説明

荷重センサ

【課題】 曲率半径が小さな曲面にメンブレンスイッチを配置する場合であっても、誤検出が発生することがない荷重センサを提供する。
【解決手段】 荷重センサは、ヘッドレスト1とメンブレンスイッチ2とを備えて構成されている。メンブレンスイッチ2は、絶縁フィルムをスペーサを介して重合することにより形成され、直線上に配置された複数のセル27に跨って直線状に延びるブリッジ部28を有し、このブリッジ部28が、ヘッドレスト1の曲面11に最も撓みの少ない向きで配置されるようにヘッドレスト1に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み方向の荷重が加わると対向する導電パターン同士が接触するメンブレンスイッチを用いた荷重センサに関し、特に誤動作の発生を防止するようにした荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車、航空機の座席、背もたれ等にメンブレンスイッチを設置して着座状態を検出するようにした着座センサが知られている(特許文献1)。メンブレンスイッチは、図7に示すように、一対の可撓性シートを101,102を絶縁スペーサ103を介して重合することにより構成される。可撓性シート101,102の対向面には、それぞれ導電パターン104,105が形成される。絶縁スペーサ103の所定位置には、開口部106が形成され、この開口部106の上下の導電パターン104,105がセル(接点部)107を形成する。セル107に可撓性シート101,102の厚み方向の荷重が加わると、開口部106を介して導電パターン104,105が接触するので、この接触により流れる電流を検出することによって荷重の有無を判別することができる。
【特許文献1】特開2002−326554公報(段落0008、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようなメンブレンスイッチを自動車のヘッドレストの荷重センサとして利用することも考えられるが、自動車のヘッドレストのように曲率半径が小さな曲面のある支持体の表面に沿って荷重センサを構成するメンブレンスイッチを装着すると、図8に示すようにメンブレンスイッチが曲面に沿って撓み、僅かな振動や表皮の収縮、ウレタンの変形等で上下の導電パターンが導通して誤検出が発生するという問題がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、ヘッドレストのように曲率半径が小さな曲面にメンブレンスイッチを配置する場合であっても、誤検出が発生することがない荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る荷重センサは、一対の可撓性を有する絶縁フィルムをスペーサを介して重合することにより形成され、前記一対の絶縁フィルムの対向面にそれぞれ導電パターンが形成されると共に、前記スペーサの所定位置に開口部が形成され、この開口部とその上下の前記導電パターンとでセルが形成され、前記セルで前記絶縁フィルムに厚み方向の荷重が加わると前記セルの位置で対向する導電パターン同士が接触するメンブレンスイッチと、このメンブレンスイッチが装着される曲面を有する支持体と有する荷重センサにおいて、前記メンブレンスイッチが、直線上に配置された複数の前記セルと、これらセルに跨って直線状に延びる導電パターンからなるブリッジ部とを有し、前記ブリッジ部が、前記支持体の曲面に最も撓みの少ない向きで配置されるように前記支持体に装着されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の一つの実施形態においては、前記ブリッジ部が、その延びる方向と直交する方向に複数配列され、前記メンブレンスイッチが、前記複数のブリッジ部の一方の端部側を前記ブリッジの延びる方向と直交する方向に連結する導電パターンからなる連結部を有し、この連結部の一端が延長されて導電パターンからなる前記連結部への撓み伝搬を防止する曲げ吸収部を形成し、この曲げ吸収部を介して末端部が形成されている。
【0007】
この場合、前記複数のブリッジ部がそれぞれ形成される絶縁フィルムは、前記連結部に接続される端部を除いて互いに分離されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のセルに跨って直線状に延びるブリッジ部が、支持体の曲面に最も撓みの少ない向きで配置されるようにしているので、セルに誤動作を生じさせる撓みが発生することがなく、荷重センサとしての信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記複数のブリッジを連結する連結部の一端に曲げ吸収部を形成した態様によれば、端末部側からの引っ張り力に対しても、曲げ吸収部が歪みを吸収して、連結部への撓み伝搬を防止するので、ブリッジ部が撓むのを効果的に防止することができ、荷重センサとしての信頼性を向上させることができる。
【0010】
また、上記のように複数のブリッジ部が連結部に接続される端部を除いて互いに分離されていると、各ブリッジ部で生じた撓みが他のブリッジ部に伝搬することがなく、ブリッジ部の撓みを更に効果的に防止することきができ、荷重センサとしての信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る荷重センサを自動車のヘッドレストに応用した例を示す正面図、図2は同じく側面図である。
【0013】
この荷重センサは、支持体としてのヘッドレスト1と、このヘッドレスト1の正面の曲面に沿って配置されたメンブレンスイッチ2とにより構成されている。
【0014】
ヘッドレスト1は、搭乗者の頭部を受けるウレタン等のクッション材により構成され、この例では、搭乗者の頭部受け面11が縦方向に湾曲した蒲鉾型の曲面を形成している。
【0015】
メンブレンスイッチ2は、図3にその一部の分解斜視図を示すように、一対の可撓性シートを21,22を絶縁スペーサ23を介して重合することにより構成される。可撓性シート21,22の対向面には、それぞれ導電パターン24a,24b,25が形成されている。この例では、導電パターン24a,24bは、互いに絶縁された平行線状パターンで、導電パターン25は、これら平行線状パターンを短絡させる円状孤立パターンとなっている。絶縁スペーサ23の所定位置には、開口部26が形成され、この開口部26の上下の導電パターン24a,24b,25がセル(接点部)27を形成している。セル27に可撓性シート21,22の厚み方向の荷重が加わると、開口部26を介して導電パターン24a,24bと導電パターン25とが接触するので、この接触により導電パターン24a,24bが導電パターン25により短絡され、両者の間に流れる電流を検出することによって荷重の有無を判別することができる。
【0016】
このメンブレンスイッチ2では、図1に示すように、3つのセル27が横方向に直線上に配列され、導電パターン24a,24bは、それらのセル27を横方向に跨るように形成されたブリッジ28を形成している。そして、このブリッジ28が、縦方向に3つ配列され、それらの一方の端部が縦方向に延びる連結部29で連結されている。連結部29の下端部は、中央部に向けて延長されて導電パターンからなる曲げ吸収部30を形成している。この曲げ吸収部30を介して末端部31が形成されている。可撓性シート21,22及び絶縁スペーサ23は、これらブリッジ28、連結部29、曲げ吸収部30及び末端部31に沿った横向き櫛歯状の外形形状を有していることが更に望ましい。
【0017】
メンブレンスイッチ2を、このような形状及び配置とすることにより、ヘッドレスト1の頭部受け面11の縦方向の曲面の影響で湾曲するのは連結部29だけとなり、セル27を跨ぐブリッジ28は殆ど湾曲しない。このため、誤接触の発生は殆ど無い。また、この実施形態によれば、端末部31が下側から引っ張られた場合でも、曲げ吸収部30のみが撓んで、連結部29には撓みが伝搬しない。このため、端末部31側からの引っ張り力に対しても、曲げ吸収部30の存在により、ブリッジ28が撓むのを効果的に防止することができる。
【0018】
なお、このような荷重センサは、図4に示すように、ヘッドレスト1を駆動する駆動部41を有する可動式ヘッドレスト機能付きのシート42に適用され、搭乗者43の頭部44とヘッドレスト1との接触を検知し、ヘッドレスト1の移動を停止させることにより、ヘッドレスト1を最適位置に停止させるシステムに使用することができる。
【0019】
図5は、本発明の第二の実施形態に係る荷重センサを示す正面図、図6は、同上面から見た平面図である。
【0020】
先の実施形態では、ヘッドレスト1が縦方向に湾曲した蒲鉾型であったが、この実施形態では、ヘッドレスト5が中央部を凹部とした横方向に湾曲した頭部受け面51を有し、この頭部受け面51に沿ってメンブレンスイッチ6が装着されている。
【0021】
この実施形態では、メンブレンスイッチ6を構成する複数のセル67が、縦方向に配列され、縦方向に延びるブリッジ68がセル67を跨るように、形成されている。連結部69及び端末部71は、下端部に形成されている。メンブレンスイッチ6の外形形状は、上向き櫛歯状である。
【0022】
この実施形態では、ヘッドレスト5の曲げが緩やかな縦方向にブリッジ部68が配置されており、ブリッジ部68が撓みにくく、セル67の誤動作が生じることが無い。
【0023】
なお、以上は、ヘッドレストに本発明の荷重センサを適用したが、曲面を有する支持体にメンブレンスイッチを装着する荷重センサであれば、支持体はどのようなものであっても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ヘッドレストに適用した本発明の第1の実施形態に係る荷重センサの概略構成を示す正面図である。
【図2】同荷重センサの側面図である。
【図3】同荷重センサのメンブレンスイッチの一部を分解して示す斜視図である。
【図4】同荷重センサの適応例を示す図である。
【図5】ヘッドレストに適用した本発明の第2の実施形態に係る荷重センサの概略構成を示す正面図である。
【図6】同荷重センサの上面から見た平面図である。
【図7】従来のメンブレンスイッチの構成を示す一部切欠して示す斜視図である。
【図8】従来のメンブレンスイッチのセルの部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1,5…ヘッドレスト、2,6…メンブレンスイッチ、27,67…セル、28,68…ブリッジ部、29,69…連結部、30…曲げ吸収部、31,71…端末部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の可撓性を有する絶縁フィルムをスペーサを介して重合することにより形成され、前記一対の絶縁フィルムの対向面にそれぞれ導電パターンが形成されると共に、前記スペーサの所定位置に開口部が形成され、この開口部とその上下の前記導電パターンとでセルが形成され、前記セルで前記絶縁フィルムに厚み方向の荷重が加わると前記セルの位置で対向する導電パターン同士が接触するメンブレンスイッチと、
このメンブレンスイッチが装着される曲面を有する支持体と
を有する荷重センサにおいて、
前記メンブレンスイッチは、直線上に配置された複数の前記セルと、これらセルに跨って直線状に延びる導電パターンからなるブリッジ部とを有し、前記ブリッジ部が、前記支持体の曲面に最も撓みの少ない向きで配置されるように前記支持体に装着されている
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
前記ブリッジ部は、その延びる方向と直交する方向に複数配列され、
前記メンブレンスイッチは、前記複数のブリッジ部の一方の端部側を前記ブリッジの延びる方向と直交する方向に連結する導電パターンからなる連結部を有し、この連結部の一端が延長されて導電パターンからなる前記連結部への撓み伝搬を防止する曲げ吸収部を形成し、この曲げ吸収部を介して末端部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の荷重センサ。
【請求項3】
前記複数のブリッジ部がそれぞれ形成される絶縁フィルムは、前記連結部に接続される端部を除いて互いに分離されていることを特徴とする請求項2記載の荷重センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−172730(P2006−172730A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359604(P2004−359604)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】