説明

荷役速度制御装置

【課題】リーチスタッカ等の荷役車両に適用される荷役速度制御装置に於て、荷役シリンダがストロークエンドで自動的に減速されてショックが発生しない様にする。
【解決手段】荷役装置、荷役シリンダ53、ポンプ54、メインバルブ55、パイロットバルブ56、センサ57、電磁弁2、制御器3とで構成し、とりわけポンプ54からパイロットバルブ56への圧油を制御する電磁弁2と、センサ57からの信号に基いて荷役シリンダ53がストロークエンドに近づくに従いポンプ54からパイロットバルブ56への圧油流量を減少すべく電磁弁2を制御する制御器3とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリーチスタッカ等の荷役車両に適用される荷役速度制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の荷役車両としては、例えば特許文献1に記載されて図2及び図3に示したものが知られている。
当該荷役車両50は、基本的には、走行可能な車体51と、車体51に設けられた荷役装置52と、荷役装置52を作動させる荷役シリンダ53と、圧油を発生させるポンプ54と、ポンプ54からの圧油を荷役シリンダ53に給排する為のメインバルブ55と、ポンプ54からの圧油をメインバルブ55のパイロット部に給排する為のパイロットバルブ56と、荷役シリンダ53のストロークを検出するセンサ57と、センサ57からの信号に基いて許容荷重等を算出する制御器58と、制御器58に依り制御されて許容荷重等を運転者に知らせる警報器や表示器等の告知器59等を備えている。
而して、荷役装置52は、車体51に俯仰可能に設けられて伸縮可能なブーム装置にしてある。荷役シリンダ53は、ブーム装置52を俯仰するブームシリンダ60と、ブーム装置52を伸縮するリーチシリンダ61にしてある。センサ57は、ブーム装置52の俯仰角度を検出する角度センサ62と、ブーム装置52の伸縮長さを検出する長さセンサ63にしてある。ブーム装置52の先端には、コンテナ等の荷物Aを保持するスプレッダ等の保持装置64が設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−224543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この様なものは、運転者がパイロットバルブのレバーを手動操作する事に依り荷役シリンダの伸縮速度を調整していた。つまり、レバーを操作してパイロットバルブからのパイロット圧を変化させてメインバルブのスプール開口量を変える事に依りポンプから荷役シリンダへの流量を制限していた。その為、荷役シリンダのストロークエンドで減速しないと、ショックが発生して故障や事故を招く惧れがあった。
【0005】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、荷役シリンダがストロークエンドで自動的に減速されてショックが発生しない様にした荷役速度制御装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の荷役速度制御装置は、基本的には、車体に設けられた荷役装置と、荷役装置を作動させる荷役シリンダと、圧油を発生させるポンプと、ポンプからの圧油を荷役シリンダに給排するメインバルブと、手動操作されてポンプからの圧油をメインバルブのパイロット部に給排するパイロットバルブと、荷役シリンダのストロークを検出するセンサと、ポンプからパイロットバルブへの圧油を制御する電磁弁と、センサからの信号に基いて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプからパイロットバルブへの圧油流量を減少すべく電磁弁を制御する制御器と、から構成した事に特徴が存する。
【0007】
運転者に依りパイロットバルブが手動操作されると、ポンプからの圧油がメインバルブのパイロット部に給排されてメインバルブが作動される。メインバルブが作動されると、ポンプからの圧油が荷役シリンダに給排されて荷役シリンダが作動される。荷役シリンダが作動されると、荷役装置が作動されると共に、センサに依り荷役シリンダのストロークが検出される。
【0008】
センサからの信号に依り電磁弁が制御されて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプからパイロットバルブへの圧油流量が徐々に制限される。そうすると、パイロットバルブに依りメインバルブが同様に制御されて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプから荷役シリンダへの圧油流量が徐々に制限される。この為、荷役シリンダは、ストロークエンドに近づくに連れて減速され、ショックの発生が防止される。
【0009】
荷役装置は、車体に俯仰可能に設けられて伸縮可能なブーム装置にしてあり、荷役シリンダは、ブーム装置を俯仰するブームシリンダと、ブーム装置を伸縮するリーチシリンダにしてあり、センサは、ブーム装置の俯仰角度を検出する角度センサと、ブーム装置の伸縮長さを検出する長さセンサにしてあるのが好ましい。この様にすれば、ブーム装置を備えたリーチスタッカに適用する事ができ、作業の安全性を高める事ができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 荷役装置、荷役シリンダ、ポンプ、メインバルブ、パイロットバルブ、センサ、電磁弁、制御器とで構成し、とりわけポンプからパイロットバルブへの圧油を制御する電磁弁と、センサからの信号に基いて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプからパイロットバルブへの圧油流量を減少すべく電磁弁を制御する制御器とを設けたので、荷役シリンダがストロークエンドで自動的に減速されてショックを発生する事がない。
(2) ポンプからパイロットバルブへの圧油を制御する電磁弁と、センサからの信号に基いて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプからパイロットバルブへの圧油流量を減少すべく電磁弁を制御する制御器とを設けるだけであるので、コストが余り掛からず、既存のものへも容易に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の荷役速度制御装置を示す油圧回路図。図2は、荷役車両の概要を示す側面図である。
【0012】
荷役速度制御装置1は、荷役装置52、荷役シリンダ53、ポンプ54、メインバルブ55、パイロットバルブ56、センサ57、電磁弁2、制御器3とからその主要部が構成されて居り、リーチスタッカ等の荷役車両50に適用される。
【0013】
荷役車両50は、基本的には、走行可能な車体51と、車体51に設けられた荷役装置52と、荷役装置52を作動させる荷役シリンダ53と、圧油を発生させるポンプ54と、ポンプ54からの圧油を荷役シリンダ53に給排するメインバルブ55と、手動操作されてポンプ54からの圧油をメインバルブ55のパイロット部に給排するパイロットバルブ56と、荷役シリンダ53のストロークを検出するセンサ57とを備えている。
【0014】
車体51は、エンジン等の原動機に依り回転駆動される前後の車輪65や運転室66等を備えている。
【0015】
荷役装置52は、車体51に俯仰可能に設けられて伸縮可能なブーム装置にしてあり、車体51に俯仰可能に設けられたアウタブーム67と、これに伸縮可能に設けられたインナブーム68とを備えている。
而して、ブーム装置52のインナブーム68の先端には、コンテナ等の荷物Aを懸吊して保持するスプレッダ等の保持装置64が搖動可能に設けられている。
【0016】
荷役シリンダ53は、荷役装置であるブーム装置52を俯仰するブームシリンダ60と、ブーム装置52を伸縮するリーチシリンダ61にしてあり、ブームシリンダ60は、車体51とアウタブーム67との間に介設されていると共に、リーチシリンダ61は、アウタブーム67とインナブーム68との間に介設されている。
【0017】
ポンプ54は、メインポンプ69とパイロットポンプ70にしてあり、図略しているが、夫々エンジン等の原動機に依り回転駆動される。
而して、各ポンプ69,70の吸込側には、油液を貯溜したタンク71が接続されていると共に、パイロットポンプ70の吐出側には、これからの圧油を減圧する減圧弁72が設けられている。
【0018】
メインバルブ55は、二つの一次側ポートと四つの二次側ポートと四つのパイロットポートを備えて居り、一次側ポートはポンプ54(メインポンプ69)とタンク71に接続されていると共に、二次側ポートは荷役シリンダ53のブームシリンダ60とリーチシリンダ61の夫々ロッド室とテール室に接続されている。
【0019】
パイロットバルブ56は、二つの一次側ポートと四つの二次側ポートを備えて居り、一次側ポートはポンプ54(パイロットポンプ70)とタンク71に接続されていると共に、二次側ポートはメインバルブ55のパイロットポートに接続されている。
而して、パイロットバルブ56は、前後左右に傾倒可能なレバー73を備えて居り、レバー73を前後方向に傾倒すると、ブームシリンダ60を伸縮させてブーム装置52を上下できると共に、レバー73を左右方向に傾倒させると、リーチシリンダ61を伸縮させてブーム装置52を伸縮できる様になっている。
【0020】
センサ57は、ブーム装置52の俯仰角度を検出する角度センサ62と、ブーム装置52の伸縮長さを検出する長さセンサ63にしてある。
而して、角度センサ62は、ブーム装置52のアウタブーム67の基部に設けられていると共に、長さセンサ63は、伸縮可能なワイヤを備えていてブーム装置52のアウタブーム67とインナブーム68の各先部間に介設されている。
【0021】
電磁弁2は、ポンプ54からパイロットバルブ56への圧油を制御するもので、この例では、電磁比例弁を用いて居り、減圧弁72とパイロットバルブ56との間に介設されている。
【0022】
制御器3は、センサ57からの信号に依り制御されて荷役シリンダ53がストロークエンドに近づくに従いポンプ54からパイロットバルブ56への圧油流量を減少すべく電磁弁2を制御するもので、この例では、角度センサ62と長さセンサ63からの信号に基づき許容荷重等を演算して告知器59を制御すると共に、角度センサ62と長さセンサ63の少なくとも何れか一方の信号に基づき電磁弁2を制御する様にしてある。
【0023】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
運転者に依りパイロットバルブ56のレバー73が手動操作されると、パイロットポンプ70からの圧油がメインバルブ55のパイロット部に給排されてメインバルブ55が作動される。メインバルブ55が作動されると、メインポンプ69からの圧油が荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61に給排されてこれらが作動される。
荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61が作動されると、荷役装置であるブーム装置52のアウタブーム67やインナブーム68が作動されると共に、角度センサ62や長さセンサ63に依り荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61のストロークが検出される。
【0024】
角度センサ62や長さセンサ63からの信号は、制御器3に送られてこれに依り電磁弁2が制御される。つまり、荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61がストロークエンドに近づくに従いパイロットポンプ70からパイロットバルブ56への圧油流量が徐々に制限される様に電磁弁2が制御される。
そうすると、パイロットバルブ56に依りメインバルブ55が同様に制御されて荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61がストロークエンドに近づくに従いメインポンプ69から荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61への圧油流量が徐々に制限される。
この為、荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61は、ストロークエンドに近づくに連れて減速され、ショックの発生が防止される。
【0025】
パイロットポンプ70からパイロットバルブ56への圧油を制御する電磁弁2と、角度センサ62や長さセンサ63からの信号に基いて荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61がストロークエンドに近づくに従いパイロットポンプ70からパイロットバルブ56への圧油流量を減少すべく電磁弁2を制御する制御器3とを設けたので、荷役シリンダ53のブームシリンダ60やリーチシリンダ61がストロークエンドで自動的に減速されてショックを発生する事がない。
【0026】
尚、荷役車両50は、先の例では、リーチスタッカであったが、これに限らず、例えばこれ以外の車両でも良い。
荷役装置52は、先の例では、アウタブーム67とインナブーム68を備えたブーム装置であったが、これに限らず、例えばこれ以外のものでも良い。
荷役シリンダ53は、先の例では、ブームシリンダ60とリーチシリンダ61であったが、これに限らず、例えばこれらの何れか一方やこれ以外のものでも良い。
センサ57は、先の例では、角度センサ62と長さセンサ63であったが、これに限らず、例えばこれらの何れか一方やこれ以外のものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の荷役速度制御装置を示す油圧回路図。
【図2】荷役車両の概要を示す側面図。
【図3】従来の油圧制御装置を示す油圧回路図。
【符号の説明】
【0028】
1…荷役速度制御装置、2…電磁弁、3…制御器、50…荷役車両、51…車体、52…荷役装置、53…荷役シリンダ、54…ポンプ、55…メインバルブ、56…パイロットバルブ、57…センサ、58…制御器、59…告知器、60…ブームシリンダ、61…リーチシリンダ、62…角度センサ、63…長さセンサ、64…保持装置、65…車輪、66…運転室、67…アウタブーム、68…インナブーム、69…メインポンプ、70…パイロットポンプ、71…タンク、72…減圧弁、73…レバー、A…荷物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた荷役装置と、荷役装置を作動させる荷役シリンダと、圧油を発生させるポンプと、ポンプからの圧油を荷役シリンダに給排するメインバルブと、手動操作されてポンプからの圧油をメインバルブのパイロット部に給排するパイロットバルブと、荷役シリンダのストロークを検出するセンサと、ポンプからパイロットバルブへの圧油を制御する電磁弁と、センサからの信号に基いて荷役シリンダがストロークエンドに近づくに従いポンプからパイロットバルブへの圧油流量を減少すべく電磁弁を制御する制御器と、から構成した事を特徴とする荷役速度制御装置。
【請求項2】
荷役装置は、車体に俯仰可能に設けられて伸縮可能なブーム装置にしてあり、荷役シリンダは、ブーム装置を俯仰するブームシリンダと、ブーム装置を伸縮するリーチシリンダにしてあり、センサは、ブーム装置の俯仰角度を検出する角度センサと、ブーム装置の伸縮長さを検出する長さセンサにしてある請求項1に記載の荷役速度制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−280342(P2009−280342A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133713(P2008−133713)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】