作業を行う荷役システムであって、前記荷役作業に関する情報に基づいて該荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定する判定部と、前記荷役作業が迅速性を要しない作業であると前記判定部によって判定された場合に、前記複数のクレーンのうち少なくとも2台の前記クレーンが協働して力行動作および回生動作を行うように前記クレーンの動作を制御する動作制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する荷役システムの一つの態様によれば、設備費用を抑えかつ作業の迅速性を考慮しつつ省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係る港湾施設の模式図である。
【図2】図2は、港湾荷役システムのシステム構成を示す図である。
【図3】図3は、ヤードクレーンの外観構成を示す模式図である。
【図4】図4は、ヤードクレーンシステムの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5A】図5Aは、通常モード選択時における一方のヤードクレーンの動作例および消費電力を示す図である。
【図5B】図5Bは、通常モード選択時における他方のヤードクレーンの動作例および消費電力を示す図である。
【図5C】図5Cは、通常モード選択時における各ヤードクレーンの消費電力の総和を示す図である。
【図6A】図6Aは、省エネモード選択時における一方のヤードクレーンの動作例および消費電力を示す図である。
【図6B】図6Bは、省エネモード選択時における他方のヤードクレーンの動作例および消費電力を示す図である。
【図6C】図6Cは、省エネモード選択時における各ヤードクレーンの消費電力の総和を示す図である。
【図7】図7は、モード選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する荷役システムのいくつかの実施例を詳細に説明する。
【0012】
なお、以下に示す実施例では、ヤードクレーンおよびコンテナクレーンを用いて港湾での荷役作業を行う港湾荷役システムに対して本願の開示する荷役システムを適用した場合の例について説明する。ただし、本願の開示する荷役システムは、複数のクレーンを用いて荷役作業を行うものであれば、港湾荷役作業以外の作業を行う場合にも適用可能である。
【実施例】
【0013】
[港湾施設の外観]
まず、本実施例に係る港湾荷役システムが適用される港湾施設の外観について図1を用いて説明する。図1は、本実施例に係る港湾施設の模式図である。
【0014】
図1に示すように、港湾Pには、ヤードクレーン1a,1b、コンテナクレーン2a,2bおよびターミナルビル3等が設置される。
【0015】
ヤードクレーン1a,1bは、コンテナ4の蔵置場所であるコンテナヤード5に設けられるクレーンであり、シャーシ6およびコンテナヤード5間での荷役作業を行う。具体的には、ヤードクレーン1a,1bは、シャーシ6によって搬送されてきたコンテナ4をコンテナヤード5へ降ろす作業やコンテナヤード5に蔵置されたコンテナ4をシャーシ6へ積み込む作業等を行う。
【0016】
また、ヤードクレーン1a,1bは、上記のような積み降ろし作業や積み込み作業だけでなく、たとえばシャーシ6に対するコンテナ4の積み込み作業を迅速に行うために、シャーシ6へ積み込むべきコンテナ4をあらかじめ積み込み易い場所へ移動させておくといったコンテナ整理作業等も行う。なお、ヤードクレーン1a,1bの構成については、図3を用いて後述する。
【0017】
コンテナクレーン2a,2bは、コンテナ船等の船舶7が接岸する岸壁8に沿って設置されるガントリークレーン等のクレーンであり、船舶7およびシャーシ6間での荷役作業を行う。
【0018】
たとえば、コンテナクレーン2a,2bは、岸壁8に対して略平行に設けられたレール21に沿って移動した後、レール21と直交する向きに設けられたブーム22に沿ってトロリー23を船舶7上の所望の位置まで移動させる。その後、トロリー23の下部に設けられた吊り具(図示せず)を巻下げて船舶7上のコンテナと連結させた後、吊り具(図示せず)およびコンテナ4を巻上げて、コンテナ4をシャーシ6上へと移動させる。
【0019】
船舶7から積み降ろされたコンテナ4は、シャーシ6によってヤードクレーン1a,1bまで搬送され、ヤードクレーン1a,1bによってコンテナヤード5に蔵置されることとなる。
【0020】
ターミナルビル3には、港湾施設全体を管理する管理装置30が設置される。管理装置30は、ヤードクレーン1a,1bおよびコンテナクレーン2a,2bのスケジュール管理、ヤードクレーン1a,1bおよびコンテナクレーン2a,2bに対する作業指示およびヤードクレーン1a,1bおよびコンテナクレーン2a,2bからの状態収集等を行う。このように、ヤードクレーン1a,1bおよびコンテナクレーン2a,2bは、管理装置30によって集中管理され、管理装置30からの指示に基づいて荷役作業等を実行する。
【0021】
なお、本実施例では、ヤードクレーンおよびコンテナクレーンがそれぞれ2台ずつ設置される場合の例について説明するが、港湾施設に設置されるヤードクレーンおよびコンテナクレーンは、3台以上であっても構わない。
【0022】
[港湾荷役システムの構成]
次に、本実施例に係る港湾荷役システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、港湾荷役システムのシステム構成を示す図である。
【0023】
図2に示すように、本実施例に係る港湾荷役システムでは、ヤードクレーンシステム10と、コンテナクレーンシステム20と、管理装置30とが、通信ネットワーク40を介して相互に接続される。なお、通信ネットワーク40としては、たとえば有線LAN(Local Area Network)や無線LANといった一般的なネットワークを用いることができる。
【0024】
ヤードクレーンシステム10は、2台のヤードクレーン1a,1bと、受変電部15と、制御装置16とを備える。また、ヤードクレーン1aは、クレーンコントローラ11と、コンバータ12と、走行用インバータ13aと、横行用インバータ13bと、巻上用インバータ13cと、走行用モータ14aと、横行用モータ14bと、巻上用モータ14cとを備える。図示を省略するが、ヤードクレーン1bもヤードクレーン1aと同様の構成を備える。なお、本実施例では、ヤードクレーン1a,1bが、管理装置30からの指示に従って自動的に動作する無人クレーンである場合の例について説明するが、ヤードクレーンは有人クレーンであってもよい。
【0025】
ここで、ヤードクレーン1aの外観構成について図3を用いて説明する。図3は、ヤードクレーン1aの外観構成を示す模式図である。なお、ヤードクレーン1bの外観構成は、ヤードクレーン1aの外観構成と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、ヤードクレーン1aは、脚部101,101の上部にガーダ102を掛け渡した門型形状を備える。ガーダ102上には、吊り具103の巻上げまたは巻下げを行う巻上部(図示せず)を備えたトロリー104が横行可能に載置されている。また、脚部101,101の下部には、それぞれ走行部105,105が設けられており、ガーダ102と直交する方向(すなわち、トロリー104の横行方向と直交する方向)に向かって走行可能に構成されている。
【0027】
なお、ここでは、ヤードクレーン1aが、走行部105,105としてタイヤを備える場合の例について示したが、走行部105,105の構成はこれに限ったものではない。
【0028】
図2に戻り、ヤードクレーン1aの内部構成について説明する。クレーンコントローラ11は、ヤードクレーン1a全体を制御する。具体的には、クレーンコントローラ11は、制御装置16からの移動コマンドに基づき、走行用モータ14a、横行用モータ14bおよび巻上用モータ14cの駆動指令を生成して走行用インバータ13a、横行用インバータ13bおよび巻上用インバータ13cへそれぞれ出力する。
【0029】
コンバータ12は、受変電部15から供給された交流電圧を直流電圧に変換したうえで、それぞれ走行用インバータ13a、横行用インバータ13bおよび巻上用インバータ13cへ供給する。
【0030】
かかるコンバータ12は、電力回生機能を備えており、巻上用モータ14cの巻下げ動作によって発生した直流電圧を交流電圧へ変換して受変電部15へ戻す処理も併せて行う。
【0031】
走行用インバータ13a、横行用インバータ13bおよび巻上用インバータ13cは、コンバータ12から供給される直流電圧をクレーンコントローラ11からの駆動指令に応じてスイッチングし、それぞれ走行用モータ14a、横行用モータ14bおよび巻上用モータ14cに対して交流電力を供給する。
【0032】
走行用モータ14aは、走行用インバータ13aから供給される交流電力によって駆動するモータである。かかる走行用モータ14aを駆動させることで、図3に示す走行部105,105が駆動し、ヤードクレーン1aを走行させることができる。
【0033】
横行用モータ14bは、横行用インバータ13bから供給される交流電力によって駆動するモータである。かかる横行用モータ14bを駆動させることで、図3に示すトロリー104を横行させることができる。巻上用モータ14cは、巻上用インバータ13cから供給される交流電力によって駆動するモータである。かかる巻上用モータ14cを駆動させることで、図3に示す吊り具103を巻上げまたは巻下げることができる。
【0034】
受変電部15は、商用電源50から供給される交流電圧を受電し、必要に応じて受電電圧を変圧して各ヤードクレーン1a,1bへ供給する。
【0035】
制御装置16は、ヤードクレーンシステム10全体を制御する制御装置である。具体的には、制御装置16は、管理装置30から受信した荷役計画情報に基づいて各ヤードクレーン1a,1bの移動コマンドを生成し、生成した移動コマンドを各ヤードクレーン1a,1bに対して送信する。
【0036】
また、制御装置16は、管理装置30から受信した荷役計画情報に基づいて、作業モードの選択を行う。そして、作業モードとして「省エネ優先モード」が選択された場合には、2台のヤードクレーン1a,1bが協働して巻上げ動作および巻下げ動作を行うように各ヤードクレーン1a,1bの移動コマンドを生成する。
【0037】
つづいて、コンテナクレーンシステム20の構成について説明する。コンテナクレーンシステム20は、2台のコンテナクレーン2a,2bと、受変電部25と、制御装置26とを備える。
【0038】
受変電部25は、商用電源50から供給される交流電圧を受電し、必要に応じて受電電圧を変圧して各コンテナクレーン2a,2bへ供給する。また、制御装置26は、管理装置30から受信した荷役計画情報に基づいて各コンテナクレーン2a,2bの移動コマンドを生成し、生成した移動コマンドを各コンテナクレーン2a,2bに対して送信する。コンテナクレーン2a,2bは、かかる移動コマンドに基づいて駆動することとなる。
【0039】
管理装置30は、港湾荷役システム全体を管理する装置である。たとえば、管理装置30は、船舶7の到着予定時刻、コンテナヤード5に蔵置されたコンテナ4のシャーシ6による搬出予定時刻等の作業スケジュール情報に応じて荷役計画情報を作成し、作成した荷役計画情報をヤードクレーンシステム10の制御装置16およびコンテナクレーンシステム20の制御装置26へ送信する。
【0040】
なお、荷役計画情報は、管理装置30が作業スケジュール情報に基づいて自動的に作成することとしてもよいし、作業員等が管理装置30を用いて手動で作成することとしてもよい。
【0041】
[ヤードクレーンシステムの制御装置の構成]
次に、ヤードクレーンシステム10の制御装置16の構成について図4を用いて説明する。図4は、ヤードクレーンシステム10の制御装置16の構成を示すブロック図である。なお、図4では、制御装置16の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0042】
図4に示すように、制御装置16は、制御部161と、記憶部162とを備える。また、制御部161は、情報取得部161aと、判定部161bと、動作制御部161cとを備え、記憶部162は、省エネモード選択条件162aを記憶する。
【0043】
情報取得部161aは、外部からの情報を取得する処理部である。具体的には、情報取得部161aは、管理装置30から荷役計画情報を取得し、取得した荷役計画情報を判定部161bへ渡す。ここで、荷役計画情報は、荷役作業に関する情報であり、船舶7との荷役作業の有無、シャーシ6との荷役作業の有無といった情報が含まれるものとする。
【0044】
なお、情報取得部161aは、管理装置30からの荷役計画情報に限らず、ヤードクレーン1a,1bあるいはコンテナクレーン2a,2bの状態情報等も取得するものとする。ここで、状態情報とは、たとえば、ヤードクレーン1a,1bあるいはコンテナクレーン2a,2bの姿勢、各駆動設備(吊り具103、トロリー104、走行部105,105)の位置、速度、稼働状況(稼働中か非稼動中かを区別する情報)等の情報である。
【0045】
判定部161bは、情報取得部161aから受け取った荷役計画情報および記憶部162に記憶されている省エネモード選択条件162aに基づき、実行すべき荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定する処理部である。
【0046】
ここで、省エネモード選択条件162aとは、ヤードクレーン1a,1bによる荷役作業を省エネモードで実行するための条件を規定した情報である。具体的には、省エネモード選択条件162aには、迅速性を要しない荷役作業の種別が含まれている。本実施例では、船舶7との荷役作業がなく、かつ、シャーシ6との荷役作業もないことが省エネモード選択条件162aとして含まれているものとする。
【0047】
判定部161bは、情報取得部161aから荷役計画情報を受け取ると、省エネモード選択条件162aを参照し、実行すべき荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定する。具体的には、荷役計画情報の内容が省エネモード選択条件162aに合致する場合、すなわち、コンテナクレーン2a,2bによる船舶7およびシャーシ6間での荷役作業、ヤードクレーン1a,1bによるシャーシ6およびコンテナヤード5間での荷役作業の双方が荷役計画情報に含まれない場合に、実行すべき荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定する。
【0048】
そして、判定部161bは、実行すべき荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定すると、荷役計画情報とともに、省エネモードが選択されたことを示す省エネモード選択情報を動作制御部161cへ渡す。
【0049】
動作制御部161cは、荷役計画情報に応じた荷役作業を行うように各ヤードクレーン1a,1bの動作を制御する処理部である。かかる動作制御部161cは、判定部161bから省エネモード選択情報を受け取った場合には、荷役計画情報に応じた荷役作業を省エネモードで実行するように各ヤードクレーン1a,1bの動作を制御する。
【0050】
省エネモードでは、動作制御部161cは、一方のヤードクレーン1a(1b)による、コンバータ12が回生運転となる回生動作を、他方のヤードクレーン1b(1a)による、コンバータ12が力行運転となる力行動作と同時に行う。一例として、動作制御部161cは、一方のヤードクレーン1a(1b)による巻上げ動作または巻下げ動作のうち一方の動作を他方のヤードクレーン1b(1a)による他方の動作と同期させることで、2台のヤードクレーン1a,1bに対して協働して巻上げ動作および巻下げ動作を行わせる。なお、省エネモード選択時における各ヤードクレーン1a,1bの具体的な動作については、図6A〜図6Cを用いて後述する。
【0051】
[省エネモード選択時の動作例]
次に、省エネモード選択時における各ヤードクレーン1a,1bの動作例について、省エネモード非選択時(以下、「通常モード」と記載する)における各ヤードクレーン1a,1bの動作例と比較して説明する。
【0052】
まず、通常モード選択時における各ヤードクレーン1a,1bの動作例について図5A〜図5Cを用いて説明する。図5Aは、通常モード選択時におけるヤードクレーン1aの動作例および消費電力を示す図であり、図5Bは、通常モード選択時におけるヤードクレーン1bの動作例および消費電力を示す図である。また、図5Cは、通常モード選択時におけるヤードクレーン1aおよびヤードクレーン1bの消費電力の総和を示す図である。
【0053】
ここで、図5A〜図5Cには、ヤードクレーン1a,1bの動作の一例として、ヤードクレーン1a,1bが、それぞれ走行(a)、巻下げ(b)、巻上げ(c)、横行(d)、巻下げ(e)、巻上げ(f)および横行(g)の順に動作した場合の例について示している。
【0054】
すなわち、ヤードクレーン1a,1bは、走行(a)を行うことで指定されたコンテナ4の上方に吊り具103を位置させたのち、巻下げ(b)を行うことで吊り具103をコンテナ4近傍まで降ろす。つづいて、ヤードクレーン1a,1bは、手動あるいは自動によりコンテナ4と吊り具103とが連結されると、吊り具103を巻上げ(c)、トロリー104を横行させてコンテナ4を移動先となる場所の上方へ位置させたうえで(d)、吊り具103を巻下げて(e)、コンテナ4を指定された場所へ蔵置する。その後、ヤードクレーン1a,1bは、吊り具103を巻上げ(f)、トロリー104をホームポジションまで横行させて(g)、荷役作業の動作を終了する。
【0055】
なお、図5Aまたは図5Bに示すように、ヤードクレーン1a,1bは、走行動作、巻上げ動作および横行動作を行った場合には電力を消費することとなるが、巻下げ動作を行った場合には回生電力の発生により消費電力がマイナスとなる。
【0056】
図5Aおよび図5Bに示すように、通常モードが選択された場合、各ヤードクレーン1a,1bは、他のヤードクレーンの作業状況に依存することなく独立して荷役作業を行う。このため、図5Cに示すように、作業内容によっては両ヤードクレーン1a,1bの消費電力が瞬間的に大きくなる可能性があり(図5Cの(h)参照)、また、両ヤードクレーン(たとえば、ヤードクレーン1b)で発生した回生電力が瞬間的に大きくなる可能性もある(図5Cの(i)参照)。
【0057】
つづいて、省エネモード選択時における各ヤードクレーン1a,1bの動作例について図6A〜図6Cを用いて説明する。図6Aは、省エネモード選択時におけるヤードクレーン1aの動作例および消費電力を示す図であり、図6Bは、省エネモード選択時におけるヤードクレーン1bの動作例および消費電力を示す図である。また、図6Cは、省エネモード選択時におけるヤードクレーン1aおよびヤードクレーン1bの消費電力の総和を示す図である。
【0058】
なお、図6A〜図6Cでは、図5A〜図5Cと同様に、ヤードクレーン1a,1bが、それぞれ走行(a)、巻下げ(b)、巻上げ(c)、横行(d)、巻下げ(e)、巻上げ(f)および横行(g)の順に動作するものとする。
【0059】
図6Aおよび図6Bに示すように、省エネモードが選択された場合、各ヤードクレーン1a,1bは、巻上げ動作および巻下げ動作を同期して行う。具体的には、図6Aに示すように、制御装置16の動作制御部161cは、巻上げ動作(c)の直前までの動作、すなわち走行動作(a)および巻下げ動作(b)までを行ったのち、ヤードクレーン1bの巻下げ動作(b)の開始タイミングが到来するまでの間、待機しておくようにヤードクレーン1aに対して指示する(w1)。
【0060】
そして、動作制御部161cは、ヤードクレーン1bの巻下げ動作(b)の開始タイミングで、ヤードクレーン1aの巻上げ動作(c)を行わせる。これにより、ヤードクレーン1aの巻上げ動作(c)とヤードクレーン1bの巻下げ動作(b)とが同時に開始されることとなる。
【0061】
このように、動作制御部161cは、一方のヤードクレーン(たとえば、ヤードクレーン1b)の巻下げ動作(または巻上げ動作)の開始タイミングが到来するまでの間、他のヤードクレーン(たとえば、ヤードクレーン1a)による巻上げ動作(または巻下げ動作)を禁止することで、巻上げ動作と巻下げ動作とを確実に同期させることができる。
【0062】
同様に、動作制御部161cは、ヤードクレーン1bの巻下げ動作(e)の開始タイミングが到来するまでの間、ヤードクレーン1aを待機させ(w2)、ヤードクレーン1aの巻下げ動作(e)の開始タイミングが到来するまでの間、ヤードクレーン1bを待機させる(w3)。
【0063】
このように、省エネモードが選択された場合には、各ヤードクレーン1a,1bの巻上げ動作および巻下げ動作が同期され、巻下げ動作によって発生した回生電力を利用して巻上げ動作が行われる。このため、図6(C)に示すように、通常モード選択時と比較して、ピーク電力を低減することができ、また、一方のヤードクレーン1a(1b)で発生した回生電力を他方のヤードクレーン1a(1b)の電力として確実に利用することができる。すなわち、省エネルギー化を図ることができる。
【0064】
しかも、制御装置16は、船舶7との荷役作業がなく、かつ、シャーシ6との荷役作業もない場合、すなわち、管理装置30から指示された荷役作業が迅速性を要しない作業である場合に省エネモードを選択することとした。このため、作業の迅速性が無用に損なわれることはない。
【0065】
なお、動作制御部161cは、図6Bに示すように、ヤードクレーン1aの横行動作(g)中にヤードクレーン1bの巻上げ動作(f)が行われることでヤードクレーン1a,1bの消費電力の総和が瞬間的に高くなることを防止するために、ヤードクレーン1aの横行動作(g)が完了するまでの間、ヤードクレーン1bを待機させてもよい(w4)。
【0066】
また、巻下げ動作に限らず、一方のヤードクレーン1a(1b)における走行動作の最後の減速停止時にコンバータ12が回生運転となるようであれば、この減速停止動作を、他方のヤードクレーン1a(1b)のコンバータ12が力行運転となる動作と同時に行うようにしてもよい。
【0067】
[ヤードクレーンシステムの制御装置の具体的動作]
次に、制御装置16が実行するモード選択処理の処理手順について図7を用いて説明する。図7は、モード選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0068】
図7に示すように、制御装置16では、情報取得部161aが、管理装置30から荷役計画情報を取得し(ステップS101)、判定部161bが、取得した荷役計画情報に基づいて、管理装置30から指示された荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定する(ステップS102)。本実施例では、船舶7およびシャーシ6間の荷役作業ならびにシャーシ6およびコンテナヤード5間の荷役作業の双方が荷役計画情報に含まれない場合に、迅速性を要しない作業であると判定する。
【0069】
そして、制御装置16は、ステップS102において迅速性を要しない作業であると判定すると(ステップS102,Yes)、省エネモードを選択する(ステップS103)。この結果、ヤードクレーン1a,1bの巻上げ動作および巻下げ動作が同期して行われることとなり、巻下げ動作による回生電力を巻上げ動作の電力として確実に利用することで、省エネルギー化を図ることができる。
【0070】
一方、制御装置16は、管理装置30から指示された荷役作業が迅速性を要する作業である場合には(ステップS102,No)、省エネモードの選択は行わない。すなわち、船舶7およびシャーシ6間の荷役作業やシャーシ6およびコンテナヤード5間の荷役作業のように迅速性を要する作業を行う場合に省エネモードが選択されることがないため、作業の迅速性が無用に損なわれることがない。
【0071】
上述してきたように、本実施例では、判定部が、荷役計画情報に基づき、管理装置から指示された荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定し、動作制御部が、荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定部によって判定された場合に、省エネモードとすることとした。したがって、作業の迅速性を考慮しつつ省エネルギー化を図ることができる。
【0072】
また、本実施例では、省エネモードにて、動作制御部が例えば、一のヤードクレーンによる巻上げ動作または巻下げ動作を他のヤードクレーンによる巻下げ動作または巻上げ動作と同期させ、コンバータが、巻下げ動作によって生じる回生電力を巻上げ動作を行うヤードクレーンへ供給することとした。したがって、一のヤードクレーンで発生した回生電力を他のクレーンで必要な力行電力として確実に利用することができる。
【0073】
ところで、上述してきた実施例では、ヤードクレーン1a,1bが、無人クレーンである場合の例について説明してきた。すなわち、ヤードクレーン1a,1bが、走行、横行、巻上げおよび巻下げといった各種の動作を制御装置16からの移動コマンドに応じて自動で行うこととした。しかし、これに限ったものではなく、ヤードクレーンは、有人クレーンであってもよい。すなわち、ヤードクレーンは、操作部を備え、走行、横行、巻上げおよび巻下げといった各種の動作を作業員による入力操作に応じて行うタイプのヤードクレーンであってもよい。
【0074】
かかる場合、制御装置16の動作制御部161cは、一方のヤードクレーンによる巻上げ動作または巻下げ動作の開始タイミングが到来するまでの間、他方のヤードクレーンの操作に用いる操作部への入力操作を無効とすればよい。すなわち、動作制御部161cは、たとえば図6Aおよび図6Bにおける(w1)〜(w4)の期間において、巻下げ動作または巻上げ動作に関する入力操作が操作部に対して行われたとしてもこれらの動作を行わないようにヤードクレーンを制御する。
【0075】
これにより、一方のヤードクレーンによる巻上げ動作または巻下げ動作の開始タイミングが到来する前に、他方のヤードクレーンによる巻下げ動作または巻上げ動作が開始されてしまうことを防止し、巻上げ動作および巻下げ動作を同様のタイミングで開始させることができる。なお、動作制御部161cは、一方のヤードクレーンによる巻上げ動作または巻下げ動作の開始タイミングが到来したことを他方のヤードクレーンを操作する作業員に対して報知することとしてもよい。このようにすれば、巻上げ動作および巻下げ動作をより確実に同期させることができる。報知の方法としては、操作部に設けられたランプを点灯させたり、所定のスピーカから音声を出力したりすることが考えられる。
【0076】
また、上述してきた実施例では、制御装置16の判定部161bが、管理装置30からの荷役計画情報に基づいて、荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定することとしたが、これに限ったものではない。
【0077】
たとえば、判定部161bは、コンテナクレーン2a,2bの状態情報を通信ネットワーク40経由で取得し、コンテナクレーン2a,2bが非稼動状態である場合に、荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定することとしてもよい。すなわち、コンテナクレーン2a,2bが非稼動状態であれば、船舶7およびシャーシ6間の荷役作業が行われていないということがわかるため、ヤードクレーン1a,1bによる荷役作業に迅速性を要しないと判定することができる。このように、判定部161bは、コンテナクレーン2a,2bの状態情報を荷役作業に関する情報として用いて、荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定してもよい。
【0078】
また、上述してきた実施例では、2台のヤードクレーン間で巻上げ動作および巻下げ動作を同期させる場合の例について説明したが、巻上げ動作および巻下げ動作の同期は、3台以上のヤードクレーン間で行ってもよい。かかる場合、動作制御部161cは、巻上げ動作による消費電力と巻下げ動作による回生電力とがつり合うように、3台以上のヤードクレーン間で巻上げ動作および巻下げ動作を同期させればよい。たとえば、巻上げ動作による消費電力が巻下げ動作による回生電力の2倍に相当する場合には、1台のヤードクレーンによる巻上げ動作と2台のヤードクレーンによる巻下げ動作とを同期させればよい。
【0079】
また、上述してきた実施例では、ヤードクレーンシステム10の制御装置16が、情報取得部161a、判定部161bおよび動作制御部161cを備える場合の例について説明してきたが、これに限ったものではない。たとえば、情報取得部161a、判定部161bおよび動作制御部161cは、クレーンコントローラ11が備えていてもよいし、管理装置30が備えていてもよい。
【0080】
また、上述してきた実施例では、シャーシ6およびコンテナヤード5間での荷役作業を行うクレーンがヤードクレーンである場合について説明したが、これに限ったものではなく、かかるクレーンは、ジブクレーンやアンローダ等の他のクレーンであっても構わない。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
P 港湾
1a,1b ヤードクレーン
2a,2b コンテナクレーン
3 ターミナルビル
4 コンテナ
5 コンテナヤード
6 シャーシ
7 船舶
8 岸壁
10 ヤードクレーンシステム
20 コンテナクレーンシステム
30 管理装置
40 通信ネットワーク
50 商用電源
11 クレーンコントローラ
12 コンバータ
13a 走行用インバータ
13b 横行用インバータ
13c 巻上用インバータ
14a 走行用モータ
14b 横行用モータ
14c 巻上用モータ
15 受変電部
16 制御装置
21 レール
22 ブーム
23 トロリー
25 受変電部
26 制御装置
101 脚部
102 ガーダ
103 吊り具
104 トロリー
105 走行部
161 制御部
161a 情報取得部
161b 判定部
161c 動作制御部
162 記憶部
162a 省エネモード選択条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクレーンを用いて荷役作業を行う荷役システムであって、
前記荷役作業に関する情報に基づいて該荷役作業が迅速性を要しない作業であるか否かを判定する判定部と、
前記荷役作業が迅速性を要しない作業であると前記判定部によって判定された場合に、前記複数のクレーンのうち少なくとも2台の前記クレーンが協働して力行動作および回生動作を行うように前記クレーンの動作を制御する動作制御部と
を備えることを特徴とする荷役システム。
【請求項2】
前記動作制御部は、
一の前記クレーンによる力行動作または回生動作を他の前記クレーンによる回生動作または力行動作と同期させることを特徴とする請求項1に記載の荷役システム。
【請求項3】
前記動作制御部は、
一の前記クレーンによる力行動作または回生動作の開始タイミングが到来するまでの間、他の前記クレーンによる回生動作または力行動作を禁止することを特徴とする請求項2に記載の荷役システム。
【請求項4】
前記クレーンを操作する操作部
をさらに備え、
前記動作制御部は、
一の前記クレーンによる力行動作または回生動作の開始タイミングが到来するまでの間、他の前記クレーンの操作に用いる操作部に対する前記回生動作または前記力行動作に関する入力操作を無効とすることを特徴とする請求項3に記載の荷役システム。
【請求項5】
前記力行動作は巻上げ動作であり、前記回生動作は巻下げ動作であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の荷役システム。
【請求項6】
船舶およびシャーシ間の荷役作業を行うコンテナクレーン
をさらに備え、
前記クレーンは、
前記シャーシおよびコンテナヤード間の荷役作業を行うヤードクレーンであり、
前記判定部は、
前記コンテナクレーンが非稼動状態である場合に、前記荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の荷役システム。
【請求項7】
船舶およびシャーシ間の荷役作業を行うコンテナクレーン
をさらに備え、
前記クレーンは、
前記シャーシおよびコンテナヤード間の荷役作業を行うヤードクレーンであり、
前記判定部は、
外部から入力される前記荷役作業の計画情報に、前記船舶および前記シャーシ間の荷役作業ならびに前記シャーシおよび前記コンテナヤード間の荷役作業の双方が含まれない場合に、前記荷役作業が迅速性を要しない作業であると判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の荷役システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240825(P2012−240825A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114999(P2011−114999)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】